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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) G06F
管理番号 1267037
判定請求番号 判定2012-600017  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2013-01-25 
種別 判定 
判定請求日 2012-06-27 
確定日 2012-12-14 
事件の表示 上記当事者間の特許第4005623号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「携帯電話」は、特許第4005623号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨・手続の経緯
本件判定請求は,平成24年6月27日付けでなされ,同年8月1日付けの当審から請求人への手続補正指令に対して,同年9月10日付けで手続補正がなされ,当審から判定請求書副本及び手続補正書副本を被請求人に送付したところ,被請求人より,同年11月2日付けで答弁書が提出された。
そして,その請求の趣旨は,平成24年9月10日付け手続補正により補正された判定請求書の記載からみて,イ号の説明書に示すシャープ株式会社製造の携帯電話AQUOS PHONE 102SH(当審注:AQUOS PHONEは登録商標)は,特許第4005623号発明(以下,「本件発明」という。)の技術的範囲に属する,との判定を求めたものである。

第2 本件発明
本件発明は,特許第4005623号の明細書(以下,「本件特許明細書」という。)及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであって,これを構成要件に分説すると,次のとおりである。

(A)表示させる枠としてのウィンドウが複数個からなるマルチウィンドウを管理するウィンドウ管理部による管理下でウィンドウを表示するウィンドウ表示システムであって,
(B)メモリと,
(C)前記ウィンドウ管理部による管理下で,表示させる枠としての1個の基本ウィンドウを前記メモリに生成又は獲得する基本ウィンドウ生成手段と,
(D)前記基本ウィンドウに表示させる表示要素の集まりであり,かつ,前記ウィンドウ管理部による管理下では第1ウィンドウに表示されるデータである第1ウィンドウ構造を前記メモリに生成する第1ウィンドウ構造生成手段と,
(E)前記基本ウィンドウに表示させる表示要素の集まりであり,かつ,前記ウィンドウ管理部による管理下では前記第1ウィンドウとは異なる第2ウィンドウに表示されるデータである第2ウィンドウ構造を前記メモリに生成する第2ウィンドウ構造生成手段と,
(F)前記第1及び第2ウィンドウ構造生成手段によって生成された前記第1及び第2ウィンドウ構造のいずれかを前記基本ウィンドウに対応付ける対応付け手段と,
(G)グラフィックメモリを有し,前記対応付け手段によって前記基本ウィンドウに対応付けられた前記メモリ上の前記第1又は第2ウィンドウ構造を,前記ウィンドウ管理部による管理下で,前記基本ウィンドウと共にイメージデータとして前記グラフィックメモリに記録することによって,前記第1又は第2ウィンドウ構造と前記基本ウィンドウとを描画する描画手段と,
(H)前記描画手段を起動させるトリガとしてのイベントを発生する描画イベント発生手段とを備え,
(I)前記対応付け手段は,予め指定したイベントが前記ウィンドウ管理部によって検出されると,前記基本ウィンドウに対応付けるウィンドウ構造を前記第1ウィンドウ構造から前記第2ウィンドウ構造に,又は,前記第2ウィンドウ構造から前記第1ウィンドウ構造に切り替え,
(J)前記描画イベント発生手段は,前記対応付け手段による切り替えが行われると,前記描画手段を起動させるトリガとしてのイベントを発生し,
(K)前記描画イベント発生手段によってイベントが発生されると,前記ウィンドウ管理部によってイベントが検出されて前記基本ウィンドウに渡す調整がされた後に,前記描画手段は,前記対応付け手段による切り替えによって新たに対応付けられた前記第1又は第2ウィンドウ構造を前記基本ウィンドウと共に描画する
(L)ことを特徴とするウィンドウ表示システム。
((A)から(L)は当審で付与した。以下,各構成要件を,それぞれ,「構成要件(A)」等という。)

第3 イ号製品
請求人提出の「イ号の説明書」の記載によると,請求人は,甲第6,7,18,26号証を基に,被請求人は「携帯電話AQUOS PHONE 102SH」を製造販売しており,「携帯電話AQUOS PHONE 102SH」は,ハードウエアとしてタッチパネルの表示装置,CPU,メモリ(ROM,RAM)を備え,Android 2.3(当審注:Androidは登録商標)を搭載している旨,甲第1号証より,Androidはオペレーティングシステム,ミドルウエア,主要なアプリケーションを含む,携帯電話向けのソフトウエアスタックである旨,甲第18号証に記載されるように,イ号に搭載されるAndroid 2.3は,ハードウエアを制御しタッチパネルの表示装置にウィンドウを表示するものであり,イ号はウィンドウシステムを備えている旨主張している。
また,請求人は,上記「イ号の説明書」において,甲第14,15号証の記載に加え,甲第19号証のWindow Managerに関する記載,甲第20号証のウィンドウシステムのコールバック関数に関する記載,及び甲第21,22,23号証を基に,従来技術のウィンドウシステムの説明を行い,次に,該従来技術のウィンドウシステムの説明に用いた各甲号証の他,Androidに関する資料である甲第1?5,8,12,27号証,イ号に関する資料である甲第6,18,24,26号証,及びAndroid用のプログラムの例である甲第10号証,該プログラムをAndroidエミュレータ上で動かした動画である甲第11号証,前記プログラムの画面である甲第25号証,Android 2 .3.7 r1のソースコードに関する資料である甲第9号証,Androidとは異なるソフトウエアに関する資料及び一般的技術用語に関する資料である甲第16,17号証に基づいて,イ号が,前記ウィンドウシステムの構造を有しているのは明らかであり,本件発明の各構成要件に即した構成要件を有する旨主張している。
しかしながら,甲第6,7,18,24,26号証はイ号製品である「携帯電話AQUOS PHONE 102SH」に関する資料であると認められるのに対し,甲第1?5,8,12,13,27号証は,Androidに関する資料ではあるものの,これらの各甲号証がイ号製品に搭載されるAndroid 2.3の構成を直接表しているものとは認められない。また,他に甲第1?5,8,12,13,27号証に記載された構成をイ号製品に搭載のAndroid2.3が有しているとの証拠も提示されていないから,甲第1?5,8,12,13,27号証とイ号製品との関係は不明であり,甲第1?5,8,12,13,27号証に記載された構成をイ号製品が有しているとは認められない。
同様に,甲第9号証は,Android 2.3.7 r1に関する資料であり,Android 2.3である点でイ号製品に搭載されるAndroid 2.3と共通するものの,イ号製品に搭載されたAndroid 2.3自体のプログラムコードに関する資料ではなく,甲第9号証に記載のプログラムコードをイ号製品が有しているとまでは言えない。
また、甲第10,11,25号証は,Androidで動作するテストプログラムに関する資料であり,該プログラムを動作させているAndroidのバージョンは不明であり,また,イ号製品に搭載されたAndroid 2.3との関係も不明であるから,甲第10,11,25号証に記載された構成をイ号製品が有しているとは認められない。
更に,甲第14?17,19?23号証はAndroidとは異なるソフトウエアまたはGUIを用いたソフトウエア一般に関する資料及び一般的技術用語に関する資料であり,これらの各甲号証がイ号製品に搭載されるAndroid 2.3の構成を直接表しているものとは認められない。また,他に甲第14?17,19?23号証に記載された構成をイ号製品に搭載のAndroid 2.3が有しているとの証拠も提示されていないから,甲第14?17,19?23号証とイ号製品との関係は不明であり,甲第14?17,19?23号証に記載された構成をイ号製品が有しているとは認められない。
したがって,提示された各甲号証の内,イ号製品の構成を表しているのは,甲第6,7,18,24,26号証と認める。
そして,甲第6号証には,被請求人製造の形式「AQUOS PHONE 102SH」にはAndroid^(TM) 2.3が搭載されていることが記載されている。
また,甲第7号証には,「AQUOS PHONE 102SH」は液晶とCPUを搭載していることが記載されている。
甲第18号証には,「AQUOS PHONE 102SH」の取扱説明書の基本操作として,ホーム画面で指などをフリック操作するとページを切り替えることができ,アプリケーションのアイコンをタップするとアプリケーションが起動することが示されている。
甲第24号証には,「AQUOS PHONE 102SH」のホーム画面に本機の状態や着信などを表示する表示箇所を有することが示されている。
甲第26号証には,「AQUOS PHONE 102SH」は,「Android 2.3搭載で、CPUは1GHz駆動のデュアルコア(OMAP4430)。・・・内蔵メモリはRAMが1GB、ROMが2.2GB。」と記載されている。
よって,イ号製品の構成を表している甲第6,7,18,24,26号証の上記記載からは,イ号製品は以下の構成を有するものと認められる。
(ア)Android 2.3を搭載した形式「AQUOS PHONE 102SH」の携帯電話機であって,
(イ)液晶からなる表示装置およびメモリを有し,
(ウ)画面に,本機の状態や着信などを表示する表示部分とアイコンを表示する表示部分とを有し,
(エ)画面に表示されたアプリケーションのアイコンをタップすることによりアプリケーションを起動し,
(オ)左右にフリックすることにより画面のページを切り変える,
(カ)携帯電話
(以下,各記載事項を,それぞれ,「記載事項(ア)」等という。)

第4 対比・判断
(1)構成要件(B)について
イ号製品は,メモリを有するものである(記載事項(イ)参照)から,イ号製品は構成要件(B)を有する。

(2)構成要件(A),(C)?(L)について
イ号製品は記載事項(ア)?記載事項(カ)を有するものであるが,記載事項(ア)のAndroid 2.3が如何なる構成を有するものであるのか各甲号証からは不明であり,また,イ号製品が記載事項(ア)?(カ)の構成を有することからは,イ号製品が構成要件(A),(C)?(F),(H)?(L)の構成である,「基本ウィンドウ生成手段」「第1ウィンドウ構造生成手段」「第2ウィンドウ構造生成手段」「対応付け手段」「描画イベント発生手段」からなる「ウィンドウ表示システム」を有するとはいえない。
また,表示装置を有する携帯電話等の情報処理装置は一般にグラフィックメモリを有すると認められるから,イ号製品は構成要件(G)のうち「グラフィックメモリを有し」なる構成を有すると認められるものの,記載事項(ア)?(カ)からは,構成要件(G)のその余の構成である「第1又は第2ウィンドウ構造と基本ウィンドウ構造とを描画する描画手段」をイ号製品が有するとはいえない。
したがって,イ号製品は,構成要件(A),(C)?(L)を有しない。

よって,イ号製品は本件発明の構成要件(A),(C)?(L)において構成が相違するものであるから,イ号製品は本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない。

(3)判定請求書「5.請求の理由 (6)」について
請求人は,判定請求書の「5.請求の理由 (6)」において,タップのイベントが均等である点について説明するとして,タップとマウスクリックの両者は,位置を直接指定するか,間接的に指定するかの違いだけである旨,前記両者は,ユーザーの操作によってウィンドウプログラム(Activity)が処理を開始するという目的・作用は全く同じである旨,甲第10号証,甲第11号証に示されるように,タップとマウスクリックは,作用効果は全く同じであり,エミュレータ内で置換され,甲第13号証では,タップではなくクリックで画面遷移させる例が示されている旨主張するとともに,従来技術には,再描画前にウィンドウの表示要素を切り替えて,異なる表示要素を対応づけたウィンドウを再表示する技術はなかったので,イ号は公知文献等により容易に推考しえたものではない旨主張し,本件特許発明の審査の経緯において,「タップ」を除外する旨の記載はないから,イ号は,本件特許請求の範囲に記載の構成と同一か少なくとも均等であると主張している。
そこで均等か否かについて検討するに,上記(2)で述べたように,イ号製品は,構成要件(A),(C)?(L)を有していない。
均等であるとするには,本件発明とイ号製品の相違点である構成要件(A),(C)?(L)が,特許発明の本質的部分でないことが要件となる。
しかしながら,これら相違点は本件発明の目的,効果からして本質的な部分であって,均等であるとの請求人の主張は認めることができない。

第5 むすび
以上のとおりであるから,イ号製品は,本件発明の技術的範囲に属しない。
よって,結論の通り判定する。
 
判定日 2012-12-06 
出願番号 特願2006-512937(P2006-512937)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 圓道 浩史  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 山田 正文
衣川 裕史
登録日 2007-08-31 
登録番号 特許第4005623号(P4005623)
発明の名称 ウィンドウ表示システム、ウィンドウ表示方法、プログラム開発支援装置及びサーバ装置  
代理人 佐野 辰巳  
代理人 生田 哲郎  
代理人 吉浦 洋一  

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