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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  B41J
管理番号 1265732
審判番号 無効2012-800017  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-03-01 
確定日 2012-10-18 
事件の表示 上記当事者間の特許第3793216号発明「液体インク収納容器、液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 本件特許第3793216号に係る手続の概要

本件特許第3793216号に係る手続の経緯は概略以下のとおりである。
平成16年11月15日 特願2004-330952号出願
(優先権主張日 平成15年12月26日、平成
16年10月22日)
平成18年 4月14日 本件特許第3793216号の設定登録(請求項
1?16)
平成21年 1月 9日 株式会社オーム電機による特許第3793216
号の請求項1に係る発明についての特許無効審判
請求(無効2009-800006号)
平成21年 1月 9日 フューチャーウェルホールディングリミテッドに
よる特許第3793216号の請求項1に係る発
明についての特許無効審判請求(無効2009-
800007号)
平成21年 1月28日 無効2009-800006号及び無効2009
(起案日) -800007号の併合
平成21年 4月 6日 訂正請求(無効2009-800006号及び無
効2009-800007号に対して)
平成21年 5月 8日 田口哲也他2名による特許第3793216号
明の特許請求の範囲の請求項1及び請求項5に記
載された発明についての特許無効審判請求(無効
2009-800091号)
平成21年 5月19日 株式会社プレジール他4名による特許第3793
216号の請求項1?16に係る発明についての
特許無効審判請求(無効2009-800101
号)
平成21年 5月29日 株式会社オーム電機による特許第3793216
号の請求項5に係る発明についての特許無効審判
請求(無効2009-800113号)
平成21年 5月29日 フューチャーウェルホールディングリミテッドに
よる特許第3793216号の請求項5に係る発
明についての特許無効審判請求(無効2009-
800114号)
平成21年 6月16日 無効2009-800113号及び無効2009
(起案日) -800114号の併合
平成21年 6月25日 無効2009-800006号及び無効2009
(起案日) -800007号の併合分離
平成21年 6月30日 エステー産業株式会社による特許第379321
6号の請求項1及び5に係る発明についての特許
無効審判請求(無効2009-800141号)
平成21年 7月27日 訂正請求(無効2009-800091号に対し
て)
平成21年 8月 3日 訂正請求(無効2009-800101号に対し
て、以下「101号訂正」という。)
平成21年 8月18日 訂正請求(無効2009-800113号及び無
効2009-800114号に対して)
平成21年 8月24日 無効2009-800006号につき「特許第3
(起案日) 793216号の請求項1に係る発明についての
特許を無効とする。」との審決及び無効2009
-800007号につき「特許第3793216
号の請求項1に係る発明についての特許を無効と
する。」との審決(以下、まとめて「第1審決」
という。平成21年4月6日付けの訂正は認めて
いない。)
平成21年 9月 3日 第1審決の送達(各請求人及び被請求人)
平成21年 9月14日 無効2009-800006号についての審決取
消訴訟(平成21年(行ケ)第10275号)
平成21年 9月14日 無効2009-800007号についての審決取
消訴訟(平成21年(行ケ)第10276号)
平成21年 9月15日 特許第3793216号についての訂正審判請求
(訂正2009-390110号)
平成21年 9月24日 訂正請求(無効2009-800141号に対し
て)
平成21年11月 5日 無効2009-800007号の第1審決につい
ての差戻し決定(平成21年(行ケ)第1027
6号)
平成21年11月 6日 無効2009-800006号の第1審決につい
ての差戻し決定(平成21年(行ケ)第1027
5号)
平成21年12月17日 無効2009-800091号及び無効2009
(起案日) -800141号事件の手続中止
平成21年12月21日 訂正審判請求の取下げ(訂正2009-3901
10号)
平成21年12月25日 無効2009-800006号、無効2009-
800007号、無効2009-800113号
及び無効2009-800114号の無効審判請
求の取下げ
平成22年 1月26日 無効2009-800101号につき「訂正を認
(起案日) める。特許3793216号の請求項1ないし7
に係る特許を無効とする。」との審決(以下「第
2審決」という。)
平成22年 2月 5日 第2審決の謄本の送達(各請求人及び被請求人)

(第2審決で認めた101号訂正のうち、特許請求の範囲について、請求項3、請求項4、請求項6ないし10、請求項14、請求項15を削除する訂正、及び、明細書について、段落0014ないし段落0016の記載を削除する訂正は、第2審決の謄本が当事者へ送達されたことにより平成22年2月5日に確定した。)

平成22年 2月17日 第2審決に対する審決取消訴訟(平成22年(行
ケ)第10056号)
平成23年 2月 8日 第2審決を取り消すとの判決(平成22年(行ケ
)第10056号)
平成23年 2月 8日 特許第3793216号の請求項1(101号訂
正後の請求項1)及び請求項5(101号訂正後
の請求項3)についての特許権侵害差止請求控訴
事件(平成22年(ネ)第10063号及び平成
22年(ネ)第10064号)判決
平成23年 9月29日 第2審決を取り消すとの判決(平成22年(行ケ
)第10056号)確定
平成23年10月13日 第2審決の一部確定登録(平成21年8月3日付
け訂正請求書において、特許請求の範囲について
する訂正のうち、訂正前の請求項3、請求項4、
請求項6ないし請求項10、請求項14、請求項
15を削除する訂正、並びに特許明細書について
する訂正のうち、段落【0014】ないし【00
16】を削除する訂正を認める。)
平成23年11月10日 エステー産業株式会社及び株式会社プレジールに
よる特許第3793216号の請求項1及び5に
係る発明についての特許無効審判請求(無効20
11-800230号)
平成23年11月15日 無効2009-800101号につき「訂正を認
(起案日) める。本件審判の請求は、成り立たない。」との
審決(以下「第3審決」という。)
平成23年11月25日 第3審決の送達(各請求人及び被請求人)
平成23年12月 2日 無効2011-800230号事件の手続中止
(起案日)
平成23年12月26日 第3審決(無効2009-800101号)確定

(101号訂正のうちの平成22年2月5日に確定した部分以外の部分(残余の部分)は、第3審決が確定したことにより平成23年12月26日に確定した。101号訂正後の請求項1及び3を以下「訂正請求項1及び3」という。)

平成24年 1月19日 第3審決の確定登録(訂正を認める 不成立)
平成24年 1月20日 無効2009-800091号、無効2009-
(起案日) 800141号及び無効2011-800230
号の手続中止解除
平成24年 2月16日 訂正請求取下げ(無効2009-800091号
に対しての平成21年7月27日付け訂正請求及
び無効2009-800141号に対しての平成
21年9月24日付け訂正請求)
平成24年 3月 1日 株式会社オーム電機による特許第3793216
号の訂正請求項1及び3に係る発明についての特
許無効審判請求(無効2012-800017号
)
平成24年 5月 1日 エステー産業株式会社及び株式会社プレジールに
よる特許第3793216号の訂正請求項1及び
3に係る発明についての特許無効審判請求(無効
2012-800068号)
平成24年 7月12日 無効2009-800141号につき「本件審判
(起案日) の請求は、成り立たない。」との審決(「第4審
決」という。)
平成24年 7月20日 第4審決の送達(請求人及び被請求人)
平成24年 7月27日 無効2011-800230号につき「本件審判
(起案日) の請求は、成り立たない。」との審決(「第5審
決」という。)
平成24年 8月 7日 第5審決の送達(各請求人及び被請求人)
平成24年 8月10日 無効2009-800091号につき「本件審判
(起案日) の請求は、成り立たない。」との審決(「第6審
決」という。)
平成24年 8月21日 第6審決の送達(各請求人及び被請求人)

第2 本件無効2012-800017号に係る手続の概要

本件無効2012-800017号に係る手続の経緯は概略以下のとおりである(「第1」と重複する手続も再掲した。)。

平成24年 3月 1日 審判請求(特許第3793216号発明の特許請
求の範囲の請求項1及び請求項3に記載された発
明についての特許を無効にする。審判費用は被請
求人の負担とする、との審決を求める。)
平成24年 5月25日 審判事件答弁書(本件審判の請求は成り立たない
、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求
める。)
平成24年 6月13日 審理事項通知(請求人及び被請求人へ)
(起案日)
平成24年 8月21日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成24年 8月21日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成24年 9月 4日 口頭審理(審理終結通知、調書)

第3 本件発明

本件無効審判の対象である本件特許第3793216号の請求項1及び請求項3に係る発明は、101号訂正明細書、101号訂正特許請求の範囲及び本件図面の記載からみて、101号訂正特許請求の範囲の請求項1及び請求項3にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりの次のものである。

「【請求項1】
複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。」(以下「本件発明1」という。)

「【請求項3】
複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と、
前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と、を備える液体インク供給システムにおいて、
前記液体インク収納容器は、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有し、
前記受光部は、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され、
前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出することを特徴とする液体インク供給システム。」(以下「本件発明2」という。)

第4 請求人が主張する無効理由
請求人が主張する無効理由は、本件発明1及び2は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1及び2に係る特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである、というものであって、以下のとおり主張する。

1 本件発明1
本件発明1の構成要件は、以下のとおりである。
1A1’ 複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
1A2’ 該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
1A3’ 前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
1A4’ 搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、
1A5’ 前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の
1A6’ 前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
1B’ 前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
1C’ 少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
1D’ 前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、
1E’ 前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、
1F’ を有することを特徴とする液体インク収納容器。

2 引用文献
本件特許の出願前に頒布された以下の刊行物を引用文献1ないし8とする。
引用文献1:特開2002-370378号公報(甲第1号証)
引用文献2:特開平2-279344号公報(甲第2号証)
引用文献3:特開2002-79685号公報(甲第3号証)
引用文献4:米国特許第5567063号明細書(甲第4の1号証)
引用文献4の訳文(甲第4の2号証)
引用文献5:特許第2706849号公報(甲第5号証)
引用文献6:特許第2610544号公報(甲第6号証)
引用文献7:特開2002-5724号公報(甲第7号証)
引用文献8:特開昭57-6782号公報(甲第8号証)

(1)引用文献1の開示事項
引用文献1には、以下のアないしコの記載があり、本件発明1の構成要件のうち、1A1’、1A2’、1A4’、1A6’、1B’、1C’及び1F’に相当する構成及び本件発明2の構成要件のうち、2A1’、2A2’、2A4’、2B’、2C’、2D1’、2D2’、2G’に相当する構成を備えた発明(以下「引用文献1発明」という。)が開示されている。

ア 「識別情報を格納する記憶装置を備える印刷記録材容器が複数装着される印刷装置であって、前記複数の印刷記録材容器に備えられた各記憶装置をバス接続にて接続する信号線・・・を備える印刷装置」(2頁右欄21?37行目)
イ 「インクカートリッジに備えられた各記憶装置と制御回路とを接続する信号線数を低減するために、各記憶装置を識別するための信号線を廃止し、共通のバスを用いて各記憶装置を接続するバス接続の技術が知られている。この技術では、バス接続されている各記憶装置を特定(識別)するために、各記憶装置に対してユニークに割り当てられた識別子が利用される。」(3頁右欄34?40行目)
ウ 「カラープリンタ10は、・・・キャリッジ11に搭載された印字ヘッドIH1?IH6を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う機構と、このキャリッジ11をキャリッジモータ12によってプラテン13の軸方向に往復動させる機構と、・・・制御回路30とから構成されている。」(6頁右欄17?23行目)
エ 「キャリッジ11にはインクカートリッジCA1?CA6が装着されている」(6頁右欄37?38行目)
オ 「各記憶装置21?26は、既述のように、インクジェットプリンタ用の6色のインクカートリッジCA1?CA6それぞれ備えられている。」(7頁左欄23?25行目)
カ 「各記憶装置21?26は、その内部に、識別情報を格納する記憶素子(メモリアレイ)、送信されてきた識別情報と記憶素子内に格納されている識別情報とを比較するIDコンパレータ、命令コードを解析するオペレーションデコーダ、アドレス位置をカウントアップするアドレスカウンタ、記憶素子に対する読み出し/書き込みを制御するI/Oコントローラ等を備えている。」(7頁左欄28?34行目)
キ 「各記憶装置21?26内の記憶素子に格納されている識別情報は、それぞれインクカートリッジCA1?CA6内に収容されているインク色を識別するための識別情報である。各記憶装置21?26は、制御回路30から識別情報が送信されてくると送信されてきた識別情報と自己の識別情報とを比較解析し、解析した識別情報が記憶素子内に格納されている識別情報と一致する場合には、アクセス許可の応答信号を制御回路30に対して送り返す。」(7頁左欄35?43行目)
ク 「各記憶装置21?26のデータ信号端子DT、クロック信号端子CT、リセット信号端子RTは、データバスDB、クロックバスCB、リセットバスRBを介してそれぞれ接続されている。」(7頁左欄49行目?右欄2行目)
ケ 「制御回路30は、インクカートリッジCAの装着の有無、通信の状態を検出する際には、インクカートリッジCA1?CA6に対応する識別情報を順次、データ信号線DL上に送出する。これに対して、アクセスを所望するインクカートリッジCAが決まっている場合には、アクセスを所望するインクカートリッジCAの識別情報が先頭列に格納されているデータ列をデータ信号線DL上に送出して、各インクカートリッジCA1?CA6の記憶装置21?26に送信する。」(7頁右欄46行目?8頁左欄5行目)
コ また、引用文献1では、下図(図2)が開示されている。


(2)引用文献2の開示事項
引用文献2には、以下のアないしケの記載があり、本件発明1の構成要件のうち、1A3’、1A5’、1D’及び1E’に相当する構成を備えた発明(以下「引用文献2発明」という。)が開示されている。

ア 「カラー印刷システムのもう一つの欠点は、少なくとも構成色に対し別個の印刷ヘッドを用いるものにおいては、プリンター内部で印刷ヘッドが不注意から誤った位置に取りつけられる事である。もしマゼンタのインクがあるべきところにシアンのインクの印刷ヘッドが位置していれば、印刷されたものは不良となろう。」(2頁右下欄1?7行目)
イ 「本発明は、従来のインクジェット印刷システムにおける以上の欠点またはその他の欠点を、印刷ヘッドを特性化するデータを記憶できる記憶素子を各印刷ヘッドに付随させて提供することによって解決することを目的とする。」(2頁右下欄9?13行目)
ウ 「本データは印刷ヘッドの本性、あるいはその動作特性の一つまたはそれ以上を特性化することが可能である。このような動作特性には、印刷ヘッド内のインクの色、・・・などを含むことができる。このデータは印刷ヘッドから読み取ることができ、所望に応じて使用または表示できる。」(2頁右下欄15行目?3頁左上欄1行目)
エ 「一つまたはそれ以上の印刷アッセンブリー12、各印刷アッセンブリーに付随する記憶素子14・・・を備えた本発明の実施例による印刷装置10・・・」(3頁左上欄14?18行目)
オ 「この記憶素子は、たとえば、・・・半導体メモリー・・・によって構成される。このメモリーには印刷ヘッドに関するデータが記憶される。かかる情報は、・・・印刷ヘッドのある種の動作特性(・・・インク色・・・)を特性化する。このデータは印刷ヘッドから読み取られ、所望に応じ使用または表示されうる。」(3頁右上欄14行目?左下欄4行目)
カ 「キャリッジ34の通路近傍に取りつけられ印刷ヘッドがその位置を通過する都度印刷ヘッドの磁気片メモリー14を読み書きする磁気読取/書込みヘッド44」(3頁右下欄7?10行目)
キ 「印刷ヘッドとプリンターの間のデータ通信は、読取/書込みヘッドによってなされる必要はない。かわりに、光学的、あるいは無線のカップリング等、他の送信技術を用いることもできる。」(6頁右上欄10?14行目)
ク 「従来のような印刷ヘッドの取り付け位置の誤りによる印刷不良も簡単に防止することができる。」(6頁左下欄12?14行目)
ケ 引用文献2には、下図(FIG.2)が開示されている(なお、「記憶素子14」、「印刷ヘッド(印刷アッセンブリー)1」、「読取/書込ヘッド44」及び「キャリッジ34」の各文言は、請求人が追記した。)。


(3)引用文献3の開示事項
引用文献3には、以下のアないしエの記載があり、インクの色に関する情報を有するインクカートリッジを用いて、インクカートリッジの誤装着を防止する旨の課題が記載されている。

ア 「カラー記録装置においては、一般にシアン、イエロー、マゼンタ、ブラックなどの複数色の記録ヘッドが必要になるため、交換可能な記録ヘッドを用いる場合には、記録ヘッドの誤装着を防止する必要がある。」(3頁左欄28?32行目)
イ 「上記目的を達成するための本発明は、インクを収納するカートリッジが交換可能に装着されるインクジェット記録装置であって、収納するインクの色に関する情報を有するカートリッジを装着するための装着部と、前記カートリッジが前記装着部に装着されたことを検知する検知手段と、前記検知手段によって前記カートリッジの装着が検知された場合、前記インクの色に関する情報に基づいて前記装着されたカ-トリッジが正規の位置に装着されているか否かを判定する判定手段と、を具えることを特徴とする。」(3頁右欄16?25行目)
ウ 「また、本発明は、インクを収納するカートリッジを交換可能に装着するための装着部と、前記カートリッジが前記装着部に装着されたことを検知する検知手段と、前記検知手段によって前記カートリッジの装着が検知された場合、インクの色に関する情報に基づいて前記装着されたカ-トリッジが正規の位置に装着されているか否かを判定する判定手段とを具えるインクジェット記録装置に搭載可能なカートリッジであって、前記インクジェット記録装置に対して与えられる、前記インクの色に関する情報を有することを特徴とする。」(3頁右欄36?45行目)
エ 「上記構成によれば、収納するインクの色に関する情報がカートリッジに備えられており、そのインクの色に関する情報に基づいてカ-トリッジが正規の位置に装着されているか否かを判定しているため、誤装着を防止でき、それに伴ってインクカートリッジ交換後の記録の最適化を容易に図ることが可能となる。」(3頁右欄46行目?4頁左欄2行目)

(4)引用文献4の開示事項
引用文献4には、以下のア及びイの記載があり、引用文献2で開示されている「光学的…カップリング」の送信技術であって、本件発明1の構成要件1A3’、1A5’及び1D’に関連する周知技術が開示されている。

ア 引用文献4の第3カラム51?53行目には”FIG.3(b) shows an optical method in which data is transmitted by a light emitting diode 30 and received by a light sensor element 31.(日本語訳:図3(b)は、発光ダイオード30によりデータを送信し、光センサ素子31により受信する光学的方法を示すものである。)”と記載されている。
イ 引用文献4では、下図(FIG.2)が開示されている。


(5)引用文献5の開示事項
引用文献5には、以下のアないしオの記載があり、引用文献2で開示されている「光学的…カップリング」の送信技術であって、本件発明1の構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’に関連する周知技術が開示されている。

ア 「発光素子と、受光素子と、外部制御装置からの1本の信号ラインに接続され前記発光素子…の駆動を制御する駆動制御素子とを同一パツケージ内に持ち、入力信号を発光素子にて一旦光に変換し、この光を受光素子で再び電気信号に変換して出力する。信号の入出力を行う部位を複数箇所有する情報機器に使用される光結合装置であつて、前記駆動制御素子に、識別符号を記憶する記憶手段と、外部制御装置より識別符号が入力されたとき、その識別符号が前記記憶手段に記憶された自己の識別符号と一致しているか否かを判別する判別手段と、該判別手段が自己の識別符号と一致していると判別したとき、発光素子…を駆動させる駆動手段とが設けられたことを特徴とする光結合装置。」(1頁左欄2?15行目)
イ 「本発明は、信号の入・出力を行なう場合に用いられる光結合装置(フオトカプラ)及びこれを利用した…プリンター…等の情報機器に関する。」(2頁左欄9?12行目)
ウ 「従来のフオトカプラでは、フオトカプラの使用個数の増加により、その基板内を走るパターン及び機器内を走るリード線の総延長は、かなりの長さが必要となり、かなりのスペースを取つてしまうため、機器のコンパクト化の弊害になつている。本発明は、上記に鑑み、基板内パターン及び機器内のリード線の削減を図り、機器の小型化を実現できる光結合装置及びこれを利用した情報機器の提供を目的とする。」(2頁左欄21?29行目)
エ 「本発明請求項1による課題解決手段は、…発光素子1と、受光素子2と、外部制御装置Cからの1本の信号ラインLに接続され前記発光素子1…の駆動を制御する駆動制御素子3、8とを同一パツケージ内に持ち、入力信号を発光素子1にて一旦光に変換し、この光を受光素子2で再び電気信号に変換して出力する、信号の入出力を行う部位を複数箇所有する情報機器に使用される光結合装置であつて、駆動制御素子3、8に、識別符号を記憶する記憶手段11、21と、外部制御装置Cより識別符号が入力されたとき、その識別符号が前記記憶手段11、21に記憶された自己の識別符号と一致しているか否か判別する判別手段12A、22Aと、該判別手段12A、22Aが自己の識別符号と一致していると判別したとき、発光素子1…を駆動させる駆動手段12B、22Bとが設けられたものである。」(2頁左欄31?46行目)
オ 引用文献5では、下図(図2)が開示されている。


(6)引用文献6の開示事項
引用文献6には、以下のアないしキの記載があり、引用文献2で開示されている「光学的…カップリング」の送信技術であって、本件発明1の構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’に関連する周知技術が開示されている。

ア 「発光素子チツプと、入力信号を処理して発光素子チツプを駆動させる信号処理回路とからなる発光素子において、前記信号処理回路内に、発光素子チツプを駆動させる駆動回路と、識別符号を記憶する記憶手段と、外部中央処理装置から送られてくる識別符号を認識し、この識別符号と、前記記憶手段に記憶された自己の識別符号とが一致しているか否かを判別する判別手段と、該判別手段が自己の識別符号と一致していると判別したとき、前記駆動回路の電源をオンして」(1頁左欄2?10行目)
イ 「本発明は、発光素子及びこれを利用したプリンター、…等の情報機器に関する。」(1頁右欄3?4行目)
ウ 「近年、発光素子が搭載される情報機器においては、センサーの増加に伴い、発光素子の使用個数が増加している。これに対応するため、…発光素子を複数個(N個)配設し、これらの発光素子及び1つの中央処理装置(CPU)4間でデータ伝送する場合、…個々の発光素子の出力毎に伝送ラインを設けなければならず、かえつて機器内の配線が煩雑となり、機器の小型化の妨げになつている。」(1頁右欄10行目?2頁左欄3行目)
エ 「本発明は、上記に鑑み、配線の簡易化、機器の小型化を促し、かつ消費電流の低減を図り得る発光素子及びこれを利用した情報機器の提供を目的とする。」(2頁左欄7?9行目)
オ 「本発明請求項1による課題解決手段は、第1、2図の如く、発光素子チツプ10と、入力信号を処理して発光素子チツプ10を駆動させる信号処理回路11とからなる発光素子において、前記信号処理回路11内に、発光素子チツプ10を駆動させる駆動回路13と、識別符号を記憶する記憶手段14と、外部中央処理装置16から送られてくる識別符号を認識し、この識別符号と、前記記憶手段14に記憶された自己の識別符号とが一致しているか否かを判別する判別手段17と、該判別手段17が自己の識別符号と一致していると判別したとき、前記駆動回路13の電源をオンして外部中央処理装置16に出力する通信手段18とが設けられたものである。
また、請求項2による課題解決手段は、第3図の如く、請求項1記載の発光素子が多数個配設され、これら発光素子が1本の伝送ライン19にて中央処理装置16に接続されたものである。」(2頁左欄11?26行目)
カ 「上記課題解決手段において、外部中央処理装置16から送られてくる制御信号を取り込み、外部中央処理装置16から送られた識別符号-が記憶手段14に記憶された自分の識別符号と一致するかどうか判別手段17にて判断する。
このとき、一致しない場合は待期状態とする。
一方、一致した場合は、駆動回路13の電源をオンにする。そうすると、駆動回路13は、発光素子チツプ10を発光させる。そして、発光素子チツプ10の発光情報を通信手段18を介し検出信号を外部中央処理装置16へ出力する。
その後は、駆動回路13の電源をオフにし待期状態へ戻る。」(2頁左欄28?40行目)
キ 引用文献6には、下図(第1図ないし第3図)が開示されている。






(7)引用文献7の開示事項
引用文献7には、以下のアないしオが記載されており、本件発明1の構成要件1E’に関連する周知技術が開示されている。

ア 「外部からの問いかけに対して内部情報を返答するような双方向の情報のやり取りを実施できるインクタンクが望まれている。」(3頁右欄12?14行目)
イ 「情報伝達手段18は、判断手段16の命令によって電力を、タンク内情報を外部へ伝達するためのエネルギーに変換して、外部へインク内部情報を表示、伝達する。この伝達するためのエネルギーは…光…などを使用することが可能であり」(6頁左欄44?48行目)
ウ 「各色のインクタンク内の素子全てに対し、・・・各色のタンク内にそれぞれ配される素子ごとに異なるディジタルID識別機能を持たせ、通信したい色のタンクをディジタルIDにより識別して、通信を許可するか不可にするかを判断する。」(6頁右欄27?35行目)
エ 「まず、通信したいインクタンクの応答条件のID・・・を選択すると、通信回路150は・・・送信する。・・・判断手段16は、入手した・・・IDを情報蓄積手段17に予め記憶されている・・・識別IDと比較する。比較が一致した場合はIDの後に続く情報を受け入れ・・・判断手段16は、…タンク内部情報を外部へ伝達する必要があるかを判断する。情報伝達手段18は、判断手段16の命令によって・・・外部へインク内部情報を表示、伝達する。」(7頁左欄3?27行目)
オ 引用文献7では、下図(図3)が開示されている。


(8)引用文献8の開示事項
引用文献8には、以下のアないしエが記載されており、引用文献2で開示されている「光学的…カップリング」の送信技術であって、本件発明1の構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’に関連する周知技術、特に、位置検出に用いられる光学的カップリングに関する技術が開示されている。

ア 「前記ガイド軸2、2にはキャリヤ4が装着され、プラテン1に対し平行移動可能になっている。」(2頁左上欄8?10行目)
イ 「前記キャリヤ4には検出器14が装着されている。この検出器14には受光素子が取着されており、点灯している前記操作体6?12を前記受光素子によって検出することによりタブ位置が検出されるようになっている。」(2頁左上欄19?右上欄4行目)
ウ 「なお、この発明は前記実施例に限定されるものではない。例えば、前記実施例では操作体に発光素子を装着し、検出器に受光素子を装着した場合を示したが、操作体に受光素子を装着し、検出器に発光素子を装着するようにしてもよい。」(2頁右下欄14?18行目)
エ 引用文献8では、下図(図1)が開示されている。


3 本件発明1と引用文献1発明との対比・判断
(1)一致点及び相違点
ア 一致点
前述のとおり、引用文献1では、以下の構成1a1’、1a2’、1a4’、1a6’、1b’、1c’、1f’が開示されており、かかる各構成は、それぞれ本件発明1の構成要件1A1’、1A2’、1A4’、1A6’、1B’、1C’、1F’に対応している。
したがって、本件発明1と引用文献1発明との一致点は以下のとおりとなる。
1a1’ 複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
1a2’ 該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
1a4’ 搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置の
1a6’ 前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
1b’ 前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
1c’ 少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
1f’ を有することを特徴とする液体インク収納容器。

イ 相違点
本件発明1と引用文献1発明との相違点は、以下の3点である。
(ア)相違点1(構成要件1A3’及び構成要件1A5’)
本件発明1は、「液体インク収納容器」(印刷記録材容器)が搭載される側の記録装置が、「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」(構成要件1A3’)を有し「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」構成を有するのに対して、引用文献1発明は当該構成(構成要件1A5’)を有しない点。

(イ)相違点2(構成要件1D’)
本件発明1は、「液体インク収納容器」(印刷記録材容器)が「前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、・・・を有する」(構成要件1D’)のに対して、引用文献1発明は当該構成を有しない点。

(ウ)相違点3(構成要件1E’)
本件発明1は、「制御部」が、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する」構成(構成要件1E’)を有するのに対して、引用文献1発明は当該構成を有しない点。

(2)容易想到性(相違点の検討)
ア 本件発明1と引用文献1との間には、上記相違点1?3が存在するが、引用文献1発明に対して引用文献2発明を適用し、引用文献2の開示内容に従って設計変更をするか、又は周知技術を適用するのみで、何ら困難を伴うことなく、本件発明1に容易に想到することができる。
以下、
イ 「引用文献1発明に対する引用文献2発明の適用の容易性」、
ウ 「通信手段に関する仕様の選択」
エ 「発光ダイオードの発光制御に関する仕様の選択」
の順で、容易想到性を説明する。

イ 引用文献1発明に対する引用文献2発明の適用の容易性
(ア)動機付け
a 引用文献1には、従来技術に関して、「記憶装置を備える印刷記録材容器、例えば、インクカートリッジが実用化されている。記憶装置には、例えば、…インクの種類に関するデータ…等が格納されている。」(3頁右欄23?27行目)との記載がある。
しかるに、引用文献1に係る発明の出願当時、インクカートリッジの装着位置の誤りを防止する必要がある点は周知の課題となっており、「印刷記録材容器」にインクの種類に関するデータが格納された「記憶装置」を備えることによって、インクカートリッジの装着位置の誤りを検出する技術も、周知である。
例えば、前述したように、引用文献3の3頁左欄28?32行目には、「カラー記録装置においては、一般にシアン、イエロー、マゼンタ、ブラックなどの複数色の記録ヘッドが必要になるため、交換可能な記録ヘッドを用いる場合には、記録ヘッドの誤装着を防止する必要がある。」、同3頁右欄16?25行目には、「上記目的を達成するための本発明は、インクを収納するカートリッジが交換可能に装着されるインクジェット記録装置であって、収納するインクの色に関する情報を有するカートリッジを装着するための装着部と、前記カートリッジが前記装着部に装着されたことを検知する検知手段と、前記検知手段によって前記カートリッジの装着が検知された場合、前記インクの色に関する情報に基づいて前記装着されたカ-トリッジが正規の位置に装着されているか否かを判定する判定手段と、を具えることを特徴とする。」、また、同3頁右欄36?45行目には、「また、本発明は、インクを収納するカートリッジを交換可能に装着するための装着部と、前記カートリッジが前記装着部に装着されたことを検知する検知手段と、前記検知手段によって前記カートリッジの装着が検知された場合、インクの色に関する情報に基づいて前記装着されたカ-トリッジが正規の位置に装着されているか否かを判定する判定手段とを具えるインクジェット記録装置に搭載可能なカートリッジであって、前記インクジェット記録装置に対して与えられる、前記インクの色に関する情報を有することを特徴とする。」、さらに、同3頁右欄46行目?4頁左欄2行目には、「上記構成によれば、収納するインクの色に関する情報がカートリッジに備えられており、そのインクの色に関する情報に基づいてカ-トリッジが正規の位置に装着されているか否かを判定しているため、誤装着を防止でき、それに伴ってインクカートリッジ交換後の記録の最適化を容易に図ることが可能となる。」との各記載がある。

b 引用文献1発明は、「バス接続形式では、インクカートリッジの取り外しは検出できるものの、複数のインクカートリッジが同時に取り外された場合には、どのインクカートリッジが取り外されたかを特定することができないという問題」(3頁右欄42?46行目)を解決する発明である。つまり、引用文献1発明は、バス接続を適用したが為に発生した不具合を改善しようとするものである。このように、当業者であれば、従来技術で解決済みであった技術的課題、例えば、インクカートリッジの誤装着検出が、バス接続を採用することによって解決不能になった場合、その解決を試みようとするのは至極当然である。

c また、バス接続を採用することによって、インクカートリッジの誤装着検出が不能になる点は自明である。この点、本件特許の明細書にも、「インクタンクの搭載位置を特定する構成としては、…インクタンクの電気接点とキャリッジ等の搭載位置における本体側の電気接点とが接続して形成される回路の信号線を、搭載位置ごとに個別のものとする構成が考慮される。」(5頁36?43行目)、「一方で、配線数を削減するためにはバス接続といった所謂共通の信号線の構成が有効であるが、単にバス接続のような共通の信号線を用いる構成では、インクタンクもしくはその搭載位置を特定することができないことは明らかである。」(6頁2?4行目)との記載がある。

d したがって、バス接続を採用した引用文献1発明に、インクカートリッジの誤装着に関する他の発明の適用を試みる動機付けが存在することは明白である。

(イ)技術分野の共通性
引用文献1発明及び引用文献2発明の技術分野は、いずれもインクジェット式カラープリンタ関連の技術分野に属する発明である。
このことは、引用文献1には、「本実施例に係る印刷記録材容器の異常検出装置は、インクジェット式カラープリンタ(印刷装置)10に適用されている。」(6頁右欄4?6行目)との記載があり、引用文献2には「本発明はインクジェット印刷ヘッド等の印刷アッセンブリーに関し」(1頁右欄14?15行目)との記載から明らかである。

(ウ)課題の共通性
前述したように、引用文献1の基礎技術が有する技術的課題、すなわち、引用文献1においても当然に解決すべき課題として、インクカートリッジの装着位置の誤りを防止するという課題がある。他方、引用文献2発明の技術的課題もインクカートリッジの装着位置の誤りを防止する点にあり、両発明の技術的課題は共通している。

(エ)小括
以上のとおり、引用文献1に接した当業者であれば、インクカートリッジの誤装着の問題を認識して、引用文献1発明に、該引用文献1発明と技術分野及び技術的課題が共通する引用文献2発明を適用することは極めて容易であり、引用文献2の適用可能性について疑念を抱く余地は全くない。

ウ 通信手段に関する仕様の選択
(ア)引用文献2の6頁右上欄10?14行目には、「印刷ヘッドとプリンターの間のデータ通信は、読取/書込みヘッドによってなされる必要はない。かわりに、光学的、あるいは無線のカップリング等、他の送信技術を用いることもできる。」と記載されているため、引用文献1及び同2に接した当業者であれば、「印刷記録材容器」(印刷ヘッド)と、「制御部」(プリンター)の間の通信手段として、光学的な通信技術を適用することは極めて容易なことである。
(イ)そして、プリンタ分野における光学的な通信手段として、引用文献4には、「発光ダイオード30によりデータを送信し、光センサ素子31により受信する光学的方法」(第3カラム51?53行目)が開示されている。以下、誤解がないように「光センサ素子」を「受光素子」という。
(ウ)ここで、発光ダイオード及び受光素子をそれぞれ「印刷記録材容器」側及びプリンタ側のいずれに設けるかという問題があるが、「印刷記録材容器」に設けられたEEPROMのような半導体メモリー等の記憶素子からインクの色に関する情報を取得する必要があるのであるから、当業者であれば、当然に発光素子を「印刷記録材容器」側に設け、受光素子をプリンタ側に設けることができる。発光素子は、情報の担い手である光を受光できず、受光素子は、情報の担い手である光を発信できないためである。
(エ)こうして、引用文献1発明に引用文献2発明を適用し、「印刷記録材容器」から、「制御部」への通信手段として光学的な通信技術を選択した場合の構成は下図のとおりである。


(オ)次に、当業者は、「印刷記録材容器」から色情報をプリンタ側へ送信させるための命令、つまり「印刷記録材容器」のインクの色に応じて発光ダイオードを発光させるための発光命令を送信する送信手段を決定する必要があるところ、下図に示すように、「制御部」から「印刷記録材容器」へのデータ通信手段としては、バス接続された通信線、光通信などの通信手段が考えられる。バス接続された通信線及び光通信は、引用文献1及び同4に記載された周知の通信手段である。




(カ) ところで、引用文献1の3頁右欄34?36行目には、「インクカートリッジに備えられた各記憶装置と制御回路とを接続する信号線数を低減するために、各記憶装置を識別するための信号線を廃止し」と記載されているため、引用文献1に接した当業者であれば、「制御部」から「印刷記録材容器」へのデータ通信手段として、既存のバス接続された通信線(通信手段の仕様1)を選択することは必然であり、この仕様選択に何ら技術的困難性は存在しない。
(キ) 一方、別の観点から検討するに、引用文献2の6頁右上欄10?14行目には、「印刷ヘッドとプリンターの間のデータ通信は、読取/書込みヘッドによってなされる必要はない。かわりに、光学的、あるいは無線のカップリング等、他の送信技術を用いることもできる。」と記載されているところ、光学的カップリングに関する引用文献5の1頁左欄2?15行目には、「発光素子と、受光素子と、外部制御装置からの1本の信号ラインに接続され前記発光素子…の駆動を制御する駆動制御素子とを同一パツケージ内に持ち、入力信号を発光素子にて一旦光に変換し、この光を受光素子で再び電気信号に変換して出力する。信号の入出力を行う部位を複数箇所有する情報機器に使用される光結合装置であつて、前記駆動制御素子に、識別符号を記憶する記憶手段と、外部制御装置より識別符号が入力されたとき、その識別符号が前記記憶手段に記憶された自己の識別符号と一致しているか否かを判別する判別手段と、該判別手段が自己の識別符号と一致していると判別したとき、発光素子…を駆動させる駆動手段とが設けられたことを特徴とする光結合装置。」と記載されている。
(ク) また、引用文献5で開示された発明(以下、「引用文献5発明」という。)は、引用文献5の記載「本発明は、信号の入・出力を行なう場合に用いられる光結合装置(フオトカプラ)及びこれを利用した…プリンター…等の情報機器に関する。」(2頁左欄9?12行目)から明らかなように、プリンタに関する発明であり、引用文献1発明及び引用文献2発明と技術分野が共通している。
(ケ) さらに、引用文献5発明の技術的課題は、引用文献5の記載「従来のフオトカプラでは、フオトカプラの使用個数の増加により、その基板内を走るパターン及び機器内を走るリード線の総延長は、かなりの長さが必要となり、かなりのスペースを取つてしまうため、機器のコンパクト化の弊害になつている。本発明は、上記に鑑み、基板内パターン及び機器内のリード線の削減を図り、機器の小型化を実現できる光結合装置及びこれを利用した情報機器の提供を目的とする。」(2頁左欄21?29行目)から明らかなように、信号線数の削減を目的としており、引用文献1発明と技術的課題が共通している。
(コ)さらにまた、プリンタ分野において、発光素子及び受光素子からなるフォトカプラを用いて、相対移動する物体の位置検出を行うことは、引用文献8に示すように周知の技術である。上述したように、引用文献8には、「前記キャリヤ4には検出器14が装着されている。この検出器14には受光素子が取着されており、点灯している前記操作体6?12を前記受光素子によって検出することによりタブ位置が検出されるようになっている。」(2頁左上欄19?右上欄4行目)との記載がある。
(サ) 以上のように、引用文献2には、光学的カップリングを引用文献2発明に適用する旨の開示があり、しかも、光学的カップリングに関する引用文献5発明の周知技術と、引用文献1発明及び引用文献2発明とは、技術分野及び技術的課題が共通しているため、プリンタ側の「制御部」が「印刷記録材容器」の発光ダイオードを発光させる命令を送信する送信技術として、引用文献5発明の周知技術を引用文献2発明に適用することは、極めて容易である。引用文献5発明の周知技術は、要するに、「外部制御装置」と1本の「通信ライン」に複数の「発光素子」が接続されており、「通信ライン」を通じて「外部制御装置」より識別符号が入力されたとき、各「発光素子」にそれぞれ備えられた「駆動制御素子」は、入力された識別符号に応じて、「発光素子」を発光させ、「外部制御装置」は、「発光素子」の光を「受光素子」で受光するというものである。かかる周知技術を、前記「引用文献1記載の発明に引用文献2発明が適用された発明の構成」に図示した「印刷記録材容器」とプリンタ側の「制御部」との間の送信技術に適用すれば、前記「通信手段の仕様1」に至るのである。
(シ)また、前記「通信手段の仕様1」に示された構成は、次のとおり、相違点1及び2に係る本件発明1の構成要件1A3’、1A5’及び1D’にほかならない。
a まず、本件発明1の構成要件1A3’のうち、「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され…受光手段」の構成は、引用文献2記載の構成「キャリッジ34の通路近傍に取りつけられ印刷ヘッドがその位置を通過する都度印刷ヘッドの…メモリー…を読み書きする…読取/書込みヘッド44」(3頁右下欄7?10行目)に対応する。
b 次に、本件発明1の構成要件1A3’のうち、「前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え」の構成は、前記「通信手段の仕様1」に示された構成「印刷記録材容器の発光ダイオードからの光を受光する位置検出用の受光素子」に対応する。位置検出用という用途は、引用文献2発明の効果「従来のような印刷ヘッドの取り付け位置の誤りによる印刷不良も簡単に防止することができる。」(6頁左下欄12?14行目)から明らかであり、受光手段が「一つ」である点も、引用文献2の図2から明らかである。
c また、本件発明1の構成要件1A3’のうち、「該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」の構成は、前記「通信手段の仕様1」に示された構成「制御部に接続された受光素子で印刷記録材容器の発光ダイオードからの光を受光し、制御部が印刷記録材容器の搭載位置を検出する」に対応する。引用文献2に「搭載位置を検出する」という構成が開示されていることは、引用文献2の「従来のような印刷ヘッドの取り付け位置の誤りによる印刷不良も簡単に防止することができる。」(6頁左下欄12?14行目)との記載から明らかである。
d また、本件発明1の構成要件1A5’のうち、「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ」の構成は、どの液体インク収納容器の発光部を光らせるのかまで特定されていないが(構成要件1E’で明らかになる)、引用文献2発明の効果「従来のような印刷ヘッドの取り付け位置の誤りによる印刷不良も簡単に防止することができる。」(6頁左下欄12?14行目)から、引用文献1発明に引用文献2発明を適用して得られた発明は少なくとも「キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の印刷記録材容器の発光部を光らせる」という構成を有する。
e さらに、本件発明1の構成要件1A5’のうち、「その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置」に示された構成は、前記「通信手段の仕様1」に示された構成「制御部に接続された受光素子で印刷記録材容器の発光ダイオードからの光を受光し、制御部が印刷記録材容器の搭載位置を検出する」に対応する。
f 加えて、本件発明1の構成要件1D’「前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部」は、前記「通信手段の仕様1」に示された構成「発光ダイオード」に対応する。
(ス) 小括
以上のとおり、当業者であれば、設計変更ないし引用文献5の適用によって、本件発明1の構成要件1A3’、1A5’及び1D’、即ち相違点1、2に極めて容易に想到することができる。

エ 発光ダイオードの発光制御に関する仕様の選択
(ア)「印刷記録材容器」の誤装着を検出するための情報、つまり印刷記録材の色に関する情報を、「印刷記録材容器」からプリンタ側の「制御部」へ送信する際に、発光ダイオードをどのように発光させるかは、いうまでもなく、当業者が適宜選択し得る設計事項である。例えば、「印刷記録材容器」から、プリンタ側の「制御部」へ「シアン」という色の情報を伝える際に、発光ダイオードを点灯させた状態が「シアン」を意味するのか、消灯させた状態が「シアン」を意味するのか、あるいは点滅させた状態が「シアン」を意味するのかといった意味づけは、当業者の設計事項である。
(イ)例えば、「制御部」から「印刷記録材容器」へのインク色に関する情報を送信するための発光制御方法として、次の図に示す方法が考えられる。

【発光ダイオードの発光制御方法を示した模式図】


上記i)に示すように、「制御部」は、「印刷記録材容器」へシアンの識別符号を送信することによって「シアンですか?」と「印刷記録材容器」へ問いかけ、「印刷記録材容器」がシアンである場合、発光ダイオードの点灯によって、自身がシアンである旨の色に関する情報を「制御部」へ送信している。


また、上記ii)に示すように、「制御部」は、「印刷記録材容器」へシアンの識別符号を送信することによって「シアンですか?」と「印刷記録材容器」へ問いかけ、「印刷記録材容器」がシアンでない場合、発光ダイオードの消灯によって、自身がシアンでない旨の色に関する情報を「制御部」へ送信している。
このように、「制御部」は、発光ダイオードの発光状態及び消灯状態を受光素子で検出し、相手の「印刷記録材容器」がシアンであるか否かを確認することができる。ここでは特定の色「シアン」の場合を例にして、発光制御を説明したが、他の色についても同様にして発光制御を行うことができる。
(ウ) 上述した発光ダイオードの発光制御は、単なる設計事項の範疇であり、引用文献5?7にも開示された周知技術である。
a 引用文献5では、前述のとおり、「本発明請求項1による課題解決手段は、…発光素子1と、受光素子2と、外部制御装置Cからの1本の信号ラインLに接続され前記発光素子1…の駆動を制御する駆動制御素子3、8とを同一パツケージ内に持ち、入力信号を発光素子1にて一旦光に変換し、この光を受光素子2で再び電気信号に変換して出力する、信号の入出力を行う部位を複数箇所有する情報機器に使用される光結合装置であつて、駆動制御素子3、8に、識別符号を記憶する記憶手段11、21と、外部制御装置Cより識別符号が入力されたとき、その識別符号が前記記憶手段11、21に記憶された自己の識別符号と一致しているか否か判別する判別手段12A、22Aと、該判別手段12A、22Aが自己の識別符号と一致していると判別したとき、発光素子1…を駆動させる駆動手段12B、22Bとが設けられたものである。」(2頁左欄31?46行目)と記載されている。
また、前述のように、引用文献2には、光学的カップリングを引用文献2発明に適用する開示があり、しかも、光学的カップリングに関する引用文献5発明の周知技術と、引用文献1発明及び引用文献2発明とは、技術分野及び技術的課題が共通しているため、発光制御方法についても、引用文献5発明の周知技術を、引用文献2発明に適用することは、極めて容易である。
b 引用文献6では、前述のとおり、「本発明請求項1による課題解決手段は、第1、2図の如く、発光素子チツプ10と、入力信号を処理して発光素子チツプ10を駆動させる信号処理回路11とからなる発光素子において、前記信号処理回路11内に、発光素子チツプ10を駆動させる駆動回路13と、識別符号を記憶する記憶手段14と、外部中央処理装置16から送られてくる識別符号を認識し、この識別符号と、前記記憶手段14に記憶された自己の識別符号とが一致しているか否かを判別する判別手段17と、該判別手段17が自己の識別符号と一致していると判別したとき、前記駆動回路13の電源をオンして外部中央処理装置16に出力する通信手段18とが設けられたものである。また、請求項2による課題解決手段は、第3図の如く、請求項1記載の発光素子が多数個配設され、これら発光素子が1本の伝送ライン19にて中央処理装置16に接続されたものである。」(2頁左欄11?26行目)と記載されている。
また、引用文献6で開示された発明(以下、「引用文献6発明」という。)は、引用文献6の1頁右欄3?4行目の記載「本発明は、発光素子及びこれを利用したプリンター、…等の情報機器に関する。」から明らかなように、プリンタに関する発明であり、引用文献1発明及び引用文献2発明と技術分野が共通している。
さらに、引用文献6発明の技術的課題は、引用文献6の1頁右欄10行目?2頁左欄3行目の「近年、発光素子が搭載される情報機器においては、センサーの増加に伴い、発光素子の使用個数が増加している。これに対応するため、…発光素子を複数個(N個)配設し、これらの発光素子及び1つの中央処理装置(CPU)4間でデータ伝送する場合、…個々の発光素子の出力毎に伝送ラインを設けなければならず、かえつて機器内の配線が煩雑となり、機器の小型化の妨げになつている。」との記載から明らかなように、信号線数の削減を目的としており、引用文献1発明と技術的課題が共通している。
c 引用文献7では、前述のとおり、「外部からの問いかけに対して内部情報を返答するような双方向の情報のやり取りを実施できるインクタンクが望まれている。」(3頁右欄12?14行目)、「各色のインクタンク内の素子全てに対し、・・・各色のタンク内にそれぞれ配される素子ごとに異なるディジタルID識別機能を持たせ、通信したい色のタンクをディジタルIDにより識別して、通信を許可するか不可にするかを判断する。」(6頁右欄27?35行目)、「まず、通信したいインクタンクの応答条件のID・・・を選択すると、通信回路150は・・・送信する。・・・判断手段16は、入手した・・・IDを情報蓄積手段17に予め記憶されている・・・識別IDと比較する。比較が一致した場合はIDの後に続く情報を受け入れ・・・判断手段16は、タンク内部情報を外部へ伝達する必要があるかを判断する。情報伝達手段18は、判断手段16の命令によって・・・外部へインク内部情報を表示、伝達する。」(7頁左欄3?27行目)と記載されている。
d 以上のように、当業者であれば、インクの色に関する情報を上述のように「印刷記録材容器」から「制御部」へ当該情報を送信させることは、容易に想到し得る事項であり、前記「発光ダイオードの発光制御方法を示した模式図」に示した構成を採用することについて何ら技術的困難性は存在しない。
(エ) 前記「発光ダイオードの発光制御方法を示した模式図」に示された構成「バス接続された信号線を通じて入力される識別符号の信号と、印刷記録材容器が保持する識別符号とに応じて発光ダイオードの発光を制御する駆動制御素子(不図示)」は、相違点3に係る本件発明1の構成1E’にほかならない。
(オ) 小括
以上のとおり、当業者であれば、設計変更ないし引用文献5?7の適用によって、本件発明1の構成要件1E’、即ち相違点3に極めて容易に想到することができる。

オ 相違点の検討のまとめ
以上説明したように、引用文献1発明に、引用文献2発明を適用し、周知の仕様選択を行うことによって、前述の相違点1?3の構成を、本件発明1の構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’とすることは容易であり、各別の困難性はない。

(3) 結論
本件発明1は、特許出願前に、引用文献1発明及び引用文献2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、進歩性を有しない。

4 本件発明2
本件発明2の構成要件は、以下のとおりである。
2A1’ 複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
2A2’ 該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
2A3’ 該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
2A4’ 搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と、
2B’ 前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と、
2C’ を備える液体インク供給システムにおいて、
2D1’ 前記液体インク収納容器は、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
2D2’ 少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
2D3’ 前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と、
2D4’ 前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有し、
2E’ 前記受光部は、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され、
2F’ 前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する
2G’ ことを特徴とする液体インク供給システム。

5 本件発明2と引用文献1発明との対比・判断
(1)一致点及び相違点
ア 一致点
引用文献1には、上述の記載から以下の構成2a1’、2a2’、2a4’、2b’、2c’、2d1’、2d2’、2g’が認められ、各構成は、それぞれ本件発明2の構成要件2A1’、2A2’、2A4’、2B’、2C’、2D1’、2D2’、2G’に対応している。つまり、本件発明2と、引用文献1発明との一致点は以下のとおりである。
2a1’ 複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
2a2’ 該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
2a4’ 搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と、
2b’ 前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と、
2c’ を備える液体インク供給システムにおいて、
2d1’ 前記液体インク収納容器は、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
2d2’ 少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
2g’ を有することを特徴とする液体インク供給システム。

イ 相違点
本件発明2と、引用文献1発明との相違点は、以下の3点である。
(ア)相違点1(構成要件2A3’及び構成要件2E’)
記録装置に関して、本件発明2は、「該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と…を有する」(構成要件2A3’)、「前記受光部は、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され」(構成要件2E’)と特定された構成を有するのに対して、引用文献1発明は当該構成を有しない点。

(イ)相違点2(構成要件2D3’及び構成要件2D4’)
液体インク収納容器に関して、本件発明2は、「前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有し」(構成要件2D3’及び構成要件2D4’)と特定された構成を有するのに対して、引用文献1発明は当該構成を有しない点。

(ウ)相違点3(構成要件2F’)
液体インク供給システム(印刷記録材供給システム)が実行する検出内容に関して、本件発明2は、「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」(構成要件2F’)と特定された構成を有するのに対して、引用文献1発明は当該構成を有しない点。

(2) 容易想到性(相違点の検討)
ア 引用文献1発明に対する引用文献2発明の適用の容易性については、上記「3(2)イ」において説明したとおり、当業者であれば、引用文献1発明に、引用文献2発明を適用することは容易であり、本件発明2の構成要件2A3’、2D3’、2D4’、2E’及び2F’、即ち相違点1、2、3に極めて容易に想到することができる。

イ 特に、本件発明2の構成要件2A3’、2D3’及び2F’については、当業者であれば、設計変更ないし引用文献5の適用によって、極めて容易に想到することができる。通信手段に関する仕様の選択については、上記3(2)ウにおいて説明したとおりである。

ウ また、本件発明2の構成要件2F’についても、当業者であれば、設計変更ないし引用文献5?7の適用によって、本件発明2の構成要件2D4’に極めて容易に想到することができる。発光ダイオードの発光制御に関する仕様の選択については、上記3(2)エにおいて説明したとおりである。

(3) 結論
本件発明2は、特許出願前に、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、進歩性を有しない。

6 被請求人の主張に対する反論

(1) 「刊行物に記載された発明」及び「通常の知識を有する者」について
被請求人は、動機付け及び訂正後請求項1の構成要件が引用文献2?7に記載されていない点を強く主張している。
しかしながら、進歩性の判断主体である「その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者」(特許法29条2項)は、刊行物に記載された文字通りの技術的課題及び技術構成しか理解できず、引用文献に直接的に記載された創作活動しか行えないような技術専門家ではない。
被請求人の主張に対する反論を行う前に、特許法29条2項に記載された「前項各号に掲げる発明」(特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明)及び「その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者」(以下、「当業者」という。)の意味を確認する。
当業者とは、本願発明の属する技術分野の出願時の技術常識を有し、研究、開発のための通常の技術的手段を用いることができ、材料の選択や設計変更などの通常の創作能力(発明能力)を発揮でき、かつ、本願発明の属する技術分野の出願時の技術水準にあるもの全てを自らの知識とすることができる者である。そして、前記技術水準は、出願前の公知発明、公用発明及び刊行物公知発明のほか、技術常識、その他の技術的知識(技術的知見等)から構成される。
また、刊行物に記載された発明を認定する際、技術常識を参酌することができ、本願出願時における技術常識を参酌することにより当業者が当該刊行物に記載されている事項から導き出せる事項も、刊行物に記載された発明の認定の基礎とすることができる。

(2) 出願当時の技術背景
次に、本件特許の出願当時における当業者の創作能力の基礎になり得る技術背景を明らかにする。
ア 例えば、平成2年(1990年)11月15日に公開された引用文献2には、「カラー印刷システムのもう一つの欠点は、少なくとも構成色に対し別個の印刷ヘッドを用いるものにおいては、プリンター内部で印刷ヘッドが不注意から誤った位置に取りつけられる事である。もしマゼンタのインクがあるべきところにシアンのインクの印刷ヘッドが位置していれば、印刷されたものは不良となろう。」(2頁右下欄1?7行目)との記載がある。
イ また、平成14年(2002年)3月19日に公開された引用文献3には、「カラー記録装置においては、一般にシアン、イエロー、マゼンタ、ブラックなどの複数色の記録ヘッドが必要になるため、交換可能な記録ヘッドを用いる場合には、記録ヘッドの誤装着を防止する必要がある。」(3頁左欄28?32行目)、「上記目的を達成するための本発明は、インクを収納するカートリッジが交換可能に装着されるインクジェット記録装置であって、収納するインクの色に関する情報を有するカートリッジを装着するための装着部と、前記カートリッジが前記装着部に装着されたことを検知する検知手段と、前記検知手段によって前記カートリッジの装着が検知された場合、前記インクの色に関する情報に基づいて前記装着されたカ-トリッジが正規の位置に装着されているか否かを判定する判定手段と、を具えることを特徴とする。」(3頁右欄16?25行目)との記載がある。
ウ さらに、平成14年(2002年)5月23日に公開された引用文献9(甲第9号証、国際公開第02/40275号)には、「複数色のインクカートリッジ(印刷記録材容器)を備えるカラープリンタにおいて、インクカートリッジの交換時におけるインクカートリッジの誤装着、すなわち、交換されるべきインク色とは異なるインクカートリッジの装着、を防止するための技術が提案されている。例えば、インク色毎にインクカートリッジの外形形状を変更し、誤ったインクカートリッジが物理的に装着できないようにする技術が知られている。また、同一の外形形状を有するインクカートリッジを用いる場合には、一個のインクカートリッジのみが脱着可能な開口部を有するカバーをプリンタ上に設け、交換されるべきインクカートリッジを開口部まで移動させて、交換されるべきインクカートリッジのみの脱着を許容する技術が知られている。」(1頁10?19行)との記載がある。
エ このように、インクカートリッジの装着位置の誤りを検出するという課題は、平成2年(1990年)から平成14年(2002年)にわたり、インクジェットプリンタ分野における主要な課題として存在しており、このような技術開発の流れにおいて、当業者はインクカートリッジの装着位置誤り検出を重要課題として認識し得る状況にあった。

(3) 被請求人の主張する後記「第6 3(4)」の「組み合わせ動機付けの欠如」に対する反論
ア 「ア 技術課題の不開示」について
(ア)被請求人の主張
被請求人は、本件発明1及び2の課題「共通の信号線=バス接続という共通バス接続方式を採用した場合でも、インクタンクの搭載位置間違いを検出する」が引用文献に記載されていないと主張する。
(イ)請求人の主張
しかし、上述の技術背景の下、引用文献1に接した当業者であれば、共通バス接続を利用しつつインクタンクの装着位置間違いを検出するという課題に想到することが可能である。
(ウ)理由
引用文献1発明は、「識別情報を格納する記憶装置を備える印刷記録材容器が複数装着される印刷装置であって、前記複数の印刷記録材容器に備えられた各記憶装置をバス接続にて接続する信号線…を備える印刷装置」(2頁右欄21?27行目)に関する発明であり、「信号線数を低減するために、各記憶装置を識別するための信号線を廃止し、共通のバスを用いて各記憶装置を接続」(3頁右欄35?37行目)したものである。一方、上述したように、本件特許発明の出願当時、インクタンクの装着位置の誤りを検出するという課題は、主要な課題として存在していた。
このため、引用文献1に接した当業者は、共通バス方式を採用した引用文献1発明においてもインクタンクの装着位置誤りを検出できるかどうかを当然に検討する。そして、共通バス方式を採用した場合、共通の信号線を用いて複数のインクタンクから情報を取得することになるのであるから、インクタンクの装着位置の誤りを検出できなくなることは明らかである。この点、本件明細書にも、「一方で、配線数を削減するためにはバス接続といった所謂共通の信号線の構成が有効であるが、単にバス接続のような共通の信号線を用いる構成では、インクタンクもしくはその搭載位置を特定することができないことは明らかである。」(6頁2?4行目)と記載されている。
従って、本件特許発明の出願当時、引用文献1に接した当業者は、共通バス接続を利用しつつインクタンクの装着位置間違いを検出するという課題に容易に想到することができたと言うべきである。
(エ)まとめ
本件特許発明の出願当時、共通バス接続を利用しつつインクタンクの装着位置間違いを検出するという課題は事実上、存在していたのである。つまり、本件特許発明の出願当時、引用文献1に接した当業者は、上記課題に容易に想到することができる状況にあったと言える。

イ 「イ 引用文献1の『バス接続配線』と引用文献2の『光通信手段(光学的カップリング)』の組み合わせについての動機の欠如」について
(ア)被請求人の主張
被請求人は、「引用文献1の『バス接続配線』も、引用文献2の『光学カップリング』も、その目的ないし機能が同じであるから、当業者の技術常識からすれば、いずれか一方を選択することしかあり得ず、これら両通信手段を併用しようとする動機は生じない。」(「答弁書」20頁1行目?4行目)と主張する。また、被請求人は、「そうすると、引用文献1に対して引用文献2を適用した場合に想到される形態は、引用文献1の通信手段たる『バス接続配線』を、引用文献2の通信手段たる『光学カップリング』に置き換えたものにしかならない。ただし、このような置き換えを行ってしまうと、引用文献1及び訂正後請求項1の骨格たる『バス接続配線』がなくなってしまうので、両者を組み合わせて訂正後請求項1に想到することは、阻害事由があるといえる。」(「答弁書」第20頁5行?10行目)と主張する。
(イ)請求人の主張
しかしながら、通信手段として引用文献1の「バス接続配線」を「光学的カップリング」に置き換えることは困難であり、被請求人の主張は失当である。引用文献1、2を組み合わせる動機付けは上述の通り存在する。
(ウ)理由
a 引用文献1の「バス接続配線」によれば、プリンタ側の制御回路は、インクタンクの位置に拘わらず、インクカートリッジに備えられた記憶装置から情報を読み出し、あるいは情報を書き込むことができるが、引用文献2の「光学的カップリング」では、インクカートリッジが所定の位置(磁気読取/書込みヘッド44に対向する位置)になければ、このような情報の読み出し及び書き込みが不可能である。
また、引用文献2の「光学カップリング」は、引用文献1の通信手段である「バス接続配線」では不可能なインクタンクの装着位置間違いの検出を可能にする通信手段である。このように、引用文献1の通信手段たる「バス接続配線」と、引用文献2に通信手段たる「光学的カップリング」とは、その目的ないし機能が異なる。
従って、引用文献1、2の通信手段「バス接続配線」及び「光学カップリング」のいずれか一方選択することはあり得ない。二つの引用文献を組み合わせる際、まずは各引用文献に記載された構成を単純に足し合わせ、機能及び作用が共通する構成を共通化するのが通常である。機能及び作用が異なり、引用文献が有する機能が破壊されるような場合に、発明の構成を無理に共通化することはあり得ない。
b さらに、引用文献1に係る発明は、「本発明は、バス接続されている記憶装置を備えた印刷記録材容器が複数個用いられる場合に、印刷記録材容器の有無を検出する技術に関する。」(引用文献1明細書の第3頁右欄18行?21行目)の記載から明らかなように、バス接続が前提となっている発明である。引用文献1に記載の「バス接続配線」を「光学的カップリング」に置換することは、引用文献1に係る発明の技術的思想を完全に破壊する行為であり、むしろ通信手段として引用文献1の「バス接続配線」を「光学的カップリング」に置き換えることの方にこそ阻害事由が存在する。
付言すれば、被請求人が主張する「阻害事由」は論理のすり替えであり、引用文献1と、引用文献2の組み合わせに技術的な阻害要因は存在しない。被請求人が主張する「阻害事由」は、引用文献1の「バス接続配線」を、無理矢理、引用文献2の「光学的カップリング」に置き換えた結果、請求項1に記載の「バス接続配線」がなくなってしまう点を問題にしたものである。つまり、被請求人の主張は、引用文献1及び2を組み合わせても請求項1になりそうにないから、組み合わせに阻害事由があるというものである。複数の引用文献の組み合わせに阻害事由が存在することと、複数の引用文献を組み合わせたものが特許発明の構成要件に一致するかという問題とは別問題である。引用文献1に、引用文献2を組み合わせる技術的な障壁は見あたらない。また、上述したように、「バス接続配線」を「光学的カップリング」に置換することの方にむしろ阻害事由が存在すると言える。
被請求人の主張は、通信手段の無理な共通化の結果生ずる問題であり、引用文献1、2の共通化に阻害要因があるという主張は失当である。
c さらにまた、被請求人は、追加的に「引用文献2には装着位置間違い検出の具体的手段が記載されていないから、引用文献2に接した当業者は、装着位置間違い検出を行うために引用文献2に記載の構成を他の引用発明に付加的に適用しようとは全く考えないはずである。この点からしてもこの組み合わせは動機付けに欠けるというべきである。」(「答弁書」19頁10?14行目)と主張している。
しかしながら、後述の(4)ないし(7)で詳述するように、出願当時の技術常識を参酌すれば、インクタンクの装着位置間違い検出の具体的構成(構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’)が引用文献2に記載されているに等しい事項として把握される。
従って、この点についても、引用文献1、2の組み合わせに係る動機付けを否定する理由にはならない。
d 以上の通り、被請求人が主張する阻害要因は存在せず、引用文献1、2を組み合わせる動機付けは、上記「3(2)イ」の「引用文献1発明に対する引用文献2発明の適用の容易性」で詳述した通り存在する。
(エ)まとめ
被請求人が主張する阻害要因は存在しない。引用文献1、2を組み合わせる動機付けは存在し、引用文献1発明に、引用文献2発明を適用することは容易である。

ウ 技術的課題及び技術分野に関する請求人の主張
(ア)被請求人は、本件特許明細書に記載された技術的課題が引用文献1、2に開示されていないから、引用文献1、2を組み合わせることが困難である旨を主張しているが、技術分野が共通し、インクタンクの装着位置の誤り検出という基本的課題に関連する技術の引用文献であれば、その組み合わせが可能と言うべきである。上述した当業者であれば、公知技術を自らの知識とすることができ、通常の創作能力を発揮することにより、技術分野及び技術的課題が関連している複数の公知技術を組み合わせることも容易である。上記「3(2)イ」の「引用文献1発明に対する引用文献2発明の適用の容易性」、上記「3(2)イ(イ)」の「技術分野の共通性」及び上記「3(2)イ(ウ)」の「課題の共通性」で詳述した通り、引用文献1、2の技術分野及び技術的課題は共通している。従って、インクタンクの装着位置の誤り検出という課題からしても、引用文献1、2を組み合わせることは容易である。
(イ)また、技術常識(引用文献1?9)に関しても、本件特許明細書に記載された技術的課題が、技術常識を示す引用文献に記載されていなくても、参酌し得ることは言うまでもない。例えば、引用文献2に記載の光学的カップリングの技術常識を認定する際、光学カップリングの技術文献であれば、当然にこれを参酌することができる。

エ 小括
以上の通り、引用文献1発明に引用文献2発明を適用する動機付けは存在し、技術分野及び技術的課題が共通する引用文献1、2を組み合わせることは容易である。

(4) 被請求人の主張する後記「第6 3(6)」の「引用文献2の開示事項」に対する反論
ア 被請求人の主張
被請求人は、引用文献2には、相違点1乃至3に相当する構成が開示されていないと主張する。
イ 請求人の主張
しかし、相違点1乃至3に相当する構成は、本願出願時における技術常識を参酌することにより当業者が引用文献2に記載されている事項から導き出せる事項である。
以下、引用文献2の記載事項を確認し、出願当時の技術常識を参酌することにより引用文献2から把握される発明を明らかにし、相違点1?3が引用文献2に記載されているに等しい事項であることを説明する。
ウ 理由
(ア)引用文献2の記載事項
引用文献2には、上記「2(2)引用文献2の開示事項」で示したとおりの摘記事項アないしクの記載がある。
このように、引用文献2には、インクタンクの搭載位置間違い検出に関する技術的課題が記載されており(摘記事項ア)、その課題を解決する中核的技術的思想も記載されている(摘記事項イ)。また、その具体的な構成も摘記事項ウ?カに記載されている。確かに、引用文献2の[発明の実施例]は、オリフィスの板のミスアライメントを補償する点に重点が置かれた説明であるが、印刷ヘッドの記憶素子に記憶された印刷ヘッド内のインクの色を含んだデータは「印刷ヘッドから読み取られ、所望に応じ使用または表示されうる。」(摘記事項オ)と記載されていることから、各インクタンクの色を読み取り、表示することによって、インクタンクの取り付け位置の誤りを検出によるという構成を引用文献2の記載から十分に読み取ることができる。また、摘記事項キの記載に接した当業者であれば、引用文献3?8等に記載された技術常識を参酌することにより、引用文献2に記載されている事項として、相違点1?3を導き出すことができる。
(イ)引用文献2及び技術常識から把握される発明の一例を下図に示す。




上記の図で示した印刷装置は、引用文献2に記載の示唆「印刷ヘッドとプリンターの間の通信は、読取/書込みヘッドによってなされる必要はない。かわりに、光学的、あるいは無線のカップリング等、他の送信技術を用いることもできる。」(6頁右上欄10?14行目)に従って、「磁気読取/書込みヘッド44」を、「光学的カップリング」として把握した発明である。また、「光学的カップリング」に関する技術常識として、特にプリンタ分野、共通バス方式に適した引用文献5に記載の発明をもって、引用文献2を把握したものである。
(ウ)相違点1?3の整理
ここで、相違点1?3と、引用文献2との対比を容易にするために、下表の通り相違点1?3を整理する(審決注:丸付数字は便宜上(丸1)などと表記した。)。
┌───────────────────────────────┐
│【1A3’-(丸1)】(相違点1) |
│ 記録装置が、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク|
│収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光|
│部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、 |
│【1A3’-(丸2)】(相違点1) |
│ 該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器|
│の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段を有し |
├───────────────────────────────┤
│【1A5’-(丸1)】(相違点1) |
│ 前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体イン|
│ンク収納容器の前記発光部を光らせ、 |
│【1A5’-(丸2)】(相違点1) |
│ その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は|
│前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する |
├───────────────────────────────┤
│【構成要件1D’】(相違点2) |
│「液体インク収納容器」(印刷記録材容器)が |
│前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部を有する |
├───────────────────────────────┤
│【構成要件1E’】(相違点3) |
│「制御部」が、 |
│前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の|
│保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する |
└───────────────────────────────┘
(エ)【1A3’-(丸1)】(相違点1)について
前記図で示した構成の説明(i)?(x)を用いて、引用文献2の構成と、相違点に係る構成要件1A3’-(丸1)との対応関係を説明する。
構成要件1A3’-(丸1)は、引用文献2の構成(i)、構成(v)及び構成(vi)に対応する。
引用文献2の「磁気読取/書込みヘッド44」は、上述の通り、引用文献2に記載の示唆「前頁の図面で示した印刷装置は、引用文献2に記載の示唆「印刷ヘッドとプリンターの間の通信は、読取/書込みヘッドによってなされる必要はない。かわりに、光学的、あるいは無線のカップリング等、他の送信技術を用いることもできる。」(6頁右上欄10?14行目)に基づいて、「光学的カップリング」として把握することができる。そして、審判請求書で説明した通り、インクタンクに設けられた記憶素子の情報をプリンタへ送信する必要性から、発光素子をインクタンク側に設け、受光素子をプリンタ側に設けることは必然である。
構成要件1A3’-(丸1)の前段「記録装置が、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように(受光手段が)配置され」部分((受光手段が)は請求人が追記した。)は、引用文献2の記載「キャリッジ34の通路近傍に取りつけられ印刷ヘッドがその位置を通過する都度印刷ヘッドの磁気片メモリー14を読み書きする磁気読取/書込みヘッド44」(3頁右下欄7?10行目)に対応する。
また、構成要件1A3’-(丸1)の後段「前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え」部分は、磁気読取/書込みヘッド44を光学的カップリングとして把握したプリンタ側の受光素子に対応する。
(オ)【1A3’-(丸2)】(相違点1)について
構成要件1A3’-(丸2)は、引用文献2の構成(ii)、構成(v)及び構成(vi)に対応する。
また、プリンタ分野において、発光素子及び受光素子からなるフォトカプラを用いて、相対移動する物体の位置検出を行うことは、引用文献8(甲第8号証。特開昭57-6782号公報)に示すように周知の技術である。引用文献8には、「前記キャリヤ4には検出器14が装着されている。この検出器14には受光素子が取着されており、点灯している前記操作体6?12を前記受光素子によって検出することによりタブ位置が検出されるようになっている。」(2頁左上欄19?右上欄4行目)との記載がある。
引用文献8には、上記「2(8)」の「引用文献8の開示事項」に示した摘記事項アないしウのとおりの記載がある。
(カ)【1A5’-(丸1)】(相違点1)について
構成1A5’-(丸1)は、引用文献2の構成(viii)乃至構成(x)に対応する。ここで、構成(ix)の構成について補足する。発光素子は、外部制御装置Cに対応するプリンタ側の制御によって発光することは明らかである。そして、インクタンクの装着位置の誤りを防止する目的からして、キャリッジに装着され、磁気読取/書込みヘッド44に対向しているべきインクカートリッジの発光素子を光らせることは、当業者であれば容易に想到し得る事項である。
例えば、引用文献9(甲第9号証)には、所定位置に搬送されたインクタンクの装着位置誤りを検出する通信技術に関し、「パーソナルコンピュータPCは、制御回路30を介して第n番目のインクカートリッジを交換位置まで移動させる(ステップS210)。なお、パーソナルコンピュータPCはnの初期値として「1」を用いるものとし、以下の説明ではn=1として説明する。したがって、図12に示すように、先ず、第1番目のインクカートリッジCA1が、交換用開口部14に対応する位置まで移動させられる。・・・。また、インクカートリッジCA2、CA3、CA4についても図13および図14に示すように、順次、交換用開口部14に対応する位置まで移動させられる。…インクカートリッジCA1の記憶装置20が保有する識別データに対応する識別データをデータバスDB上に送信する(ステップS230)。パーソナルコンピュータPCは送信した識別データに対して応答があるか否かを判定する(ステップS240)。すなわち、装着されるべきインクカートリッジCA1が装着されている場合には、送信された識別データに対応する識別データを保有する記憶装置20が応答し、誤ったインクカートリッジCAが装着されている場合には、いずれの記憶装置も記憶装置20に対応する識別データに対して応答することができない。パーソナルコンピュータPCは、応答がない場合には(ステップS240:No)、誤ったインクカートリッジCAが装着されている旨を報知し(ステップS250)」(第26頁6行?第27頁7行)と記載されている。








(キ)【1A5’-(丸2)】(相違点1)について
1A5’-(丸2)は、、引用文献2の構成(ii)及び構成(vi)に対応する。念のため、「その光の受光結果に基づき…前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」の技術的内容について補足する。この「搭載位置を検出する」という構成は、液体インク収納容器のLEDが発光した場合、正しい位置にインクタンクが装着されたと判断する処理である。この点、101号訂正明細書の23頁10?13行目に「インクタンク本来の正しい位置に装着されているとき、第1受光部210はLED101の発光を受光することができ、制御回路300は、その装着位置にはインクタンク1Yが正しく装着されていると判断する。」との記載がある。
上述した構成1A5’-(丸1)に対応する引用文献2の構成(viii)乃至構成(x)と、1A5’-(丸2)に対応する引用文献2の構成(vi)とによれば、磁気読取/書込みヘッド44に対向しているべきインクタンク(印刷ヘッド)の発光素子がなんらかの応答を行い(例えば、発光し)、受光素子がその応答を受信(例えば、受光)することが分かる。そして、引用文献2の構成(ii)の構成ないし目的から、その受光結果に基づいて、インクタンクの搭載位置を検出していることは明らかである。
(ク)【構成要件1D’】(相違点2)について
構成要件1D’は、引用文献2の構成(i)及び構成(v)に対応する。
引用文献2の「磁気読取/書込みヘッド44」は、上述の通り、引用文献2に記載の示唆に基づいて、「光学的カップリング」として把握することができ、インクタンクに設けられた記憶素子の情報をプリンタへ送信する必要性から、発光素子をインクタンク側に設け、受光素子をプリンタ側に設けることは必然である。
構成要件1D’の「液体インク収納容器」が「前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部を有する」は、磁気読取/書込みヘッド44を光学的カップリングとして把握し、インクタンク側に設けた発光素子に対応する。
(ケ)【構成要件1E’】(相違点3)について
構成1E’は、引用文献2の構成(viii)ないし構成(x)に対応する。また、外部制御装置Cに対応するプリンタ側から識別符号が入力される点は、上記(カ)で説明した通りである。

(5) 被請求人の主張する後記「第6 3(7)」の「引用文献2と本件特許発明の発明思想の相違」に対する反論
ア 被請求人の主張
被請求人は、「引用文献2は、本件特許発明とまったく異なる目的及び構成の手段しか開示しておらず、本件特許発明における誤装着検出のための手段(光照合処理)の構成を開示も示唆もしていない。」と主張する。
イ 請求人の主張
しかしながら、上述したように、インクタンクの誤装着を検出する手段は、本願出願時における技術常識を参酌することにより、引用文献2に記載されている事項から導き出せる事項であり、技術的思想も本件特許発明と共通する。

(6) 被請求人の主張する後記「第6 3(8)」の「引用文献3?8について」に対する反論
ア 「ア 引用文献3について」について
引用文献3から抜粋した記載に関する被請求人の主張は認める。
しかし、引用文献3は、本件特許発明の出願当時の背景技術を示しており、しかも、技術的課題及び技術分野は引用文献1、2と共通しているため、引用文献1、2に基づく本件特許発明の容易想到性を検討する際に考慮すべき文献である。
イ 「イ 引用文献4について」について
引用文献4から抜粋した記載に関する被請求人の主張は認める。
しかし、相違点1乃至相違点3に相当する構成は全く開示されていない点は争う。引用文献4には、光通信に関する構成が開示されており、引用文献2に接した当業者は、光学的カップリングに係る示唆に従って、引用文献4に記載されたような光通信技術を想起することができる。引用文献4に記載された光学的カップリングの構成は、少なくとも相違点1の受光手段及び相違点2の受光部の物理的構成に対応する。
また、被請求人は、引用文献4に記載の技術は「本件訂正後発明の課題とは何の関係もない発明である」(「答弁書」28頁下から1行目)と主張する。
被請求人の主張は、引用文献4の技術が、引用文献2の技術常識としても参酌されることが無い文献であるかの印象を与えるが、引用文献1、2、4はいずれもプリンタ関連の技術であり、技術分野が共通している。また、引用文献2に記載された光学的カップリングと、引用文献4に記載の発光ダイオード及び光センサ発光部及び光センサとは、技術要素が共通している。従って、引用文献4は、引用文献2の技術内容を把握する際の技術常識として参酌することができるものである。決して、何の関係も無い発明では無い。
ウ 「ウ 引用文献5について」について
(ア)引用文献5から抜粋した発明の名称、<産業状の利用分野>及び【発明の詳細な説明】の記載に関する被請求人の主張は認める。その余は争う。
(イ)被請求人は、「引用文献5は、本件特許発明とは異なる技術分野についての公知文献であり、本件特許発明に想到する上で参考になる公知文献は開示されていない。」(「答弁書」29頁13?15行目)と主張する。
しかし、引用文献5は、引用文献2と同じプリンタ分野の発明であり、引用文献2に接した当業者が、磁気読取/書込みヘッド44を光学的カップリングとして把握する際、光学的カップリングの技術常識として考慮するものである。
(ウ)また、被請求人は、構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’を開示したものではないと主張する。
しかし、上述した通り、引用文献5に記載された構成は、構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’に対応するものである。
(エ)以上の通り、引用文献5は、引用文献1、2と同一の技術分野に属する文献であり、引用文献1、2に基づく本件特許発明の容易想到性を検討する際に考慮すべき文献である。
引用文献5の<産業上の利用分野>にはプリンタが掲げられている以上、プリンタに適用できる技術であることは明らかであり、引用文献5は、引用文献2に記載された発明を把握する際に、技術常識として参酌され得るものである。
エ 「エ 引用文献6について」について
(ア)引用文献6から抜粋した発明の名称、<産業上の利用分野>及び発明の詳細な説明の記載に関する被請求人の主張は認める。その余は争う。
(イ)被請求人は、「本件特許発明とは全く異なる技術分野の公知文献であり、本件特許発明の想到する上で参考になる公知文献は開示されていない。」と主張する。
しかし、引用文献6は、引用文献2と同じプリンタ分野の発明であり、上述したように、引用文献2に接した当業者が、磁気読取/書込みヘッド44を光学的カップリングとして把握する際、光学的カップリングの技術常識として考慮するものである。
引用文献6の【産業上の利用分野】にプリンタが掲げられている以上、プリンタに適用できる技術であることは明らかであり、引用文献6は、引用文献2に記載された発明を把握する際に、技術常識として参酌され得るものである。
(ウ)また、被請求人は、構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’を開示したものではないと主張する。
しかし、引用文献5と同様、引用文献6に記載された構成は、構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’に対応するものである。
(エ)以上の通り、引用文献6は、引用文献1、2に基づく本件特許発明の容易想到性を検討する際に考慮すべき文献である。
オ 「オ 引用文献7について」について
(ア)引用文献7から抜粋した発明の名称、課題の記載に関する被請求人の主張は認める。また、構成要件1A3’、1A5’及び1D’が開示されていない点、判決の内容については認める。
(イ)しかし、引用文献7には、構成要件1E’「入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する」という制御内容は開示されている。
カ 「カ 引用文献8について」について
引用文献8には、発光素子及び受光素子を位置検出手段として利用することができることが開示されており、本件発明1と無関係では無い。

(7) 小括
上記(4)ないし(6)で説明したとおり、引用文献1に引用文献2を組み合わせることについての動機付けが存在する。また、訂正後請求項1の構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’は、特許発明の出願時における技術常識を参酌することにより当業者が引用文献2に記載されている事項から導き出せる事項である。
従って、本件発明1及び2は、引用文献1、2に記載された発明に基いて容易に想到し得る発明であり、本件発明1及び2に係る特許は無効とすべきものである。

(8) 被請求人の主張する後記「第6 3(10)」の「審判請求書42?57頁への反論」に対する反論
ア 「ア 引用文献1発明に引用文献2発明を適用した発明の構成について」について
(ア)前段(「答弁書」37頁16行目?38頁19行目)
a 被請求人の主張
被請求人は、「請求人の当該箇所の説明は、構成要件1E’(前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部)に相当する構成が、このようにして『容易に想到される』と説明しているように理解されるが、引用文献1及び2のいずれにも、バス接続の信号線を通じてプリンタ本体からインクタンクの制御部に送信し、インクタンクの情報保持部の色情報に応じて発光部の発光を制御する構成など、開示されていない。」(「答弁書」38頁3行目?11行目)と主張する。
b 請求人の主張
当該箇所(審判請求書42頁1?8行目)で請求人が主張しているのは、引用文献2に記載の課題、即ち印刷ヘッド(インクタンク)の取り付け位置の誤りを防止するためには、インクタンクが保持する色情報を、受光素子(磁気読取/書込ヘッド44を光学的カップリングに置換したもの)で受光する必要があり、このためには、(丸1)なんらかの発光命令をインクタンクへ送信することが必要である点、(丸2)発光命令をインクタンクへ送信する通信手段として「バス接続配線」が考えられる点である。
「光学的カップリング」を構成する発光素子に発光命令を与えるための通信手段として、信号ライン(共通バス)を使用することは、引用文献2の図2(上記構成(vii)参照)に示すように、技術常識(例えば、引用文献5)である。
また、構成要件1E’についても「(ケ)【構成要件1E’】(相違点3)について」で説明した通りである。
(イ)中段(「答弁書」38頁19?下から1行目)
a 被請求人の主張
被請求人は、「引用文献5の周知技術を適用すれば、構成要件1E’の、プリンタからの色情報をインクタンクの色情報と照合して発光部の発光を制御する構成に想到しえると説明しているかのようであるが、これも誤導的な説明である。」と主張する。
b 請求人の主張
請求人がここで主張する「通信手段の仕様1」は、引用文献2の「磁気読取/書込みヘッド44」を「光学的カップリング」に置換し、発光命令をインクタンクへ送信する通信手段として「バス接続配線」を採用した構成である。
「光学的カップリング」を構成する発光素子に発光命令を与えるための通信手段として、信号ライン(共通バス)を使用することは、引用文献2の図2(上記構成(vii)参照)に示すように、技術常識(例えば、引用文献5)である。
また、構成要件1E’についても「(ケ)【構成要件1E’】(相違点3)について」で説明した通りである。
(ウ)後段(「答弁書」39頁1行目?頁15行目)
a 被請求人の主張
被請求人は、「引用文献5は、光通信を行うフォトカプラの構成についての開示であり、インクジェットプリンタのインクタンクの構成ではなく、訂正後請求項1に想到する上で当業者が参照する文献ではない。…中略…「光照合処理という技術的思想が先にあって、そのために必要な構成として採用する」という発想でしかありえない。」(「答弁書」39頁1行目?9行目)と主張する。
b 請求人の主張
上述したように、引用文献2には、「印刷ヘッドとプリンターの間の通信は、読取/書込みヘッドによってなされる必要はない。かわりに、光学的、あるいは無線のカップリング等、他の送信技術を用いることもできる。」(6頁右上欄10?14行目)との示唆がある。そして、引用文献5に係る発明は、光結合装置(光学的カップリング)に関する発明であり、「本発明は、…プリンター…等の情報機器に関する」(引用文献5の2頁左欄9?12行目)との記載から明かなとおり、プリンタへの適用が想定された発明である。従って、引用文献2に接した当業者が当然に参酌する文献である。
また、被請求人が主張する「光照合処理」の本質的技術的思想を具現化した構造は、引用文献2に開示されており、引用文献の組み合わせに何ら後知恵的な考え方など存在しない。
「光照合処理」とは、「正常に装着されたインクタンクそれぞれが正しい位置に装着されているか否かを判断する処理である」(本件明細書22頁44?41行目)。そして、その本質は、本件明細書の第9頁5?10行目に「キャリッジに搭載された複数のインクタンクについて、その移動に伴い所定の位置で順次その発光部を発光させるとともに、上記所定の位置での発光を検出するようにすることにより、発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識できる。これにより、例えば、ユーザに対してインクタンクを正しい位置に再装着することを促す処理をすることができ、結果として、インクタンクごとにその搭載位置を特定することができる。」(下線は請求人が付した)と記載されている。つまり、「光照合処理」の本質は、所定の位置でインクタンクの発光部を発光させ、所定位置での発光部の発光を検出することにより、インクタンクの取り付け位置の誤りを検出する点にある。
一方、引用文献2には、「キャリッジ34の通路近傍に取りつけられ印刷ヘッドがその位置を通過する都度印刷ヘッドの磁気片メモリー14を読み書きする磁気読取/書込みヘッド44」(3頁右下欄7?10行目)、記憶素子14の「データは印刷ヘッドから読み取ることができ、所望に応じて使用または表示できる。」(3頁左下欄3行目?4行目)、「従来のような印刷ヘッドの取り付け位置の誤りによる印刷不良も簡単に防止することができる。」(6頁左下欄12?14行目)、「印刷ヘッドとプリンターの間の通信は、読取/書込みヘッドによってなされる必要はない。かわりに、光学的、あるいは無線のカップリング等、他の送信技術を用いることもできる。」(6頁右上欄10?14行目)等の記載があり、上記「光照合処理」の技術的思想の本質的部分を具現化したものが引用文献2に開示されている。
以上の通り、引用文献2には「光照合処理」の技術的思想の本質的部分は開示されており、上述したように、当業者は、技術常識(引用文献5?8)等を参酌すれば、引用文献2から構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’を把握することができる。
イ 「イ 『通信手段の仕様1』と構成要件1A3’、1A5’及び1D’」について
(ア)被請求人の主張
被請求人は、「『搭載位置を検出する』構成がどのような根拠に基づいて開示されているというのか、請求人の主張はこの点が全く不明である。…中略…引用文献2には、光通信技術(光学的カップリング)を利用して、プリンタが、インクタンクに設けた記憶素子14内の情報を読み取るというだけの構成が開示されているに過ぎず、この引用文献2発明の構成は、構成要件1A3’や1A5’の光照合処理の構成とは全く異なる。」(「答弁書」40頁9?17行目)と主張する。
(イ)請求人の主張
しかしながら、構成要件1A3’及び1A5’は、広範な記載であり、「光通信技術(光学的カップリング)を利用して、プリンタが、インクタンクに設けた記憶素子14内の情報を読み取るというだけの構成」も包含されるものである。
おそらく、被請求人が主張する「搭載位置を検出する」構成は、構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’を意味し、被請求人はかかる構成が開示されていないと主張していると解されるが、これらの構成要件は、「(カ)【1A5’-(丸1)】(相違点1)について」、「(キ)【1A5’-(丸2)】(相違点1)について」、「(ケ)【構成要件1E’】(相違点3)について」で説明した通り、引用文献2?8に開示されている。
ウ 「ウ 発光ダイオードの発光制御に関する仕様の選択について」について
(ア)被請求人の主張
被請求人の主張は、要するに「光照合処理」の仕組み、特に発光ダイオードの発光によってどのようにインクタンクの取り付け位置の誤りを検出できるのかという具体的な方法が引用文献に開示されていないと縷々述べたものである。
(イ)請求人の主張
a しかしながら、「(カ)【1A5’-(丸1)】(相違点1)について」、「(キ)【1A5’-(丸2)】(相違点1)について」、「(ケ)【構成要件1E’】(相違点3)について」で説明した通り、発光ダイオードの発光によってどのようにインクタンクの取り付け位置の誤りを検出できるのかという具体的な方法が引用文献に開示されている。
以下、被請求人のその他の主張について念のため反論する。
b 被請求人は、エステー事件・プレジール事件の判決を引用して、本件特許発明が進歩性のある発明であることを主張しているが、そもそも本件事件とは特許無効の主張の基礎となる引用文献が異なり、特許性を主張する根拠にはならない。
c また、被請求人は「【発光ダイオードの発光制御方法を示した模式図】について、引用文献の開示内容から飛躍した内容であると主張している。
しかしながら、プリンタ側の受光素子(「磁気読取/書込みヘッド44」を光学的カップリングとして把握した構成)と、インクタンクに設けられた発光素子(「磁気読取/書込みヘッド44」を光学的カップリングとして把握した構成)とを用いて、インクタンクの取り付け位置の誤りを検出することまで分かれば、当業者は、その目的に従った種々の発光制御に想到し得る。
同様の確認作業は日常生活でも行われる。例えば、自分Xの目の前に居る人物(インクタンクに相当)が特定の人物(名前A)であるかどうかを確認する手段として、会話(音声)を用いることができることが分かれば、目の前にいる人物に向かって「Aですか?」と問いかけ、その返事(「はい」または「いいえ」)を聞くことにより特定の人物であるかを確認する方法は周知慣用の方法である。
通常の創作能力を発揮し得る当業者であれば、誰でも行い得るこのような日常的な確認方法を引用文献2に応用して、構成要件1A5’「キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」及び構成要件1E’「「制御部」が、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する」に想到し得る。
より技術的かつ具体的な根拠に基づく説明は、「(カ)【1A5’-(丸1)】(相違点1)について」、「(キ)【1A5’-(丸2)】(相違点1)について」、及び「(ケ)【構成要件1E’】(相違点3)について」で説明した通りである。
また、被請求人が認めているように、「引用文献2には、光通信技術(光学的カップリング)を利用して、プリンタが、インクタンクに設けた記憶素子13内の情報を読み取る」という構成が開示されている。一方、引用文献1の第9頁右欄5?第10頁左欄1行目に「制御回路30から送出された識別情報に対して記憶装置21?26が応答信号を返送することによって、インクカートリッジCA1?CA6の識別が実行されているが、制御回路30によって各記憶装置21?26に格納されている識別情報を読み出し、所望するインクカートリッジCA1?CA6であるか否かを判定しても良い。」と記載されていることから分かるように、(丸1)インクカートリッジに設けられた記憶装置21?26に格納されている識別情報を読み出して、インクカートリッジの識別を行う方法と、(丸2)制御回路30から送出された識別情報に対して記憶装置21?26が応答信号を返送することによって、インクカートリッジCA1?CA6の識別を行う方法とは等価である。従って、当業者であれば、引用文献2及び引用文献1の上記記載から、構成要件1A5’「キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」及び構成要件1E’「「制御部」が、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する」に想到し得る。
エ 「エ 請求人による容易想到性の論理付けの飛躍」について
(ア)被請求人の主張
a 被請求人は請求人の主張に論理的飛躍があるとし、「(ア)(a欄)において、なぜ、引用文献1に既に存在している『バス接続配線』がありながら、引用文献2の『光通信手段(光学的カップリング)』を併用することが容易に想到できるのか不明である」と主張する(「答弁書」44頁1?3行目)。
b また、被請求人は、「引用文献2の『光学カップリング』を引用文献1発明に付加した場合であっても、付加された『光学カップリング』の構成だけで装着位置間違い検出が可能でなければならないので、付加された『光学カップリング』の構成をわざわざ変更する必要はない。変更する必要がないのだから、請求人が説明するような『装着位置間違い検出に利用される通信手段の選択、すなわち、通信手段に関する仕様の選択』といった行為はあり得ないことであって…」(「答弁書」45頁1?6行目)と主張する。
c さらに、被請求人は、「『制御部(プリンタ本体)』→『印刷記録材容器(インクタンク)』の通信(発光命令送信)には、なぜか『光通信』を適用せずに、都合よく『バス接続配線』を適用している。」(「答弁書」45頁12?15行目)と主張する。
(イ)請求人の主張
a 上記(ア)aについて
上記「(3)イ」の「イ 引用文献1の『バス接続配線』と引用文献2の『光通信手段(光学的カップリング)』の組み合わせについての動機の欠如」について、で述べた通り、引用文献1の「バス接続配線」と引用文献2の「光通信手段」とは機能が異なるため、両通信手段は併存し得る。
また、引用文献1の「バス接続配線」には、カートリッジアウト信号線COLも含まれており、制御回路30は、ホームポジションにて、カートリッジアウト信号線COLの入力値CO=0であるか否かを判定することにより、全てのインクカートリッジCA1?CA6がキャリッジ11上に装着されているか否かを判定するようになっているから、引用文献2の「光通信手段(光学的カップリング)」を採用する代わりに「バス接続配線」を無くしてしまうとカートリッジアウト信号線COLも無くなってしまい、制御回路30が全てのインクカートリッジCA1?CA6がキャリッジ11上に装着されているか否かを判定できなくなってしまうから、そのような不都合が生じないようにするため、引用文献1の「バス接続配線」と引用文献2の「光通信手段」とは併存し得るといえる(口頭審理における補足の主張)。
b 上記(ア)bについて
被請求人は(ア)(a欄)及び(イ)(b欄)のみで「光学的カップリング」の構成が成立し、(ウ)(c欄)及び(エ)(d欄)が「光学的カップリング」の構成を変更する行為である旨の主張をしているが、誤りである。
(ア)(a欄)、(イ)(b欄)、(ウ)(c欄)及び(エ)(d欄)の全行為で「光学的カップリング」の構成が成立する。「印刷記録材容器」からプリンタ側の「制御部」へ情報を送信する「光学的カップリング」には、その送信を命令する情報を「制御部」から「印刷記録材容器」へ送信する必要があり、そのためには(ウ)(c欄)及び(エ)(d欄)の行為が必要である。従って、被請求人が主張するような「光学カップリング」の構成を変更するような行為は存在せず、論理の飛躍もない。
c 上記(ア)cについて
制御部(プリンタ本体)から印刷記録材容器(インクタンク)への通信手段として、「バス接続配線」及び「光通信」が考えられるが、審判請求書で述べた通り、「引用文献1の3頁右欄34?36行目には、「インクカートリッジに備えられた各記憶装置と制御回路とを接続する信号線数を低減するために、各記憶装置を識別するための信号線を廃止し」と記載されているため、引用文献1に接した当業者であれば、「制御部」から「印刷記録材容器」へのデータ通信手段として、既存のバス接続された通信線(通信手段の仕様1)を選択することは必然である。
また、「光学的カップリング」の技術常識として参酌される引用文献5には、外部制御装置C(制御部に対応)から、印刷記録材容器側への通信手段として共通バスが開示されている。ここで行われている通信手段の選択は、「磁気読取/書込みヘッド44」を「光学的カップリング」に置換する行為を詳細に分析した一手順に過ぎない。つまり、置換後の「光学的カップリング」の構成を変更するような行為ではない。

(9) 被請求人の主張する後記「第6 4」の「本件発明2の無効主張への反論」に対する反論
本件発明2の進歩性欠如の理由は、本件発明1のものと同様であり、本件発明2は、引用文献1、2に記載された発明に基いて容易に想到し得る発明であり、本件発明2に係る特許は無効とされるべきものである。

7 むすび
以上のとおり、本件発明1及び2は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

第5 証拠方法(甲各号証及び資料)
(1)請求人は、本件発明1及び2が、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであることを立証する目的で、審判請求書に添付して甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。

甲第1号証:特開2002-370378号公報
甲第2号証:特開平2-279344号公報
甲第3号証:特開2002-79685号公報
甲第4の1号証:米国特許第5567063号明細書
甲第4の2号証:甲第4の1号証の訳文
甲第5号証:特許第2706849号公報
甲第6号証:特許第2610544号公報
甲第7号証:特開2002-5724号公報
甲第8号証:特開昭57-6782号公報

(2)請求人は、平成24年8月21日付け口頭審理陳述要領書に添付して、甲第9号証及び資料1を提出した。ただし、口頭審理陳述要領書に添付された甲第9号証は再公表公報であったので、請求人は、その後、これを国際公開第02/40275号に差し替えた。被請求人は平成24年9月4日の口頭審理においてこの差し替えに同意した。
なお、資料1は、無効理由の全主張を要約したものであって、新たな主張を記載したものではない(調書)。

甲第9号証:国際公開第02/40275号
資料1:平成23年(ワ)第24355号特許権侵害差止請求事件で提出し
た技術説明会資料及び構成要件対比表

第6 被請求人の主張

請求人の主張は、本件発明1及び2が特許法第29条第2項の無効理由を有するというものであるが、請求人の主張は、以下に詳述するように誤りである。

1 背景及び課題
(1) 背景
カラー画像を印刷するインクジェットプリンタの場合、収納するインクの色が異なる複数のインクタンクを用いてカラー画像を印刷する。例えば、本件特許の図18には、カラー画像が印刷可能なインクジェットプリンタおよびインクタンクが示されており、符号1K、1C、1M、1Yはそれぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを収納したインクタンクである(なお、以下の説明では、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローをK、C、M、Yと略す場合がある)。
プリンタ本体におけるインクタンクの搭載位置はインク色毎に決まっており、例えば、上記図18のインクジェットプリンタでは、向かって左から、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの順となっている。
プリンタ本体に搭載するインクタンクが複数あると、その搭載位置をユーザが誤る場合がある。例えば、イエローの搭載位置にマゼンタのインクタンクを装着してしまう場合である。このような誤装着のまま印刷がなされると、本来とは異なる色で印刷が行われるといった不具合が発生する。
誤装着を防止する方策としては、構造的に防止する方策が従来から提案されている。例えば、インク色毎にインクタンク及び搭載位置の形状を異ならせ、イエローのインクタンクであればイエローの搭載位置にしか嵌らないようにするものである。
しかし、構造的に防止する方策ではインクタンクの外形形状等を異ならせる都合上、インク色毎に金型等の製造設備が必要となり、製造効率やコストの点で不利になる(101号訂正明細書の段落【0007】)。
そこで、インクタンクに電気回路を搭載し、この電気回路とプリンタ本体の電気回路とを信号線を介して接続し、両者のデータ通信による照合によって誤装着を検出し、誤装着状態での印刷を防止する方策が考えられる。その際、信号線の配設の仕方として、以下に述べるように個別接続方式と共通バス接続方式が考えられる(101号訂正明細書の段落【0008】?【0009】)。

(2) 個別接続方式と共通バス接続方式
ア 個別接続方式とは、下図に示すようにインクタンク毎に固有の信号線を割り当てる方式である。この方式の場合、例えば、プリンタ本体側電気回路がイエローインクタンクの装着を確認する場合、Y用信号線にインク色情報の出力要求を送信する。これに対する応答として、イエローのインク色情報を受信した場合は、イエローのインクタンクがYタンク搭載位置に装着されていると判断できる。別の色のインク色情報を受信した場合は、誤装着が生じていると判断できる。応答が無かった場合は、Yタンク搭載位置には何れのインクタンクも装着されていないと判断できる。


しかし、この個別接続方式では、インクタンク毎に固有の信号線(上記のK用、C用、M用、Y用の各信号線)を割り当てる必要があり、上図では信号線を簡略化して1本のみ図示しているが、実際には一つのインクタンクに複数本の信号線が必要とされるため、インクタンクの数に比例して信号線の数が増加するという問題がある(101号訂正明細書の段落【0009】)。

イ 共通バス接続方式は下図に示すように全てのインクタンクに共通の信号線を用いる方式であり、上述した信号線の数が増加するという問題を解消できる。


しかし、共通バス接続方式では、共通の信号線を介してプリンタ本体側電気回路がインクタンクから受ける信号はそのインクタンクの搭載位置に関わらず同じであるため、インクタンクの搭載位置が正しいか否か(つまり、誤装着が生じているか否か)を判別できない。このように、共通バス接続方式では、通信相手であるインクタンクの搭載位置を特定することができない(101号訂正明細書の段落【0009】)。

(3) 課題
このように本件発明1及び2は、共通バス接続方式を採用しつつも、インクタンクの搭載位置間違いを検出することを課題としている。

2 本件発明の構成と作用効果-光照合処理
本件発明1の構成を有するインクタンク、すなわち、構成要件1A1’ないし1A5’の構成を備えた記録装置(プリンタ)に着脱されるインクタンクであって、構成要件1B’ないし1E’の構成を備えたインクタンクを使用することによって、共通バス接続方式を採用しつつも、インクタンクに保持されている色情報を用いて、プリンタ側の電気回路から送られてくる色情報を識別し、自分が指名されている場合には発光部を光らせることが可能になる。
本件発明1の構成のインクタンクについて、そのような操作を行う方法については、101号訂正明細書の段落【0080】?【0094】に、詳細に説明されている。以下に、その要点を説明する。
各インクタンクに設置された基板には、制御素子が搭載されている。制御素子は、構成要件1C’の「情報保持部」と、構成要件1E’の「制御部」から構成されている。
インクタンクは、プリンタ側の電気回路から送信された「色情報」を受信すると、送信されてきた「色情報」のコードを、情報保持部に保持されている自己の色情報のコードと比較し、両者が一致している場合に、制御コードに基づき発光部を点灯させ、一致しないときは、制御コードに基づく発光部の点灯を行わない。
以上の方法により、本件発明1の構成のインクタンクでは、信号線をバス接続にしても、インクタンクの保持する色情報を利用して、特定の色のインクタンクの発光部のみを光らせたり、消灯したり、あるいは点滅させたりすることが可能になる。
上述したインクタンクの色情報に応じて特定の色のインクタンクの発光部のみを光らせるという機能に、プリンタ側のキャリッジの移動機能(構成要件1A1’及び1A3’)と受光部の受光結果に基づいて搭載位置を検出する機能(構成要件1A3’及び1A5’)を組み合わせることにより、インクタンクが正しい位置に装着されているか否かをプリンタで判断することが可能になる。
この基本原理は、インクタンクがキャリッジ上の正しい搭載位置に搭載された場合と、誤った搭載位置に搭載された場合とで、インクタンクの発光部が発光する位置が異なり、この発光位置の相違に起因して「受光部」の受光結果に違いが現れる点にある。この結果、インクタンクが正しい搭載位置にあるか否かを検出することができる。
このような搭載位置検出の具体的な方法の一例が、101号訂正明細書の段落【0108】?【0113】に、「光照合処理」の説明として記載されている。以下、実施例に記載される「光照合処理」について、本件図面を利用して説明する。

下図は、本件特許の図28(a)に注釈を付した図である。キャリッジ上の各インクタンクの搭載位置は、同図で符号K、C、M、Yと記されているように向かって左から、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの順である。同図の例では、符号1K、1C、1M、1Yで示される各色のインクタンクが正しい搭載位置に装着されている。


下図は、本件特許の図29に補足説明を付したものであり、搭載位置検出の一例(全てのインクタンクが正しい搭載位置に装着されている場合)を示している。キャリッジの右方向への移動に伴って、その移動方向におけるキャリッジの位置に応じたインク色のインクタンクの発光部を発光させる。そして、この発光に対する受光部の受光結果に基づいて、タンク搭載位置の正否が判断される。この例では、全色のインクタンクの発光部の発光が受光部により確認されるので、全色のインクタンクが正しい搭載位置に装着されていると判断される。


具体的には、先ず、プリンタ側に設けられた受光部210(上記説明したように、プリンタ側の要件として構成要件1A3’に規定されている)に対して、図中左側から右側へキャリッジ205の移動を開始する。そして、最初に、インクタンク1Yが装着されるべきYタンク搭載位置が受光部210に対向する位置での(キャリッジ205がどの位置にあるかは、プリンタ側で知ることができる情報であり、キャリッジの位置はプリンタ側で制御することができる)、インクタンク1Yの発光部101の発光に対する受光結果を得るために、プリンタ側の制御回路300(電気回路)から、キャリッジ205のコネクタ152(装置側接点)に共通に電気接続される共通配線に対して色情報(Yに対応した色情報)に係る信号を送信し、インクタンク1Yの発光部101を発光させる。
インクタンク1Yが本来の正しい位置に装着されていると、インクタンク1Yは受光部210の正面で発光するので、受光部210はインクタンク1Yの発光部101の発光を受光することができ、プリンタ側の制御回路300は、その装着位置にはインクタンク1Yが正しく装着されていると判断することができる。
インクタンク1M、1C、1Kについても同様の搭載位置検出を行う。すなわち、キャリッジ205を移動しつつ、順次、図29(b)?(d)に示すように、判断する搭載位置を変えながらインクタンク1M、1C、1Kの発光を行い、その受光結果に基づいてインクタンク1M、1C、1Kの搭載位置の正否判断を行う。

下図は、本件特許の図30に補足説明を付したものであり、搭載位置検出の一例(シアンとマゼンタのインクタンクが互いに誤った搭載位置に装着されている場合)を示している。同図から明らかなように、Mタンク搭載位置にインクタンク1Cが、Cタンク搭載位置にインクタンク1Mが、それぞれ誤って装着されており、これらのインクタンクの搭載位置間違いになっている。
この例で注目すべきは、(b)と(c)の段階である。これらの段階では、マゼンタとシアンのインクタンクの入れ間違い装着によって、インクタンク1Mとインクタンク1Cの発光部の発光が受光部で確認されない。したがって、インクタンク1Mとインクタンク1Cの装着位置が間違っていると判断される。


具体的には、(b)の段階では、Mタンク搭載位置が受光部210に対向している状態なので、発光させる対象のインクタンクはインクタンク1Mである。しかし、インクタンク1MはCタンク搭載位置に誤装着されているので、インクタンク1Mは受光部210の正面に位置しないときに発光する。その結果、受光部210はインクタンク1Mからの光を受光できないので、プリンタ側の制御回路300は、M搭載位置にはインクタンク1Mが装着されていないと判断する。(c)の段階でも同様である。
以上説明した光照合処理を行うことにより、プリンタ側の制御回路300は、インクタンクの搭載位置の間違いを検出することができる。

以上説明したとおり、本件発明1の構成を有するインクタンクの使用によって、各インクタンクへプリンタ側から信号を送る線を共通化(バス接続)し、各インクタンクの情報保持部に保持される色情報とプリンタ側からのインクタンクを特定するための色情報とを照合することで、各インクタンクごとに発光部の制御を行うことが可能になり、そして、この機能を利用した上記の光照合処理により、インクタンクが正しい搭載位置に装着されているか否かを確かめることが可能になる。こうして本件発明は、共通バス接続方式採用上の課題であったインクタンクの搭載位置間違いの検出を可能とし、これが、本件発明1及び2により実現される作用効果である。

3 本件発明1の無効主張への反論
(1) 請求人主張の概要
請求人は、引用文献1発明(特開2002-370378号公報:甲第1号証)に、引用文献2発明(特開平2-279344号公報:甲第2号証)を適用し、周知の仕様(引用文献3?8に開示されている周知技術)選択を行うことによって、引用文献1と本件発明1の相違点1?3の構成を、本件発明1の構成(構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’)とすることは容易であって格別の困難性はないから、本件発明1は引用文献1及び2に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、進歩性を有しない、という主張を行っている。
しかし、引用文献1発明に引用文献2発明を適用することには動機付けがなく、両者の組み合わせによって本件発明1の進歩性が否定されることはあり得ない。
更に、引用文献2にも、又その他の請求人が引用する引用文献3?8にも、本件発明1の構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’に相当する構成も、それらを示唆するような構成も記載されていない。引用文献1にこれらの引用文献を組み合わせても、本件発明1に容易に想到することなどできない。
従って、請求人の主張する本件発明1の無効理由は誤りである。以下、詳細に説明する。

(2) 引用文献1の開示事項
引用文献1は、第3審決において主引用例として引用された文献であって、本件発明の進歩性を否定し得ない文献として、その評価が確定しているものである。
甲第1号証には、インクタンク側の電気回路である記憶装置21?26が、そのインクタンクを識別する識別情報を格納すると共に、共通信号線を介してプリンタ本体側の電気回路である制御回路30から送られてくる識別情報と自身の識別情報を照合する機能を有することが開示されている(甲第1号証の段落0037、0038)。
甲第1号証はこの照合機能を利用したプリンタ本体-インクタンク間のデータ通信により、インクタンクの装着の有無を検出するものである。
甲第1号証のものは、全色のインクタンクが揃って装着されているか否かが検出できるだけで搭載位置間違いを検出できない。インクタンクが正しく搭載されている場合も、誤って搭載されている場合も、全色のインクタンクが揃って装着されていればインクタンクからプリンタ本体が受け取る応答信号が全く同じになってしまうからである。
そして、このことが共通バス接続方式採用上の課題であり、本件発明が解決しようとし、かつ、解決した課題であることは上述したとおりである。

(3) 相違点の認定について
請求人は、審判請求書41?42頁において、本件発明1と引用文献1発明を比較し、その相違点として、相違点1ないし3を認定している。この相違点の認定については、被請求人も異論は無い。
請求人の認定した引用文献1発明と本件発明1の相違点1ないし3を、以下に再掲する。

相違点1:構成要件1A3’及び構成要件1A5’
本件発明1は、「液体インク収納容器」(印刷記録材容器)が搭載される側の記録装置が、「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」(構成要件1A3’)を有し「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」構成を有するのに対して、引用文献1発明は当該構成(構成要件1A5’)を有しない点。

相違点2:構成要件1D’
本件発明1は、「液体インク収納容器」(印刷記録材容器)が「前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、…を有する」(構成要件1D’)のに対して、引用文献1発明は当該構成を有しない点。

相違点3:構成要件1E’
本件発明1は、「制御部」が、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する」構成(構成要件1E’)を有するのに対して、引用文献1発明は当該構成を有しない点。

(4) 組み合わせ動機付けの欠如
ア 技術課題の不開示
上記の通り、本件発明の課題は、「共通の信号線=バス接続という共通バス接続方式を採用した場合でも、インクタンクの搭載位置間違いを検出する」、ということである。
このような発明の課題は、引用文献1および2を含むいずれの引用文献にも記載されていない。また、今回の引用文献に限らず、本件特許に関する無効審判事件や侵害訴訟事件等を通じてかなり多く公知文献が提示されたが、何れの文献にもこのような発明の課題は記載されていなかった。要するに、「バス接続を利用しつつインクタンクの装着位置間違いを検出する」という課題は、これ自体が新規な課題であって、当業者が容易に想到し得る課題ではなかったのである。
請求人は、従来技術で解決済みであった技術課題(インクタンクの装着位置間違)を、バス接続を前提としている引用文献1発明においても解決しようと試みるのは至極当然である、と主張する(審判請求書42?44頁の「イ 引用文献1発明に対する引用文献2発明の適用の容易性」の欄)。しかし、「バス接続を用いつつインクタンクの装着位置間違いを検出する」という課題は、何れの引用文献にも示されておらず、(請求人が主張するように)引用文献2や引用文献3に記載の誤装着検出技術を引用文献1発明に適用するとしても、これらの各引用文献においてはバス接続は利用されていないのだから、そもそも、バス接続を利用しつつインクタンクの装着位置間違いを検出することなど、当業者には想到できなかったのである。
「バス接続を採用しつつインクタンクの装着位置間違いを検出する」という技術課題そのものに想到できなかったのであるから、この課題についての解決手段を模索する必要性にも想到し得なかったのであり、だとすれば、引用文献2の構成を引用文献1発明に適用する必要についても当業者は想到し得なかったはずである。すなわち、引用文献2の構成を引用文献1発明に適用する動機付けが欠けていたのである。

加えて、引用文献2には装着位置間違い検出の具体的手法が記載されていないから、引用文献2に接した当業者は、装着位置間違い検出を行うために引用文献2に記載の構成を他の引用発明に付加的に適用しようとは全く考えないはずである。この点からしてもこの組み合わせは動機付けに欠けるというべきである。

イ 引用文献1の「バス接続配線」と引用文献2の「光通信手段(光学的カップリング)」の組み合わせについての動機の欠如
請求人が、引用文献1発明に対する適用容易性を主張している、引用文献2の「光通信手段(光学的カップリング)」(引用文献26頁右上欄10?14行目の「印刷ヘッドとプリンター間のデータ通信は、…光学的…カップリング等、他の送信技術を用いる事もできる。」という開示)は、請求人自身が審判請求書45頁(ウ)(a)欄等で説明している通り、インクタンクとプリンタ本体との間で情報のやり取りを行う通信手段である。
一方、引用文献1の「バス接続配線」も、インクタンクとプリンタ本体との間で情報のやり取りを行う通信手段である。
このような引用文献1と引用文献2に接した当業者は、インクタンクとプリンタ本体との間で情報のやり取りを行う通信手段として、引用文献1では「バス接続配線」を利用しており、引用文献2では「光通信手段(光学的カップリング)」を利用していることを認識するが、引用文献1の「バス接続配線」も、引用文献2の「光学的カップリング」も、その目的ないし機能が同じであるから、当業者の技術常識からすれば、いずれか一方を選択することしかあり得えず、これら両通信手段を併用しようとする動機は生じない。
そうすると、引用文献1に対して引用文献2を適用した場合に想到される形態は、引用文献1の通信手段たる「バス接続配線」を、引用文献2の通信手段たる「光学的カップリング」に置き換えたものにしかならない。ただし、このような置き換えを行ってしまうと、引用文献1及び本件発明1の骨格たる「バス接続配線」がなくなってしまうので、両者を組み合わせて本件発明1に想到することには、阻害事由があるといえる。
このように、引用文献1発明の「バス接続配線」を維持したまま引用文献2の「光学的カップリング」を適用して本件発明1の構成に想到することには困難性があり、両者の組み合わせにより本件発明1に容易に想到し得るという請求人の主張は、成り立たない。

(5) 相違点にかかる構成の不開示
上記説明したとおり、引用文献1発明に引用文献2発明を組み合わせることについては、組み合わせの動機が欠如しており、この点のみでも両者の組み合わせによる本件発明1の進歩性否定は成り立たない。
更に、仮に両者を組み合わせても、以下に説明する通り、本件発明1と引用文献1の相違点1ないし3に相当する構成について、引用文献2には開示されていないため、両者を組み合わせても本件発明1に想到することはできないのである。

(6) 引用文献2の開示事項
請求人は、審判請求書29?31頁において、引用文献2の記載8箇所(以下、審判請求書29?31頁における請求人自身の番号付けに従って、請求人引用箇所ア?クと言う)と、Fig.2の図面を引用し、この引用文献2には、本件発明1の構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’の構成、すなわち、上記の相違点1ないし3に相当する構成が開示されている、と主張する。
しかし、引用文献2には、相違点1ないし3に相当する構成など開示されていない。

請求人引用箇所ウ?カに説明されている引用文献2に開示された構成は、印刷アッセンブリー(印刷ヘッド)12に、記憶素子(磁気片メモリー)14を設けておき、この記憶素子14に印刷ヘッドの特性に関するデータ(インク色情報等)を記憶しておき、「キャリッジ34の通路近傍に取り付けられ印刷ヘッドがその位置を通過する都度印刷ヘッドの磁気片メモリー14を読み書きする磁気読取/書込みヘッド44」(請求人引用箇所カ)により、この記憶素子14からの情報を読み取り、また記憶素子14に情報を書き込む、という構成である。また、この情報の読み取り/書き込みを「光通信技術(光学的カップリング)」を利用して行うことも記載されている(請求人引用箇所キ)。
しかし、この構成により、どのようにして誤装着を検出するかについては、引用文献2に何も記載されていない。誤装着の具体的検出方法について何も開示されない引用文献2において、誤装着検出のための光照合処理を実現する構成(構成要件1A3’、1A5、1D’及び1E’)が開示されていないことは明らかである。

確かに、引用文献2には、記憶素子14とヘッド44の情報の読み取り/書き込みについて、請求人引用箇所キに「光学的、あるいは無線カップリング等、他の送信技術を用いることもできる」と説明されているとおり、情報の書き込みや読み取りに「光」を用いることは記載されている。しかし、誤装着検出用の受光部に対して投光するための光を発光するインクタンク側発光部(構成要件1D’)は開示されていないのであり、また、プリンタ本体から入力された色情報に係る信号とインクタンク自身が保持する色情報とによりインクタンク側発光部を制御する制御部に相当する構成(構成要件1E’)も開示されていない。

このように、引用文献2には、本件発明1の受光手段に発光するための発光部(構成要件1D’)も、インクタンクにから入力される色情報に係る信号とインクタンクが保持する色情報を比較して発光部を発光させる制御部(構成要件1E’)も、開示されていない。もちろん、これら構成要件1D’および構成要件1E’と協働して光照合処理を実施するための構成である構成要件1A3’及び1A5’に相当する構成も、開示も示唆もされていない。請求人自身、請求人引用箇所のア?クの、どこのどの記載が、これらの構成要件(1A3’、1A5’、1D’、1E’)に相当するというのか、詳細な説明を何も行っていない。
引用文献2には、相違点1ないし3に相当する構成は開示も示唆もされておらず、引用文献1発明に組み合わせても、本件発明1に想到することはできないのである。

(7) 引用文献2と本件発明の発明思想の相違
引用文献2は、本件発明とまったく異なる目的及び構成の手段しか開示しておらず、本件発明における誤装着検出のための手段(光照合処理)の構成を開示も示唆もしていない。

引用文献2の1頁右欄下から3行目以下の〔発明の技術的背景及びその問題点〕には、引用文献2発明の課題について、次のように説明されている。
「一つの欠点はカラー印刷の分野にある。インクジェットカラー印刷の基礎的技術はよく発達している。それは基本的にはシアン、黄、マゼンタ、ときには黒色のインクの液滴を別個の印刷ヘッドから印刷媒体に向けて制御自在に排出するものである。しかしかかる印刷方法では、印刷ヘッドから発生したインクの液滴が所望の位置関係をもって印刷媒体に降下するよう、個々の印刷ヘッドの相対位置を精密に位置決めする必要がある。かかる精密な相対位置決めの必要性へのアプローチとして、必要なオリフィスのすべてが形成された単一のオリフィス板を用いて、印刷ヘッドの一部または全部を一つのアッセンブリーに構成することが行われてきた。…残念ながら、数個の印刷ヘッドを一個のアッセンブリーに構成すると、印刷ヘッドの最初のインク供給部がインク切れになったときに、かかるアッセンブリーは実際上役に立たないものになってしまう。精密な相対位置決めの必要性への他のアプローチとしては、数個の個別の印刷ヘッドを用い、各印刷ヘッドをプリンターに取り付けた後の印刷ヘッド上のオリフィス板の位置を光学的に探知する方法がある。かかるシステムのうち、米国特許4,709,245に示すように、各印刷ヘッドを光源を通過するように動かし、反射光の変化を感知することにより、各オリフィス板の端の位置を検出するものがある。…しかし、これはオリフィスの垂直位置については何の情報も与えない。加えて、この技術は…オリフィス板の端が精密に規定されていない場合無効である。」
上記箇所に説明されている通り、インクジェットカラー印刷においては、印刷ヘッドの位置決めを精密に行う必要があり、そのために、複数色の全ての印刷ヘッドを一つのアッセンブリー(部材)に組み込むことが行われていたが、それでは、一つのヘッドがインク切れになってしまうと、そのアッセンブリーは使用できなくなる欠点があった。
そのため、色ごとに数個の印刷ヘッドを使用する方法が考えられたが、従来の技術では、ヘッドの位置決め(印刷オリフィスの位置)を、水平方向・垂直方向の両方向について精密に設定することが難しいという課題があった。

また、もう一つの従来技術の課題として、長時間の複雑な印刷作業において、ある色のインクが悪いタイミングで切れてしまうということがあり、消耗しかかっているインクジェット印刷ヘッドを可視表示しようとする試みがなされていた、ということも説明されている(引用文献2の2頁左下欄5?21行目)。
引用文献2は、これらの課題、とくに、複数色の印刷ヘッドを使用した場合にそれらの印刷ヘッド(オリフィス)の位置を精密に調整するという課題を、印刷ヘッドを特性化するデータを記憶できる記憶素子を各印刷ヘッドに付随させて提供することによって解決することを目的とする発明である。このことは、引用文献2の〔発明の目的〕及び〔発明の概要〕の冒頭に、次のように説明されている。
「本発明は、従来のインクジェット印刷システムにおける以上の欠点またはその他の欠点を、印刷ヘッドを特性化するデータを記憶できる記憶素子を各印刷ヘッドに付随させて提供することによって解決することを目的とする。」(引用文献2、2頁右下欄9?13行目)
「本データは印刷ヘッドの本性、あるいはその動作特定の一つまたはそれ以上を特性化することが可能である。このような動作特性には、印刷ヘッド内のインクの色、量、あるいは印刷ヘッド本体上のオリフィスの位置などを含むことができる。」(引用文献2、2頁右下欄15?19行目)。

各印刷ヘッドに付随させた記憶素子のデータを使用して、印刷ヘッド(オリフィスの位置)の調整、及びインクの消費量の検出を行う具体的な方法については、引用文献2の3頁左上欄13行目以下の〔発明の実施例〕に詳細に説明されている。
インクの消費量の検出方法については、3頁左下欄下から5行目?4頁右上欄12行目に説明されている。要約すれば、印刷ヘッドに印刷に使用したインク滴の数をカウントする監視回路を接続し、そのカウントデータを印刷ヘッドにつけた記憶素子(メモリー)に書き込み、それを読み取ることで、インク残量を検出する、という方法である。
印刷ヘッドの位置調整(オリフィス板のアライメント)の方法については、引用文献2の4頁左上欄13行目?6頁左上欄9行目に渡って、詳細に説明されている。ここに説明されている方法を要約すれば、「ミスアライメントを特性化するデータを磁気媒体14に記憶させ、それを印刷ヘッドに与えられる噴射用パルスを前補償するのに使用できる。」(引用文献2、4頁左下欄2?5行目)という方法である。
引用文献2は、印刷ヘッドに記憶素子14を取り付け、その記憶素子に、「印刷ヘッドの本性、あるいはその動作特定の一つまたはそれ以上を特性化する」データを書き込み、そして読み取ることで、複数の印刷ヘッドについてその位置決めを正確に行い、また、各色のインクについてその消費量を検出するという課題を解決した発明である。これらの課題については、これを解決する具体的な方法も、上記の通り実施例として詳細に説明されている。

請求人が引用文献2から本件発明を想到し得る根拠として引用しているのは、引用文献2の2頁左下欄1?4行目の、「カラー印刷システムのもう一つの欠点は、少なくとも構成色に対し別個の印刷ヘッドを用いるものにおいては、プリンター内部で印刷ヘッドが不注意から誤った位置に取り付けられる事である。」という記載、そして引用文献2の6頁左下欄の〔発明の効果〕の、「さらに、従来のような印刷ヘッドの取付位置の誤りによる印刷不良も簡単に防止することができる。」記載である。しかし、この「取付位置の誤りによる印刷不良の防止」については、引用文献2のどこにも、その具体的な手段は全く記載されていない。

引用文献2は、複数の印刷ヘッドの位置決めと、各色のインクについてその消費量を検出するという課題を解決した発明と理解されるのであって、誤装着の検出については、その手段について何も説明されていない。引用文献2におけるインクタンク記憶部のデータをプリンタ側が読み取る過程について、それがインクタンクの位置検出手段になり得るなどとは一切記載されていないし、示唆もない。
本件発明を知らない当業者にとって、引用文献2のインクタンク記憶部のデータ読み取りは、引用文献1における有線によるインクタンクとプリンタ本体の通信と同様の通信に他ならず、それ以上の意味を持たない。

このように、引用文献2は、複数の印刷ヘッドの位置調整と各色のインクの消費量の検出という課題の解決を行った発明であり、本件発明の「インクタンクの誤装着の検出」という発明思想はなく、誤装着検出のための手段についても全く開示されていない。
引用文献2は、本件発明に想到する上で、参考になる公知文献ではないのである。

(8) 引用文献3?8について
ア 引用文献3について
引用文献3(甲第3号証)には、インクカートリッジの誤装着検出ついて、請求人が審判請求書32頁に引用している引用文献3の【0017】の、「上記構成によれば、収納するインクの色に関する情報がカートリッジに備えられており、そのインクの色に関する情報に基づいてカートリッジが正規の位置に装着されているか否かを判定しているため、誤装着を防止でき、それに伴ってインクカートリッジ交換後の記録の最適化を容易に図ることが可能となる」と、これに続く【0018】にて、「カートリッジが正規の位置に装着されているか否かの判断の際には、カートリッジに設けられた記憶メモリからインクの色に関する情報を読み出し、その情報に基づいて判定を行うことができる」と説明されている他には、実施例の説明中【0030】に、「ステップS303でヘッドのもつ色情報を読み取る。ステップS305で、そのヘッドが色ごとに指定されている正規の位置に装着されているかを色情報から調べ、正しく装着されていればステップS306へ、誤装着していればステップS307へ進む。」と説明されているだけで、これらより具体的な説明は、引用文献3のどこにも見当たらない。

光照合処理に係る構成である、相違点1ないし3に相当する構成は、引用文献3には全く開示されていない。

引用文献3発明は、各インクカートリッジのホルダ毎に、プリンタ本体の制御部と個別に配線が行われている、そのような構成(上記「個別接続方式」)のプリンタを前提とした発明である。
引用文献3が個別配線構成であることは、【0163】【0164】及び【図68】【図69】に明示されている。図68には、プリンタ本体制御部たる「CPU80」と、メモリたる「ROM854」を有する「BKヘッド」とが配線で接続されていることが示されているが、【0164】に記載されているようにBkヘッドは代表して示されているだけである。ヘッドは4色分あるので、4色ヘッドのそれぞれが図68のように「CPU80」と個別に接続されていることになり、結局、各色ヘッド毎に個別配線されている構成であることが理解される。
個別接続方式プリンタの場合は、各ホルダ毎に個別の配線を通じて各インクカートリッジから色情報を読み取るだけで、当該ホルダに正しいインクカートリッジが装着されているか否か判断し得る。引用文献3発明は、そのような個別接続方式プリンタにおいて、インクカートリッジから色情報を読み取ることで誤装着の検出を行う発明である。
引用文献3発明は、本件発明の前提となるバス配線を使用していない、各インクカートリッジホルダ毎の個別配線を使用した個別接続方式のプリンタについての発明であって、このような個別接続方式を前提とした引用文献3発明を、バス接続を前提とした引用文献1発明(および引用文献1発明に引用文献2発明が適用された発明)に適用することには阻害事由があるのだから、引用文献3は本件発明に想到する上で参考になる文献ではない。

イ 引用文献4について
引用文献4(甲第4号証)は、コードレスプリンタヘッド制御システムについての発明の米国出願である。引用文献4の明細書の【発明の背景】及び【発明の概要】には、引用文献4の発明について次のような説明がされている(以下、請求人による和訳である甲第4号証の2から適宜引用する)。

「主プリンタヘッド制御手段は、パーソナルコンピュータ等の外部信号源からの入力に応じて印刷内容と印刷場所をプリンタカートリッジに知らせるものであるが、プリンタカートリッジから遠くに設置され、可撓性ケーブルによりカートリッジに接続されている。カートリッジ内に設置された印刷ノズル流出口の数に応じ、可撓性ケーブルは50本あるいは60本もしくはさらにそれを上回る多数の個別ワイヤを必要とすることになる。」(甲第4号証の2、2頁18?23行目)
「プリンタヘッドに主プリンタ制御手段を相互接続するあらゆるケーブルの必要性を取り除くプリンタヘッド制御システムを提供することが望ましい筈である。本発明によれば、印刷制御手段とプリンタヘッドとを備えるプリンタを提供し、ここで前記プリンタヘッドはプリンタヘッド駆動制御手段と印刷対象データを記憶するメモリ手段を備え、さらにデータ転送手段を設置して前記印刷制御手段から前記メモリ手段に定期的にデータを転送する。」(甲第4号証の2、2頁下から14行目?同頁下から9行目)

上記記載から明らかなように、引用文献4の発明は、プリンタ本体(ここに印刷制御手段もある)とプリンタヘッドを繋ぐケーブルが、印刷ノズルの流出口の数に応じて50?60本にもなってしまうため、このケーブルを無くすために、プリンタヘッドにメモリ手段を備えて印刷対象データを記憶できるようにし、印刷対象データは、データ転送手段により定期的にまとめてプリンタ本体からプリンタヘッドに転送できるようにした、そのようなプリンタヘッドの発明である。
請求人が、審判請求書32頁に引用している箇所(引用文献4の第3カラム51?53行目)と、FIG.3は、プリンタヘッドとプリンタ本体の間のデータ転送手段についての説明である。このデータ転送手段は、発光ダイオード30によりデータを送信し、光センサ素子31によりデータを受信する、というものである。
請求人は、このFIG.3のデータ転送手段について、「本件発明1の構成要件1A3’、1A5’及び1D’に関連する周知技術が開示されている」(審判請求書32頁14行目?16行目)と主張するが、FIG.3のデータ転送手段は、光通信を行うためのごく一般的な構成に過ぎず、「構成要件1A3’、1A5’及び1D’に関連する周知技術」など開示されていない。
引用文献4は、上記説明した通り、プリンタヘッドにメモリを設け、プリンタ本体から光通信等の無線手段で定期的に印刷対象データを送信してメモリに記憶することで、プリンタヘッドとプリンタを繋ぐ多数のケーブルを不要にする、という発明であり、本件発明の課題とは何の関係もない発明である。光通信に関する一般的な構成が開示されているというだけで、光照合処理に関する構成である、相違点1ないし3に相当する構成は、全く開示されていない。

ウ 引用文献5について
引用文献5(甲第5号証)は、発明の名称を「光結合装置及びこれを利用した情報機器」とする発明の特許公報である。明細書3 欄の【発明の詳細な説明】の冒頭箇所の<産業上の利用分野>として、「本発明は、信号の入・出力を行う場合に用いられる光結合装置(フォトカプラ)及びこれを利用したプログラマブルコントロラー、プリンター、ファクシミリ、複写機等の情報機器に関する。」と説明されており、光結合装置(フォトカプラ)の構成に関する発明である。
フォトカプラを利用する装置の一つとして、「プリンター」が挙げられているが、【発明の詳細な説明】には、もっぱらフォトカプラの構成について記載がなされているだけであり、プリンタの構成については何の記載もない。
従って、引用文献5は、本件発明とは異なる技術分野についての公知文献であり、本件発明に想到する上で参考になる公知技術は開示されていない。
請求人は、審判請求書33?34頁において、引用文献5の請求項1(引用ア)及び【発明の詳細な説明】の記載を3箇所(引用イ、ウ及びエ)引用して、ここには構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’に関連する周知技術が引用されていると主張する。
しかし、引用文献5の請求人の引用する箇所に記載されている技術は、発光素子と受光素子の間で光通信を行うフォトカプラにおいて、各発光素子を駆動させる駆動制御装置の記憶手段に自己の識別符号を記憶させておき、この識別符号を用いることで、複数の発光素子の駆動制御装置を1本の信号ラインLで制御する、という技術である。構成要件1A3’及び1A5’の光照合処理の具体的な構成など記載されていないし、それを示唆する記載もない。また、駆動制御装置が自己識別符号に従って発光素子を制御することは開示されているが、上記説明した通り、この構成はあくまでフォトカプラの構成として説明されているものであり、構成要件1A3’及び1A5’の光照合処理のために受光部に向けて発光するインクタンクの発光部(構成要件1D’)や、それを制御する制御部の構成(1E’)を開示したものではないし、技術分野が全く異なるので、構成要件1D’や1E’の構成に想到する上で参考になる開示でもない。

エ 引用文献6について
引用文献6(甲第6号証)は、発明の名称を「発光素子及びこれを利用した情報機器」とする発明の特許公報である。明細書の【産業上の利用分野】には、「本発明は、発光素子及びこれを利用したプリンター、ファクシミリ、複写機等の情報機器に関する。」と説明されており、利用分野として「プリンター」が挙げられてはいるが、請求項1及び2も、発明の詳細な説明も、もっぱら発光素子の制御手段の構成についてのみ開示しており、プリンタの構成についての開示は全く見当たらない。
結局、引用文献6は、発光素子の制御手段の構成についての発明であって、プリンタの構成についての発明ではない。本件発明とは全く異なる技術分野の公知文献であり、本件発明の想到する上で参考になる公知技術は開示されていない。
請求人は、審判請求書34?37頁において、引用文献6の請求項1及び発明の詳細な説明の記載を6箇所引用し(引用箇所ア?カ)、更に、第1ないし第3図を引用したうえで、ここには、構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’に関連する周知技術が引用されていると主張する。
しかし、請求人が引用する箇所に開示されている構成は、発光素子チップ10を駆動する信号処理回路11内の記憶手段14に、各発光素子チップ10を識別する識別符号を記憶させておき、複数の発光素子チップ10に対して1本の伝送ライン19を通して識別符号を送信し、各信号処理回路がその識別符号を照合して発光素子チップ10を発光させることで、1本の伝送ラインで複数の発光素子チップ10を発光させる、という構成である。構成要件1A3’及び1A5’の光照合処理の具体的な構成など記載されていないし、それを示唆する記載もない。また、信号処理回路が識別符号に従って発光素子を発光させることは開示されているが、上記説明した通り、この構成はあくまで発光素子の制御機構の構成として説明されているものであり、構成要件1A3’及び1A5’の光照合処理のために受光部に向けて発光するインクタンクの発光部(構成要件1D’)や、それを制御する制御部の構成(1E’)を開示したものではないし、技術分野が全く異なるので、構成要件1D’や1E’の構成に想到する上で参考になる開示でもない。

オ 引用文献7について
引用文献7(甲第7号証)は、発明の名称を「立体形半導体素子、該素子が配されたインクタンク、該タンクを備えたインクジェット記録装置、および前記立体形半導体素子を用いた通信システム」という発明の公開特許公報である。引用文献7の1頁目の【課題】に、「各色のインクタンク内の詳細な情報をリアルタイムで検出し、外部のインクジェット記録装置と双方向に情報のやり取りを行うことができる立体形半導体素子等を提供する。」と説明されている通り、複数色のインクタンクを備えたインクジェットプリンタに関する発明であり、この点では本件発明と共通する。
しかし、引用文献7に開示された発明は、引用文献7の図9に示されているような球形の立体形半導体素子を、図14に示されているようにインクタンク中のインク内に浮遊させ、この立体形半導体素子とプリンタ本体とが、図1に示されているとおり、電磁波で無線通信を行うという構成である。インクタンクとプリンタ本体がバス接続という有線接続で繋がれていて、インクタンクの制御部が有線接続でプリンタ本体と通信を行う本件発明とは、全く構成が異なるものであり、本件発明に想到する上で参考になる公知技術ではない。
又、非接触での通信(無線通信)を前提とする引用文献7の構成は、引用文献1のような各インクタンクとプリンタ本体がバス接続(有線接続)されている公知技術と組み合わせることには、阻害事由があるといえる。
請求人は、審判請求書37?39頁において、引用文献7の発明の詳細な説明の記載の4箇所(引用箇所ア?エ)と、図3を引用して、ここには構成要件1E’(前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部)に関連する周知技術が開示されていると主張する。
しかし、構成要件1E’は、「前記接点から入力される前記色情報」という記載から明らかなように、バス接続を通じて有線でプリンタ本体からインクタンクに入力される色情報を利用して発光部を制御する構成なのに対して、引用文献7の立体形半導体に伝えられる識別IDは、非接触(無線)通信で送信されるものである。また、構成要件1E’の発光は、構成要件1D’に「受光手段に投光するための光」と記載されている通り、光照合処理のために受光手段に対して投光されるものであるが、引用文献7の立体形半導体素子は、引用箇所エに「外部へインク内部情報を表示、伝達する。」と説明されているとおり、単に外部に情報を表示するためのものと説明されているだけであり、受光手段への投光であることなどは全く説明されていない。
このように、引用文献7に開示されている立体形半導体素子の構成は、構成要件1E’の構成とは異なっている。
また、それ以外の相違点1及び2に係る構成(構成要件1A3’、1A5’及び1D’)に係る構成は、全く開示されていない。

付言すると、この引用文献7は、上述した第3審決において、甲第14号証として検討された文献であり、本件発明の進歩性を否定し得ない文献として、その評価が確定しているものである。すなわち、第3審決の87?88頁の「b 甲第14号証の記載」には、(a)引用文献7に記載の発明を引用文献1(第3審決の甲第1号証)に記載の発明に組合せる動機付けがなく、また、(b)引用文献7に記載の構成を引用文献1に記載の発明に組合せたとしても、相違点(1A3’、1A5’、1D’及び 1E’)に係る構成には容易に想到し得ない、ということが明記されている。

また、引用文献7は、本件特許権に基づく侵害訴訟事件(平成21年(ワ)第3529号、その控訴審平成22年(ネ)10063号)において、乙17号証として提出された。しかし、引用文献7は、立体形半導体素子とプリンタを繋ぐ電気的接点がなく、外部と非接触であることを前提とする発明であるから(本件発明1及び2のような)電気的接点を設けることはその技術的思想に反することであり、光照合処理に係る構成である構成要件1A3’及び1A5’に関する開示もなく、構成要件1E’に係る構成も開示がないと述べて、他の公知文献と組み合わせても本件発明は無効にならないと判示した。一審判決の判示箇所を、以下に引用しておく。

c 乙17公報について
証拠(乙17)によれば、乙17公報には、各インクタンク内に配置された、インクタンクの色ごとに応答条件が異なる通信機能を有する立体形半導体素子が、インクジェット記録装置側に設けられた通信回路と、外部と非接触の無線によって、インクタンクの色ごとに独立した通信を行うことが開示されていると認められる(段落【0037】、【0039】、【0040】、【0044】?【0047】、【0050】、【0052】、図3等)。しかしながら、乙17公報は、 外部からのエネルギーをインクタンク内の立体形半導体素子に非接触で供給する構成が開示されているだけであり、上記立体形半導体素子とプリンタをつなぐための電気的に接続可能な接点(構成要件1A2’、1B’)に係る記載ないし同構成を示唆する記載は存在しないものと認められる(段落【0006】、【0029】、【0033】、【0034】)。また、同公報には、上記のとおり、インクタンク内の立体形半導体素子とインクジェット記録装置側とが、インクタンクの色ごとに独立した通信を行うことが可能な構成が開示されているものの、本件発明1における方法でインクタンクの誤装着を検出する方法、すなわち、インクタンクの発光部を所定の位置で発光させ、これをプリンタ側の受光部で受光することによって、当該インクタンクが正しい位置に装着されているか否かを検出するという、本件光照合処理(構成要件1A3’、1A5’)に係る記載ないし同構成を示唆する記載は存在しないものと認められる。したがって、乙17公報には、相違点(1)に係る構成のすべて並びに相違点(2)のうち構成要件1B’及び1E’に係る構成が開示されているとは認められない。(一審判決212?213頁)
さらに、引用文献7は、本件特許権に基づく別の侵害訴訟事件(平成21年(ワ)第3527、3528、3530、3538、3539号、その控訴審平成22年(ネ)10064号)においても、乙A17号証として提出されたが同様に判断されている。一審判決の判示箇所を、以下に引用しておく。
b 乙A17公報の記載
証拠(乙A17)によれば、乙A17公報には、各インクタンク内に配置された、インクタンクの色ごとに応答条件が異なる通信機能を有する立体形半導体素子が、インクジェット記録装置側に設けられた通信回路と、外部と非接触の無線によって、インクタンクの色ごとに独立した通信を行うことが開示されていると認められる(段落【0037】、【0039】、【0040】、【0044】?【0047】、【0050】、【0052】、図3等)。
このように、同公報には、インクタンク内の立体形半導体素子とインクジェット記録装置側とが、インクタンクの色ごとに独立した通信を行うことが可能な構成が開示されているものの、本件発明1における方法でインクタンクの誤装着を検出する方法、すなわち、インクタンクの発光部を所定の位置で発光させ、これをプリンタ側の受光部で受光することによって、当該インクタンクが正しい位置に装着されているか否かを検出するという、本件光照合処理(構成要件1A3’、1A5’)に係る記載ないし同構成を示唆する記載は存在しないものと認められる。また、乙A17公報記載の発明も、乙A18公報記載の発明と同様、外部からのエネルギーをインクタンク内の立体形半導体素子に非接触で供給することを技術的特徴とするものであるから(段落【0006】、【0029】、【0033】、【0034】)、乙A1発明のように、立体形半導体素子とプリンタとを電気的につなぐための接点を設けることは、同発明の技術的思想に反するものであるということができる。したがって、乙A17公報記載の発明を乙A1発明に組み合わせる動機付けはなく、また、乙A17公報には、相違点1に係る構成のすべて及び相違点2に係る構成のうち構成要件1B’及び1E’に相当する構成については、開示されていないと認められるから、乙A1発明に同公報記載の構成を組み合わせても、本件発明1に想到することが容易であるということはできない。(一審判決149?150頁)

カ 引用文献8について
引用文献8(甲第8号証)には、印字装置において、印字ヘッド(5)のキャリア(4)に検出器(14)を取り付け、点灯している操作体6?12の光を検出器で受光することで、タブ位置を検出する構成が開示されている。


上記図中の操作体6?12は、手動操作でスライドさせて任意の位置にタブ設定を行う。
引用文献8は、印字ヘッドのタブ位置決めを行う発明であり、インクタンクの正常装着確保という課題とは無関係な公知文献である。インクタンクの発光部・制御部(構成要件1D’、1E’)は開示されていないし、インクタンクの発光部からの発光を受光するプリンタ側の受光手段(構成要件1D’)も開示されていない。光照合処理の構成(構成要件1A3’、1A5’)の開示もない。
引用文献8を、引用文献1及び2、またその他の公知文献と組み合わせても、本件発明に想到し得るものではない。

(9) 小括
以上説明した通り、引用文献1発明に引用文献2発明を組み合わせることについては、動機付けが欠如しており、この点において、両者の組み合わせによる本件発明1の進歩性否定は成り立たない。
更に、仮に両者を組み合わせたとしても、引用文献2には、引用文献1と本件発明1の相違点1ないし3の構成(構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’)に相当する構成は開示されておらず、本件発明1に想到することはできない。
また、引用文献3ないし8にも、構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’に相当する構成は開示されておらず、引用文献1に引用文献2を組み合わせる際に、引用文献3ないし8を参照したとしても、やはり本件発明1に想到することはできない。

以上の理由により、請求人の主張する本件発明1の進歩性欠如の主張は、成り立たない。

(10) 審判請求書42?57頁への反論
請求人の主張する本件発明1の進歩性欠如の主張に対する反論は以上で尽きているが、念のため、審判請求書42?57頁の、請求人による容易想到性検討の主張について、必要と思われる反論を補足しておく。

ア 引用文献1発明に引用文献2発明を適用した発明の構成について
請求人は、「引用文献1発明に引用文献2発明を適用し、「印刷記録材料容器」から、「制御部」への通信手段として光学的な通信技術を選択した場合の構成は下図のとおりである。」(審判請求書46頁14?16行目)と述べて、審判請求書46頁下部に、【引用文献1記載の発明に引用文献2発明が適用された発明の構成】なる図を掲載している。
この図を元にして、請求人はさらに、
「『印刷記録材容器』から色情報をプリンタ側へ送信させるための命令、つまり「印刷記録材容器」のインクの色に応じて発光ダイオードを発光させるための発光命令を送信する送信手段を決定する必要があるところ、下図に示すように、『制御部』から『印刷記録材容器』へのデータ通信手段としては、バス接続された通信線、光通信などの通信手段が考えられる。バス接続された通信線及び光通信は、引用文献1及び同4に記載された周知の通信手段である。」(審判請求書47頁1?7行目)と主張する。
請求人の当該箇所の説明は、構成要件1E’(前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部)に相当する構成が、このようにして「容易に想到される」と説明しているように理解されるが、引用文献1及び2のいずれにも、バス接続の信号線を通じてプリンタ本体からインクタンクの制御部に送信し、インクタンクの情報保持部の色情報に応じて発光部の発光を制御する構成など、開示されていない。引用文献1には、インクタンク側に色情報を保持することは開示されているが、インクタンクには発光部など存在せず、色情報に基づいて発光を制御する構成など開示されていない。
請求人は、引用文献4も取り上げているが、上記説明した通り、引用文献4は、プリンタヘッドとプリンタ本体の間で光通信を行うための一般的な構成が開示されているだけで、この文献を参照しても、構成要件1E’の、プリンタからの色情報をインクタンクの色情報と照合して発光部の発光を制御する構成になど、想到し得ない。
このように、審判請求書47頁の、引用文献1、2及び4の組み合わせから構成要件1E’の構成が想到し得るかのような説明は、これらの文献に記載されていない構成について想到し得るように説明している点で、誤導的である。

さらに請求人は、審判請求書48頁8行目?50頁15行目にかけて、引用文献5の記載も引用した上で、「かかる周知技術を、前記『引用文献1記載の発明に引用文献2発明が適用された発明の構成』に図示した『印刷記録材容器』とプリンタ側の『制御部』との間の送信技術に適用すれば、前記『通信手段の仕様1』に至るのである。」(審判請求書50頁12?15行目)とも述べている。
「通信手段の仕様1」は、審判請求書47頁の図であり、ここでも請求人は、引用文献5の周知技術を適用すれば、構成要件1E’の、プリンタからの色情報をインクタンクの色情報と照合して発光部の発光を制御する構成に想到しえると説明しているかのようであるが、これも誤導的な説明である。
本書にて既に述べた通り、引用文献5は、光通信を行うフォトカプラの構成についての開示であり、インクジェットプリンタのインクタンクの構成ではなく、本件発明1に想到する上で当業者が参照する文献ではない。単なるデータ転送用のデバイスであるフォトカプラについて開示された、「各発光素子を駆動させる駆動制御装置の記憶手段に自己の識別符号を記憶させておき、この識別符号を用いることで複数の発光素子の駆動制御装置を1本の信号ラインLで制御する」という構成を、インクジェットプリンタのインクタンクに適用しようなどと考えるのは、「光照合処理という技術的思想が先にあって、そのために必要な構成として採用する」という発想でしかありえない。
引用文献1、2及び5に接した当業者が、これらの文献から光照合処理という技術的思想を容易に想到することなどできるはずがないのであり(いずれの文献にも、構成要件1A3’、1A5’、1D’及び1E’といった光照合処理に必要な構成の開示も示唆もないことは既に説明した)、「引用文献5を参考にすれば構成要件1E’の構成に想到し得た」などというのは、光照合処理を既に「知っている」者から見た、後知恵的な考え方である。

イ 「通信手段の仕様1」と構成要件1A3’、1A5’及び1D’
請求人は、審判請求書50?52頁において、引用文献2の記載を引用しつつ、審判請求書47頁の「通信手段の仕様1」に示された構成は、構成要件1A3’、1A5’及び1D’にほかならないと主張するが、以下に説明する通り、当該箇所の請求人の主張は、各引用文献における記載による裏付けのない、根拠のない主張である。

請求人は、構成要件1A3’「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」の中の、キャリッジの移動により対向する液体インク収納容器が入れ替わるように配置された受光手段、という構成は、引用文献2の構成の、キャリッジの通路近傍に取り付けられ、印刷ヘッドが通過する都度そのメモリーを読み書きするヘッドに相当し(審判請求書50頁19?24行目)、受光手段の受光により液体インク収納容器の搭載位置を検出する検出手段の構成は、「通信手段の仕様1」に示された「…受光素子で印刷記録材容器の発光ダイオードからの光を受光し、制御部が印刷記録材容器の搭載位置を検出する」に対応し、そのことは引用文献2の「取り付け位置の誤りによる印刷不良も簡単に防止することができる」との記載から明らかである(審判請求書51頁6?15行目)、と主張する。
しかし、審判請求書47頁の「通信手段の仕様1」に、「搭載位置を検出する」構成がどのような根拠に基づいて開示されているというのか、請求人の主張はこの点が全く不明である。審判請求書47頁の「通信手段の仕様1」は、審判請求書45?47頁の説明によれば、引用文献1記載の発明に引用文献2を適用し、さらに引用文献4を参照したものである、という。
しかし、上記説明した通り、引用文献2には、光通信技術(光学的カップリング)を利用して、プリンタが、インクタンクに設けた記憶素子14内の情報を読み取るというだけの構成が開示されているに過ぎず、この引用文献2発明の構成は、構成要件1A3’や1A5’の光照合処理の構成とは全く異なる。引用文献1、2及び4のいずれにも、構成要件1A3’、1A5’の構成は開示も示唆もされておらず、これらを組み合わせても、光照合処理の構成には想到し得ない。
審判請求書51頁下から3行目?52頁3行目における、構成要件1A5’の、「その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」という構成は「通信手段の仕様1」に示された構成に対応する、という主張も、同様に、引用文献1、2及び4のどの記載に基づいて構成要件1A5’の構成が開示されているというのか、全く説明がなされていない。

請求人は更に、「引用文献2発明の効果「従来のような印刷ヘッドの取付位置の誤りによる印刷不良も簡単に防止することができる」…から、引用文献1発明に引用文献2発明を適用して得られた発明は少なくとも「キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の印刷記録材容器の発光部を光らせる」という構成を有する」(審判請求書51頁20?25行目)とも主張するが、何度も説明する通り、引用文献2に開示されているのは、光通信技術(光学的カップリング)を利用して、プリンタが、インクタンクに設けた記憶素子内の情報を読み取るという構成だけであり、又、引用文献1には、そもそもインクタンクの発光部が無い。これらの文献の、どこに「キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の印刷記録材容器の発光部を光らせる」という構成が開示されているというのか、請求人は全く説明していない。

ウ 発光ダイオードの発光制御に関する仕様の選択について
請求人は、審判請求書52頁12行目?15行目において、「『印刷記録材容器』の誤装着を検出するための情報、つまり印刷記録材からプリンタ側の『制御部』へ送信する際に、発光ダイオードをどのように発光させるかは、いうまでもなく、当業者が適宜選択し得る設計事項である。」と主張している。
上記の主張は、発光ダイオードの発光によって誤装着を検出する方法について、「当業者が適宜選択し得る設計事項である」と主張しているようにも読めるが、誤装着を検出する方法が「設計事項」などであるはずがない。光照合処理の仕組みは、従前存在しなかった新規かつ進歩性のある特許発明である。このことは既に本件特許に関する審決取消訴訟判決、侵害訴訟判決により確認され、最高裁においてもこれらの判決はそのまま認められた。特許発明として認められるほどの方法が、「適宜選択し得る設計事項」などであるはずがない。

請求人は、上記主張に続けて、審判請求書52?54頁において、【発光ダイオードの発光制御方法を示した模式図】なるものを示し、「『制御部』は、『印刷記録材容器』へシアンの識別符号を送信することによって「シアンですか?」と印刷記録材容器へ問いかけ、『印刷記録材容器』がシアンである場合、発光ダイオードの点灯によって、自身がシアンである旨の色に関する情報を『制御部』へ送信している。」(審判請求書53頁)という説明を付しているが、この模式図及び説明が、本件発明1の光照合処理とどう関係するのか、請求人は何も説明していないし、そもそも、この「模式図」自体が引用文献の開示内容から飛躍した内容(引用文献から想起できる範囲を超えて、請求人独自の解釈で請求人に都合のいいように作成したもの)である。本件発明1の光照合処理は、上記説明のような単純なものではない。請求人は、「自身がシアンである旨の色に関する情報を「制御部」へ送信している。」などとあっさり記載しているが、どのような方法で送信すれば誤装着が検出できるのか、その具体的な方法が問題なのであって、このような抽象的な構成の説明など、本件発明1の光照合処理の具体的な構成の進歩性の議論とは、何の関係もない。

請求人はこの模式図の説明に続けて、審判請求書54頁8?9行目において、「上述した発光ダイオードの発光制御は、単なる設計事項の範疇であり、引用文献5?7にも開示された周知技術である」と述べて、審判請求書38頁10行目?56頁16行目にかけて引用文献5ないし7の記載を引用し、「以上のように、当業者であれば、インクの色に関する情報を上述のように「印刷記録材容器」から「制御部」へ当該情報を送信させることは、容易に想到し得る事項であり、前記「発光ダイオードの発光制御方法を示した模式図」に示した構成を採用することについて何ら技術的困難性は存在しない。」(審判請求書56頁17?21行目)とまとめている。
しかし、上記説明したとおり、この「模式図」なるもの自体が引用文献の開示内容から飛躍した内容であって、且つ、これが本件発明1の光照合処理とどう関係するのかも不明である。請求人は、「インクの色に関する情報を上述のように「印刷記録材容器」から「制御部」へ当該情報を送信させることは、容易に想到し得る事項」と主張するが、単にインクに関する情報をインクタンクから制御部へ送信するというだけでは、誤装着の検出などできない。具体的に、どのような方法によって、どのような情報を送信すれば誤装着の検出ができるのか、その点が問題なのであり、それを光照合処理の構成と方法で解決したのが、本件発明1である。引用文献5及び6には、ダイオードの発光・受光に関する構成が開示されているが、そのような一般的な発光・受光の構成だけ組み合わせても、光照合処理の構成に想到することなどできない。引用文献7は、外部と非接触で情報やエネルギーのやり取りを行う立体形半導体素子を使用する構成であって、バス接続やインクタンクとプリンタの電気的接点の存在を前提とする本件発明1に想到する上で、参考にし得る文献でないことも既に説明済みである。

エ 請求人による容易想到性の論理付けの飛躍
以上のように、審判請求書42?57頁の説明は、引用文献の記載に基づかない根拠のない非論理的な主張ばかりであり、論理の飛躍が散見される。以下では、審判請求書45?52頁の「ウ.通信手段に関する仕様の選択」の欄に焦点を当てて、請求人の論理に飛躍があることを説明する。

審判請求書45?52頁の「ウ.通信手段に関する仕様の選択」欄では、(ア)まず、45頁a欄において、「引用文献1と引用文献2に接した当業者であれば、「印刷記録材容器」(印刷ヘッド)と「制御部」(プリンタ-)との間の通信手段として、光学的な通信手段を適用することは極めて容易なことである」と説明し、(イ)次いで、46頁b欄において、「引用文献1発明に引用文献2発明を適用し、「印刷記録材容器」から「制御部」への通信手段として光学的な通信技術を選択した場合の構成は下記とおりである」と説明し、引用文献2の「光学カップリング」と引用文献1の「バス接続配線」が併存している図を示し、(ウ)次いで、47頁c欄において、「次に、当業者は、「印刷記録材容器」から色情報をプリンタ側へ送信させる命令、つまり・・・発光命令を送信する送信手段を決定する必要があるところ、・・・「制御部」から「印刷記録材容器」へのデータ通信手段としては、バス接続された通信線、光通信などの通信手段が考えられる。」と説明し、(エ)さらに、48頁d欄において、「引用文献1に接した当業者であれば、「制御部」から「印刷記録材容器」へのデータ通信手段として、既存のバス接続された通信線(通信手段の仕様1)を選択することは必然であり、この仕様選択に何らの技術的困難性は存在しない」と説明している。
しかし、この(ア)(a欄)→(イ)(b欄)→(ウ)(c欄)→(エ)(d欄)という段階的な論理付けに大きな飛躍がある。
まず、(ア)(a欄)において、なぜ、引用文献1に既に存在している「バス接続配線」がありながら、引用文献2の「光通信手段(光学的カップリング)」を併用することが容易に想到できるのか不明である。上記で説明した通り、引用文献1の「バス接続配線」も引用文献2の「光通信手段(光学的カップリング)」も、同じ通信手段であって、その目的ないし機能は同じだからこそ、通常、択一的に選択されることはあっても、併存させる必要はない。併存させるためにはそれ相当の理由が必要であるが、そのような理由がないことは説明済である。
この点、請求人は、審判請求書42?45頁の「イ 引用文献1発明に対する引用文献2発明の適用の容易性」の欄において、引用文献1では解決できなくなった技術課題(装着位置間違い検出)を解決するべく、装着位置間違い検出が開示された引用文献2の構成を引用文献1発明に適用することは容易であると説明しているので、この説明が、上記(ア)(a欄)における2つの通信手段を併用することの根拠であると理解される。もしそうでないならば、引用文献1の「バス接続配線」の構成を保持したまま、引用文献2に記載の「光通信手段(光学的カップリング)」を引用文献1発明に付加的に適用することの根拠が全くなくなってしまう。
しかし、逆に、もしそうであるならば、引用文献2に記載の「光通信手段(光学的カップリング)」を引用文献1発明に付加的に適用した場合、「光学的カップリング」の構成だけで装着位置間違い検出が行えるはずである。というのは、引用文献2の「光学的カップリング」により装着位置間違いを検出できるという認識の下、装着位置間違い検出ができない引用文献1発明に対して、装着位置間違い検出を可能とするべく、引用文献2の「光通信手段(光学的カップリング)」の構成を新たに付加的に適用することは容易である、というのが請求人の論理であろうから、当然、付加された「光学的カップリング」の構成だけで装着位置間違い検出が可能でなればならない。そうであるからこそ、引用文献2の「光学的カップリング」の構成を引用文献1に付加するという発想が生まれるのであって、逆に、引用文献2の「光学的カップリング」の構成そのもので装着位置間違い検出ができないとすれば、そもそも、引用文献2の「光学的カップリング」の構成を引用文献1に付加するという発想自体は生まれない。このように、引用文献2の「光学カップリング」を引用文献1発明に付加した場合であっても、付加された「光学的カップリング」の構成だけで装着位置間違い検出が可能でなければならないので、付加された「光学カップリング」の構成をわざわざ変更する必要はない。変更する必要がないのだから、請求人が説明するような「装着位置間違い検出に利用される通信手段の選択、すなわち、通信手段に関する仕様の選択」といった行為はあり得えないことであって、上記(ウ)(c欄)や上記(エ)(d欄)の行為は当業者でも試みない事項である。このように請求人は、当業者でも試みるはずもないことを取り込むことで容易想到性の論理付けを行っており、このような論理付けには大きな飛躍があると言わざるを得ない。

付加された「光学的カップリング」はそれだけで装着位置間違いを検出できるのだから、その構成をわざわざ変更する必要もないところ、請求人は、「印刷記録材容器」→「制御部」の通信には、「光通信」を適用しつつ(b欄)、「制御部(プリンタ本体)」→「印刷記録材容器(インクタンク)」の通信(発光命令送信)には、なぜか「光通信」を適用せずに、都合よく「バス接続配線」を適用している(c欄、d欄、f欄)。引用文献2の「光学的カップリング」の構成だけで装着位置間違いを検出できるはずなのに、なぜ、その構成をわざわざ変更するのかについて請求人は全く説明していない。
もし、引用文献2の「光学的カップリング」の構成だけで装着位置間違い検出ができないのであれば、装着位置間違い検出という課題解決のために、引用文献2の「光学的カップリング」を引用文献1発明に適用しようとする動機付けがそもそも存在しないことになるから、請求人の主張は根本から覆る。請求人の主張が、引用文献1では解決できない課題(装着位置間違いの検出)を解決するのに、引用文献1の構成(バス配線)を保持したまま、別の引用文献2に記載の「装着位置間違い検出用の光通信技術」を新たに付加的に適用するのは容易である、という論理付けを行っている以上、この新たに付加された構成だけで課題解決可能であることが必要なのである。
しかし、請求人は、この点を無視して容易想到性の論理付けを行っており、これが論理の飛躍であって、容易想到性の判断手法として許されないものであることは明らかである。

付言すると、仮に、請求人が主張するように、タンク装着位置間違い検出という課題解決のために、引用文献2の「光学的カップリング」を構成する「発光ダイオードと受光素子」を、引用文献1発明に付加的に適用することが可能であったとも、そうした場合に得られる構成は、前述したとおり、付加された「光学的なカップリング」だけで装着位置間違い検出が行われる形態にしかなり得ないのだから、「光学的カップリング」の一構成要素である「発光ダイオード」の発光制御にバス配線が利用されること(バス配線から入力された色情報が利用されること)はあり得ない。したがって、装着位置間違い検出のために発光制御にバス配線を利用している【通信手段の仕様1】の構成に容易に想到し得るとした審判請求書46?50頁の説明は誤りであるし、この【通信手段の仕様1】の構成を前提として相違点1?3に係る構成に容易に想到し得るとした審判請求書50頁以降の説明も全て誤りである。

オ まとめ
以上のように、審判請求書42?57頁の、本件発明1の容易想到性検討についての請求人の主張は、引用文献の記載に基づかない根拠のない主張や、本件発明1の構成と関係のない主張ばかりであり、容易想到性の論理付けに大きな飛躍があると言わざるを得ず、本件発明1は進歩性を有しないという請求人の主張は、誤りである。

4 本件発明2の無効主張への反論
審判請求書57?61頁の本件発明2の進歩性欠如の主張は、本件発明1の進歩性欠如の主張とその内容は全く同じである。請求人は、本件発明2と引用文献1発明とを比較し、その相違点を、相違点1ないし3として説明しているが、この相違点1ないし3は、本件発明1と引用文献1の相違点と、実質的な内容は同じである。(本件発明1の相違点1が、本件発明2の相違点1及び3に分けられており、本件発明1の相違点2及び3が、本件発明2の相違点2にまとめられている)。
そして、これらの相違点1及び3について、引用文献1に引用文献2を組み合わせ、引用文献5ないし8も適用することで、容易に想到し得るので、本件発明2には進歩性がない、と請求人が主張するが、その根拠については、全て、本件発明1についての主張をそのまま引用している。
上記説明したとおり、請求人の本件発明1についての容易想到性の主張は、引用文献の記載に基づく根拠を欠いており、誤りである。
従って、それをそのまま引用している本件発明2についての容易想到性の主張も、同様に誤りである。

5 まとめ
以上のことから、本件発明1及び2は無効理由に該当せず、本件発明1及び2に係る特許は有効である。

第7 甲各号証の記載事項
1 甲第1号証(引用文献1:特開2002-370378号公報)
(1)甲第1号証には以下の記載がある(下線は審決で付した。以下同じ。)。
ア 「【請求項11】 識別情報を格納する記憶装置を備える印刷記録材容器が複数装着される印刷装置であって、
前記複数の印刷記録材容器に備えられた各記憶装置をバス接続にて接続する信号線と、
前記印刷記録材容器の交換要求を検出する交換要求検出手段と、
前記印刷記録材容器の交換完了を検出する交換完了検出手段と、
前記複数の印刷記録材容器が全て装着されているか否かを判定する装着判定手段と、
前記複数の印刷記録材容器が全て装着されていると判定された場合には、前記信号線を介して前記各記憶装置と通信できるか否かを判定する通信判定手段と、
前記各記憶装置と通信できないと判定された場合には、前記識別情報に基づいて、通信できなかった記憶装置を備える印刷記録材容器を特定する第1の印刷記録材容器特定手段とを備える印刷装置。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バス接続されている記憶装置を備えた印刷記録材容器が複数個用いられる場合に、印刷記録材容器の有無を検出する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】記憶装置を備える印刷記録材容器、例えば、インクカートリッジが実用化されている。記憶装置には、例えば、印刷記録材(インク)の量に関するデータ、インクの種類に関するデータ、インクカートリッジの製造年月日情報等が格納されている。カラープリンタでは、通常、少なくともシアンインク、マゼンタインク、イエロインク、ブラックインクの4色が用いられる。したがって、ブラックインクカートリッジとカラーインクカートリッジといった2個のインクカートリッジ、または各インク色毎に4個のインクカートリッジがプリンタに装着される。
【0003】また、インクカートリッジに備えられた各記憶装置と制御回路とを接続する信号線数を低減するために、各記憶装置を識別するための信号線を廃止し、共通のバスを用いて各記憶装置を接続するバス接続の技術が知られている。この技術では、バス接続されている各記憶装置を特定(識別)するために、各記憶装置に対してユニークに割り当てられた識別子が利用される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、バス接続形式では、インクカートリッジの取り外しは検出できるものの、複数のインクカートリッジが同時に取り外された場合には、どのインクカートリッジが取り外されたかを特定することができないという問題があった。さらに、インクカートリッジに備えられた各記憶装置とプリンタの制御回路との通信が正常に行われない場合には、いずれの記憶装置(インクカートリッジ)に異常が発生しているか報知されず、ユーザは全てのインクカートリッジを脱着して確認しなければならなかった。
【0005】本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、バス接続されている記憶装置を備える印刷記録材容器が印刷装置に複数装着される際に、印刷記録材容器に発生している通信異常を検出し、報知することを目的とする。また、いずれの印刷記録材容器が装着されていないかを検出することを目的とする。さらに、記憶装置と印刷装置との通信が正常に行われない場合に、いずれの印刷記録材容器に備えられている記憶装置が異常であるかを検出することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上記課題を解決するために本発明の第1の態様は、識別情報を格納する記憶装置が備えられた印刷記録材容器の異常検出装置を提供する。本発明の第1の態様に係る異常検出装置は、前記複数の印刷記録材容器に備えられた各記憶装置をバス接続にて接続する信号線と、前記信号線を介して全ての前記印刷記録材容器に備えられている前記記憶装置と通信できるか否かを判定する通信判定手段と、前記通信判定手段によって、全ての前記記憶装置と通信できないと判定された場合には、前記識別情報に基づいて、通信異常の発生した記憶装置を備える印刷記録材容器を特定する異常印刷記録材容器特定手段を備えることを特徴とする。
【0007】本発明の第1の態様に係る異常検出装置によれば、複数の印刷記録材容器に備えられている記憶装置と通信できるか否かを判定し、通信異常が発生している場合には、識別情報を用いて通信異常の発生した記憶装置を備える印刷記録材容器を特定するので、バス接続されている記憶装置を備える印刷記録材容器が印刷装置に複数装着される際に、いずれの印刷記録材容器に通信異常が発生しているかを検出することができる。ここで、通信異常の発生した記憶装置を備える印刷記録材容器を特定は、例えば、記憶装置に対して識別情報を送信し、送信した識別情報に対して記憶装置が応答するか否かに基づいて特定しても良い。あるいは、記憶装置に格納されている識別情報を検索して、目的とする識別情報が存在するか否かに基づいて特定しても良い。」

ウ 「【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る印刷記録材容器の異常検出装置について図面を参照しつつ、実施例に基づいて説明する。
【0031】図1を参照して本実施例に係る印刷記録材容器の異常検出装置が適用され得る印刷装置の内部構成を説明する。図1は、本実施例に係る印刷記録材容器の異常検出装置が適用され得る印刷装置の内部構成の概略を示す説明図である。
【0032】本実施例に係る印刷記録材容器の異常検出装置は、インクジェット式カラープリンタ(印刷装置)10に適用されている。カラープリンタ10は、カラー画像の出力が可能なプリンタであり、例えば、シアン(C)、ライトシアン(LC)、マゼンタ(M)、ライトマゼンタ(LM)、イエロー(Y)、ブラック(K)の6色の色インクを印刷媒体上(例えば、印刷用紙上)に噴射してドットパターンを形成することによって画像を形成するインクジェット方式のプリンタである。なお、本実施例では、インクジェット式のカラープリンタを用いて説明するが、カラートナーを印刷媒体上に転写・定着させて画像を形成する電子写真方式のプリンタを用いても良い。
【0033】カラープリンタ10は、図示するように、キャリッジ11に搭載された印字ヘッドIH1?IH6を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う機構と、このキャリッジ11をキャリッジモータ12によってプラテン13の軸方向に往復動させる機構と、紙送りモータ14によって印刷用のカット紙Pを搬送する機構と、制御回路30とから構成されている。キャリッジ11をプラテン13の軸方向に往復動させる機構は、プラテン13の軸と並行に架設されたキャリッジ11を摺動可能に保持する摺動軸15と、キャリッジモータ12との間に無端の駆動ベルト16を張設するプーリ17等から構成されている。カラープリンタ10には、インクカートリッジCAの交換を初めとする、プリンタ10対する各種指示を入力するための操作ボタン、表示ランプ351を備える操作パネル35が備えられている。
【0034】制御回路30は、プリンタ10を印刷記録材容器(インクカートリッジ)の異常検出装置として機能させる他、プリンタ10の操作パネル35と信号をやり取りしつつ、紙送りモータ14やキャリッジモータ12、印字ヘッドIH1?IH6の動きを適切に制御する。キャリッジ11にはインクカートリッジCA1?CA6が装着されている。例えば、インクカートリッジCA1には黒(K)インク、インクカートリッジCA2にはシアン(C)インク、インクカートリッジCA3にはライトシアン(LC)インク、インクカートリッジCA4にはマゼンタ(M)インク、インクカートリッジCA5にはライトマゼンタ(LM)インク、インクカートリッジCA6にはイエロー(Y)インクの各インクが収納されている。
【0035】カラープリンタ10に供給された印刷用紙Pは、プラテン13と給紙補助ローラの間に挟み込まれるようにセットされ、プラテン13の回転角度に応じて所定量だけ送られる。制御回路30は、内部に備えられたCPU31によって、既述のようにカラープリンタ10をインクカートリッジCAの異常検出装置としても作用させる他、パーソナルコンピュータPCからの制御信号に基づいてインクカートリッジCA1?CA6に備えられている記憶装置21?26に対するデータの書き込み、データの読み出し処理を実行する。また、本実施例では、制御回路30は、パーソナルコンピュータPCから受信した印刷制御信号に従ってプリンタ10の各部の動作を制御して印刷処理を実行する。」

エ 「【0036】次に、図2および図3を参照してインクカートリッジに備えられている記憶装置と制御回路30(パーソナルコンピュータPC)との接続状態について説明する。図2はキャリッジ11上に装着されているインクカートリッジCA1?CA6と制御回路との接続状態を概略的に示す説明図である。図3はインクカートリッジCA1?CA6に備えられている各記憶装置21?26と制御回路30(パーソナルコンピュータPC)との接続状態を示すブロック図である。なお、図3では説明を容易にするために、記憶装置21、22、23、26を備えるインクカートリッジCA1、CA2、CA3、CA6とが代表して模式的に示されている。また、本実施例に係る印刷記録材容器の異常検出装置の構成は、図3に示す構成に限定されるものではない。
【0037】各記憶装置21?26は、既述のように、インクジェットプリンタ用の6色のインクカートリッジCA1?CA6それぞれ備えられている。また、本実施例では、記憶装置として不揮発的に記憶内容を保持すると共に記憶内容を書き換え可能なEEPROMを用いた。各記憶装置21?26は、その内部に、識別情報を格納する記憶素子(メモリアレイ)、送信されてきた識別情報と記憶素子内に格納されている識別情報とを比較するIDコンパレータ、命令コードを解析するオペレーションデコーダ、アドレス位置をカウントアップするアドレスカウンタ、記憶素子に対する読み出し/書き込みを制御するI/Oコントローラ等を備えている。
【0038】各記憶装置21?26内の記憶素子に格納されている識別情報は、それぞれインクカートリッジCA1?CA6内に収容されているインク色を識別するための識別情報である。各記憶装置21?26は、制御回路30から識別情報が送信されてくると送信されてきた識別情報と自己の識別情報とを比較解析し、解析した識別情報が記憶素子内に格納されている識別情報と一致する場合には、アクセス許可の応答信号を制御回路30に対して送り返す。これによって、制御回路30は、アクセスを所望するインクカートリッジCA1?CA6に対して選択的にアクセスすることができる。また、識別情報が書き込みデータと共にデータ列として送信されてきた場合には、識別情報の一致を確認後、書き込みデータの書き込みを許容する。
【0039】各記憶装置21?26のデータ信号端子DT、クロック信号端子CT、リセット信号端子RTは、データバスDB、クロックバスCB、リセットバスRBを介してそれぞれ接続されている。制御回路30は、データ信号線DLへ送出するためのデータ列を一時的に格納しておくバッファメモリを備えている。なお、信号線は、例えば、フレキシブル・フィード・ケーブル(FFC)として実現され得る。
【0040】制御回路30の電源正極端子VDDHと各記憶装置21?26の電源正極端子VDDMとは電源供給線VDLを介して接続されている。また、各記憶装置21?26の電源負極端子VSSは、キャリッジ11上の接地線GDLに接続されている。キャリッジ11上には、インクカートリッジCA1?CA6に備えられているカートリッジアウト検出用端子CAOTをカスケードに接続するカートリッジアウト検出線CDLが配置されている。カートリッジアウト検出線CDLの一端は接地されており、他端はカートリッジアウト信号線COLを介してパーソナルコンピュータPCのカートリッジアウト検出端子COTと接続されている。
【0041】本実施例では、各記憶装置21?26の電源負極端子VSSに対して専用の接地線GDLが接続されるので、パーソナルコンピュータPCは、インクカートリッジCA1?CA6が全て装着されていない場合にも、任意の記憶装置21?26に対してアクセスすることができる。この構成は、特に、インクカートリッジCAの初期装着時、あるいは、複数のインクカートリッジCAを同時に交換する場合に有用である。
【0042】制御回路30は、CPU31を介して、クロック信号生成機能、リセット信号生成機能、電源監視機能、電源回路、データ記憶回路および各回路を制御する制御機能を実現する制御装置であり、記憶装置21?26に対するアクセスを制御する。制御回路30は、カラープリンタ10の本体側に配置されており、電源がオンされると、データ信号線DL記憶装置21?26から、インク消費量、インクカートリッジの装着時間といったデータを取得しデータ記憶回路に記憶する。また、電源がオフされる際には、データ信号線DLを介して記憶装置21?26に対して、それぞれインク消費量、インクカートリッジの装着時間といったデータを書き込む。
【0043】制御回路30は、インクジェットプリンタの電源投入時、インクカートリッジの交換時、印刷ジョブの終了時、インクジェットプリンタの電源遮断時等に、記憶装置21?26に対するアクセスを実行する。制御回路30は、記憶装置21?26に対してアクセスする場合には、リセット信号生成回路に対してリセット信号RSTの生成を要求する。制御回路30は、インクカートリッジCAの装着の有無、通信の状態を検出する際には、インクカートリッジCA1?CA6に対応する識別情報を順次、データ信号線DL上に送出する。これに対して、アクセスを所望するインクカートリッジCAが決まっている場合には、アクセスを所望するインクカートリッジCAの識別情報が先頭列に格納されているデータ列をデータ信号線DL上に送出して、各インクカートリッジCA1?CA6の記憶装置21?26に送信する。
【0044】制御回路30は、電源回路を制御して正電源の出力を制御する。本実施例に係る制御回路30は、記憶装置21?26に対して、常時電源を供給しておらず、記憶装置21?26に対するアクセス要求が発生した場合にのみ、記憶装置21?26に対して正電源を供給する。」

オ 「【0045】図4および図5を参照して本実施例における印刷記録材容器の異常検出装置の動作について説明する。図4は本実施例に係る印刷記録材容器の異常検出装置、すなわち、制御回路30によって実行される処理ルーチンを示すフローチャートである。図5は印刷記録材容器の検出時におけるキャリッジ11の動作を示す説明図である。
【0046】制御回路30のCPU31は、インクカートリッジCAの交換要求を検出すると本処理ルーチンを開始する。インクカートリッジCAの交換要求は、例えば、非印刷動作時に、プリンタ10の操作パネル35上のインク交換ボタンの押し下げによって発行される。インク交換ボタンは、各インクカートリッジCA毎に備えられていても良く、あるいは、1つだけ備えられていても良い。本実施例に係るプリンタ10では、非印刷動作時には、インクカートリッジCA1?CA6は、本体カバー内のホームポジションに隠れている。
【0047】制御回路30は、キャリッジモータ12を介してキャリッジ11を本体カバー内のホームポジションから、インクカートリッジ交換ポジションに移動させる(ステップS100)。インクカートリッジ交換ポジションでは、インク交換ボタンが各インクカートリッジ毎に備えられている場合には、押し下げされたインク交換ボタンに対応するインクカートリッジCAのみが交換可能であっても良い。あるいは、インク交換ボタンが1つだけ備えられている場合には、全てのインクカートリッジCAが交換可能であっても良い。
【0048】制御回路30は、交換完了を待機し(ステップS110:NO)、交換完了を検出すると(ステップS110:Yes)、図2に示すように、キャリッジモータ12を介してキャリッジ11をホームポジションに移動させる(ステップS120)。)交換完了は、インク交換ボタンの再度の押し下げに伴って検出される。
【0049】制御回路30は、ホームポジションにて全てのインクカートリッジCA1?CA6がキャリッジ11上に装着されているか否かを判定するためにカートリッジアウト信号線COLの入力値CO=0であるか否かを判定する(ステップS130)。全てのインクカートリッジCA1?CA6が正しくキャリッジ11に装着されている場合には、電源負極信号線VSLがシリアルに接続されて接地されるのでカートリッジアウト信号線COLの入力値COは接地電圧(例えば、約0ボルト)を示す。これに対して、たとえ、1個のインクカートリッジでもキャリッジ11に正しく装着されていない場合には、電源負極信号線VSLはシリアルに接続されないので、接地されず、制御回路の回路電圧に対応する値がカートリッジアウト信号線COL上に現れる。但し、本実施例ではノイズ等の影響を排除するため、所定のしきい値を基準にして2値化している。したがって、カートリッジアウト信号線COLの入力値COは0か1を取り、全てのインクカートリッジCA1?CA6がキャリッジ11上に装着されているか否かは、カートリッジアウト信号線COLの入力値COが0であるか否かによって判定される。
【0050】制御回路30は、全てのインクカートリッジCA1?CA6が装着されている、すなわち、入力値CO=0であると判定した場合には(ステップS130:Yes)、各インクカートリッジCA1?CA6に備えられている記憶装置21?26と通信を実行する(ステップS140)。
【0051】一方、制御回路30は、いずれかのインクカートリッジCAが装着されておらずCO≠0である、すなわち入力値が1であると判定した場合には(ステップS130:NO)、存在しない、すなわち、装着されていないインクカートリッジCAを検出する(ステップS150)。装着されていないインクカートリッジCAの検出に際しては、制御回路30は、各記憶装置21?26に割り当てられている識別情報を順次、データ信号線DLへ送出する。本実施例における記憶装置21?26は、送出されてきた識別情報と自己が格納する識別情報とが一致する場合には、応答信号を制御回路30に対して送り返すので、制御回路30は、応答信号の無い記憶装置を備えるインクカートリッジCAを装着されていないインクカートリッジCAとして検出する。
【0052】制御回路30は、装着されていないインクカートリッジCAを検出すると、装着されていないインクカートリッジCAを報知する(ステップS160)。報知の態様としては、例えば、パーソナルコンピュータPCを介して印刷処理が実行されている場合には、表示モニタMN上に表示されているインクカートリッジCAのステータスウィンドウにおいて、装着されていないインクカートリッジCAを表示したり、インクカートリッジが装着されていない旨を警告する警告文を表示するようにしても良い。あるいは、プリンタ10の操作パネル35上に各インクカートリッジに対応して備えられている表示ランプ351を点滅させるようにしても良い。
【0053】制御回路30は、いずれかのインクカートリッジCAが装着されていないことを報知した後、装着されていないインクカートリッジCAの装着を促すために、キャリッジ11をインク交換ポジションに移動させて、既述の処理(ステップS100?S130)を再度実行する。制御回路30は、全てのインクカートリッジCAの装着を確認すると、各インクカートリッジCA1?CA6に備えられている記憶装置21?26と通信を実行する(ステップS140)。
【0054】制御回路30は、全ての記憶装置21?26に対して通信が正常に実行できたか否かを判定する(ステップS170)。制御回路30によって実行される通信では、各記憶装置21?26に割り当てられている識別情報が順次、データ信号線DLへ送出される。本実施例における記憶装置21?26は、送出されてきた識別情報と自己が格納する識別情報とが一致する場合には、応答信号を制御回路30に対して送り返すので、制御回路30は、応答信号の有無、すなわち、識別情報を利用して、各記憶装置21?26に対する通信が正常に実行されたか否かを判定する。
【0055】制御回路30は、通信が正常に実行されたと判定した場合には(ステップS170:Yes)、各記憶装置21?26からインク残量(インク消費量)等のインクに関連する情報を取得して(ステップS180)、本処理ルーチンを終了する。
【0056】一方、制御回路30は、通信が正常に実行されなかったと判定した場合には(ステップS170:NO)、応答信号のなかった識別情報を格納する記憶装置を備えるインクカートリッジを、通信に異常があるインクカートリッジとして報知する(ステップS190)。報知の態様は、装着されていないインクカートリッジの報知と同様にして実行される。制御回路30は、通信に異常のあるインクカートリッジCAの交換を促すため、キャリッジ11をインク交換ポジションに移動させて、通信が正常に実行されるまで、既述の処理(ステップS100?S170)を実行する。
【0057】以上説明した印刷記録材容器の異常検出装置によれば、インク交換完了後に、全てのインクカートリッジCAが装着されていない場合には、全ての記憶装置21?26(インクカートリッジCA1?CA6)と通信し、装着されていないインクカートリッジを特定して、報知することができる。また、いずれかのインクカートリッジCAが装着されていない場合には、再度、インクカートリッジの装着を促すことができる。したがって、インク交換の際に、誤って、新しいインクカートリッジCAを装着し忘れた場合であっても、ユーザは、どのインクカートリッジを装着し忘れたかを容易に知ることができると共に、再度、インク交換動作を取ることなく、インクカートリッジCAを装着することができる。
【0058】また、全てのインクカートリッジCA1?CA6が装着されている場合であっても、各インクカートリッジCA1?CA6の記憶装置21?26と通信を実行し、通信を実行できない記憶装置を備えるインクカートリッジCAを識別し、報知することができる。また、いずれかのインクカートリッジCAの記憶装置と制御回路30との間に通信異常が発生している場合には、再度、通信異常を起こしているインクカートリッジの交換を促すことができる。記憶装置21?26と制御回路30との通信異常は、一見して判別不可能であり、通常、いずれの記憶装置との通信が異常であるかを判定するためには、全てのインクカートリッジCA1?CA6を入れ替えて判定する必要がある。これに対して、本実施例によれば、ユーザはいずれのインクカートリッジCA1?CA6において通信異常が発生しているかを一見して知ることができる。
【0059】さらに、本実施例では、制御回路30は、インクカートリッジCA1?CA6の記憶装置21?26との通信をホームポジションにて実行する。したがって、通信中に、ユーザによってインクカートリッジCA1?CA6が取り外しを防止することができると共に、常に同1条件にて通信を実行することができるので、通信結果の判断のばらつきを防止することができる。この結果、装着されていないインクカートリッジCA1?CA6の識別、通信異常を起こしているインクカートリッジCA1?CA6の記憶装置21?26をより正確に識別(検出)することができる。
【0060】上記実施例は、インク交換に際して、1つのインクカートリッジCAが交換される場合はもちろん、2以上のインクカートリッジCAが交換される場合にも有用である。すなわち、2以上のインクカートリッジCAが装着されていない場合であっても、インクカートリッジCA1?CA6の記憶装置21?26と通信を実行することによって、いずれのインクカートリッジCAが装着されていないかを識別することができるからである。
【0061】以上、実施例に基づき本発明に係る印刷記録材容器の異常検出装置を説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0062】上記実施例では、記憶装置21?28としてEEPROMを用いて説明したが、格納データを不揮発的に維持することができると共に、格納データを書き換え可能な記憶装置であればEEPROMに限られない。
【0063】上記実施例では、制御回路30から送出された識別情報に対して記憶装置21?26が応答信号を返送することによって、インクカートリッジCA1?CA6の識別が実行されているが、制御回路30によって各記憶装置21?26に格納されている識別情報を読み出し、所望するインクカートリッジCA1?CA6であるか否かを判定しても良い。
【0064】上記実施例では、主にプリンタ10がパーソナルコンピュータPCに接続されている場合について説明したが、本実施例は、スタンドアローンタイプのプリンタに対しても適用可能であることはいうまでもない。かかる場合には、インクカートリッジCAの非装着の報知、通信異常の報知は、操作パネル上の表示ランプ、あるいは、表示ディスプレイが備えられている場合には、表示ディスプレイを介して実行される。
【0065】上記実施例では、インクカートリッジCAの非装着の報知、通信異常の報知を操作パネル35上の表示ランプ351、表示モニタMNを介して実行しているが、この他にも、パーソナルコンピュータPCまたはプリンタによる音声報知によって実行されても良い。
【0066】上記実施例では、6つの記憶装置21?26を独立したインクカートリッジに備えた場合について説明したが、本実施例に係る記憶装置は、2色?5色、あるいは7色以上のインクカートリッジに対しても適用することができる。」

カ 図3の記載から、各記憶装置のデータ信号端子DT、クロック信号端子CT、リセット信号端子RTがそれぞれ接続されているデータバスDB、クロックバスCB、リセットバスRBはキャリッジ11に設けられていること、及び、前記データバスDBは前記データ信号線DLを介してプリンタの制御回路30に接続されていることが見て取れる。

(2)上記(1)の記載からみて、甲第1号証には、
「内部に、識別情報を格納する記憶素子(メモリアレイ)、送信されてきた識別情報と記憶素子内に格納されている識別情報とを比較するIDコンパレータ、命令コードを解析するオペレーションデコーダ、アドレス位置をカウントアップするアドレスカウンタ、記憶素子に対する読み出し/書き込みを制御するI/Oコントローラ等を備え、インクの量に関するデータ、インクの種類に関するデータ、インクカートリッジの製造年月日情報等が格納されている、EEPROMを用いた記憶装置をそれぞれ備える、シアンインク、ライトシアンインク、マゼンタインク、ライトマゼンタインク、イエロインク、ブラックインクの6色のインクカートリッジCA1?CA6と、
キャリッジに搭載された印字ヘッドIH1?IH6を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う機構と、このキャリッジをキャリッジモータによってプラテンの軸方向に往復動させる機構と、紙送りモータによって印刷用のカット紙を搬送する機構と、制御回路とから構成されているプリンタとからなり、
前記キャリッジに前記インクカートリッジCA1?CA6が装着されるカラープリンタ及びインクカートリッジにおいて、
インクカートリッジに備えられた各記憶装置とプリンタの制御回路とを接続する信号線数を低減するために、各記憶装置を識別するための信号線を廃止し、共通のバスを用いて各記憶装置を接続するバス接続の技術では、バス接続されている各記憶装置を特定(識別)するために、各記憶装置に対してユニークに割り当てられた識別子が利用されるところ、バス接続形式では、インクカートリッジの取り外しは検出できるものの、複数のインクカートリッジが同時に取り外された場合には、どのインクカートリッジが取り外されたかを特定することができないという問題があり、インクカートリッジに備えられた各記憶装置とプリンタの制御回路との通信が正常に行われない場合には、いずれの記憶装置に異常が、すなわちインクカートリッジに異常が発生しているか報知されず、ユーザは全てのインクカートリッジを脱着して確認しなければならなかったので、バス接続されている記憶装置を備えるインクカートリッジが印刷装置に複数装着される際に、インクカートリッジに発生している通信異常を検出し、報知すること、いずれのインクカートリッジが装着されていないかを検出すること、さらに、記憶装置とプリンタとの通信が正常に行われない場合に、いずれのインクカートリッジに備えられている記憶装置が異常であるかを検出することを目的として、
前記識別情報を、それぞれインクカートリッジCA1?CA6内に収容されているインク色を識別するための識別情報とし、
各記憶装置は、プリンタの制御回路から識別情報が送信されてくると送信されてきた識別情報と自己の識別情報とを比較解析し、解析した識別情報が記憶素子内に格納されている識別情報と一致する場合には、アクセス許可の応答信号をプリンタの制御回路に対して送り返すので、これによりプリンタの制御回路は、アクセスを所望するインクカートリッジCA1?CA6に対して選択的にアクセスすることができ、
各記憶装置は、識別情報が書き込みデータと共にデータ列として送信されてきた場合には、識別情報の一致を確認後、書き込みデータの書き込みを許容し、
各記憶装置のデータ信号端子DT、クロック信号端子CT、リセット信号端子RTは、前記キャリッジに設けられているデータバスDB、クロックバスCB、リセットバスRBを介してそれぞれ接続されており、
プリンタの制御回路は、データ信号線DLへ送出するためのデータ列を一時的に格納しておくバッファメモリを備え、
前記データ信号線DLは、例えば、フレキシブル・フィード・ケーブル(FFC)として実現されており、前記データバスDBをプリンタの制御回路に接続しており、
プリンタの制御回路の電源正極端子VDDHと各記憶装置の電源正極端子VDDMとは電源供給線VDLを介して接続され、各記憶装置の電源負極端子VSSは、前記キャリッジ上の接地線GDLに接続されており、前記キャリッジ上には、インクカートリッジCA1?CA6に備えられているカートリッジアウト検出用端子CAOTをカスケードに接続するカートリッジアウト検出線CDLが配置されており、カートリッジアウト検出線CDLの一端は接地されており、他端はカートリッジアウト信号線COLを介してパーソナルコンピュータPCのカートリッジアウト検出端子COTと接続されており、
各記憶装置の電源負極端子VSSに対して専用の接地線GDLが接続されるので、パーソナルコンピュータPCは、インクカートリッジCA1?CA6が全て装着されていない場合にも、任意の記憶装置に対してアクセスすることができ、インクカートリッジCAの初期装着時、あるいは、複数のインクカートリッジCAを同時に交換する場合に有用であり、
プリンタの制御回路は、インクカートリッジの交換時に、各記憶装置に対するアクセスを実行し、インクカートリッジCAの装着の有無、通信の状態を検出する際には、インクカートリッジCA1?CA6に対応する識別情報を順次、データ信号線DL上に送出するが、アクセスを所望するインクカートリッジCAが決まっている場合には、アクセスを所望するインクカートリッジCAの識別情報が先頭列に格納されているデータ列をデータ信号線DL上に送出して、各インクカートリッジCA1?CA6の各記憶装置に送信するようになっており、インク交換ボタンの押し下げによるインクカートリッジCAの交換要求を検出すると前記キャリッジをインクカートリッジ交換ポジションに移動させ、インク交換ボタンの再度の押し下げに伴って交換完了を検出すると前記キャリッジをホームポジションに移動させ、全てのインクカートリッジCA1?CA6が前記キャリッジ上に装着されているか否かを判定するためにカートリッジアウト信号線COLの入力値CO=0であるか否かを判定し、全てのインクカートリッジCA1?CA6が装着されていると判定した場合には、各インクカートリッジCA1?CA6に備えられている各記憶装置と通信を実行し、いずれかのインクカートリッジCAが装着されていないと判定した場合には、各記憶装置に割り当てられている識別情報を順次、データ信号線DLへ送出して応答信号の無い記憶装置を備えるインクカートリッジCAを装着されていないインクカートリッジCAとして検出し、装着されていないインクカートリッジを特定して、報知することができるので、インク交換の際に、誤って、新しいインクカートリッジCAを装着し忘れた場合であっても、ユーザは、どのインクカートリッジを装着し忘れたかを容易に知ることができ、2以上のインクカートリッジCAが装着されていない場合であっても、インクカートリッジCA1?CA6の各記憶装置と通信を実行することによって、いずれのインクカートリッジCAが装着されていないかを識別することができるようにした、
カラープリンタ及びインクカートリッジ。」の発明(以下「甲第1号証発明」という。)が記載されているものと認められる。

2 甲第2号証(引用文献2:特開平2-279344号公報)
(1)甲第2号証には以下の記載がある。
ア 「2.特許請求の範囲
(1) インク室を有するハウジングと該インク室と流体を連通する複数のオリフィスと該オリフィスを通して前記インク室からインクを噴出させる手段とを有するインクジェット印刷ヘッドにおいて、
前記ハウジングには前記印刷ヘッドの動作特性に関するデータを記憶する記憶手段が備えられていることを特徴とするインクジェット印刷ヘッド。
(2) 前記記憶手段が前記インク室内のインク色に関するデータを記憶していることを特徴とする請求項(1)記載のインクジェット印刷ヘッド。
(3) 前記記憶手段が前記インク室内のインクの量に関するデータを記憶していることを特徴とする請求項(1)記載のインクジェット印刷ヘッド。
(4) 前記記憶手段が前記印刷ヘッドのオリフィスとハウジングとの相対的なアラインメントに関するデータを記憶していることを特徴とする請求項(1)記載のインクジェット印刷ヘッド。
(5) 前記記憶手段が前記印刷ヘッドの動作周波数に関するデータを記憶していることを特徴とする請求項(1)記載のインクジェット印刷ヘッド。」(1頁左下欄4行?同頁右下欄11行)

イ 「3.発明の詳細な説明
[発明の技術分野]
本発明はインクジェット印刷ヘッド等の印刷アッセンブリーに関し、さらに具体的には、かかるアッセンブリーをそれらを用いる印刷装置に特性化する技術に関する。
[発明の技術的背景及びその問題点]
過去50年間、インクジェット印刷は、技術的好奇心からオフィスオートメーションの大黒柱へと成熟してきた。近年の進歩によって、インクジェットプリンターはレーザープリンターに匹敵する印刷品質を生み出せるようになった。にもかかわらず、現状の最高の技術でさえ、ある種の欠点をもっている。
一つの欠点はカラー印刷の分野にある。インクジェットカラー印刷の基礎的技術はよく発達している。それは基本的にはシアン、黄、マゼンタ、ときには黒色のインクの液滴を別個の印刷ヘッドから印刷媒体に向けて制御自在に排出するものである。しかし、かかる印刷方法では、印刷へッドから発生したインクの液滴が他の印刷ヘッドから発生したインクの液滴と所望の位置関係をもって印刷媒体に降下するよう、個々の印刷ヘッドの相対位置を精密に位置決めする必要がある。かかる精密な相対位置決めの必要性へのアプローチとして、必要なオリフィスのすべてが形成された単一のオリフィス板を用いて、印刷ヘッドの一部または全部を一つのアッセンブリーに構成することが行われてきた。オリフィス板は写真製版を用いて形成されるので、各種の印刷ヘッド要素の相対位置決めを高精度に行うことができる。残念ながら、数個の印刷ヘッドを一個のアッセンブリーに構成すると、印刷ヘッドの最初のインク供給部がインク切れになったときに、かがるアッセンブリーは実際上役に立たないものになってしまう。
精密な相対位置決めの必要性への他のアプローチとしては、数個の別個の印刷ヘッドを用い、各印刷ヘッドをプリンターに取りつけた後の印刷ヘッド上のオリフィス板の位置を光学的に検知する方法がある。かかるシステムのうち、米国特許4,709,245に示すように、各印刷ヘッドを光源を通過するように動かし、反射光の変化を感知することにより、各オリフィス板の端の位置を検出するものがある。オリフィス板が写真製版のような、オリフィス板の端を精密に規定できる加工法で製作されていれば、この技術は印刷オリフィスの位置を水平方向に特性化する(charact erizing)のに有効である。しかし、これはオリフィスの垂直位置については何の情報も与えない。加えて、この技術はよく見られるように、板が親ダイから単純に切り出される場合のように、オリフィス板の端が精密に規定されていない場合無効である。
カラープリンターに関連する欠点として、長時間の複雑な印刷作業において、ある色のインクが悪いタイミングで切れてしまうということがある。複雑なカラー画像の印刷には数分間を要する場合がある。もし印刷を構成するインクの一つがなくなってしまうと、作業を中断しなければならず、消耗した印刷ヘッドを交換した後作業を再開することになる。これは単なる時間の浪費にとどまらず、中断された作業に用いられた他の色のインクの浪費でもある。
消耗しかかっているインクジェット印刷ヘッドを可視表示しようとする試みがこれまでいくつかなされた。具体例としては、透明のインク室を持つインクジェット印刷ヘッドがある。しがし、不透明の材料を使うという製造上の配慮がしばしば必要とされる。
また、カラー印刷システムのもう一つの欠点は、少なくとも構成色に対し別個の印刷ヘッドを用いるものにおいては、プリンター内部で印刷ヘッドが不注意から誤った位置に取りつけられる事である。もしマゼンタのインクがあるべきところにシアンのインクの印刷ヘッドが位置していれば、印刷されたものは不良となろう。
[発明の目的]
本発明は、従来のインクジェット印刷システムにおける以上の欠点またはその他の欠点を、印刷ヘッドを特性化するデータを記憶できる記憶素子を各印刷ヘッドに付随させて堤供することによって解決することを目的とする。
[発明の概要]
本データは印刷ヘッドの本性、あるいはその動作特性の一つまたはそれ以上を特性化することが可能である。このような動作特性には、印刷ヘッド内のインクの色、量、あるいは印刷ヘッド本体上のオリフィス板の位置などを含むことができる。このデータは印刷ヘッドから読み取ることができ、所望に応じて使用または表示できる。オリフィス板の位置を特性化するデータは、たとえば、ミスアラインメントを補償するために、オリフィス噴射用信号のうちのあるものを制御可能に早めるかあるいは遅らせるかするために使用できる。インクの色を特性化するデータは、プリンターがいかなる色の印刷ヘッドをも、いかなる印刷ヘッド受けにおいても受け入れ得るようにするのに使用することができる。インク量を特性化するデータは、印刷中のインクの使用状態を反映して更新され、消耗しかけているインクについてユーザーに警報を与えることができる。」(1頁右下欄12行?3頁左上欄12行)

ウ 「[発明の実施例]
第1図乃至第3図は、一つまたはそれ以上の印刷アッセンブリー12、各印刷アッセンブリーに付随する記憶素子14、プリンター回路16、プリンター回路を記憶素子に接続するインターフェース18を備えた本発明の実施例による印刷装置10を示す。
図示した印刷アッセンブリー12は、ハウジング20を備えたインクジェット印刷ヘッド、インク室22、インク室と流体を連通ずる複数のオリフィス26を有するオリフィス板24、及びインクをオリフィスから噴出させるための複数の噴射用抵抗28を備えている。印刷ヘッドのハウジング上には、複数のアラインメント機構30が配設されており、関連するキャリッジ34内の対応するアラインメント機構32と協働して、印刷ヘッドが印刷装置10内をキャリッジによって運ばれる際の適正な機械的アラインメントを確実にしている(適切なアラインメント機構と、関連するアラインメント技術とが米国特許第4,755,836号に示されており、その内容を参照してここに取り入れた)。
印刷ヘッド12のハウジングには、記憶素子14が取りつけてあり、この記憶素子は、たとえば、磁性媒体片、半導体メモリー、レーザーによる書込み読取りの可能な光学媒体等によって構成される。このメモリーには印刷ヘッドに関するデータが記憶される。かかる情報は、印刷ヘッドの本性(製造日、製造場所、ロット番号、シリアル番号、その他)、あるいは印刷ヘッドのある種の動作特性(オリフィスのアライメント、インク色、インクの液位、動作周波数、インクの希釈度、その他)を特性化する。このデータは印刷ヘッドから読み取られ、所望に応じ使用または表示されうる。第3図は本発明の一実施例において用いられるプリンター回路16の詳細を示す。この回路には、印刷するデータを記憶する通常のデータメモリ36、このデータ(ASCII形式等)をインクジェット印刷ヘッド12の個々の噴射用抵抗28に必要な一連のタイミング・インパルスに変換する信号発生回路38が含まれる。これらの信号は、駆動回路40によって、噴射用抵抗を実際に駆動するのに要する電圧レベルに調整される。これらの段階は従来通りであり、どのインクジェットプリンターにも見られるものである。
信号発生回路38の出力には、印刷ヘッドが印刷するよう命令されているインク滴の数をカウントする監視回路42が接続されている。この数は与えられた印刷作業の間に印刷ヘッドによって消費されるインクの量に直接関係している。印刷ヘッドのメモリー14は、インク室に残っているインクの相対量を示すデータをもっていることが望ましい(このデータはまず製造過程でロードされ、インクの全充填値に一致するように設定される)。監視回路42によって計測された数はこのデータの定期的更新に用いることができる。
図示した実施例では、この更新はキャリッジ34の通路近傍に取りつけられ印刷ヘッドがその位置を通過する都度印刷ヘッドの磁気片メモリー14を読み書きする磁気読取/書込みヘッド44によって行われる。好適には、プリンター10が電源投入される都度、印刷ヘッド12がこの読取/書込みヘッド44を通過し、印刷ヘッドの磁気片メモリー上のインクの液位のデータが読みとられるのが望ましい。このデータは監視回路42に付随する揮発性メモリー46にロードされる。以降、プリンターが使用されると、監視回路は印刷ヘッドからのインクの噴出を反映して、このメモリー46を減少していく。印刷ヘッドが読取/書込みヘッド44を通過する都度、この減少された値はプリンター内部の揮発性メモリー46から印刷ヘッドの磁気片14に転送され、前の値を更新していく。このようにして、プリンターの揮発性メモリー46は、印刷ヘッドに与えられる信号を監視することによって連続的に更新されて行く。印刷ヘッドの磁気片メモリー14はメモリー46からのデータ転送によって定期的(すなわち、読取/書込みヘッドを通過する都度)に更新される。プリンターの電源を落とすとメモリー46のデータは消えるが、印刷ヘッドの磁気片メモリー上のデータは残り、プリンターの電源を次回投入する際に読み取られメモリー46を再度初期化するのに使用される。印刷ヘッドをプリンターから外し他のプリンターに使用する場合、インクの残存量を示すデータは印刷ヘッドと共に新規のプリンターに移ることになる。
監視回路42には低電力インクインジケータ48が接続されており、ここに図示されているのは発光ダイオードである。このインジケータは、印刷ヘッド内のインクの液位(メモリー46に示される)がしきい値を下回ると作業者に信号を送る。この値は、たとえば、1ページをベタ刷りするのに要するインクの量に一致する値に設定してもよい。ユーザーに印刷ヘッドがインク切れ間近であることを警報することによって、複雑なカラー図形の印刷における問題や、完了前に一色のインクが切れてしまうといった問題を避けることができる。(複数のインク室を持つカラー印刷ヘッドにおいては、各インクの液位に関するデータは磁気片14に書くことができる。プリンター10の監視回路42は各色に必要な数だけ増設するか、あるいはすべての色について、インクの液位のデータを処理できるように回路を多重化してもよい。)」(3頁左上欄13行?4頁右上欄12行)

エ 「実施例とそのいくつかのバリエーションに言及しつつ、我々の発明の詳細な説明および図示してきたが、本発明は運用および細部において、かかる原理から離れることなく変更可能であることば明らかであろう。たとえば、本発明は、インクジェットプリンターに言及しつつ説明されてきたが、プロッタ-等、他の種々の印刷装置にも有効に適用しうるものである。同様に、本発明は印刷ヘッド上の磁気片メモリーに言及しつつ説明されてきたが、他の記憶素子も容易に採用されうる。もしメモリー上のデータをプリンターで更新する必要がなければ、印刷ヘッドの動作特性を符号化した光学バーコードを含めて、種々の読取専用メモリーを採用してもよい。また、印刷ヘッドとプリンターの間のデータ通信は、読取/書込みヘッドによってなされる必要はない。かわりに、光学的、あるいは無線のカップリング等、他の送信技術を用いることもできる。最後に、本発明はプリンター内部に設けられた特定の電気回路(監視回路など)に言及しつつ説明されてきたが、かかる回路は、代替の実施例にあっては、印刷ヘッドアッセンブリー自体の一部として用いることもできる。同様に、オリフィス板のミスアラインメントの修正も、印刷ヘッドの電子装置の一部で行ってもよい。必要な補償遅延は、たとえば、印刷ヘッドのカスタムEEPROMにロードでき、付随する遅延回路を制御できる。
我々の発明の原理を適用しうる、以上の、そしてまた多様な他の実施例に鑑みて、図示された実施例は、例示的なものに過ぎないと考えるべきである。」(6頁左上欄17行?同頁左下欄7行)

オ 「[発明の効果]
以上説明したように、本発明を用いることにより、オリフィス板のミスアラインメントを簡単に補償でき、また、インク切れに関する警報も簡単にユーザーに与えることができる。さらに、従来のような印刷ヘッドの取り付け位置の誤りによる印刷不良も簡単に防止することができる。」(6頁左下欄8?14行)

(2)上記(1)の記載からみて、甲第2号証には、
「シアン、黄、マゼンタ、ときには黒色のインクの液滴を別個の印刷ヘッドから印刷媒体に向けて制御自在に排出するインクジェットカラープリンターでは、従来、長時間の複雑な印刷作業において、印刷を構成するインクの一つが悪いタイミングでなくなってしまうと、作業を中断しなければならず、消耗した印刷ヘッドを交換した後作業を再開しなければならないので、時間を浪費するとともに、中断された作業に用いられた他の色のインクを浪費することになるという欠点や、少なくとも構成色に対し別個の印刷ヘッドを用いるものにおいては、プリンター内部で印刷ヘッドが不注意から誤った位置に取りつけられ、マゼンタのインクがあるべきところにシアンのインクの印刷ヘッドが位置すると印刷されたものは不良になるという欠点があったので、以上の欠点を解決することを目的として、
インク室を有するハウジングとオリフィスを通して前記インク室からインクを噴出させる手段とを有する印刷アッセンブリーの前記インク室内のインクの色、前記インク室内のインクの量などを含む印刷アッセンブリーを特性化するデータを記憶できる記憶素子14を各印刷アッセンブリーの前記ハウジングに備え、印刷アッセンブリーからこれらのデータを読み取って所望に応じて使用または表示できるようにし、このインクの色を特性化するデータを使用して、印刷装置がいかなる色の印刷アッセンブリーをも、いかなる印刷アッセンブリー受けにおいても受け入れ得るようにし、インクの量を特性化するデータに印刷中のインクの使用状態を反映して更新し、このインクの量を特性化するデータを使用して、消耗しかけているインクについてユーザーに警報を与えることができるようにしたインクジェットカラー印刷装置10及び印刷アッセンブリー12であって、
前記印刷装置10は、プリンター回路16、プリンター回路を記憶素子に接続するインターフェース18を備え、
前記印刷アッセンブリー12は、ハウジング20を備えたインクジェット印刷ヘッド、インク室22、インク室と流体を連通ずる複数のオリフィス26を有するオリフィス板24、及びインクをオリフィスから噴出させるための複数の噴射用抵抗28を備え、
前記印刷アッセンブリーのハウジング20上には、複数のアラインメント機構30が配設されており、関連するキャリッジ34内の対応するアラインメント機構32と協働して、印刷アッセンブリーが印刷装置10内をキャリッジによって運ばれる際の適正な機械的アラインメントを確実にしており、
前記記憶素子14は、たとえば、磁性媒体片、半導体メモリー、レーザーによる書込み読取りの可能な光学媒体等によって構成され、前記記憶素子14が磁性媒体片の場合は、前記インクの色を特性化するデータの読み取りや前記インクの量を特性化するデータの更新は、読取/書込みヘッド44により行われるが、他の記憶素子も容易に採用でき、もしメモリー上のデータを印刷装置10で更新する必要がなければ、印刷アッセンブリーの動作特性を符号化した光学バーコードを含めて、種々の読取専用メモリーを採用してもよく、印刷アッセンブリーと印刷装置10の間のデータ通信は、読取/書込みヘッドによってなされる必要はなく、かわりに、光学的、あるいは無線のカップリング等、他の送信技術を用いることもできるものであり、
前記プリンター回路16には、印刷するデータを記憶する通常のデータメモリ36、このデータ(ASCII形式等)をインクジェット印刷ヘッド12の個々の噴射用抵抗28に必要な一連のタイミング・インパルスに変換する信号発生回路38、これら一連のタイミング・インパルス信号を前記噴射用抵抗28を実際に駆動するのに要する電圧レベルに調整する駆動回路40、監視回路42、及び、該監視回路42に付随し、前記記憶素子14から読み取られたインクの量のデータがロードされ、印刷装置10が使用されると前記インクの量のデータを印刷アッセンブリー12からのインクの噴出を反映して減少して更新する揮発性メモリー46を含み、
前記信号発生回路38の出力には、印刷アッセンブリー12が印刷するよう命令されているインク滴の数をカウントする監視回路42が接続されており、該監視回路42によって計測された数は、製造過程で前記記憶素子14にロードされてインクの全充填値に一致するように設定され、前記インク室に残っているインクの相対量を示すデータの定期的更新に用いられ、印刷アッセンブリー12からのインクの噴出を反映するために、前記揮発性メモリー46から印刷アッセンブリー12の記憶素子14に転送されて、連続的に更新されて行き、印刷装置10の電源を落とすと揮発性メモリー46のデータは消えるが、印刷アッセンブリー12の記憶素子14上のデータは残り、印刷装置10の電源を次回投入する際に読み取られ揮発性メモリー46を再度初期化するのに使用され、印刷アッセンブリー12を印刷装置10から外し他の印刷装置10に使用する場合、インクの残存量を示すデータは印刷アッセンブリー12と共に新規の印刷装置10に移るようにされており、
前記監視回路42には低電力インクインジケータ48が接続されており、揮発性メモリー46に示される印刷アッセンブリー12内のインクの液位がしきい値を下回るとユーザに信号を送り、ユーザーに印刷ヘッドがインク切れ間近であることを警報することによって、複雑なカラー図形の印刷における問題や、完了前に一色のインクが切れてしまうといった問題を避けることができるとともに、従来のような印刷ヘッドの取り付け位置の誤りによる印刷不良も簡単に防止することができるインクジェットカラー印刷装置10及び印刷アッセンブリー12。」の発明(以下「甲第2号証発明」という。)が記載されているものと認められる。

第8 当審の判断
1 本件発明1及び2の課題
(1) 101号訂正明細書には、次のとおりの記載がある。
ア 「このようなプリンタでは、特に信号線の数が増すことはコストを増すなどの要因となる。一方で、配線数を削減するためにはバス接続といった所謂共通の信号線の構成が有効であるが、単にバス接続のような共通の信号線を用いる構成では、インクタンクもしくはその搭載位置を特定することができないことは明らかである。」(段落【0009】)

イ 「本発明はこのような問題を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表示器の発光制御を行い、この場合でもインクタンクなど液体インク収納容器の搭載位置を特定した表示器の発光制御をすることを可能とすることにある。」(段落【0010】)

ウ 「以上の構成によれば、記録装置の本体側の接点(コネクタ)と接続する液体インク収納容器であるインクタンクの接点(パッド)を介して入力される信号と、そのインクタンクの色情報とに基づいて発光部の発光を制御するので、先ず、搭載される複数のインクタンクが共通の信号線によってその同じ制御信号を受け取ったとしても、色情報に合致するインクタンクのみがその発光制御を行うことができ、これにより、インクタンクを特定した発光部の点灯など発光制御が可能となる。次に、このようなインクタンクを特定した発光制御が可能な場合、例えば、キャリッジに搭載された複数のインクタンクについて、その移動に伴い所定の位置で順次その発光部を発光させるとともに、上記所定の位置での発光を検出するようにすることにより、発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識できる。これにより、例えば、ユーザに対してインクタンクを正しい位置に再装着することを促す処理をすることができ、結果として、インクタンクごとにその搭載位置を特定することができる。」(段落【0019】)

エ 「この結果、複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表示器の発光制御を行い、この場合でもインクタンクなど液体インク収納容器の搭載位置を特定した表示器の発行制御をすることが可能となる。」(段落【0020】)

オ 「第1受光部210は、インクタンク1のLED101からの発光を受けて、それに応じた信号を制御回路300へ出力する。制御回路300は、後述のように、この信号に基づき、それぞれのインクタンク1のキャリッジ205における位置を判断することができる。また、…エンコーダスケール209が設けられ…エンコーダセンサ211が設けられ…このセンサの検出信号は…制御回路300に入力し、これにより、キャリッジ205の移動位置を知ることができる。」(段落【0079】)

カ 「A番目のインクタンクが装着されていると判断したときは、…該当する色情報のインクタンク1のLED101を点灯する。…4つのインクタンク総てについて装着確認制御が終了し…総てのインクタンクについて、LED101の点灯がされたか否かを判断する。いずれかのインクタンクのLED101が点灯していないと判断したときは、ステップS302以降の処理を繰り返す。…総てのインクタンクのLEDが点灯したと判断したときは、…正常にインクタンクが装着されたか否かを判断する。装着が正常と判断したときは、…着脱処理が正常終了したか否かを判断する。…着脱処理が正常に終了したと判断したときは、…カバー201が閉じられたか否かを判断する。ここで、本体カバーが閉じられたと判断したときは、ステップS105の光照合処理に移行する。」(段落【0101】ないし段落【0107】)

キ 「光照合処理は、正常に装着されたインクタンクそれぞれが正しい位置に装着されているか否かを判断する処理である。本実施形態では、インクタンクの装着位置について、例えば、インクタンクと装着位置の形状を他のインクのインクタンクが装着できないような形状とし、それぞれの色のインクタンクに対応して装着位置を定めるような構成をとらないことから、それぞれの色のインクタンクについて本来の位置でないところに誤って装着される可能性がある。このため、本光照合処理を行い、誤って装着されている場合は、ユーザにその旨を知らせるものである。これにより、特に、インクタンクの形状を色ごとに異ならせることなく、インクタンクの製造の効率化や低コスト化を図ることができる。」(段落【0108】)

ク 「図29(a)に示すように、先ず、第1受光部210に対して、図中左側から右側へ移動キャリッジ205を開始する。そして、最初に、イエローインクのインクタンク1Yが装着されるべき位置のインクタンクが第1受光部210に対向する位置で、インクタンク1YのLED101を発光させる(図24にて説明したように、実際は点灯し所定時間後消灯すること、以下、本照合処理では同様)。インクタンク本来の正しい位置に装着されているとき、第1受光部210はLED101の発光を受光することができ、制御回路300は、その装着位置にはインクタンク1Yが正しく装着されていると判断する。
キャリッジ205を移動しつつ、同様にして、図29(b)に示すように、マゼンタインクのインクタンク1Mが装着されるべき位置のインクタンクが第1受光部210に対向する位置で、インクタンク1MのLED101を発光させる。同図に示す例は、インクタンク1Mが正しい位置に装着されていて第1受光部210はその発光を受光することを示している。順次、図29(b)?(d)に示すように、判断する装着位置を変えながら発光を行って行く。これらの図は、正しい位置に装着されている例を示している。
これに対し、図30(b)に示すように、マゼンタインクのインクタンク1Mが装着されるべき位置にシアンインクのインクタンク1Cが誤って装着されているときは、第1受光部210に対向しているインクタンク1CのLED101は発光せず、別の位置に搭載されているインクタンク1MのLED101が発光する。この結果、このタイミングでは、第1受光部210は受光できないことから、制御回路300は、その装着位置にはインクタンク1M以外のインクタンクが装着されていると判断する。これに対応して、図30(c)に示すように、シアンインクのインクタンク1Cが装着されるべき位置にマゼンタインクのインクタンク1Mが誤って装着されており、第1受光部210に対向しているインクタンク1MのLED101は発光せず、別の位置に搭載されているインクタンク1CのLED101が発光する。
以上説明した光照合処理を行うことにより、制御回路300は本来の位置に装着されていないインクタンクを特定することができる。また、装着されるべき位置に正しいインクタンクが装着されていなかった場合には、その装着位置において、他の3色のインクタンクを順に発光させる制御を行うことによって、その装着位置に誤って何色のインクタンクが装着されてしまったかを特定することもできる。」(段落【0110】ないし段落【0113】)

(2)上記(1)のアないしエの記載によれば、本件発明1及び2の課題は、キャリッジに複数の液体インク収納容器を搭載して使用する記録装置において、コストを低減するため、記録装置と液体インク収納容器との間の配線の方式に、全液体インク収納容器に共通の信号線を用いる共通バス接続の方式を採用した場合でも、各液体インク収納容器がインク色に従ってキャリッジの所定の位置に正しく装着されているか否かを検出することにある。
すなわち、共通バス接続の方式を採用した場合に、記録装置側からの要求に応じて、単純に液体インク収納容器が保持するインク色の情報と合致する場合に当該液体インク収納容器から応答の信号が返るようにしても、例えばイエローの液体インク収納容器とマゼンタの液体インク収納容器の搭載位置を逆にして装着した場合には、それぞれの液体インク収納容器がキャリッジ内にあることだけが検出されるだけで、それ以上にどの搭載位置につき誤装着があるかを検出できないので、その余の構成を加えて、共通バス接続の方式を採用した場合でも液体インク収納容器の搭載位置の誤り(誤装着)を検出できるようにするというものである。

(3)そして、上記(1)のオないしクの記載によれば、本件発明1及び2の実施形態として、101号訂正明細書には次のものが記載されているものと認められる
「液体インク収納容器であるインクタンクのそれぞれに発光部であるLED101を1つずつ設け、
記録装置の本体側に第1受光部となる受光手段を1つ設け、
記録装置のキャリッジに、例えば4色で1組である4つのインクタンクをそのインクタンクのインク色に対応して決まっている箇所に装着し、装着されたインクタンクの接点(パッド)が本体側の接点(コネクタ)と当接して電気的に接続した状態で、
記録装置の本体側の制御回路300は、本体側の接点(コネクタ)へ1番目の色情報を指定する信号を出力し、各インクタンクの制御部は、記録装置の本体側の接点(コネクタ)と接続するインクタンクの接点(パッド)を介して本体側から入力される信号の1番目の色情報と、そのメモリアレイ103Bに記憶されている色情報とを比較し、両色情報に基づいてそれらが一致したと判断した場合には、そのメモリアレイ103Bに記憶されている1番目の色情報を前記制御回路300に読み出させて、前記制御回路300は、メモリアレイ103Bに記憶されている1番目の色情報を読み出すことができた場合は、1番目のフラグF(1)を“1”にセットして当該インクタンクのLED101を発光させ、メモリアレイ103Bに記憶されている1番目の色情報を読み出すことができなかった場合には、1番目のフラグF(1)を“0”のままにしておき、2番目、3番目、4番目と、各色情報について同様の処理を順次行って、4つの色情報に対応する4つのフラグF(1)ないしF(4)がすべて“1”にセットされて総てのインクタンクのLED101が点灯したと判断した後に、
1番目の色情報が示すインク色のインクタンクが装着されるべきキャリッジの箇所に装着されたインクタンクのLED101が発光した光は前記第1受光部に投光されるがキャリッジの他の箇所に装着されたインクタンクのLED101が発光した光は前記第1受光部に投光されない位置にキャリッジを移動させ、前記制御回路300から1番目の色情報とともにLED101の点灯を指示する信号を出力し、各インクタンクの制御部は、本体側から入力される信号の1番目の色情報と、そのメモリアレイ103Bに記憶されている色情報とを比較し、両色情報に基づいてそれらが一致したと判断した場合には、そのインクタンクのLED101を発光させるとともに、このとき、このLED101からの光は、1番目の色情報が示すインク色のインクタンクがキャリッジの正しい箇所に装着されていれば前記第1受光部に受光され、1番目の色情報が示すインク色のインクタンクがキャリッジの正しい箇所に装着されていなければ前記第1受光部に受光されないから、前記第1受光部がLED101からの光を受光したか否かを前記第1受光部からの出力が入力されている前記制御回路300が判断し、2番目、3番目、4番目と、各色情報について同様の処理を順次行って、前記第1受光部からの入力で発光が検出されなかった色情報が示すインク色のインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識し、装着されるべき位置に正しいインクタンクが装着されていなかった場合には、キャリッジのその装着されるべき位置に装着されたインクタンクのLED101が発光した光は前記第1受光部に投光されるがキャリッジの他の箇所に装着されたインクタンクのLED101が発光した光は前記第1受光部に投光されない位置にキャリッジを位置させておいて、他の3つの色情報について、色情報とともにLED101の点灯を指示する信号を順に前記制御回路300から出力させて他の3つのインクタンクのうち、そのメモリアレイ103Bに記憶されている色情報が本体側から入力される信号の色情報と一致するインクタンクを順に発光させ、前記第1受光部で発光したLEDからの光を受光したことを検出することによって、そのとき前記制御回路300から出力した信号の色情報が示すインク色のインクタンクがその装着されるべき位置に誤って装着されてしまったインクタンクであることを特定するようにして、インクタンクごとにその搭載位置を特定することができるようにしたもの。」

2 本件発明1について
(1)対比
甲第1号証発明の「インクカートリッジCA1?CA6」及び「インクカートリッジCA1?CA6の各記憶装置のデータ信号端子DT」は、それぞれ、本件発明1の「液体インク収納容器」及び「液体インク収納容器に備えられる接点」に相当する。また、甲第1号証には、本件発明1の「液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」を備える点について明示の記載はないものの、「インクカートリッジCA1?CA6の各記憶装置のデータ信号端子DT」がキャリッジに設けられているデータバスDBに接続されていることから、キャリッジ側に対応する端子(接点)が設けられていることは当業者にとって自明であるから、甲第1号証発明は、本件発明1の「液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」及び「前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点」を備えていると認められる。
甲第1号証発明の「キャリッジに設けられているデータバスDB及び該データバスDBをプリンタの制御回路に接続しているデータ信号線DL」は、インクカートリッジCA1?CA6の各記憶装置のデータ信号端子DTと接続し、バス接続、すなわち、共通な電気的接続となっており、プリンタの制御回路が、それぞれインクカートリッジCA1?CA6内に収容されているインク色を識別するための識別情報を送信するための配線を有した電気回路であると認められる。したがって、甲第1号証発明は、本件発明1の「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」を備えている。
甲第1号証発明の「識別情報」は、インクカートリッジCA1?CA6内に収容されているインク色を識別するためのものであるから、甲第1号証発明の「識別情報を格納する記憶素子(メモリアレイ)」は、本件発明1の「液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部」に相当する。
したがって、本件発明1と甲第1号証発明とは、
「複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
を有する液体インク収納容器。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:
前記「記録装置」が、本件発明1では、「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」及び「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」構成を有するのに対して、甲第1号証発明ではこれらを有しない点。

相違点2:
本件発明1では、前記「液体インク収納容器」に、「受光手段に投光するための光を発光する発光部」及び「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部」が備えられているのに対し、甲第1号証発明では、インクカートリッジ(液体インク収納容器)に発光部は備えられておらず、また、インクカートリッジ(液体インク収納容器)の記憶装置(制御部)は、プリンタの制御回路から識別情報が送信されてくると送信されてきた識別情報(色情報)と自己の前記識別情報(色情報)を比較解析し、解析した識別情報が記憶素子内に格納されている識別情報と一致する場合には、応答信号をプリンタの制御回路に対して送り返すものであって、これにより、プリンタの制御回路が、いずれかのインクカートリッジCAが装着されていないと判定した場合には、各記憶装置に割り当てられている識別情報を順次、データ信号線DLへ送出して応答信号の無い記憶装置を備えるインクカートリッジCAを装着されていないインクカートリッジCAとして検出し、装着されていないインクカートリッジを特定して、報知できるようになっているものの、上記記憶装置(制御部)は発光部を発光させるものではない点。

(2)判断
次のアないしカのとおり、甲第1号証発明に甲第2号証発明を適用し、さらに、甲第3ないし甲第9号証に記載の事項を参酌しても、本件発明1と甲第1号証発明との一致点を残したまま上記相違点1及び2に係る本件発明1の構成に想到することが容易であるということはできない。このほかに、上記相違点1及び2に相当する構成が本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったことを認めるに足りる証拠もない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証発明、甲第2号証発明及び甲第3ないし甲第9号証に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとする請求人の主張には、理由がない。

ア 甲第1号証には、インクカートリッジ上に発光部を設ける構成に係る記載ないし同構成を示唆する記載は存在しない。また、本件発明1の「発光部」とは、単に光を発すれば足りるものではなく、「前記受光手段に投光するための光を発光する」ものである必要があり、本件発明1では、インクタンクの本来装着されるべき位置が、プリンタに設けた受光手段に投光する位置にある状態で、当該インクタンクに設けた発光部を発光させ、その光を上記受光手段が受光することによって、前記液体インク収納容器の搭載位置の検出を実現するものであるから、本件発明1において、発光の目的は重要な技術的意義を有するものと認められる。これに対し、甲第1号証発明においては、装着されていないインクカートリッジを特定して、報知することができるから、この報知に発光手段を用いることは当業者が想到することができるが、そのような発光手段は、交換対象となるインクカートリッジを(ユーザーに)報知するためのものであるから、本件発明1における発光部とは、発光の目的を異にする。
これらの点からみると、甲第1号証発明において当業者が想到する報知に用いる発光部手段と本件発明1における発光部とは実質的に相違するというべきである。

イ 甲第2号証には、甲第2号証発明が記載されているところ、甲第2号証発明は、インクジェットカラー印刷装置10及び印刷アッセンブリー12に関し、少なくとも構成色に対し別個の印刷ヘッドを用いるものにおいては、プリンター内部で印刷ヘッドが不注意から誤った位置に取りつけられ、マゼンタのインクがあるべきところにシアンのインクの印刷ヘッドが位置すると印刷されたものは不良になるという欠点を解決することを目的として、インク室を有するハウジングとオリフィスを通して前記インク室からインクを噴出させる手段とを有する印刷アッセンブリーの前記インク室内のインクの色、前記インク室内のインクの量などを含む印刷アッセンブリーを特性化するデータを記憶できる記憶素子14を各印刷アッセンブリーの前記ハウジングに備え、印刷アッセンブリーからこれらのデータを読み取って所望に応じて使用または表示できるようにし、このインクの色を特性化するデータを使用して、印刷装置がいかなる色の印刷アッセンブリーをも、いかなる印刷アッセンブリー受けにおいても受け入れ得るようにし、インクの量を特性化するデータに印刷中のインクの使用状態を反映して更新し、このインクの量を特性化するデータを使用して、消耗しかけているインクについてユーザーに警報を与えることができるようにしたものであって、前記記憶素子14は、たとえば、磁性媒体片、半導体メモリー、レーザーによる書込み読取りの可能な光学媒体等によって構成され、前記記憶素子14が磁性媒体片の場合は、前記インクの色を特性化するデータの読み取りや前記インクの量を特性化するデータの更新は、読取/書込みヘッド44により行われるが、他の記憶素子も容易に採用でき、もしメモリー上のデータを印刷装置10で更新する必要がなければ、印刷アッセンブリーの動作特性を符号化した光学バーコードを含めて、種々の読取専用メモリーを採用してもよく、印刷アッセンブリーと印刷装置10の間のデータ通信は、読取/書込みヘッドによってなされる必要はなく、かわりに、光学的、あるいは無線のカップリング等、他の送信技術を用いることもできるもの(上記「第7 2(2)」参照。)であるから、甲第1号証発明において、記憶装置とプリンタの制御回路との間の識別情報の送信や応答信号の返送を「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線」を介して行っているのを、甲第2号証発明を適用して、光学的カップリング等の送信技術を用いて行うようになすことは、当業者が想到することができたとしても、そうして光学的カップリング用の発光部及び受光手段を設けた場合には、上記(1)で一致点であった「記録装置が、該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する」点及び「液体インク収納容器が、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点を有する」点を備えないものとなるばかりか、光学的カップリングのために設けた発光部及び受光手段はデータ通信のためのものであって、本件発明1のように「位置検出用の発光部及び受光手段」ではなく、「該受光手段で発光部からの光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」における発光部及び受光手段でもなく、「発光部からの光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」ための発光部及び受光手段でもなく、本件発明1の発光部及び受光手段の構成とは、発光部及び受光手段を設ける技術的意義ないし役割が大きく異なるものである。
したがって、甲第1号証発明に甲第2号証発明を適用したとしても、本件発明1と甲第1号証発明との一致点を残したまま上記相違点1及び2に係る本件発明1の構成、とりわけ、キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の液体インク収納容器の発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する構成に想到することは、その動機付けがなく容易ではないというべきである。
なお、請求人は、口頭審理において、甲第1号証の「バス接続配線」には、カートリッジアウト信号線COLも含まれており、甲第2号証の「光通信手段(光学的カップリング)」を採用する代わりに「バス接続配線」を無くしてしまうとカートリッジアウト信号線COLも無くなってしまい、制御回路30が全てのインクカートリッジCA1?CA6がキャリッジ11上に装着されているか否かを判定できなくなってしまうから、そのような不都合が生じないようにするため、甲第1号証の「バス接続配線」と甲第2号証の「光通信手段」とは併存し得ると補足的に主張する。
しかし、甲第1号証の「バス接続配線」のカートリッジアウト信号線COLは、データ通信のためのものではなく、「キャリッジ11上に配置され、インクカートリッジCA1?CA6に備えられているカートリッジアウト検出用端子CAOTをカスケードに接続し、一端は接地されるカートリッジアウト検出線CDL」の他端をパーソナルコンピュータPCのカートリッジアウト検出端子COTと接続するためのものであるから、甲第1号証発明において、記憶装置とプリンタの制御回路との間の識別情報の送信や応答信号の返送を「配線により共通に電気的接続され、搭載される液体インク収納容器それぞれの接点と接続する装置側接点」及び「前記装置側接点と電気的に接続可能な、液体インク収納容器に備えられる接点」を介して行っているのを、甲第2号証発明を適用して、光学的カップリング等の送信技術を用いて行うようになすとともに、「配線により共通に電気的接続され、搭載される液体インク収納容器それぞれの接点と接続する装置側接点」及び「前記装置側接点と電気的に接続可能な、液体インク収納容器に備えられる接点」を備えないものとしたとしても、データ通信のためのものではないカートリッジアウト信号線COLまでも無くす必然性は認められないから、請求人のこの補足的な主張は、カートリッジアウト信号線COLをデータ通信のための信号線と混同したものであって、誤った主張である。

ウ 甲第3号証に記載の各インクカートリッジとプリンタ本体との間の配線は、その【0163】、【0164】、図68及び図69の記載からみて、個別配線構成であるものと認められる。
したがって、コストを低減するため、記録装置と液体インク収納容器との間の配線の方式に、全液体インク収納容器に共通の信号線を用いる共通バス接続の方式を採用した場合でも、各液体インク収納容器がインク色に従ってキャリッジの所定の位置に正しく装着されているか否かを検出するという本件発明1の課題(上記1(2)参照。)は甲第3号証には記載されていない。

エ 甲第2号証発明の光学的カップリング等のデータ通信技術の構成として、甲第4号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第7号証に開示されている発光部及び受光手段を用いたデータ通信技術を採用することが本件特許の最先の優先日前に周知であったとしても、甲第1号証発明に甲第2号証発明を適用したとしても、本件発明1と甲第1号証発明との一致点を残したまま上記相違点1及び2に係る本件発明1の構成に想到することは、その動機付けがなく容易ではないことに変わりはない。
請求人は、甲第2号証に記載の示唆「印刷ヘッドとプリンターの間の通信は、読取/書込みヘッドによってなされる必要はない。かわりに、光学的、あるいは無線のカップリング等、他の送信技術を用いることもできる。」(6頁右上欄10?14行目)に従って、「磁気読取/書込みヘッド44」を、「光学的カップリング」として把握した発明である印刷装置として「引用文献2に係る印刷装置」を図示しているが(上記「第4 6(4)ウ(イ)」参照。)、「印刷ヘッドとプリンターの間の通信は、光学的カップリングを用いることもできる」との示唆により、そのような印刷装置(図示された「引用文献2に係る印刷装置」)までも把握できるとまではいえない。甲第2号証には、「第3図は本発明の一実施例において用いられるプリンター回路16の詳細を示す。」、「印刷ヘッドが印刷するよう命令されているインク滴の数をカウントする監視回路42」、「監視回路42によって計測された数はこのデータの定期的更新に用いる」、「図示した実施例では、この更新はキャリッジ34の通路近傍に取りつけられ印刷ヘッドがその位置を通過する都度印刷ヘッドの磁気片メモリー14を読み書きする磁気読取/書込みヘッド44によって行われる。好適には、プリンター10が電源投入される都度、印刷ヘッド12がこの読取/書込みヘッド44を通過し、印刷ヘッドの磁気片メモリー上のインクの液位のデータが読みとられるのが望ましい。」、「印刷ヘッドが読取/書込みヘッド44を通過する都度、この減少された値はプリンター内部の揮発性メモリー46から印刷ヘッドの磁気片14に転送され、前の値を更新していく。このようにして、プリンターの揮発性メモリー46は、印刷ヘッドに与えられる信号を監視することによって連続的に更新されて行く。印刷ヘッドの磁気片メモリー14はメモリー46からのデータ転送によって定期的(すなわち、読取/書込みヘッドを通過する都度)に更新される。プリンターの電源を落とすとメモリー46のデータは消えるが、印刷ヘッドの磁気片メモリー上のデータは残り、プリンターの電源を次回投入する際に読み取られメモリー46を再度初期化するのに使用される。印刷ヘッドをプリンターから外し他のプリンターに使用する場合、インクの残存量を示すデータは印刷ヘッドと共に新規のプリンターに移ることになる。」の記載があり、FIG.2から、磁気読取/書込みヘッド44が、キャリッジ34の移動に伴い印刷ヘッドが通過する都度印刷ヘッドの磁気片メモリー14を読み書きすることができるキャリッジ34の通路近傍の位置にアーム状の支持部材により取りつけられていることが見て取れる。これらのことから、甲第2号証のFIG.2及びFIG.3に具体的に記載されている一実施例のものは、印刷ヘッドの磁気片メモリー14と、磁気読取/書込みヘッド44とが、キャリッジ34の移動により、あたかもフレキシブルディスク装置や磁気ディスク記録装置などにおける磁気記録媒体と磁気ヘッドとの相対移動のように相対移動し、この相対移動により磁気片メモリー14の領域に磁気記録されている情報を読み出しあるいは磁気片メモリー14の領域に情報を磁気記録方式で書き込むようにしたものであると把握される。したがって、甲第2号証の「本発明は印刷ヘッド上の磁気片メモリーに言及しつつ説明されてきたが、他の記憶素子も容易に採用されうる。もしメモリー上のデータをプリンターで更新する必要がなければ、印刷ヘッドの動作特性を符号化した光学バーコードを含めて、種々の読取専用メモリーを採用してもよい。」との記載から、光学バーコードと、光学読み取り手段との相対移動(読み取り走査)にも、キャリッジ34の移動を用いることができることが把握される。一方、甲第2号証の「印刷ヘッドとプリンターの間のデータ通信は、読取/書込みヘッドによってなされる必要はない。かわりに、光学的、あるいは無線のカップリング等、他の送信技術を用いることもできる。」との記載は、磁気片メモリーのバリエーションについて言及しているのではなく、記録方法や読み取り方法についてのバリエーションについて言及しているのでもなく、印刷ヘッドとプリンターの間のデータ通信のバリエーションについて言及しているのであって、磁気読取/書込みヘッド又は読み取り専用ヘッドにより印刷ヘッド側の記録媒体の情報を直接読み出したり情報を直接書き込むようなデータ通信とは異なるデータ通信も採用できる旨を言及しているのである。したがって、記録媒体の情報を直接読み出したり情報を直接書き込むデータ通信のかわりに、光学的カップリングの送信技術を用いるときには、上記一実施例や光学バーコードのように、本体側の磁気読取/書込みヘッド又は読み取り専用ヘッドと、印刷ヘッド側の記録媒体との相対移動にキャリッジの移動を用いる必要性はなくなってしまうので、光学カップリングの送受信手段(発光手段及び受光手段)を、キャリッジ34の移動に伴い印刷ヘッドが通過する都度印刷ヘッドの送受信手段(発光手段及び受光手段)と対向することができるキャリッジ34の通路近傍の位置にアーム状の支持部材により取りつける技術上の意味はなく、キャリッジ上の印刷ヘッドの送受信手段(発光手段及び受光手段)と対向する箇所に対応する送受信手段(発光手段及び受光手段)を設ければ済むことである。したがって、甲第2号証に記載の示唆に従って、「磁気読取/書込みヘッド44」を、「光学的カップリング」として把握した発明である印刷装置として請求人が図示した上記「引用文献2に係る印刷装置」の図は、技術常識を正当に反映していない当を得ないものである。
請求人の主張するように、さらに甲第5号証に記載の事項を採用することは、甲第1号証発明に甲第2号証発明を採用してなした発明にさらに甲第5号証に記載の発明を採用することになるから、もうそれ自体で特許法第29条第2項にいうところの当業者が容易に発明をすることができたときには当たらない。さらに、そのようにしてなされた発明は、甲第1号証発明において、記憶装置とプリンタの制御回路との間の識別情報の送信や応答信号の返送を「配線により共通に電気的接続され、搭載される液体インク収納容器それぞれの接点と接続する装置側接点」及び「前記装置側接点と電気的に接続可能な、液体インク収納容器に備えられる接点」を介して行っているのに代えて、光学的カップリングを介して用いて行うような発明となり得るけれども、そのような発明は本件発明1の「配線により共通に電気的接続され、搭載される液体インク収納容器それぞれの接点と接続する装置側接点」及び「前記装置側接点と電気的に接続可能な、液体インク収納容器に備えられる接点」を有しないものである。

オ 甲第8号証には、従来はキャリアを移動させて所望のタブ設定位置にセットし、ここでタブ設定キーを押込操作してタブ設定を行っていたので面倒であったので、ガイド軸2に平行に係止部材3を配設し、該係止部材3に複数の操作体6?12を移動可能に装着し、該操作体6?12にそれぞれ発光素子を取着しておくとともに、キャリアには検出器14を装着し、前記発光素子を点灯させると該点灯した発光素子がタブになり、前記検出器14が発光素子が点灯している操作体を検出することによりタブ位置が検出されるようにしたものが記載されている。しかしながら、この技術は、キャリアがある位置に達したことを、予めその位置に発光素子を位置せしめておくことでキャリアに設けた検出器により検知するものであって、検知するのはキャリアの位置であり、キャリアに複数装着されるものの位置でもその各装着箇所への装着の有無でもなく、本件発明1の「キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき液体インク収納容器の搭載位置を検出する」技術とはほど遠いものである。

カ 甲第9号証には、「複数色のインクカートリッジ( 印刷記録材容器) を備えるカラープリンタにおいて、インクカートリッジの交換時におけるインクカートリッジの誤装着、すなわち、交換されるべきインク色とは異なるインクカートリッジの装着、を防止するための技術が提案されている。例えば、インク色毎にインクカートリッジの外形形状を変更し、誤ったインクカートリッジが物理的に装着できないようにする技術が知られている。また、同一の外形形状を有するインクカートリッジを用いる場合には、一個のインクカートリッジのみが脱着可能な開口部を有するカバーをプリンタ上に設け、交換されるべきインクカートリッジを開口部まで移動させて、交換されるべきインクカートリッジのみの脱着を許容する技術が知られている。」(1頁10?19行)との記載がある。
また、甲第9号証の25頁23行ないし28頁15行には、第1実施例に係るインクカートリッジの識別装置の動作のうち、初期装着時に実行されるインクカートリッジの識別処理として、「インクカートリッジCA1からCA4が装着されていない状態で電源がオンされた場合に自動的にインク交換要求が発生し、先ず、第1番目のインクカートリッジCA1装着箇所を交換用開口部14に対応する位置まで移動させ(第12図)、インクカートリッジCA1装着箇所にインクカートリッジが装着されると、インクカートリッジCA1の記憶装置が保有する識別データに対応する識別データをパーソナルコンピュータ(制御回路30)からデータバスDB上に送信してその応答があるか否かを判定し、インクカートリッジCA1装着箇所に装着されたインクカートリッジが装着されるべきインクカートリッジCA1である場合には応答があることから、応答がない場合には、誤ったインクカートリッジが装着されている旨を例えば操作パネル上に配置されているランプを点滅されるなどして報知し、応答がある場合には、同様にして次のインクカートリッジCA2の装着が正しく行われたか否かを識別し、全てのインクカートリッジCA1からCA4の装着が正しく終えられたら処理を終了する初期装着時に実行されるインクカートリッジの識別処理」が記載されており、
甲第9号証の28頁16行ないし30頁25行には、インクカートリッジCA1?CA4の初期装着終了後、インクカートリッジが空になったときに実行される、第2実施例に係るインクカートリッジの識別処理として、「インクカートリッジのインク残量が所定値以下となった場合にインク交換要求を発光し、交換を要求されたインクカートリッジを特定し、ここではインクカートリッジCA1が特定されたとすると、交換の要求されたインクカートリッジCA1を交換用開口部14まで移動させ、交換の要求されたインクカートリッジCA1が取り外され新たなインクカートリッジが装着されたら、先に特定したインクカートリッジCA1に対応する識別データをパーソナルコンピュータ(制御回路30)からデータバスDB上に送信してその応答があるか否かを判定し、装着された新たなインクカートリッジがインクカートリッジCA1である場合には応答があることから、応答がない場合には、誤ったインクカートリッジが装着されている旨を例えば操作パネル上に配置されているランプを点滅されるなどして報知し、応答がある場合には、新たなインクカートリッジCA1が正しく装着されたものとして判断し処理を終了するインクカートリッジが空になったときに実行されるインクカートリッジの識別処理」が記載されている。
してみると、甲第1号証発明において、一個のインクカートリッジのみが脱着可能な開口部を有するカバーをプリンタ上に設け、交換されるべきインクカートリッジの装着箇所又はその装着箇所に正しく装着されているインクカートリッジを開口部まで移動させて、新しいインクカートリッジが装着されると記録装置側(PC)から識別データを送信し、その応答信号の有無により、装着された新たなインクカートリッジがその装着箇所に装着すべきインクカートリッジであるか否かを確認できるようにすることは、当業者が甲第9号証に基づいて容易に想到することができたかもしれないが、その記録装置側(PC)からの識別データの送信は、甲第1号証発明及び甲第9号証に記載されている「データバスDB」を介して行えるものであり、本件発明1の「記録装置が、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段及び前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する構成を有する」点も、「液体インク収納容器に受光手段に投光するための光を発光する発光部が備えられている」点も、「液体インク収納容器に前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部を備える」点も必要としないものである。
仮に、甲第1号証発明において、データバスDBを介して行える識別データの送受信を甲第2号証に記載されている光学的カップリングを介して行うように変更することが当業者に容易であったとしても、そうした場合には「配線により共通に電気的接続され、搭載される液体インク収納容器それぞれの接点と接続する装置側接点」及び「前記装置側接点と電気的に接続可能な、液体インク収納容器に備えられる接点」は不要になるとともに、識別データの送受信を行うための光学的カップリングは、キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段の発光部及び受光手段ではない。

(3)まとめ
よって、本件発明1は、当業者が甲第1号証発明、甲第2号証発明及び甲第3号証ないし甲第9号証の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

3 本件発明2について
(1)対比
甲第1号証発明の「インクカートリッジCA1?CA6」及び「インクカートリッジCA1?CA6の各記憶装置のデータ信号端子DT」は、それぞれ、本件発明2の「液体インク収納容器」及び「液体インク収納容器に備えられる接点」に相当する。また、甲第1号証には、本件発明2の「液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」を備える点について明示の記載はないものの、「インクカートリッジCA1?CA6の各記憶装置のデータ信号端子DT」がキャリッジに設けられているデータバスDBに接続されていることから、キャリッジ側に対応する端子(接点)が設けられていることは当業者にとって自明であるから、甲第1号証発明は、本件発明2の「液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」及び「前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点」を備えていると認められる。
甲第1号証発明の「キャリッジに設けられているデータバスDB及び該データバスDBをプリンタの制御回路に接続しているデータ信号線DL」は、インクカートリッジCA1?CA6の各記憶装置のデータ信号端子DTと接続し、バス接続、すなわち、共通な電気的接続となっており、プリンタの制御回路が、それぞれインクカートリッジCA1?CA6内に収容されているインク色を識別するための識別情報を送信するための配線を有した電気回路であると認められる。したがって、甲第1号証発明は、本件発明2の「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」を備えている。
甲第1号証発明の「識別情報」は、インクカートリッジCA1?CA6内に収容されているインク色を識別するためのものであるから、甲第1号証発明の「識別情報を格納する記憶素子(メモリアレイ)」は、本件発明2の「液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部」に相当する。
甲第1号証発明のカラープリンタ(記録装置)は、そのキャリッジに新しいインクカートリッジCA1?CA6が装着されることによってインクが供給されるものであるから、甲第1号証発明の「前記キャリッジに前記インクカートリッジCA1?CA6が装着されるカラープリンタ及びインクカートリッジ」は、本件発明2の「液体インク供給システム」に相当する。
したがって、本件発明2と甲第1号証発明とは、
「複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と、
前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と、を備える液体インク供給システムにおいて、
前記液体インク収納容器は、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、を有する液体インク供給システム。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点3:
前記「記録装置」が、本件発明2では、「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」及び「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」構成を有するのに対して、甲第1号証発明ではこれらを有しない点。

相違点4:
本件発明2では、前記「液体インク収納容器」に、「前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部」及び「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部」が備えられているのに対し、甲第1号証発明では、インクカートリッジ(液体インク収納容器)に発光部は備えられておらず、また、インクカートリッジ(液体インク収納容器)の記憶装置(制御部)は、プリンタの制御回路から識別情報が送信されてくると送信されてきた識別情報(色情報)と自己の前記識別情報(色情報)を比較解析し、解析した識別情報が記憶素子内に格納されている識別情報と一致する場合には、応答信号をプリンタの制御回路に対して送り返すものであって、これにより、プリンタの制御回路が、いずれかのインクカートリッジCAが装着されていないと判定した場合には、各記憶装置に割り当てられている識別情報を順次、データ信号線DLへ送出して応答信号の無い記憶装置を備えるインクカートリッジCAを装着されていないインクカートリッジCAとして検出し、装着されていないインクカートリッジを特定して、報知できるようになっているものの、上記記憶装置(制御部)は発光部を発光させるものではない点。

(2)判断
上記(1)の本件発明2と甲第1号証発明との一致点、相違点3及び相違点4は、それぞれ、上記2(1)の本件発明1と甲第1号証発明との一致点、相違点1及び相違点2と同様の内容であるから、上記2(2)で述べた理由と同様の理由で、甲第1号証発明に甲第2号証発明を適用し、さらに、甲第3ないし甲第9号証に記載の事項を参酌しても、本件発明2と甲第1号証発明との一致点を残したまま上記相違点3及び4に係る本件発明2の構成に想到することが容易であるということはできない。このほかに、上記相違点3及び4に相当する構成が本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったことを認めるに足りる証拠もない。

(3)まとめ
よって、本件発明2は、当業者が甲第1号証発明、甲第2号証発明及び甲第3ないし甲第9号証に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

第9 むすび

以上のとおり、請求人らの主張及び証拠方法によっては、本件発明1及び2についての特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2012-09-07 
出願番号 特願2004-330952(P2004-330952)
審決分類 P 1 123・ 121- Y (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門 良成  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 鈴木 秀幹
星野 浩一
登録日 2006-04-14 
登録番号 特許第3793216号(P3793216)
発明の名称 液体インク収納容器、液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジ  
代理人 大塚 康徳  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康弘  
代理人 西川 恵雄  
代理人 高柳 司郎  
代理人 安田 恵  
代理人 河野 英仁  
代理人 長尾 達也  
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