• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C09K
管理番号 1266742
審判番号 不服2010-29364  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-27 
確定日 2012-11-26 
事件の表示 特願2005-249958「研磨組成物用添加剤」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月15日出願公開、特開2007- 63374〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、平成17年8月30日の特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成22年 5月26日付け 拒絶理由通知
平成22年 7月 8日 刊行物等提出書
平成22年 8月 2日 意見書・手続補正書
平成22年 9月29日付け 拒絶査定
平成22年12月27日 本件審判請求
同日 手続補正書
平成23年 1月 6日付け 手続補正指令
平成23年 2月 2日 手続補正書(請求理由補充書)
平成23年 2月 7日付け 審査前置移管
平成23年 5月 6日付け 前置報告書
平成23年 5月13日付け 審査前置解除
平成24年 5月29日付け 審尋
平成24年 7月24日 回答書

第2 平成22年12月27日付け手続補正の却下の決定

<結論>
平成22年12月27日付け手続補正を却下する。

<却下の理由>
I.補正の内容
上記手続補正(以下「本件補正」という。)では、特許請求の範囲につき下記の補正がされている。

1.補正前(平成22年8月2日付け手続補正後のもの)
「【請求項1】
少なくとも1度使用された研磨組成物に添加される研磨組成物用添加剤において、
2種以上のアミン化合物の水溶液であり、
前記アミン化合物は、第4級アンモニウム塩を含むことを特徴とする研磨組成物用添加剤。
【請求項2】
2種以上のアミン化合物の水溶液であり、前記アミン化合物は、第4級アンモニウム塩と、水溶性または水分散性を有する第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物、およびアミノ基を主鎖または側鎖に有する高分子化合物から選ばれる1種または2種以上のアミン化合物とを含むことを特徴とする請求項1記載の研磨組成物用添加剤。
【請求項3】
2種以上のアミン化合物の水溶液であり、前記アミン化合物は、第4級アンモニウム塩と、前記研磨組成物に含まれるアミン化合物と同じアミン化合物とを含むことを特徴とする請求項1または2記載の研磨組成物用添加剤。
【請求項4】
第4級アンモニウム塩は、水酸化テトラメチルアンモニウムであることを特徴とする請求項1?3のいずれか1つに記載の研磨組成物用添加剤。」
(以下、「旧請求項1」ないし「旧請求項4」という。)

2.補正後
「【請求項1】
少なくとも1度使用された研磨組成物に添加される研磨組成物用添加剤において、
2種以上のアミン化合物の水溶液であり、
前記アミン化合物として、水酸化テトラメチルアンモニウムおよびピペラジンを含むことを特徴とする研磨組成物用添加剤。」
(以下、「新請求項」という。)

II.補正事項に係る検討

1.新規事項の追加の有無
まず、本件補正に係る各事項が、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本願当初明細書」という。)に記載した事項の範囲内のものかにつき検討すると、本件補正に係る各事項は、全ての事項につき本願当初明細書に記載しているか、本願当初明細書に記載した事項に基づき当業者に一応自明な事項のみである。
したがって、本件補正は、本願当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。

2.補正の目的の適否
次に、本件補正は、上記I.のとおり、特許請求の範囲に係る補正事項を含むので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の(以下「平成18年改正前」という。)特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものか否かにつき検討する。
本件補正では、旧請求項1における「アミン化合物は、第4級アンモニウム塩を含む」につき、「アミン化合物として、水酸化テトラメチルアンモニウムおよびピペラジンを含む」と限定して新請求項としており、旧請求項2ないし4については削除している。
してみると、新請求項に係る発明は、旧請求項1ないし4に係る各発明との間で、解決しようとする課題及び産業上の利用分野をそれぞれ一にするものであるから、旧請求項1ないし4から新請求項とする補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものといえる。
したがって、上記旧請求項1ないし4から新請求項への特許請求の範囲の補正を含む本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものである。

3.独立特許要件
上記2.のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、新請求項に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かにつき検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、再掲すると以下のとおりの記載事項により特定されるものである。
「少なくとも1度使用された研磨組成物に添加される研磨組成物用添加剤において、
2種以上のアミン化合物の水溶液であり、
前記アミン化合物として、水酸化テトラメチルアンモニウムおよびピペラジンを含むことを特徴とする研磨組成物用添加剤。」

(2)検討
しかるに、本件補正発明については、下記の理由により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

理由:本件補正発明は、その出願前に当業者が日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用刊行物:
1.特開平11-10540号公報(原審における引用文献1)
2.特開2004-128089号公報(原審における引用文献2)
3.国際公開第2004/42812号(原審における引用文献3)
4.特開2004-128069号公報(原審における引用文献4)
(以下、それぞれ「引用例1」ないし「引用例4」という。)

ア.各引用例の記載事項

(ア)引用例1について
上記引用例1には、以下の事項が記載されている。

(ア-1)
「【特許請求の範囲】
・・(中略)・・
【請求項5】 CMP装置で使用されたスラリ中に混入している粒径10ミクロン未満の異物を濾過する第1の濾過工程を設け、
上記第1の濾過工程の前工程として、上記スラリ中に混入した粒径10ミクロン以上の異物を濾過する第2の濾過工程,上記スラリの砥粒の濃度をほぼ使用前の値になるように調整する濃度調整工程,及び上記スラリのPHをほぼ使用前のPH値にするように調整するPH調整工程のうち少なくとも一の工程を設けた、
ことを特徴とするCMP装置のスラリリサイクル方法。
【請求項6】 請求項5に記載のCMP装置のスラリリサイクル方法において、
上記PH調整工程は、上記スラリのPHが使用前のPH値よりも低い場合にアルカリ性剤を上記スラリに加え、また高い場合に酸性剤を上記スラリに加えて、PH値を調整するものである、
ことを特徴とするCMP装置のスラリリサイクル方法。
【請求項7】 請求項6に記載のCMP装置のスラリリサイクル方法において、
上記PH調整工程は、使用中にスラリに生じたイオンを除去した後、上記スラリのPHが使用前のPH値よりも低い場合にアルカリ性剤を上記スラリに加え、また高い場合に酸性剤を上記スラリに加えて、PH値を調整するものである、
ことを特徴とするCMP装置のスラリリサイクル方法。
【請求項8】 請求項5ないし請求項7のいずれかに記載のCMP装置のスラリリサイクル方法において、
上記スラリは、
シリカ,アルミナ,ジルコニア,セリア,及びチタニアなどの金属酸化物の煙霧状微粒子粉末を水または有機溶媒にコロイド状に分散させたスラリ、
または、シリカ,アルミナ,ジルコニア,及びセリアなどを生成可能な無機金属塩水溶液や有機金属塩溶液から作られるコロイダルシリカ,コロイダルアルミナ,コロイダルジルコニア,コロイダルセリア,及びコロイダルチタニアなどからなるスラリ、
または、アルミナ,ジルコニア,セリア,及び酸化マンガンなどの金属酸化物焼成粉末を水または有機溶媒に分散させたスラリ、
のいずれかであることを特徴とするCMP装置のスラリリサイクル方法。」

(ア-2)
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)装置の被研磨物であるウエハを研磨する際に使用されたスラリをリサイクルするためのCMP装置のスラリリサイクルシステム及びその方法に関するものである。」

(ア-3)
「【0007】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)図1は、この発明の第1の実施形態に係るCMP装置のスラリリサイクルシステムを一台のCMP装置に適用した例を示す概略図である。なお、図4に示した要素と同一要素については同一符号を付して説明する。図1において、符号1はCMP装置であり、符号2がリサイクルシステムである。
【0008】CMP装置1は、図4に示したCMP装置であるが、廃液受110と連通したパイプ111の出口に三方コックバルブ112が取り付けられ、このバルブ112を調整することで、使用済みスラリSを貯留槽121に溜めたり、定盤100洗浄後のほとんど水からなるスラリSを廃液槽120に破棄することができるようになっている。ここでは、理解を容易にするため、CMP装置1で使用されるスラリSをフュームドシリカ系スラリとする。すなわち、苛性カリ(KOH)又はアンモニア(NH_(3))を溶かしてPHを11程度にしたアルカリ性溶液中に、煙霧状SiO_(2)砥粒(シリカ)を所定濃度でコロイダル状にしたスラリS(又は、水にSiO_(2)砥粒をコロイダル状にし、後から苛性カリ又はアンモニアを加えてPHを11程度にしたスラリS)を、スラリ供給装置300のノズル301から研磨パッド101が貼り付けられた定盤100上に供給しながら、ウエハWを保持したキャリア200と定盤100とを回転させて、ウエハWを研磨する。そして、廃液受110に排出されかつパイプ111を通るスラリSをバルブ112を介して貯留槽121に溜めるようにした。なお、水中にこれら金属酸化物粉末を分散してスラリ化する際に、事前に又は後から酸やアルカリを加えてPH調整することもできる。
【0009】リサイクルシステム2は、このように貯留槽121に溜められたスラリSをCMP装置1で再使用することができるようにする技術であり、図示省略の流路手段と流路手段中に順次配された第2の濾過手段としてのフィルタ4とPH調整手段としてのイオン除去器5a及びPH調整器5bと濃度調整手段としての濃度調整タンク6と第1の濾過手段としてのフィルタ7とで構成されている。
【0010】流路手段は、ポンプ3によって汲み出された貯留槽121内のスラリSを図示しない別のポンプ等を用いてフィルタ4,イオン除去器5a及びPH調整器5b,濃度調整タンク6,フィルタ7に順次導くためのものである。
【0011】フィルタ4は、スラリS中に混入した粒径10ミクロン以上の異物を濾過する手段分であり、具体的には、10ミクロン?200ミクロンの網目のメッシュ41を有したカートリッジ型のフィルタである。すなわち、貯留槽121からのスラリSをフィルタ4のメッシュ41を通過させることで、CMP装置1による研磨時に混入した研磨パッド101のコンタミや研磨クズやドレッシングクズなどの異物及び凝集したスラリのうち、粒径の大きいものをメッシュ41に付着させて除去するように有している。
【0012】イオン除去器5a及びPH調整器5bは、フィルタ4で粗く濾過したスラリSのPHを使用前のPH値即ち初期のPH値に復元する機器である。イオン除去器5aは、フィルタ4からのスラリS内に存在する余分なイオンを除去するカートリッジ型のイオン交換樹脂やイオン交換膜などであり、フィルタ4の排水側に取り付けられている。すなわち、CMP装置1で研磨されるウエハWがシリコンウエハ等の場合には、研磨中に珪酸イオン等がウエハWからスラリS内に溶けて、スラリSのPHを「11」から「9.5」や「12」などに変化させることがある。また、余分なイオンがスラリS内に溶け込んでいると、スラリSが凝集状態になり易い。このため、イオン除去器5aで余分なイオンをスラリSから除去して、PHを「11」程度に近付けるようにすると共にスラリSのコロイド状態を保持するようにする。PH調整器5bは、イオン除去器5aにおけるイオン除去が過多であったり、不十分であった場合に、スラリSのPHをほぼ完全に初期のPH値に戻す機器であり、タンク52と攪拌器53と供給パイプ54とPHメータ55とを有している。すなわち、イオン除去器5aの排水側に連結された流路手段としての図示省略の配管を通じて、イオン除去器5aからのスラリSがタンク52内に貯留されるようになっている。そして、攪拌器53で攪拌しながら酸性剤又はアルカリ性剤を供給パイプ54からスラリS内に供給するようになっている。具体的には、PHメータ55によってタンク52内のスラリSのPHを計測し、その計測値が初期のPH値よりも低い場合、即ち酸性側に寄っている場合には、水酸化カリウム,アンモニア,アミン系物質,四級アンモニウム水酸化物等のアルカリ性剤を供給パイプ54からスラリSに加える。逆に、上記計測値が初期のPH値よりも高い場合、即ちアルカリ性側に寄っている場合には、塩酸,硝酸,過酸化水素水等の酸性剤をスラリSに加える。そして、PHメータ55の計測値がほぼ「11」に至ったところで、酸性剤等の供給を止め、タンク52内のスラリSを図示省略のポンプなどで濃度調整タンク6側に送るようになっている。
【0013】濃度調整タンク6は、スラリSの砥粒であるシリカの濃度を初期の濃度値に復元する手段分であり、タンク本体60と供給パイプ61と濃度メータ62とを有している。すなわち、スラリSのシリカ濃度は、CMP装置1における研磨作業中のドレッシングや水洗浄等によって減少するので、このシリカ濃度を濃度調整タンク6で復元するようにしている。具体的には、PH調整器5bから送られてきたスラリSをタンク本体60に貯留し、シリカを高濃度でコロイド状にしたスラリS′を供給パイプ61からタンク本体60内のスラリSに加えて、スラリSの濃度を高めていく。これと並行して、スラリSの濃度の変化を濃度メータ62で計測し、その計測値が初期のスラリSのシリカ濃度値に達したところで、スラリS′の供給を止め、タンク本体60内のスラリSを図示省略のポンプでフィルタ7側に送るようになっている。
【0014】フィルタ7は、濃度調整タンク6から送られてきたスラリSに混入している粒径10ミクロン未満の小さな異物や多少大きめに凝集したスラリを濾過するものであり、具体的には、0.5ミクロン?10ミクロンの網目のメッシュ71を有したカートリッジ型のフィルタである。すなわち、フィルタ4の通過時にスラリS内に混入した大部分の異物は除去されているが、10ミクロン未満という小さな異物が残っていることがある。このようなスラリSを再使用すると、ウエハWに無数の小さなスクラッチが発生する。そこで、このフィルタ7を用いて異物除去のほぼ完全化を図り、再使用時におけるウエハWのスクラッチ発生を完全に防止するのである。なお、フィルタ7の構造を単なるメッシュ構造とせず、深層濾過部と表層濾過部との二重構造にすることもできる。すなわち、0.5?10ミクロンの孔を持った不織布,スポンジ,布,多孔質体,砂などの濾材を層状態にして深層濾過部を形成し、この深層濾過部の後段に、0.5?10ミクロンの目を持つ金網,樹脂網,膜(メンブラン),布,紙(濾紙)などの濾材で表層濾過部を形成する。かかる構造により、深層濾過部において、当初粗く濾過し、時間経過と共に細かく濾過することができる。そして、表層濾過部において、深層濾過部を通過した異物などのうち、0.5?10ミクロン以下の異物などを完全に阻止することができる。上記のようなフィルタ7の排水側には、図示省略の流路としてパイプが連結されており、その排水口はスラリ供給装置300に連結されている。」

(ア-4)
「【0015】次に、この実施形態のリサイクルシステムが示す動作について説明する。なお、この動作は請求項5ないし請求項8の発明に係るリサイクル方法の各工程を具体的に達成するものでもある。CMP装置1において、シリコンウエハを研磨する際には、このウエハWが回転するキャリア200によって回転する定盤100の研磨パッド101上に押圧され、フュームドシリカ系スラリSがスラリ供給装置300から定盤100上に供給され続ける。これにより、ウエハWの層間絶縁膜がウエハWと研磨パッド101との間に介在するスラリSによって平坦化及び均一化される。このとき、定盤100上のスラリSは定盤100の遠心力によって廃液受110内に排出され、パイプ111及びバルブ112を介して貯留槽121に蓄えられる。
【0016】貯留槽121に蓄えられたスラリSは、ポンプ3によって流路手段に供給され、まず、フィルタ4によって、スラリS内に混入している粒径10ミクロン以上の大きな研磨クズなどの異物が除去される(第2の濾過工程)。しかる後、スラリSはイオン除去器5aに通され、スラリS内に溶け込んでいる珪酸イオンなどのイオンがイオン除去器5aによって除去されて、PH調整器5bのタンク52に蓄えられる。このとき、イオンがイオン除去器5aにおいてほぼ完全に除去され、PHメータ55が示すPH値がほぼ「11」である場合には、タンク52内のスラリSはそのまま濃度調整タンク6のタンク本体60に送られる。これに対して、イオン除去器5aにおけるイオン除去が過多また不十分であり、PHメータ55が示すPH値が「11」から大きくずれている場合には、アンモニアなどのアルカリ性剤又は塩酸等の酸性剤を供給パイプ54からタンク52内のスラリSに加え、PHメータ55が示すPH値がほぼ「11」になった時点で、酸性剤等の供給を止め、タンク52内のスラリSをタンク本体60に送る(PH調整工程)。スラリSが濃度調整タンク6のタンク本体60内に蓄えられると、濃度メータ62によってシリカ濃度が測定され、表示されるので、その濃度値が初期の濃度よりも小さくなっている場合には、濃度メータ62がほぼ初期値を示すまで、高濃度のスラリS′を供給パイプ61からタンク本体60内に加え、初期値を示した時点で、供給パイプ61からのスラリS′の供給を止めて、タンク本体60内のスラリSをフィルタ7に送出する(濃度調整工程)。これにより、スラリの粘度に変化による研磨レートのばらつきを防止して、安定な研磨作業を可能にしている。そして、スラリS中に混入している粒径10ミクロン未満の小さな異物がフィルタ7によって除去され、スラリ供給装置300に送り込まれる(第1の濾過工程)。以上のようにして、混入した異物が除去され、PHとシリカ濃度とがほぼ初期値に復元されたスラリSがスラリ供給装置300にフィードバックされ、定盤100上に再度供給されることとなる。この際、スラリS内の異物はほぼ完全に除去されるので、このスラリSを使用しても、ウエハWにスクラッチが生じることはない。また、スラリSのPHや濃度がほぼ初期値に戻されるので、ウエハWの研磨レートも使用前とほぼ変化せず、安定した研磨が可能である。なお、CMP装置1の研磨終了後は、定盤100やキャリア200に水をかけて洗浄し、これらに付着したスラリSを廃液受110に排出し、パイプ111とバルブ112を介して廃液槽120に貯留した後破棄する。
【0017】このように、この実施形態のリサイクルシステムによれば、使用したスラリSを破棄することなく再使用することができるので、スラリSの無駄な浪費を省くことができ、この結果、研磨作業コストの低減化を図ることができる。」

(ア-5)【図1】(第7頁)




(ア-6)【図4】(第7頁)




(イ)引用例2について
上記引用例2には、以下の事項が記載されている。

(イ-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウエハ表面のヘイズレベルを改善する目的で行われる研磨工程に用いられ、下記の(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の各成分を含有することを特徴とする研磨用組成物。
(a):ヒドロキシエチルセルロース
(b):0.005重量%を超えるとともに0.5重量%未満のポリエチレンオキサイド
(c):アルカリ化合物
(d):水
(e):二酸化ケイ素
【請求項2】
シリコンウエハ表面のヘイズレベルを改善する目的で行われる研磨工程において、請求項1に記載の研磨用組成物を用いてシリコンウエハ表面に研磨を施すことを特徴とするシリコンウエハの研磨方法。
・・(後略)」

(イ-2)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヘイズレベルをさらに改善することができる研磨用組成物及びそれを用いたシリコンウエハの研磨方法、並びにリンス用組成物及びそれを用いたシリコンウエハのリンス方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、コンピュータに使用されるULSI等の高集積化及び高速化に伴い、半導体装置のデザインルールは微細化が進んでいる。このため、デバイス製造プロセスでの焦点深度は浅くなり、デバイス形成前のシリコンウエハに要求される無傷性及び平滑性は厳しくなっている。無傷性及び平滑性を示すパラメータとしては、ヘイズ(Haze)レベルやLPD(Light Point Defect)等が挙げられる。
【0003】ここで、ヘイズとは、研磨用組成物により研磨し又は研磨が施された後にリンス用組成物によりリンスし、鏡面状態をなすシリコンウエハ表面に暗室内で強い光を照射したときに、光の乱反射による目視で観察できる乳白色の曇りのことであり、ヘイズレベルは乳白色の曇りの程度を示す。一方、LPDとはシリコンウエハの表面欠陥のことであり、研磨又はリンスが施されたシリコンウエハ表面に付着した異物(以下、パーティクルともいう)等に起因している。」

(イ-3)
「【0021】
成分(c)のアルカリ化合物は、シリコンウエハ表面を腐食又はエッチングすることにより、研磨を促進するために含有される。
アルカリ化合物の具体例としては、水酸化カリウム(以下、「PHA」という。以下において化合物名の後の括弧内はその略号を示す。)、水酸化ナトリウム(NHA)、炭酸水素カリウム(PCAH)、炭酸カリウム(PCA)、炭酸水素ナトリウム(NCAH)、炭酸ナトリウム(NCA)等の無機アルカリ化合物、アンモニア(A)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、炭酸水素アンモニウム(ACAH)、炭酸アンモニウム(ACA)等のアンモニウム塩、メチルアミン(MA)、ジメチルアミン(DMA)、トリメチルアミン(TMA)、エチルアミン(EA)、ジエチルアミン(DEA)、トリエチルアミン(TEA)、エチレンジアミン(EDA)、モノエタノールアミン(MEA)、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン(AEEA)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、無水ピペラジン(PIZ)、ピペラジン・六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン(AEPIZ)及びN-メチルピペラジン(MPIZ)等のアミン等が挙げられる。これらアルカリ化合物は、単独で含有してもよいし二種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0022】
これらの中でも、アミン臭が弱い等の理由から、PHA、NHA、PCAH、PCA、NCAH、NCA、A、TMAH、ACAH、ACA、PIZ、ピペラジン・六水和物、AEPIZ及びMPIZが好ましい。さらに、(a)及び(b)の各成分の作用を阻害しないことから、PHA、NHA、A、TMAH、PIZ及びピペラジン・六水和物が好ましい。
【0023】
研磨用組成物中の成分(c)の含有量は、成分(c)がPHA、NHA、PCAH、PCA、NCAH、NCA、A、TMAH、ACAH、ACA、MA、DMA、TMA、EA、DEA、TEA、EDA、MEA、AEEA、HMDA、DETA又はTETAのときには、好ましくは0.02?4重量%、より好ましくは0.03?3重量%、最も好ましくは0.2?2重量%である。また、成分(c)がPIZ、AEPIZ又はMPIZのときには、好ましくは0.005?3重量%、より好ましくは0.01?2重量%、最も好ましくは0.1?0.5重量%である。成分(c)がピペラジン・六水和物のときには、好ましくは0.01?6重量%、より好ましくは0.02?3重量%、最も好ましくは0.2?1重量%である。
【0024】
成分(c)の含有量が前記範囲未満では、成分(c)の研磨促進作用が弱まるために十分な研磨速度が得られない。一方、成分(c)の含有量が前記範囲を超えると、研磨用組成物がゲル化しやすくなるとともに、それ以上の研磨促進効果が期待できず、不経済にもなる。さらに、エッチング力が強くなるために研磨が施されたシリコンウエハ表面に面荒れが発生しやすい。」

(イ-4)
「【0033】
研磨用組成物のpHは、好ましくは9?12、より好ましくは10?11である。研磨用組成物のpHが前記範囲未満では、成分(c)の含有量が低いために十分な研磨速度が得られない。一方、研磨用組成物のpHが前記範囲を超えると、研磨用組成物はゲル化しやすくなる。」

(イ-5)
「【0057】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
<研磨>
(実施例1?24及び比較例1?17)
実施例1においては、まず成分(a)のHECと、成分(b)のPEOと、成分(c)としてのAの29重量%水溶液と、成分(d)としての超純水と、成分(e)としてのコロイダルシリカとを混合して研磨用組成物を調製した。ここで、(a)及び(b)の各成分はヘイズレベルを改善する成分として混合し、成分(c)は研磨を促進する成分として混合した。研磨用組成物中のコロイダルシリカの含有量は10重量%であった。また、このコロイダルシリカの20重量%水溶液中における鉄、ニッケル、銅及びカルシウムの含有量の合計は20ppb以下であった。
【0058】
さらに、コロイダルシリカの平均粒子径は、FlowSorbII2300(micromeritics社製の製品名)で測定されたD_(SA)で35nmであり、N4 Plus Submicron Particle Sizer(Beckman Coulter, Inc.の製品名)で測定されたD_(N4)で70nmであった。研磨用組成物中のHEC、PEO及びAの含有量を表1に示す。尚、以下において、各表におけるAの含有量は29重量%水溶液、TMAHの含有量は25重量%水溶液を使用した場合の含有量を示す。
【0059】
実施例2?24及び比較例1?17においては、ヘイズレベルを改善する成分及び研磨を促進する成分の種類及び含有量を表1又は表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして研磨用組成物を調製した。そして、実施例1?24及び比較例1?17の各例の研磨用組成物に超純水を混合してその体積を20倍にそれぞれ希釈した後、希釈された各例の研磨用組成物を用いてシリコンウエハ表面に下記の研磨条件で研磨を施した。
【0060】
なお、シリコンウエハとしては、予め研磨用組成物(GLANZOX-1101;株式会社フジミインコーポレーテッド製)を用いて10μm研磨除去した6インチシリコンウエハ(p型、結晶方位<100>、抵抗率0.01Ω・cm未満)を使用した。
【0061】
<研磨条件>
・・(中略)・・
(実施例25及び比較例18)
実施例25及び比較例18においては、実施例1と同様にして研磨用組成物を調製した。研磨用組成物におけるヘイズレベルを改善する成分及び研磨を促進する成分の種類及び含有量を表1及び表2に示す。次いで、実施例1と同様に、超純水を混合して体積を20倍にそれぞれ希釈した後、希釈された各例の研磨用組成物を用いてシリコンウエハ表面に研磨を施した。
・・(中略)・・
【0063】
(実施例26及び比較例19)
実施例26及び比較例19においては、実施例1と同様にして研磨用組成物を調製した。研磨用組成物におけるヘイズレベルを改善する成分及び研磨を促進する成分の種類及び含有量を表1及び表2に示す。次いで、実施例1と同様に、超純水を混合して体積を20倍にそれぞれ希釈した後、希釈された各例の研磨用組成物を用いてシリコンウエハ表面に研磨を施した。
・・(中略)・・
【0065】
そして、研磨後のシリコンウエハに純水を用いた10秒間のスクラブ洗浄及びSC-1(アンモニア(29重量%溶液):過酸化水素(31%溶液):純水=1:1:10(容量比)溶液)洗浄を施した後、シリコンウエハについて、下記(1)及び(2)の項目に関し評価を行った。さらに、実施例2、実施例3、実施例5、実施例10?14、比較例5、比較例10?13及び比較例16においては、さらに下記(3)の項目に関し評価を行った。それらの評価結果を表1及び表2に示す。尚、エタノールをEtOHで表し、グアガムをGGGで表し、ポリアクリルアミドをPAAMで表し、塩化カリウムをCPで表す。さらに、ジゾフィランをSPHで表し、ポリビニルアルコール(平均重合度1400、ケン化度95%)をPVAで表し、ポリエチレングリコールをPEGで表す。
【0066】
(1)ヘイズレベル(HL)
洗浄後のシリコンウエハにおいて、AMS-AWIS3110(ADE社製の製品名)を用いてヘイズレベルの値を測定した。そして、ヘイズレベルについて、0.05ppm未満(☆)、0.05ppm以上0.075ppm未満(◎)、0.075ppm以上0.1ppm未満(○)、0.1ppm以上0.2ppm未満(△)、0.2ppm以上(×)の5段階で評価した。
【0067】
(2)LPD
洗浄後のシリコンウエハにおいて、AMS-AWIS3110を用いて、大きさが0.1μm以上のパーティクルを測定した。そして、LPDについて、パーティクルの数が50個未満(○)、50個以上300個未満(△)、300個以上(×)の3段階で評価した。
【0068】
(3)表面状態(表面)
洗浄後のシリコンウエハにおいて、原子間力顕微鏡(D3000;Digital Instruments社製)を用いて表面状態を観察した。ここで、観測範囲を一辺が10μmの正方形の範囲とし、観察数を10点とした。そして、スクラッチが見られず、表面状態は非常によい(◎)、スクラッチが少し見られるが表面状態はよい(○)、スクラッチが見られ表面状態は悪い(△)、スクラッチが多く見られ表面状態は非常に悪い(×)の4段階で評価した。
【0069】
【表1】


【0070】
【表2】


実施例1?26においては、HEC及びPEOの両方を含有するためにヘイズレベルについて優れた評価となった。さらに、LPDについて良好な評価となった。このため、実施例1?26の研磨用組成物を用いると、ヘイズレベルを改善することができるとともに、LPDが悪化するのを抑制することができる。実施例2、実施例3、実施例5及び実施例10?14においては、表面状態、即ち研磨時におけるスクラッチの抑制状況についても優れた評価となった。
【0071】
一方、比較例2?4、比較例6?8及び比較例15においては、HEC及びPEOの両方を含有しないためにヘイズレベルについて劣る評価となった。比較例1、比較例5、比較例9?12、比較例16及び比較例17においては、HEC及びPEOの内の一方のみしか含有しないためにヘイズレベルについて劣る評価となった。比較例13においては、PEOの含有量が0.005重量%以下であるためにヘイズレベルについて劣る評価となった。
【0072】
比較例14においては、PEOの含有量が0.5重量%以上であるためにヘイズレベルについて劣る評価となった。さらに、比較例5、比較例10?13及び比較例16においては、表面状態についても劣る評価となった。比較例18及び比較例19においては、HEC及びPEOの内の一方のみしか含有しないために、実施例25又は実施例26に比べてヘイズレベルについて劣る評価となった。」

(ウ)引用例3について
上記引用例3には、以下の事項が記載されている。

(ウ-1)
「1.シリコンウエハを研磨する際に用いられる研磨用組成物であって、その研磨用組成物は、キレート剤、アルカリ化合物、二酸化ケイ素及び水を含有し、キレート剤は化学式:(式は省略)
で表される酸又はそれの塩であり、その化学式において、Y^(2)及びY^(3)のそれぞれはアルキレン基を表し、nは0?4の整数のいずれかを表し、R^(8)?R^(12)で表される4+n個の置換基のそれぞれはアルキル基であり、そのアルキル基のうちの少なくとも4つはホスホン酸基を有することを特徴とする研磨用組成物。
・・(中略)・・
6.pHが8?12であることを特徴とする請求の範囲第1項?第5項のいずれか一項に記載の研磨用組成物。」
(第26頁及び第27頁の請求の範囲第1項及び第6項)

(ウ-2)
「技術分野
本発明は、研磨用組成物及びリンス用組成物に関し、詳しくは、シリコンウエハを研磨する際に用いられる研磨用組成物及びシリコンウエハをリンスする際に用いられるリンス用組成物に関する。
背景技術
半導体デバイスの製造工程において、シリコンウエハは研磨用組成物を用いて機械化学的に研磨される。そして、研磨用組成物に含まれる二酸化ケイ素及び金属不純物がシリコンウエハに残留するのを防ぐべく、研磨されたシリコンウエハは通常、水又はリンス用組成物を用いてリンスされる。
特開昭63-272460号公報に開示される従来の研磨用組成物は、水及び粒状アモルファスシリカに加えてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤及びポリアクリル酸等の分子量5000以上の高分子イオンの少なくともいずれか一方を含有している。特開2001-77063号公報に開示される従来の研磨用組成物は、研磨粒子、ピペラジン等のアミン類、及びEDTA等のキレート剤を含有している。
これら従来の研磨用組成物は、金属元素と結合して安定した錯イオンを形成するキレート剤の働きによって、研磨用組成物中の金属不純物によるシリコンウエハの汚染を抑制する。しかしながら、従来の研磨用組成物に含まれるキレート剤は金属不純物を捕捉する能力があまり高くない。そのため、従来の研磨用組成物を用いて研磨されたシリコンウエハから半導体デバイスを作製した場合には、ショートやリークのせいでしばしば半導体不良が発生する。なお、金属不純物によるシリコンウエハの汚染は、金属不純物がシリコンウエハ表面に付着することのみならず金属不純物がシリコンウエハ内部に拡散することも意味する。」
(第1頁第5行?第2頁第1行)

(ウ-3)
「前記アルカリ化合物は、研磨用組成物及びリンス用組成物をアルカリ性に保つべく、研磨用組成物及びリンス用組成物に含有されている。研磨用組成物に含まれるアルカリ化合物は、腐食、エッチング及び酸化等の化学的作用によってシリコンウエハ表面の研磨を促進する役割を担う。
アルカリ化合物の具体例としては、水酸化カリウム(PHA)、水酸化ナトリウム(NHA)、炭酸水素カリウム(PCAH)、炭酸カリウム(PCA)、炭酸水素ナトリウム(NCAH)、炭酸ナトリウム(NCA)等の無機アルカリ化合物;アンモニア(AM);水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、炭酸水素アンモニウム(ACAH)、炭酸アンモニウム(ACA)等のアンモニウム塩;メチルアミン(MA)、ジメチルアミン(DMA)、トリメチルアミン(TMA)、エチルアミン(EA)、ジエチルアミン(DEA)、トリエチルアミン(TEA)、エチレンジアミン(EDA)、モノエタノールアミン(MEA)、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン(AEEA)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、無水ピペラジン(PIZ)、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン(AEPIZ)、N-メチルピペラジン(MPIZ)等のアミンが挙げられる。アルカリ化合物は、アミン臭が弱いことから、PHA、NHA、PCAH、PCA、NCAH、NCA、AM、TMAH、ACAH、ACA、EDA、MEA、AEEA、HMDA、DETA、TETA、PIZ、ピペラジン六水和物、AEPIZ、及びMPIZが好ましく、アミン臭が弱いうえにキレート剤の作用を阻害もしないことから、PHA、NHA、PCAH、PCA、NCAH、NCA、AM、TMAH、ACAH、ACA、PIZ、ピペラジン六水和物、AEPIZ、及びMPIZがより好ましい。研磨用組成物及びリンス用組成物は、アルカリ化合物を一種類のみ含有してもよいし二種類以上含有してもよい。
研磨用組成物中及びリンス用組成物中のアルカリ化合物の含有量は、アルカリ化合物がPHA、NHA、TMAH、ACAH、ACA、PCAH、PCA、NCAH、NCA、AM、MA、DMA、TMA、EA、DEA、TEA、EDA、MEA、AEEA、HMDA、DETA又はTETAである場合には、好ましくは0.1?6重量%、より好ましくは0.5?5重量%、最も好ましくは1?4重量%であり、アルカリ化合物がPIZ、AEPIZ又はMPIZである場合には、好ましくは0.1?10重量%、より好ましくは1?9重量%、最も好ましくは3?8重量%であり、アルカリ化合物がピペラジン六水和物である場合には、好ましくは0.1?20重量%、より好ましくは2?18重量%、最も好ましくは5?16重量%である。アルカリ化合物の含有量が少なすぎる研磨用組成物は、研磨速度があまり高くない。アルカリ化合物の含有量が多すぎる研磨用組成物及びリンス用組成物はゲル化しやすいし、不経済であるし、シリコンウエハ表面に荒れを発生させやすい。」
(第6頁第23行?第8頁第3行)

(ウ-4)
「研磨用組成物及びリンス用組成物のpHは好ましくは8?12、より好ましくは10?12である。pHが小さすぎる研磨用組成物は研磨速度があまり高くない。pHが大きすぎる研磨用組成物及びリンス用組成物はゲル化しやすい。研磨用組成物のpHとリンス用組成物のpHとはほぼ同じであることが好ましい。研磨用組成物のpHとリンス用組成物のpHが大きく異なると、リンス時にシリコンウエハ表面及び研磨パッドに残留する研磨用組成物がゲル化したり、シリコンウエハ表面に荒れが発生したりする。」
(第9頁第15行?第21行)

(ウ-5)
「次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1?14及び比較例1?9
実施例1?14及び比較例1?9では、二酸化ケイ素、キレート剤、アルカリ化合物及び水を混合して研磨用組成物原液が調製される。各研磨用組成物原液に含まれる二酸化ケイ素はコロイダルシリカであり、各研磨用組成物原液中のコロイダルシリカの含有量は20重量%である。各研磨用組成物原液に含まれるキレート剤及びアルカリ化合物の種類及び含有量は表1に示す通りである。なお、コロイダルシリカの20重量%水溶液中における鉄、ニッケル、銅、及びカルシウムの各元素の含有量の合計は20ppb以下である。micromeritics社製のFlowSorbII2300で測定されるコロイダルシリカの平均粒子径D_(SA)は35nmであり、Beckman Coulter, Inc.社製のN4 Plus Submicron Particle Sizerで測定されるコロイダルシリカの平均粒子径D_(N4)は70nmである。実施例1?14の研磨用組成物原液のpHはいずれも10?12である。研磨用組成物原液のそれぞれを超純水で20倍に希釈して研磨用組成物を調製し、その研磨用組成物を用いてシリコンウエハ表面を下記の研磨条件1にて研磨した。
研磨条件1
研磨装置:不二越機械工業社製の片面研磨機SPM-15(一つ当たり四枚のウエハを保持可能なウエハホルダを四つ具備)、
研磨対象物:6インチシリコンウエハ(p型、結晶方位<100>、抵抗率1?10Ω・cm)、
荷重:31.5kPa、
定盤回転数:58rpm、
ウエハホルダ回転数:120rpm、
研磨パッド:ロデール・ニッタ株式会社製の不織布Suba600、
研磨用組成物の供給速度:8000mL/分(循環使用)、
研磨時間:15分、
研磨用組成物の温度:23℃
(1)シリコンウエハ表面の金属不純物の含有量
研磨後のシリコンウエハを純水にてスクラブ洗浄した。続いて、シリコンウエハ表面の自然酸化膜をフッ酸蒸気により気層分解してこれをフッ酸と過酸化水素水とを含有する液滴で回収し、回収液中の金属不純物を誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によって定量分析した。その金属不純物の量を、1×10^(9)atms/cm^(2)未満(◎)、1×10^(9)atms/cm^(2)以上3×10^(9)atms/cm^(2)未満(○)、3×10^(9)atms/cm^(2)以上1×10^(10)atms/cm^(2)未満(△)、1×10^(10)atms/cm^(2)以上(×)の4段階で評価した。その結果を表1に示す。
(2)シリコンウエハ内部の金属不純物の含有量
36%塩酸溶液と31%過酸化水素溶液と純水とを容量比で1:1:6で含有する塩酸過酸化水素水溶液(SC-2)にて洗浄後に200℃で48時間の熱処理を研磨後のシリコンウエハに行うことによって、そのシリコンウエハ内部の金属不純物をシリコンウエハ表面にまで移動させた。その後、上記(1)に記載の方法に従って、その金属不純物の量を測定及び評価した。その結果を表1に示す。
(3)研磨速度
シリコンウエハの中心部の研磨前と研磨後の厚さの差から研磨速度を算出した。前記厚さの差は、互いに異なるウエハホルダに保持されて同時に研磨された4枚のシリコンウエハのそれぞれにてダイヤルゲージを用いて測定される厚さの差の平均である。研磨速度を、1μm/分以上(◎)、0.8μm/分以上1μm/分未満(○)、0.5μm/分以上0.8μm/分未満(△)、0.5μm/分未満(×)の4段階で評価した。その結果を表1に示す。
表1


表1において、DTPAはジエチレントリアミン五酢酸を表し、NTAはニトリロ三酢酸を表し、HIDAはヒドロキシエチルイミノ二酢酸を表す。
表1に示すように、実施例1?14ではシリコンウエハ表面及び内部の金属不純物に関する評価とも良く、実施例3?14ではさらに研磨速度の評価も良い。一方、比較例1?9ではシリコンウエハ表面及び内部の金属不純物に関する評価とも悪い。これは、比較例1?9の研磨用組成物が特定のキレート剤を含有しないためと推測される。」
(第12頁最終行?第15頁最終行)

(エ)引用例4について
上記引用例4には、以下の事項が記載されている。

(エ-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハの端面を研磨する際に使用される研磨用組成物であって、二酸化ケイ素、アルカリ化合物、水溶性高分子化合物及び水を含有し、前記二酸化ケイ素のD_(SA)が40nm以上であるとともに、前記二酸化ケイ素のD_(95)を前記二酸化ケイ素のD_(5)で除した値が3.8以下であることを特徴とする研磨用組成物。
【請求項2】
半導体ウエハの端面を研磨する際に使用される研磨用組成物であって、二酸化ケイ素、アルカリ化合物、水溶性高分子化合物及び水を含有し、前記二酸化ケイ素のD_(SA)が40nm以上であるとともに、該D_(SA)に前記二酸化ケイ素のD_(5)を乗じた値で前記二酸化ケイ素のD_(95)を除した値が0.07以下であることを特徴とする研磨用組成物。
【請求項3】
前記二酸化ケイ素のD_(95)を前記二酸化ケイ素のD_(5)で除した値が3.8以下であることを特徴とする請求項2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いて半導体ウエハの端面を研磨することを特徴とする研磨方法。」

(エ-2)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエハの端面を研磨する際に使用される研磨用組成物及びそれを用いた研磨方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウエハの製造プロセスでは、ウエハの縁部を面取りし、さらにその縁部を含むウエハ端面を研磨(エッヂポリッシュ)することが一般に行なわれている。このウエハの端面に対する一連の加工は、ウエハの端面にチッピングが発生するのを抑制すること、及びエピタキシャル成長時にエッヂクラウンができるのを抑制することなどを目的とするものである。
【0003】
半導体ウエハの端面を研磨する際に使用される研磨用組成物としては、水溶性高分子化合物を配合したものが知られている(下記特許文献1及び2参照。)。水溶性高分子化合物は、エッヂポリッシュ時に飛散した研磨用組成物がウエハ表面で乾燥し、研磨用組成物に含まれる砥粒が乾燥ゲルとなって付着残留するのを、ウエハ表面の濡れ性を改善することで抑制する働きを有する。」

(エ-3)
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の研磨用組成物を用いてエッヂポリッシュを行なった場合には、依然、研磨用組成物に含まれる砥粒が乾燥ゲルとなって付着残留することがあった。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、砥粒が乾燥ゲルとなってウエハ表面に付着残留するのをより確実に抑制することができる研磨用組成物及びそれを用いた研磨方法を提供することにある。」

(エ-4)
「【0017】
次に、アルカリ化合物について説明する。
アルカリ化合物は、化学的研磨作用によって被研磨物を研磨する働きを有する。
【0018】
アルカリ化合物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ化合物;アンモニア;水酸化テトラメチルアンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン等のアミンなどが挙げられる。その中でも、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン又はN-メチルピペラジンが好ましく、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、無水ピペラジン又はピペラジン六水和物が特に好ましい。なお、本実施形態の研磨用組成物は、アルカリ化合物を一種類のみ含有するものであっても、二種類以上含有するものであってもよい。
【0019】
本実施形態の研磨用組成物に含有されるアルカリ化合物の量は、ピペラジン及びその誘導体以外ならば、0.1?6重量%が好ましく、0.5?5重量%がより好ましく、1?4重量%が最も好ましい。無水ピペラジン、1-(2-アミノエチル)ピペラジン又はN-メチルピペラジンならば、0.1?10重量%が好ましく、1?9重量%がより好ましく、3?8重量%が最も好ましい。ピペラジン六水和物ならば、0.1?20重量%が好ましく、2?18重量%がより好ましく、5?16重量%が最も好ましい。」

(エ-5)
「【0037】
・ 研磨用組成物におけるアルカリ化合物の含有量を0.1重量%以上とすれば、該含有量が過少なことに起因する研磨速度の極端な低下を防止することができる。また、前記含有量を、ピペラジン及びその誘導体以外なら0.5重量%以上、無水ピペラジン、1-(2-アミノエチル)ピペラジン又はN-メチルピペラジンなら1重量%以上、ピペラジン六水和物なら2重量%以上とすれば、上記の効果を一段と高めることができる。さらに、前記含有量を、ピペラジン及びその誘導体以外なら1重量%以上、無水ピペラジン、1-(2-アミノエチル)ピペラジン又はN-メチルピペラジンなら3重量%以上、ピペラジン六水和物なら5重量%以上とすれば、上記の効果をさらに高めることができる。
【0038】
・ 研磨用組成物におけるアルカリ化合物の含有量を、ピペラジン及びその誘導体以外なら6重量%以下、無水ピペラジン、1-(2-アミノエチル)ピペラジン又はN-メチルピペラジンなら10重量%以下、ピペラジン六水和物なら20重量%以下とすれば、該含有量が過多なことに起因する研磨用組成物のゲル化及びコスト増加を防止することができる。また同時に、アルカリ化合物の含有量が過多なことに起因して被研磨面に面あれが生じるのを防止することもできる。なお、前記含有量を、ピペラジン及びその誘導体以外なら5重量%以下、無水ピペラジン、1-(2-アミノエチル)ピペラジン又はN-メチルピペラジンなら9重量%以下、ピペラジン六水和物なら18重量%以下とすれば、上記の効果を一段と高めることができる。さらに、前記含有量を、ピペラジン及びその誘導体以外なら4重量%以下、無水ピペラジン、1-(2-アミノエチル)ピペラジン又はN-メチルピペラジンなら8重量%以下、ピペラジン六水和物なら16重量%以下とすれば、上記の効果をさらに高めることができる。」

(エ-6)
「【0046】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
表1,2に示すコロイダルシリカ、アルカリ化合物及び水溶性高分子化合物をイオン交換水に混合して実施例1?35及び比較例1?20の研磨用組成物を調製し、各例の研磨用組成物を用いて下記の研磨条件で半導体ウエハの端面を研磨(エッヂポリッシュ)した。このときに、以下に示す「シミ」及び「研磨速度」について評価した結果を表1,2に示す。
【0047】
<研磨条件> 研磨機:スピードファム社製EP-150/200/300-IV NF、被研磨物:φ8”(=200mm)エッチドシリコンウエハ(P-<100>)、接触角度:45°、荷重:2kg、ドラム回転数:800rpm、ドラム上下速度:72mm/分、ウエハ回転数:1rpm、研磨テープ:スピードファム社製DRP-II、研磨時間:4分、研磨用組成物の供給速度:300ml/分(循環使用)
<シミ> 半導体ウエハの表面に砥粒が乾燥ゲルとなって付着残留していると、強い光を当てたときに、それがシミとして現われる。そこで、エッヂポリッシュしてから純水にてスクラブ洗浄した各半導体ウエハの表面を、暗室内でハロゲンスポットライト(500キロルクス)を照射しながら目視にて観察した。そして、半導体ウエハの表面にシミが全く認められなかったものを◎、ほとんどシミが認められなかったものを○、色の薄いシミが多く認められたものを△、色の濃いシミが多く認められたものを×と評価した。
【0048】
<研磨速度> エッヂポリッシュの際の研磨速度を以下に示す計算式に基づいて求め、研磨速度が1.5mg/分以上のものを◎、1.0mg/分以上1.5mg/分未満のものを○、0.5mg/分以上1.0mg/分未満のものを△、0.5mg/分未満のものを×と評価した。研磨速度〔mg/分〕=(エッヂポリッシュ前のウエハの重量〔mg〕-エッヂポリッシュ後のウエハの重量〔mg〕)÷研磨時間〔分〕
【0049】
【表1】


【0050】
【表2】


なお、上記表1,2の「被研磨物」欄に示した「Bare」はベアのシリコンウエハ、「SiO_(2)」は酸化膜(厚さ5000Å)付のシリコンウエハの略である。「コロイダルシリカ」欄に示した「A」?「L」は、D_(SA)、D_(95)/D_(5)、及びD_(95)/D_(5)/D_(SA)が下記表3に示す値を有するコロイダルシリカを表わす。「アルカリ化合物」欄に示した「TMAH」は水酸化テトラメチルアンモニウム(25重量%水溶液)、「PHA」は水酸化カリウム、「PIZ」は無水ピペラジン、「PCA」は炭酸カリウムの略である。「水溶性高分子化合物」欄に示した「HEC※^(1)」は平均分子量400,000のヒドロキシエチルセルロース、「HEC※^(2)」は平均分子量1,200,000のヒドロキシエチルセルロース、「HEC※^(3)」は平均分子量1,800,000のヒドロキシエチルセルロースを表わす。同欄に示した「PVA」は平均分子量60,000のポリビニルアルコール、「PEG」は平均分子量10,000のポリエチレングリコール、「PEO」は平均分子量200,000のポリエチレンオキサイド、「G」はグリセリン、「EG」はエチレングリコール、「SPA」は平均分子量10,000?20,000のポリアクリル酸ナトリウムを表わす。
【0051】
【表3】


上記表1,2に示すように、実施例1?35の研磨用組成物を用いてエッヂポリッシュした半導体ウエハの表面にはシミが全く又はほとんど認められなかった。よって、前記半導体ウエハの表面には乾燥ゲルとなって付着残留する砥粒(コロイダルシリカ)が全く又はほとんどないといえる。このことから、砥粒が乾燥ゲルとなってウエハ表面に付着残留するのを抑制する効果を、実施例1?35の研磨用組成物が有していることは明らかである。」

イ.検討

(ア)引用例1に記載された発明
上記引用例1には、「CMP装置で使用されたスラリ中に混入している粒径10ミクロン未満の異物を濾過する第1の濾過工程を設け、上記第1の濾過工程の前工程として、・・上記スラリのPHをほぼ使用前のPH値にするように調整するPH調整工程・・を設けたことを特徴とするCMP装置のスラリリサイクル方法」が記載され、当該「PH調整工程」が、「スラリのPHが使用前のPH値よりも低い場合にアルカリ性剤を上記スラリに加え・・て、PH値を調整するものである」ことも記載されている(摘示(ア-1)の【請求項5】及び【請求項6】参照)。
そして、上記引用例1には、上記「アルカリ性剤」として「初期のPH値よりも低い場合、即ち酸性側に寄っている場合には、水酸化カリウム,アンモニア,アミン系物質,四級アンモニウム水酸化物等のアルカリ性剤を供給パイプ54からスラリSに加える」ことも記載されている(摘示(ア-3)の【0012】、摘示(ア-4)の【0016】、摘示(ア-5)及び摘示(ア-6)参照)。
また、上記引用例1には、上記「スラリ」が「CMP(Chemical Mechanical Polishing)装置の被研磨物であるウエハを研磨する際に使用された」ものであることも記載されている(摘示(ア-2)参照)。
なお、上記「アンモニア,アミン系物質,四級アンモニウム水酸化物」は、いずれも広義の意味での「アミン化合物」の範疇に入ることが当業者に自明である。
してみると、上記引用例1には、上記(ア-1)ないし(ア-6)の記載事項からみて、本件補正発明に倣い表現すると、
「CMP装置で使用された研磨用スラリにPH調整のために添加されるアルカリ性剤において、アンモニア、アミン系物質、四級アンモニウム水酸化物などのアミン化合物を含むことを特徴とするアルカリ性剤」
に係る発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

(イ)本件補正発明との対比・検討

(a)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「CMP装置で使用された」、「研磨用スラリ」及び「(研磨用スラリに・・)添加されるアルカリ性剤」は、それぞれ、本件補正発明における「「少なくとも1度使用された」、「研磨組成物」及び「(研磨組成物に)添加される研磨組成物用添加剤」に相当する。
そして、引用発明における「アミン化合物」は、本件補正発明における「アミン化合物」に相当するものといえる。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、
「少なくとも1度使用された研磨組成物に添加される研磨組成物用添加剤において、アミン化合物を含むことを特徴とする研磨組成物用添加剤」
の点で一致し、以下の2点で相違するものと認められる。

<相違点1>:「研磨組成物用添加剤」につき、本件補正発明では、「アミン化合物の水溶液」であるのに対して、引用発明では、「アルカリ性剤」につき「水溶液」であることが特定されていない点
<相違点2>:「研磨組成物用添加剤」につき、本件補正発明では、「2種以上のアミン化合物」が含まれ、「アミン化合物として、水酸化テトラメチルアンモニウムおよびピペラジンを含む」ものであるのに対して、引用発明では、「アルカリ性剤」につき「2種以上のアミン化合物」が含まれ、「アミン化合物として、水酸化テトラメチルアンモニウムおよびピペラジンを含む」ものであることが特定されていない点

(b)各相違点に係る検討

(b-1)相違点1について
上記相違点1につき検討すると、上記引用例1にも記載されている(摘示(ア-1)の【請求項8】及び摘示(ア-3)の【0008】並びに【0012】参照)とおり、引用発明における「研磨用スラリ」は、水中にこれら金属酸化物粉末を分散してスラリ化したものであるところ、その「研磨用スラリ」に対する「PH調節剤」である「酸性剤」及び「アルカリ性剤」は、いずれも「供給パイプ」を介して研磨用スラリに添加されるものであり、酸性剤として塩化水素の水溶液である「塩酸」などが使用できることからみても、引用発明において、「アルカリ性剤」を「水溶液」の形とすることは、当業者が適宜なし得ることというほかない。

(b-2)相違点2について
上記相違点2について検討すると、上記引用例2ないし4にもそれぞれ記載されている(摘示(イ-3)ないし(イ-5)、(ウ-3)ないし(ウ-5)及び(エ-4)ないし(エ-6)参照)とおり、シリコンウエハを研磨するための研磨剤組成物において、研磨剤と共にウエハを化学的にエッチングし、研磨速度を上げるための研磨促進剤であるアルカリ性剤として、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)と(無水)ピペラジン(PIZ)との組合せなどの2種以上のアミン系アルカリ化合物の混合物を使用することは、当業者の周知技術であるものと認められる(特に摘示(イ-5)の「実施例23」、摘示(ウ-5)の「実施例12」及び摘示(エ-6)の「実施例19」など参照)。
また、上記引用例1ないし4にもそれぞれ記載されている(摘示(ア-4)、(イ-3)、(イ-4)、(ウ-3)、(ウ-4)、(エ-4)及び(エ-5)参照)とおり、アルカリ性剤を必要十分な量で添加し、研磨剤組成物のpHを例えば10?11程度にすることにより、研磨速度、すなわち研磨レートを上げることができるとともに、アルカリ性剤の添加量が少なすぎてpHが低くなると研磨速度が低下し、アルカリ性剤の添加量が多すぎてpHが高くなりすぎると、ゲル化などの研磨剤組成物の安定性低下につながる傾向にあることは、本願出願前の当業者の技術常識であるものと認められる。
さらに、上記引用例1に記載されている(摘示(ア-4)の【0016】参照)とおり、研磨剤組成物のpH、粘度、(研磨剤)濃度などが使用前後において同一となるように使用後処理(リサイクル処理)した場合に研磨速度のばらつき防止が図られる点も、当業者の技術常識であるものと認められる。
してみると、引用発明において、研磨レートを上げるとともに、その研磨レートのばらつきを防止することを意図して、上記当業者の周知技術及び技術常識に基づき、研磨促進剤であるアルカリ性剤として、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)と(無水)ピペラジン(PIZ)との組合せを含む2種以上のアミン化合物(の混合物)を適宜量で添加使用することは、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、上記相違点2は、当業者が適宜なし得ることである。

(c)本件補正発明の効果について
本件補正発明の効果につき検討すると、上記(b)でも説示したとおり、アルカリ性剤を必要十分な量で添加し、研磨剤組成物のpHを例えば10?11程度にすることにより、研磨速度、すなわち研磨レートを上げることができるとともに、アルカリ性剤の添加量が少なすぎてpHが低くなると研磨速度が低下し、アルカリ性剤の添加量が多すぎてpHが高くなりすぎると、ゲル化などの研磨剤組成物の安定性低下につながる傾向にあること及び研磨剤組成物のpH、粘度、(研磨剤)濃度などが使用前後において同一となるように使用後処理(リサイクル処理)した場合に研磨速度のばらつき防止が図られることは、いずれも本願出願前の当業者の技術常識であるとともに、シリコンウエハを研磨するための研磨剤組成物において、研磨剤と共にウエハを化学的にエッチングし、研磨速度を上げるための研磨促進剤であるアルカリ性剤として、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)と(無水)ピペラジン(PIZ)との組合せなどの2種以上のアミン系アルカリ化合物の混合物を使用することは、当業者の周知技術であるから、引用発明において、当該周知技術及び技術常識に基づき、研磨促進剤であるアクリル性剤として、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)と(無水)ピペラジン(PIZ)との組合せを含む2種以上のアミン化合物(の混合物)をpH11程度となるような適宜量で添加使用した場合、研磨レートを上げるとともに、その研磨レートのばらつきを防止することができるであろうことは、当業者において予期し得ることである。
また、本件補正後の明細書の実施例に係る記載及び【図3】並びに【図4】の記載を検討すると、【図3】の実施例及び参考例に係る記載の対比から、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)と(無水)ピペラジン(PIZ)との組合せを含む2種以上のアミン化合物(の混合物)を使用した実施例の場合が、TMAHのみを使用した参考例の場合に比して、研磨レートのばらつきにつき同等で、研磨レートにつき多少大きいものと認められるが、同条件の研磨試験によるものと認められる【図4】の記載からみて、実施例のものでも5バッチ平均研磨レートが大きく変化しており(実施例の第1バッチから第5バッチまでの平均研磨レートは、0.65μm/min程度であるものと認められる。)、【図3】における実施例と参考例との研磨レートの差異は、誤差というべき範囲内にあるものということができ、実質的な効果上の差異であるものとは認められないから、本件補正発明に係る「水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)と(無水)ピペラジン(PIZ)との組合せを含む2種以上のアミン化合物(の混合物)を使用した」場合に、アミン化合物を単独使用した場合に比して、特段の顕著な効果を奏しているものとは認められない。
してみると、本件補正発明の効果は、引用発明と上記周知技術及び技術常識とを組み合わせた場合のものに比して、当業者が予期し得ない程度の格別顕著なものということができない。

(d)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び当業者の周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(ウ)審判請求人の主張について
なお、審判請求人は、平成24年7月24日付け回答書において、
a.「前置報告において審査官殿は、仮に前記補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであっても、引用例1に記載されたCMPスラリーのリサイクル方法に関する発明におけるpH調整剤として、引用例2乃至4に記載された研磨組成物の一成分である「水酸化テトラメチルアンモニウムおよびピペラジン」を採用することは当業者であれば適宜なしえることである、と認定されています。
特に、審判請求の理由として平成23年2月2日付けで提出した手続補正書の「請求の理由 3.本願発明が特許されるべき理由 (4)本願発明と引用発明との対比 ii)阻害要因」で述べた点について、「複数のアルカリ化合物を併用すれば、pH調整が非常に困難になること自体、なんら根拠がなく、上記主張は勘案することができない」と述べられております。
しかしながら、pH調整剤として、複数のアルカリ性剤の混合物を使用する場合には、単独のアルカリ性剤を使用する場合と違いpH変動の挙動が複雑になることは、特に根拠を示すまでもなく当業界の常識であるといえます。このことは、引用例1においても、pH調整剤としてのアルカリ性剤を2種以上混合して用いることを示唆する記載が全くないことからも明らかであるといえます。
また、アミン化合物である「水酸化テトラメチルアンモニウムおよびピペラジン」は、引用例2乃至4にも記載されているように、腐食、エッチング及び酸化等の化学的作用によってシリコンウエハ表面を研磨する作用を有する化合物であります。
従って、「水酸化テトラメチルアンモニウムおよびピペラジン」を例えば引用例1のリサイクルシステムにおいて使用前のpHになるように使用済み研磨組成物に添加した場合には、研磨組成物の研磨速度や被研磨物表面の性状に影響を及ぼすことは、当業者にとっては常識です。特に、2種類のアミン化合物を合わせて使用すれば、それぞれがスラリーの研磨性能に影響を及ぼすアミン化合物であるため、研磨性能に多大な影響を及ぼすことは当業者にとっては常識であります。
よって、単にpHを調整するために、研磨組成物の研磨性能に大きな影響を及ぼす「水酸化テトラメチルアンモニウムおよびピペラジン」をわざわざ添加することは当業者によっては考えられません
以上より、引用例1に記載の発明におけるpH調整剤として、引用例2乃至4に記載の各研磨成分の中から「水酸化テトラメチルアンモニウムおよびピペラジン」を採用することは当業者では通常行なうことではなく、むしろ避けるべきことであります。」
及び
b.「また、審査官殿は、前記阻害要因にかかる主張のみを否定されて、引用例1に記載された発明において「水酸化テトラメチルアンモニウムおよびピペラジン」の両者を併用する程度のことは当業者は適宜なしうる」、と認定されていますが、そもそも、引用例1の発明において、アルカリ性剤を2種以上混合して用いることについてなんら示唆となる記載はありません。さらに、引用例1乃至4のいずれにも、「水酸化テトラメチルアンモニウムおよびピペラジン」の組み合わせをpH調整剤として採用することについても示唆となる記載は全くありません。よって、引用例1と、引用例2乃至4とを組み合わせること自体が動機付けられるものではありません。」
と主張している(回答書「(2)進歩性に関する認定」の欄)。
しかるに、まず上記a.の主張につき検討すると、上記引用例2ないし4にもそれぞれ記載されている(摘示(イ-5)、(ウ-5)及び(エ-6)参照)とおり、研磨剤組成物を構成する研磨促進剤としてのアミン化合物につき、同様の特性を有する具体例(実施例)として、1種単独で使用する場合も2種以上の化合物を併用する場合も並立的に存するものであるから、仮に、請求人が主張するとおり、「pH調整剤として、複数のアルカリ性剤の混合物を使用する場合には、単独のアルカリ性剤を使用する場合と違いpH変動の挙動が複雑になることは、特に根拠を示すまでもなく当業界の常識である」というのであるならば、上記引用例2ないし4に記載された技術における研磨剤組成物のpH変動についても1種単独使用の場合と2種以上併用との間で有意な差異が存するはずであって、上記の具体例(実施例)が引用例2ないし4において同様の効果を奏する例として並列的に記載されていることは不自然である。
また、ほかに「pH調整剤として、複数のアルカリ性剤の混合物を使用する場合には、単独のアルカリ性剤を使用する場合と違いpH変動の挙動が複雑になることは、特に根拠を示すまでもなく当業界の常識である」ことを示す論拠となる事項が存するものとも認められない。
してみると、請求人の上記「pH調整剤として、複数のアルカリ性剤の混合物を使用する場合には、単独のアルカリ性剤を使用する場合と違いpH変動の挙動が複雑になることは、特に根拠を示すまでもなく当業界の常識である」旨の主張は、技術的根拠を欠くことが明らかであり、上記a.の主張は、当を得ないものである。
また、上記b.の主張につき検討すると、上記(イ)(b)(b-2)で説示したとおり、上記引用例1ないし4の記載からみて、引用発明のものを含むアミン化合物などの研磨用組成物に添加されるアルカリ性剤が、いずれも研磨用組成物のpHを11前後に調節し、研磨速度(研磨レート)を上げるために使用されている点で添加目的・機能的に共通するものであることが当業者の技術常識であるから、引用発明における「アンモニア、アミン系物質、四級アンモニウム水酸化物などのアミン化合物」として、引用例2ないし4に記載された周知技術に基づき「ピペラジン」なるアミン系化合物と「水酸化テトラメチルアンモニウム」なる四級アンモニウム水酸化物との組合せを含む添加剤(組成物)を構成することを妨げる技術要因(いわゆる阻害要因)はなく、むしろ単なる互換を行うべき動機が存するものと認められる。
そして、本件補正後の明細書の実施例に関する記載を検討しても、上記(イ)(c)で説示したとおり、本件補正発明が、TMAHとPIZの2種のアミン化合物を併用したことにより、アミン化合物を単独使用した場合に比して、特段の顕著な効果を奏しているものとは認められないから、いわゆる選択発明が成立するものでもない。
してみると、上記b.の主張についても、当を得ないものである。
したがって、審判請求人の上記主張は、いずれも当を得ないものであるから、採用する余地がなく、当審の上記(イ)の検討結果を左右するものではない。

(3)独立特許要件に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件補正発明は、その出願前に当業者が日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

III.補正の却下の決定のまとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、上記II.2.で説示したとおり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正事項を含むものであって、かつ、上記II.3.で説示したとおり、同法同条第5項で準用する特許法第126条第5項に違反するものである。
よって、本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願についての当審の判断

1.本願に係る発明
平成22年12月27日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成22年8月2日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項によりそれぞれ特定されるとおりのものであり、その内、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は再掲すると以下の事項により特定されるとおりのものである。
「少なくとも1度使用された研磨組成物に添加される研磨組成物用添加剤において、
2種以上のアミン化合物の水溶液であり、
前記アミン化合物は、第4級アンモニウム塩を含むことを特徴とする研磨組成物用添加剤。」

2.原審の拒絶査定の概要
原審において、平成22年5月26日付け拒絶理由通知書で以下の内容を含む拒絶理由が通知され、当該拒絶理由が解消されていない点をもって下記の拒絶査定がなされた。

<拒絶理由通知>
「 理 由

1.・・(中略)・・
2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

<理由1について>
・請求項1、2
・引用文献等1
・備考
引用文献1には、ウエハを研磨する際にCMP装置で循環使用されるフュームドシリカ系スラリにpH調整のために加える添加剤として、アミン系物質,四級アンモニウム水酸化物等のアルカリ性剤が開示されている(請求項1、段落[0008]?[0012]等を参照)。

<理由2について>
・請求項1?4
・引用文献等1?4
・備考
引用文献2?4に開示されているように(引用文献2の請求項1、段落[0021]、[0069]表1中の実施例23等;引用文献3の請求項1、第6頁28行?第7頁18行、第15頁の表1中の実施例12等;引用文献4の請求項1、段落[0018]、[0049]表1中の実施例19等を参照)、シリコンウエハ用研磨組成物に配合されるアルカリ性剤として、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、エチルアミン(EA)、ジエチルアミン(DEA)、トリエチルアミン(TEA)、無水ピペラジン(PIZ)、ピペラジン・六水和物等が使用されることは、広く知られているところであり、上記引用文献1に開示のアミン系物質,四級アンモニウム水酸化物等のアルカリ性剤として、上記水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、エチルアミン(EA)、ジエチルアミン(DEA)、トリエチルアミン(TEA)、無水ピペラジン(PIZ)、ピペラジン・六水和物等から選択使用することに格別の困難性はない。
・・(中略)・・
引 用 文 献 等 一 覧
1.特開平11-10540号公報
2.特開2004-128089号公報
3.国際公開第2004/042812号
4.特開2004-128069号公報」

<拒絶査定>
「この出願については、平成22年 5月26日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書並びに手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
出願人は、意見書において『引用文献1に記載されているアルカリ性剤としては、各種アミンなどが例示されているのみ、四級アンモニウム水酸化物に加えてさらに別のアミン化合物の少なくとも2種類のアミン化合物を含むことは記載されていない。本願発明では、アルカリ性剤はpH調整手段としてではなく、研磨特性を安定維持させる添加剤である点においても引用発明1と同一ではない。また、引用文献2に「アルカリ化合物は、シリコンウエハ表面を腐食又はエッチングすることにより研磨を促進するために含有される」(段落番号0021)と記載されているように、引用発明2乃至3において使用されるアルカリ化合物は、アルカリエッチングを行うために添加されるものであり、引用発明1のpH調整剤とは全く異なる目的で添加されるものであるから、異なる目的で2種類以上のアルカリ化合物が添加される引用発明2乃至4を、引用発明1に適用することについて、各引用文献中に動機付けられているとは到底言えない。』旨主張している。
しかしながら、引用文献1には、その段落[0012]に、pHを調整するために水酸化カリウム,アンモニア,アミン系物質,四級アンモニウム水酸化物等のアルカリ性剤が用いられる旨記載されているが、それらが、単独でのみ用いられる旨の記載はない。
また、引用文献1には、その段落[0003]に「いずれによせ、シリカ等の砥粒の濃度やPHが所定値を維持することで、所期の研磨レートを達成し得るものである。」と記載されているように、引用文献1に開示のフュームドシリカ系スラリにおいて用いられるアルカリ剤は、所期の研磨レートを達成するためにも用いられていることは明らかである。
ところで、引用文献2には、その段落[0021]に「成分(c)のアルカリ化合物は、シリコンウエハ表面を腐食又はエッチングすることにより、研磨を促進するために含有される。」と記載されているが、段落[0033]には「研磨用組成物のpHは、好ましくは9?12、より好ましくは10?11である。研磨用組成物のpHが前記範囲未満では、成分(c)の含有量が低いために十分な研磨速度が得られない。一方、研磨用組成物のpHが前記範囲を超えると、研磨用組成物はゲル化しやすくなる。」とも記載されており、アルカリ剤が、pH調整剤としても用いられていることは明らかである。
してみると、引用文献1に開示のフュームドシリカ系スラリにおいて用いられるアルカリ剤の使用目的と、引用文献2?4に開示の研磨用組成物において用いられるアルカリ剤の使用目的とには、実質的な違いがないことは明らかである。
そして、引用文献2?4に開示されているように(引用文献2の請求項1、段落[0021]、[0069]表1中の実施例23等;引用文献3の請求項1、第6頁28行?第7頁18行、第15頁の表1中の実施例12等;引用文献4の請求項1、段落[0018]、[0049]表1中の実施例19等を参照)、シリコンウエハ用研磨組成物に配合されるアルカリ性剤として、アンモニア(A)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、エチルアミン(EA)、ジエチルアミン(DEA)、トリエチルアミン(TEA)、無水ピペラジン(PIZ)、ピペラジン・六水和物等が単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用されることは、広く知られているところであり、具体的に、水酸化テトラメチルアンモニウム単独で、又は、水酸化テトラメチルアンモニウムと他のアミン化合物の1種又は2種以上と組み合わされたアルカリ剤として用いられることも広く知られているところであるから、上記引用文献1に開示のフュームドシリカ系スラリにおけるアルカリ剤として、水酸化テトラメチルアンモニウム単独で、又は、水酸化テトラメチルアンモニウムと他のアミン化合物の1種又は2種以上とを組み合わせたアルカリ剤を用いることに格別の困難性はないし、また、アルカリ剤として、水酸化テトラメチルアンモニウムが単独で用いられた場合と、他のアミン化合物の1種又は2種以上と併用して用いられた場合とで、その効果に格別の差異が生じることも、本願明細書の記載、図3?6の記載等からは確認できない。
したがって、上記出願人の主張を採用することができないので、先の拒絶理由通知書に記載の理由2を撤回しない。
-------------------------------
引 用 文 献 等
1.特開平11-010540号公報
2.特開2004-128089号公報
3.国際公開第2004/042812号
4.特開2004-128069号公報」

3.当審の判断
当審は、
本願は、下記の理由により、特許法第49条第2号の規定に該当し、拒絶すべきものである、
と判断する。

理由:この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(1)引用例に記載された事項及び発明
ここで、上記拒絶理由通知及び拒絶査定で引用された引用文献1ないし4は、それぞれ、上記第2の補正の却下の決定のII.3.(2)で引用した引用例1ないし4である。
したがって、上記引用例1ないし4には、上記第2のII.3.(2)ア.(ア)ないし(エ)で摘示した各事項が、それぞれ記載されており、上記引用例1には、上記第2のII.3.(2)イ.(ア)に示した「引用発明」が記載されているものと認められる。

(2)本願発明についての検討

ア.対比
本願発明と上記引用発明とを対比すると、上記第2のII.3.(2)イ.(イ)(a)で摘示した相違点1に加えて、下記相違点2’で相違し、その余で一致することが明らかである。
<相違点2’>:「研磨組成物用添加剤」につき、本願発明では、「2種以上のアミン化合物」が含まれ、「アミン化合物は、第4級アンモニウム塩を含む」ものであるのに対して、引用発明では、「アルカリ性剤」につき「2種以上のアミン化合物」が含まれ、「アミン化合物は、第4級アンモニウム塩を含む」ものであることが特定されていない点

イ.各相違点に係る検討
まず、上記相違点1については、上記第2のII.3.(2)イ.(イ)(b)(b-1)で説示した理由と同一の理由により、当業者が適宜なし得ることである。
次に、上記相違点2’について検討すると、上記引用例2ないし4にもそれぞれ記載されている(摘示(イ-3)ないし(イ-5)、(ウ-3)ないし(ウ-5)及び(エ-4)ないし(エ-6)参照)とおり、シリコンウエハを研磨するための研磨剤組成物において、研磨剤と共にウエハを化学的にエッチングし、研磨速度を上げるための研磨促進剤であるアルカリ性剤として、第4級アンモニウム塩である水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)と(無水)ピペラジン(PIZ)などの他のアミン化合物との組合せなどの2種以上のアミン系アルカリ化合物の混合物を使用することは、当業者の周知技術であるものと認められる(特に摘示(イ-5)の「実施例23」、摘示(ウ-5)の「実施例12」及び摘示(エ-6)の「実施例19」など参照)。
また、上記引用例1ないし4にもそれぞれ記載されている(摘示(ア-4)、(イ-3)、(イ-4)、(ウ-3)、(ウ-4)、(エ-4)及び(エ-5)参照)とおり、アルカリ性剤を必要十分な量で添加し、研磨剤組成物のpHを例えば10?11程度にすることにより、研磨速度、すなわち研磨レートを上げることができるとともに、アルカリ性剤の添加量が少なすぎてpHが低くなると研磨速度が低下し、アルカリ性剤の添加量が多すぎてpHが高くなりすぎると、ゲル化などの研磨剤組成物の安定性低下につながる傾向にあることは、本願出願前の当業者の技術常識であるものと認められる。
さらに、上記引用例1に記載されている(摘示(ア-4)の【0016】参照)とおり、研磨剤組成物のpH、粘度、(研磨剤)濃度などが使用前後において同一となるように使用後処理(リサイクル処理)した場合に研磨速度のばらつき防止が図られる点も、当業者の技術常識であるものと認められる。
してみると、引用発明において、研磨レートを上げるとともに、その研磨レートのばらつきを防止することを意図して、上記当業者の周知技術及び技術常識に基づき、研磨促進剤であるアルカリ性剤として、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)と(無水)ピペラジン(PIZ)との組合せなどの第4級アンモニウム塩を含む2種以上のアミン化合物(の混合物)を適宜量で添加使用することは、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、上記相違点2’についても、当業者が適宜なし得ることである。

ウ.本願発明の効果について
本願発明の効果につき検討すると、上記第2のII.3.(2)イ.(イ)(b)(b-2)でも説示したとおり、アルカリ性剤を必要十分な量で添加し、研磨剤組成物のpHを例えば10?11程度にすることにより、研磨速度、すなわち研磨レートを上げることができるとともに、アルカリ性剤の添加量が少なすぎてpHが低くなると研磨速度が低下し、アルカリ性剤の添加量が多すぎてpHが高くなりすぎると、ゲル化などの研磨剤組成物の安定性低下につながる傾向にあること及び研磨剤組成物のpH、粘度、(研磨剤)濃度などが使用前後において同一となるように使用後処理(リサイクル処理)した場合に研磨速度のばらつき防止が図られることは、いずれも本願出願前の当業者の技術常識であるとともに、シリコンウエハを研磨するための研磨剤組成物において、研磨剤と共にウエハを化学的にエッチングし、研磨速度を上げるための研磨促進剤であるアルカリ性剤として、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)なる第4級アンモニウム塩と(無水)ピペラジン(PIZ)などの他のアミン化合物との組合せなどの2種以上のアミン系アルカリ化合物の混合物を使用することは、当業者の周知技術であるから、引用発明において、当該周知技術及び技術常識に基づき、研磨促進剤であるアルカリ性剤として、第4級アンモニウム塩を含む2種以上のアミン化合物(の混合物)をpH11程度となるような適宜量で添加使用した場合、研磨レートを上げるとともに、その研磨レートのばらつきを防止することができるであろうことは、当業者において予期し得ることである。
また、本願の明細書の実施例に係る記載及び【図3】並びに【図4】の記載を検討すると、【図3】の実施例1及び実施例2(なお、この実施例2はTMAHのみを使用したものであるから、本願発明の実施例であるとは認められない。)に係る記載の対比から、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)と(無水)ピペラジン(PIZ)との組合せを含む2種以上のアミン化合物(の混合物)を使用した実施例1の場合が、TMAHのみを使用した実施例2の場合に比して、研磨レートのばらつきにつき同等で、研磨レートにつき多少大きいものと認められるが、同条件の研磨試験によるものと認められる【図4】の記載からみて、実施例1のものでも5バッチ平均研磨レートが大きく変化しており(実施例1の第1バッチから第5バッチまでの平均研磨レートは、0.65μm/min程度であるものと認められる。)、【図3】における実施例1と実施例2との研磨レートの差異は、誤差というべき範囲内にあるものということができ、実質的な効果上の差異であるものとは認められないから、本願発明に係る「第4級アンモニウム塩を含む2種以上のアミン化合物(の混合物)を使用した」場合に、アミン化合物を単独使用した場合に比して、特段の顕著な効果を奏しているものとは認められない。
してみると、本願発明の効果は、引用発明と上記周知技術及び技術常識とを組み合わせた場合のものに比して、当業者が予期し得ない程度の格別顕著なものということができない。

エ.検討のまとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び当業者の周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.当審の判断のまとめ
以上のとおり、本願発明は、その出願前に当業者が日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶すべきものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願は、その余について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-28 
結審通知日 2012-10-05 
審決日 2012-10-16 
出願番号 特願2005-249958(P2005-249958)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C09K)
P 1 8・ 575- Z (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大熊 幸治  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 橋本 栄和
小出 直也
発明の名称 研磨組成物用添加剤  
代理人 藤本 昇  
代理人 中谷 寛昭  
代理人 小山 雄一  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ