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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08F
管理番号 1265650
審判番号 不服2010-25576  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-12 
確定日 2012-11-08 
事件の表示 特願2004- 44915「変性共役ジエン系重合体、並びにそれを用いたゴム組成物及びタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月 2日出願公開、特開2005-232364〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成16年2月20日を出願日とする出願であって、平成21年5月22日付で拒絶理由が通知されたのに対して、同年7月27日に意見書および手続補正書が提出されたが、平成22年8月26日付けで拒絶査定された。
これに対して、平成22年11月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2.本願発明

本願発明は、平成21年7月27日付けの手続補正書で補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)及び特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1,8,10には以下のとおり記載されている。

「【請求項1】
共役ジエン系重合体の末端を、下記式(I):



(式中、R^(1)は、単結合又は二価の不活性炭化水素基であり;R^(2)及びR^(3)は、それぞれ独立に炭素数1?20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6?18の一価の芳香族炭化水素基であり;nは0?2の整数であり;OR^(3)が複数ある場合、各OR^(3)は互いに同一でも異なっていてもよく;但し、分子中に活性プロトン及びオニウム塩は含まない)で表される変性剤で変性してなり、数平均分子量が50,000?500,000であることを特徴とする変性共役ジエン系重合体。」
「【請求項8】
請求項1?7のいずれかに記載の変性共役ジエン系重合体を含むことを特徴とするゴム組成物。」
「【請求項10】
更にカーボンブラックを含むことを特徴とする請求項8に記載のゴム組成物。」

したがって,請求項1を引用する請求項8を引用する請求項10に係る発明(以下,「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。


共役ジエン系重合体の末端を、下記式(I):



(式中、R^(1)は、単結合又は二価の不活性炭化水素基であり;R^(2)及びR^(3)は、それぞれ独立に炭素数1?20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6?18の一価の芳香族炭化水素基であり;nは0?2の整数であり;OR^(3)が複数ある場合、各OR^(3)は互いに同一でも異なっていてもよく;但し、分子中に活性プロトン及びオニウム塩は含まない)で表される変性剤で変性してなり、数平均分子量が50,000?500,000であることを特徴とする変性共役ジエン系重合体を含み、
更にカーボンブラックを含むゴム組成物。」

第3.原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶理由は、平成21年5月22日付拒絶理由通知書に記載した理由2である。そして、平成21年5月22日付拒絶理由通知書に記載した理由1および理由2の概要は、次のとおりである。


1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

[理由1,2について]
・請求項 1-3,8-13
・引用文献 1-3
(略)
・請求項 4
・引用文献 2,3
(略)
・請求項 5
・引用文献 2,3
(略)
・請求項 6
・引用文献 1
(略)
・請求項 7
・引用文献 1-3
(略)
[理由2について]
・請求項 6
・引用文献 2,3
(略)
引 用 文 献 等 一 覧

1.国際公開第03/046020号
2.国際公開第03/087171号
3.国際公開第03/048216号


第4.当審の判断

まず、平成21年5月22日付の拒絶理由通知書に記載した理由1について検討する。

(1)引用例

(1-1)引用例の記載事項

原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前頒布された刊行物である、国際公開第2003/087171号(2003年10月23日 国際公開。以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

(i)
「技術分野
本発明は、変性重合体の製造方法、その方法で得られた変性重合体及びゴム組成物に関する。さらに詳しくいえば、本発明は、シリカ系配合及びカーボンブラック系配合のゴム組成物の両方に用いた場合に、シリカ及びカーボンブラックとの相互作用を高め、破壊特性、耐摩耗性及び低発熱性を同時に向上させると共に、良好な作業性を発揮し得る変性重合体の製造方法、この方法により得られた上記特性を有する変性重合体、この変性重合体を含むゴム組成物及び該ゴム組成物を用いたタイヤに関するものである。」(p.1第4行?第12行)

(ii)
「発明を実施するための最良の形態
まず、本発明の変性重合体の製造方法について説明する。
本発明の変性重合体の製造方法においては、有機金属型の活性部位を分子中に有する重合体の該活性部位に、ヒドロカルビルオキシシラン化合物残基を導入する変性を行い、次いで該反応系に縮合促進剤を加える。」(p.6第1行?第6行)

(iii)
「重合開始剤のリチウム化合物としては、特に制限はないが、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物が好ましく用いられ、前者のヒドロカルビルリチウムを用いる場合には、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、かつ他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。また、後者のリチウムアミド化合物を用いる場合には、重合開始末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。」(p.8第1行?第7行)

(iv)
「次に、前記変性方法において、重合体の活性部位の変性に用いられるヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば一般式(II)
【化2】



(式中、A^(2)は環状三級アミン、非環状三級アミン、ニトリル、ピリジン、スルフィド及びマルチスルフィドの中から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基、R^(4)は単結合又は二価の不活性炭化水素基、R^(5)およびR^(6)は、それぞれ独立に炭素数1?20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6?18の一価の芳香族炭化水素基を示し、mは0?2の整数であり、OR^(6)が複数ある場合、複数のOR^(6)は互いに同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない。)
で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物を用いることができる。」(p.16上から第3行?下から第9行)

(v)
「この一般式(II)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば(略)
さらに、その他のヒドロカルビルオキシシラン化合物として、2-(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、2-(トリエトキシシリルエチル)ピリジン、2-シアノエチルトリエトキシシランなどを挙げることができる。」(p.17第1行?p.18第8行)

(vi)
「製造例1(重合体A)
乾燥し、窒素置換された800ミリリットルの耐圧ガラス容器に、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(16%)、スチレンのシクロヘキサン溶液(21%)をブタジエン単量体40g、スチレン単量体10gとなるように注入し、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.34ミリモルを注入し、これにn-ブチルリチウム(BuLi)0.38ミリモルを加えた後、50℃の温水浴中でで1.5時間重合を行った。重合転化率はほぼ100%であった。
この後、重合系にさらに、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール5重量%溶液0.5ミリリットルを加えて反応の停止を行い、さらに常法に従い乾燥することにより重合体Aを得た。得られた重合体の分析値を第1表に示す。
製造例2(重合体B)
乾燥し、窒素置換された800ミリリットルの耐圧ガラス容器に、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(16%)、スチレンのシクロヘキサン溶液(21%)をブタジエン単量体40g、スチレン単量体10gとなるように注入し、これにジテトラヒドロフリルプロパン0.44ミリモルを加え、さらにn-ブチルリチウム(BuLi)0.48ミリモルを加えた後、50℃で1.5時間重合を行った。重合転化率はほぼ100%であった。
この重合系にテトラエトキシシラン0.43ミリモルを加えた後、さらに50℃で30分間変性反応を行った。この後、重合系に、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール5重量%溶液0.5ミリリットルを加えて反応の停止を行い、さらに常法に従い乾燥することにより重合体Bを得た。得られた重合体の分析値を第1表に示す。
製造例3?7(重合体C?G)
製造例2において、変性剤であるテトラエトキシシランの代わりに、第1表に示す種類の変性剤を用いた以外は、製造例2と同様にして重合体C?重合体Gを得た。得られた各重合体の分析値を第1表に示す。」(p.30第14行?p.31第16行)

(vii)
「製造例15(重合体O)
製造例2において、重合開始剤であるn-ブチルリチウムの代わりに、反応系で調製されたリチウムヘキサメチレンイミド(ヘキサメチレンイミド/Liモル比=0.9)を、リチウム当量で0.48ミリモル用いた以外は、製造例2と同様にして重合体Oを得た。得られた重合体の分析値を第1表に示す。








(注)
Base Mw ;変性反応前の重量平均分子量(Mw)
Total Mw;一段目変性反応後の重量平均分子量(Mw)
BEHAS ;ビス(2-エチルヘキサノエート)スズ
TEHO ;チタンテトラキス(2-エチルヘキシルオキシド)
HMI ;反応系で合成されたヘキサメチレンイミノリチウム
TEOS ;テトラエトキシシラン
TTC ;四塩化スズ
TEOSPDI ;N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール
DMBTESPA;N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン
GPMOS ;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
GPEOS ;3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
実施例1?7及び比較例1?8
製造例1?15で得られた重合体を用い、第2表に示す配合1及び配合2に従って、それぞれシリカ系配合のゴム組成物及びカーボンブラック系配合のゴム組成物を以下に示す方法により調製し、ゴム組成物のムーニー粘度を測定すると共に、160℃、15分間の条件で加硫し、加硫ゴムの物性を測定した。その結果を第3表に示す。」(p.32下から第6行?p.35第4行)

(viii)


」(p.36)

(xi)






」(p.37-p.38)

(x)
「 請求の範囲
1.有機金属型の活性部位を分子中に有する重合体の該活性部位にヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させる変性反応を行い、該変性反応の途中及び/又は終了後に反応系に縮合促進剤を加える変性重合体の製造方法。
2.前記重合体が、共役ジエン化合物を単独重合して、又は共役ジエン化合物と他のモノマーを共重合して得られた重合体である請求項1記載の変性重合体の製造方法。
3.前記活性部位の金属がアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の変性重合体の製造方法。
4.前記重合体がアニオン重合により合成されたものであり、かつ前記他のモノマーが芳香族ビニル化合物である請求項2又は3に記載の変性重合体の製造方法。
5.前記活性部位が重合体の末端にあり、かつ少なくともその一部が活性状態である請求項4記載の変性重合体の製造方法。
6.前記変性に使用するヒドロカルビルオキシシラン化合物が、一般式(I)



(式中、A^(1)は(チオ)エポキシ、(チオ)イソシアネート、(チオ)ケトン、(チオ)アルデヒド、イミン、アミド、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル、(チオ)カルボン酸エステル、(チオ)カルボン酸エステルの金属塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化合物及び炭酸ジヒドロカルビルエステルの中から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基、R^(1)は単結合又は二価の不活性炭化水素基、R^(2)及びR^(3)は、それぞれ独立に炭素数1?20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6?18の一価の芳香族炭化水素基を示し、nは0?2の整数であり、OR^(3)が複数ある場合、複数のOR^(3)はたがいに同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない。)
で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物、
一般式(II)



(式中、A^(2)は環状三級アミン、非環状三級アミン、ニトリル、ピリジン、スルフィド及びマルチスルフィドの中から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基、R^(4)は単結合又は二価の不活性炭化水素基、R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に炭素数1?20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6?18の一価の芳香族炭化水素基を示し、mは0?2の整数であり、OR^(6)が複数ある場合、複数のOR^(6)はたがいに同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない。)
で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物、及び一般式(III)
R^(7)_(p)-Si-(OR^(8))_(4-p) ・・・(III)
(式中、R^(7)及びR^(8)は、それぞれ独立に炭素数1?20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6?18の一価の芳香族炭化水素基を示し、pは0?2の整数であり、OR^(8)が複数ある場合、複数のOR^(8)はたがいに同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない。)
で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物、
の中から選ばれる少なくとも一種である請求項1乃至5のいずれかに記載する変性重合体の製造方法。
(中略)
12.請求項1乃至11のいずれかに記載の製造方法により得られる変性重合体。
13.ムーニー粘度(ML_(1+4)/100℃)が10?150である請求項12記載の変性重合体。
14.請求項12又は13に記載の変性重合体を含むゴム組成物。
(中略)
19.(A)前記変性重合体少なくとも15重量%を含むゴム成分と、その100重量部当たり、(B)無機フィラー及び/又はカーボンブラック10?100重量部を含む請求項14又は15に記載のゴム組成物。」(p.40第1行-p.44下から第5行)

(1-2)引用例発明

上記引用例の摘示事項(x)の記載からみて、上記引用例には、

「共役ジエン化合物を単独重合して、又は共役ジエン化合物と他のモノマーを共重合して得られた重合体であって、有機金属型の活性部位を分子末端に有する重合体の該活性部位に

一般式(II)



(式中、A^(2)は環状三級アミン、非環状三級アミン、ニトリル、ピリジン、スルフィド及びマルチスルフィドの中から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基、R^(4)は単結合又は二価の不活性炭化水素基、R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に炭素数1?20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6?18の一価の芳香族炭化水素基を示し、mは0?2の整数であり、OR^(6)が複数ある場合、複数のOR^(6)はたがいに同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない。)
で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物であるヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させる変性反応を行い、該変性反応の途中及び/又は終了後に反応系に縮合促進剤を加えて反応を行った変性重合体少なくとも15重量%を含むゴム成分と、その100重量部当たり、カーボンブラック10?100重量部を含むゴム組成物。」

の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されているといえる。

(2)対比・判断

(2-1)本願発明と引用例発明との対比

本願発明と引用例発明とを対比する。

引用例発明の「共役ジエン化合物を単独重合して、又は共役ジエン化合物と他のモノマーを共重合して得られた重合体」は,本願発明の「共役ジエン系重合体」に相当する。
引用例発明の「分子末端」は,本願発明の「末端」に相当する。
引用例発明の「一般式(II)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物」は,「A^(2)」が「ニトリル」である場合を包含するものであり,その場合本願発明の「式(I) で表される変性剤」に相当する。
引用例発明の「ヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させる変性反応を行った変性重合体」は,本願発明の「変性剤で変性してなる変性共役ジエン系重合体」に相当する。
引用例発明の「変性重合体少なくとも15重量%を含むゴム成分と、その100重量部当たり、カーボンブラック10?100重量部を含むゴム組成物」は,本願発明の「変性共役ジエン系重合体を含み、更にカーボンブラックを含むゴム組成物」に相当する。

したがって、本願発明と引用例発明の一致点,相違点は、以下のとおりである。

<一致点>

共役ジエン系重合体の末端を、下記式(I):



(式中、R^(1)は、単結合又は二価の不活性炭化水素基であり;R^(2)及びR^(3)は、それぞれ独立に炭素数1?20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6?18の一価の芳香族炭化水素基であり;nは0?2の整数であり;OR^(3)が複数ある場合、各OR^(3)は互いに同一でも異なっていてもよく;但し、分子中に活性プロトン及びオニウム塩は含まない)で表される変性剤で変性してなる、変性共役ジエン系重合体を含み、更にカーボンブラックを含むゴム組成物。

<相違点1>
変性共役ジエン系重合体の変性について、引用例発明は,「該変性反応の途中及び/又は終了後に反応系に縮合促進剤を加えて反応を行」うものであるのに対し,本願発明は、特に特定していない点。

<相違点2>

変性共役ジエン系重合体の分子量について、本願発明は、「数平均分子量が50,000?500,000」であることを発明特定事項としているのに対し、引用例発明は、特に特定していない点。

(2-2)相違点についての判断

そこで、上記相違点について検討する。

相違点1について
本願明細書には変性共役ジエン系重合体の変性について、「本発明の変性共役ジエン系重合体は、活性末端を有する共役ジエン系重合体の該活性末端に上記式(I)で表される変性剤を反応させたもの、即ち、変性反応が一段のみの変性共役ジエン系重合体でもよいし、活性末端を有する共役ジエン系重合体の該活性末端にヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させる第1次変性の後、反応系に縮合促進剤を添加して上記式(I)で表される変性剤を更に反応させる第2次変性を行うことにより製造されたもの、即ち、変性反応が二段階の変性共役ジエン系重合体でもよい。また、活性末端を有する共役ジエン系重合体の該活性末端に上記式(I)で表される変性剤を反応させた後に縮合促進剤で処理したものでもよい。」(段落【0050】)と記載されていることを勘案すると、本願発明は、変性共役ジエン系重合体の変性について、該変性反応の途中及び/又は終了後に反応系に縮合促進剤を加えて反応を行う態様を包含しているといえるから、相違点1は、実質的な相違点ではない。

相違点2について
引用例には数平均分子量が示されていないが、製造例8乃至14に関し重量平均分子量が42.2万?68.4万であることが記載されている(摘示事項(vii)の第1表-1乃至第1表-3の「Total Mw」の欄を参照。)。
ここで、引用例と同様にリチウム化合物を重合開始剤としアニオン重合させることにより共役ジエン系重合体を製造することに際しては、得られる重合体の重量平均分子量と数平均分子量の比は、通常1?4程度であること(例えば、特開2002-144807号公報の特許請求の範囲、特開2002-103912号公報の特許請求の範囲の記載を参照。特に、特開2002-144807号公報の実施例において、Mwが63.0?65.0万であり、Mw/Mnが1.7?1.8であるものが記載されている。)を勘案すると、引用例発明の変性重合体の数平均分子量と本願発明の変性共役ジエン系重合体の数平均分子量は、その範囲が重複一致しているということができる。

したがって、相違点1及び相違点2はいずれも実質的な差異ではなく、本願発明と引用例発明とは同一であると認められる。

(2-3)審判請求人の主張について

審判請求人は、本願発明の効果について、意見書において、
「そして、これら本発明の効果は、実施例にも明確にサポートされており、本発明に従う重合体Dを含む実施例1のカーボンブラック配合ゴム組成物は、低発熱性及び耐摩耗性に優れつつ、十分な破壊強度を維持しており、また、本発明に従う重合体Dを含む実施例2のシリカ配合ゴム組成物も、低発熱性及び耐摩耗性に優れつつ、十分な破壊強度を維持していることが確認されました。」(意見書p.3第11行?第15行)、
「以上の結果から、ヒドロカルビルオキシシラン化合物として、式(I)で表されるニトリル基含有変性剤を用いた場合、引用文献1-3に記載される他のシラン化合物を用いた場合と比較して、カーボンブラック配合ゴム組成物及びシリカ配合ゴム組成物の両方の低発熱性及び耐摩耗性を向上させる効果が優れていることが分かります。そして、数多あるヒドロカルビルオキシシラン化合物の中でも、式(I)で表されるニトリル基含有化合物が、変性剤として特に優れた効果を示すことは、当業者といえども予測できません。
従って、本願請求項1に係る発明は、引用文献1-3に対して予測できない効果を有するため、選択発明としての進歩性を有するものと考えます。」(意見書p.7第26行?第35行)と主張し、
審判請求書においても同様に、
「そして、これら本発明の効果は、実施例にも明確にサポートされており、本願明細書中に開示のように、本発明に従う重合体Dを含む実施例1のカーボンブラック配合ゴム組成物は、低発熱性及び耐摩耗性に優れつつ、十分な破壊強度を維持しており、また、本発明に従う重合体Dを含む実施例2のシリカ配合ゴム組成物も、低発熱性及び耐摩耗性に優れつつ、十分な破壊強度を維持していることが分かります。」(審判請求書p.5第1行?第6行)、
「本発明の変性共役ジエン系重合体は、シリカ配合ゴム組成物においてのみならず、カーボンブラック配合ゴム組成物においても、低発熱性及び耐摩耗性を大幅に向上させることができるという格別の効果を奏します。また、ヒドロカルビルオキシシラン化合物として、式(I)で表されるニトリル基含有変性剤を用いた場合、引用文献2及び3に記載されている他のシラン化合物を用いた場合と比較して、カーボンブラック配合ゴム組成物及びシリカ配合ゴム組成物の両方の低発熱性及び耐摩耗性を向上させる効果が特に優れます。しかしながら、数多あるヒドロカルビルオキシシラン化合物の中でも、式(I)で表されるニトリル基含有化合物が、変性剤として特に優れた効果を示すことは、引用文献2及び3からは、当業者といえども到底予測できません。
従って、本願請求項1に係る発明は、引用文献2及び3に対して予測できない顕著な効果を奏するため、選択発明としての進歩性を有するものと考えます。」(審判請求書p.12第29行?p.13第11行)と、主張している。

審判請求人の本願発明の効果についての主張は、意見書では、本願明細書の発明の詳細な説明の実施例、比較例と意見書で請求人が提出した追加比較例の物性値である低発熱性、耐摩耗性、300%伸張時引張応力に基づいている。
そして、審判請求書でも、意見書で請求人が提出したものと同じ追加比較例と本願明細書の発明の詳細な説明の実施例、比較例とを提示し、また、その物性値に基づき、低発熱性と耐摩耗性をX軸、Y軸とする散布図(審判請求書10頁)を示し、意見書で請求人が本願発明の効果について主張したものと同様の主張をしている。
そこで、これらの実施例、比較例、追加比較例で示されている物性値の内、充填剤としてカーボンブラックを配合させたゴム組成物の場合について、本願明細書の発明の詳細な説明の実施例、比較例と意見書で請求人が提出した追加比較例とに基づいて、CEEOS(本願の実施例の変性剤)、TTC、TEOSIPDIおよびその他の変性剤の物性値を比較する。

まず、請求人が提出した意見書の追加比較例と本願明細書の発明の詳細な説明の実施例、比較例から、変性剤がTTCの場合は、CEEOS(本願実施例の変性剤)の場合より、変性重合体を含むゴム組成物の低発熱性、耐摩耗性の両方が共に優れているし、変性剤がTEOSIPDIの場合は、CEEOS(本願実施例の変性剤)の場合より変性重合体を含むゴム組成物の低発熱性が優れていることが認められ、300%伸張時引張応力は、TTC、TEOSIPDIで変性した変性重合体を含むゴム組成物の方が、CEEOS(本願実施例の変性剤)で変性した場合より優れていることが認められる。
したがって、本願発明において、変性剤として、CEEOSを選択することによって、変性剤TTC、TEOSIPDIと比較して、変性共役ジエン系重合体にカーボンブラックを配合させたゴム組成物の物性値である低発熱性、耐摩耗性、300%伸張時引張応力が優れるとは言えないので、本願発明において顕著な効果を生じるとはいえないから、引用例発明の式(II) で表される変性剤をニトリル基含有化合物に限定し、本願発明の式(I)で表される変性剤とすることにより選択的効果が生じるという、審判請求人の主張には理由がない。

第4.結び

以上のとおり、本願の請求項1を引用する請求項8を引用する請求項10に係る発明は、引用例に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明およびその余の理由について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-07 
結審通知日 2012-09-11 
審決日 2012-09-24 
出願番号 特願2004-44915(P2004-44915)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 騎見高武貞 亜弓  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 渡辺 仁
小野寺 務
発明の名称 変性共役ジエン系重合体、並びにそれを用いたゴム組成物及びタイヤ  
代理人 杉村 憲司  
代理人 冨田 和幸  
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