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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A45B
管理番号 1266194
審判番号 無効2011-800152  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-08-31 
確定日 2012-10-22 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3514748号発明「発光うちわ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
1.1 本件特許第3514748号についての出願は、平成14年2月18日になされ、同16年1月23日にその発明について特許権の設定登録がなされた。
1.2 これに対して平成23年8月31日に、請求人株式会社ワンダーランドが、本件特許の請求項1ないし9に係る発明について、特許を無効にするとの審決を求める無効審判を請求し、証拠方法として甲第1ないし17号証を提出した。
1.3 被請求人マイクロストーン株式会社は、平成23年11月16日に答弁書を提出した。
1.4 当審は平成23年12月9日付で審理事項を通知した。
1.5 請求人は、平成24年1月11日に口頭審理陳述要領書を提出するとともに、甲第18ないし22号証を追加した。
1.6 被請求人は、平成24年1月11日に口頭審理陳述要領書を提出した。
1.7 当審は平成24年1月25日に口頭審理を行った。口頭審理において、当審は甲第21及び22号証の追加を許可した。請求人は、甲第18ないし20号証をそれぞれ参考資料1ないし3とすることに同意した。これに伴い、請求人の甲第21及び22号証は、甲第18及び19号証とした。
1.8 被請求人は、平成24年2月7日に上申書を提出した。
1.9 当審は、平成24年4月25日付で、無効理由通知を行った。
1.10 被請求人は、平成24年5月30日に意見書を提出すると共に、訂正請求書を提出して明細書を訂正することを求めた。
1.11 当審は、平成24年6月22日に請求人に対し、被請求人の上記上申書、意見書及び訂正請求書の写しを送付して弁駁の機会を与えたが、指定期間内に応答はなかった。

2.訂正の可否の判断
2.1 訂正の内容
平成24年5月30日付訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。

a.特許請求の範囲を以下のとおり訂正する。
<訂正前>
「【請求項1】 内部に電源を収納した柄と、該柄の一方の端部に接合された透明な材質より成る扇体の骨格と、該骨格の内部に光束を入射させるように前記柄の一方の端部付近に配置した少なくとも1個のLED光源と、前記骨格の表面に貼着した扇面板より成り、前記骨格は前記柄と結合された骨格基部と、該骨格基部上端から放射状に突出した多数の放射骨を有し、前記光束は前記骨格基部の下方から骨格の上方に向かって放射状に広がるように入射し、前記骨格基部上端から前記放射骨に移る個々の断面減少部位より、光の一部を前記骨格基部上端に沿って配列された多数の発光点として外部に放射することを特徴とする発光うちわ。
【請求項2】 前記骨格基部の上端の厚さが前記放射骨の下端の厚さよりもやや大きいことを特徴とする請求項1の発光うちわ。
【請求項3】 前記骨格基部の前記柄の結合部の外側と前記骨格基部の上端縁との中間部には前記放射骨と同様に放射状に配列された細長い多数の浅い凹部を有し、前記凹部の各々の前記LED光源側の端部が前記LED光源を囲むように配置されており、前記各LED光源側の端部における個々の断面減少部位が前記扇体からの更なる発光点となっていることを特徴とする請求項1または2の発光うちわ。
【請求項4】 前記骨格は透明な材質で成形された、骨格基部、その上方の基部上端、多数の放射骨及びその先端を結ぶ縁部材より成り、前記放射骨の延長上の前記縁部材の外縁部をも前記扇体からの更なる発光点としたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの発光うちわ。
【請求項5】 前記骨格基部上端の前記放射骨に移る部分の多数の発光点、前記骨格基部上に配列された多数の前記凹部の前記LED光源側の端部の多数の発光点、および前記縁部材の外縁部に生ずる多数の発光点を、扇面上において3本の曲線の上にそれぞれ配列させたことを特徴とする請求項4の発光うちわ。
【請求項6】 前記扇面板は全面または大部分の面がほぼ透明であってしかも外光により視認可能な模様または図柄を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの発光うちわ。
【請求項7】 前記扇面板は、透過光に対してはほとんど無色で透過性が高いが、反射光によって着色した模様または図柄が見えるホログラムシートであることを特徴とする請求項6の発光うちわ。
【請求項8】 前記柄の少なくとも一方の端部は不透明な材質または光減衰作用のある材質で形成され、前記LED光源が前記柄の一方の端部に覆われることによって前記LED光源の発光の眩しさを抑制していることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかの発光うちわ。
【請求項9】 前記発光うちわは、メインスイッチ以外に前記LED光源の発光を制御する他の制御手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかの発光うちわ。」
<訂正後>
「【請求項1】 内部に電源を収納した柄と、該柄の一方の端部に接合された透明な材質より成る扇体の骨格と、該骨格の内部に光束を入射させるように前記柄の一方の端部付近に配置した少なくとも1個のLED光源と、前記骨格の表面に貼着した扇面板より成り、前記骨格は前記柄と結合された骨格基部と、該骨格基部上端から放射状に突出した多数の放射骨を有し、前記光束は前記骨格基部の下方から骨格の上方に向かって放射状に広がるように入射し、前記骨格基部上端から前記放射骨に移る個々の断面減少部位より、光の一部を前記骨格基部上端に沿って配列された多数の発光点として外部に放射するものであって、前記骨格基部の上端の厚さが前記放射骨の下端の厚さよりもやや大きいことを特徴とする発光うちわ。
【請求項2】 内部に電源を収納した柄と、該柄の一方の端部に接合された透明な材質より成る扇体の骨格と、該骨格の内部に光束を入射させるように前記柄の一方の端部付近に配置した少なくとも1個のLED光源と、前記骨格の表面に貼着した扇面板より成り、前記骨格は前記柄と結合された骨格基部と、該骨格基部上端から放射状に突出した多数の放射骨を有し、前記光束は前記骨格基部の下方から骨格の上方に向かって放射状に広がるように入射し、前記骨格基部上端から前記放射骨に移る個々の断面減少部位より、光の一部を前記骨格基部上端に沿って配列された多数の発光点として外部に放射すると共に、前記骨格基部の前記柄の結合部の外側と前記骨格基部の上端縁との中間部には前記放射骨と同様に放射状に配列された細長い多数の浅い凹部を有し、前記凹部の各々の前記LED光源側の端部が前記LED光源を囲むように配置されており、前記各LED光源側の端部における個々の断面減少部位が前記扇体からの更なる発光点となっていることを特徴とする発光うちわ。
【請求項3】 前記骨格は透明な材質で成形された、骨格基部、その上方の基部上端、多数の放射骨及びその先端を結ぶ縁部材より成り、前記放射骨の延長上の前記縁部材の外縁部をも前記扇体からの更なる発光点としたことを特徴とする請求項1記載の発光うちわ。
【請求項4】 前記扇面板は全面または大部分の面がほぼ透明であってしかも外光により視認可能な模様または図柄を有することを特徴とする請求項1記載の発光うちわ。
【請求項5】 前記柄の少なくとも一方の端部は不透明な材質または光減衰作用のある材質で形成され、前記LED光源が前記柄の一方の端部に覆われることによって前記LED光源の発光の眩しさを抑制していることを特徴とする請求項1記載の発光うちわ。
【請求項6】 前記発光うちわは、メインスイッチ以外に前記LED光源の発光を制御する他の制御手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の発光うちわ。
【請求項7】 前記骨格は透明な材質で成形された、骨格基部、その上方の基部上端、多数の放射骨及びその先端を結ぶ縁部材より成り、前記放射骨の延長上の前記縁部材の外縁部をも前記扇体からの更なる発光点としたことを特徴とする請求項2記載の発光うちわ。
【請求項8】 前記骨格基部上端の前記放射骨に移る部分の多数の発光点、前記骨格基部上に配列された多数の前記凹部の前記LED光源側の端部の多数の発光点、および前記縁部材の外縁部に生ずる多数の発光点を、扇面上において3本の曲線の上にそれぞれ配列させたことを特徴とする請求項7記載の発光うちわ。
【請求項9】 前記扇面板は全面または大部分の面がほぼ透明であってしかも外光により視認可能な模様または図柄を有することを特徴とする請求項2,7または8に記載の発光うちわ。
【請求項10】 前記扇面板は、透過光に対してはほとんど無色で透過性が高いが、反射光によって着色した模様または図柄が見えるホログラムシートであることを特徴とする請求項9記載の発光うちわ。
【請求項11】 前記柄の少なくとも一方の端部は不透明な材質または光減衰作用のある材質で形成され、前記LED光源が前記柄の一方の端部に覆われることによって前記LED光源の発光の眩しさを抑制していることを特徴とする請求項2,7ないし10のいずれかに記載の発光うちわ。
【請求項12】 前記発光うちわは、メインスイッチ以外に前記LED光源の発光を制御する他の制御手段を備えていることを特徴とする請求項2,7ないし11のいずれかに記載の発光うちわ。」

b.発明の詳細な説明の段落7を以下のとおり訂正する。
<訂正前>
「【0007】本発明の発光うちわは更に以下の特徴の少なくとも一つを備えることがある。
(2)前記骨格基部の上端の厚さが前記放射骨の下端の厚さよりもやや大きいこと。
(3)前記骨格基部の前記柄の結合部の外側と前記骨格基部の上端縁との中間部には前記放射骨と同様に放射状に配列された細長い多数の浅い凹部を有し、前記凹部の各々の前記LED光源側の端部が前記LED光源を囲むように配置されており、前記各LED光源側の端部における個々の断面減少部位が前記扇体からの更なる発光点となっていること。
(4)前記骨格には前記放射骨の先端と前記骨格基部の左右の端部とを連ねる縁部材が一体的に形成されており、前記放射骨の延長上の前記縁部材の外縁部をも前記扇体からの更なる発光点としたこと。
(5)前記骨格基部上端の前記放射骨に移る部分の多数の発光点、前記骨格基部上に配列された多数の前記凹部の前記LED光源側の端部の多数の発光点、および前記縁部材の外縁部に生ずる多数の発光点を、扇面上において3本の曲線の上にそれぞれ配列させたこと。」
<訂正後>
「【0007】
かつ、(2)前記骨格基部の上端の厚さが前記放射骨の下端の厚さよりもやや大きいこと。
または、前記(1)の特徴に加えて、
(3)前記骨格基部の前記柄の結合部の外側と前記骨格基部の上端縁との中間部には前記放射骨と同様に放射状に配列された細長い多数の浅い凹部を有し、前記凹部の各々の前記LED光源側の端部が前記LED光源を囲むように配置されており、前記各LED光源側の端部における個々の断面減少部位が前記扇体からの更なる発光点となっていること。
本発明の発光うちわは更に以下の特徴の少なくとも一つを備えることがある。
(4)前記骨格には前記放射骨の先端と前記骨格基部の左右の端部とを連ねる縁部材が一体的に形成されており、前記放射骨の延長上の前記縁部材の外縁部をも前記扇体からの更なる発光点としたこと。
(5)前記骨格基部上端の前記放射骨に移る部分の多数の発光点、前記骨格基部上に配列された多数の前記凹部の前記LED光源側の端部の多数の発光点、および前記縁部材の外縁部に生ずる多数の発光点を、扇面上において3本の曲線の上にそれぞれ配列させたこと。」

2.2 訂正要件の検討
上記訂正内容を検討すると、訂正は以下の内容を含むものと認められる。
a.訂正前の請求項1は削除された。
b.訂正後の請求項1は、訂正前の請求項1を引用して記載していた訂正前の請求項2を、独立形式の記載に改める、形式的な訂正を施したものである。
c.訂正後の請求項2は、訂正前の請求項1または2を引用して記載していた訂正前の請求項3を、独立形式の記載に改めて、特許請求の範囲を減縮したものである。
d.訂正後の請求項3は、訂正前の請求項1ないし3のいずれかを引用して記載していた訂正前の請求項4を、訂正後の請求項1、すなわち訂正前の請求項2、を引用する記載に改めて、特許請求の範囲を減縮したものである。
e.訂正後の請求項4は、訂正前の請求項1ないし5のいずれかを引用して記載していた訂正前の請求項6を、訂正後の請求項1を引用する記載に改めて、特許請求の範囲を減縮したものである。
f.訂正後の請求項5は、訂正前の請求項1ないし7のいずれかを引用して記載していた訂正前の請求項8を、訂正後の請求項1を引用する記載に改めて、特許請求の範囲を減縮したものである。
g.訂正後の請求項6は、訂正前の請求項1ないし8のいずれかを引用して記載していた訂正前の請求項9を、訂正後の請求項1を引用する記載に改めて、特許請求の範囲を減縮したものである。
h.訂正後の請求項7は、訂正前の請求項1ないし3のいずれかを引用して記載していた訂正前の請求項4を、訂正後の請求項2、すなわち訂正前の請求項3、を引用する記載に改めて、特許請求の範囲を減縮したものである。
i.訂正後の請求項8は、訂正前の請求項4を引用して記載していた訂正前の請求項5を、訂正後の請求項7を引用する記載に改めて、特許請求の範囲を減縮したものである。
j.訂正後の請求項9は、訂正前の請求項1ないし5のいずれかを引用して記載していた訂正前の請求項6を、訂正後の請求項2,7または8を引用する記載に改めて、特許請求の範囲を減縮したものである。
k.訂正後の請求項10は、訂正前の請求項6を引用して記載していた訂正前の請求項7を、訂正後の請求項9を引用する記載に改めて、特許請求の範囲を減縮したものである。
l.訂正後の請求項11は、訂正前の請求項1ないし7のいずれかを引用して記載していた訂正前の請求項8を、訂正後の請求項2,7ないし10のいずれかを引用する記載に改めて、特許請求の範囲を減縮したものである。
m.訂正後の請求項12は、訂正前の請求項1ないし8のいずれかを引用して記載していた訂正前の請求項9を、訂正後の請求項2,7ないし11のいずれかを引用する記載に改めて、特許請求の範囲を減縮したものである。
n.発明の詳細な説明の段落7に対する訂正は、特許請求の範囲に対する訂正との整合を図るためのものであって、不明瞭な記載の釈明に該当する。

以上のとおり、本件訂正による訂正事項はいずれも平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされている改正前特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、同第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするもの、または形式的な訂正に該当し、また、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張も変更もするものではない。
したがって、平成24年5月30日付訂正請求書による訂正は、上記改正前特許法第134条の2第1項及び同第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項に規定する要件を満たすから、これを認める。

3.本件発明
上記のとおり、平成24年5月30日付訂正請求は認められたから、本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明12」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される、2.1aの<訂正後>に記載したとおりのものと認める。

4.請求の趣旨
審判請求人は、本件特許第3514748号の訂正前請求項1ないし9に係る発明の特許を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする趣旨の審決を求めて無効審判を請求し、証拠方法として以下の書証をもって、訂正前請求項1ないし9に係る発明が、本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とするべきである、と主張する。
なお、訂正前請求項1ないし9は平成24年5月30日付訂正により請求項1ないし12となったため、以下においては訂正後の請求項1ないし12に係る発明、すなわち本件発明1ないし12について検討する。

4.1 証拠方法
甲第1号証: 実願昭62-103597号(実開昭64-7818号)
のマイクロフィルム
甲第2号証: 特開2001-223号公報
甲第3号証: 実願平3-81463号(実開平5-23921号)
のCD-ROM
甲第4号証: 特開平4-364804号公報
甲第5号証: 実願平4-78015号(実開平6-31519号)
のCD-ROM
甲第6号証: 特開平10-255532号公報
甲第7号証: 意匠登録第1024471号公報
甲第8号証: 実用新案登録第3063332号公報
甲第9号証: 実開昭53-128148号公報
甲第10号証:意匠登録第858264号公報
甲第11号証:実願平5-62271号(実開平7-25816号)
のCD-ROM
甲第12号証:実願平1-92768号(実開平3-31315号)
のマイクロフィルム
甲第13号証:特開平8-131226号公報
甲第14号証:実願昭63-116289号(実開平2-36318号)
のマイクロフィルム
甲第15号証:実開昭56-158818号公報
甲第16号証:実願平4-87167号(実開平6-70617号)
のCD-ROM
甲第17号証:実開昭63-194618号公報
甲第18号証:実願平4-86591号(実開平6-29900号)
のCD-ROM
甲第19号証:特開平8-179679号公報

5.被請求人の主張
一方、被請求人は、本件発明1ないし12は、甲第1ないし19号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない、と主張する。

6.甲各号証に記載された発明または事項
上記甲各号証には、以下の記載に基づいて、以下の発明または事項が記載されていると認められる。

6.1 甲第1号証
a.(実用新案登録請求の範囲)
「電池を収納する柄部と、多数の放射状に配設した透明合成樹脂製支骨を有する扇部とから構成され、前記扇部と柄部との間に、前記各支骨に連続する要部を設け、該要部内に前記電池に結線された電球を装設し、該電球の光を支骨の先端より発光させてなることを特徴とする団扇。」
b.(明細書第2ページ第18行?第3ページ第2行)
「即ち、電球からの光は各支骨中を通過するが、この各支骨は透明の合成樹脂で成形されているため、各支骨自体が発光せず、扇部の先端部を構成する支骨先端から発光する。」
c.(同、第3ページ第12?17行)
「図中、(b)に示す扇部は、前記柄部(a)と一体成形されている要部(5)と、この要部(5)に連続する多数の放射状に支骨(11)(12)(13)(14)(15)(16)(17)・・・及び、この支骨(11)・・・に貼着した紙、絹(1)から構成されている。」
d.(同、第5ページ第1?4行)
「なお、前記各支骨(11)・・・を除く、要部(5)及び柄部(5)は不透明な合成樹脂で成形して、電球(4)からの光が外部から視覚されないように構成されている。」
上記を技術常識を勘案しつつ整理すると、甲第1号証には次の事項が記載されていると認められる。
「内部に電池を収納した柄部と、該柄部の一方の端部に接合された透明な材質より成る扇体の骨格と、該骨格の内部に光束を入射させるように前記柄部の一方の端部付近に配置した少なくとも1個の電球と、前記骨格の表面に貼着した紙や絹より成り、前記骨格は前記柄部と結合された要部と、該要部上端から放射状に突出した多数の支骨を有し、前記光束は前記要部の下方から骨格の上方に向かって放射状に広がるように入射し、前記支骨先端から発光させる、団扇であって、前記柄部の少なくとも一方の端部は不透明な合成樹脂で形成され、前記電球が前記柄部の一方の端部に覆われることによって前記電球の光が外部から視覚されないように構成されている、団扇。」(以下、「甲第1号証記載の事項」という。

6.2 甲第2号証
a.(発明の詳細な説明、段落7)
「【0007】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するため本発明は、団扇本体から取っ手を引き出してなる団扇において、前記団扇本体を透光性のある材料で形成するとともに、該団扇には団扇本体内に光を導入して発光させる発光素子を取り付けたことを特徴とする。また前記団扇本体に主発光部を設け、前記発光素子は主発光部の内部に向けて光を放射するように設置されていることを特徴とする。また前記主発光部の両面の内の少なくとも一方の面は、前記発光素子から発射される光の進行方向に向かってその厚みを薄くするテーパ面とすることで反射部としたことを特徴とする。また前記団扇本体の主発光部の部分とその周囲の外周部との間に、開口を設けたことを特徴とする。また前記主発光部の外周に取っ手が接続され、前記発光素子は取っ手の主発光部に接続した部分近傍に取り付けられていることを特徴とする。また前記主発光部は前記団扇本体の中心部よりも取っ手側に偏った位置に設けられていることを特徴とする。」
b.(同、段落12,13)
「【0012】また主発光部11と外周部21との間は、複数本の波状に湾曲する連結部26によって連結することで、連結部26の間に多数の開口27を設けている。
【0013】次に取っ手50は筒状であって、その内部に三つのボタン電池51と1つのスライドスイッチ53と3つの発光素子70とを回路的に結合して収納している。そしてスライドスイッチ53のスライドボタン55をスライドすることで、前記発光素子70をオンオフする。3つの発光素子70は何れも取っ手50の主発光部11に接続した部分近傍に設置され、その向きは、中央のものが取っ手50の軸方向を向き、左右のものがそれぞれ該取っ手50の軸方向に対して主発光部11の面内で左右に傾いて向くように設置されている。つまり複数の発光素子70の向きを変えることで、主発光部11の各部を均一に発光させるようにしている。なおこの実施形態では発光素子70として発光ダイオードを使用したが、その他の構造の発光素子を使用しても良い。また発光素子70の数も必要に応じて変更可能であり、1つ以上であれば良い。」
c.(同、段落15)
「【0015】光の一部は主発光部11の外周から連結部26を通って外周部21に導入され、これら連結部26と外周部21も光らせる。ただしこれらに導入される光はその量が多くないので主発光部11ほどには明るく照らし出せない。」
上記を技術常識を勘案しつつ整理すると、甲第2号証には次の事項が記載されていると認められる。
「内部にボタン電池を収納した取っ手と、該取っ手の一方の端部に接合された透明な材質より成る団扇本体と、該団扇本体骨格の内部に光束を入射させるように前記取っ手の一方の端部付近に配置した少なくとも1個の発光ダイオードより成り、前記光束は前記団扇本体の下方から上方に向かって放射状に広がるように入射し、団扇本体内の主発光部から外部に放射する、団扇。」(以下、「甲第2号証記載の事項」という。)

6.3 甲第3号証
a.(実用新案登録請求の範囲、請求項2)
「【請求項2】 1又は2以上のLEDランプと、該LEDランプを点滅発光させる回路をもつLED基板及び該LEDランプの動力源となる電池を有するLED発光手段と、該LEDランプをON-OFFさせるスイッチと、を備える把手部(A)と、
該把手部に連結され放射状に多数配設される骨部と、該骨部の上下面に張られるシ-ト状体と、からなる団扇(うちわ)基体(B)と、からなり、
該団扇基体には、上記LEDランプに対向する受光端をもち、複数の発光部となる切欠部を有する光ファイバを備えることを特徴とするLEDランプ付団扇。」
上記を技術常識を勘案しつつ整理すると、甲第3号証には次の事項が記載されていると認められる。
「内部に電池を収納した把手部と、該把手部の一方の端部に接合された団扇基体の骨部と、前記把手部の一方の端部付近に配置した少なくとも1個のLEDランプと、前記骨部の表面に貼着したシート状体より成り、前記骨部は前記把手部から放射状に突出した多数の放射骨を有し、該団扇基体には、上記LEDランプに対向する受光端をもち、複数の発光部となる切欠部を有する光ファイバを備える、LEDランプ付団扇。」(以下、「甲第3号証記載の事項」という。)

6.4 甲第4号証
a.(発明の詳細な説明、段落5)
「【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の団扇は、扇の柄上に敷設する平板と、平板状のリチウム電池を収納し前記平板上を摺動可能に構成されるスイッチ部と、前記スイッチ部内に収納し一方の電極が前記平板上に常時接触している平板状のリチウム電池と、前記平板と前記スイッチ部と前記リチウム電池とを収納するケースと、前記ケース内に収納され2本の脚部の一方の脚部を前記平板に接続され他方の脚部が前記スイッチ部を前記平板上を摺動した際に前記リチウム電池の他方の電極に接触するように配設してなるLEDと、前記ケース内に収納され前記LEDの発光部に対向した位置にその基端部を配設してなる束状の光ファイバとからなり、前記光ファイバの先端部を団扇の骨の表面及び裏面に張り合わせた被膜間に拡散して配設したものである。」
上記を技術常識を勘案しつつ整理すると、甲第4号証には次の事項が記載されていると認められる。
「内部にリチウム電池を収納した柄と、該柄の一方の端部に接合された骨と、前記柄の一方の端部付近に配置した少なくとも1個のLEDと、前記LEDの発光部に対向した位置にその基端部を配設してなる束状の光ファイバとからなり、前記光ファイバの先端部を団扇の骨の表面及び裏面に貼着した被膜間に拡散して配設した、団扇。」(以下、「甲第4号証記載の事項」という。)

6.5 甲第5号証
a.(実用新案登録請求の範囲、請求項1,2)
「【請求項1】 うちわの取っ手(1)内部に電池(2)と発光体(3)を構成し、一部にスイッチ(4)を設けたうちわに於いて、複数本の光ファイバー線(6)(6)を取っ手(1)の発光体(3)部より放射状にうちわ面(5)に取り付けた構成である電飾発光するうちわ。
【請求項2】 うちわ面(5)を構成する骨を、複数本の光ファイバー線(6)と支持骨(9)のみで構成した請求項1記載の電飾発光するうちわ。」
b.(考案の詳細な説明、段落6,7)
「 【0006】
【実施例】
この考案の実施例を図面を参照にして説明する。
第1実施例
この考案の第1実施例を図1に示す一部剥離斜視図と図2に示す取っ手拡大断面図を参照して説明する。
うちわの取つ手(1)内部を空洞とし、下部に電池(2)を上部にムギ球かLED等の発光体(3)を構成してそのスイッチ(4)を一部に設ける。次に発光体(3)部よりうちわ面(5)端部に放射状に至るように複数本の光ファイバー線(6)(6)を合わせ紙(7)(7)の間に構成骨(8)(8)に添って併設して本考案を構成している。
【0007】
第2実施例
この考案の第2実施例を図3に示す一部剥離斜視図を参照にして説明する。
第2実施例に於いては、うちわ面(5)を構成する骨は両サイドの支持骨(9)(9)と複数本の光ファイバー線(6)(6)でうちわを構成している。
中央の構成骨を光ファイバー線(6)(6)のみであるが、両サイドの支持骨(9)(9)によってうちわの機能は損ねる心配はない。」
上記を技術常識を勘案しつつ整理すると、甲第5号証には次の事項が記載されていると認められる。
「内部に電池を収納した取っ手と、該取っ手の一方の端部に接合された光ファイバー線より成るうちわ面の骨と、該骨の内部に光束を入射させるように前記取っ手の一方の端部付近に配置した少なくとも1個のLED等の発光体と、前記骨の表面に貼着した合わせ紙より成り、前記骨は多数の放射骨を有し、前記光束は前記骨の下方から骨格の上方に向かって放射状に広がるように入射する、電飾発光するうちわ。」(以下、「甲第5号証記載の事項」という。)

6.6 甲第6号証
a.(特許請求の範囲、請求項1,2)
「【請求項1】 一次光源としての発光ダイオードを、一側の外周部に長さ方向に間隔をおいて多数の光輝反射部を列設した二次光源としてのアクリル樹脂製丸形導光棒の少なくとも一端に隣接して設置してなる、照明用光源。
【請求項2】 光輝反射部が錐状凹部である、請求項1記載の照明用光源。」
b.(発明の詳細な説明、段落9,10)
「【0009】まず図1と図2に略示する光源11、21は、各端に発光ダイオード12、22が隣接するアクリル樹脂製の丸形の導光棒13、23の一側(背部側)の外周部の光輝反射部14、24を、円錐状凹部で構成したもので、前者は、等大のものを各端から中央に向かって徐々に狭くなる不等間隔をおいて形成し、後者は各端から中央に向かって徐々に大きくなるものを等間隔をおいて形成した構造からなっている。
【0010】これらの光源11、21は、必要に応じて、図示しない適宜の光源カバー類(遮光カバーやシェードカバーなど)により発光ダイオード12、22と少なくとも導光棒13、23の光輝反射部14、24形成側の側部を被覆した状態で使用するもので、発光ダイオード12、22で発生した光線は、導光棒13、23の各端を通してその内部に入った後、直接あるいは内部における反射を介して各光輝反射部13、23に達し、ここで光輝反射されて、光輝反射部14、24と直径方向において対向する他側(前部側)の外周部から放射される。これによりこの導光棒13、23の光放射部に隣接する被照明物品や部位が直接照明され、あるいはこの光放射部に隣接して設置するアクリル樹脂製の導光板15や拡散板25を介して被照明物品や部位が間接的に照明される。」
上記を技術常識を勘案しつつ整理すると、甲第6号証には次の事項が記載されていると認められる。
「少なくとも1個の発光ダイオードと、導光棒を有し、発光ダイオードの光束は導光棒の端から入射し、導光棒の一側に列設した円錐状凹部よりなる光輝反射部より、光の一部を導光棒の一側に沿って配列された多数の発光点として他側から外部に放射する、照明用光源。」(以下、「甲第6号証記載の事項」という。)

6.7 甲第7号証
a.(図面)
「柄と、該柄の一方の端部に接合された扇体の骨格とより成り、前記骨格は前記柄と結合された骨格基部と、該骨格基部上端から放射状に突出した多数の放射骨を有し、前記柄の上端と前記骨格基部の下縁の厚さが骨格の厚さよりもやや大きく、前記骨格基部の前記柄の結合部の外側と前記骨格基部の上端縁との中間部には前記放射骨と同様に放射状に配列された細長い多数の開口を有する、うちわ骨。」(以下、「甲第7号証記載の事項」という。)が記載されていることが理解されると認める。

6.8 甲第8号証
a.(図1,3)
「手持部と、該手持部の一方の端部に接合された扇部の骨格とより成り、前記骨格は前記手持部と結合された骨格基部と、該骨格基部上端から放射状に突出した多数の中骨を有し、前記手持部の上端と前記骨格基部の下縁の接合部の厚さが前記骨格の厚さよりもやや大きく、前記骨格基部の前記手持部の結合部の外側と前記骨格基部の上端縁との中間部には前記放射骨と同様に放射状に配列された細長い多数の開口を有する、団扇のフレーム。」(以下、「甲第8号証記載の事項」という。)が記載されていることが理解されると認める。

6.9 甲第9号証
a.(実用新案登録請求の範囲)
「把手Aに骨1……を放射状に取付け、この骨1に所定形の化粧紙2を貼着し、化粧紙2の周縁に化粧紙2と調和する任意の模様印刷した縁紙3を貼着してなる団扇。」
b.(図面)
団扇が、骨格基部の把手との結合部の外側と前記骨格基部の上端縁との中間部に、骨と同様に放射状に配列された細長い多数の開口を有することが理解されると認める。
上記を技術常識を勘案しつつ整理すると、甲第9号証には次の事項が記載されていると認められる。
「把手と、該把手の一方の端部に接合された扇体の骨格と、前記骨格の表面に貼着した化粧紙より成り、前記骨格は前記把手と結合された骨格基部と、該骨格基部上端から放射状に突出した多数の骨を有し、前記骨格基部の前記把手の結合部の外側と前記骨格基部の上端縁との中間部には前記放射骨と同様に放射状に配列された細長い多数の開口を有する、団扇。」(以下、「甲第9号証記載の事項」という。)

6.10 甲第10号証
「柄と、該柄の一方の端部に接合された扇体の骨格と、前記骨格の表面に貼着した扇面板より成り、前記骨格は前記柄と結合された骨格基部と、該骨格基部上端から放射状に突出した多数の放射骨を有し、前記柄の厚さが前記骨格基部の厚さよりもやや大きく、前記骨格基部の前記柄の結合部の外側と前記骨格基部の上端縁との中間部には前記放射骨と同様に放射状に配列された細長い多数の開口を有するうちわ。」(以下、「甲第10号証記載の事項」という。)が記載されていることが理解されると認める。

6.11 甲第11号証
a.(実用新案登録請求の範囲)
「【請求項1】発光うちわであって、
複数の骨材を備えた扇部と前記骨材の軸方向根元に近接して配置した発光源から構成されており、
前記骨材が、光反射性物質が混入された光透過性樹脂で形成されていることを特徴とする発光うちわ。」
b.(考案の詳細な説明、段落5)
「 【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案の発光うちわは、複数の骨材を備えた扇部と前記骨材の軸方向根元に近接して配置した発光源から構成されており、前記骨材が、光反射性物質が混入された光透過性樹脂で形成されていることを特徴とする。
本考案にいう光透過性樹脂とは、光が通過する性質を有する樹脂をいい、たとえばメタクリル酸樹脂などが該当する。また、光反射性物質とは、光透過性樹脂内を進行してきた光を反射する物質をいい、たとえばガラスビーズや金属片などが該当する。」
c.(同、段落7)
「 【0007】
【実施例】
つぎに、本考案の実施例を図面に基づき説明する。
図1は本考案の一実施例に係わる発光うちわAの一部破断平面図である。発光うちわAは、扇部1と柄部2から構成されている。
前記扇部1は、複数の骨材11と骨材11の根元を束ねた根元部12から構成されている。」
d.(同、段落10?12)
「 【0010】
前記根元部12は、図1に示すように、複数の骨材11の根元を一体化するために、骨材11の根元に連続して形成されたものであり、骨材11と同じ材料、すなわち光反射性物質14が混入された光透過性樹脂13によって形成されている。なお、本実施例では、骨材11と根元部12を同一材料で形成したが、根元部12の材料は必ずしも骨材11の材質と同一である必要はなく、骨材11の根元に後述する発光源からの光を入射させることができれば、いかなるものも使用することができる。しかし、扇部1の加工の容易性、発光源から骨材11の根元への効率的な光の入射および根元部12自体の発光等の観点からは、本実施例のように根元部12の材料を骨材11と同一材料にすることが好ましい。
【0011】
前記柄部2は、図3?4に示すように、内部に空洞が形成された中空部材であり、その先端の取付部21は扇部1の根元部12を挟み込めるように上取付部21a と下取付部21b の2つに分割され、それぞれの取付部21a,21b に複数のボルト孔22が形成されている。また、柄部2の後端には開閉自在な蓋25が形成されている。そして、柄部2の空洞内には後述する発光源が内蔵されている。
なお、本実施例では、柄部2の取付部21を上取付部21a と下取付部21b の2つに分割し、その間に扇部1の根元部12を挟み込んで両者を一体化する構造としたが、発光源を内蔵することができ、かつ、扇部1と柄部2を一体化しうることができれば、どのような構造であってもよく、たとえば、柄部2全体を上下に2分割し、空洞内に発光源3を収納した後、上下を一体化する構造のものを採用することができる。
【0012】
前記発光源3は、図3?4に示すように、概ね電球31、スイッチ32および電池33から構成されている。そしてスイッチ32を押圧すると電流が流れて電球31が点灯し、スイッチ32を放すと電流がしゃ断され電球31が消滅するようになっている。すなわち、スイッチ31は押圧形で、押圧部32a が柄部2の表面から突出している。(後略)」
e.(同、段落13)
「(前略)最後に、図5に示すように、骨材11の表面に化粧部材4を張り付けて発光うちわAが完成する。
なお、本実施例では、化粧部材4としてポリエステルフィルムを使用したが、骨材11から発光する光を透過させる部材であればどのようなものでもよい。」
上記を技術常識を勘案しつつ整理すると、「光透過性樹脂」は「透明な材質」ということができるから、甲第11号証には次の発明が記載されていると認められる。
「内部に電池を収納した柄部と、該柄部の一方の端部に接合された透明な材質より成る扇部の骨格と、該骨格の内部に光束を入射させるように前記柄部の一方の端部付近に配置した少なくとも1個の電球と、前記骨格の表面に貼着した化粧部材より成り、前記骨格は前記柄部と結合された根元部と、該根元部上端から放射状に突出した多数の骨材を有し、前記光束は前記根元部の下方から骨格の上方に向かって放射状に広がるように入射する、発光うちわ。」(以下、「甲第11号証記載の発明」という。)

6.12 甲第12号証
a.(明細書第4ページ第5行?第5ページ第18行)
「第1図および第2図において、1は、うちわの形状をした薄肉シート状のプラスチック製芯材である。この芯材1は適宜間隔でリブ状に骨2が形成されており、骨2の適所に複数の光ファイバー3をはめ込むための位置決め用の溝4が設けてある。各光ファイバー3は、種々のパターンでプラスチック製芯材上に張り巡らすとともに、上記溝4に適所をはめ込んで位置決めされている。各光ファイバー3は、光源からの光を受けて先端から発光することは勿論、その長さ方向の適所を屈曲することによってその屈曲部5からも発光する。
6はプラスチック製芯材1の端部に取りつけられた柄で、この柄6の取付部分に上記複数の光ファイバー3の一端を収束・固定している。
上記柄6は第3図のように筒状に形成されており、その内部には発光ダイオード等からなる光源7と、単位容積あたりのエネルギー密度の高いアルカリ電池等の電池8とが収納されている。そして光源7は、上述の収束させた光ファイバー3端部に対向する位置に取付けられ、上記電池8と電気的に接続されている。
また上記柄6の端部には、光源7のスイッチを兼ねたキャップ9が取り付けられており、このキャップ9をねじ込むと電池8が光源7の電極と接触してONするようになっている。
なお上記薄肉シート状のプラスチック製芯材1には、位置決め用の溝4に光ファイバー3を取り付けることによって張り巡らせた後、その上面に化粧皮膜11が張り付けられる。化粧皮膜11には光ファイバー3の脱落防止の役目があり、また表面にプリントされた模様が、光ファイバーの発光要素と相まってうちわの装飾性を高めるようになっている。」
b.(第1図?第3図)
発光ダイオード等からなる光源7が柄6の端部付近に配置されていることが理解されると認める。
上記を技術常識を勘案しつつ整理すると、甲第12号証には次の事項が記載されていると認められる。
「内部に電池を収納した柄と、該柄の一方の端部に接合されたうちわのプラスチック製芯材と、該プラスチック製芯材上に張り巡らせた光ファイバーと、該光ファイバーに光束を入射させるように前記柄の一方の端部付近に配置した少なくとも1個の発光ダイオード光源と、前記プラスチック製芯材の表面に貼着した化粧皮膜より成る発光うちわ。」(以下、「甲第12号証記載の事項」という。)

6.13 甲第13号証
a.(特許請求の範囲、請求項1)
「【請求項1】うちわの扇ぎ部に貼着する基材が、外側にホログラム層と内側に感熱性粘着剤層を有する被覆材であって、この被覆材をうちわの骨材の両面に被覆し、熱圧着したことを特徴とするホログラムうちわ。」
上記を技術常識を勘案しつつ整理すると、甲第13号証には次の事項が記載されていると認められる。
「うちわの扇ぎ部に貼着する基材が、外側にホログラム層を有する被覆材であるホログラムうちわ。」
(以下、「甲第13号証記載の事項」という。)

6.14 甲第14号証
a.(明細書第3ページ第9行?第5ページ第2行)
「第1図はこの考案の一実施例を示す図解図である。このうちわ10は柄12を含む。柄12は、たとえば合成樹脂などで形成される。柄12の一端には、平板部14が形成される。平板部14は、たとえば合成樹脂などで形成される根元部分16を含む。根元部分16は、柄12の一端から扇状に広がるように形成される。さらに、根元部分16から広がるように複数の骨18が形成される。骨18は、たとえば合成樹脂などで細い棒状に形成される。これらの骨18の両面には、たとえば和紙などのシート材20が貼着される。このようにして、平板部14が形成される。
2つのシート材20の間には、複数の光ファイバ22が配置される。光ファイバ22としては、ステップインデックス型のものを用いてもよいし、グレーデッドインデックス型のものを用いてもよい。これらの光ファイバ22は、第2図に示すように、根元部分16内部で整列させられ、一箇所に集められる。一箇所に集められた光ファイバ22の端部が束ねられ、柄12の一端近傍で集光部24が形成される。
柄12の一端には、集光部24を覆うように遮光部材26が形成される。この遮光部材26は、光源から外部に光が漏れないようにするためのものである。
このうちわ10を使用するための光源としては、たとえば小型の懐中電灯30などが用いられる。懐中電灯30は、握り部32と投光部34とを含む。懐中電灯30には、遮光板36が形成される。この遮光板36は、たとえばアルミニウム板などを用いて、スライド可能に形成される。この遮光板36を投光部34の側面に移動することによって、投光部34の側面から光が漏れることを防ぐことができる。」
b.(同第6ページ第1?6行)
「なお、上述の実施例では、うちわ10の光源としての懐中電灯30とを別のものとして形成したが、第3図に示すように、柄12の内部に光源を形成してもよい。この場合、柄12が筒状に形成され、その内部に乾電池50や電球52などが装着される。」
上記を技術常識を勘案しつつ整理すると、甲第14号証には次の事項が記載されていると認められる。
「内部に乾電池を収納した柄と、該柄の一方の端部に接合された平板部と、該平板部に配置された光ファイバに光束を入射させるように前記柄の一方の端部付近に配置した少なくとも1個の光源と、前記平板部の表面に貼着したシート材より成り、前記平板部は前記柄と結合された根元部分と、該根元部分上端から扇状に突出した複数の骨を有し、柄は光源から光が漏れないようにされている、発光うちわ。」(以下、「甲第14号証記載の事項」という。)

6.15 甲第15号証
a.(実用新案登録請求の範囲)
「(1) 絵柄に対応して照明素子を配設した扇面と、筒状をなしこの扇面を支持するとともに電池収納ケースを兼ねた柄と、この柄の内部に傾斜して設けられた一対の導電片および導電体よりなる点灯制御用の第1のスイツチ機構とを備えたことを特徴とする照明機能付き団扇。
(2) 上記柄の端部に装着され装着の度合によつて照明素子の電源回路を開閉する第2のスイツチ機構を備えたことを特徴とする照明機能付き団扇。」
上記を技術常識を勘案しつつ整理すると、甲第15号証には次の事項が記載されていると認められる。
「内部に電池を収納した柄と、照明素子を配設した扇面とを有し、柄には照明素子の電源回路を開閉する第2のスイッチ機構以外に、点灯制御用の第1のスイッチ機構とを備えた、照明機能付き団扇。」(以下、「甲第15号証記載の事項」という。)

6.16 甲第16号証
a.(実用新案登録請求の範囲)
「【請求項1】 うちわの取って(1)内部を空洞として電池を収納し、その一部に蓋(3)とスイッチ(4)を形成したうちわに於いて、取っ手(1)内部の電源部よりリード線(6)をうちわ面(5)部又は端部に至るように配して、これに麦球又はLED等の発光体(7)を付けて形成した構成である電飾発光するうちわ。」
b.(考案の詳細な説明、段落5)
「 【0005】
【作用】
この電飾うちわを使用するには、取っ手(1)のスイッチ(4)を入れるとうちわ面(5)に付けた発光体(7)にリード線(6)(6)を通じて電気が流れうちわ面(5)の発光体(7)が明るく光り輝く。又第2実施例に示したタイプはうちわ面(5)の発光体(7)部より光りファイバー線(10)を面の端部及び任意の方向部に延長させて形成しているので、この場合は発光体(7)部は強く光り、その光りが光りファイバー線(10)を通じて、それぞれの先端部が補助発光部(11)となり、さらに変化に富んだうちわにすることができる。
さらに、電源回路に点滅回路を構成すれば一層趣のある美しい電飾うちわを提供することができる。」
上記を技術常識を勘案しつつ整理すると、甲第16号証には次の事項が記載されていると認められる。
「内部に電池を収納した取っ手の一部に蓋とスイッチを形成し、電源回路に点滅回路を構成した、電飾発光するうちわ。」(以下、「甲第16号証記載の事項」という。)

6.17 甲第17号証
a.(実用新案登録請求の範囲、第1項)
「(1) 円形あるいはだ円等のウチワ状の薄形プリント基板の一部に切欠き部を設け、該切欠き部に指等を差し込んで前記プリント基板をウチワとして作用させるものにおいて、電池と非安定マルチバイブレータと複数の発光素子を搭載し、該複数の発光素子は前記薄形プリント基板上に任意に配置され、前記非安定マルチバイブレータの出力に応じて前記発光素子が点滅するように構成したことを特徴とする発光素子付ウチワ。」
b.(第1図)
発光ダイオード(8?13)を点滅させる電子回路には、電源スイッチ(2)と直列に、非安定マルチバイブレータ(3)によって駆動される電子スイッチ(4,5)が設けられていることが理解されると認める。
上記を技術常識を勘案しつつ整理すると、甲第17号証には次の事項が記載されていると認められる。
「電源スイッチ以外に発光素子の発光を制御する電子スイッチを備えている発光素子付ウチワ。」(以下、「甲第17号証記載の事項」という。)

6.18 甲第18号証
a.(実用新案登録請求の範囲、請求項1,2)
「【請求項1】 光学的に透明な合成樹脂材料と、
該合成樹脂材料に分散されて混入された微細な多数のグリッタチップスとを含み、
該グリッタチップスは、
少なくとも一方の主面に多数の溝がエンボス加工された全体として平坦な合成樹脂材料と、
該主面に蒸着された金属の薄膜とを含むことを特徴とするホログラムグリッタ体。
【請求項2】 請求項1に記載のホログラムグリッタ体において、前記合成樹脂材料は、光学的に透明で可撓性のある薄い平坦な合成樹脂のシート状材料であることを特徴とするホログラムグリッタ体。」
b.(考案の詳細な説明、段落11?13)
「 【0011】
【実施例】
次に添付図面を参照して本考案によるホログラムグリッタ体の実施例を詳細に説明する。図 1および図 2を参照すると、本考案によるホログラムグリッタ体はプラスチックシート10として実現され、これは、全体として平坦で基本的には光学的に透明の薄いシート12を含み、この中に微細なグリッタチップス14が多数、分散されて混入されてホログラムグリッタシートを形成している。シート12は、本実施例では、可撓性があり、塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリルまたはポリプロピレンなどの合成樹脂の薄い平坦な材料である。シート12は、基本的には透明であり、無色でよいが、光学的に透明であれば着色されていてもよい。ある実施例では、シート12の厚さは0.3 ミリメートル程度である。なお、図 1では、グリッタチップス14が本来はシート12の全面において各所に均等に分散されているが、図示を明瞭にするためそれらの一部を説明的に示しているにすぎない。また、図示の各部材は、説明の都合上、その寸法がいくぶん誇張して描かれている。
【0012】
グリッタチップス14は、図 3および図 4から最もよくわかるように、本実施例では全体としてほぼ六角形の形状をなし、全体として平坦な素材から、たとえば打抜きによって形成される。この素材は、基本的にはポリエステルなどの合成樹脂材料の、全体として平坦な基材20を含み、その一方の主面22に多数の微小な溝がエンボス加工されている。このエンボス加工22の溝は、たとえば 1ミリメートル(mm)当り 1,200本の密度で形成される。エンボス加工面22には、たとえばアルミニウムなどの金属の薄膜24が蒸着によって形成され、エンボス面22の全体を被覆している。好ましくはその上に、たとえばポリエステルなどの合成樹脂材料の薄い保護層26を形成してもよい。この保護層26はなくてもよい。
【0013】
このような、光の波長程度の長さに相当する高い密度でエンボス加工の施された面22によって、エンボス加工面22に入射光の干渉によるホログラム効果が得られる。つまり、エンボス面22に入射した光は互いに波長が干渉することによって、外部から光学的干渉縞が観測される。薄膜24はまた、十分に厚い膜でなく半蒸着によるハーフミラー効果を得るような厚さでもよい。図示の例では、エンボス加工面22は基材20の一方の主面のみに形成されていたが、もちろん、その両面に形成されていてもよい。」
上記を技術常識を勘案しつつ整理すると、甲第18号証には次の事項が記載されていると認められる。
「全面または大部分の面がほぼ透明であってしかも外光により視認可能な模様または図柄を有するシートであって、反射光によって着色した模様または図柄が見えるホログラムグリッタシート。」(以下、「甲第18号証記載の事項」という。)

6.19 甲第19号証
a.(特許請求の範囲、請求項1)
「【請求項1】透明乃至不透明なシート基材層1上のホログラム形成樹脂層3表面にエンボス方式にて微細な凹凸パターン状のホログラムエンボス面3aを設け、該ホログラムエンボス面3a上にパターン状に金属蒸着を施してホログラム反射面5aを有するホログラム反射層6を設けた後、該エンボス面3a上、又は該エンボス面3a及びホログラム反射面5a上に、透明なオーバーコート層7を設けることにより、該エンボス面3aを平滑化することを特徴とするエンボスホログラムシートの製造方法。」
b.(発明の詳細な説明、段落12)
「【0012】図1(a)に示すように、まず、厚さ12?30μm程度のポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム製の透明なシート基材層1の片面に、適宜接着性樹脂を塗布することによって、厚さ0.5?3μm、3?10μm程度のアンカーコート層2を設ける。なお、前記シート基材層1は、半透明乃至不透明であってもよい。

c.(同、段落14)
「【0014】続いて、図1(b)に示すように、前記アンカーコート層2上に、透明なポリプロピレン等の加熱溶融樹脂を、Tダイより押し出し、コーティング若しくはラミネートして、厚さ12?20μmのホログラム形成樹脂層3を設ける。」
d.(同、段落18,19)
「【0018】次に、前記ホログラム形成樹脂層3上に、平圧式、又は、円圧式若しくは輪転式にて、ホログラムスタンパーF(ホログラムエンボスパターンの形成された金型)を押圧し、熱溶融状態の該ホログラム形成樹脂層3表面をエンボスして、同時に又はエンボス直後に冷却して、図1(c)に示すように、該ホログラム形成樹脂層3表面に、700?1500本/mm程度の微細な凹凸パターンによるホログラムエンボス面3aを形成する。
【0019】次に、図1(d)に示すように、前記ホログラム形成樹脂層3表面(ホログラムエンボス面3a)にパターン蒸着用のマスキング材(プライマーコートニス、プライマーコート樹脂、あるいはその他フォトリソグラフィ法、フォトエッチング法等に使用される感光性レジスト樹脂)を用いて、マスクパターン4を、グラビア印刷、スクリーン印刷等の印刷方式(あるいはパターン露光方式等)により形成する。(後略)」
e.(同、段落21,22)
「【0021】次に、図2(a)に示すように、前記ホログラム形成樹脂層3のホログラムエンボス面3aに、前記マスクパターン4上より、該エンボス面3aの微細な凹凸パターンが消失しない程度の薄膜で、アルミニウム、金、錫等の金属を用いて、真空蒸着方式により金属蒸着層5を蒸着形成する。なお金属蒸着層5表面には、前記ホロクラムエンボス面3aと同様の形状パターンの微細な凹凸パターンによるホログラム反射面5aが形成される。なお、前記金属蒸着層5の蒸着膜厚は、例えば、100?500Å程度でもよいが、500?1000Å程度が適当であり、必要に応じて、1000?1500Å、1500?2500Å、2500?5000Å、5000?10000Å程度でもよい。
【0022】続いて、図2(b)に示すように、前記ホログラム形成樹脂層3表面の前記マスクパターン4を、水若しくは温湯を用いて溶解除去するとともに、そのマスクパターン4真上にある金属蒸着層5も同時に前記ホログラム形成樹脂層3上より除去することにより、前記ホログラム形成樹脂層3上に、マスクパターン4に対してネガティブパターンである前記ホログラム反射面5aを表面に有するホログラム反射層6をパターン形成して、エンボスホログラムシートが得られる。」
上記を技術常識を勘案しつつ整理すると、甲第19号証には次の事項が記載されていると認められる。
「透明なシート基材上にパターン状に金属蒸着を施してホログラム反射面を有するホログラム反射層を設けたエンボスホログラムシート。」(以下、「甲第19号証記載の事項」という。)

7.対比
7.1 本件発明1について
本件発明1と甲第11号証記載の発明とを対比すると、後者の「電池」、「柄部」、「扇部」、「化粧部材」、「根元部」及び「骨材」が、前者の「電源」、「柄」、「扇体」、「扇面板」、「骨格基部」及び「放射骨」にそれぞれ相当することは明白であり、後者の「電球」と前者の「LED光源」とは「光源」である限りにおいて共通するから、両者は以下の点において一致及び相違すると認められる。
<一致点>
「内部に電源を収納した柄と、該柄の一方の端部に接合された透明な材質より成る扇体の骨格と、該骨格の内部に光束を入射させるように前記柄の一方の端部付近に配置した少なくとも1個の光源と、前記骨格の表面に貼着した扇面板より成り、前記骨格は前記柄と結合された骨格基部と、該骨格基部上端から放射状に突出した多数の放射骨を有し、前記光束は前記骨格基部の下方から骨格の上方に向かって放射状に広がるように入射する、発光うちわ。」である点。
<相違点1>
光源が、前者では「LED光源」であるのに対し、後者では「電球」である点。
<相違点2>
扇体の骨格が、前者では骨格基部上端から前記放射骨に移る個々の断面減少部位より、光の一部を前記骨格基部上端に沿って配列された多数の発光点として外部に放射するものであって、骨格基部の上端の厚さが放射骨の下端の厚さよりもやや大きいのに対し、後者ではこのような特定がない点。

7.2 本件発明2について
また、本件発明2と甲第11号証記載の発明とを対比すると、両者は上記<一致点>で一致する一方、上記<相違点1>に加えて以下の点において相違すると認められる。
<相違点3>
扇体の骨格が、前者では骨格基部上端から前記放射骨に移る個々の断面減少部位より、光の一部を前記骨格基部上端に沿って配列された多数の発光点として外部に放射すると共に、骨格基部の柄の結合部の外側と骨格基部の上端縁との中間部に放射骨と同様に放射状に配列された細長い多数の浅い凹部を有し、凹部の各々のLED光源側の端部がLED光源を囲むように配置されており、各LED光源側の端部における個々の断面減少部位が扇体からの更なる発光点となっているのに対し、後者ではこのようにされていない点。

8.当審の判断
8.1 <相違点1>について
発光うちわにおいて、光源としてLEDすなわち発光ダイオードを採用することは、甲第2ないし5号証や甲第12号証記載の事項に見られるように、本件出願の時点において既に周知の技術であったものである。
そして、光源を電球からLEDに変更することにより生じる、高い輝度、鮮やかな色、低消費電力のほか、照射角度の選択可能性といった特長はLED光源の特性として普通に知られたものであり、発光うちわの装飾性を高めつつエネルギー効率も高めることは当業者にとって当然の課題であるから、電球に代えてLED光源を採用したことによる作用効果が格別のものということはできない。

8.2 <相違点2>について
柄と結合された骨格基部と、該骨格基部上端から放射状に突出した多数の放射骨を有する扇体の骨格の、骨格基部の上端の厚さが放射骨の下端の厚さよりもやや大きいものは、甲第1号ないし19号証のいずれにも記載されておらず、その示唆も見当たらない。
そして、本件発明1は、骨格基部の上端の厚さを放射骨の下端の厚さよりもやや大きくすることにより、光の一部を骨格基部上端に沿って配列された多数の発光点として外部に放射するという、特有の作用効果を生じるものである。
なお、甲第7,9,10号証には、骨格に厚さが変化する部位をもつものが記載されているが、いずれも骨格基部の上端と放射骨の下端との間で骨格の厚さが変化するものではないため、本件発明1の発光効果を生じることはない。また、甲第11号証記載のものは、柄の骨格基部に対する取付部と骨格基部との間に厚さの差を設けるものである。

8.3 <相違点3>について
柄と結合された骨格基部と、該骨格基部上端から放射状に突出した多数の放射骨を有する扇体の骨格の、骨格基部の柄の結合部の外側と骨格基部の上端縁との中間部に放射骨と同様に放射状に配列された細長い多数の浅い凹部を有するものは、甲第1号ないし19号証のいずれにも記載されておらず、示唆もされていない。
なお、甲第7,8,9,10各号証には、骨格基部の柄の結合部の外側と骨格基部の上端縁との中間部に放射骨と同様に放射状に配列された細長い多数の開口を有するものが記載されている。しかしながら、甲第7,8,9,10各号証記載の事項はいずれも光源をもたない、非発光のうちわに関するものであり、また、「開口」は「浅い凹部」と異なるため、本件発明2のように、発光うちわにおいて骨格基部の柄の結合部の外側と骨格基部の上端縁との中間部に放射骨と同様に放射状に配列された細長い多数の浅い凹部を設け、各凹部のLED光源側の端部における個々の断面減少部位を扇体からの更なる発光点とする動機とはなり得ない。

8.4 まとめ
上記のとおり、<相違点2>及び<相違点3>に係る発明特定事項は、甲第1号ないし19号証のいずれにも記載も示唆もされていないため、本件発明1及び本件発明2は、甲第1号ないし19号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
また、本件発明3ないし6は本件発明1の発明特定事項をすべて備えており、本件発明7ないし12も本件発明2の発明特定事項をすべて備えているため、同様に、甲第1号ないし19号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

なお、上記判断は本件発明1ないし12を甲第11号証記載の発明と対比して検討することにより行ったが、本件発明1及び2を甲各号証の他の証拠に記載されたものと対比して検討しても、<相違点2>及び<相違点3>に係る発明特定事項を示唆するものが見当たらないため、結論に変わりはない。

9.むすび
以上のとおりであるから、2.2に記載のとおり、平成24年5月30日付訂正請求に係る訂正は認容する。
一方、8.4に記載のとおり、請求人の主張には理由がない。
したがって、本件特許の請求項1ないし12に係る特許については、請求人が主張する無効理由及び証拠方法によっては無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人がその全額を負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
.
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
発光うちわ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】内部に電源を収納した柄と、該柄の一方の端部に接合された透明な材質より成る扇体の骨格と、該骨格の内部に光束を入射させるように前記柄の一方の端部付近に配置した少なくとも1個のLED光源と、前記骨格の表面に貼着した扇面板より成り、前記骨格は前記柄と結合された骨格基部と、該骨格基部上端から放射状に突出した多数の放射骨を有し、前記光束は前記骨格基部の下方から骨格の上方に向かって放射状に広がるように入射し、前記骨格基部上端から前記放射骨に移る個々の断面減少部位より、光の一部を前記骨格基部上端に沿って配列された多数の発光点として外部に放射するものであって、前記骨格基部の上端の厚さが前記放射骨の下端の厚さよりもやや大きいことを特徴とする発光うちわ。
【請求項2】内部に電源を収納した柄と、該柄の一方の端部に接合された透明な材質より成る扇体の骨格と、該骨格の内部に光束を入射させるように前記柄の一方の端部付近に配置した少なくとも1個のLED光源と、前記骨格の表面に貼着した扇面板より成り、前記骨格は前記柄と結合された骨格基部と、該骨格基部上端から放射状に突出した多数の放射骨を有し、前記光束は前記骨格基部の下方から骨格の上方に向かって放射状に広がるように入射し、前記骨格基部上端から前記放射骨に移る個々の断面減少部位より、光の一部を前記骨格基部上端に沿って配列された多数の発光点として外部に放射すると共に、前記骨格基部の前記柄の結合部の外側と前記骨格基部の上端縁との中間部には前記放射骨と同様に放射状に配列された細長い多数の浅い凹部を有し、前記凹部の各々の前記LED光源側の端部が前記LED光源を囲むように配置されており、前記各LED光源側の端部における個々の断面減少部位が前記扇体からの更なる発光点となっていることを特徴とする発光うちわ。
【請求項3】前記骨格は透明な材質で成形された、骨格基部、その上方の基部上端、多数の放射骨及びその先端を結ぶ縁部材より成り、前記放射骨の延長上の前記縁部材の外縁部をも前記扇体からの更なる発光点としたことを特徴とする請求項1記載の発光うちわ。
【請求項4】前記扇面板は全面または大部分の面がほぼ透明であってしかも外光により視認可能な模様または図柄を有することを特徴とする請求項1記載の発光うちわ。
【請求項5】前記柄の少なくとも一方の端部は不透明な材質または光減衰作用のある材質で形成され、前記LED光源が前記柄の一方の端部に覆われることによって前記LED光源の発光の眩しさを抑制していることを特徴とする請求項1記載の発光うちわ。
【請求項6】前記発光うちわは、メインスイッチ以外に前記LED光源の発光を制御する他の制御手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の発光うちわ。
【請求項7】前記骨格は透明な材質で成形された、骨格基部、その上方の基部上端、多数の放射骨及びその先端を結ぶ縁部材より成り、前記放射骨の延長上の前記縁部材の外縁部をも前記扇体からの更なる発光点としたことを特徴とする請求項2記載の発光うちわ。
【請求項8】前記骨格基部上端の前記放射骨に移る部分の多数の発光点、前記骨格基部上に配列された多数の前記凹部の前記LED光源側の端部の多数の発光点、および前記縁部材の外縁部に生ずる多数の発光点を、扇面上において3本の曲線の上にそれぞれ配列させたことを特徴とする請求項7記載の発光うちわ。
【請求項9】前記扇面板は全面または大部分の面がほぼ透明であってしかも外光により視認可能な模様または図柄を有することを特徴とする請求項2、7または8に記載の発光うちわ。
【請求項10】前記扇面板は、透過光に対してはほとんど無色で透過性が高いが、反射光によって着色した模様または図柄が見えるホログラムシートであることを特徴とする請求項9記載の発光うちわ。
【請求項11】前記柄の少なくとも一方の端部は不透明な材質または光減衰作用のある材質で形成され、前記LED光源が前記柄の一方の端部に覆われることによって前記LED光源の発光の眩しさを抑制していることを特徴とする請求項2、7ないし10のいずれかに記載の発光うちわ。
【請求項12】前記発光うちわは、メインスイッチ以外に前記LED光源の発光を制御する他の制御手段を備えていることを特徴とする請求項2、7ないし11のいずれかに記載の発光うちわ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はうちわの機能と共に、発光する機能を備えた発光うちわに関する。
【0002】
【従来の技術】
夜間や暗所で使用する際の美しさ、あるいは個人あるいは集団でのパフォーマンス(踊りや行進やジェスチュアなど)におけるディスプレイ効果を求めて、電源とLED等の小型ランプを搭載した発光する多種多様なうちわが従来提案されている。その主な構成には次のようなものがある。
(1)うちわの骨を透明な材質で形成して導光体とし、要の位置に設けた光源の光を骨に入射させて骨の先端、あるいは骨自体から散乱発光させる構成。
(2)扇面の数カ所にLED等を配置し、柄の部分に内蔵した電源と配線により接続して発光させる構成。
(3)柄の部分に内蔵させた光源の光を光ファイバー等の導光体を用いて扇面の各所に導き、その部分を発光させる構成。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来提案された発光するうちわの上記の各構成の優劣を比較してみる。
(1)最も簡素な構造とすることができ、発光うちわを低コストで供給できる可能性が最も大きい。
(2)多数の光源を用いたり、その配線を行うため、構造が複雑となり、製造組立のコストが嵩むし、扇面にも凹凸が生じ扇面のしなやかさやスマートな外観を得ることは困難である。また扇面の光源の強い発光が眩しく感じられる可能性がある。
(3)発光点(輝点)の配置の自由度は高いが、やはり構造が複雑となり、コスト上の問題が大きい。これは発光点の数を増すほど甚だしい。
【0004】
以上の考察からは従来例(1)が最も好ましい構成に近いが、実際に作って使用してみると、次の問題点があることを発見した。すなわち、(1)扇面には紙などを貼らねばならないが、不透明あるいは光透過性が低い素材であると骨からの発光が見えないか弱まり、光演出効果を低下させる。
(2)扇面に透明なシートを貼れば骨の発光がよく見えるが、日中あるいは明るい場所では全く単調な扇面となり、使用上の楽しみが得られない。
(3)扇面に明所で見える図柄を描いておくことができるが、暗所では図柄がシルエットや色フィルターとなり、骨の発光の良い視認を妨げる。
【0005】本発明の第1の目的は、暗所で美しく発光させることができ、しかも製造コストを低く抑えることができる発光うちわを提供することである。また第2の目的は、暗所ばかりでなく明所でも扇面に美麗な模様や図柄を表示することが可能で、しかも製造コストを低く抑えることができる発光うちわを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
少なくとも上記第1の目的または第1および第2の双方の目的を達成するため本発明の発光うちわは次の特徴を備える。
(1)内部に電源を収納した柄と、該柄の一方の端部に接合された透明な材質より成る扇体の骨格と、該骨格の内部に光束を入射させるように前記柄の一方の端部付近に配置した少なくとも1個のLED光源と、前記骨格の表面に貼着した扇面板より成り、前記骨格は前記柄と結合された骨格基部と、該骨格基部上端から放射状に突出した多数の放射骨を有し、前記光束は前記骨格基部の下方から骨格の上方に向かって放射状に広がるように入射し、前記骨格基部上端から前記放射骨に移る個々の断面減少部位より、光の一部を前記骨格基部上端に沿って配列された多数の発光点として外部に放射すること。
【0007】
かつ、(2)前記骨格基部の上端の厚さが前記放射骨の下端の厚さよりもやや大きいこと。
または、前記(1)の特徴に加えて、
(3)前記骨格基部の前記柄の結合部の外側と前記骨格基部の上端縁との中間部には前記放射骨と同様に放射状に配列された細長い多数の浅い凹部を有し、前記凹部の各々の前記LED光源側の端部が前記LED光源を囲むように配置されており、前記各LED光源側の端部における個々の断面減少部位が前記扇体からの更なる発光点となっていること。
本発明の発光うちわは更に以下の特徴の少なくとも一つを備えることがある。
(4)前記骨格には前記放射骨の先端と前記骨格基部の左右の端部とを連ねる縁部材が一体的に形成されており、前記放射骨の延長上の前記縁部材の外縁部をも前記扇体からの更なる発光点としたこと。
(5)前記骨格基部上端の前記放射骨に移る部分の多数の発光点、前記骨格基部上に配列された多数の前記凹部の前記LED光源側の端部の多数の発光点、および前記縁部材の外縁部に生ずる多数の発光点を、扇面上において3本の曲線の上にそれぞれ配列させたこと。
【0008】
(6)前記扇面板は全面または大部分の面がほぼ透明であってしかも外光により視認可能な模様または図柄を有すること。
(7)前記扇面板は、透過光に対してはほとんど無色で透過性が高いが、反射光によって着色した模様または図柄が見えるホログラムシートであること。
(8)前記柄の少なくとも一方の端部は不透明な材質または光減衰作用のある材質で形成され、前記LED光源が前記柄の一方の端部に覆われることによって前記LED光源の発光の眩しさを抑制していること。
(9)前記発光うちわは、メインスイッチ以外に前記LED光源の発光を制御する他の制御手段を備えていること。
【0009】
少なくとも上記第1の目的または第1および第2の双方の目的を達成するため本発明の発光うちわは次の特徴を備えることがある。
(10)内部に電源を収納した柄と、該柄の一方の端部に接合された透明な材質より成る扇体の骨格と、該骨格の内部に光束を入射させるように前記柄の一方の端部付近に配置した少なくとも1個のLED光源とより成り、前記骨格に平坦な部分を設け、該平坦な部分に前記LED光源に向かうよう放射状に配列された多数の細長い凹部を設け、該凹部の個々の前記LED側の端部における断面減少部位をそれぞれ発光点としたこと。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の形態の一例である発光うちわを示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)はカム溝の展開図である。また図2は同じ例における発光うちわの骨格を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。また図3は同じ例における扇面板の平面図である。
【0011】
図1および図2において1はうちわの骨格であり、アクリル樹脂等の透明な材質から成形され、その主要部は厚さの大きい骨格基部1a(平面図の該形は左右が尖った楕円形をなす)、その上方の基部上端1cから、それよりもやや厚さの薄い多数の放射骨1g(それらの中間は部材のない窓部1hである)、その先端を結ぶほぼ円形の縁部材1fより成っている。骨格基部1aの部分には、その両面に多数の浅い凹部1jがあり、それらの中間部は疑似骨1kとして残っている。放射骨1g、疑似骨1k、凹部1jの放射中心となる部位近辺に光入射部1bが切り込まれ、その左右に取付部1d,飾りの長穴1iが形成されている。骨格1は光源から発する光の主要な導光体となっている。
【0012】
図1において、うちわの柄4は扇面を挟む2つの部材で構成され、骨格を挟んで組み立てられる。図の下方では円筒形に組み上げられ、内部に電源となる単4型等の電池3eが収容される。上方の左右に膨大した形状の結合部4aは、その内部のピン状突起(図示省略)と骨格1の取付部1dの固定穴1eとを嵌合させて、骨格1と強固に結合される。結合部4aの内部空間には、光源となるLED3a、その一方の端子に接続され発光回路の一部となる抵抗器3b、これに接続され電池3eの正極に当接する正極板3c等が支持される。またLED3aの他方の端子に接続された延長リード線3dは柄の内部でその下端まで延長されかつ保持されている。
【0013】
柄4の下端にはキャップ5が嵌めこまれる。その内部のバネ台座5aには概形が円錐形に巻かれたコイルバネである電池バネ3fが固着される。電池バネ3fの上端は電池3eの負極を押し上げている。電池バネ3fの下端の一部は半径方向に出っ張っており、その部分がキャップ5を所定の位置まで回転したときのみ延長リード線3dの下端部と接触して電源回路が閉じ(メインスイッチになっている)、LED3aが発光する。なおキャップ5の下端に設けた吊輪部5cは、紐や鎖などを通してうちわを首や手首に掛けておくためのもので、これがあると使用上格段に利便性が得られる。キャップ5に形成された一対の内部突起5bは、柄4の下端周囲に浅く形成されたカム溝4bと係合している。
【0014】
カム溝4bは、柄4の円筒面に沿った図1(c)の展開図に示す形状をなし、電池バネ3fの反発力のため内部突起5bは下方に押されるから、カム溝4bの下縁が主たるカム面となる。キャップ5が柄4に右に捩じりながら押し込まれるとき、内部突起5bはまずカム溝4bのA点から挿入され、Bの突起を乗り越えて低いC点に落着く。この位置ではBの突起のためキャップ5の抜け防止がなされ、発光回路はまだ閉じていない。更にキャップ5を右回しすると、内部突起5bは両側に斜面を有する凸部D点を乗り越え、E点に達して落ちつく。この位置では電池バネ3f下端と延長リード線3dとが接触し回路が閉じてLED3aが発光する。キャップの逆回しで回路が切れ消光する。
【0015】
光源LED3aの発光部は光入射部1b部で骨格基部1aの厚みの中央に位置し、光束は骨格1の内部に入射し、放射状に扇面全体に広がる。その過程で骨格1に断面変化のある部分、特に急激に断面が縮小変化している部分があると、そこから外部に放射されて輝く。図1の各輝点は主な発光点となる断面減少部位を示す。輝点6aは凹部1jの下端、輝点6bは基部上端1cから放射骨1gに移る部分、輝点6cは光が縁部材1fの外端に達した部分である。
【0016】
多数の各主要な発光点は本例では数本の円弧上に密接して並んでおり、暗所ではこれら輝点が曲線状に連なって極めて美しい。なお他の各部や骨格の表面の凹凸部分からもいくらか発光する。扇面板2も発光を拡散する。これらはオーラのように美しく見える。また横骨を設けても発光点を増すことができよう。なお骨格1の断面厚さや幅が骨格基部1aから縁部材1fに向けて段階的に小さくなることは、発光上もうちわの強度上も好都合である。
【0017】
光源LED3aの発光は強いため、直接目視すると眩しさを感じることがある。柄4はLED3aの両側を包んでいるので、その材質の光透過性を選択することによってその難点を克服できる。すなわちLED3aを覆う部材(本例では結合部4a)の材質に不透明なものを用いてもよいが、光減衰性の、すなわち透明ではあるが暗色の樹脂材料で成形すると眩しさが適度に抑制され、しかも光源の存在を明示して更なる美的効果を加えることもできる。
【0018】
薄いフィルムあるいはシート状である扇面板2は放射骨1gと縁部材1fの両面に貼られ、表面には模様2aを有する。これはうちわの扇ぎ動作による風起し面である他、明所でのうちわの美的効果を発揮し、また暗所では扇面の発光を極力妨げない役割を有する。本発明者は種々検討の結果、透明なホログラムシート(フィルムと称してもよい)が最適であろうと判断した。
【0019】
ホログラムシートは無色透明かつ柔軟なPET、PVC、OPP等の樹脂フィルムの下面に反射光を干渉させ得る、可視光の波長レベルの微細な凹凸あるいは縞状のエンボス加工を施し、エンボス面に薄くアルミニウム等を蒸着してホログラム面としたもので、照明すると虹のような非常に美しい色彩を呈する。照明光は太陽光でも人工光でも強い美的効果がある。色は微細凹凸の配列方向や照明や見る角度によって変化する。また自由な輪郭の模様や図柄が形成できる。
【0020】
しかも透過光でみると無色であり(透過光を着色しない)、程度の弱いすりガラスのようにかなり透明性があり、扇面に貼っても(扇面板裏面にコーティングされた粘着剤による)放射骨も見えるし、扇面板に近づけた指なども良く見える。従って扇面体2の内面や縁の近傍の骨格からの発光を全く妨げない。逆に、骨格を通る光束はホログラムシートを裏面から照明するし、あまりに入射角度が面に平行に近いので暗所でもホログラムパターンを視認させることがなく、本例の用途には極めて好都合であった。
【0021】
本発明の実施の形態は、以上に述べた一例に限られないことは勿論である。例えばうちわの全体や各部の形状や放射骨等導光部材の方向、断面変化の与え方等は任意である。LEDの発光色も任意に選択できる。発光点を直線的に配置することもできる。またホログラムにも種々な種類があるので、目的に対して許容できるものを選択することができる。またホログラム以外の手段によってある程度の透光性を伴う外光による表示が可能な部材(薄紙等)があれば使用できる。また表示される模様や図柄は全く任意であり、文字やマークでもよい。また2個あるいは3個の光源を備え、発光点の群を異なる色の光源毎に分割したり、発光点で混色させたりして更に複雑な光演出効果を発揮することも可能である。
【0022】
また発光をメインスイッチによる連続的オン・オフのみならず、更なる発光制御手段を追加すれば、発光が非定常的に変化する効果を挙げることができる。更なる制御手段の例としては、柄を握った手の親指などで制御できるプッシュスイッチ、発光タイミングや強度をリズミカルに変化させるマイクロコンピュータと半導体スイッチ、あるいは扇体の運動を揺動スイッチや加速度センサや回転角速度センサ等で検出し、運動の方向や強度やパターンによって発光を制御する手段等があり得る。これらの手段は使用者個人あるいは集団が情報やメッセージを高度に発信することができ、パフォーマンスの遂行上効果が高い。
【0023】
【発明の効果】
請求項1あるいは2の構成を有する発明は、多数の点から発光点を得ることができて少なくとも暗所で美しい光演出効果が高い発光うちわが得られ、また発光機構の構成が簡素であり、発光うちわの製造が容易で製造コストを十分抑えることができ、低廉な供給が可能となる効果がある。更に請求項3あるいは4の構成を加えることにより発光点をより多くすることができる。請求項5の構成によりそれらの発光点が美しく配置される。
【0024】
また請求項6の構成を加えると骨格からの発光を妨げず明所でも明暗でも美しい発光うちわが得られる効果がある。請求項7のように透明なホログラムを用いるとその効果は大きい。また請求項8の構成を加えると光源からの直接光による眩しさを避けることができる。また請求項9の構成を加えると光演出効果を更に多様化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例である発光うちわを示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)はカム溝の展開図である。
【図2】本発明の実施の形態の一例である発光うちわの骨格を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図3】本発明の実施の形態の一例である発光うちわの扇面板の平面図である。
【符号の説明】
1 骨格
1a 骨格基部
1b 光入射部
1c 基部上端
1d 付部
1e 固定穴
1f 縁部材
1g 放射骨
1h 窓部
1i 長穴
1j 凹部
1k 疑似骨
2 扇面板
2a 模様
3a LED
3b 抵抗器
3c 正極板
3d 延長リード線
3e 電池
3f 電池バネ
4 柄
4a 結合部
4b カム溝
5 キャップ
5a バネ台座
5b 内部突起
5c 吊輪部
6a、6b、6c 輝点
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2012-08-29 
結審通知日 2012-08-31 
審決日 2012-09-11 
出願番号 特願2002-82066(P2002-82066)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (A45B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大山 広人冨岡 和人  
特許庁審判長 豊原 邦雄
特許庁審判官 藤井 眞吾
刈間 宏信
登録日 2004-01-23 
登録番号 特許第3514748号(P3514748)
発明の名称 発光うちわ  
代理人 原田 寛  
代理人 中村 政美  
代理人 高宗 寛暁  
代理人 高宗 寛暁  

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