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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1265652
審判番号 不服2010-29597  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-28 
確定日 2012-11-08 
事件の表示 特願2006-135846「画像検証装置及び制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月 2日出願公開、特開2006-302299〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」と記す。)は、
平成13年12月28日付けの出願である特願2001-401663号を原出願とする特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願として、
平成18年5月15日付けで出願されたものであって、
同年6月14日付けで審査請求がなされると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
平成21年2月18日付けで拒絶理由通知(同年同月24日発送)がなされ、
同年4月27日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
平成22年3月18日付けで拒絶理由通知(同年同月23日発送)がなされ、
同年5月24日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
同年9月17日付けで該平成22年5月24日付けの手続補正書による補正の却下の決定(同年同月28日発送)がなされると共に、
同日付けで拒絶査定(同年同月28日発送)がなされたものである。

本件審判請求は、
平成22年12月28日付けで、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」との請求の趣旨でなされたものであり、
平成24年4月5日付けで拒絶理由通知(同年同月10日発送)がなされ、
同年6月11日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
同年同月18日付けで審尋(同年同月19日発送)がなされ、これに対して
同年8月20日付けで回答書が提出されている。


2.明細書・拒絶理由・手続補正・請求人の主張等

(1)当審拒絶理由通知時の特許請求の範囲及び明細書
上記平成24年4月5日付け拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」と記す。)は、上記平成21年4月27日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び明細書に対してなされたものであり、該特許請求の範囲及び明細書には以下の通りの記載がある。

「 【請求項1】
画像生成装置で生成された画像データを取得することなく、前記画像データが改変されているか否かを検証する画像検証装置であって、
前記画像データのための第1のハッシュ値と、前記画像データが改変されているか否かを検証するのに必要な第1の検証データとを取得する取得手段と、
前記画像生成装置が有する第1の共通情報と同一の第2の共通情報を用いて、前記第1のハッシュ値を第2の検証データに変換する検証データ生成手段と、
前記第1の検証データと、前記第2の検証データとを比較することにより、前記画像データが改変されているか否かの検証を行う検証手段と
を有することを特徴とする画像検証装置。
【請求項2】
前記第1の共通情報および前記第2の共通情報は、共通鍵暗号方式における共通鍵に相当する情報であることを特徴とする請求項1に記載の画像検証装置。
【請求項3】
前記画像検証装置は、ICカードであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像検証装置。
【請求項4】
前記画像検証装置は、マイクロプロセッサ付き記憶媒体であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像検証装置。
【請求項5】
前記画像生成装置は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、スキャナ、ファクシミリ装置、複写機のいずれかであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像検証装置。」

「【発明の名称】画像検証装置」

「【背景技術】
【0002】
近年、被写体の光学像をデジタル化して記憶するデジタルカメラが実用化されている。
デジタルカメラで撮影された画像データは、パーソナルコンピュータに取り込むことが簡単にできる反面、パーソナルコンピュータ上で簡単に改変することができるという問題があった。そのため、デジタルカメラで撮影された画像データの信頼性は、銀塩写真よりも低く、証拠能力が乏しいという問題があった。そこで、近年、デジタルカメラで撮影された画像データにデジタル署名を付加する機能を備えたデジタルカメラシステムが提案されている。従来のデジタルカメラシステムは、例えば、米国特許第5,499,294、特開平9-200730号に開示されている。」

「【0004】
デジタル署名の生成には、通常、RSA暗号などの公開鍵暗号方式が利用される。しかしながら、RSA暗号などの公開鍵暗号方式は、べき乗演算および剰余演算が必要であるために高速な処理が難しく、DESなどの共通鍵暗号方式に比べて数百倍から数千倍の処理時間が必要である。そのため、従来のデジタルカメラの限られた演算リソースでは、デジタル署名の生成が大変難しいという問題があった。デジタルカメラの演算リソースの性能を大幅に向上させ、デジタル署名の生成を容易に行えるようにする方法もあるが、このような方法ではデジタルカメラ本体にかかるコストが非常に増大してしまうため好ましくない。
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、デジタルカメラなどの画像生成装置のコストを抑えつつ、その装置で生成された画像データが改変されているか否かを検証できるようにする画像検証装置を提供することを目的とする。」

「【0005】
本発明に係る画像検証装置は、例えば、画像生成装置で生成された画像データを取得することなく、前記画像データが改変されているか否かを検証する画像検証装置であって、前記画像データのための第1のハッシュ値と、前記画像データが改変されているか否かを検証するのに必要な第1の検証データとを取得する取得手段と、前記画像生成装置が有する第1の共通情報と同一の第2の共通情報を用いて、前記第1のハッシュ値を第2の検証データに変換する検証データ生成手段と、前記第1の検証データと、前記第2の検証データとを比較することにより、前記画像データが改変されているか否かの検証を行う検証手段とを有することを特徴とする。」

「【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、デジタルカメラなどの画像生成装置のコストを抑えつつ、その装置で生成された画像データが改変されているか否かを検証することができる。」

「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明に好適な実施の形態を説明する。

<中略>

【0027】
図6は、本実施の形態における画像検証システムの処理手順を説明する図である。
ステップS601:画像生成部201は、ユーザからの指示に従って、被写体の画像データである画像データIを生成する。
ステップS602:演算部204は、ハッシュ関数HF1を用いて、画像データIのハッシュ値H11を生成する。
【0028】
ステップS603:また、演算部204は、メモリ203から得た共通情報Kcを用いて、ハッシュ値H11を第1検証データV11に変換する。この第1検証データV11は、画像データIのMACに相当するデータである。
ステップS604:画像ファイル生成部206は、画像データI、ハッシュ値H11、第1検証データV11、画像データIの付加情報、画像生成装置10の固有IDなどのデータを含む第1検証データ付き画像ファイルIF1を生成する。メディア制御部208は、画像ファイルIF1をリムーバブルメディア207に書き込む。
【0029】
ステップS605:ユーザは、リムーバブルメディア207が記憶する画像ファイルIF1をリムーバブルメディア207またはインタフェース部209を介して情報処理装置20に入力する。リムーバブルメディア207を介して入力する場合、メディア制御部301は、リムーバブルメディア207から画像ファイルIF1を読み出し、それを記憶部302に格納する。一方、インタフェース部209を介して入力する場合、インタフェース部309は、画像生成装置10から情報処理装置20に送信された画像ファイルIF1を受信し、それを記憶部302に格納する。
【0030】
ステップS606:第1検証データ付き画像ファイルを第1検証装置30に検証させる場合、インタフェース部304は、ハッシュ値H11、第1検証データV11および固有IDを第1検証装置30に送信する。インタフェース部401は、これらのデータを受信し、記憶部402に記憶する。
ステップS607:第1演算部404は、メモリ403のテーブルT1を参照し、画像ファイルIF1から得た固有IDに対応する共通情報Kcを取得する。
【0031】
ステップS608:第1演算部404は、メモリ403から得た共通情報Kcを用いて、ハッシュ値H11を第1検証データV12に変換する。
ステップS609:画像検証部405は、第1検証データV11と第1検証データV12とを比較し、画像データIが改変されているか否かの検証を行う。
【0032】
2つの第1検証データが一致した場合(つまり、画像データの完全性を検証できた場合)、画像検証部405は、画像データIが改変されていないものであることを検出する。また、画像検証部405は、画像データIが画像生成装置10で生成されたものであることを検出する。そして、第1検証装置30は、画像データIが改変されていないことを情報処理装置20に通知し、第2検証データの生成を開始する。
【0033】
一方、2つの第1検証データが一致しなかった場合(つまり、画像データの完全性を検証できなかった場合)、画像検証部405は、画像データIが改変されているものであることを検出する。そして、第1検証装置30は、画像データIが改変されていることを情報処理装置20に通知し、第2検証データの生成を禁止する。つまり、第1検証装置30はステップS610以下の処理を禁止する。

<中略>

【0039】
以上説明したように、本実施の形態における画像検証システムによれば、画像生成装置10で生成された画像データが改変されているか否かを確実に検出することができる。
また、本実施の形態における画像検証システムによれば、画像生成装置10の演算リソースの性能を大幅に向上させる必要がないので、画像生成装置10にかかるコストを低減することができる。
【0040】
また、本実施の形態における画像検証システムの第1検証装置30によれば、画像生成装置10の固有IDから得られた共通情報Kcを用いて画像データが改変されているか否かを検証するので、画像データが画像生成装置10で生成されたものであるか否かを確認することができる。
また、本実施の形態における画像検証システムの第2検証装置40によれば、画像生成装置10の固有IDから得られた秘密情報Ksおよび公開情報Kpを用いて画像データが改変されているか否かを検証するので、画像データが画像生成装置10で生成されたものであるか否かを確認することができる。
また、本実施の形態における画像検証システムによれば、第1検証装置30をICカード(または、マイクロプロセッサ付き記憶媒体)、または、情報処理装置20をクライアントとするサーバコンピュータで実現することにより、共通情報Kcおよび秘密情報Ksの解析および漏洩を困難にし、これらのデータの安全性を向上させることができる。
【0041】
また、本実施の形態における画像検証システムによれば、情報処理装置20から第1検証装置30に画像データではなく、同画像データのハッシュ値(画像データよりもデータサイズが非常に小さい)を送信するので、情報処理装置20と第1検証装置30との間のトラフィックを軽減でき、第1検証装置30で必要なメモリサイズを小さくでき、第1検証装置30における処理時間を大幅に短縮することができる。
また、本実施の形態における画像検証システムによれば、第2検証データ付き画像ファイルの生成を第1検証装置30内ではなく、情報処理装置20内で行うので、第1検証装置30に係る負荷を軽減することができ、第1検証装置30に係るコストを低減することができる。
【0042】
本実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD-ROM等の記録媒体又はかかるプログラムを伝送するインターネット等の伝送媒体も本発明の実施形態として適用することができる。上記のプログラム、記録媒体及び伝送媒体は、本発明の範疇に含まれる。記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
なお、上記の各実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらにより本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。」


(2)当審拒絶理由
上記当審拒絶理由通知で通知された理由(以下「当審拒絶理由」と記す。)は以下の通りである。

『この出願は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。


本願特許請求の範囲の各請求項記載の発明の構成、本願発明の詳細な説明に記載の発明の構成は、所期の課題を解決することも、所望の効果を奏することも出来ないものであり、請求項1記載の「画像生成装置で生成された画像データを取得することなく、前記画像データが改変されているか否かを検証する」との発明特定事項を実現することも不可能なものである。
(本願明細書の記載によれば、本願の発明が解決しようとする課題は、その段落【0004】記載の如く「デジタルカメラなどの画像生成装置のコストを抑えつつ、その装置で生成された画像データが改変されているか否かを検証できるようにする」ことであり、また、その効果は同段落【0010】記載の「デジタルカメラなどの画像生成装置のコストを抑えつつ、その装置で生成された画像データが改変されているか否かを検証することができる」と言うものである。
そして、本願明細書の段落【0005】には、該課題を解決するための手段が、段落【0011】?【0042】にはその実施の形態が開示されている。
そこで、当該実施の形態の構成で、当該課題を解決し同効果を奏し得るものであるか否かについて検討する。
当該実施の形態のステップ「S609」の「検証」のステップは、「第1検証データV11」と「第1検証データV12」を比較するものであるところ、該「第1検証データV11」はステップ「S605」で「情報処理装置20に入力」された「第1検証データ」であり、「第1検証データV12」はS605で「情報処理装置20に入力」された「ハッシュ値H11」を「共通情報Kc」を用いて変換したものである。
したがって、該ステップ「S609」の「検証」では「画像生成装置」が持つ「共通情報Kc」と「第1検証装置」が持つ「共通情報Kc」とが同一であることや、「第1検証データV11」や「ハッシュ値H11」の改変の有無を検出し得るものではあるものの、「画像データI」の改変を検証することは不可能である。
以上のことから、段落【0011】?【0042】に記載の実施の形態は、上記課題を解決することも、上記効果を奏することも不可能なものであり、このため、請求項1記載の「画像生成装置で生成された画像データを取得することなく、前記画像データが改変されているか否かを検証する」との発明特定事項を実現することも不可能なものであると言える。
本願明細書の段落【0005】記載の構成も本願特許請求の範囲の各請求項に係る発明の構成も、該実施の形態を含むものであり、同様に上記課題を解決することも、上記効果を奏することも、上記発明特定事項を実現することも不可能なものである。)
また、このため、上記発明特定事項は請求項1?5に記載の他の発明特定事項と矛盾するものであるとも言える。
したがって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?5に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないもの、または、請求項1?5に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものであり、本願の発明の詳細な説明は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、このため、請求項1?5に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されたものでもないので、本願特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
さらに、このため、請求項1?5に係る発明は、その技術的意味が皆目不明のものであるとともに、互いに矛盾する発明特定事項を含むものでもあるから、到底明確なものとは言えず、本願特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

なお、この出願は、請求項1?5に係る発明についての発明の詳細な説明が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないので、請求項1?5に係る発明についての新規性進歩性等の特許要件の審理はしていない。』


(3)本件手続補正
上記平成24年6月11日付けの手続補正書でなされた補正(以下「本件手続補正」と記す。)は特許請求の範囲、および、発明の名称、発明の詳細な説明の段落【0001】【0004】【0005】【0010】を以下の通りに補正するものである。

「 【請求項1】
画像生成装置で生成された画像データが改変されていないことを検証するための画像検証装置であって、
前記画像データのハッシュ値である第1のハッシュ値と、前記画像データが改変されているか否かを検証するのに用いられる第1の検証データとを受信する受信手段と、
前記画像生成装置が有する第1の共通情報と同一の第2の共通情報を用いて前記第1のハッシュ値を第2の検証データに変換する検証データ生成手段と、
前記第1の検証データと、前記第2の検証データとを比較することにより、前記画像データが改変されていないことを検証するための検証手段と
を有することを特徴とする画像検証装置。
【請求項2】
前記第1の共通情報および前記第2の共通情報は、共通鍵暗号方式における共通鍵に相当する情報であることを特徴とする請求項1に記載の画像検証装置。
【請求項3】
前記画像検証装置は、ICカードであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像検証装置。
【請求項4】
前記画像検証装置は、マイクロプロセッサ付き記憶媒体であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像検証装置。
【請求項5】
前記画像生成装置は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像検証装置。
【請求項6】
前記画像生成装置は、スキャナ、ファクシミリ装置、複写機のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像検証装置。
【請求項7】
前記受信手段は、前記第1のハッシュ値と前記第1の検証データとを情報処理装置から受信することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の画像検証装置。
【請求項8】
画像生成装置で生成された画像データが改変されていないことを検証するための画像検証装置を制御するための制御方法であって、
前記画像データのハッシュ値である第1のハッシュ値と、前記画像データが改変されているか否かを検証するのに用いられる第1の検証データとを受信するための処理を前記画像検証装置に行わせるためのステップと、
前記画像生成装置が有する第1の共通情報と同一の第2の共通情報を用いて前記第1のハッシュ値を第2の検証データに変換するための処理を前記画像検証装置に行わせるためのステップと、
前記第1の検証データと、前記第2の検証データとを比較することにより、前記画像データが改変されていないことを検証するための処理を前記画像検証装置に行わせるためのステップと
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項9】
前記第1の共通情報および前記第2の共通情報は、共通鍵暗号方式における共通鍵に相当する情報であることを特徴とする請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記画像検証装置は、ICカードであることを特徴とする請求項8または9に記載の制御方法。
【請求項11】
前記画像検証装置は、マイクロプロセッサ付き記憶媒体であることを特徴とする請求項8または9に記載の制御方法。
【請求項12】
前記画像生成装置は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラのうちのいずれかであることを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項13】
前記画像生成装置は、スキャナ、ファクシミリ装置、複写機のうちのいずれかであることを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項14】
前記第1のハッシュ値と前記第1の検証データとを受信するための処理は、前記第1のハッシュ値と前記第1の検証データとを情報処理装置から受信するための処理であることを特徴とする請求項8から13のいずれか1項に記載の制御方法。」

「【発明の名称】画像検証装置及び制御方法」

「【0001】
本発明は、デジタルカメラなどの画像生成装置で生成された画像データが改変されていないことを検証するための画像検証装置等に関する。」

「【0004】
デジタル署名の生成には、通常、RSA暗号などの公開鍵暗号方式が利用される。しかしながら、RSA暗号などの公開鍵暗号方式は、べき乗演算および剰余演算が必要であるために高速な処理が難しく、DESなどの共通鍵暗号方式に比べて数百倍から数千倍の処理時間が必要である。そのため、従来のデジタルカメラの限られた演算リソースでは、デジタル署名の生成が大変難しいという問題があった。デジタルカメラの演算リソースの性能を大幅に向上させ、デジタル署名の生成を容易に行えるようにする方法もあるが、このような方法ではデジタルカメラ本体にかかるコストが非常に増大してしまうため好ましくない。
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、デジタルカメラなどの画像生成装置のコストを抑えつつ、その装置で生成された画像データが改変されていないことを検証できる画像検証装置を提供することを目的とする。」

「【0005】
本発明に係る画像検証装置は、画像生成装置で生成された画像データが改変されていないことを検証するための画像検証装置であって、前記画像データのハッシュ値である第1のハッシュ値と、前記画像データが改変されているか否かを検証するのに用いられる第1の検証データとを受信する受信手段と、前記画像生成装置が有する第1の共通情報と同一の第2の共通情報を用いて前記第1のハッシュ値を第2の検証データに変換する検証データ生成手段と、前記第1の検証データと、前記第2の検証データとを比較することにより、前記画像データが改変されていないことを検証するための検証手段とを有することを特徴とする。
本発明に係る制御方法は、画像生成装置で生成された画像データが改変されていないことを検証するための画像検証装置を制御するための制御方法であって、前記画像データのハッシュ値である第1のハッシュ値と、前記画像データが改変されているか否かを検証するのに用いられる第1の検証データとを受信するための処理を前記画像検証装置に行わせるためのステップと、前記画像生成装置が有する第1の共通情報と同一の第2の共通情報を用いて前記第1のハッシュ値を第2の検証データに変換するための処理を前記画像検証装置に行わせるためのステップと、前記第1の検証データと、前記第2の検証データとを比較することにより、前記画像データが改変されていないことを検証するための処理を前記画像検証装置に行わせるためのステップとを有することを特徴とする。」

「【0010】
本発明によれば、デジタルカメラなどの画像生成装置のコストを抑えつつ、その装置で生成された画像データが改変されていないことを検証することができる。」

(4)当審拒絶理由に対する意見
上記平成24年6月11日付けの意見書における意見の内容は概略以下の通りである。

『【意見の内容】
(1)拒絶理由の内容
平成24年 4月 5日(起案日)付け拒絶理由通知書に記載された理由は、以下のとおりです。

<中略>

(2)本願発明が特許されるべき理由
(2-1)本願発明の説明
本願発明は、本意見書と同時提出の手続補正書により補正した特許請求の範囲に記載されているとおりであり、同手続補正書により補正した特許請求の範囲は、以下のとおりです。

<中略>

(2-2)現請求項と旧請求項との関係
現請求項(補正後の請求項)と旧請求項(補正前の請求項)との関係は、以下のとおりです。
現請求項 旧請求項
1 1
2 2
3 3
4 4
5 5
6?14 なし
現請求項6?14は、補正により追加された請求項です。
(2-3)補正事項の説明
請求項1についてした補正は、例えば、出願当初の明細書の段落[0027]?[0030]に記載した事項に基づきます。
請求項5及び6についてした補正は、例えば、出願当初の明細書の段落[0011]に記載した事項に基づきます。
請求項7についてした補正は、例えば、出願当初の明細書の段落[0029]及び[0030]に記載した事項に基づきます。
請求項8についてした補正は、例えば、出願当初の明細書の段落[0027]?[0031]に記載した事項に基づきます。
請求項9についてした補正は、例えば、出願当初の明細書の段落[0015]に記載した事項に基づきます。
請求項10及び11についてした補正は、例えば、出願当初の明細書の段落[0013]に記載した事項に基づきます。
請求項12及び13についてした補正は、例えば、出願当初の明細書の段落[0011]に記載した事項に基づきます。
請求項14についてした補正は、例えば、出願当初の明細書の段落[0029]及び[0030]に記載した事項に基づきます。
発明の名称、段落[0001]及び[0005]についてした補正は、補正後の特許請求の範囲と整合させるためにした形式的な補正です。
したがって、本願の特許請求の範囲及び明細書についてした補正は、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲を超えるものではありません。
(2-4)ご指摘事項に対する対処
請求項1に記載の「画像生成装置で生成された画像データを取得することなく、前記画像データが改変されているか否かを検証する」を、「画像生成装置で生成された画像データが改変されていないことを検証する」に書き改める補正をしました。
また、段落[0004]に記載の「デジタルカメラなどの画像生成装置のコストを抑えつつ、その装置で生成された画像データが改変されているか否かを検証できるようにする」を、「デジタルカメラなどの画像生成装置のコストを抑えつつ、その装置で生成された画像データが改変されていないことを検証できるようにする」書き改める補正をしました。
さらに、段落[0010]に記載の「デジタルカメラなどの画像生成装置のコストを抑えつつ、その装置で生成された画像データが改変されているか否かを検証することができる」を、「デジタルカメラなどの画像生成装置のコストを抑えつつ、その装置で生成された画像データが改変されていないことを検証できる」書き改める補正をしました。
以上の補正により、ご指摘の拒絶理由は解消したと思料いたします。
(3)むすび
以上の説明から明らかなように、ご指摘の拒絶理由は解消したと思料します。
よって、「原査定を取り消す、この出願の発明はこれを特許すべきものとする。」との審決を賜りますようお願い申し上げます。』


(5)審尋
上記平成24年6月18日付けの審尋は概略以下の通りである。

『この審判事件について、下記の点に対する回答書を、この審尋の発送の日から60日以内に提出して下さい。


平成24年6月11日付けの意見書における、同日付けの手続き補正によって同年4月5日付けの拒絶理由通知書で通知した拒絶理由が解消される旨の主張の根拠及び理由。

(該意見書では【意見の内容】の(2-4)において、補正の内容の説明に続けて「以上の補正により、ご指摘の拒絶理由は解消したと思料いたします。」との記載があるだけで、なぜ該手続補正によって、該拒絶理由が解消されるのか(特に「画像データ」を用いずに「第1のハッシュ値」と「第1の検証データ」の整合性を検証するだけであるところの、段落【0011】?【0042】に記載の実施の形態で、なぜ(如何なる原理、因果関係によって)「画像データが改変されていないことを検証」できるのか)を合理的に説明する記載が全く見当たらない。)』


(6)回答
上記平成24年8月20日付けの回答書による回答の内容は概略以下の通りである。
『【回答の内容】
(1)審尋におけるご指摘事項について

<中略>

(2)ご指摘事項に対する回答
審判官殿は、平成24年 6月18日(起案日)付け審尋において、「特に「画像データ」を用いずに「第1のハッシュ値」と「第1の検証データ」の整合性を検証するだけであるところの、段落[0011]?[0042]に記載の実施の形態で、なぜ(如何なる原理、因果関係によって)「画像データが改変されていないことを検証」できるのか)を合理的に説明する記載が全く見当たらない。」とご認定されておりますので、この点についてご説明いたします。

まず、本実施の形態では、「画像生成装置10」内で「ハッシュ値H11」(「第1のハッシュ値」に相当)から生成された「第1検証データV11」(「第1の検証データ」に相当)と「第1検証装置30」内で「ハッシュ値H11」から生成された「第1検証データV12」(「第2の検証データ」に相当)とを比較し、「第1検証データV11」及び「第1検証データV12」が一致した場合は、「画像データI」(「画像データ」に相当)を改変されていないものとして取り扱い、「第1検証データV11」及び「第1検証データV12」が一致しなかった場合は、「画像データI」を改変されているものとして取り扱う構成を採用しております(「ステップS609」、段落[0031]?[0033]参照)。
このような取り扱いをするためには、その前提として、少なくとも「データI」から「ハッシュ値H11」が生成されてから「第1検証データV11」と「第1検証データV12」との比較結果が得られるまでの間に「画像データI」、「ハッシュ値H11」及び「第1検証データV11」に対して意図的な改変が行われないようにしておくことが要求されます。
この要求が満たされれば、「第1検証データV11」及び「第1検証データV12」の少なくとも一方に対して何らかの改変が生じていない限り、「第1検証データV11」と「第1検証データV12」とは一致することになり、「画像データI」を改変されていないものとして取り扱うことができます。

ところが、「第1検証データV11」及び「第1検証データV12」の少なくとも一方に対する改変が、例えば、伝送上のエラーや処理上のエラー等により意図しない形で発生した場合、「第1検証データV11」と「第1検証データV12」とは一致しないことになります。この場合のように、「画像データI」のデータサイズよりも比較的小さいデータサイズの「第1検証データV11」及び「第1検証データV12」に対して意図しない形で改変が生じた場合、「画像データI」に対しても伝送上のエラーや処理上のエラー等による意図しない形での改変が生じている可能性が高いため、本実施の形態では、「画像データI」を改変されているものとして取り扱うことにしています。

したがって、少なくとも「画像データI」から「ハッシュ値H11」が生成されてから「第1検証データV11」と「第1検証データV12」との比較結果が得られるまでの間に「画像データI」、「ハッシュ値H11」及び「第1検証データV11」に対して意図的な改変が行われないようにしておくという前提があれば、「ハッシュ値H11」及び「第1検証データV11」を用いることで「画像データI」が改変されているか否かを上述のように判定することができますので、「画像データI」の改変を検証することは不可能であるとまでは言えないと思料いたします。
そして、この前提は、例えば、「画像データI」、「ハッシュ値H11」及び「第1検証データV11」の「画像生成装置10」から「情報処理装置20」への伝送をセキュアな伝送路で行い、「ハッシュ値H11」及び「第1検証データV11」の「情報処理装置20」から「第1検証装置30」への伝送をセキュアな伝送路で行い、「情報処理装置20」内の「画像データI」、「ハッシュ値H11」及び「第1検証データV11」の管理を耐タンパー性のある回路で行うことにより実現することができ、これらを実現するための技術は従来から知られている技術により十分に実現することができます。

(3)むすび
以上の説明から明らかなように、審尋におけるご指摘事項は解消したと思料します。
よって、「原査定を取り消す、この出願の発明はこれを特許すべきものとする。」との審決を賜りますようお願い申し上げます。』


3.判断
(1)本件手続補正は上記2.(3)記載の通りのものであり、これによって上記当審拒絶理由が解消されたか否かについて以下に検討する。

(2)そこで、まず、明細書の段落【0011】?【0042】に記載の実施の形態の構成で、本件手続補正後の段落【0004】記載の「デジタルカメラなどの画像生成装置のコストを抑えつつ、その装置で生成された画像データが改変されていないことを検証できる画像検証装置を提供すること」との課題を解決し、同段落【0010】記載の「デジタルカメラなどの画像生成装置のコストを抑えつつ、その装置で生成された画像データが改変されていないことを検証することができる。」との効果を奏し得るものであるか否かについて検討する。
当該実施の形態のステップ「S609」の「検証」のステップは、「第1検証データV11」と「第1検証データV12」を比較するものであるところ、該「第1検証データV11」はステップ「S605」で「情報処理装置20に入力」された「第1検証データ」であり、「第1検証データV12」はS605で「情報処理装置20に入力」された「ハッシュ値H11」を「共通情報Kc」を用いて変換したものである。
すなわち、当該実施の形態における「検証」は「画像データI」を全く用いておらず、ステップ「S605」で「情報処理装置20に入力」がされる前に「画像データI」に改変が加えられたとしても、「第1検証データV11」と「第1検証データV12」には該改変の影響が及ぶものではないことは明らかである。
したがって、該ステップ「S609」の「検証」における「比較」の結果が「一致」になったとしても、これは「画像生成装置」が持つ「共通情報Kc」と「第1検証装置」が持つ「共通情報Kc」とが同一であることや、「第1検証データV11」や「ハッシュ値H11」に改変がなかったことを示すものではあるものの、「画像データI」が改変されていないことを示すものではないことは明らかである。
以上のことから、依然として、段落【0011】?【0042】に記載の実施の形態の構成は、本願明細書記載の課題を解決することも、同効果を奏することも不可能なものである。

(3)本願特許請求の範囲の請求項1の「前記画像データのハッシュ値である第1のハッシュ値と、前記画像データが改変されているか否かを検証するのに用いられる第1の検証データとを受信する受信手段と、」「前記画像生成装置が有する第1の共通情報と同一の第2の共通情報を用いて前記第1のハッシュ値を第2の検証データに変換する検証データ生成手段と、」「前記第1の検証データと、前記第2の検証データとを比較することにより、前記画像データが改変されていないことを検証するための検証手段と」「を有する」との発明特定事項、及び同請求項8の「前記画像データのハッシュ値である第1のハッシュ値と、前記画像データが改変されているか否かを検証するのに用いられる第1の検証データとを受信するための処理を前記画像検証装置に行わせるためのステップと、」「前記画像生成装置が有する第1の共通情報と同一の第2の共通情報を用いて前記第1のハッシュ値を第2の検証データに変換するための処理を前記画像検証装置に行わせるためのステップと、」「前記第1の検証データと、前記第2の検証データとを比較することにより、前記画像データが改変されていないことを検証するための処理を前記画像検証装置に行わせるためのステップと」「を有する」との発明特定事項(以下、これらを「構成に係る発明特定事項」と記す。)は上記実施の形態の構成を表す発明特定事項にほかならないものであり、請求項1、8に係る発明は、該構成に係る発明特定事項の他に「画像生成装置で生成された画像データが改変されていないことを検証する」との発明特定事項(以下、「課題に係る発明特定事項」と記す。)を満たす、すなわち上記課題を解決し上記効果を奏するものでなければならないものであるところ、上記(2)の通り該実施の形態の構成では該課題を解決し該効果を奏することは不可能であるから、本願の発明の詳細な説明の記載を基に本願特許請求の範囲の請求項1、8に係る発明及びこれに従属する請求項2?7、9?14に係る発明を実現することは、当業者と言えども不可能である。
したがって、この出願の発明の詳細な説明は、依然として、当業者が請求項1?14に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないもの(実施可能要件違反)である。

(4)また、このため、上記構成に係る発明特定事項の技術上の意義は、本願明細書中で説明される課題や効果の説明からは理解不可能なものであるとも言えるので、本願の発明の詳細な説明は、依然として、本願の特許請求の範囲の請求項1?14に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないもの(委任省令要件違反)であるとも言える。

(5)また、このため、本願の請求項1?14に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されたものではないとも言えるものであり、本願特許請求の範囲の記載は、依然として、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないもの(サポート要件違反)であるとも言える。

(6)また、さらに、本願の請求項1?14の記載は、上記課題に係る発明特定事項と、該事項を達成不可能なものであるところの上記構成に係る発明特定事項とを含むものであるので、請求項1?14に係る発明は互いに矛盾する発明特定事項を含むものであり、本願特許請求の範囲の記載は、依然として、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないもの(明確性要件違反)であるとも言える。

(7)したがって、本件手続補正によって当審拒絶理由が解消されたとすることはできない。


4.回答書について
(1)上記2.(5)の審尋に対し、請求人は上記2.(6)の回答をしているのでこれについて検討する。

(2)本願明細書を詳細に検討しても、請求人が上記回答書において前提とする『少なくとも「データI」から「ハッシュ値H11」が生成されてから「第1検証データV11」と「第1検証データV12」との比較結果が得られるまでの間に「画像データI」、「ハッシュ値H11」及び「第1検証データV11」に対して意図的な改変が行われないようにしておくこと』や「改変」が「伝送上のエラーや処理上のエラー等による意図しない形で発生した」ものであることを示唆する記載は全く見当たらない。
しかも、本願明細書においては、段落【0002】の「デジタルカメラで撮影された画像データは、パーソナルコンピュータに取り込むことが簡単にできる反面、パーソナルコンピュータ上で簡単に改変することができるという問題があった。そのため、デジタルカメラで撮影された画像データの信頼性は、銀塩写真よりも低く、証拠能力が乏しいという問題があった。そこで、近年、デジタルカメラで撮影された画像データにデジタル署名を付加する機能を備えたデジタルカメラシステムが提案されている。」との従来技術の説明に続き、段落【0004】で「従来のデジタルカメラの限られた演算リソースでは、デジタル署名の生成が大変難しいという問題があった。」との従来技術の問題点を提示し、これに続いて「デジタルカメラなどの画像生成装置のコストを抑えつつ、その装置で生成された画像データが改変されていないことを検証できる画像検証装置を提供することを目的とする。」との課題の開示をしているのであるから、本願明細書において説明される「本発明」における「画像データ」は「パーソナルコンピュータ上で簡単に改変することができる」ものであることを前提としており、検証の対象となる「改変」もこのような「パーソナルコンピュータ上で簡単に」できる「改変」を意味するものであることは明らかであり、「意図的な改変が行われないようにしておくこと」や「改変」が「伝送上のエラーや処理上のエラー等による意図しない形で発生した」ものである旨の説明は、明らかに発明の詳細な説明と矛盾する説明である。
したがって、回答書の説明は本願特許請求の範囲および明細書の記載に基づかない失当なものであり、これを参酌しても、本件手続補正によって当審拒絶理由が解消されたと認めることは到底できない。

(3)なお、仮に本願明細書における「改変」が「伝送上のエラーや処理上のエラー等による意図しない形で発生した」ものである旨が、本願の発明の詳細な説明中に明示されたと仮定しても、その検出を可能とするための『少なくとも「データI」から「ハッシュ値H11」が生成されてから「第1検証データV11」と「第1検証データV12」との比較結果が得られるまでの間に「画像データI」、「ハッシュ値H11」及び「第1検証データV11」に対して意図的な改変が行われないようにしておく』との前提構成は明細書にも特許請求の範囲にも記載されていないのであるから、この場合でも上記実施可能要件違反やサポート要件違反が解消されるわけではない。
さらに、仮に本願明細書における「改変」が「伝送上のエラーや処理上のエラー等による意図しない形で発生した」ものを意味し、上記「意図的な改変が行われない」ものを前提としているものである旨が、本願の発明の詳細な説明や特許請求の範囲に明示されたと仮定すると、ハッシュや暗号化を採用すると言う構成について、これがなぜ必要なのかといった技術上の意義が明確に把握できないものとなり(例えば、伝送上のエラーや処理上のエラーの検出のための手法としては、従来より誤り訂正符号を用いた手法が周知慣用であるところ、このような従来の手法の問題点の説明も、ハッシュや暗号化を採用することがこのような従来の手法と比較して如何なる有利な作用効果が奏されるのか等の説明も、本願発明の詳細な説明には皆無である。)、この場合でも上記委任省令要件違反が解消されるわけではない。
さらに、上記「意図的な改変が行われない」ものを前提としていることも、「改変」が「伝送上のエラーや処理上のエラー等による意図しない形で発生した」ものを意味することは、本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲・明細書または図面に記載の範囲内のものではないので、これらを特許請求の範囲や明細書に反映させる補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反する補正となることは明らかである。
したがって、回答書の回答の内容を本願の明細書・特許請求の範囲に反映する補正がなされたとしても、これによって拒絶の理由が無くなるわけではないので、このような補正の機会を設けることに益はない。


5.むすび
以上のとおり、本願の発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第4項及び第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていないので、本願について原査定を取り消し特許をすべきものとすることはできない。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-30 
結審通知日 2012-09-04 
審決日 2012-09-18 
出願番号 特願2006-135846(P2006-135846)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G06F)
P 1 8・ 536- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 重徳  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 田中 秀人
酒井 伸芳
発明の名称 画像検証装置及び制御方法  
代理人 國分 孝悦  

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