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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1265417
審判番号 不服2010-16846  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-27 
確定日 2012-11-01 
事件の表示 特願2005-157995「抗IL-6レセプター抗体を有効成分として含有する全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月15日出願公開、特開2005-247872〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年8月14日(優先権主張 平成9年8月15日)に出願した特願平10-229726号の一部を平成17年5月30日に新たな出願としたものであって、平成20年11月17日付けで手続補正書が提出され、平成22年4月20日付けで拒絶査定がされたところ、平成22年7月27日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、請求の理由について平成22年9月16日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成22年7月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年7月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成22年7月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、特許法第121条第1項の審判請求と同時にしたものであって、特許請求の範囲のうち請求項1の記載については、次のとおり補正するものである(下線部が補正箇所である)。
補正前:
「【請求項1】抗IL-6レセプター抗体を有効成分として含有する全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤。」

補正後:
「【請求項1】IL-6レセプターと結合することにより、IL-6のIL-6レセプターへの結合を阻害する抗IL-6レセプター抗体を有効成分として含有する全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤。」

2.補正の適否
上記請求項1の補正は、補正前の「抗IL-6レセプター抗体」を、「IL-6レセプターと結合することにより、IL-6のIL-6レセプターへの結合を阻害する抗IL-6レセプター抗体」と限定するものであって、補正前後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすものであるか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1.に「補正後」として記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物であるThe Journal of Immunology, Vol.151, No.11, 1993, p.6525-6534(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。下線は当審で付与した。)。
ア.要約
「自己抗体産生を含む過剰なB細胞機能はSLEの一般的な特徴であり、これら自身による自発的リンホカイン分泌と密接な関連を有すると考えられる。SLE患者に見られる自己抗体産生におけるIL-6/IL-6レセプター自己分泌活性化経路の役割を明らかにするために、我々は、SLE B細胞上のIL-2レセプターTacと比較して、IL-6レセプターの発現及び機能を研究した。IL-6レセプター及びIL-2レセプターは、ほとんどのSLE患者において、何らのin vitro刺激なしに血中B細胞上で検出された。IL-6のレセプターへの結合を阻害する抗IL-6レセプター抗体および抗IL-2レセプター抗体すなわち抗Tacの、SLE B細胞培養への導入は、ポリクローナルIg及び抗DNA自己抗体の自発的産生の強力な阻害をもたらした。これに加え、新鮮なSLE B細胞は、何らのin vitro刺激なしに高レベルのIL-6を分泌した。これらの結果は、B細胞上のIL-6レセプターの構成的発現が、B細胞による自発的IL-6産生と連携して、SLE患者におけるB細胞過活性及び自己抗体分泌を導くであろう自己分泌B細胞活性化を誘導することを示している。SLE患者に見られるB細胞活性の調節異常は、少なくとも部分的に、T細胞の助けから独立しているだろう。」

イ.6525頁左欄下から9?12行
「SLEは、もしかすると異常な免疫機能が原因の、過剰なIg産生と自己抗体形成により特徴付けられる全身性の自己免疫疾患の原型である。」

ウ.6527頁左欄Cell culture for ELISAspotの項目1?3行、10?12行
「SLE患者の新鮮なPBMC又は精製された新鮮なB細胞 が、72?78時間、5%CO2/95%空気の環境で、何らの刺激なしに培養された。・・・・・他の実験では、細胞培養は一連のmAb(5μg/ml)の存在下で行われた。」

エ.6528頁右欄下から7行?6529頁左欄下から8行
「抗IL-2レセプター及び抗IL-6レセプターmAbによるSLE B細胞のポリクローナルIgG及びIgG抗DNA抗体の自発的産生の阻害
次に我々は、IL-2/IL-2レセプター系又はIL-6/IL-6レセプター系がSLE患者B細胞の自発的Ig産生に寄与しているかどうかを研究した。この目的を達成するために、我々は、IL-6のレセプターへの結合を阻害する抗IL-6レセプターmAbである1-39、または抗IL-2レセプターmAb である抗Tacの存在下で、SLE PBMCを72時間増殖刺激因子なしで培養した。その後、総IgG分泌及びIgG抗DNA抗体分泌がELISAspot解析によって評価された。図2及び3に示されるように、正常B細胞は自発的にはポリクローナルIgGも(図2)、IgG抗DNA抗体も(図3)分泌しなかった。対照的に、SLE B細胞は自発的に多量のポリクローナルIgG (図2)及びIgG抗DNA抗体(図3)を産生した。ポリクローナルIgM及びIgM抗DNA抗体の自発的産生は、SLE患者からのB細胞でほとんど見られなかった(データは示さず)。
SLE B細胞による自発的ポリクローナルIgG産生 (図2)及びIgG抗DNA抗体(図3)分泌の両方が、抗IL-6レセプターmAb、抗IL-2レセプターmAb及び抗HLA-DR mAbの細胞培養への導入によって、効果的に阻害されたが、陰性対照、非免疫性マウスIgG1は、これらの反応を阻害しなかった。これらの発見は、SLE B細胞のポリクローナルIgG抗体産生及びIgG抗DNA抗体産生に対する、IL-2/IL-2レセプター回路及びIL-6/IL-6レセプター回路の必須の役割を示唆している。」

上記ア.エ.における「IL-6のレセプターへの結合を阻害する抗IL-6レセプター抗体」は、IL-6レセプターに対する抗体である以上、IL-6レセプターと結合することは明らかで、それによりIL-6のIL-6レセプターへの結合を阻害するものと認められる。また、ウ.の記載からみて、ア.エ.における「SLE B細胞」が全身性エリテマトーデス(SLE)の患者由来のB細胞であることは明らかである。
そうすると、引用例1には以下の発明が記載されていると認められる。
「IL-6レセプターと結合することにより、IL-6のIL-6レセプターへの結合を阻害する抗IL-6レセプター抗体を有効成分として含有する、全身性エリテマトーデスの患者由来のB細胞におけるIgG及びIgG抗DNA抗体の産生阻害剤」(以下、「引用発明」という。)

(3)対比
本願補正発明(以下、「前者」という)と引用発明(以下、「後者」という)とを対比すると、両者は、「IL-6レセプターと結合することにより、IL-6のIL-6レセプターへの結合を阻害する抗IL-6レセプター抗体を有効成分として含有する薬剤」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点: 薬剤が、前者においては「全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤」であるのに対し、後者においては「全身性エリテマトーデスの患者由来のB細胞におけるIgG及びIgG抗DNA抗体の産生阻害剤」である点

(4)相違点についての検討
全身性エリテマトーデス(以下、「SLE」ということがある)は、過剰なIg産生と自己抗体形成を特徴とする疾患であり(上記(2)イ.参照)、特に、抗DNA抗体がSLEに特異的であること(必要なら「メルクマニュアル第16版、メディカルブックサービス、1995年5月1日第3刷発行、1273頁参照)が、本願の優先日前に知られていた。
このように、過剰なIg及び抗DNA抗体の産生はSLEに特徴的なものと認められるから、SLE患者由来のB細胞において、抗IL-6レセプター抗体によるIgG及びIgG抗DNA抗体の産生阻害作用を確認したことについて記載された引用例1に接した当業者は、その記載内容がSLEの治療や予防への適用を示唆するものであると理解することは明らかである。
また、本願明細書[0007]にも記載されているように、NZB/W F1マウスがヒトのSLEの病態に最も近いモデルであることも、本願の優先日前に知られていた。
そうすると、引用例1に接した当業者であれば、上記のような理解にしたがって、引用例1において、SLE患者由来のB細胞で確認された、抗IL-6レセプター抗体によるIgG及びIgG抗DNA抗体の産生阻害作用を、ヒトのSLEの病態に最も近いモデルであるNZB/W F1マウスを用いて、生体内でも確認して、全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤としてみることは、容易になし得ることである。

次に、本願補正発明の奏する効果について検討する。
本願明細書には、NZB/W F1マウス群に、抗IL-6レセプター抗体としてMR16-1、コントロール抗体としてKH-5、ビヒクルコントロールとしてsalineを、それぞれ投与した結果について、以下のように記載されている。
「ビヒクル投与群では28週齢から、KH-5投与群では38週齢から尿タンパクの排泄がみられ、実験終了の64週齢ではビヒクル投与群では全例のマウスが、また、KH-5投与群では90% のマウスが陽性となったのに対して、MR16-1投与群では尿タンパクの出現時期が著明に延長され、発症率も著明に抑制された。
生存日数においてもMR16-1は明らかに生存日数を延長し、64週齢までに1匹が死亡したにすぎなかった。また、抗DNA 抗体量においては、MR16-1投与群ではIgG クラスの抗DNA 抗体の産生が著明に抑制されたが、IgM クラスの抗体には影響が見られなかった。血中の免疫グロブリン量においては、MR16-1投与群ではIgG1, IgG2およびIgG3量が減少していたが、IgM およびIgA 量には影響が見られなかった。
以上の成績から、抗IL-6レセプター抗体は全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤として有用であることが明らかになった。」([0093]?[0094])
本願明細書の上記記載によれば、本願補正発明の効果として、抗IL-6レセプター抗体を投与されたNZB/W F1マウス群での、尿タンパクの出現時期と発症率、生存日数と生存率、抗DNA抗体量、及び免疫グロブリン量における効果が具体的に確認されていると認められる。
しかしながら、抗IL-6レセプター抗体投与群において、IgGクラスの抗DNA抗体量及び免疫グロブリン量が減少したことは、SLE患者由来のB細胞において、抗IL-6レセプター抗体によるIgG及びIgG抗DNA抗体の産生阻害作用を確認したことについて記載された引用例1から、当業者が容易に予想できる効果である。そして、抗IL-6レセプター抗体投与群において生存日数が延長され生存率も高かったことは、SLE病態モデルマウスにおける抗DNA抗体量及び免疫グロブリン量が減少すること、すなわちSLEが治療されることにより、導き出される効果にすぎない。なお、抗IL-6レセプター抗体投与群において尿タンパクの出現時期が延長され発症率が抑制されたことは、ループス腎炎に対する特有の効果であると認められるところ、審判請求人も平成21年2月5日付け意見書で認めるようにループス腎炎はSLE患者の約半数が発症するにすぎないものであるから、本願補正発明の予防および/または治療剤が対象とするSLE全体に対する効果であるとはいえない。
以上検討したところによれば、本願補正発明が、当業者の予想を超える効果を奏するとは認められない。

(5)審判請求人の主張について
審判請求人は、平成22年9月16日付けで補正された審判請求書において、以下の点を指摘して、引用例1から本願補正発明に容易に想到することはできず、本願補正発明の効果は容易に予測することができない効果であると主張する。
ア)引用例1には、SLE等の疾患の治療に関しては、IL-6産生やIL-6レセプター発現の原因について、さらなる研究が必要であると記載されており、引用例1の結果のみでは、抗IL-6レセプター抗体のSLEに対する治療効果が期待できるどころかIL-6レセプターがSLE等の疾患の治療のためのターゲットとなるかどうかさえ不明であったことが示されている。
イ)本願明細書[0005]に記載した文献にはIL-6の病態への関与が否定的であることが記載され、参考資料1にもIL-6とIgG、抗DNA抗体は何ら関係がないこと、SLE患者の体内で抗DNA抗体が上昇した後にIL-6の濃度が増加したことが記載されているから、in vitroでの結果がin vivoと同じにならない可能性が十分に考えられ、IL-6とIL-6レセプターの結合を阻害することが疾患の治療につながらない可能性が十分に考えられることが明らかである。さらに、IL-6は他のサイトカインと複雑なサイトカインネットワークを形成しているから、IL-6とIL-6レセプターの結合を阻害し、IL-6のin vivoでのバランスを変化させる場合には、その効果を予測することは困難である。

ア)について検討する。
引用例1には、「我々は、IL-6産生及びIL-6レセプター発現の原因を明らかにするためのさらなる取り組みが、この自己免疫疾患の原因に重要なヒントを与え、究極的にSLE患者の実りある治療法を導くであろうと信じる。」(6532頁右欄下から3行?6533頁左欄2行)と記載されているが、この記載は、「さらなる取り組み」と記載されているように、引用例1に示された結果も、SLEの原因に重要なヒントを与え、治療法を示唆するものであることを前提とする記載であると解するのが相当であり、この記載をもって「引用例1の結果のみでは、抗IL-6レセプター抗体のSLEに対する治療効果が期待できるどころかIL-6レセプターがSLE等の疾患の治療のためのターゲットとなるかどうかさえ不明であったことが示されている」などということはできない。

イ)について検討する。
まず、本願明細書[0005]に記載されたPetersonらの文献及び審判請求人が提示した参考資料1は、いずれも、本願の優先日前に発表された論文ではあるが、特定の研究成果を発表したにすぎないものと認められ、これらの文献に記載された内容が本願優先日当時に技術常識となっていて、引用例1から本願補正発明に至る当業者の考察、検討を阻害するほどのものであったとは認められない。
次いで、これらの文献の記載内容について検討する。
Petersonらの文献には、「56人のSLE患者の内7人のみが血清IL-6レベルの上昇を示したのに対し、対照においては32人中1人であった。SLE疾患活性は血清IL-6レベルとは相関しなかった。尿IL-6が測定された50人のSLE患者の内16人において、上昇した尿IL-6レベルを示したのに対し、対照においては17人中1人であった(p=0.05)。尿IL-6レベルは全体的な疾患活性及びactive尿沈渣と相関していた。我々の結果は、血清IL-6はSLEにおける疾患活性の予測因子ではないが、尿IL-6は活動性腎炎のマーカとなりうることを示す。」(要約)と記載されているが、この記載は、「尿IL-6レベルは全体的な疾患活性・・・と相関していた」とあるように、必ずしもIL-6の病態への関与について否定的であるとは認められない。
また、参考資料1には、「我々は、in vivoでのIL-6の濃度とIgG又は抗dsDNA抗体との間に相関がないことを見出した。事実、抗dsDNA抗体の濃度の上昇は、IL-6の濃度の上昇に先行する傾向があった。我々のデータは、憎悪期のSLE患者に見られる上昇したIL-6とCRP濃度は二次的現象であるという仮説を支持する。」(109頁右欄9?15行)、「IL-6は、SLEの憎悪期前及び憎悪期中のIgG及び/又は抗dsDNA抗体産生における病因に関与していないように思われる。」(同26?28行)と記載されており、SLE患者の血中におけるIL-6の濃度とIgG又は抗dsDNA抗体との間に相関がないことやSLE患者の体内で抗dsDNA抗体の濃度の上昇がIL-6の濃度が上昇したことを示して、仮説や推論を述べているものと認められる。
以上のように、Petersonらの文献は、患者の血清又は尿中のIL-6レベルとSLEの疾患活性の関係について、また、参考資料1は、血中のIL-6濃度とIgGや抗dsDNA抗体の濃度との関係について示すもので、いずれの文献も、抗IL-6レセプター抗体の作用について記載又は示唆するものとは認められない。IL-6が他のサイトカインと複雑なサイトカインネットワークを形成していることを考慮しても、上記いずれの文献の記載も、引用例1に記載された、SLE患者由来のB細胞での抗IL-6レセプター抗体によるIgG及びIgG抗DNA抗体の産生阻害作用がin vivoにおいては得られないことを示唆するものではなく、抗IL-6レセプター抗体によるSLEの治療の可能性を否定するものとは認められない。
そうすると、ア)、イ)はいずれも理由がないから、審判請求人の主張は採用できない。

3.小括
以上検討したところによれば、本願補正発明は、引用例1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成22年7月27日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成20年11月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、第2 1.に「補正前」として記載したとおりのものである。

2.引用例の記載事項
引用例1の記載事項、及び引用例1に記載された発明(引用発明)は、第2 2.(2)で認定したとおりである。

3.対比
本願発明(以下、「前者」という)と引用発明(以下、「後者」という)とを対比すると、両者は、「抗IL-6レセプター抗体を有効成分として含有する薬剤」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点: 薬剤が、前者においては「全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤」であるのに対し、後者においては「全身性エリテマトーデスの患者由来のB細胞におけるIgG及びIgG抗DNA抗体の産生阻害剤」である点

4.相違点についての検討
第2 2.(4)で述べたとおり、引用例1において、SLE患者由来のB細胞で確認された、抗IL-6レセプター抗体によるIgG及びIgG抗DNA抗体の産生阻害作用を、ヒトのSLEの病態に最も近いモデルであるNZB/W F1マウスを用いて、生体内でも確認して、全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤としてみることは、当業者が容易になし得ることであり、本願発明が当業者の予想を超える効果を奏するとも認められない。

5.小括
以上検討したところによれば、本願発明は引用例1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-30 
結審通知日 2012-09-04 
審決日 2012-09-19 
出願番号 特願2005-157995(P2005-157995)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 安紀子  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 穴吹 智子
内藤 伸一
発明の名称 抗IL-6レセプター抗体を有効成分として含有する全身性エリテマトーデスの予防および/または治療剤  
代理人 石田 敬  
代理人 中村 和広  
代理人 古賀 哲次  
代理人 福本 積  
代理人 青木 篤  

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