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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01T
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01T
管理番号 1266552
審判番号 不服2011-24273  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-09 
確定日 2012-11-22 
事件の表示 特願2011-105489「放射線イメージセンサ及び光電変換素子アレイユニット」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年5月10日の出願であって、同年7月25日付けで手続補正がなされ、同年8月5日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これを不服として、同年11月9日に請求された拒絶査定不服審判事件であって、請求と同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成24年6月12日付けで前置報告書の内容について意見を求めるための審尋を行ったところ、同年8月2日に回答書が提出された。

第2 平成23年11月9日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成23年11月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書を補正するものであって、そのうち特許請求の範囲の補正は、補正前(平成23年7月25日付けの手続補正で補正、以下同様。)の
「【請求項1】
基板にシンチレータ層が設けられたシンチレータプレートと、
光電変換素子アレイを構成する複数の光電変換素子が形成された光電変換素子層と、前記シンチレータプレートと前記光電変換素子層との間の距離を均一に保つべく前記シンチレータプレートにそれぞれ当接するとともに前記光電変換素子の非形成領域に相当する所定の位置に配置されたスペーサが複数形成されたスペーサ層と、が設けられた光電変換素子アレイユニットと、
を備えた放射線イメージセンサ
【請求項2】
前記所定の位置は、前記シンチレータ層から出射された蛍光の前記光電変換素子への入射を阻害しない位置である請求項1記載の放射線イメージセンサ。
【請求項3】
前記スペーサは、互いに所定の間隔を介して周期的に配置されている請求項1又は請求項2記載の放射線イメージセンサ。
【請求項4】
前記光電変換素子アレイユニットは、前記光電変換素子を保護する保護層を有し、
前記スペーサは、前記保護層上に形成されている、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の放射線イメージセンサ。
【請求項5】
前記基板は、ガラス基板であり、前記ガラス基板上に反射膜を介して前記シンチレータ層が設けられている、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の放射線イメージセンサ。
【請求項6】
前記光電変換素子アレイから信号を読み出すための各光電変換素子と一対になったTFTを有し、前記スペーサは、前記所定の位置として前記TFTの形成位置に相当する位置に設けられている、
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の放射線イメージセンサ。
【請求項7】
前記シンチレータ層を前記基板と前記光電変換素子アレイとの間に封止するシール部材を備えた請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の放射線イメージセンサ。
【請求項8】
前記シール部材により封止された空間内には不活性ガスが充填されている請求項7記載の放射線イメージセンサ。
【請求項9】
前記不活性ガスの圧力は、大気圧より低く設定されている請求項8記載の放射線イメージセンサ。
【請求項10】
前記スペーサは、フォトリソグラフィにより形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の放射線イメージセンサ。
【請求項11】
光電変換素子アレイを構成する複数の光電変換素子を有し、入射放射線を蛍光に変換するシンチレータプレートに対向設置されて放射線イメージセンサを構成する光電変換素子アレイユニットにおいて、
前記光電変換素子の非形成領域に相当する所定の位置に配置されるとともに、前記シンチレータプレートにそれぞれ当接されて前記シンチレータプレートと前記光電変換素子との間の距離を均一に保つ複数のスペーサが設けられている光電変換素子アレイユニット。」を
「【請求項1】
基板にシンチレータ層が設けられたシンチレータプレートと、
光電変換素子アレイを構成する複数の光電変換素子が形成された光電変換素子層と、前記光電変換素子を保護する保護層と、前記シンチレータプレートと前記光電変換素子層との間の距離を均一に保つべく前記シンチレータプレートにそれぞれ当接するとともに、前記光電変換素子の非形成領域に相当する前記シンチレータ層から出射された蛍光の前記光電変換素子への入射を阻害しない所定の位置に配置され、かつ、互いに所定の間隔を介して周期的に配置されたスペーサが前記保護層上に複数形成されたスペーサ層と、が設けられた光電変換素子アレイユニットと、
を備えた放射線イメージセンサ
【請求項2】
前記基板は、ガラス基板であり、前記ガラス基板上に反射膜を介して前記シンチレータ層が設けられている、請求項1記載の放射線イメージセンサ。
【請求項3】
前記光電変換素子アレイから信号を読み出すための各光電変換素子と一対になったTFTを有し、前記スペーサは、前記所定の位置として前記TFTの形成位置に相当する位置に設けられている、
請求項1又は請求項2に記載の放射線イメージセンサ。
【請求項4】
前記シンチレータ層を前記基板と前記光電変換素子アレイとの間に封止するシール部材を備えた請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の放射線イメージセンサ。
【請求項5】
前記シール部材により封止された空間内には不活性ガスが充填されている請求項4記載の放射線イメージセンサ。
【請求項6】
前記不活性ガスの圧力は、大気圧より低く設定されている請求項5記載の放射線イメージセンサ。
【請求項7】
前記スペーサは、フォトリソグラフィにより形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の放射線イメージセンサ。
【請求項8】
光電変換素子アレイを構成する複数の光電変換素子を有し、入射放射線を蛍光に変換するシンチレータプレートに対向設置されて放射線イメージセンサを構成する光電変換素子アレイユニットにおいて、
光電変換素子アレイを構成する複数の光電変換素子が形成された光電変換素子層と、前記光電変換素子を保護する保護層と、を備え、さらに前記シンチレータプレートと前記光電変換素子層との間の距離を均一に保つべく前記シンチレータプレートにそれぞれ当接するとともに、前記光電変換素子の非形成領域に相当する前記シンチレータ層から出射された蛍光の前記光電変換素子への入射を阻害しない所定の位置に配置されるとともに、互いに所定の間隔を介して周期的に配置されて、前記シンチレータプレートにそれぞれ当接されて前記シンチレータプレートと前記光電変換素子との間の距離を均一に保つ複数のスペーサが前記保護層上に設けられている光電変換素子アレイユニット。」と補正するものである。

2 補正の目的についての検討
本件補正のうち請求項1に係る発明についての補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を補正したものであって、スペーサが「シンチレータ層から出射された蛍光の前記光電変換素子への入射を阻害しない所定の位置に配置され、かつ、互いに所定の間隔を介して周期的に配置された」点、及び、スペーサが「保護層上に」形成された点を追加する補正を含むものであり、これらの補正は明らかに限定的に減縮するものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2(以下単に「特許法第17条の2」という。)第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。

3 本件補正発明
本件補正発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された上記のとおりのものである。

4 引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前である平成5年11月26日に頒布された「特開平5-312961号公報 」(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付した。)
a 発明の詳細な説明の記載
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、第1の範囲の波長を有する入来電磁放射線を第2の異なる範囲の波長を有する出射電磁放射線に変換する電磁放射線変換層を担持する第1の基板と、電磁放射線変換層で出射された出射電磁放射線を検出する第2の範囲の波長に応答する光検出器アレイとからなる画像検出器及びその製造方法に係る。」
「【0008】取付手段は離散絶縁スペーサ部材と絶縁空間の境界をシールする接着剤からなってよい。離散絶縁スペーサ部材は例えばガラス繊維、球又は粒子でよく、一方例えばグルーラインを互いに接合さるべき2つの面の1つの周囲にプリントすることにより接着剤が設けられる。これは光検出器アレイと電磁放射線変換層が離散絶縁スペーサ部材により決定された小さく良く限定された距離だけ離間し、絶縁空間の境界をシールするのに用いられるグルーラインのプリンティングのような比較的簡単な技術を可能にすることを確実とする簡単だが効果的な方法を提供する。接着剤は又その内でスペーサ部材が分散され、共に接合さるべき2つの面の1つを覆うように用いられる層、例えばシリコンゴムの層として提供されうる。」
「【0013】本発明による画像検出器1の一実施例の構成及び動作の原理を図1乃至図3を参照して説明する。図1乃至図3に示された例では、検出さるべき入来放射線Aは典型的に40-120keV(キロ電子ボルト)の範囲のエネルギーを有するX線からなる。入来X線Aは、この例では、蛍光層の形の電磁放射線変換層11により光ダイオードアレイ21により検出される可視電磁放射線Bに変換される。この特別の例では、蛍光層11は従来の基板10、一般にアルミニウム基板上にデポジットされたタリウムドープされたセシウムヨウ素(CsI)層からなる。図1に示されないが、CsI層11は保護層、例えばポリイミド層により被覆されてよい。
【0014】蛍光層11により出射された出射電磁放射線Bは、この例では画像検出器が人間又は動物の体の領域の診断X線画像を検出するのに用いられる所望の解像度を達成するよう典型的に200μm(マイクロメートル)又はそれ以下のピッチ及び400×400mmまでの全体寸法を有する光ダイオード22の2次元アレイからなる光検出器アレイ21に入射する。以下やや詳細に説明する如く、この例では、光ダイオード22は光ダイオード22の電荷の蓄積及び読取を制御する薄膜回路と共に絶縁の一般にはガラスの基板にデポジットされたアモルファスシリコン(α-Si)ダイオードとして形成される。」
「【0018】図3は単に例示的に光ダイオードアレイ21を形成するのに用いられる薄膜構造の断面部分を示す。図3は関連した光ダイオード24と種々の相互結合を有する(逆スタガートランジスタで示す如く)一つの薄膜トランジスタ24を断面で示す。基板20に設けられた第1の金属、一般的にクロム層31はゲート金属31aとゲート相互結合31bを画成するパターンとされる。続く絶縁層、一般的には窒化シリコン又は酸化シリコン32はゲート絶縁体を画成し、トランジスタチャネル領域を設ける固有アモルファスシリコン層33が後に続き、次にドープされたアモルファスシリコン層34がトランジスタのソース及びドレーン領域の高ドープされた接触領域を形成するよう設けられる。次に更なる金属被覆レベル35はトランジスタのソース及びドレーンへの接触を可能にするよう設けられる。光ダイオード22はアモルファスシリコンn-i-p又はp-i-nダイオードとしてドレーン金属層35aに設けられる。ドレーン金属層に設けられたn導電層を有するn-i-pダイオードはそのより高い量子効果の故に望ましい。更なる絶縁層36はトランジスタのソースへの相互接続37を設けるよう金属被覆を接触させ、共通電極23をダイオードのカソードに接触させうるデポジットされパターン形成される。
【0019】上記の如く、蛍光層11は蛍光層の従来のデポジット方法を用いて別個の、一般的にアルミニウムの基板10上に設けられる。この例では、蛍光層は例えばアルミニウム基板10上に蒸発又はスパッタリングでデポジットされたセシウムヨウ素層である。勿論他のGd_(2 )O_(2) S:Tbのような適宜のリンを用いうる。他の蛍光体を用いうるが、タリウムドープされたセシウムヨウ素の使用は出射された電磁放射線のスペクトルがアモルファスシリコン光ダイオードの最も応答する範囲である400-700nm(ナノメートル)の範囲でピークを有するという利点を有する。加えて、セシウムヨウ素はスキャッタリング問題を減少するよう一種の光案内効果を提供する柱状構造を有する。
【0020】その基板20上に光ダイオードアレイ21を形成し、その基板10上に蛍光層11を別々に形成するのに、絶縁空間50をその間に画成するよう基板10を基板20上に取付けるのに取付手段40が用いられる。この例では、例えば接着ラインをプリントすることでその面の付着パターン42が画成した後、光検出器アレイ21の面21a又は蛍光アレイ11の面11aに分布される多数の離散的絶縁スペーサ部材41、例えば短かいガラス繊維又は絶縁、可能性ガラス、球からなる。スペーサ部材は厚い蛍光層の波状での損失を避けるよう十分大きくあるべきであるが、例えば他の光ダイオード(画素)22に届くよう目的とする電磁放射線を視差又は分散することで解像度の損失を生じるほど大きくあるべきでない。この例では、スペーサ部材41は直径10μm乃至20μm(マイクロメートル)のオーダである。
【0021】付着パターンは面の周囲21b又は11b回りの付着境界42aを含む。2つの基板は共にもたらされ、2つの対向する面21及び11の周囲21b,11bの回りに付着剤シールを設けるよう接着硬化される。接着剤は高純度の従来の2部エポキシであるその基板10で担持された蛍光層11はその基板20により担持された光検出器アレイ21に取付けられ、絶縁空間50が画成される。
【0022】小さい間隙は絶縁空間50が真空化され、次に接着剤でシールされることを可能にするよう接着境界42aに残される。真空絶縁空間50を設けることは蛍光層11と光検出器アレイ21間の最も可能な電気的分離を与えなければならない。或いは、絶縁空間50は真空の後不活性流体、例えばアルゴン又は窒素で充填されてもよい。絶縁空間50は又反射又は散乱により電磁放射線の損失の可能性を減少すべき蛍光層11に整合された反射インデックスを有する不活性液を充填されうる。かかる環境では接着剤が不活性流体を汚染する成分を含まない注意がなされるべきである。
【0023】上記の例では、蛍光層11はアルミニウム基板10上に設けられ、しかし、他の基板の使用は可能であり、例えば2つの基板10及び20の熱膨張係数がより密接に整合されうるので大きい平坦検出器に対して利点を有する蒸発アルミニウム層で被覆されたガラス基板を用いてもよい。上記及び特に図4から分かる如く、蛍光層11と光検出器アレイ21は絶縁空間と境界を作る。これは、真空であれ或いは不活性剤を充填されてあり、絶縁空間が検出器を囲む領域にあるごみ粒子及び他の混入物から蛍光層11及び光検出器アレイ21を保護するよう少なくともある面で役立つことを意味する。加えて入来電磁放射線が初めてこの例で少なくとも一部がアルミニウムで形成される基板10を貫通する際、基板10は別な光反射層がこの目的の為必要とされないよう望ましくない電磁放射線(即ち、検出するのに望ましい範囲の外の放射線)から蛍光層11を遮蔽するのに役立ちうる。」

b 図面の記載








上記図3の光検出器アレイの記載からして、図3には、光ダイオード22及び薄膜トランジスタ24を覆う絶縁層36が形成され、絶縁層36は光ダイオード22の上面の一部を露出する開口が形成されている光検出器アレイが記載されている。
また、上記図4の画像検出器の記載からして、図4には、基板10上に形成された蛍光層11と基板20上に形成された光ダイオードアレイ21とにそれぞれ当接する複数の離散的絶縁スペーサ部材41を有する画像検出器が記載されている。

c 引用例記載の発明
上記a及びbの記載事項によると、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「基板10上に蛍光層11を形成し、基板20にデポジットされたアモルファスシリコン光ダイオード22の2次元アレイである光ダイオードアレイ21を基板20上に形成し、
光ダイオード22を覆う絶縁層36に光ダイオード22の上面の一部を露出する開口が形成され、
絶縁空間50をその間に画成し、基板10上に形成された蛍光層11と基板20上に形成された光ダイオードアレイ21とにそれぞれ当接する複数の離散的絶縁スペーサ部材41が設けられた
電磁放射線を検出する画像検出器」

5 本件補正発明と引用発明の対比
(1)引用発明の「蛍光層11」は、本件補正発明の「シンチレータ層」に相当するから、引用発明の「蛍光層11を形成」した「基板10」は、本件補正発明における「基板にシンチレータ層が設けられたシンチレータプレート」に相当する。

(2)-1 引用発明の「光ダイオード22」、「光ダイオードアレイ21」は、本件補正発明の「光電変換素子」、「光電変換素子アレイ」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「光ダイオードアレイ21」は、「2次元アレイ」を構成するものであるから複数の「光ダイオード22」を有することは明らかである。
さらに、引用発明の「光ダイオード22」は、「基板20にデポジットされたアモルファスシリコン光ダイオード」であるから、引用発明は「光電変換素子が形成された光電変換素子層」を有するものであるといえる。
そうすると、引用発明の「基板20にデポジットされたアモルファスシリコン光ダイオード22の2次元アレイである光ダイオードアレイ21」が形成された点は、本件補正発明の「光電変換素子アレイを構成する複数の光電変換素子が形成された光電変換素子層」が設けられた点に相当する。

(2)-2 引用発明の「離散的絶縁スペーサ部材41」は、本件補正発明の「スペーサ」に相当する。
また、本件補正発明において、「スペーサ層」について本件明細書には特に説明はされていないが、その文言から「スペーサ」が形成された層であると解釈できる。
そうすると、引用発明の「光ダイオード22を覆う絶縁層36に光ダイオード22の上面の一部を露出する開口が形成され、絶縁空間50をその間に画成し、基板10上に形成された蛍光層11と基板20上に形成された光ダイオードアレイ21とにそれぞれ当接する複数の離散的絶縁スペーサ部材41が設けられた」点と本件補正発明の「シンチレータプレートと前記光電変換素子層との間の距離を均一に保つべく前記シンチレータプレートにそれぞれ当接するとともに、前記光電変換素子の非形成領域に相当する前記シンチレータ層から出射された蛍光の前記光電変換素子への入射を阻害しない所定の位置に配置され、かつ、互いに所定の間隔を介して周期的に配置されたスペーサが前記保護層上に複数形成されたスペーサ層と、が設けられた」点とは、「シンチレータプレートにそれぞれ当接するとともに、互いに所定の間隔を介して配置されたスペーサが複数形成されたスペーサ層が設けられた」点で一致する。

(2)-3 (2)-1及び(2)-2の検討事項を考慮すると、引用発明の「基板20にデポジットされたアモルファスシリコン光ダイオード22の2次元アレイである光ダイオードアレイ21を基板20上に形成し、光ダイオード22を覆う絶縁層36に光ダイオード22の上面の一部を露出する開口が形成され、絶縁空間50をその間に画成し、基板10上に形成された蛍光層11と基板20上に形成された光ダイオードアレイ21とにそれぞれ当接する複数の離散的絶縁スペーサ部材41が設けられた」点と、本件補正発明の「光電変換素子アレイを構成する複数の光電変換素子が形成された光電変換素子層と、前記光電変換素子を保護する保護層と、前記シンチレータプレートと前記光電変換素子層との間の距離を均一に保つべく前記シンチレータプレートにそれぞれ当接するとともに、前記光電変換素子の非形成領域に相当する前記シンチレータ層から出射された蛍光の前記光電変換素子への入射を阻害しない所定の位置に配置され、かつ、互いに所定の間隔を介して周期的に配置されたスペーサが前記保護層上に複数形成されたスペーサ層と、が設けられた光電変換素子アレイユニット」を備えた点とは、「光電変換素子アレイを構成する複数の光電変換素子が形成された光電変換素子層と、シンチレータプレートにそれぞれ当接するとともに、互いに所定の間隔を介して配置されたスペーサが複数形成されたスペーサ層が設けられた光電変換素子アレイユニット」を備えた点で一致する。

(3)引用発明の「電磁放射線を検出する画像検出器」は、本件補正発明の、「放射線イメージセンサ」に相当する。

上記(1)?(3)の点から、本件補正発明と引用発明は、
「基板にシンチレータ層が設けられたシンチレータプレートと、
光電変換素子アレイを構成する複数の光電変換素子が形成された光電変換素子層と、シンチレータプレートにそれぞれ当接するとともに、互いに所定の間隔を介して配置されたスペーサが複数形成されたスペーサ層が設けられた光電変換素子アレイユニットと、
を備えた放射線イメージセンサ」
で一致し、以下(a)乃至(c)の各点で相違する。

(a)本件補正発明は、光電変換素子を保護する保護層が設けられ、スペーサが保護膜上に形成されているのに対し、引用発明は、光ダイオード22を覆い、光ダイオード22の上面の一部を露出する開口が形成された絶縁層36が形成されているものの、保護層が設けられているか否か不明であって、スペーサ部材41が光ダイオードアレイ21と当接しているものの如何なる箇所に形成されているのか不明である点。
(b)本件補正発明は、スペーサがシンチレータプレートと光電変換素子層との間の距離を均一に保つべく設けられているのに対し、引用発明は、そのようなことが特定されていない点。
(c)本件補正発明は、スペーサが光電変換素子の非形成領域に相当するシンチレータ層から出射された蛍光の光電変換素子への入射を阻害しない所定の位置に配置され、かつ、互いに所定の間隔を介して周期的に配置されているのに対し、引用発明は、スペーサの配置箇所が不明である点。

6 当審の判断
以下、上記各相違点について検討する。
(a)の点について
引用発明における絶縁層36は、光ダイオード22の上面の一部を露出する開口が形成されているものの、光ダイオード22を覆うものであるから、本件補正発明における「保護層」に相当するといえ、引用発明における絶縁層36上にスペーサ層を形成することは、単なる設計的事項である。
もし、引用発明における絶縁層36が本件補正発明における「保護層」に相当するといえないとしても、イメージセンサにおいて光電変換素子を保護する保護層を設けることは、周知技術(例えば、特開2008-306080号公報の【0082】及び図8(q)、実開平4-92654号公報の【0015】及び図1参照。)であり、引用発明において、光電変換素子を保護する保護層を採用することは格別困難なことではない。
そして、その際に、保護層上にスペーサ層を形成することは、単なる設計的事項である。
よって、相違点(a)に係る本件補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になしえたことである。

(b)の点について
イメージセンサーにおいて、均一な条件で光電変換素子に受光できるようにシンチレータと光電変換素子層との間の距離を均一に保つことは、周知技術(例えば、特開2010-43887号公報の【0065】?【0066】及び図11、特開平11-186532号公報の【0023】、【0026】及び図3参照。)であり、引用発明においても、均一な条件で光電変換素子が受光することは当然有しうる課題である。
したがって、引用発明において、上記周知技術を採用し、シンチレータと光電変換素子層との間の距離を均一に保つようにすることは、当業者が容易になしえたことである。
よって、相違点(b)に係る本件補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になしえたことである。

(c)の点について
引用例には、「スペーサ部材は・・・・・他の光ダイオード(画素)22に届くよう目的とする電磁放射線を視差又は分散することで解像度の損失を生じるほど大きくあるべきでない。」(【0020】)と記載されており、引用例には、スペーサ部材の大きさについてではあるが、シンチレータ層から出射された蛍光の光電変換素子への入射をスペーサ部材が阻害することを避けるようにすべきであることが示唆されているといえる。
そして、スペーサ部材の配置箇所によっては、シンチレータ層から出射された蛍光の光電変換素子への入射をスペーサ部材が阻害することもありうることは、当業者であれば当然想到しうることであるから、引用発明において、スペーサを光電変換素子の非形成領域に相当するシンチレータ層から出射された蛍光の光電変換素子への入射を阻害しない所定の位置に配置することは、当業者が容易になしえたことである。
そして、その際に、イメージセンサの機械的強度等を考慮してスペーサ部材を互いに所定の間隔を介して周期的に配置することは、格別困難なことではない。
よって、相違点(c)に係る本件補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になしえたことである。

相違点(a)乃至(c)については上記のとおりであり、本件補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び上記周知技術から当業者が当然に予測できる範囲内のものと認められる。
よって、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

7 本件補正についての補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成23年11月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、同年7月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。(第2[理由]1参照。)

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物及びその記載事項、ならびに引用発明は、上記第2[理由]4に記載したとおりである。

3 対比及び当審の判断
本願発明は、本件補正発明の発明特定事項から「光電変換素子を保護する保護層」が設けられた点、スペーサが「シンチレータ層から出射された蛍光の前記光電変換素子への入射を阻害しない所定の位置に配置され、かつ、互いに所定の間隔を介して周期的に配置された」点、及び、スペーサ層が「保護層上に」形成された点を削除したものである。
したがって、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記各点を追加した本件補正発明が、上記第2[理由]6に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-20 
結審通知日 2012-09-25 
審決日 2012-10-09 
出願番号 特願2011-105489(P2011-105489)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01T)
P 1 8・ 113- Z (G01T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木下 忠  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 土屋 知久
吉川 陽吾
発明の名称 放射線イメージセンサ及び光電変換素子アレイユニット  
代理人 酒井 宏明  

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