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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1266974
審判番号 不服2011-17726  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-16 
確定日 2012-11-28 
事件の表示 特願2006-503735「高性能カタディオプトリックイメージングシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月10日国際公開、WO2004/077104、平成18年 8月17日国内公表、特表2006-518876〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、2004年2月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年2月21日、2003年5月7日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年1月18日に拒絶理由が通知され、平成23年4月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
その後、前置報告書の内容について、審判請求人の意見を求めるために平成23年11月24日付けで審尋がなされ、平成24年3月27日に当該審尋に対する回答書が提出された。

第2 原査定の理由
1.拒絶査定
本願に対する上記拒絶査定の理由は「この出願については、平成22年 1月18日付け拒絶理由通知書に記載した理由2-5によって、拒絶をすべきものです。」というものであって、備考欄には理由4及び5について、それぞれ、以下のとおり記載されている。
・理由4
出願人は意見書において、本願明細書の表1?9に明示されたレンズを用い、本願明細書に記載の視野サイズを0.28mm、0.4mmから1.0mmになるように適宜選択することによって、当業者が本願発明を実施することは可能である旨を主張している。
しかしながら、理由4は実施可能要件ではなく委任省令要件に関するものであり、従来技術にはどのような未解決の課題があったのか、そして本願発明はどのような手段によりその課題を解決したのかが明らかでないというものである。補正後の請求項に記載の「全てのフォーカシングレンズ、フィールドレンズ、及びマンジンミラー配列のうちで最大の素子のレンズ直径の視野サイズに対する比率が75対1よりも小さく」、「各レンズの直径は約25ミリメートルより小さい」は、本願発明が達成すべき結果であって解決手段ではなく、このような結果は具体的にどのような手段を用いたことで実現できたのか(従来技術では何故実現できず、本願発明では何故実現できたのか)が依然として明細書の記載から明らかではない。
したがって、上記主張は当を得たものではなく採用することができない。
・理由5
・全請求項に係る発明について
出願人は意見書において、引用文献1乃至4のいずれにも、補正後の請求項に記載の「前記対物レンズは視野サイズを有し、全てのフォーカシングレンズ、フィールドレンズ、及びマンジンミラー配列のうちで最大の素子のレンズ直径の視野サイズに対する比率が75対1よりも小さく」、「各レンズの直径は約25ミリメートルより小さい」などの構成について何ら開示されておらず、補正後の本願請求項に係る発明は、引用文献1乃至4に記載の発明およびこれらの組み合わせから、当業者が容易に想到し得ない旨を主張している。
これを検討するに、本願の請求項1に係る発明は、最大の素子のレンズ直径はなるべく小さく、対物レンズの視野サイズはなるべく大きい方が良いということを単に数値により表現して構成要件としただけのものであって、このような特性を実現するための具体的手段は何ら有していない。また、その他の請求項に係る発明の特定事項も上記特性を実現するための具体的手段ではない。上記特性を実現する具体的手段に想到することに困難性はあり得ても、上記特性が望ましいということに想到すること自体には何らの困難性も認められない。
したがって、前記主張は採用することができない。

2.拒絶理由通知書
原査定の理由となった上記拒絶理由通知書の理由4及び5は以下のとおりのものである。
理由4.この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由5.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【理由4】
本願明細書の記載からは、従来、「全てのフォーカシングレンズ、フィールドレンズ、及びマンジンミラー配列のうちで最大の素子のレンズ直径の視野サイズに対する比率が100対1よりも小さくする」ことが何故できなかったのか、本願発明では何故それが可能となったのかが明らかではないので、根拠となる明細書の記載箇所を明確に示した上で、詳細に説明されたい。
また、本願請求項に特定されたその他の事項についても、従来満足し得ず、本願発明により初めて満足させることができた特性があれば、その理由を上記と同様、詳細に説明されたい。
【理由5】
・請求項1-2、4、11-14
・引用文献1(当審注:後述する引用例1)
引用文献1の【0011】及び図1には、フォーカスレンズ群11にて中間像13を形成し、フィールドレンズ群15を中間像13の近くに設置し、更に、反射と屈折の両特性を共に具備して成る画像光学要素群17があって中間像13からの光線を通過せしめ最終画像19が形成される様にした広帯域遠紫外線に於ける応用を意図している画像システムが記載されている。また、【0023】及び図4には、図1の画像処理システムを発展させて、顕微鏡の対物レンズ系に筒型形状を使う設計の例が示され、紫外線光源61からの光は図1の対物レンズを通して、観察試料表面を照射することが記載されている。
そして、対物レンズの小型化のために、最大の素子のレンズ直径をなるべく小さくすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(以下省略)

第3 当審の判断
1.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年8月16日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「約285?320ナノメートルの範囲の波長を有する光エネルギーとともに使用するように利用される対物レンズであって、
前記光エネルギーを受け取るように構成された少なくとも一つのフォーカシングレンズを備えるフォーカシングレンズ群と、
前記フォーカシングレンズ群からフォーカスされた光エネルギーを受け取り中間光エネルギーを提供するように方向付けられたフィールドレンズと、
前記中間光エネルギーを前記フィールドレンズから受け取り且つ制御された光エネルギーを形成するように位置されたマンジンミラー配列と、
を備えており、
前記対物レンズは視野サイズを有し、全てのフォーカシングレンズ、フィールドレンズ、及びマンジンミラー配列のうちで最大の素子のレンズ直径の視野サイズに対する比率が75対1よりも小さく、各レンズの直径は約25ミリメートルより小さい、対物レンズ。」

2.理由4について
原審の拒絶理由4は、特許法施行規則第24条の2の「特許法第三十6条第4項の経済産業省で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」という規定要件を満たしていない、というものである。
発明とは新しい技術思想の創作であるから、本願の発明の詳細な説明は、本願発明が出願時の技術水準に照らしてどのような技術上の意義を有するかが理解できるように記載されている必要がある。
そして、発明の技術上の意義を理解するためには、どのような未解決の課題を、どのようにして解決したのかを記載するのが最も一般的である。
以下、本願発明について、上記規定要件を満たしているかどうかについて検討する。

(1)本願発明の特定構成
本願発明のうちの「約285?320ナノメートルの範囲の波長を有する光エネルギーとともに使用するように利用される対物レンズであって、
前記光エネルギーを受け取るように構成された少なくとも一つのフォーカシングレンズを備えるフォーカシングレンズ群と、
前記フォーカシングレンズ群からフォーカスされた光エネルギーを受け取り中間光エネルギーを提供するように方向付けられたフィールドレンズと、
前記中間光エネルギーを前記フィールドレンズから受け取り且つ制御された光エネルギーを形成するように位置されたマンジンミラー配列と、
を備えて」いる構成は、例えば後述する引用例1にも見られるとおり、すでに広く知られたものであるから、出願時の技術水準に照らして新しい技術思想の創作であるとはいえない。
したがって、本願発明が出願時の技術水準に照らして技術上の意義を有するとすれば、それは「前記対物レンズは視野サイズを有し、全てのフォーカシングレンズ、フィールドレンズ、及びマンジンミラー配列のうちで最大の素子のレンズ直径の視野サイズに対する比率が75対1よりも小さく、各レンズの直径は約25ミリメートルより小さい」という構成(以下「特定構成」という。)の有する技術上の意義にほかならない。

(2)特定構成に関する本願の発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明(平成22年7月26日付けの手続補正書参照)には、上記特定構成に関して以下の記載がある。なお、下線は当審で付与。
(a)「【0008】
大きな視野サイズは、検査中に明瞭な利点を提供することができる。一つの利点は、所与の時間期間に試料のより大きな範囲を走査する能力であり、それによって、短い時間期間内に大きな範囲を走査する能力として測定されるスループットを増加させる。このタイプの環境における典型的な設計の比較的大きな視野サイズは、200倍のイメージング倍率を使用してほぼ0.2mm又はそれより大きいことができて、対角40mmのセンサをサポートする。小さな対物レンズもまた、小さい対物レンズが標準的な顕微鏡対物レンズとともに使用され且つ標準的な顕微鏡タレットにフィットすることができるので、望まれることができる。標準的な対物レンズフランジから対象物までの長さは45mmである一方、ある対物レンズは、100mmを越える長さを有する100mmよりも大きいレンズ直径を使用する。その他のより小さなカタディオプトリック対物レンズが製造されているが、依然として典型的には、60mmを越えるレンズ直径及び60mmを越える長さを有している。これらの小さな対物レンズのあるものは、0.75に限定されたNA及び0.12mmに限定された視野サイズを有し、帯域幅は10nmよりも小さい。そのような設計は、典型的には、性能を改善する努力として、カタディオプトリック群の中に加えられたレンズを有するシュワルツチャイルド・アプローチを使用する。作動距離は、典型的には8mmより大きい。この設計アプローチは、中央部の不明瞭さの増加を犠牲として対物レンズ直径をいくらか減らすことができるが、対物レンズの性能を顕著に劣化させる。」
(b)「【0010】
以前に知られていたシステムに存在するこれらの欠点を克服するシステムを提供し、且つ、ここで記述されたこれら負の局面を提示する装置に比べて改良された機能性を有する光学的検査システム設計を提供することは、有益である。」
(c)「【0089】
図3に描かれている本発明の局面に対するレンズの構成が、表1に示されている。
・・・
【0095】
図3に示されているように、この対物レンズは直径26mmを有し、これは、この波長範囲で以前に使用されてきた対物レンズよりも顕著に小さい。この対物レンズの小さなサイズは、対物レンズの性能特性を考慮すると特に有益である。対物レンズは、45mmのフランジ・対象間距離で標準顕微鏡タレットに搭載されることができる。対物レンズ1401、フランジ1402、及び顕微鏡1403の概念的な図(一定の縮尺ではない)が、図14に描かれている。前述の状況におけるフランジは、試料1404から約45mmである。対物レンズは、約0.90の開口数、約0.4mmの視野サイズをサポートし、約285?313nmからの補正された帯域幅、および約0.038波より小さい多色波面誤差を有する。図2に示された設計の対物レンズ、図3の設計、及び標準顕微鏡対物レンズの間のサイズ比較は、図4に示されている。
【0096】
任意の光学設計において真実であるように、対物レンズ又は光学設計の所望の用途に依存して、性能特性を改善するためには、あるトレードオフがなされ得る。例えば、用途に応じて、帯域幅、視野サイズ、開口数、及び/又は対物レンズサイズを犠牲にして、前述の性能特性の一つを向上することが可能である。例えば、より低い又は高いNAのための最適化が可能である。NAを減らすと、製造公差及び対物レンズの外径を減らすことができる。より低いNAの設計は、より大きい視野サイズ及びより大きい帯域幅を提供することができる。同じ性能で且つより少ない光学素子を有するより低いNAの設計もまた可能である。より高いNAのための最適化もまた可能である。より高いNAのための設計の最適化は、一般的に視野サイズ又は帯域幅を制限し、わずかに増加した直径の対物レンズ素子を必要とし得る。
【0097】
図3の設計は、直径0.4mmの視野サイズを有している。そのような比較的大きな視野サイズは、大きな高速センサをサポートする。例えば、200倍のイメージング倍率を使用すると、対角80mmを有するセンサがサポートされることができる。図3の設計はまた、より大きなレンズ直径を許容し且つ素子を再最適化することによって、より大きな視野サイズまで拡張されることができ、再び当業者の範囲内のタスクである。」
(d)「【0108】
本設計の代替的な局面は、帯域幅が増加した対物レンズを提供する。設計のこの局面は、図6に示されている。図6の設計と図3のものとの間の主な相違点は、帯域幅と視野サイズとの間のトレードオフである。図6の設計の対物レンズは、266?320nmのより広い帯域幅に渡って補正されるが、図3の設計の0.4mmに比べて約0.28mmという比較的小さな視野を有する。図6の設計は、約0.90という高い開口数を維持している。図6の設計に対する最悪のケースの多色波面誤差は、約0.036波である。
・・・
【0111】
図6に示された設計は、図3の設計に関して記述された利点及びフレキシビリティを有する。この実施形態に対するレンズ構成は、表2に示されている。」
(e)「【0114】
これらの残存収差の補正は、視野サイズをさらに増加することができ、又は視野サイズを維持しながら帯域幅を増加することができる。図7Aの設計は、図3の設計においてと同じ約0.4mmの視野サイズを維持し、且つ再フォーカスの必要なしに266?365nmをカバーするように帯域幅を拡張する。図7Aの設計に対する最悪のケースの多色波面誤差は、約0.036波である。
・・・
【0116】
図7Aに示された本発明の局面に対するレンズ構成は、表3に示されている。」
(f)「【0119】
本設計の付加的な局面は、チューブレンズを使用して対物レンズの残存収差を補正する。これらの残存収差の補正は、視野サイズをさらに増加することができ、又は視野サイズを維持しながら帯域幅を増加することができる。残存収差は、主に歪み及び高次の水平カラーの色変動である。図7Bの設計は、図3の設計においてと同じ約0.4mmの視野サイズを維持し、且つ再フォーカスの必要なしに266?405nmをカバーするように帯域幅を拡張する。図7Bの設計に対する最悪のケースの多色波面誤差は、約0.041波である。
【0120】
図7Bの設計は、光を収集する対物レンズ751と残存収差を補正するチューブレンズ753とから構成される。レンズ752のセットが、性能を向上するために使用され得る。図7Aの設計を越える付加的な帯域幅を達成するために、図7Bの対物レンズ及びチューブレンズは、部分的に一緒に最適化される。対物レンズ及びチューブレンズの部分的に組み合わされた最適化は、限定的なオフ軸の水平カラー及び歪みの更なる補正を可能にする。チューブレンズは、図7Aの設計と同じ様式で使用されることができる外部瞳孔754を形成する。図7Bに示された設計はまた、照明及び自動焦点光を折り曲げるために使用されることができるオプションのビームスプリッタ素子754も示している。図7Bに示された本発明の局面に対するレンズ構成は、表4に示されている。
・・・
【0122】
設計スペクトルは266?365nmに制約され、0.5mmの視野サイズに再最適化されることができる。図7Bのチューブレンズ設計は溶融シリカ及びフッ化カルシウムのみを使用し、図7Aの設計について示された再最適化に対するフレキシビリティを全て有している。」
(g)「【0124】
現在の設計の代替的な局面は、視野サイズが増加した対物レンズである。設計のこの局面は、図7Cに示されている。図7Cの設計と図3のそれとの間の主な相違点は、0.4mmから1.0mmへの視野サイズの増加、及び25mmから58mmへのレンズ直径の増加である。対照的に、この視野直径は、図2の設計と同じである。この設計の最大レンズ直径は、図2の設計よりもはるかに小さい。図7Cの設計の対物レンズは、285?320nmまでの帯域幅に渡って補正され、0.90の高い開口数を維持し、図7Cの設計に対する最悪のケースの多色波面誤差は約0.033波である。」
(h)「【0129】
この設計のさらなる局面は、図8?図11に示されており、図8は、約311?315nmの波長の存在下で実行されることができる設計であり、約26mmの直径、約0.28mmの視野サイズ、及び約0.90のNAを有している。この設計に対するレンズ構成は、表6に示されている。」
(i)「【0131】
図9は、約26mmの直径、約297?313nmの間の波長、及び約0.90のNAを有している約0.28mmの視野設計である。この設計に対するレンズ構成は、表7に示されている。」
(j)「【0133】
図10は、約26mmの直径、約297?313nmの間の波長、及び約0.90のNAを有している約0.4mmの視野設計である。この設計に対するレンズ構成は、表8に示されている。」
(k)「【0135】
図11は、約26mmの直径、約266?313nmの間の波長、約0.28mmの視野サイズ、及び約0.90のNAを有している広帯域設計である。この設計に対するレンズ構成は、表9に示されている。」
(l)「【0137】
本発明は、以前に知られているカタディオプトリック対物レンズと同様の又はそれよりもよい性能を、より小さい最大レンズ直径で達成することができる。これらの設計で最大の直径を有するレンズは、典型的には非常に湾曲したマンジンミラー素子であり、対象物又は試料から2番目の光学素子である。」

(3)特定構成の技術上の意義
請求人の主張(上記審判請求書「【記載不備の指摘事項に対する対処】」の「(i)理由4について:」参照)によれば、本願発明の解決しようとする課題は『標本の大きな領域を短時間内で走査し、且つ、小径の要素が標準的な顕微鏡観察システムに容易に適用可能であるため、大きな視野サイズを有する小さなレンズが望まれている』というものである。
そのための解決手段が上記特定構成ということなる。
一方、本願の発明の詳細な説明の記載(上記摘記事項(c)参照)や当業者の技術常識に基けば、本願の優先日以前において「帯域幅、視野サイズ、開口数、及び/又は対物レンズサイズ」は互いにトレードオフの関係にあり、用途等に応じて、適宜最適化が可能であることが広く知られている。
すなわち、本願発明の属する技術分野において「視野サイズ及び/又は対物レンズサイズ」を用途等に応じて最適化することはすでに広く行われていることであるから、請求人の主張する上記課題は未解決のものであったとはいえない。
また、上記特定構成は「視野サイズ及び/又は対物レンズサイズ」を最適化した結果そのものであるから、結局、本願発明は、「視野サイズ及び/又は対物レンズサイズ」を最適化するために「視野サイズ及び/又は対物レンズサイズ」を最適化したものということになり、上記特定構成の技術上の意義は、意味をなさないことになる。
さらに、上記各摘記事項を含む本願の発明の詳細な説明には、上記特定構成の「レンズ直径の視野サイズに対する比率」の有する技術上の意義についても、それが「75対1よりも小さい」ことの意義(従来技術に対する優位性とそれを実現可能とした手段)についても、「各レンズの直径が25ミリメートルより小さい」ことの意義(どうしてそれ以上ではいけないのか)についても、なんら記載されていない。しかも、それらの事項が、本願の優先日時点で自明の事項であったとも認められない。(なお、「各レンズの直径が25ミリメートルより小さい」ことの意義がレンズの直径を25ミリメートルより小さく構成できるという主張であるとすれば、それは結果を目的とするものであって、上記と同じく意味をなさない。)
もっとも、明示的な記載がなくとも、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基いて、当業者が、発明が解決しようとする課題を理解することができる場合もあり得るが、本願にはそのような事情も認められない。

(4)小括
してみると、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号が委任する特許法施行規則第24条の2の規定する要件を満たしていない。

3.理由5について
(1)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平10-177139号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、広帯域スペクトルの紫外線(UV)画像を処理する光学システムに関わる。・・・」
(1b)「【0011】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施形態を示しており、カタディオプトリック(反射と屈折の両特性を有する)を共に具備して成る画像システムであって、特に広帯域遠紫外線に於ける応用を意図している。先ず、フォーカス(焦点形成)レンズ群11にて構成され、中間像13を形成する。そして、フィールドレンズ群15を中間像13の近くに設置して、歪みの為に発生する色収差の補正を実行する。更に、反射と屈折の両特性を共に具備して成る画像光学要素群17があって中間像13からの光線を通過せしめ最終画像19が形成される様にする。この画像 システムは以下に述べる点で最適化されている。その詳細を述べると、単色光に見られるSeidel氏の光学的歪み、長軸並びに横軸方向の光学的歪みと収差、更に単色光の光学的歪み等々が全て重なって原因となる色収差の全てを補正且つ修正することが出来る。この系が機能するスペクトル範囲は、遠紫外域にわたって大変広く、少なくとも0.20ミクロンから0.29ミクロンを包含する。但し、場合によってはもっと広範囲にわたって機能し、そのスペクトル域は0.20ミクロンから0.40ミクロンを包含する。・・・本発明に依る反射と屈折の両特性を共に具備して成る画像システムは、種々の紫外線域の画像処理装置に応用可能である。二、三例を示すと、紫外線顕微鏡用対物レンズ、ウェーハ外観検査装置に於ける表面散乱光に対する其の集光器、或いは集積回路製造に使う紫外線フォトリソグラフ工程に於ける紫外線マスクパターン投影の為の光学系等々がある。」
(1c)「【0012】図1中の焦点設定レンズ群11は、各21から27迄の7つのレンズ単体が構成する。その内21と22の2つのレンズは、他の23から27迄の5つのレンズとは、相当の距離を置いて設置する。この焦点レンズ群でレンズ21と22の対を、わざわざ残りの5つのレンズ群23から27迄(これ等5つが、主になって焦点設定サブグループを構成している)と離間して設置する状況をここに特記する。その離間距離は、23から27迄の5つの全レンズの厚さ総計の半分程度に設定する。例えば、要素レンズ群23から27は、空間距離60mmに分布して設置させる。そして、要素レンズ22は、要素レンズ23からの距離30乃至60mmの点に設置する。上記レンズの実際の設定位置は、全体的要素を勘案した設計値でもって決定する。さて、レンズ21と22は、対でもって第零次の色収差補正と単色光的な画像歪の補正に有効である。これでもって、コマ収差と非点収差が原因で発生する色収差が補正出来る。迎角(field angle) に依ってもたらされる、この対になった2つのレンズ上の光軸のズレは、これ等レンズを相対的に遠くに設置する時に最大値になる。ズレは最大になるが、それでもって、非点収差に依る色収差の補正を実行する上で最大の効果が出る。図1に於て、次にこの焦点レンズ群の内の5つのレンズ23から27迄は、焦点形成の為の主たる(サブグループ)レンズ群を構成し、其の内訳は、1つの厚い凹凸両面を持った皿状の(全体として負、即ち凹レンズとして機能する)レンズ23と、それに対向して強い曲率で凹凸両面を有する皿状の(全体として負、即ち凹レンズ機能の)レンズ24、強い曲率の両面が凸状のレンズ25、強い曲率で凹凸両面を有する皿状の(全体として正、即ち凸レンズ機能の)レンズ26、それに対して逆を向き、強い曲率で凹凸両面を有する皿状の(全体として弱い正、或いは弱い負、即ち弱い凸、或いは弱い凹レンズ機能の)レンズ27でもって構成する。勿論、上記レンズ23から27の細かな内訳の内容を変えても良い。フォーカス(サブグループレンズ)群は中間像を結像する。当然であるが、レンズ面の曲率を選択して、単色光に於ける歪を最小にするのが良い。更に、対になっている21と22の選定に於て、歪が光源の色、即ち波長依存性が最小に成るように設計するのが良い。」
(1d)「【0013】フィールドレンズ群15は、図2に示した。これは通常、色収差を補正したトリプレット(三つ組み)でもって構築する。勿論、2つで構成するダブレット(対)であっても良い。素材は、熔融石英及びCaF_(2)ガラスを使う。他に遠紫外で透明な屈折体は、MgF_(2)、SrF_(2)、LaF_(3)それからLiF を成分とするガラス或いは、これ等 の混合物が使用出来よう。しかし、注意すべきは、これ等の一部の素材は完 全に非晶体でないと複屈折性を有することである。完全に非晶体でないということは、ミクロに見て結晶性を有することを意味する。遠紫外を透過する2つ材料である熔融石英とCaF2ガラスに於て、光分散に着目すると、遠紫外域で両者の分散特性はそれ程変わらないことが解る。一方、フィールドレンズ群15の各要素はそれぞれ大きな硬度を有する。三つ組みレンズ群15の内容は、例えば皿状の石英凹(負)レンズ31、両凸面(正)CaF_(2)レンズ33、及び熔融石英製で両凹面(負)レンズ35で構成し、全てをセメントで接着する。この組合わせでの最適設計を実施すると、中間像13を三つ組みレンズ群15の内部に結像することが出来る。一方に於て、図3で見られる様に、色収差を補正するフィールドレンズ群の構成を次の様にすることが出来る。その組合わせは、2つの熔融石英に依る皿状凹レンズ51と53を少々(約1mm程)の距離を置いて対面させて設置し、続けて両凸面(正)CaF_(2)レンズ55を、2番目の両凸面(正)CaF_(2)レンズ53の近傍に隣接して置く。上記の第2の組合わせでの最適設計を実施すると、中間像13を三つ組みレンズ群15の外部であって、CaF_(2)レンズを越えて、その向う側に結像させることが出来る。これ等の実施形態に於てどちらの場合も、フィールドレンズ群15の設計に関して、各レンズの表面曲率と設置位置を調整して残っている高次(第2、第3次)の長軸並びに横軸方向の色収差を補正することが可能である。第1次色収差の補正は主としてレンズ自体で実行することが出来て、実際に上の例では、反射と屈折の両特性を共に具備して成るレンズグループ17と、フォーカスレンズ群11が、その作用を有する。さて、フィールドレンズ群15に於て2つ或いはそれ以上の屈折特性を有する素材を使うことを考えよう。その実例は、熔融石英と弗化カルシューム(CaF_(2))ガラスがあるが、単一素材を用いたフィールドレンズ群が長軸方向の色収差を補正する事実は、公知例で知られているが、本発明の場合は、更に加えて横軸方向の高次色収差をも完全に補正することを得る。」
(1e)「【0015】図1の反射と屈折の両特性を共に具備して成る画像システムに於て、その反射屈折両性レンズ群17を構成するのは、第1の光学要素と第2の光学要素である。第1の光学要素は、熔融石英製皿状レンズ39にて構築し、この裏側の凹面は反射特性を持たせる目的で塗布物質41を塗る。次に、第2の光学要素は、第1の石英製レンズ43にて構築し、この裏側の凹面は反射特性を持たせる目的で塗布物質45を塗る。(反射屈折両性レンズ群17の2つのレンズ39と43は、その前面が互いに向き合う様にセットする。)・・・」
(1f)「【0018】中間像からの光線は、第1レンズ39中の光学的開口37を経由し、更に第2レンズ43本体を通過するが、此処で平坦な或いは平坦に近いレンズ43の後部に設ける反射膜45が形成する鏡の効果で反射が起きるように設定する。次に光線は、再び第1レンズ39を通って後、鏡面41にて反射して逆進し、第1レンズ39本体を通過する。最後に、光線は強い集光性を帯び、第2レンズ43本体内を3度目の通過をする。第1及び第2レンズの曲面とその位置は、フォーカスレンズ群11との関係で長軸並びに横軸方向に於ける第1次色収差補正が達成される様に選定すると好都合である。」
(1g)「【0028】このレンズの長所の一つは、一画面の視野のサイズを大きくすることが出来て、試料上の実寸法で対角線長が0.5mmも可能にする。一方、公知例の狭帯域紫外線用レンズでは、この値が大変に小さくその対角線長が0.1mm程度、或いはそれ以下である。この効果は大きく、視野面積比で見て、少なくとも25倍を意味する。其の結果、ウェーハ表面、レチクル面、或いは同種の観察試料等、如何なるサンプルでも高速度検査を実現している。以前は、完了するのに20 分から30分かかっていた検査時間が、今や1分以内となっている。」

上記各記載を含む引用例1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すると、引用例1には、以下の発明が記載されているものと認められる。

「フォーカスレンズ群(11)にて中間像(13)を形成し、フィールドレンズ群(15)を中間像の近くに設置して、更に、反射と屈折の両特性を共に具備して成る画像光学要素群(17)があって中間像からの光線を通過せしめ最終画像(19)が形成される様にし、そのスペクトル域は0.20ミクロンから0.40ミクロンを包含する、紫外線顕微鏡用対物レンズ。」(以下「引用発明」という。)

(2)対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「そのスペクトル域は0.20ミクロンから0.40ミクロンを包含する、紫外線」、「フォーカスレンズ群」、「中間像」、「フィールドレンズ群」及び「反射と屈折の両特性を共に具備して成る画像光学要素群」は、それぞれ、本願発明の「約285?320ナノメートルの範囲の波長を有する光エネルギー」、「フォーカシングレンズ群」、「フォーカスされた光エネルギー」、「フィールドレンズ」及び「マンジンミラー配列」に相当する。
また、引用発明の対物レンズが特定の視野サイズを有することは明らか(上記摘記事項(1g)参照)である。

したがって両者は、
「約285?320ナノメートルの範囲の波長を有する光エネルギーとともに使用するように利用される対物レンズであって、
前記光エネルギーを受け取るように構成された少なくとも一つのフォーカシングレンズを備えるフォーカシングレンズ群と、
前記フォーカシングレンズ群からフォーカスされた光エネルギーを受け取り中間光エネルギーを提供するように方向付けられたフィールドレンズと、
前記中間光エネルギーを前記フィールドレンズから受け取り且つ制御された光エネルギーを形成するように位置されたマンジンミラー配列と、
を備え、特定の視野サイズを有する対物レンズ。」の点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点)
本願発明は、全てのフォーカシングレンズ、フィールドレンズ、及びマンジンミラー配列のうちで最大の素子のレンズ直径の視野サイズに対する比率が75対1よりも小さく、各レンズの直径は約25ミリメートルより小さいのに対して、引用発明は、そのようなレンズの直径の視野サイズに対する比率及び各レンズの直径が不明な点。

上記相違点について検討する。
上記「第3」の「2.」の「(3)」で述べたとおり、本願発明の属する技術分野において、視野サイズ及び/又は対物レンズサイズは、用途等に応じて適宜最適化が可能であることは広く知られている。
そして、引用発明のレンズの直径の視野サイズに対する比率及び各レンズの直径を上記相違点に係るものとすることに、格別の技術的困難性も阻害要因も見当たらない。
してみると、引用発明に上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得る事項である。

そして、本願発明の作用・効果も引用発明から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

(4)小括
したがって、本願発明は、引用発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願に対する原査定の他の理由について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-28 
結審通知日 2012-07-03 
審決日 2012-07-17 
出願番号 特願2006-503735(P2006-503735)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 536- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 信  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 吉川 陽吾
吉野 公夫
発明の名称 高性能カタディオプトリックイメージングシステム  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  
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