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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B22D
管理番号 1267252
審判番号 無効2011-800173  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-09-15 
確定日 2012-11-09 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4001617号発明「ローラーハース炉及び旋回テーブルを備えたCSP連続鋳造設備」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第4001617号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 結論
訂正を認める。
特許第4001617号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

第1 手続の経緯
本件特許第4001617号の請求項1ないし5に係る発明についての手続の経緯は、以下のとおりである。

・平成17年12月 2日(優先日:平成16年12月3日) PCT/EP2005/012900が国際出願され、その後、国内移管されることにより、特願2007-503313号とされた。
・平成19年 8月24日 特許の設定登録
・平成23年 9月15日 無効審判請求(請求人)
・平成24年 1月26日 答弁書提出(被請求人)
・平成24年 1月26日 訂正請求書提出(被請求人)
・平成24年 3月 5日 弁駁書提出(請求人)
・平成24年 6月 1日 上申書提出(請求人)
・平成24年 6月 1日 上申書提出(被請求人)

なお、請求人は、平成24年6月25日付けで上申書を提出したが、審理を再開すべきとする理由はないので、上記上申書は採用しない。

第2 訂正請求について
1 訂正請求の内容
被請求人が平成24年1月26日付けで行った訂正請求は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおりに、すなわち、次のとおりに訂正することを求めるものである。
なお、被請求人は、上記訂正請求書に、訂正明細書も添付しているが、明細書の訂正は求めておらず、また、上記訂正明細書は、本件特許発明の明細書と同じ内容のものである。

「 【請求項1】
少なくとも一つの連続鋳造部分、或いは少なくとも一つの連続鋳造部分及び少なくとも一つの圧延ユニットと、少なくとも一つの切断装置と、ストリップを焼鈍するための一つ以上の装置(3)と、後置された圧延ライン(4)とを有する連続鋳造設備(1)において、
連続鋳造設備に対して平行に延びる、連続鋳造部分を前置していない少なくとも一つの圧延ライン(8)が、様々なサイズのブルームを連続鋳造設備(1)のラインに運び込むための手段(10)を備えた形で配置されていることを特徴とする連続鋳造設備。
【請求項2】
連続鋳造設備のラインにブルームを持ち込むために、旋回テーブル又は平行テーブル(10)が配備されていることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造設備。
【請求項3】
旋回テーブル又は平行テーブル(10)が、少なくとも部分的に炉床炉として構成されていることを特徴とする請求項2に記載の連続鋳造設備。
【請求項4】
旋回テーブル又は平行テーブル(10)が、連続鋳造設備の運搬方向に対して逆向きの運搬方向を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の連続鋳造設備。
【請求項5】
平行した圧延ライン(8)が、運び込むブルームの厚さをCSP設備に必要な開始時の厚さにまで薄くするために、炉床炉と、垂直なエッジャーを備えた粗延べラインとを有するか、或いは炉床炉と、垂直なエッジャーを備えた粗延ベラインと、板圧延機とを有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の連続鋳造設備。」

2 訂正事項
訂正事項をまとめると、次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲における請求項1の「連続鋳造設備に対して平行に延びる少なくとも一つの圧延ライン(8)」との記載を「連続鋳造設備に対して平行に延びる、連続鋳造部分を前置していない少なくとも一つの圧延ライン(8)」とする訂正事項。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲における請求項1の「様々なサイズのブルームを連続鋳造設備(1)のラインに運び込むための手段(10,10’)」との記載を「様々なサイズのブルームを連続鋳造設備(1)のラインに運び込むための手段(10)」とする訂正事項。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲における請求項2の「旋回テーブル又は平行テーブル(10,10’)」との記載を「旋回テーブル又は平行テーブル(10)」とする訂正事項。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3における「旋回テーブル又は平行テーブル(10,10’)」との記載を「旋回テーブル又は平行テーブル(10)」とする訂正事項。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4における「旋回テーブル又は平行テーブル(10,10’)」との記載を「旋回テーブル又は平行テーブル(10)」とする訂正事項。

3 訂正請求の適否
(1)訂正事項1ないし5について検討する。
上記訂正事項1ないし5は、下記(2)のとおり、特許法第134条の2第1項第1号に規定された「特許請求の範囲の減縮」を目的とし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)当審の判断
ア.明細書等の記載
明細書等には、次のとおり記載されている(なお、下線は、当審で付したものである。)。
(ア)「連続鋳造設備1では、溶鋼が、取鍋炉2から詳しく図示されていないタンデッシュに注ぎ込まれて、そこから、同じく詳しく図示されていない浸漬ノズルを用いて、漏斗形モールドに注入される。漏斗形モールドからは、凝固した鋼鉄が、誘導圧延機を用いて、水平なローラーテーブル上に方向転換されて、そこで切断装置によって、薄いブルームの長さに切断される。これらの薄いブルームは、ローラーハース炉3に到達し、そこで、約1150度の均一な圧延温度にまで加熱されて、その温度に均一化され、場合によっては一時的に保留される。約50mmの厚さの切断された薄いブルームは、後置の仕上げ圧延ライン4に供給され、そこで、薄いブルームは、複数の圧延機段5により、0.8?6.35mmに薄くされる。」(【0011】。)

(イ)「ここで述べたCSP設備の生産性を向上するとともに、移送する製品の範囲を広げることを可能とするために、連続鋳造設備1の他に、例えば、従来の厚さのブルーム又は中間的な厚さのブルーム用の炉と、連続鋳造設備1に運び込むブルームをCSP設備での約50mmの厚さにまで薄くするための二つの圧延機段による粗延べライン9又は板圧延機とを備えた平行した圧延ライン8を配置している。これらのブルームは、旋回テーブル又は平行テーブル10又は10’によって、外からCSPラインに運び込まれて来て、そこに配置されたローラーハース炉3内で所要の圧延温度にまで加熱される・・・」(【0012】)

(ウ)図1には、取鍋炉2の後段に配置された2つのラインと、それらとは別の、少なくとも粗延べライン9を備え、かつ、取鍋炉2には接続されていない圧延ライン8とを備える構成が開示され、当該3つのラインは平行な位置に配置されており、また当該圧延ライン8の終端には、旋回テーブル又は平行テーブル10が接続され、仕上げ圧延ライン4の複数の圧延機段5の前で、取鍋炉2の後段に配置されたラインの内の一方のラインに接続され得るものが開示されている。
また、上記、取鍋炉2の後段に配置された2つのラインの内、上記一方のラインではないラインの終端には、旋回テーブル又は平行テーブル10’が接続され、仕上げ圧延ライン4の複数の圧延機段5の前で、上記一方のラインに接続され得るものが開示されている。(図1)

イ.訂正事項1について
(ア)訂正事項1は、訂正前の請求項1に「、連続鋳造部分を前置していない」という発明特定事項を付加するものであるから、特許請求の範囲の記載の減縮を目的とするものである。

(イ)下記において、明細書等に記載した事項の範囲内か否かについて検討する。
上記「第2 3(2)ア.」の「(ア)」ないし「(ウ)」の記載によると、取鍋炉2の後段に配置された2つのラインは、連続鋳造部分と圧延ユニットとを有するラインであってよく、取鍋炉2には接続されていない圧延ライン8は、連続鋳造部分を備えていないライン、すなわち、連続鋳造部分を前置していない少なくとも一つの圧延ラインである。
よって、明細書等には、取鍋炉2の後段に配置された2つのラインの内の一方のラインが、連続鋳造部分と圧延ユニットとを有するラインである場合、連続鋳造設備に対して平行に延びる圧延ラインは、取鍋炉2の後段に配置され、連続鋳造部分と圧延ユニットとを有するラインと、取鍋炉2には接続されていない圧延ライン8との2つのラインの何れかとなることが開示されているから、上記訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(ウ)また、上記訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ.訂正事項2ないし5について
(ア)訂正事項2ないし5は、訂正前の請求項2ないし4の「様々なサイズのブルームを連続鋳造設備(1)のラインに運び込むための手段」について、「(10,10’)」を「(10)」に限定するものであるから、特許請求の範囲の記載の減縮を目的とするものである。また、訂正事項1により、明らかに「(10’)」が該当しなくなることに対処するためのものであるから、特許請求の範囲の明りょうでない記載の釈明に該当する。

(イ)下記において、明細書等に記載した事項の範囲内か否かについて検討する。
上記「第2 3(2)ア.」の「(イ)」及び「(ウ)」の記載によると、「様々なサイズのブルームを連続鋳造設備(1)のラインに運び込むための手段」として、「旋回テーブル又は平行テーブル10」が記載されている。
よって、上記訂正事項2ないし5は、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(ウ)また、上記訂正事項2ないし5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)したがって、当該訂正請求は、特許法第134条の2第1項及び第5項で準用する同126条第3項及び第4項に規定する要件に適合するので適法な訂正と認める。

第3 無効理由
1 無効理由についての請求人の主張
(1)主張概略
ア.請求人の審判請求書による主張の要旨は、次のとおりである。
本件の請求項1乃至請求項5に係る発明は、甲第1号証乃至甲第6号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。

イ.請求人の、平成24年3月5日付け弁駁書において、周知の圧延ラインを示すものとして周知例を提示した上でした、主張の要旨は次のとおりである。
訂正後の請求項1乃至5に記載された事項に係る発明は、甲第1号証乃至甲第4号証、及び甲第6号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。

(2)各甲号証
請求人の示した各甲号証は、次のとおりである。
甲第1号証:特表2004-508933号公報
甲第2号証:米国特許第5467518号明細書
甲第3号証:特開平9-164405号公報
甲第4号証:特開平10-156413号公報
甲第5号証:特開2005-262255号公報
甲第6号証:特開2002-172401号公報

(3)周知例
請求人が弁駁書で示した周知例は、次のとおりである。
周知例:欧州特許第1363750号明細書(特表2004-522588号公報)

2 無効理由についての被請求人の主張
(1)主張概略
ア.被請求人の答弁書の主張の要旨は、次のとおりである。
訂正後の請求項1乃至5に係る発明は、甲第1号証乃至甲第6号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易になし得たものではない。

イ.また、被請求人の、平成24年6月1日付け上申書の主張の要旨は、次のとおりである。
本件発明の明細書段落0003で背景技術として引用した特許文献である、欧州特許第1363750号明細書(特表2004-522588)の従来技術による構成では、「スラブ製造ライン40,50と後置の圧延ライン4からなる連続鋳造設備に圧延ラインとコイル移送装置を追加するとともに、後置の圧延ライン4の前方にコイラー(デコイラー)を追加して、スラブ製造ライン40,50がスラブの製造を休止している間に、コイル移送装置を用いて、この追加した圧延ラインで圧延されたスラブを巻き取ったコイル25を後置の圧延ライン4の前方に追加されたコイラーに運び込み、そのコイラーからコイルを巻き戻して後置の圧延ライン4で圧延する構成」となり、「コイラーを既存の連続鋳造設備に追加する必要が有る」とともに、「コイルとして巻き取るにはスラブを薄くする必要が有るため」、供給された「スラブを後置の圧延ライン4で圧延する場合」、「圧延プログラム又は圧延形態を変更することも必要」となる。
また、「圧延ライン(8)」の「連続鋳造設備に対して平行に延びる」(コイラーなしの)構成によって、「連続鋳造設備(1)のラインに運び込むための手段(10)」と共に連続鋳造設備全体をコンパクトに構成することができるとの「配置構成」の利点も得られる。
平成24年3月5日付け弁駁書に対して、「連続鋳造機械を有する第2のプロセスルート(II)は圧延ラインと均等物ではないことは明らか」であるから、「甲1発明の第2のプロセスルート(II)を周知の均等物である圧延ラインに置換したものにすぎないとの主張は失当」であり、「甲1発明の「移送装置22」」は、「ライン間でスラブを移送するための装置に過ぎず」、「本件発明1における「様々なサイズのブルームを連続鋳造設備(1)のラインに運び込むための手段(10)」には相当」しない。
よって、訂正後の請求項1乃至5に係る発明は、甲第1号証乃至甲第6号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易になし得たものではない。

(2)乙号証
被請求人が答弁書で示した乙号証は、次のとおりである。
乙第1号証:特表2007-529319号公報(本件特許の公表公報)

3 当審の判断
(1)本件発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、平成24年1月26日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次のとおりのものである(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)。

「 【請求項1】
少なくとも一つの連続鋳造部分、或いは少なくとも一つの連続鋳造部分及び少なくとも一つの圧延ユニットと、少なくとも一つの切断装置と、ストリップを焼鈍するための一つ以上の装置(3)と、後置された圧延ライン(4)とを有する連続鋳造設備(1)において、
連続鋳造設備に対して平行に延びる、連続鋳造部分を前置していない少なくとも一つの圧延ライン(8)が、様々なサイズのブルームを連続鋳造設備(1)のラインに運び込むための手段(10)を備えた形で配置されていることを特徴とする連続鋳造設備。
【請求項2】
連続鋳造設備のラインにブルームを持ち込むために、旋回テーブル又は平行テーブル(10)が配備されていることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造設備。
【請求項3】
旋回テーブル又は平行テーブル(10)が、少なくとも部分的に炉床炉として構成されていることを特徴とする請求項2に記載の連続鋳造設備。
【請求項4】
旋回テーブル又は平行テーブル(10)が、連続鋳造設備の運搬方向に対して逆向きの運搬方向を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の連続鋳造設備。
【請求項5】
平行した圧延ライン(8)が、運び込むブルームの厚さをCSP設備に必要な開始時の厚さにまで薄くするために、炉床炉と、垂直なエッジャーを備えた粗延べラインとを有するか、或いは炉床炉と、垂直なエッジャーを備えた粗延ベラインと、板圧延機とを有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の連続鋳造設備。」

(2) 甲各号証に記載された発明
ア.甲第1号証について
甲第1号証には、図面とともに、以下の記載がある。
(アa)「【0002】
薄スラブは、この関連において、厚さ30?130mm、特に40?60mmの鋳造製品を意味する。・・・」(段落【0002】)

(アb)「【0004】
従って、本発明の根底をなす課題は、
冒頭に記載した様式の方法、および冒頭に記載した様式の設備を、特殊鋼から成るストリップおよび薄板の製造が比較的に経済的に成るように、更に発展させることである。
【0005】
この課題は、本方法に従い、第1のプロセスルート内において製造された第1の鋳造製品(1)と共に、第1の鋳造製品が炭素鋼から鋳造されている場合には特殊鋼から、または、第1の鋳造製品が特殊鋼から鋳造されている場合には炭素鋼から、第2のプロセスルート(II)内において製造された、少なくとも第2の鋳造製品が、共通の圧延プログラムで圧延されることによって解決される。本発明の核心は、従って、冒頭に記載した様式の設備でもって、これら両方の鋼の種類の製品を、共通の圧延ライン内において統合すること、および、共通の圧延プログラムで圧延することである。一般的に、この圧延プログラムという概念は、2つのロール交換の時間間隔内における圧延されるべきスラブの所定の順序を意味する。
【0006】
本発明により、炭素鋼と比較して僅かの量生産される特殊鋼薄板の唯一の生産において能力を十分に活用されていない設備の、最適な能力の十分な活用が達成される。それに加えて、炭素鋼が生産される設備の比較的に大きな可変性は、付加的な特殊鋼の圧延によって増大される。基本的に、本発明は、2つの鋼の種類から成る鋳造製品のための圧延プログラムに限定されず、且つ同様に、更に別の付加的な鋼の種類を、1つの圧延プログラムで圧延することも可能であり、その際しかし常に、炭素鋼および特殊鋼は、共に圧延される。1つの共通の圧延プログラムでのこの圧延の提案によって、2つの非常に異なる鋼の種類の処理が、設備連接体の輸送処理能力、もしくは鋼生産量に依存せずに可能となる。」(段落【0004】-【0006】)

(アc)「【0010】
有利には、共通の圧延プログラムで、薄スラブ寸法での第1の鋳造製品、またはこの第1の鋳造製品のグループ、および第2の鋳造製品、またはこの第2の鋳造製品のグループが、交番状態で圧延されることが提案される。この交番という概念は、一つの鋼の種類および他の鋼の種類のスラブ間の、不規則または規則的な交番を許容する。請求項5において有利に提案されているような均等な交番は、およびこれに伴って、比較的に硬質な特殊鋼の種類を含む、相対的に柔軟な炭素鋼の種類の均等な順序は、ワークロールの駆動装置のための比較的に僅かの平均の負荷を形成し、その際、高い負荷が、即座により低い負荷によって再び均一化される。
【0011】
第1のプロセスルートIの薄スラブと共に、1つの圧延プログラムで圧延される第2の鋳造製品は、自体で薄スラブであるか、それとも、いわゆる旧来的に鋳造された、粗圧延の後に共通の圧延ライン内へと共に走入する、スラブである。第1のプロセスルートに対して第2の平行なプロセスルート内において鋳造され、且つ切断された薄スラブの場合、これら薄スラブは、有利には、場合によっては第2の均質炉、および移送装置を経由して、共通の均質炉内へと、および引き続いて圧延ライン内へと案内される。旧来的に製造されたスラブ、即ち250mmまでの鋳造厚さを有する鋳造製品の場合、粗圧延は、可逆ロールスタンド内における旧来の熱間幅広ストリップ圧延ライン上で行われる。次いで冷却されたスラブは、第1のプロセスルートが進行する設備への移送の後、スラブ炉内において、冷たい状態から再加熱され、且つ、移送装置を介して、第1のプロセスルートの均質炉、もしくは圧延ライン内へと、圧延プログラムによって予め設定された順序において、組み入れられる。基本的に、粗圧延されたスラブが、その場合に、共通の圧延プログラムに統合するために、直接的に、冷却されること無く移送されるような道程も可能である。この場合、組み入れ前での温度の均一化は、有効である。
【0012】
この発明は、薄スラブまたは旧来的に連続鋳造された粗圧延されたスラブの、上記された組み入れの可能性に限定されず、それぞれの鋳造製品の組み入れは、例えば、ストリップ鋳造によって製造されることは可能であり、その際、この様式で製造された前製品は、実際上、ただ僅かなだけの出側厚さを有している。」(段落【0010】-【0012】)

(アd)「【0016】
図1は、2つの鋳込みストランド、即ち2つの鋳造製品1、2を伴った状態での設備を示しており、その際、第1のプロセスルートIが、前の設けられた鋳造機4を有する圧延ライン3を備えている。この第1の鋳造機4は、分配装置5、および、厚さ40?100mmの薄スラブの鋳造のための、ホッパー形状の薄スラブ鋳型(ここで、概略的により大きく図示されている)を有している。この鋳造機4は、自体で、この実施例において、特殊鋼溶融体を、レードル7から供給され、その際、この鋳鋼溶湯が、例えば、高炉-転炉-ルート(Hochofen-Konverter-Route)(参照符号8でもって示されている)を用いて、または後置された二次冶金を有する電気製鋼炉によって製造され、且つ、鋳造機4へとこれらレードル7内において移送される(移送工程は、参照符号9でもって示されている)。
【0017】
鋳込みストランドの形状における鋳造製品は、ローラ10a、bを介して、垂直状態から水平状態へと湾曲され、且つこの実施形態の場合、第1の断裁機11を用いて切断される。引き続いて、個別の薄スラブは、第1の均質炉12、例えばローラーコンベヤ炉またはウォーキングビーム炉内に、一様な薄スラブ温度を得るために走入する。次いで、この薄スラブは、スケール除去装置13の通過の後、圧延ライン内に、所望の最終寸法を得るために搬送される。この圧延ラインの仕上げ段列14は、ここで、それぞれ2つのワークロール(16a、b)、およびバックアップロール(17a、b)を有する6つのロールスタンド(例えば、参照符号15a)から成っている。冷却装置19を有する出側ローラテーブル18、並びにコイルへとストリップを巻き取るための巻上げ機20が、引き続いて設けられている。」(段落【0016】-【0017】)

(アe)「【0024】
圧延ライン内への、即ち第1のプロセスルートIからの第1の薄スラブまたは第1の薄スラブのグループの流入と、第2の鋳造製品または第2の鋳造製品のグループの、・・・(中略)・・・それに加えて、この「混合圧延工程(mixed rolling)」による圧延プログラムにおいて、順々に圧延されるべき鋳造製品の幅における許容しうる飛躍は、考慮に入れられている。総じて言えば、このようなプロセスモデルに関して、圧延品質の最適化は、所望された製品品質に依存して可能となる。
【0025】
図3は、この図3の第1のプロセスルートIに関して、図1において図示されたこの第1のプロセスルートIと一致している。図1とは異なって、プロセスルートI内に統合された第2の鋳造製品(2)は、旧来の鋳造機30を用いて、250mmに至るまでの厚さで
もって鋳造され、且つ、炉31内における、場合によっては、冷却、および再加熱の後、粗ロールスタンド32内において、これら鋳造製品が、プロセスルートIの共通に圧延ライン内に、統合することが可能である程に、厚さに対して圧下圧延される。この連続鋳造および粗圧延の旧来の作業経過は、ここで、ただ概略的にだけ図示されている。これら個別のスラブは、冷たい、または場合によってはまだ熱い状態において、第1のプロセスルートIの近くの均質炉21へと移送され、そこで、適当な圧延温度までに加熱または均一化され、および移送装置22でもって均質炉12内へと挿入される。」(段落【0024】-【0025】)

(アf)図1及び3には、レードル7、第1の鋳造機4、第1の裁断機11、第1の均質炉12及び圧延ラインを備えた、第1のプロセスルートIと、炉31と粗ロールスタンド32とを有するラインを備えた、第2のプロセスルートIIとを有する設備において、第1のプロセスルートIに対して、第2のプロセスルートIIが平行に延び、第2のプロセスルートIIからの鋳造製品を、第1のプロセスルートのライン上の第1の均質炉12の部分22aへと移送するための移送装置22を備えることが開示されている。

したがって、これら記載事項及び図示内容(アa)?(アf)を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には、次の発明が記載されている(以下、「甲1発明」という。)。
「レードル7及び第1の鋳造機4と、第1の断裁機11と、薄スラブを一様な薄スラブ温度とするための第1の均質炉12と、圧延ラインとを有する第1のプロセスルートIにおいて、第1のプロセスルートIに対して平行に延びる、炉31と粗ロールスタンド32とを有するラインを備えた、第2のプロセスルートIIが、第1のプロセスルートI内において製造された、薄スラブ寸法での第1の鋳造製品とは異なる、第1の鋳造製品のグループ、種類の異なる鋼からなる第2の鋳造製品、第2の鋳造製品のグループであって、薄スラブまたは旧来的に製造されたスラブを粗圧延したものを、第1のプロセスルートのライン上の均質炉21に移送するための移送装置22を備えた形で配置されている、第1のプロセスルート。」

イ 甲第2号証について
甲第2号証には、図面とともに、以下の記載がある。括弧内に、対応するパテントファミリーである特開平6-218401号公報も参照し、抄訳を付記する。
(イa)「The method according to the present invention, due to the two-time reversal of the direction of movement of the material stream, permits to achieve a substantial reduction of the length of the furnace installation, without operational technical drawbacks. Despite the change of the movement direction of the material stream, no additional difference in the dwell time of the strip front and rear portions exists, besides the unavoidable difference, which results from the difference in speeds of the casting and rolling train installations. While the length of a furnace installation, with a straight-forward movement of the material stream with transverse displacement, is between 180-220 m, the length of the furnace installation for effecting the method according to the present invention, with a two-time change of the movement direction of the material stream, is 125-130 m.」(第2欄第53-67行)(本発明による方法によれば、材料の流れを2回方向転換することにより、炉装置を著しく短縮することができ、同時に方法技術上の欠点が解消される。材料の流れの方向を単純に変化させる方法とは異なり、帯材の前部と後部の滞留時間の相違は生じない。ただし、鋳造速度と圧延速度との差により生じる相違は装置に基づく避けがたいものである。横搬送部を備えた直進搬出用の炉装置が180ないし220mの長さを有するのにたいし、本発明による方法を実施するために適した2回方向転換式の炉装置の長さは、125ないし130mである。)

(イb)「FIGS. 5a-5c show the same concept, according to which, in the second constructional stage, there are provided two rows of casting machines with downstream successively arranged shears 4a'-4'c, 5'a-5'c; equalizing furnaces 100a-100c, 110a-110c; regenerative furnaces 101a-101c, 111a-111c, elongate furnace portions 102a-102c, 112a-112c, which serve as holding furnaces and with which rolling trains 70a-70c are connected.
In the so modified installation, the respective regenerative furnaces 101a-101c of the casting line I and the holding furnaces 112a-112c of the casting line II are movable, with the movement being insured by a simple pivot furnace (FIG. 5a), a "ferry" (FIG. 5b) or a pivotable crank mechanism (FIG. 5c). The regenerative furnaces and the holding furnaces (101a, 112a), (101b, 112b), (101c, 112c) are paired in such a manner, that a respective furnace pair forms, at the end of their mutual movement, means for transporting the thin slab from the casting line II to the casting line I and thereby to the holding furnace 102a-102c of the rolling train 70a-70c.」(第6欄第55行-第7欄第7行)(図5aないし5cには同じような装置の基本構成が図示されている。この場合最後の構成段にはそれぞれ二つの平行な鋳造ラインが設けられ、通常の配置でそれぞれ一つのシヤー4a’ないし4c’,5’aないし5’cと、その後方に配置される補償炉100aないし100c,または110aないし110cと、さらに後方に配置される蓄熱炉101aないし101c,または111aないし111cと、待避炉として延長され、圧延路70aないし70cが接続された、炉部分102aないし102c,または112aないし112cとを備えている。
この場合鋳造ラインIのそれぞれの蓄熱炉101aないし101cと鋳造ラインIIの待避炉112aないし112cとは可動であり、簡単な回動する炉として(図5a)、輸送するものとして(図5b)、或いはクランク揺動・回動体(図5c)として構成される。蓄熱炉や補償炉である(101a,112a)、(101b,112b)、(101c,112c)は、互いに対を成して次のように互いに関係づけられている。即ちそれぞれの対が移動の終端で協働することによりその都度一つの薄いスラブを鋳造ラインIIから鋳造ラインIへ受け渡すための、よって圧延路70aないし70cの待避炉102aないし102cへ受け渡すための手段を形成するように関係づけられている。)

(イc)FIG.5a及び5bには、炉が設けられたレールが、回動あるいは平行移動する動作、及びそれまでの運搬方向に対して逆向きの運搬方向を有することが開示されている。

ウ 甲第6号証について
甲第6号証には、図面とともに、以下の記載がある。
(ウa)「【0037】そして設備1内の各機器としては、つぎのような形式のものを配置している。まず加熱炉13には、スラブAaを複数本保有してそれらを順次長手方向に移送していく形式の、いわゆるトンネル型の加熱炉を採用している。この形式のものなら、移送中にスラブAa上の一定個所が長時間水冷部材に接触することがあり得ないので、スラブAaにスキッドマークが生じない。加熱炉13の全長は約150mで、その後端部には、長手方向と直角の方向(幅方向)にスラブAaを送ることのできる横行台車14が設けられている。粗圧延機15は1スタンドのものだが、リバース式とし、その前部にはエッジャー15bとともに、長さ約80メートルのテーブル15aを設けるなど、圧延材をリバースさせて複数パスの圧延を行えるようにしてある。シートバーヒーター17としては、導線コイルに通電して交流磁場を発生させ、近くを通る粗圧延後のシートバーAbに電磁誘導作用により渦電流等を発生させて発熱させる誘導加熱式の装置を配置している。仕上圧延機18は6スタンドからなる一般的なものである。なお、切断機12はトーチ式のものであるが、剪断式(シャー)など他の形式のものであっても差し支えない。」(段落【0037】)

(ウb)図1には、仕上圧延機18の前段に、トンネル型加熱炉13と、エッジャー15bと、リバース式粗圧延機15とを備える構成が開示されている。

(3)当審の判断
ア.本件発明1について
(ア)本件発明1は、上記「第3 3(1)」において認定したとおりのものである。

(イ)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、機能又は構造等からみて、後者の「レードル7及び第1の鋳造機4」は、前者の「連続鋳造部分」に、以下同様に、後者の「第1の断裁機11」、「圧延ライン」、「第1のプロセスルートI」、「炉31と粗ロールスタンド32とを有するライン」は、前者の「切断装置」、「後置された圧延ライン」、「連続鋳造設備」、「圧延ライン」に、それぞれ相当する。
一般的に、「ストリップ」とは「金属の長尺な帯板のことをさし,通常はコイル状に巻かれて取り扱われる.プレス加工用に所要の幅に切断された細幅の板材をさすこともある.」と定義され、「ブルーム」とは「分塊圧延後の比較的大きい金属塊である.また,連鋳により分塊圧延後の金属塊とほぼ同じ大きさに鋳造されたものをよぶこともある.」と定義される語であるが(金属材料技術研究所編,「図解 金属材料技術用語辞典」,初版1刷,日刊工業新聞社,昭和63年11月20日,p.275,488)、明細書等には、「これらの薄いブルームは、ローラーハース炉3に到達し・・・約50mmの厚さの切断された薄いブルームは、後置の仕上げ圧延ライン4に供給され」(【0011】)、「これらのブルームは、旋回テーブル又は平行テーブル10又は10’によって、外からCSPラインに運び込まれて来て、そこに配置されたローラーハース炉3内で所要の圧延温度にまで加熱されるとともに、その次に後置の仕上げ圧延ライン4に供給されて」(【0012】)と記載されていることから、請求項1に記載の「ストリップ」及び「ブルーム」は、いずれも、明細書等における「薄いブルーム」と同義であると認められる。また、上記「第3 3(2)ア.(アa)」より、甲第1号証において、「薄スラブ」とは、40?60mmの鋳造製品を言い、明細書等においては、「薄いブルーム」とは、約50mmの厚さの鋳造された製品を言うのである。したがって、甲1発明における「薄スラブ」は、本件発明1における「ストリップ」又は「ブルーム」に相当する。
さらに、後者の「移送装置22」は、鋳造されている製品を、一方のラインから他方のラインへ運び込むものである限りにおいて、前者の「連続鋳造設備のラインに運び込むための手段」に相当し、後者の「薄スラブを一様な薄スラブ温度とするための第1の均質炉12」は、溶融体から鋳造された薄スラブを再加熱するものであるので、「「ストリップを焼鈍するための」「装置」」に相当する。
ここで、甲1発明において、「レードル7及び第1の鋳造機4」、「薄スラブを一様な薄スラブ温度とするための第1の均質炉12」及び「炉31と粗ロールスタンド32とを有するライン」が、少なくとも一つ、あるいは、少なくとも一つ以上、存在することは明らかであり、さらに、少なくとも一つのレードル7及び第1の鋳造機4が、「少なくとも一つの連続鋳造部分、或いは少なくとも一つの連続鋳造部分及び少なくとも一つの圧延ユニット」を満たすことは明らかである。

そこで、本件発明1の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
「少なくとも一つの連続鋳造部分、或いは少なくとも一つの連続鋳造部分及び少なくとも一つの圧延ユニットと、少なくとも一つの切断装置と、ストリップを焼鈍するための一つ以上の装置と、後置された圧延ラインとを有する連続鋳造設備において、連続鋳造設備に対して平行に延びる、少なくとも一つの圧延ラインが、ブルームを連続鋳造設備のラインに運び込むための手段を備えた形で配置されている連続鋳造設備。」

そして、両者は次の点で相違する。
相違点1:本件発明1が、連続鋳造設備(1)に対して平行に延びる、連続鋳造部分を前置していない少なくとも一つの圧延ライン(8)を有するのに対し、甲1発明では、第1のプロセスルートIに対して平行に延びる、粗ロールスタンド32を備えた第2のプロセスルートIIは、鋳造機を前置するものである点。

相違点2:本件発明1が、様々なサイズのブルームを連続鋳造設備(1)のラインに運び込むための手段(10)を備えるのに対し、甲1発明には、スラブを第1のプロセスルートIのライン上に運び込む移送装置22を備えるものの、運び込まれるスラブのサイズについては不明である点。

(ウ)相違点の判断
a.相違点1について
元来、スラブやブルーム等の鋳造製品の仕上げ圧延を行うラインは、分塊法等により鋳造製品を製造するラインとは、別個に設けられるものであったが、甲1発明のように、スラブを鋳造するラインと圧延ラインとを結合した、鋳造圧延設備が用いられるようになった。この際、例えば、平成24年3月5日付け弁駁書にて示された周知例にもみられるように、圧延ラインを効率的に使用するため、鋳造機を有する圧延ラインに対して、鋳造機を有しないラインから鋳造製品を供給して、圧延ラインを共有することは、周知の技術的事項であった(上記周知例の、公表公報の、【特許請求の範囲】、段落【0002】-【0004】、段落【0007】、【0016】、段落【0026】-【0035】、図参照。)。
すなわち、本件発明1や甲1発明が属する技術分野において、鋳造部分、切断装置、焼鈍するための装置、及びそれらに対して後置された圧延ラインを備える連続鋳造設備に対し、鋳造機を前置しないライン、すなわち、外部からスラブを供給すること、その際、圧延機を通したスラブを、連続鋳造設備に供給することは、周知の技術的事項である。
そして、甲1発明を開示する甲第1号証においても、経済性を考慮し、第1のプロセスルート以外から、移送装置22によって、製品を第1のプロセスルートのライン上に移送して、共通のプログラムで圧延することが記載されているのだから(「第3 3(2)ア.(アb)」及び「第3 3(2)ア.(アc)」参照。)、甲1発明において、上述した周知の技術的事項を採用すること、すなわち、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が通常の創作能力をもってなし得たことである。

ちなみに、被請求人は、上記周知例による構成では、コイラーを追加する必要があるとともに、圧延プログラム又は圧延形態を変更することも必要となる旨、主張している(「第3 2(1)イ.」参照。)。
しかし、本件発明1は、連続鋳造部分を前置していない少なくとも一つの圧延ラインが、ブルームを連続鋳造設備のラインに運び込むことを規定しているのみであり、どのような形状及び厚みのブルームを運び込むかについては特定していないし、また、甲1発明において、より高いスループットを実現するために、鋳造機を有しないラインから供給する鋳造製品として、適当な形状及び厚みのスラブを供給することは、当業者が適宜なし得る設計的事項であるから、当該主張は採用できない。

b.相違点2について
甲1発明を開示する甲第1号証には、(a)上記「第3 3(2)ア.(アc)」に、移送装置22によって、薄スラブ寸法での第1の鋳造製品、または第1の鋳造製品のグループ、および種類の異なる鋼からなる第2の鋳造製品、または第2の鋳造製品のグループという、複数種類の鋳造製品を第1のプロセスルートのライン上へ移送しており、また、薄スラブまたは旧来的に連続鋳造された粗圧延されたスラブの他、ストリップ鋳造によって製造される製品を組み入れいることが可能である旨記載され、(b)上記「第3 3(2)ア.(アd)」に、薄スラブが、厚さ40?100mmである旨記載され、また、(c)上記「第3 3(2)ア.(アe)」に、第1のプロセスルートの共通の圧延ラインにおける、圧延プログラムにおいて、順々に圧延されるべき鋳造製品の幅における許容しうる飛躍が、考慮に入れられており、第1のプロセスルートIに供給される物が、旧来の鋳造機30を用いて、250mmに至るまでの厚さでもって鋳造された物である場合、粗ロールスタンド32内において、第1のプロセスルートIの共通の圧延ライン内に、統合することが可能である程の厚さに圧下圧延される旨記載されている。
上記記載事項にかんがみるに、上記「第1の鋳造製品のグループ」あるいは「第2の鋳造製品のグループ」で示される物が、具体的にどのような構成の物なのか不明ではあるものの、上記(a)から、処理できる対象として、薄スラブ、連続鋳造された粗圧延されたスラブ、及びストリップ鋳造により製造されたストリップがあげられていて、これらの厚さ等が異なることは明らかであるし、また、上記(b)のとおり、鋳造された薄スラブの厚みに一定の範囲があり、さらに、上記(c)には、一定の限度はあるものの、処理できる対象の幅、厚みに許容できる範囲が存在することも示されていることから、甲1発明においては、サイズが異なるものをプロセスルートIに供給することが想定されているといえる。
また、上述した(a)ないし(c)に依拠しなくとも、一般に、所望の寸法の最終製品を製造するために、様々なサイズの鋳造製品を圧延ラインに供給することは、よく知られていることであるから、甲1発明においても、様々なサイズの鋳造製品を搬入することは、当業者が容易に採用し得たというべきである。
したがって、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を採用することも、当業者が通常の創作能力をもってなし得たことである。

(エ)作用効果について
平行した圧延ラインから様々なサイズのブルームを運び込むことによって、後置の圧延ラインの最大限の活用を達成するとともに、鋼鉄製品の無条件の投入を可能とする形で生産性の向上が実現されるとの効果については、甲1発明も、共通の圧延ラインにおいて、共通の圧延プログラムで、複数の鋳造製品を圧延することにより、共通の圧延欄の能力を十分活用し、ストリップや薄板の製造を経済的に行うものであって、同様の効果を奏するものであり、また、複数の製品として、様々なサイズの鋳造製品を圧延ラインに搬入することが、周知であることからして、かかる効果は、甲1発明及び周知の技術的事項から当業者が予測できた範囲内のものである。
また、明細書等には、「サイズ」が、ブルームのどのような寸法であるか記載されておらず、明細書等の記載の限りでは、様々なサイズのブルームを運び込むことにより格別の意義があるものとも認められない。
なお、被請求人は、平成24年6月1日付けの上申書において、本件発明1が、圧延ライン(8)が連続鋳造設備に対して平行に延びる構成によって、設備全体をコンパクトにできる旨、主張するが、圧延ライン(8)が連続鋳造設備に対して平行に延びる構成は、甲1発明にも記載されているので、これも、当業者が予測し得た効果である。

よって、本件発明1が有する作用効果は、甲1発明及び周知の技術的事項から当業者が予測し得た範囲内のものである。

(オ)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

イ.本件発明2について
(ア)本件発明2は、上記「第3 3(1)」において認定したとおりのものである。

(イ)対比
本件発明2と甲1発明とを対比するに、上記「第3 3(1)ア.」の「(イ)対比」にて述べたと同様の相当関係があるから、本件発明2の用語を用いて表現すると、両者は上記「第3 3(1)ア.」の「(イ)対比」にて述べたとおりの点で一致する。
そして、両者は上記相違点1及び2に加え、下記相違点3で相違する。

相違点3:本件発明2において、連続鋳造設備のラインにブルームを持ち込む手段が、旋回テーブル又は平行テーブルであるのに対し、甲1発明における移送装置22は、そのようなテーブルであるか否か不明である点。

(ウ)相違点の判断
a.相違点1及び2について
上記「第3 3(3)ア.(ウ)」の「a.」及び「b.」に示したとおりである。

b.相違点3について
上記「第3 3(2)ア.(アf)」より、甲1発明においても、移送装置22は、少なくとも、互いに平行なライン間で製品を搬送するものである。
ここで、甲第2号証の、上記「第3 3(2)イ.」の「(イa)」ないし「(イc)」には、互いに平行なライン間で製品を搬送する手段として、旋回テーブル及び平行テーブルが記載されている。

したがって、甲1発明において、互いに平行なライン間で製品を搬送する手段として、旋回テーブルあるいは平行テーブルを採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(エ)作用効果について
被請求人は、本件発明2が、旋回テーブルや平行テーブルを配備することにより、平行した圧延ラインから到来するブルームを検査するとともに、必要な場合、所要の後処理を受けさせることが可能となるとも主張しているが、そのような効果の主張は、本件発明2の構成に基づかない主張であり、採用できない。
よって、本件発明2が有する作用効果は、甲1発明、甲第2号証記載の技術的事項及び周知の技術的事項から当業者が予測し得た範囲内のものである。

(オ)小括
以上のとおり、本件発明2は、甲1発明、甲第2号証記載の技術的事項及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

ウ.本件発明3について
(ア)本件発明3は、上記「第3 3(1)」において認定したとおりのものである。

(イ)対比
本件発明3と甲1発明とを対比するに、上記「第3 3(1)ア.」の「(イ)対比」にて述べたと同様の相当関係があるから、本件発明3の用語を用いて表現すると、両者は上記「第3 3(1)ア.」の「(イ)対比」にて述べたとおりの点で一致する。
そして、両者は上記相違点1ないし3に加え、下記相違点4で相違する。

相違点4:本件発明3においては、旋回テーブル又は平行テーブルが、少なくとも部分的に炉床炉であるのに対し、甲1発明における移送装置22は、そのようなテーブルではない点。

(ウ)相違点の判断
a.相違点1ないし3について
上記「第3 3(3)ア.(ウ)」の「a.」及び「b.」、並びに「第3 3(3)イ.(ウ)b.」に示したとおりである。

b.相違点4について
甲第2号証の、上記「第3 3(2)イ.」の「(イb)」及び「(イc)」には、互いに平行なライン間で製品を搬送する旋回テーブル及び平行テーブルが、炉を備えてなる構成も記載されている。

したがって、甲1発明において、互いに平行なライン間で製品を搬送する手段として、炉を備える、旋回テーブルあるいは平行テーブルを採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(エ)作用効果について
連続鋳造ラインにブルームを運び込む、旋回テーブルや平行テーブルが、炉を備える構成とすることにより、最適な熱の供給等の後処理を可能とするという効果については、炉を備えた旋回テーブルや平行テーブルが、甲第2号証に記載されており、これを採用することにより、自ずと得られる効果にすぎない。
よって、本件発明3が有する作用効果は、甲1発明、甲第2号証記載の技術的事項及び周知の技術的事項から当業者が予測できた範囲内のものである。

(オ)小括
以上のとおり、本件発明3は、甲1発明、甲第2号証記載の技術的事項及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

エ.本件発明4について
(ア)本件発明4は、上記「第3 3(1)」において認定したとおりのものである。

(イ)対比
本件発明4と甲1発明とを対比するに、上記「第3 3(1)ア.」の「(イ)対比」にて述べたと同様の相当関係があるから、本件発明4の用語を用いて表現すると、両者は上記「第3 3(1)ア.」の「(イ)対比」にて述べたとおりの点で一致する。
そして、両者は上記相違点1ないし3に加え、下記相違点5で相違する。

相違点5:本件発明4においては、旋回テーブル又は平行テーブルが、連続鋳造設備の運搬方向に対して逆向きの運搬方向を有するのに対し、甲1発明における移送装置22は、そのようなテーブルではない点。

(ウ)相違点の判断
a.相違点1ないし3について
上記「第3 3(3)ア.(ウ)」の「a.」及び「b.」、並びに「第3 3(3)イ.(ウ)b.」に示したとおりである。

b.相違点5について
甲第2号証の、上記「第3 3(2)イ.(イc)」には、互いに平行なライン間で製品を搬送する旋回テーブル及び平行テーブルが、それまでの運搬方向に対して逆向きの運搬方向を有する構成も記載されている。

したがって、甲1発明において、互いに平行なライン間で製品を搬送する手段として、それまでの運搬方向に対して逆向きの運搬方向を有する旋回テーブルあるいは平行テーブルを採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(エ)作用効果について
連続鋳造ラインにブルームを運び込む、旋回テーブルや平行テーブルにより、逆方向の運搬方向を付与することにより、コンパクトな構成とするという効果は、それまでと逆方向への運搬を行う旋回テーブルや平行テーブルが、甲第2号証に記載されており、これを採用することにより、自ずと得られる効果にすぎない。
よって、本件発明4が有する作用効果は、甲1発明、甲第2号証記載の技術的事項及び周知の技術的事項から当業者が予測できた範囲内のものである。

(オ)小括
以上のとおり、本件発明4は、甲1発明、甲第2号証記載の技術的事項及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

オ.本件発明5について
(ア)本件発明5は、上記「第3 3(1)」において認定したとおりのものである。

(イ)対比
本件発明5と甲1発明とを対比するに、上記「第3 3(1)ア.」の「(イ)対比」にて述べたと同様の相当関係があり、また、後者の「炉31」、「粗ロールスタンド32が配置されたライン」は、前者の「炉床炉」、「粗延べライン」に相当する。
また、後者の「炉31と粗ロールスタンド32とを有するライン」が、前者の「平行した圧延ライン」に相当することは、明らかである。
よって、本件発明5の用語を用いて表現すると、両者は上記「第3 3(1)ア.」の「(イ)対比」にて述べたとおりの点で一致する。
そして、両者は上記相違点1及び2に加え、下記相違点6で相違する。

相違点6:本件発明5は、平行した圧延ラインが、炉床炉と、垂直なエッジャーを備えた粗延べラインとを有するか、或いは、炉床炉と、垂直なエッジャーを備えた粗延べラインと、板圧延機とを有するのに対し、甲1発明においては、第2のプロセスルートが、炉31と粗ロールスタンド32が配置されたラインとを備えるものの、粗ロールスタンド32が配置されたラインに垂直なエッジャーが設けられているか不明である点。

(ウ)相違点の判断
a.相違点1及び2について
上記「第3 3(3)ア.(ウ)」の「a.」及び「b.」に示したとおりである。

b.相違点6について
甲第6号証の、上記「第3 3(2)ウ.」の「(ウa)」及び「(ウb)」には、仕上げ圧延機より前に、炉床炉とエッジャーとを備えた圧延ラインを設ける構成が記載されており、フランジを有する形鋼や、H形鋼、所望の板幅の製品等を得たい場合に、エッジャーを設けた圧延ラインを用いることは、周知の技術的事項であって、当業者がごく普通に採用する技術的事項である。
そして、そもそも、どのような形式の圧延機を備えるかは、所望の最終製品の形状に応じて、当業者が適宜選択する事項であって、甲1発明においても、求める最終製品の形状に応じて、炉31と粗ロールスタンド32が配置されたライン上に、エッジャーを備える構成とする程度のことは、当業者が通常の創作能力をもってなし得たことにすぎない。

(エ)作用効果について
仕上げ圧延ラインとして、一つ以上のタンデム式圧延ラインを後置することができ、全体として生産性を向上するとともに、移送する製品の対象範囲を広げるという効果については、エッジャーという、タンデム式の圧延を行う圧延機を用いることにより、圧延可能な製品が増加することは明らかであり、甲第6号証の構成を採用することにより、自ずと得られる効果にすぎない。
よって、本件発明5が有する作用効果は、甲1発明、甲第6号証記載の技術的事項及び周知の技術的事項から当業者が予測できた範囲内のものである。

(オ)小括
以上のとおり、本件発明5は、甲1発明、甲第6号証記載の技術的事項及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

カ.まとめ
したがって、本件発明1ないし本件発明5は、甲1発明、甲第2号証及び甲第6号証に記載の技術的事項並びに周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件発明1ないし本件発明5に係る特許は、いずれも、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

審判にかかる費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ローラーハース炉及び旋回テーブルを備えたCSP連続鋳造設備
【技術分野】
【0001】
この発明は、少なくとも一つの連続鋳造部分と、場合によっては少なくとも一つの圧延ユニットと、少なくとも一つの切断装置と、ストリップを焼鈍するための一つ以上の装置と、後置された圧延ラインとを有する連続鋳造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂CSP(コンパクトストリップ製造)設備により、圧延された熱間圧延ストリップの連続的かつ大幅に短い仕上げ圧延が可能である。この場合、溶鋼は、取鍋からタンデッシュに、そしてこのタンデッシュから、浸漬ノズルを用いてモールドに注入される。モールドは、高さの最後の3分の1において、ようやく両辺が平行となる形で細くなって行く漏斗の形状をしている。このモールド形状は、冷却された鋼鉄の典型的な収縮形態に対応している。この漏斗形状の利点は、特に、鋼鉄が応力が加わらずかつ外力が加わらない形で凝固することにあると見ることができる。その次に、このようにしてほぼ理想的な形で凝固した、約50mmの厚さの薄いブルームは、剪断機によって切断されて、連続炉により、1150度の均一な圧延温度にまで加熱される。その次に、900?1600mmの幅と0.8?6.53mmの厚さ用に設計された仕上げ圧延ラインでの圧延が行われる。極めて薄い鋼板を製造するためには、六つ又は七つの高性能な圧延機段を配備して、最後に、ストリップをコイルとして巻き取る巻取機にまで、ストリップを長い冷却ゾーンに通している。このCSP設備により、有利な輪郭特性、最善の表面品質及び小さい寸法公差を持つ高品質な熱間圧延ストリップが作られる。
【0003】
特許文献1により、少なくとも一つのブルーム製造ラインと、少なくとも一つの圧延ラインと、仕上げ技術に関して、ブルーム製造ラインとは独立した少なくとも一つのブルーム供給装置とを有する連続鋳造設備の動作方法が周知である。このブルーム供給装置は、ブルーム製造ラインの製造休止時間の間に、物流上の課題及び/又は生産技術的な課題にもとづき、最大限実現可能な範囲で圧延ラインへのブルームの供給を行っている。前述した別のブルーム製造ラインは、厚いブルームの製造ラインとして実現されており、その場合連続圧延設備のブルーム供給装置は、予め仕上げて置いたブルームを仕上げ技術に関して一時的に保留しているブルーム保管部からブルームを受け取っている。これらのブルームは、単独の粗延べラインにおいて、コイルにすることが可能な厚さにまで薄くされる。これらのコイルは、鋳造設備の直ぐ後の圧延ラインに供給される。
【特許文献1】欧州特許第1363750号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、CSP設備、即ち、薄いブルーム用設備において、生産性を向上するとともに、移送する製品の範囲を広げることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の上位概念の特徴を持つ連続鋳造設備において、連続鋳造設備に対して平行に延びる少なくとも一つの圧延ラインを、様々なサイズのブルームを連続鋳造設備のラインに運び込むための手段を備えた形で配置することによって解決される。平行した圧延ラインから様々なサイズのブルームを運び込むことによって、後置の圧延ラインの最大限の活用を達成するとともに、鋼鉄製品の無条件の投入を可能とする形で生産性の向上が実現される。
【0006】
この発明の改善構成では、連続鋳造ラインにブルームを運び込むために、旋回テーブル又は平行テーブルを配備するものと規定する。こうすることによって、特に、投入のために平行した圧延ラインから到来するブルームを検査するとともに、必要な場合、所要の後処理を受けさせることが可能となる。
【0007】
この発明による連続鋳造設備の実施形態において、旋回テーブル又は平行テーブルを、少なくとも部分的に炉床炉、特に、ローラーハース炉として構成するものと規定する。こうすることによって、運び込むブルームに関して最適な熱の供給及び最適な温度への均一化が可能となる。
【0008】
連続鋳造設備の別の実施形態は、旋回テーブルが、連続鋳造設備の運搬装置に対して逆方向の運搬装置を備えるものと規定し、そうすることによって、連続鋳造設備全体を極めてコンパクトに構成することができる。
【0009】
連続鋳造設備の理想的な構成では、平行する圧延ラインは、運び込むブルームの厚さをCSP設備に必要な開始時の厚さ、例えば、40?70mmの厚さにまで薄くするために、炉床炉と水平及び垂直なエッジャーを備えた粗延べライン又は板圧延機とを有するものと規定する。この発明による措置により、有利には、連続鋳造設備に続いて、仕上げ圧延ラインとして、一つ以上のタンデム式圧延ラインを後置することができ、その結果全体として、生産性を明らかに向上するとともに、すべての移送する製品の範囲を広げたCSP設備を実現することが達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
模式的に示す実施例にもとづき、この発明を詳しく説明する。
【0011】
連続鋳造設備1では、溶鋼が、取鍋炉2から詳しく図示されていないタンデッシュに注ぎ込まれて、そこから、同じく詳しく図示されていない浸漬ノズルを用いて、漏斗形モールドに注入される。漏斗形モールドからは、凝固した鋼鉄が、誘導圧延機を用いて、水平なローラーテーブル上に方向転換されて、そこで切断装置によって、薄いブルームの長さに切断される。これらの薄いブルームは、ローラーハース炉3に到達し、そこで、約1150度の均一な圧延温度にまで加熱されて、その温度に均一化され、場合によっては一時的に保留される。約50mmの厚さの切断された薄いブルームは、後置の仕上げ圧延ライン4に供給され、そこで、薄いブルームは、複数の圧延機段5により、0.8?6.35mmに薄くされる。その次に、圧延されたストリップは、ラミナー冷却による冷却ゾーン6に供給されて、その次に、巻取機7により、所謂コイルとして巻き取られる。
【0012】
ここで述べたCSP設備の生産性を向上するとともに、移送する製品の範囲を広げることを可能とするために、連続鋳造設備1の他に、例えば、従来の厚さのブルーム又は中間的な厚さのブルーム用の炉と、連続鋳造設備1に運び込むブルームをCSP設備での約50mmの厚さにまで薄くするための二つの圧延機段による粗延べライン9又は板圧延機とを備えた平行した圧延ライン8を配置している。これらのブルームは、旋回テーブル又は平行テーブル10又は10’によって、外からCSPラインに運び込まれて来て、そこに配置されたローラーハース炉3内で所要の圧延温度にまで加熱されるとともに、その次に後置の仕上げ圧延ライン4に供給されて、そこで前述した手法で圧延、冷却されて、コイルとして巻き取ることができるような温度に均一化される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】旋回テーブルを用いてブルームを連続鋳造設備に運び込むための平行した圧延ラインを備えた二連式連続鋳造設備と後置の仕上げ圧延ラインによるCSP設備
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの連続鋳造部分、或いは少なくとも一つの連続鋳造部分及び少なくとも一つの圧延ユニットと、少なくとも一つの切断装置と、ストリップを焼鈍するための一つ以上の装置(3)と、後置された圧延ライン(4)とを有する連続鋳造設備(1)において、
連続鋳造設備に対して平行に延びる、連続鋳造部分を前置していない少なくとも一つの圧延ライン(8)が、様々なサイズのブルームを連続鋳造設備(1)のラインに運び込むための手段(10)を備えた形で配置されていることを特徴とする連続鋳造設備。
【請求項2】
連続鋳造設備のラインにブルームを持ち込むために、旋回テーブル又は平行テーブル(10)が配備されていることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造設備。
【請求項3】
旋回テーブル又は平行テーブル(10)が、少なくとも部分的に炉床炉として構成されていることを特徴とする請求項2に記載の連続鋳造設備。
【請求項4】
旋回テーブル又は平行テーブル(10)が、連続鋳造設備の運搬方向に対して逆向きの運搬方向を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の連続鋳造設備。
【請求項5】
平行した圧延ライン(8)が、運び込むブルームの厚さをCSP設備に必要な開始時の厚さにまで薄くするために、炉床炉と、垂直なエッジャーを備えた粗延べラインとを有するか、或いは炉床炉と、垂直なエッジャーを備えた粗延べラインと、板圧延機とを有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の連続鋳造設備。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2012-06-18 
結審通知日 2012-06-20 
審決日 2012-07-03 
出願番号 特願2007-503313(P2007-503313)
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (B22D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 國方 康伸  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 加藤 友也
松岡 美和
登録日 2007-08-24 
登録番号 特許第4001617号(P4001617)
発明の名称 ローラーハース炉及び旋回テーブルを備えたCSP連続鋳造設備  
代理人 篠原 淳司  
代理人 江崎 光史  
代理人 松元 洋  
代理人 光石 春平  
代理人 清田 栄章  
代理人 江崎 光史  
代理人 光石 俊郎  
代理人 田中 康幸  
代理人 篠原 淳司  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 鍛冶澤 寛  
代理人 清田 栄章  
代理人 光石 忠敬  

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