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審決分類 審判 全部無効 発明同一  H01L
管理番号 1267258
審判番号 無効2011-800225  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-11-02 
確定日 2012-11-09 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4124248号発明「発光装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 事案の概要
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第4124248号(以下「本件特許」という。登録時の請求項の数は1である。)の請求項1に係る発明についての特許を無効とすることを求める事案である。


第2 手続の経緯
1 出願の経緯
本件特許の出願の経緯は、以下のとおりである。

平成 9年 7月29日 特願平10-508693号
(以下「原出願」という。)出願
国内優先権主張:特願平8-198585号(平成8年7月29日)
特願平8-244339号(平成8年9月17日)
特願平8-245381号(平成8年9月18日)
特願平8-359004号(平成8年12月27日)
特願平9-81010号(平成9年3月31日)
平成14年 9月24日 特願2002-278066号
(以下「第1世代分割出願」という。)出願
平成17年 5月19日 特願2005-147093号
(以下「第2世代分割出願」という。)出願
平成18年 7月19日 特願2006-196344
(以下「本件出願」という。)出願
平成18年 8月19日 手続補正書
平成19年10月30日 拒絶理由通知書
平成20年 1月 7日 手続補正書、意見書
平成20年 4月 7日 特許査定
平成20年 5月16日 設定登録(特許第4124248号)

2 本件審判の経緯
本件審判の経緯は、以下のとおりである。

平成23年11月 2日 無効審判請求
平成24年 1月20日 訂正請求、審判事件答弁書提出
平成24年 3月19日 審判事件弁駁書提出
平成24年 6月 7日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成24年 6月 7日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成24年 6月21日 口頭審理


第3 訂正請求についての当審の判断
1 訂正請求の内容
被請求人が平成24年1月20日にした訂正請求(以下、同訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)について、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを請求するものであって、以下の事項をその訂正内容とするものである(訂正による変更部分に下線を付した。)。

(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1において、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「前記第1の発光素子の発光ピーク波長は400nmから530nmの範囲にあり、」とあるのを、
『前記第1の発光素子の発光ピーク波長は420nmから490nmの範囲にあり、』
と訂正する(訂正請求書4頁)。

(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1において、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「前記蛍光体の発光ピーク波長は510nmから600nmの範囲にあり、」とあるのを、
『前記蛍光体の発光ピーク波長は510nmから600nmの範囲にあり、
前記第1の発光素子からの光と前記蛍光体からの光との混色により白色系を発光し、』
と訂正する(同4頁)。

(3)訂正事項c
訂正事項aおよびbに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の整合性を図るために、明りょうでない記載の釈明を目的として、本件特許明細書の段落0011に係る記載、
「【0011】
本発明の発光装置は、窒化ガリウム系半導体を発光層に含む第1の発光素子と、その第1の発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体と、を備えた発光装置において、前記発光装置は、前記第1の発光素子とは別に、ガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐、インジウムアルミニウム燐から選択された半導体を発光層に含む第2の発光素子を備えたことを特徴とする。
尚、発光素子と蛍光体とを備えた発光装置において、
(1)発光素子としては、高輝度の発光が可能で、かつその発光特性が長期間の使用に対して安定していること、
(2)蛍光体としては、上述の高輝度の発光素子に近接して設けられて、該発光素子からの強い光にさらされて長期間使用した場合においても、特性変化の少ない耐光性及び耐熱性等に優れていること(特に発光素子周辺に近接して配置される蛍光体は、我々の検討によると太陽光に比較して約30倍?40倍に及ぶ強度を有する光にさらされるので、発光素子として高輝度のものを使用すれば使用する程、蛍光体に要求される耐光性は厳しくなる)、
(3)発光素子と蛍光体との関係としては、蛍光体が発光素子からのスペクトル幅をもった単色性ピーク波長の光を効率よく吸収すると共に効率よく異なる発光波長が発光可能であること、が必要であると考えられる。」を、
『【0011】
本発明の発光装置は、窒化ガリウム系半導体を発光層に含む第1の発光素子と、その第1の発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体と、を備えた発光装置において、
前記第1の発光素子の発光ピーク波長は420nmから490nmの範囲にあり、
前記蛍光体の発光ピーク波長は510nmから600nmの範囲にあり、
前記第1の発光素子からの光と前記蛍光体からの光との混色により白色系を発光し、 前記発光装置は、前記第1の発光素子とは別に、ガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐、インジウムアルミニウム燐から選択された半導体を発光層に含む、前記蛍光体を実質的に励起しない第2の発光素子を備えたことを特徴とする。
尚、発光素子と蛍光体とを備えた発光装置において、
(1)発光素子としては、高輝度の発光が可能で、かつその発光特性が長期間の使用に対して安定していること、
(2)蛍光体としては、上述の高輝度の発光素子に近接して設けられて、該発光素子からの強い光にさらされて長期間使用した場合においても、特性変化の少ない耐光性及び耐熱性等に優れていること(特に発光素子周辺に近接して配置される蛍光体は、我々の検討によると太陽光に比較して約30倍?40倍に及ぶ強度を有する光にさらされるので、発光素子として高輝度のものを使用すれば使用する程、蛍光体に要求される耐光性は厳しくなる)、
(3)発光素子と蛍光体との関係としては、蛍光体が発光素子からのスペクトル幅をもった単色性ピーク波長の光を効率よく吸収すると共に効率よく異なる発光波長が発光可能であること、が必要であると考えられる。』
と訂正する(同4?6頁)。

(4)訂正事項d
誤記の訂正を目的として、本件特許明細書の段落0013に係る記載、
「【0013】
窒化物系化合物半導体(一般式IniGajAlkN、ただし、0≦i,0≦j,0≦k,i+j+k=1)としては、InGaNや各種不純物がドープされたGaNを始め、種々のものが含まれる。」とあるのを、
『【0013】
窒化物系化合物半導体(一般式In_(i)Ga_(j)Al_(k)N、ただし、0≦i,0≦j,0≦k,i+j+k=1)としては、InGaNや各種不純物がドープされたGaNを始め、種々のものが含まれる。』
と訂正する(同6頁)。

(5)訂正事項e
誤記の訂正を目的として、本件特許明細書の段落0016に係る記載、
「【0016】
本発明の発光装置においては、前記フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いることができ(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体用いた場合と同様の優れた特性が得られる。」とあるのを、
『【0016】
本発明の発光装置においては、前記フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いることができ(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体用いた場合と同様の優れた特性が得られる。』
と訂正する(同6?7頁)。

(6)訂正事項f
誤記の訂正を目的として、本件特許明細書の段落0017に係る記載、
「【0017】
また、本発明の発光装置では、発光特性(発光波長や発光強度等)の温度依存性を小さくするために、前記フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12)で表される蛍光体(ただし、0≦p≦0.8、0.003≦q≦0.2、0.0003≦r≦0.08、0≦s≦1)を用いることが好ましい。」とあるのを、
『【0017】
また、本発明の発光装置では、発光特性(発光波長や発光強度等)の温度依存性を小さくするために、前記フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12)で表される蛍光体(ただし、0≦p≦0.8、0.003≦q≦0.2、0.0003≦r≦0.08、0≦s≦1)を用いることが好ましい。』
と訂正する(同7頁)。

(7)訂正事項g
誤記の訂正を目的として、本件特許明細書の段落0019に係る記載、
「【0019】
さらに、本発明の発光装置では、発光装置の発光波長を所定の値に設定するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれ一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ce(ただし、O≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)で表され、互いに組成の異なる2以上の蛍光体を含むことが好ましい。」とあるのを、
『【0019】
さらに、本発明の発光装置では、発光装置の発光波長を所定の値に設定するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれ一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ce(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)で表され、互いに組成の異なる2以上の蛍光体を含むことが好ましい。』
と訂正する(同7?8頁)。

(8)訂正事項h
誤記の訂正を目的として、本件特許明細書の段落0020に係る記載、
「【0020】
また、本発明の発光装置においては、発光波長を調整するために前記フォトルミネッセンス蛍光体は、一般式Y_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表される第1の蛍光体と、一般式Re_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される第2の蛍光体とを含んでもよい。
但し、0≦s≦1、Reは、Y、Ga、Laから選択される少なくとも一種である。
また、本発明の発光装置においては、発光波長を調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において、イットリウムの一部がガドリニウムに置換され、互いに置換量が異なる第1の蛍光体と第2の蛍光体とを含むようにしてもよい。」とあるのを、
『【0020】
また、本発明の発光装置においては、発光波長を調整するために前記フォトルミネッセンス蛍光体は、一般式Y_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表される第1の蛍光体と、一般式Re_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される第2の蛍光体とを含んでもよい。
但し、0≦s≦1、Reは、Y、Ga、Laから選択される少なくとも一種である。
また、本発明の発光装置においては、発光波長を調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において、イットリウムの一部がガドリニウムに置換され、互いに置換量が異なる第1の蛍光体と第2の蛍光体とを含むようにしてもよい。』
と訂正する(同8?9頁)。

(9)訂正事項i
誤記の訂正を目的として、本件特許明細書の段落0027に係る記載、
「【0027】
本発明の発光ダイオードにおいては、前記フォトルミネッセンス蛍光体が、YとAlを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むことが好ましく、
また、本発明の発光ダイオードでは、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)を用いても良い。
また、本発明の発光ダイオードでは、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12)で表される(ただし、0≦p≦0.8、0.003≦q≦0.2、0.0003≦r≦0.08、0≦s≦1)蛍光体を用いることもできる。」とあるのを、
『【0027】
本発明の発光ダイオードにおいては、前記フォトルミネッセンス蛍光体が、YとAlを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むことが好ましく、
また、本発明の発光ダイオードでは、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)を用いても良い。
また、本発明の発光ダイオードでは、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12)で表される(ただし、0≦p≦0.8、0.003≦q≦0.2、0.0003≦r≦0.08、0≦s≦1)蛍光体を用いることもできる。』(同9?10頁)

(10)訂正事項j
誤記の訂正を目的として、本件特許明細書の段落0029に係る記載
「【0029】
本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、それぞれ一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表され(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)、互いに組成の異なる2以上の蛍光体を用いてもよい。」とあるのを、
『【0029】
本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、それぞれ一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表され(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)、互いに組成の異なる2以上の蛍光体を用いてもよい。』
と訂正する(同10頁)。

(11)訂正事項k
誤記の訂正を目的として、本件特許明細書の段落0030に係る記載、
「【0030】
本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式Y_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表される第1の蛍光体と、一般式Re_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される第2の蛍光体とを用いてもよい。ここで、0≦s≦1、Reは、Y、Ga、Laから選択される少なくとも一種である。」とあるのを、
『【0030】
本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式Y_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表される第1の蛍光体と、一般式Re_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される第2の蛍光体とを用いてもよい。ここで、0≦s≦1、Reは、Y、Ga、Laから選択される少なくとも一種である。』
と訂正する(同10?11頁)。

(12)訂正事項l
誤記の訂正を目的として、本件特許明細書の段落0045に係る記載、
「【0045】
以下、本実施形態1の発光ダイオードの各構成部材について詳述する。
(フォトルミネセンス蛍光体)
本実施形態1の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体は、半導体発光層から発光された可視光や紫外線で励起されて、励起した光と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体である。具体的にはフォトルミネセンス蛍光体として、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びlnから選択された少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体である。本発明では、該蛍光体として、YとAlを含みセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体、又は、一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ce(但し、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種)であらわされる蛍光体を用いることが好ましい。窒化ガリウム系化合物半導体を用いた発光素子が発光するLED光と、ボディーカラーが黄色であるフォトルミネセンス蛍光体が発光する蛍光光が補色関係にある場合、LED光と、蛍光光とを混色して出力することにより、全体として白色系の光を出力することができる。」とあるのを、
『【0045】
以下、本実施形態1の発光ダイオードの各構成部材について詳述する。
(フォトルミネセンス蛍光体)
本実施形態1の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体は、半導体発光層から発光された可視光や紫外線で励起されて、励起した光と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体である。具体的にはフォトルミネセンス蛍光体として、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びlnから選択された少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体である。本発明では、該蛍光体として、YとAlを含みセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体、又は、一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ce(但し、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種)であらわされる蛍光体を用いることが好ましい。窒化ガリウム系化合物半導体を用いた発光素子が発光するLED光と、ボディーカラーが黄色であるフォトルミネセンス蛍光体が発光する蛍光光が補色関係にある場合、LED光と、蛍光光とを混色して出力することにより、全体として白色系の光を出力することができる。』
と訂正する(同11?12頁)。

(13)訂正事項m
誤記の訂正を目的として、本件特許明細書の段落0051に係る記載、
「【0051】
表1に一般式(Y1-aGda)_(3)(Al1-bGab)_(5)O_(12):Ceで表されるYAG系蛍光体の組成とその発光特性を示す。」とあるのを、
『【0051】
表1に一般式(Y_(1-a)Gd_(a))_(3)(Al_(1-b)Ga_(b))_(5)O_(12):Ceで表されるYAG系蛍光体の組成とその発光特性を示す。』
と訂正する(同12頁)。

(14)訂正事項n
誤記の訂正を目的として、本件特許明細書の段落0058に係る記載、
「【0058】
一般式(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Smr)_(3)Al_(5)O_(12)で表すことができるフォトルミネセンス蛍光体は、結晶中にGdを含有することにより、特に460nm以上の長波長城の励起発光効率を高くすることができる。また、ガドリニウムの含有量を増加させることにより、発光ピーク波長を、530nmから570nmまで長波長に移動させ、全体の発光波長も長波長側にシフトさせることができる。赤みの強い発光色が必要な場合、Gdの置換量を多くすることで達成できる。一方、Gdが増加すると共に、青色光によるフォトルミネセンスの発光輝度は徐々に低下する。したがって、pは0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましい。さらに好ましくは0.6以下である。」
とあるのを、
『【0058】
一般式(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Sm_(r))_(3)Al_(5)O_(12)で表すことができるフォトルミネセンス蛍光体は、結晶中にGdを含有することにより、特に460nm以上の長波長城の励起発光効率を高くすることができる。また、ガドリニウムの含有量を増加させることにより、発光ピーク波長を、530nmから570nmまで長波長に移動させ、全体の発光波長も長波長側にシフトさせることができる。赤みの強い発光色が必要な場合、Gdの置換量を多くすることで達成できる。一方、Gdが増加すると共に、青色光によるフォトルミネセンスの発光輝度は徐々に低下する。したがって、pは0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましい。さらに好ましくは0.6以下である。』
と訂正する(同13頁)。

(15)訂正事項o
誤記の訂正を目的として、本件特許明細書の段落0059に係る記載、
「【0059】
また、一般式(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Smr)_(3)Al_(5)O_(12)で表されるSmを含むフォトルミネセンス蛍光体は、Gdの含有量を増加させても温度特性の低下を少なくできる。
すなわち、Smを含有させることにより、高温度におけるフォトルミネセンス蛍光体の発光輝度の劣化は大幅に改善される。その改善される程度はGdの含有量が多くなるほど、大きくなる。特に、Gdの含有量を増加させてフォトルミネセンスの発光の色調に赤みを付与した組成の蛍光体は、温度特性が悪くなるので、Smを含有させて温度特性を改善することが有効である。なお、ここで言う温度特性とは、450nmの青色光による常温(25℃)における励起発光輝度に対する、同蛍光体の高温(200℃)における発光輝度の相対値のことである。」
とあるのを、
『【0059】
また、一般式(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Sm_(r))_(3)Al_(5)O_(12)で表されるSmを含むフォトルミネセンス蛍光体は、Gdの含有量を増加させても温度特性の低下を少なくできる。
すなわち、Smを含有させることにより、高温度におけるフォトルミネセンス蛍光体の発光輝度の劣化は大幅に改善される。その改善される程度はGdの含有量が多くなるほど、大きくなる。特に、Gdの含有量を増加させてフォトルミネセンスの発光の色調に赤みを付与した組成の蛍光体は、温度特性が悪くなるので、Smを含有させて温度特性を改善することが有効である。なお、ここで言う温度特性とは、450nmの青色光による常温(25℃)における励起発光輝度に対する、同蛍光体の高温(200℃)における発光輝度の相対値のことである。』
と訂正する(同13?14頁)。

(16)訂正事項p
誤記の訂正を目的として、本件特許明細書の段落0078に係る記載、
「【0078】
発明の実施2.
本発明に係る実施の形態2の発光ダイオードは、発光素子として発光層に高エネルギーバンドギャップを有する窒化ガリウム系半導体を備えた素子を用い、フォトルミネセンス蛍光体として、互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体、好ましくはセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含む蛍光体を用いる。これにより実施の形態2の発光ダイオードは、発光素子によって発光されるLED光の発光波長が、製造バラツキ等により所望値からずれた場合でも、2種類以上の蛍光体の含有量を調節することによって所望の色調を待った発光ダイオードを作製できる。
この場合、発光波長が比較的短い発光素子に対しては、発光波長が比較的短い蛍光体を用い、発光波長が比較的長い発光素子には発光波長が比較的長い蛍光体を用いることで発光ダイオードから出力される発光色を一定にすることができる。
蛍光体に関して言うと、フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表されるセリウムで付活された蛍光体を用いることもできる。但し、0<r≦1、0≦s≦1、Reは、Y、Gd、Laから選択される少なくとも一種である。これにより発光素子から放出された可視光域における高エネルギーを有する光が長時間高輝度に照射された場合や種々の外部環境の使用下においても蛍光体の変質を少なくできるので、発光色の色ずれや発光輝度の低下が極めて少なく、かつ高輝度の所望の発光成分を有する発光ダイオードを構成できる。」とあるのを、
『【0078】
発明の実施2.
本発明に係る実施の形態2の発光ダイオードは、発光素子として発先層に高エネルギーバンドギャップを有する窒化ガリウム系半導体を備えた素子を用い、フォトルミネセンス蛍光体として、互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体、好ましくはセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含む蛍光体を用いる。これにより実施の形態2の発光ダイオードは、発光素子によって発光されるLED光の発光波長が、製造バラツキ等により所望値からずれた場合でも、2種類以上の蛍光体の含有量を調節することによって所望の色調を待った発光ダイオードを作製できる。
この場合、発光波長が比較的短い発光素子に対しては、発光波長が比較的短い蛍光体を用い、発光波長が比較的長い発光素子には発光波長が比較的長い蛍光体を用いることで発光ダイオードから出力される発光色を一定にすることができる。
蛍光体に関して言うと、フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表されるセリウムで付活された蛍光体を用いることもできる。但し、0<r≦1、0≦s≦1、Reは、Y、Gd、Laから選択される少なくとも一種である。これにより発光素子から放出された可視光域における高エネルギーを有する光が長時間高輝度に照射された場合や種々の外部環境の使用下においても蛍光体の変質を少なくできるので、発光色の色ずれや発光輝度の低下が極めて少なく、かつ高輝度の所望の発光成分を有する発光ダイオードを構成できる。』
と訂正する(同14?16頁)。

(17)訂正事項q
誤記の訂正を目的として、本件特許明細書に係る段落0094に係る記載、
「【0094】
すなわち、RGBの3つの発光ダイオードを用いて白色系の表示をさせるLED表示器は、RGBの各発光ダイオードの発光出力を調節して表示させる必要があるため、各発光ダイオードの発光強度、温度特性などを考慮して各発光ダイオードを制御しなけれはならないので、該LED表示器を駆動する駆動回路は複雑になるという問題点があった。しかしながら、本願発明の表示装置においては、LED表示器601が、RGBの3種類の発光ダイオードを用いることなく、本願発明に係る白色系の発光が可能な発光ダイオード501を用いて構成されているので、駆動回路がRGBの各発光ダイオードを個別に制御する必要がなく、駆動回路の構成を簡単にでき、表示装置を安価にできる」とあるのを、
『【0094】
すなわち、RGBの3つの発光ダイオードを用いて白色系の表示をさせるLED表示器は、RGBの各発光ダイオードの発光出力を調節して表示させる必要があるため、各発光ダイオードの発光強度、温度特性などを考慮して各発光ダイオードを制御しなければならないので、該LED表示器を駆動する駆動回路は複雑になるという問題点があった。しかしながら、本願発明の表示装置においては、LED表示器601が、RGBの3種類の発光ダイオードを用いることなく、本願発明に係る白色系の発光が可能な発光ダイオード501を用いて構成されているので、駆動回路がRGBの各発光ダイオードを個別に制御する必要がなく、駆動回路の構成を簡単にでき、表示装置を安価にできる』
と訂正する(同16?17頁)。

(18)訂正事項r
明りょうでない記載の釈明を目的として、本件特許明細書の段落0099に係る記載、
「【0099】
このような表示装置における駆動回路では、白色系発光ダイオードを所望の輝度で点灯させるためのパルス信号を演算する階調制御回路としてCPUを別途備えることが好ましい。階調制御回路から出力されるパルス信号は、白色系発光ダイオードのドライバに入力されてドライバをスイッチングさせる。ドライバがオンになると白色系発光ダイオードが点灯され、オフになると消灯される。」とあるのを、
『【0099】
このような表示装置における駆動回路では、白色系発光ダイオードを所望の輝度で点灯させるためのパルス信号を演算する階調制御回路としてCPUを別途備えることが好ましい。階調制御回路から出力されるパルス信号は、白色系発光ダイオードのドライバーに入力されてドライバーをスイッチングさせる。ドライバーがオンになると白色系発光ダイオードが点灯され、オフになると消灯される。』
と訂正する(同17頁)。

(19)訂正事項s
誤記の訂正を目的として、本件特許明細書の段落0100に係る記載、
「【0100】
(信号機)
本願発明の発光ダイオードを表示装置の1種である信号機として利用した場合、長時間安定して発光させることが可能であると共に発光ダイオードの一部が消灯しても色むらなどが生じないという特長がある。本願発明の発光ダイオードを用いた信号機の概略構成として、導電性パターンが形成された基坂上に白色系発光ダイオードを所定の配列に配置する。このような発光ダイオードを直列又は直並列に接続された発光ダイオードの回路を発光ダイオード群として扱う。発光ダイオード群を2つ以上用いそれぞれ渦巻き状に発光ダイオードを配置させる。全ての発光ダイオードが配置されると円状に全面に配置される。
各発光ダイオード及び基板から外部電力と接続させる電源コードをそれぞれ、ハンダにより接続した後、鉄道信号用の匡体内に固定する。LED表示器は、遮光部材が付いたアルミダイキャストの匡体内に配置され表面にシリコーンゴムの充填材で封止されている。匡体の表示面は、白色レンズを設けてある。また、LED表示器の電気的配線は、筐体の裏面から筐体を密閉するためにゴムパッキンを介して通し、筐体内を密閉する。このようにして白色系信号機を形成することができる。本願発明の発光ダイオードを、複数の群に分け中心部から外側に向け輪を描く渦巻き状などに配置し、並列接続することでより信頼性が高い信号機を構成することができる。この場合、中心部から外側に向け輪を描くことにより、信頼性が高い信号機を構成することができる。中心部から外側に向け輪を描くことには、連続的に輪を描くものも断続的に配置するものの双方を含む。したがって、LED表示器の表示面積などを考慮して、配置される発光ダイオードの数や発光ダイオード群の数を種々選択することができる。この信号機により、一方の発光ダイオード群や一部の発光ダイオードが何らかのトラブルにより消灯したとしても他方の発光ダイオード群や残った発光ダイオードにより信号機を円形状に均一に発光させることが可能となるり、色ずれが生ずることもない。渦巻き状に配置してあることから中心部を密に配置することができ電球発光の信号と何ら違和感なく駆動させることができる。」とあるのを、
『【0100】
(信号機)
本願発明の発光ダイオードを表示装置の1種である信号機として利用した場合、長時間安定して発光させることが可能であると共に発光ダイオードの一部が消灯しても色むらなどが生じないという特長がある。本願発明の発光ダイオードを用いた信号機の概略構成として、導電性パターンが形成された基坂上に白色系発光ダイオードを所定の配列に配置する。このような発光ダイオードを直列又は直並列に接続された発光ダイオードの回路を発光ダイオード群として扱う。発光ダイオード群を2つ以上用いそれぞれ渦巻き状に発光ダイオードを配置させる。全ての発光ダイオードが配置されると円状に全面に配置される。
各発光ダイオード及び基板から外部電力と接続させる電源コードをそれぞれ、ハンダにより接続した後、鉄道信号用の匡体内に固定する。LED表示器は、遮光部材が付いたアルミダイキャストの匡体内に配置され表面にシリコーンゴムの充填材で封止されている。匡体の表示面は、白色レンズを設けてある。また、LED表示器の電気的配線は、筐体の裏面から筐体を密閉するためにゴムパッキンを介して通し、筐体内を密閉する。このようにして白色系信号機を形成することができる。本願発明の発光ダイオードを、複数の群に分け中心部から外側に向け輪を描く渦巻き状などに配置し、並列接続することでより信頼性が高い信号機を構成することができる。この場合、中心部から外側に向け輪を描くことにより、信頼性が高い信号機を構成することができる。中心部から外側に向け輪を描くことには、連続的に輪を描くものも断続的に配置するものの双方を含む。したがって、LED表示器の表示面積などを考慮して、配置される発光ダイオードの数や発光ダイオード群の数を種々選択することができる。この信号機により、一方の発光ダイオード群や一部の発光ダイオードが何らかのトラブルにより消灯したとしても他方の発光ダイオード群や残った発光ダイオードにより信号機を円形状に均一に発光させることが可能となり、色ずれが生ずることもない。渦巻き状に配置してあることから中心部を密に配置することができ電球発光の信号と何ら違和感なく駆動させることができる。』
と訂正する(同17?19頁)。

2 訂正の適否
(1)各訂正事項について
ア 訂正事項aについて
訂正事項aは、訂正前の請求項1の「第1の発光素子の発光ピーク波長」につき、「400nmから530nmの範囲にあり、」とあったものを、『420nmから490nmの範囲にあり、』と訂正して、前記「第1の発光素子の発光ピーク波長」の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
また、上記訂正事項aは、本件特許明細書に、「本実施形態1の発光ダイオードにおいて白色系を発光させる場合は、フォトルミネセンス蛍光体との補色関係や樹脂の劣化等を考慮して発光素子の発光波長は400nm以上530nm以下に設定することが好ましく、420nm以上490nm以下に設定することがより好ましい。」(【0067】)と記載されていることから、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであることは明らかである。
また、上記訂正事項aは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項bについて
訂正事項bは、訂正前の請求項1の「第1の発光素子によって発光された光」及び「『(フォトルミネセンス)蛍光体』の発光する光」につき、『前記第1の発光素子からの光と前記蛍光体からの光との混色により白色系を発光し、』との特定事項を追加して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
また、上記訂正事項aは、本件特許明細書に、「…本発明の発光装置において、前記発光素子の発光スペクトルの主ピークが400nmから530nmの範囲内に設定し、かつ前記フォトルミネッセンス蛍光体の主発光波長が前記発光素子の主ピークより長くなるように設定することが好ましい。これによって、白色系の光を効率よく発光させることができる。」(【0021】)、「本願発明に係る実施の形態1の発光ダイオードは、発光層に高エネルギーバンドギャッブを有し、青色系の発光が可能な窒化ガリウム系化合物半導体素子と、黄色系の発光が可能なフォトルミネセンス蛍光体である、セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネッセンス蛍光体とを組み合わせたものである。これによって、この実施形態1の発光ダイオードにおいて、発光素子102,202からの青色系の発光と、その発光によって励起されたフォトルミネセンス蛍光体からの黄色系の発光光との混色により白色系の発光が可能になる。」(【0043】)、「…窒化ガリウム系化合物半導体を用いた発光素子が発光するLED光と、ボディーカラーが黄色であるフォトルミネセンス蛍光体が発光する蛍光光が補色関係にある場合、LED光と、蛍光光とを混色して出力することにより、全体として白色系の光を出力することができる。」(【0045】)及び「本実施形態1の発光ダイオードにおいて白色系を発光させる場合は、フォトルミネセンス蛍光体との補色関係や樹脂の劣化等を考慮して発光素子の発光波長は400nm以上530nm以下に設定することが好ましく、420nm以上490nm以下に設定することがより好ましい。」(【0067】)と記載されていることから、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであることは明らかである。
また、上記訂正事項bは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項cについて
訂正事項cは、訂正事項a及び訂正事項bによる特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の整合性を図るために、本件特許明細書の【0011】において、上記訂正事項a及びbと同様の訂正を行うものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明りようでない記載の釈明を目的とするものと認められる。
また、上記訂正事項cは、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであることは明らかであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項d?pについて
訂正事項d?pは、本件特許明細書の【0013】、【0016】、【0017】、【0019】、【0020】、【0027】、【0029】、【0030】、【0045】、【0051】、【0058】、【0059】及び【0078】において、半導体または蛍光体の組成を示す一般式につき、下付き文字とすべきであった記載を、下付き文字に訂正するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものと認められる。
また、上記訂正事項d?pは、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであることは明らかであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

オ 訂正事項qについて
訂正事項qは、本件特許明細書の【0094】において、「制御しなけれはならない」とあった記載の誤記を正して、『制御しなければならない』と訂正するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものと認められる。
また、上記訂正事項qは、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであることは明らかであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

カ 訂正事項rについて
訂正事項rは、本件特許明細書の【0099】において、「ドライバ」とあった記載を、同明細書の【0097】の記載と整合させるために『ドライバー』と訂正するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明りようでない記載の釈明を目的とするものと認められる。
また、上記訂正事項rは、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであることは明らかであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

キ 訂正事項sについて
訂正事項sは、本件特許明細書の【0100】において、「均一に発光させることが可能となるり、」とあった記載の誤記を正して、『均一に発光させることが可能となり、』と訂正するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものと認められる。
また、上記訂正事項sは、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであることは明らかであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)まとめ
したがって、上記訂正事項a?訂正事項sは、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、同第2号に掲げる誤記の訂正あるいは同第3号に掲げる明りようでない記載の釈明を目的とするものと認められ、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもないから、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

3 本件訂正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正を認める。


第4 本件訂正発明
上記のとおり、本件訂正が認められたので、本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明」という。)は、次のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
窒化ガリウム系半導体を発光層に含む第1の発光素子と、その第1の発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体と、を備えた発光装置において、
前記第1の発光素子の発光ピーク波長は420nmから490nmの範囲にあり、
前記蛍光体の発光ピーク波長は510nmから600nmの範囲にあり、
前記第1の発光素子からの光と前記蛍光体からの光との混色により白色系を発光し、
前記発光装置は、前記第1の発光素子とは別に、ガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐、インジウムアルミニウム燐から選択された半導体を発光層に含む、前記蛍光体を実質的に励起しない第2の発光素子を備えたことを特徴とする発光装置。」

第5 請求人の主張の概要及び証拠方法
請求人は、審判請求書(以下「請求書」という。)において、本件特許の請求項1に係る発明は、出願日前の他の特許出願であって出願後に出願公開された甲第1号証の出願当初明細書に記載された発明と同一であるから、特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法123条1項2号の規定により無効とすべきであるとし(4頁)、また、審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)において、平成24年1月20日付訂正請求書による訂正後の発明(本件訂正発明)も、同様に特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものであるとして、以下のように主張している。
1 審判請求書
(1)本件発明
ア 本件発明の要旨
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、本件特許の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された以下のとおりである(分説して示す)。

1A 窒化ガリウム系半導体を発光層に含む第1の発光素子と、その第1の発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体と、を備えた発光装置において、
1B 前記第1の発光素子の発光ピーク波長は400nmから530nmの範囲にあり、
1C 前記蛍光体の発光ピーク波長は510nmから600nmの範囲にあり、
1D 前記発光装置は、前記第1の発光素子とは別に、ガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐、インジウムアルミニウム燐から選択された半導体を発光層に含む、前記蛍光体を実質的に励起しない第2の発光素子を備えた
1E ことを特徴とする発光装置(4頁)。

イ 本件発明の優先日
本件発明の優先日は、以下に述べるとおり、原出願の国際出願日である平成9年(1997年)7月29日である。
(ア)出願経過での審査官の指摘及び被請求人の対応
本件特許出願の審査過程において、審査官は、平成19年10月30日付拒絶理由通知書で、「本願発明に関する優先日は、平成9年7月29日であると認める」と指摘した(5頁)。
上記の審査官の指摘に対して、出願人たる被請求人は、平成20年1月7日意見書において、優先日について争うことなく、また、審査官が指摘した公知文献(特開平9-167861号公報。優先日が平成9年7月29日であることにより公知文献となる文献。)に対して、特段の異議を述べていない(6頁)。
(イ)本件発明の内容
本件発明の構成要件1-Dは、「前記発光装置は、前記第1の発光素子とは別に、ガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐、インジウムアルミニウム燐から選択された半導体を発光層に含む、前記蛍光体を実質的に励起しない第2の発光素子」というものである。かかる構成要件1-Dに関して、出願当初明細書の段落【0069】には、「なお、本願発明では、蛍光体を励起する光を発生する発光素子に加えて、蛍光体を励起しない発光素子を一緒に用いることもできる。具体的には、蛍光体を励起可能な窒化物系化合物半導体である発光素子に加えて、蛍光体を実質的に励起しない、発光層がガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐やインジウムアルミニウム燐などである発光素子を一緒に配置する。このようにすると、蛍光体を励起しない発光素子からの光は、蛍光体に吸収されることなく外部に放出される。これによって、紅白が発光可能な発光ダイオードとすることができる。」と記載されていた(6頁)。
他方で原出願が優先権主張した出願(特願平8-198585、特願平8-244339、特願平8-245381、特願平8-359004、特願平9-81010)には、構成要件1-Dの記載や、出願当初明細書の段落【0069】に相当する記載はない。
したがって、審査官の指摘通り、本件特許の優先日は、平成9年(1997年)7月29日(以下、平成9年7月29日を単に「本件優先日」という)であるといえる(7頁)。
(2)特許法第29条の2違反(無効理由1)
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という)は、本件優先日前の他の特許出願であって本件優先日後に出願公開された特願平9-195440号出願当初明細書(その公開公報である甲第1号証参照。以下同様)に記載された発明と同一であるから、特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、特許法123条1項2号の規定により無効にされるべきであること(7頁)
ア 特願平9-195440号(甲第1号証参照)に記載の発明
本件優先日(平成9年7月29日)前の出願(平成9年7月22日)であって、本件優先日後に出願公開(平成11年2月12日)された特願平9-195440号には、以下の構成(以下、「甲1発明」という。)が明示的に記載されているといえる(7?14頁)。

1a 化合物半導体を発光層に含む青LEDチップ3と、その青LEDチップ3によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するYAG蛍光体と、を備えた照明光源において、
1b 前記青LEDチップの発光ピーク波長は約470nmから480nmであり、
1c 前記YAG蛍光体の発光中心波長は580nmであり、
1d 前記照明光源は、前記青LEDチップとは別に、赤LEDチップを備えた
1e ことを特徴とする発光装置(14頁)。

イ 本件発明と甲1発明との対比
(ア)一致点
本件発明と甲1発明とを比較すると、本件発明における「第1の発光素子」は甲1発明における「青LEDチップ」に相当し、本件発明における「フォトルミネセンス蛍光体」は甲1発明における「YAG蛍光体」に相当し、本件発明における「第2の発光素子」は甲1発明における「赤LEDチップ」に相当し、本件発明における「発光装置」が甲1発明における「照明光源」に相当することは明らかである(14頁)。
そして、甲1発明におけるYAG蛍光体は、吸収中心波長が450nmであること、及び、「ストークスの法則により、「蛍光を発する放射の波長は、照射された放射の波長より常にながい」から、緑あるいは青LEDチップからの光を変換しなければならない。」との記載からすると、発光波長が600nmを超えている赤LEDチップが、YAG蛍光体を実質的に励起しないことも明らかである。
以上より、本件発明と甲1発明とは、「半導体を発光層に含む第1の発光素子と、その第1の発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体と、を備えた発光装置において、前記第1の発光素子の発光ピーク波長は400nmから530nmの範囲にあり、前記蛍光体の発光ピーク波長は510nmから600nmの範囲にあり、前記発光装置は、前記第1の発光素子とは別に、半導体を発光層に含む、前記蛍光体を実質的に励起しない第2の発光素子を備えたことを特徴とする発光装置。」である点で一致する(15頁)。
(イ)相違する可能性がある点
他方で、本件発明と甲1発明とでは、第1に、本件発明では、第1の発光素子が「窒化ガリウム系半導体を発光層に含む」のに対し、甲1発明ではかかる明示的な記載がない点、第2に、本件発明では、第2の発光素子が「ガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐、インジウムアルミニウム燐から選択された半導体を発光層に含む」のに対し、甲1発明ではかかる明示的な記載がない点で、それぞれ相違する可能性がある(15頁)。
ウ 相違する可能性がある点についての判断
特願平9-195440号の出願(平成9年7月22日)当時、青色発光するLEDチップにおいては、窒化ガリウム系半導体を発光層に含むことが周知技術であったので(甲第2号証?甲第6号証)、窒化ガリウム系半導体を発光層に含む青LEDチップは、特願平9-195440号(甲第1号証参照)に実質的に記載されている事項といえる(15?16頁)。
また、特願平9-195440号の出願(平成9年7月22日)当時、赤色発光するLEDチップにおいては、ガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐、インジウムアルミニウム燐から選択された半導体を発光層に含むことが周知技術であったので、ガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐、インジウムアルミニウム燐から選択された半導体を発光層に含む赤LEDチップは、特願平9-195440号(甲第1号証参照)に実質的に記載されている事項といえる(甲第4号証?甲第7号証)(16?17頁)。
エ 本件発明の作用効果は甲第1号証に記載されていること
本件特許明細書には、段落【0069】において、「なお、本願発明では、蛍光体を励起する光を発生する発光素子に加えて、蛍光体を励起しない発光素子を一緒に用いることもできる。具体的には、蛍光体を励起可能な窒化物系化合物半導体である発光素子に加えて、蛍光体を実質的に励起しない、発光層がガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐やインジウムアルミニウム燐などである発光素子を一緒に配置する。このようにすると、蛍光体を励起しない発光素子からの光は、蛍光体に吸収されることなく外部に放出される。これによって、紅白が発光可能な発光ダイオードとすることができる。」と記載されているが、甲1発明においても、紅白が発光可能な発光ダイオードであることも明らかである(17?18頁)。
また、出願人たる被請求人は、平成20年1月7日付意見書において、「…重要な効果として、本発明の第1の発光素子と蛍光体によって作り出される白色系の発光は、赤色成分となる600nm以上の発光スペクトルが少ないため(出願当初の図4参照)、赤色成分をより多く必要とするような場合、例えば色再現性を向上させたい場合や、演色性を向上させたい場合に、600nm以上の発光スペクトルを第2の発光素子の発光で補うことができます。」と述べているが、かかる被請求人の主張する「重要な効果」は、本件特許明細書に記載されていないものであって、本件発明の効果とは認められないが、この点を措いたとしても、甲1発明により演色性が向上することは、甲第1号証に記載されている(18頁)。
オ 結論
以上より、本件発明は、出願日前の他の特許出願であって出願後に出願公開された甲第1号証の出願当初明細書に記載された発明と同一であるから、特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法123条1項2号の規定により無効とすべきである(18頁)。

2 審判事件弁駁書
(1)本件訂正発明と甲1発明とは、その技術思想が全く異なるという被請求人の主張に対して
ア 本件訂正発明について
本件訂正発明の構成要件1Dについての記載は、本件訂正明細書の段落【0069】に記載されているのみであり、本件訂正明細書の記載からは、紅白の発光が可能であることしか記載されておらず、被請求人が主張するような「白色系光において相対的に強度が低い赤色成分の光を加味するための補助的な要素」などという技術思想は、本件訂正明細書には記載されていない。したがって、被請求人の主張する本件訂正発明の技術思想については、本件訂正明細書の記載に基づかないものである(3?4頁)。
イ 甲1発明について
甲1発明については、基本的には複数の発光素子で白色光を生成しているものではあるが、青色発光素子、赤色発光素子、緑色発光素子に加えて、YAG蛍光体を用いることが明記されている(段落【0019】)から、青色発光素子とYAG蛍光体とにより白色光も生成されることは明らかである(4頁)。
(2)甲第1号証の実施例と本件訂正発明1とを対比しても、両発明は同一発明とはいえないという被請求人の主張に対して
甲1発明においては、青LEDとYAG蛍光体の構成が開示されている(段落【0019】)のであるから、青LEDとYAG蛍光体で白色光発光可能であることは明らかである。被請求人は、本件特許公報の図17などを根拠として、白色光を生成するためには、蛍光体が相当量(例えば30%)なければならないと主張するが、本件訂正明細書段落【0068】及び本件特許公報の図16によれば、蛍光体含有量が少なくても白色発光が可能であることが容易に理解できる(4?5頁)。

3 口頭審理陳述要領書
甲1発明は、青色発光素子とYAG蛍光体とにより白色光が生成されるものといえること
(1)甲1発明については、青色発光素子、赤色発光素子、緑色発光素子に加えて、YAG蛍光体を用いることが明記されている(段落【0019】)から、青色発光素子とYAG蛍光体とにより白色光も生成されることは明らかである。図6には、図2のピークに加えて、蛍光体に由来する黄色光(580nm付近)のピークも検出されている。そして、青色光の相対エネルギーと蛍光の相対エネルギーはほぼ同一(やや蛍光の相対エネルギーの方が大きい)。本件特許公報の図4によれば、青色光の相対エネルギーが100%に対し、蛍光の相対エネルギーは40%程度で白色発光している以上、青色光と黄色光(蛍光)の相対エネルギーはほぼ同一の甲1発明においても白色発光していることは明らかである(2頁6行?3頁7行)。
(2)甲1の段落【0017】においては、「波長変換部材は、3つのLEDチップを覆う必要はなく、蛍光体を励起(吸収)するLEDチップのみを覆うように充填することもできる。」と記載されている。そうすると、甲1において、青色LEDチップの青色光で励起されるYAG:Ce蛍光体を用いることも明記されている以上、YAG:Ce蛍光体は、青色LEDチップのみを覆うことができることが開示されていることとなり、青色LEDチップのみを覆うYAG:Ce蛍光体において、相対エネルギーがほぼ同等の青色光及び黄色光が混色することにより白色光を生成することは自明である(3頁下から3行?4頁5行)。
(3)甲1の出願日である平成9年7月22日当時、青色発光素子とYAG蛍光体との組み合わせにより白色光を生じることは周知慣用技術であったため(甲4、甲8?10)、甲1において、青色発光素子とYAG蛍光体が記載されている以上、当業者は青色発光素子とYAG蛍光体により白色光が生成しうると理解する(4頁8?12行)。

4 甲号証
請求人が平成23年11月2日にした審判請求に際して提出した甲号証は、以下のとおりである。

甲第1号証:特開平11-39917号公報(特願平9-195440号の公開公報)
甲第2号証:特開平5-152609号公報
甲第3号証:「日経エレクトロニクス」1994年2月28日号 93?102頁
甲第4号証:SPIE Vol.3002 26?35頁
甲第5号証:特開平9-130546号公報
甲第6号証:特開平9-129936号公報
甲第7号証:赤崎勇編著「III-V族化合物半導体」培風館(1994年5月20日)250?253頁、264?271頁

また、請求人が平成24年6月7日付け口頭審理陳述要領書に添付して、以下の甲号証を提出した。

甲第8号証:平成8年9月13日付け日経産業新聞記事
甲第9号証:1996年(平成8年)9月23日付け「日経エレクトロニクス」15頁
甲第10号証:「第264回蛍光体同学会講演予稿」5?15頁


第6 被請求人の反論の概要及び証拠方法
請求人が主張する上記第5の無効理由に対して、被請求人は、以下のように反論している。
1 審判事件答弁書
(1)本件訂正発明
被請求人は本件特許の請求項1を訂正した(3頁)。
(2)請求人の主張に対する反論の要点
本件発明と甲第1号証に記載の発明は、本来、全く異なる技術思想に基づくものであり、発明に必須の構成が明らかに異なる(4頁)。
(3)甲1号証に記載された発明と本件訂正発明1とは、その技術思想が全く異なるから、両発明は同一の発明とはいえない
甲第1号証に記載された発明(以下、「甲1発明」とも呼ぶ)と本件訂正発明1は白色発光光源において白色光を得るための構成が全く異なっている。
具体的には、甲1発明は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3つの発光素子を近接して設けて発光させて拡散混色する白色発光光源の延長線上にある発明であって、その請求項1に記載のとおり、「相異なる光を発生する複数の発光素子からの該光を加法混色して照明光を生成する光源であって、前記照明光中において少なくとも一つの前記発光素子からの光を変換するための・・・波長変換部材を備え、該変換によって前記照明光の演色性向上するようにしたことを特長」とする発明である(5頁)。
甲1発明では、発光素子によって白色光を生成するために、光の三原色をそれぞれ発光する三種類の発光素子(例えば、青LEDチップ、赤LEDチップおよび緑LEDチップ。段落0012)、または互いに補色の関係にある色をそれぞれ発光する二種類の発光素子(例えば、青LEDチップおよび黄LEDチップ、または赤LEDチップおよび青緑LEDチップ。段落0022)の組み合わせを用いることを基本構造とし、これに、当該複数の発光素子からの光の混色によって生成された光(白色光)の相対分光分布における谷間の部分を埋めるための補助的な要素として波長変換部材を用いる発明とされている(5?6頁)。
これに対し、本件訂正発明1は、第1の発光素子(青LEDチップ)からの光と、これによって励起される蛍光体(青色発光の補色である黄色系発光の蛍光体)からの光との混色によって白色系の光を得ることを基本構造とし、該白色系光において相対的に強度が低い赤色成分の光を加味するための補助的な要素として、第2の発光素子を用いる発明となっている(6頁)。
両者の基本的な技術思想の相違を表した構成要件が本件訂正発明の構成要件(前記第1の発光素子からの光と前記蛍光体からの光との混色により白色系を発光し)であり、甲1発明は、「複数の発光素子からの光の混色により白色系を発光し」となるから、両者はその基本的な技術思想を異にする相互にまったく異なる発明であることが明らかである(6?7頁)。
(4)甲第1号証の実施例と本件訂正発明1とを対比しても、両発明は同?発明とはいえない
ア 甲第1号証の、複数の発光素子として、緑LEDチップとともに、青LEDチップおよび赤LEDチップが用いられ、波長変換部材として、吸収中心波長450nm、発光中心波長580nmのCe:YAG蛍光体が用いられる構成の照明光源と、本件訂正発明1とを対比しても、両者は以下の点において相違する(7?8頁)。

相違点1:本件訂正発明1は、「前記第1の発光素子からの光と前記蛍光体からの光との混色により白色系を発光」するのに対し、甲1発明は、青LEDチップ(発光波長でいえば本件訂正発明1の「第1の発光素子」に対応)とは別に、赤LEDチップ(本件訂正発明1では組成で表示されているが、いわば「第2の発光素子」に対応)を備える場合には、さらに緑LEDチップを必ず備え、当該3つのLEDチップからの三原色の光の加法混色によって白色光を生成する点
相違点2:甲第1号証には、本件訂正発明1の第1の発光素子に対応する青LEDチップが窒化ガリウム系半導体を発光層に含むものであることが記載されていない点
相違点3:甲第1号証には、本件訂正発明1の第2の発光素子に対応する赤LEDチップが、ガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐、インジウムアルミニウム燐から選択された半導体を発光層に含む、前記蛍光体を実質的に励起しないものであることが記載されていない点

上記相違点のうち、相違点1は、甲1発明と本件訂正発明1との技術思想の相違を明確にあらわすものである(8頁)。
イ 上記において特定した甲1発明の実施例においては、白色光を3つのLEDチップからの光の加法混色によって生成し、該蛍光体は3つのLEDから発せられる光のスペクトルの谷間を埋めるために用いられる。よって、甲1発明においては、そのような目的に合致するように蛍光体の組成と量が選択されるのであり、本件訂正発明1のように、1つ(1種類)のLEDチップと蛍光体との混色によって白色系を発光する構成は甲第1号証には開示されていない。仮に、甲1発明において、波長変換部材が1つのLEDチップとともに白色を発光するように組成および量が選択されて用いられる場合には、当該LEDチップから発せられる光の相当量が波長変換部材に吸収され、波長変換部材に吸収されない光は他のLEDチップからの光と混色されても白色光を生成することができないような低い強度のものとなる。複数のLEDチップによって白色光が生成されることは甲第1号証の請求項1にも記載されているとおり甲1発明において必須の構成であるから、LEDチップの発光間における三原色のバランスが崩れるほどの量で波長変換部材を使用することは、甲1発明においてはあり得ない(8?9頁)。
一方、本件訂正発明1においては、発光ピーク波長が420nmから490nmの範囲にある光を発する窒化ガリウム系半導体層を発光層として含む発光素子、即ち、青LEDチップを第1の発光素子として使用し、この青LEDチップからの青色光と混色により白色を発光する蛍光体、即ち青色と補色の関係にある黄色の光(発光ピーク波長が510nmから600nmの範囲にある光)を発する蛍光体を使用して、青LEDチップからの発光と蛍光体からの発光のみによって白色系光を生成する。そのため、蛍光体は、光の三原色のうち、青色以外の色(緑色および赤色)が蛍光体のみからの発光によって十分に得られるような量で用いる必要がある(9?10頁)。
甲1発明と本件訂正発明1とでは、仮に、同じ種類の蛍光体を使用する場合であっても、両発明の技術思想の相違を反映して、甲1発明においては演色性を向上させるための補助的な要素として、「谷間を埋める程度の量」という構成が採用されるのに対し、本件訂正発明では、「青色発光と混色して白色発光を得る程度の量」という構成が採用されるから、両者は、その具体的な構成においても明確な差違が生じる。
なお、甲1発明において青LEDチップおよび赤LEDチップを用いる場合には、三原色の残りの一色を発光する緑LEDチップが必ず必要となるのに対して、本件訂正発明1では、緑LEDチップは必ずしも必要とされない(11頁)。

2 口頭審理陳述要領書
(1)本件訂正発明1の技術思想は本件訂正明細書に開示されている
本件訂正発明1の技術思想は、第1の発光素子としての青色LEDチップと、青色光を吸収して青色の補色である黄色の光を発光する蛍光体とによって白色系の光を生成し、蛍光体を励起しない第2の発光素子で赤色成分の光を補助的に発光するという点にあり、このことは、特許請求の範囲から既に明かである(3頁下から2行?4頁4行)。
また、本件訂正明細書全体の記載を見ても、本件訂正発明1が、第1の発光素子からの光と前記蛍光体からの光との混色により白色系を発光することを基本構成としていることは明白である。
すなわち、本件訂正明細書の段落【0021】、【0022】、【0043】、【0045】、【0067】の記載によれば、本件訂正明細書が開示する発光装置(発光ダイオード)が、青色LEDチップと青色LEDチップからの青色光によって励起される蛍光体からの光の混色により白色光を生成する構成を備えたものであることを説明しており、そのうえで、段落【0069】は、第2の発光素子を用いる場合に、第2の発光素子は蛍光体を実質的に励起するものでなく、青色LEDチップと蛍光体とによって生成される白色系の光との関係において、独立して赤色光を発するものであることを説明している。そして、このように発光された第2の発光素子からの赤色光(紅)が、第1の発光素子から発光される白色系の光において相対的に強度が低い赤色成分の光を加味する補助的な要素として働くものであることは自明である(4頁9行?7頁末行)。
(2)甲1発明は、青色発光素子とYAG蛍光体とにより白色光を生成するものとはいえない
ア 青色発光素子とYAG蛍光体とにより白色光を生成する構成は甲第1号証に記載されておらず、同号証に記載されているに等しいものでもない
(ア)甲第1号証においては、一種類の発光素子(具体的には青色発光素子)と当該発光素子からの光の一部を吸収して別の波長の光(具体的には青色の補色である黄色の光)を発する蛍光体とによって、白色光を生成するという構成は全く記載されておらず、また、甲1の技術思想が、「複数の発光素子」からの発光を加法混色して照明光(白色光)を得ることを前提としたうえで、「波長変換部材」により演色性を向上させるというものである以上、そのような構成が記載されるはずもない。甲第1号証において、白色光を青色発光素子と蛍光体で生成するという構成が記載されている、あるいは記載されているに等しいということになれば、蛍光体は白色光それ自体を生成する要素となり、もはや白色光の演色性を向上させる波長変換部材ではなくなり、甲第1号証が開示する技術思想が根本的に成立しなくなる(8頁下から2行?9頁9行)。
(イ)甲第1号証の段落【0019】の記載は、甲1発明の実施例に用いたローダミン系の色素以外にも、同様の効果をうるために、他の有機色素やYAGを含む無機蛍光体を用いることができるというものであるから、同段落の開示は、あくまでも3つ(複数)の発光素子の発光により白色発光を得ることを前提として、その演色性向上のための色変換部材としてYAGを用いる、ということに尽きており、青LEDとYAG蛍光体により白色系発光を得ることが記載されていない。
請求人は、「青LEDとYAG蛍光体で白色発光可能である」というが、問題は、青LEDとYAG蛍光体で「白色発光が可能である」かどうかではなく、甲第1号証に「青LEDとYAG蛍光体で白色発光させる構成」が記載されているか(あるいは格別の思考を要することなく当業者が理解可能な程度に記載されているか)なのであるから、青LEDとYAG蛍光体による白色発光の「可能性」のみを指摘して「青LEDとYAG蛍光体で白色発光させる構成」が記載されているとする請求人の主張は、明らかに問題をすり替えるものである(9頁13行?末行)。
イ 本件訂正明細書の段落【0068】および本件特許公報の図16について
(ア)請求人は、青LEDとYAG蛍光体で白色発光可能であることは明らかであるとの主張の根拠として、本件訂正明細書の段落【0068】および本件特許公報の図16を挙げ、これらによれば、蛍光体含有量が少なくても白色発光することが容易に理解できるとする(11頁下から4行?末行)。
(イ)a しかしながら、発光装置および照明装置の分野において「白」と呼ばれる色((緑みの)白、(青み)の白、(紫み)の白、(黄み)の白と呼ばれる色も含む)の光は、JIS Z 8110-1995「色の表示方法-光源色の色名」(乙第2号証)に示すように、色度図上のほぼ中央に位置する限られた領域に座標を有する色のことであり、このような技術常識を有する当業者であれば、本件特許公報の図16に接したときに、同図において斜線を付した部分すべてが白色領域であるなどと認識することはない(12頁9行?13頁下から5行)。
b また、本件訂正明細書の段落【0068】は、YAG蛍光体の種類と量を選択することにより、本件発明が規定する青色LEDの発光と蛍光体の発光との組み合わせによって、図16の「斜線を付した部分」の範囲のすべての色が実現でき、これにより、当該「斜線を付した部分」に含まれる色度図中央部の広範な白色領域をすべてカバーすることができることを説明したものであることは明らかである(14頁下から11行?15頁1行)。
c さらに、本件訂正明細書の段落【0068】には、「図17は、白色系発光ダイオードにおける蛍光体の含有量を変化させた時の発光色の変化を示したものである。ここで、蛍光体の含有量は、コーティング部に使用する樹脂に対する重量パーセントで示している。図17から明らかなように、蛍光体の量を増やせば蛍光体の発光色に近付き、減らすと青色LEDに近付く。」との記載があり、蛍光体の種類によって蛍光体起源の色度点が異なり、また、YAG蛍光体の量によって混色される光の色度図上の位置が変化するから、白色光を得るためには、YAG蛍光体の組成および量を、使用する青色LEDチップが発する光の波長等も考慮して適切に選択する必要があることを説明している。即ち、この記載は、青色LEDチップと蛍光体とを単に組み合わせるだけでは白色光が得られないことを説明するものである(15頁6?16行)。
d このように、本件訂正明細書の段落【0068】の記載全体ならびに本件特許公報の図16および17を照明装備の分野の技術常識に照らして正しく理解すれば、これらの記載および図面からは、請求人が主張するように青色発光素子と蛍光体とが存在すれば、ごく少量の蛍光体であっても白色発光するなどという理解に到ることはあり得ない(15頁下から6行?下から2行)。

3 乙号証
被請求人は、平成24年6月7日付け口頭審理陳述要領書に添付して、以下の乙号証を提出した。

乙第1号証:特許庁編「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第18版〕」(2010年1月31日)社団法人発明協会発行 表紙、83?89頁
乙第2号証:「JIS 色の表示方法-光源色の色名 JIS Z 8110-1995」(平成7年3月1日改正)日本規格協会発行


第7 無効理由についての当審の判断
請求人が主張する無効理由(本件訂正発明が、特許法第29条の2の規定に該当するか否か)につき検討する。
1 本件訂正発明に対する特許法第29条の2の規定の適用の基準日
まず、本件訂正発明に対する特許法第29条の2の規定の適用の基準日につき、検討する。
(1)上記第2の1のとおり、本件出願は、特許法第41条第1項の規定に基づき、特願平8-198585号、特願平8-244339号、特願平8-245381号、特願平8-359004号及び特願平9-81010号の5つの出願(以下、これら5つの出願をまとめて「先の出願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明に基づいて優先権を主張した原出願(特願平10-508693号)の一部を、同法第44条第1項の規定に基づき、第1世代分割出願(特願2002-278066号)、第2世代分割出願(特願2005-147093号)を介し、新たな特許出願(特願2006-196344号)としたものである。
(2)しかるところ、本件訂正発明は、「前記発光装置は、前記第1の発光素子とは別に、ガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐、インジウムアルミニウム燐から選択された半導体を発光層に含む、前記蛍光体を実質的に励起しない第2の発光素子を備えた」との特定事項(以下「本件訂正発明特定事項」という。)を備えるものである。
(3)そこで、前記本件訂正発明特定事項を備える発明が、前記先の出願、原出願、第1世代分割出願及び第2世代分割出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されていたか否かにつき検討すると、
ア 原出願には、「なお、本願発明では、蛍光体を励起する光を発生する発光素子に加えて、蛍光体を励起しない発光素子を一緒に用いることもできる。具体的には、蛍光体を励起可能な窒化物系化合物半導体である発光素子に加えて、蛍光体を実質的に励起しない、発光層がガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐やインジウムアルミニウム燐などである発光素子を一緒に配置する。このようにすると、蛍光体を励起しない発光素子からの光は、蛍光体に吸収されることなく外部に放出される。これによって、紅白が発光可能な発光ダイオードとすることができる。」(原出願の国際公開であるWO98/05078号26頁下から2行?27頁6行を参照。)と記載されており、また、第1世代分割出願及び第2世代分割出願にも、それぞれ、【0067】及び【0069】に、原出願の上記記載と同じ記載がされているから、原出願、第1世代分割出願及び第2世代分割出願には、上記本件訂正発明特定事項を備える発明が記載されていると認められる。
イ しかしながら、先の出願のいずれにも、その願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に、上記本件訂正発明特定事項を備える発明は記載されてはいない。
(4)したがって、上記本件訂正発明特定事項を備える本願訂正発明は、先の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されていたものとはいえないから、特許法第41条第1項の規定に基づく優先権主張の効果は認められず、よって、本願訂正発明に対する特許法第29条の2の規定の適用の基準日は、原出願の出願日(平成9年7月29日)である。

2 先願明細書、先願発明
原出願の出願前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平9-195440号(以下「先願」という。特開平11-39917号公報(甲第1号証)参照。)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「先願明細書」という。)には、図とともに以下の記載がある。
(1)「【0001】
【発明の技術分野】本発明は光源、特に波長変換を利用して演色性を向上した光源に関する。」
(2)「【0008】
…本発明の目的は、従来ない構成により廉価で効率的かつ演色性がすぐれた光源を提供することにある。さらに、本発明は、LED等の半導体発光装置の照明光の演色性を向上させることをも目的としている。」
(3)「【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するため、本発明の光源は、相異なる光を発生する複数の発光素子からの該光を加法混色して照明光を生成する光源であって、少なくとも一つの前記発光素子からの光を入力して出力光を発生する有機色素を含む波長変換部材を備え、該出力光と前記照明光とを加法混色して生成した合成照明光の演色性が照明光の演色性より向上するようにしている。
【0010】波長変換部材を有機色素を溶解したエポキシ樹脂とすることができ、透明でかつ効率的な波長変換をおこなうことができる。また有機色素としてはローダミンはじめいくつかの色素を用いることができる。」
(4)「【0012】
【発明の実施例】以下に発光素子を発光ダイオード・チップ(以下、LEDチップと称する)とした白色光源の実施例について説明する。図1Aは従来技術による白色LED光源1の概略平面図であり、図1Bはその概略A-A側断面図である。…両図において反射カップ2上に青発光する青LEDチップ3、緑発光する緑LEDチップ4および赤発光する赤LEDチップ5が塔載されている。…LEDチップ3、4、5で発生された光は図1Bにおいて上方へ放射されて加法混色されて基準光を近似する照明光となる。
【0013】…照明光の相対分光分布を測定すると図2のグラフに示す測定結果が得られた。図2のグラフから明らかなように、この照明光の相対分光分布は、各LEDチップからの比較的細いスペクトルを有し、また緑と赤の間に大きな深い谷を有する。そして黄色の領域のスペクトルから成るこの谷間が、演色性を低下させている原因であると推察された。
【0014】そこで発明者等は、この谷間を埋めることができれば平均演色評数を大きくすることが可能であると考えた。…
【0015】そこで、波長変換材料を用いた波長変換によりこの谷を埋めて演色性を向上させることとした。また、効率が高くかつ吸収、発光波長も適当な蛍光体を用いれば測光量の変化(一般に効率の低下、全光束の減少)も少なく好都合であると考えた。ストークスの法則により、「蛍光を発する放射の波長は、照射された放射の波長より常にながい」から、緑あるいは青LEDチップからの光を変換しなければならない。…
【0016】波長変換に用いる材料を調査、実験してみると、無機蛍光体のほかに例えば、有機の色素にもローダミン系の色素を始めとして適当な材料があることが解った。本発明の実施例の一つでは、色素ローダミン19(ドイツ連邦共和国Lambda Physiks製):安息香酸,2-[6-(エチルアミノ)-3-(エチルイミノ)-2,7-ジメチル-3H-キサンテン-9-],パークロレートが選ばれた。エポキシ樹脂に分散されたローダミン19の吸収スペクトルは図3のとおりであり、発光スペクトルは図4のとおりであることが判明した。そこでローダミン19は図2の緑のピークを吸収し、黄の谷間を埋めるに好適であろうことが予想された。
【0017】図1Bに対応して図5に断面を示すように、色素ローダミン19を溶解分散させたエポキシ樹脂6によりLEDチップを被覆したLED光源10が得られた。LED光源10は、エポキシ樹脂6による被覆を除けば、図1A、図1Bに示すLED光源1と同じである。…通常、ローダミン19をはじめとして蛍光体は粉末であるためLED全体を樹脂で固定する際のエポキシ樹脂と混ぜて、波長変換部材を構成する。…
【0018】図6は図5に断面を示す本発明による白色LEDの放射光の相対分光分布を示す。…図1に示す従来の白色LEDの効率に比べ、本発明の効率(1m/W)は約10%以下の低下にとどまり、効率をそれほど犠牲にすることなく、演色性を大きく改善できることがわかった。
【0019】本発明におけると同様の効果をうるための蛍光体は下記蛍光体に限るものではないが、実施例で示したローダミン19以外にも、以下に示すような有機、無機系の蛍光体も実用的に使用しうる。
(有機色素)…
(無機蛍光体)
・Ce:YAG、YAGの組成による特性の変化があるが、吸収中心波長は450nm,発光中心波長は580nm。」
(5)上記(4)(【0012】、【0013】)に照らして図2を見ると、
ア 「青LEDチップ3」の発光ピーク波長は、460?470nm付近にあること、 イ 「赤LEDチップ5」の発光波長範囲は、おおよそ580?680nmにあること、
がみてとれる。
(6)上記(4)(【0013】、【0019】)及び上記(5)アに照らして図2をみると、「(吸収中心波長が450nm,発光中心波長が580nmである)Ce:YAG無機蛍光体」は、「青LEDチップ3」によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するものであるといえる。

したがって、上記記載事項を総合すると、先願明細書には次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。

「相異なる光を発生する複数の発光素子からの該光を加法混色して照明光を生成する光源であって、少なくとも一つの前記発光素子からの光を入力して出力光を発生する有機色素を含む波長変換部材を備え、該出力光と前記照明光とを加法混色して生成した合成照明光の演色性が照明光の演色性より向上するようにしており、
白色光源の実施例として、反射カップ2上に青発光する青LEDチップ3、緑発光する緑LEDチップ4および赤発光する赤LEDチップ5が塔載され、色素ローダミン19を溶解分散させたエポキシ樹脂6によりLEDチップを被覆したLED光源10が得られ、青LEDチップ3の発光ピーク波長は460?470nm付近にあり、赤LEDチップ5の発光波長範囲はおおよそ580?680nmにあり、ローダミン19をはじめとして蛍光体は粉末であるためLED全体を樹脂で固定する際のエポキシ樹脂と混ぜて、波長変換部材を構成し、演色性を大きく改善でき、
ローダミン19以外にも、吸収中心波長が450nm,発光中心波長が580nmのCe:YAG無機蛍光体も実用的に使用しうるものであり、Ce:YAG無機蛍光体は、青LEDチップ3によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光する光源。」
3 対比
本件訂正発明と先願発明とを対比する。
(1)先願発明の「(白色)光源」は、「少なくとも一つの前記発光素子からの光を入力して出力光を発生する有機色素を含む波長変換部材を備え」、「反射カップ2上に青発光する青LEDチップ3、緑発光する緑LEDチップ4および赤発光する赤LEDチップ5が塔載され、色素ローダミン19を溶解分散させたエポキシ樹脂6によりLEDチップを被覆し」、「ローダミン19以外にも、吸収中心波長が450nm,発光中心波長が580nmのCe:YAG無機蛍光体も実用的に使用しうるもの」であって、「Ce:YAG無機蛍光体は、青LEDチップ3によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光する」から、先願発明の「青LEDチップ3」、「Ce:YAG無機蛍光体」及び「(白色)光源」は、それぞれ、本件訂正発明の「第1の発光素子」、「(その第1の発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス)蛍光体」及び「発光装置」に相当する。
(2)先願発明の「青LEDチップ3」は、その「発光ピーク波長」が「460?470nm付近にあ」るから、先願発明は、本件訂正発明の「前記第1の発光素子の発光ピーク波長は420nmから490nmの範囲にあり」との事項を備える。
(3)先願発明の「Ce:YAG無機蛍光体」は、「発光中心波長が580nm」であるから、先願発明は、本件訂正発明の「前記蛍光体の発光ピーク波長は510nmから600nmの範囲にあり」との事項を備える。
(4)先願発明は、「赤LEDチップ5の発光波長範囲」が「おおよそ580?680nmにあり」、また、先願明細書に「ストークスの法則により、「蛍光を発する放射の波長は、照射された放射の波長より常にながい」から、緑あるいは青LEDチップからの光を変換しなければならない。」(【0015】)と記載されていることに照らせば、先願発明の「赤LEDチップ5」からの発光光は「Ce:YAG無機蛍光体」を実質的に励起しないといえるから、
ア 先願発明の「赤LEDチップ5」は、本件訂正発明の「(前記蛍光体を実質的に励起しない)第2の発光素子」に相当し、
イ 先願発明の「(白色)光源」は、本件訂正発明の「前記第1の発光素子とは別に、前記蛍光体を実質的に励起しない第2の発光素子を備えた」との事項を備える。

以上によれば、本件訂正発明と先願発明とは、
「第1の発光素子と、その第1の発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体と、を備えた発光装置において、
前記第1の発光素子の発光ピーク波長は420nmから490nmの範囲にあり、
前記蛍光体の発光ピーク波長は510nmから600nmの範囲にあり、
前記発光装置は、前記第1の発光素子とは別に、前記蛍光体を実質的に励起しない第2の発光素子を備えた発光装置。」
である点で一致し、以下のa?cの点で相違するものと認められる。

a 第1の発光素子が、本件訂正発明では、窒化ガリウム系半導体を発光層に含むのに対し、先願発明では、窒化ガリウム系半導体を発光層に含むのか否かが明らかではない点(以下「相違点a」という。)。
b 本件訂正発明は、第1の発光素子からの光と蛍光体からの光との混色により白色系を発光するのに対し、先願発明は、第1の発光素子からの光と蛍光体からの光との混色により白色系を発光するのか否か明らかではない点(以下「相違点b」という。)。
c 第2の発光素子が、本件訂正発明では、ガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐、インジウムアルミニウム燐から選択された半導体を発光層に含むのに対し、先願発明では、そのような半導体を発光層に含むのか否かが明らかではない点(以下「相違点c」という。)。

4 判断
上記相違点につき検討する。
(1)相違点aについて
青色を発光するLEDとして、窒化ガリウム系半導体を発光層に含むものは、原出願の出願時点で周知であったから(必要なら、特開平5-152609号公報(甲第2号証)(【0005】及び【0008】)、「日経エレクトロニクス」1994年2月28日号(甲第3号証)93頁、SPIE Vol.3002(甲第4号証)33頁、特開平9-130546号公報(甲第5号証)【0014】、特開平9-129936号公報(甲第6号証)【0021】参照。)、当業者は、先願発明の青LEDチップ3について、窒化ガリウム系半導体を発光層に含むものとして理解すると認められる。また、相違点aにより、本件訂正発明が新たな効果を奏するものとも認められないから、上記相違点aは実質的な相違点であるとはいえない。
(2)相違点bについて
ア 先願発明の「光源」は、「相異なる光を発生する複数の発光素子からの該光を加法混色して照明光を生成する」ものであって、その演色性をさらに向上させるために、「少なくとも一つの前記発光素子からの光を入力して出力光を発生する(有機色素あるいはCe:YAG無機蛍光体を含む)波長変換部材」を設けて、「該出力光と前記照明光とを加法混色し」たものである。そして、白色光源の実施例として、「反射カップ2上に青発光する青LEDチップ3、緑発光する緑LEDチップ4および赤発光する赤LEDチップ5が塔載され、色素ローダミン19を溶解分散させたエポキシ樹脂6によりLEDチップを被覆したLED光源10」にあっては、「青LEDチップ3」、「緑LEDチップ4」及び「赤LEDチップ5」の3つのLEDチップで白色光を生成するものである。すなわち、先願発明は、「(白色)光源」からの白色の照明光が、「相異なる光を発生する複数の発光素子」からの光を加法混色して生成したものであって、本件訂正発明のように、第1の発光素子からの光と蛍光体からの光との混色により白色系を発光するものではない。
イ この点につき、請求人は、「甲1発明については、…青色発光素子、赤色発光素子、緑色発光素子に加えて、YAG蛍光体を用いることが明記されている」から「青色発光素子とYAG蛍光体とにより白色光を生成されることは明らかである」(弁駁書4頁、上記第5の2(1)イ)、「蛍光体含有量が少なくても白色発光が可能であることは容易に理解できる」(弁駁書5頁、上記第5の2(2))、「(甲1の)図6」の「青色光の相対エネルギーと蛍光の相対エネルギーはほぼ同一」であるから「甲1発明においても白色発光していることは明らかである」(口頭審理陳述要領書2?3頁、上記第5の3(1))、「甲1において、…YAG:Ce蛍光体は、青色LEDチップのみを覆うことができることが開示されている」から、「青色LEDチップのみを覆うYAG:Ce蛍光体において、相対エネルギーがほぼ同等の青色光及び黄色光が混色することにより白色光を生成することは自明である」(口頭審理陳述要領書3?4頁、上記第5の3(2))、「平成9年7月22日当時、青色発光素子とYAG蛍光体との組み合わせにより白色光を生じることは周知慣用技術であったため…、甲1において、…当業者は青色発光素子とYAG蛍光体により白色光が生成しうると理解する」(口頭審理陳述要領書4頁、上記第5の3(3))等と主張する。
しかしながら、先願発明の「光源」は、白色の照明光を、「相異なる光を発生する複数の発光素子」からの光を加法混色して生成するものであり、白色光源の実施例として、「青LEDチップ3」、「緑LEDチップ4」及び「赤LEDチップ5」の3つのLEDチップで白色光を生成するものであることは上記アで述べたとおりであって、それが「青LEDチップ3」と「Ce:YAG無機蛍光体」とを用いるものであり、「青色光の相対エネルギーと蛍光の相対エネルギー」が「ほぼ同一」であり、また、「平成9年7月22日当時、青色発光素子とYAG蛍光体との組み合わせにより白色光を生じることは周知慣用技術であった」からといって、先願発明は、「青LEDチップ3」と「Ce:YAG無機蛍光体」とで白色の照明光を得るものではなく、また、上記の周知慣用技術のようなものとして理解できないものであるから、請求人の上記主張はいずれも採用できないものである。
よって、相違点bは実質的な相違点である。
(3)相違点cについて
赤色を発光するLEDとして、ガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐、インジウムアルミニウム燐から選択された半導体を発光層に含むものは、原出願の出願時点で周知であったから(必要なら、赤崎勇編著「III-V族化合物半導体」培風館(1994年5月20日)(甲第7号証)251?253頁、265?270頁、SPIE Vol.3002(甲第4号証)31頁、特開平9-130546号公報(甲第5号証)【0014】、特開平9-129936号公報(甲第6号証)【0018】参照。)、当業者は、先願発明の赤LEDチップ3について、ガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐、インジウムアルミニウム燐から選択された半導体を発光層に含むものとして理解すると認められる。また、相違点cにより、本件訂正発明が新たな効果を奏するものとも認められないから、上記相違点cは実質的な相違点であるとはいえない。

5 まとめ
以上の検討によれば、相違点bは実質的な相違であるから、本件訂正発明が、先願明細書に記載された発明と同一であるとはいえない。


第8 むすび
以上のとおりであって、本件訂正発明についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものではなく、同法第123条第1項第2号に該当しない。
したがって、請求人が主張する無効理由によっては、本件訂正発明についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
発光装置
【技術分野】
【0001】
本願発明は、LEDディスプレイ、バックライト光源、信号機、照光式スイッチ及び各種インジケータなどに利用される発光ダイオードに関し、特に発光素子が発生する光の波長を変換して発光するフォトルミネセンス蛍光体を備えた発光装置及びそれを用いた表示装置に関する。
【0002】
発光ダイオードは、小型で、効率が良く鮮やかな色の光の発光が可能で、半導体素子であるため、球切れの心配がなく、初期駆動特性及び耐震性に優れ、さらにON/OFF点灯の繰り返しに強いという特長を有する。そのため、各種インジケータや種々の光源として広く利用されている。また、最近では、超高輝度、高効率なRGB(赤、緑、青色)の発光ダイオードがそれぞれ開発され、これらの発光ダイオードを用いた大画面のLEDディスプレーが使用されるようになった。このLEDディスプレーは、少ない電力で動作させることができ、軽量でしかも長寿命であるという優れた特性を有し、今後益々使用されるものと期待される。
【0003】
さらに、最近では、発光ダイオードを用いて、白色発光光源を構成する試みが種々なされている。発光ダイオードを用いて白色光を得るためには、発光ダイオードが単色性ピーク波長を有するので、例えば、R、G、Bの3つの発光素子を近接して設けて発光させて拡散混色する必要がある。このような構成によって白色光を発生させようとした場合、発光素子の色調や輝度等のバラツキにより所望の白色を発生させることができないという問題点があった。また、発光素子がそれぞれ異なる材料を用いて形成されている場合、各発光素子の駆動電力などが異なり個々に所定の電圧を印加する必要があり、駆動回路が複雑になるという問題点があった。さらに、発光素子が半導体発光素子であるため、個々に温度特性や経時変化が異なり、色調が使用環境によって変化したり、各発光素子によって発生される光を均一に混色させる事ができずに色むらを生ずる場合がある等の多くの問題点を抱えていた。すなわち、発光ダイオードは、個々の色を発光させる発光装置としては有効であったが、発光素子を用いて白色光を発生させることができる満足な光源は得られていなかった。
【0004】
そこで、本出願人は先に発光素子によって発生された光が、蛍光体で色変換されて出力される発光ダイオードを、特開平5-152609号公報、特開平7-99345号公報、特開平7-176794号公報、特開平8-8614号公報などにおいて発表した。これらに開示された発光ダイオードは、1種類の発光素子を用いて白色系など他の発光色を発光させることができるというものであり、以下のように構成される。
【0005】
上記公報に開示された発光ダイオードは、具体的には、発光層のエネルギーバンドギャッブが大きい発光素子をリードフレームの先端に設けられたカップ上に配置し、発光素子を被覆する樹脂モールド部材中に発光素子からの光を吸収して、吸収した光と波長の異なる光を発光する(波長変換)蛍光体を含有させて構成する。
【0006】
上述の開示された発光ダイオードにおいて、発光素子として、青色系の発光が可能な発光素子を用いて、該発光素子をその発光を吸収して黄色系の光を発光する蛍光体を含有した樹脂によってモールドすることにより、混色により白色系の光が発光可能な発光ダイオードを作製することができる。
【0007】
しかしながら、従来の発光ダイオードは、蛍光体の劣化によって色調がずれたり、あるいは蛍光体が黒ずみ光の外部取り出し効率が低下する場合があるという問題点があった。
ここで、黒ずむというのは、例えば、(Cd,Zn)S蛍光体等の無機系の蛍光体を用いた場合には、この蛍光体を構成する金属元素の一部が析出したり変質したりして着色することであり、また、有機系の蛍光体材料を用いた場合には、2重結合が切れる等により着色することをいう。特に、発光素子である高エネルギーバンドギャッブを有する半導体を用い、蛍光体の変換効率を向上させた場合(すなわち、半導体によって発光される光のエネルギーが高くなり、蛍光体が吸収することができるしきい値以上の光が増加し、より多くの光が吸収されるようになる。)、又は蛍光体の使用量を減らした場合(すなわち、相対的に蛍光体に照射されるエネルギー量が多くなる。)等においては、蛍光体が吸収する光のエネルギーが必然的に高くなるので、蛍光体の劣化が著しい。また、発光素子の発光強度を更に高め長期にわたって使用すると、蛍光体の劣化がさらに激しくなる。
【0008】
また、発光素子の近傍に設けられた蛍光体は、発光素子の温度上昇や外部環境(例えば、屋外で使用された場合の太陽光によるもの等)によって高温にもさらされ、この熱によって劣化する場合がある。
【0009】
さらに、蛍光体によっては、外部から侵入する水分や、製造時に内部に含まれた水分と、上記光及び熱とによって、劣化が促進されるものもある。
またさらに、イオン性の有機染料を使用すると、チップ近傍では直流電界により電気泳動を起こし、色調が変化する場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本願発明は上記課題を解決し、より高輝度で、長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発光装置は、窒化ガリウム系半導体を発光層に含む第1の発光素子と、その第1の発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体と、を備えた発光装置において、
前記第1の発光素子の発光ピーク波長は420nmから490nmの範囲にあり、
前記蛍光体の発光ピーク波長は510nmから600nmの範囲にあり、
前記第1の発光素子からの光と前記蛍光体からの光との混色により白色系を発光し、
前記発光装置は、前記第1の発光素子とは別に、ガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐、インジウムアルミニウム燐から選択された半導体を発光層に含む、前記蛍光体を実質的に励起しない第2の発光素子を備えたことを特徴とする。
尚、発光素子と蛍光体とを備えた発光装置において、
(1)発光素子としては、高輝度の発光が可能で、かつその発光特性が長期間の使用に対して安定していること、
(2)蛍光体としては、上述の高輝度の発光素子に近接して設けられて、該発光素子からの強い光にさらされて長期間使用した場合においても、特性変化の少ない耐光性及び耐熱性等に優れていること(特に発光素子周辺に近接して配置される蛍光体は、我々の検討によると太陽光に比較して約30倍?40倍に及ぶ強度を有する光にさらされるので、発光素子として高輝度のものを使用すれば使用する程、蛍光体に要求される耐光性は厳しくなる)、
(3)発光素子と蛍光体との関係としては、蛍光体が発光素子からのスペクトル幅をもった単色性ピーク波長の光を効率よく吸収すると共に効率よく異なる発光波長が発光可能であること、が必要であると考えられる。
【0012】
【0013】
窒化物系化合物半導体(一般式In_(i)Ga_(j)Al_(k)N、ただし、0≦i,0≦j,0≦k,i+j+k=1)としては、InGaNや各種不純物がドープされたGaNを始め、種々のものが含まれる。
【0014】
また、LEDチップによって励起発光する蛍光体(以下、「フォトルミネセンス蛍光体」)としては、Y_(3)Al_(5)O_(12):Ce、Gd_(3)In_(5)O_(12):Ceを始め、上述のように定義される種々のものが含まれる。
この本願発明の発光装置は、高輝度の発光が可能な窒化物系化合物半導体からなる発光素子を用いているので、高輝度の発光をさせることができる。また、該発光装置において、使用している前記フォトルミネッセンス蛍光体は、長時間、強い光にさらされても蛍光特性の変化が少ない極めて耐光性に優れている。これによって、長時間の使用に対して特性劣化を少なくでき、発光素子からの強い光のみならず、野外使用時等における外来光(紫外線を含む太陽光等)による劣化も少なくでき、色ずれや輝度低下が極めて少ない発光装置を提供できる。また、この本願発明の発光装置は、使用している前記フォトルミネッセンス蛍光体が、短残光であるため、例えば、120nsecという比較的速い応答速度が要求される用途にも使用することができる。
【0015】
本発明の発光ダイオードにおいては、前記フォトルミネセンス蛍光体が、YとAlを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むことが好ましく、これによって、発光装置の輝度を高くできる。
【0016】
本発明の発光装置においては、前記フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いることができ(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体用いた場合と同様の優れた特性が得られる。
【0017】
また、本発明の発光装置では、発光特性(発光波長や発光強度等)の温度依存性を小さくするために、前記フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12)で表される蛍光体(ただし、0≦p≦0.8、0.003≦q≦0.2、0.0003≦r≦0.08、0≦s≦1)を用いることが好ましい。
【0018】
また、本発明の発光装置において、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれYとAlとを含んでなる互いに組成の異なる2以上の、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むようにしてもよい。これによって、発光素子の特性(発光波長)に対応して、フォトルミネッセンス蛍光体の発光スペクトルを調整して、所望の発光色の発光をさせることができる。
【0019】
さらに、本発明の発光装置では、発光装置の発光波長を所定の値に設定するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれ一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ce(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)で表され、互いに組成の異なる2以上の蛍光体を含むことが好ましい。
【0020】
また、本発明の発光装置においては、発光波長を調整するために前記フォトルミネッセンス蛍光体は、一般式Y_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表される第1の蛍光体と、一般式Re_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される第2の蛍光体とを含んでもよい。
但し、0≦s≦1、Reは、Y、Ga、Laから選択される少なくとも一種である。
また、本発明の発光装置においては、発光波長を調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において、イットリウムの一部がガドリニウムに置換され、互いに置換量が異なる第1の蛍光体と第2の蛍光体とを含むようにしてもよい。
【0021】
さらに、本発明の発光装置において、前記発光素子の発光スペクトルの主ピークが400nmから530nmの範囲内に設定し、かつ前記フォトルミネッセンス蛍光体の主発光波長が前記発光素子の主ピークより長くなるように設定することが好ましい。これによって、白色系の光を効率よく発光させることができる。
【0022】
またさらに、前記発光素子において、該発光素子の発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体を含んでなり、前記フォトルミネセンス蛍光体が、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において、Alの一部がGaによってGa:Al=1:1から4:6の範囲内の比率になるように置換されかつYの一部がGdによってY:Gd=4:1から2:3の範囲内の比率になるように置換されていることがさらに好ましい。このように調整されたフォトルミネセンス蛍光体の吸収スペクトルは、発光層としてInを含む窒化ガリウム系半導体を有する発光素子の発光する光の波長と非常によく一致し、変換効率(発光効率)を良くできる。また、該発光素子の青色光と該蛍光体の蛍光光との混色による光は、演色性のよい良質な白色となり、その点で極めて優れた発光装置を提供できる。
【0023】
本発明の1つの態様の発光装置は、その一側面に前記フォトルミネセンス蛍光体を介して前記発光素子が設けられ、かつその一主表面を除く表面が実質的に反射部材で覆われた略矩形の導光板を備え、前記発光素子が発光した光を前記フォトルミネセンス蛍光体と導光板とを介して面状にして、前記導光板の前記一主表面から出力することを特徴とする。
【0024】
本発明の別の態様の発光装置は、その一側面に前記発光素子が設けられ、
その一主表面に前記フォトルミネセンス蛍光体が設けられかつ該一主表面を除く表面が実質的に反射部材で覆われた略矩形の導光板を備え、前記発光素子が発光した光を導光板と前記フォトルミネセンス蛍光体とを介して面状にして、前記導光板の前記一主表面から出力することを特徴とする。
【0025】
また、本発明のLED表示装置は、本発明の発光装置をマトリックス状に配置したLED表示器と、該LED表示器を入力される表示データに従って駆動する駆動回路とを備える。これによって、高精細表示が可能でかつ視認角度によって色むらの少ない、比較的安価なLED表示装置を提供できる。
【0026】
本発明の一態様の発光装置は、カップ部とリード部とを有するマウント・リードと、
前記マウント・リードのカップ内に載置されかつ一方の電極がマウント・リードに電気的に接続されたLEDチップと、
該LEDチップの他方の電極に電気的に接続させたインナー・リードと、
前記LEDチップを覆うように前記カップ内に充填された透光性のコーティング部材と、
前記マウント・リードのカップ部と、前記インナー・リードと該LEDチップの他方の電極との接続部分とを含み、前記コーティング部材で覆われたLEDチップを被覆するモールド部材とを有する発光ダイオードであって、
前記LEDチップが窒化物系化合物半導体であり、かつ前記コーティング部材が、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体からなるフォトルミネッセンス蛍光体を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明の発光ダイオードにおいては、前記フォトルミネッセンス蛍光体が、YとAlを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むことが好ましく、
また、本発明の発光ダイオードでは、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)を用いても良い。
また、本発明の発光ダイオードでは、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12)で表される(ただし、0≦p≦0.8、0.003≦q≦0.2、0.0003≦r≦0.08、0≦s≦1)蛍光体を用いることもできる。
【0028】
本発明の発光ダイオードにおいては、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれYとAlとを含んでなる互いに組成の異なる2以上のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むようにすることが好ましい。
【0029】
本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、それぞれ一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表され(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)、互いに組成の異なる2以上の蛍光体を用いてもよい。
【0030】
本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式Y_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表される第1の蛍光体と、一般式Re_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される第2の蛍光体とを用いてもよい。ここで、0≦s≦1、Reは、Y、Ga、Laから選択される少なくとも一種である。
【0031】
本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において、それぞれイットリウムの一部がガドリニウムに置換されてなり、互いに置換量が異なる第1の蛍光体と第2の蛍光体とを用いてもよい。
【0032】
また、一般的に蛍光体では、短波長の光を吸収して長波長の光を発光するものの方が、長波長の光を吸収して短波長の光を発光するものに比較して効率がよい。発光素子としては、樹脂(モールド部材やコーティング部材等)を劣化させる紫外光を発光するものより可視光を発光するものを用いる方が好ましい。従って、本発明の発光ダイオードにおいては、発光効率の向上及び長寿命化のために、前記発光素子の発光スペクトルの主ピークを、可視光のうちで比較的短波長の400nmから530nmの範囲内に設定し、かつ前記フォトルミネッセンス蛍光体の主発光波長を前記発光素子の主ピークより長く設定することが好ましい。また、このようにすることにより、蛍光体により変換された光は、発光素子が発光する光よりも長波長であるため、蛍光体等により反射された変換後の光が発光素子に照射されても、発光素子によって吸収されることはない(バンドギャップエネルギーより変換された光のエネルギーの方が小さいため)。このように、蛍光体等により反射された光は、発光素子を載置したカップにより反射され、さらに効率のよい発光が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の説明をする。
図1の発光ダイオード100は、マウント・リード105とインナー・リード106とを備えたリードタイプの発光ダイオードであって、マウント・リード105のカップ部105a上に発光素子102が設られ、カップ部105a内に、発光素子102を覆うように、所定のフォトルミネッセンス蛍光体を含むコーティング樹脂101が充填された後に、樹脂モールドされて構成される。ここで、発光素子102のn側電極及びp側電極はそれぞれ、マウント・リード105とインナー・リード106とにワイヤー103を用いて接続される。
【0034】
以上のように構成された発光ダイオードにおいては、発光素子(LEDチップ)102によって発光された光(以下、LED光という。)の一部が、コーティング樹脂101に含まれたフォトルミネッセンス蛍光体を励起してLED光と異なる波長の蛍光を発生させて、フォトルミネッセンス蛍光体が発生する蛍光と、フォトルミネッセンス蛍光体の励起に寄与することなく出力されるLED光とが混色されて出力される。その結果、発光ダイオード100は、発光素子102が発生するLED光とは波長の異なる光も出力する。
【0035】
また、図2に示すものはチップタイプの発光ダイオードであって、筺体204の凹部に発光素子(LEDチップ)202が設けられ、該凹部に所定のフォトルミネッセンス蛍光体を含むコーティング材が充填されてコーティング部201が形成されて構成される。ここで、発光素子202は、例えばAgを含有させたエポキシ樹脂等を用いて固定され、該発光素子202のn側電極とp側電極とをそれぞれ、筺体204に設けられた端子金属205に、導電性ワイヤー203を用いて接続される。以上のように構成されたチップタイプの発光ダイオードにおいて、図1のリードタイプの発光ダイオードと同様に、フォトルミネッセンス蛍光体が発生する蛍光と、フォトルミネッセンス蛍光体に吸収されることなく伝搬されたLED光とが混色されて出力され、その結果、発光ダイオード200は、発光素子102が発生するLED光とは波長の異なる光も出力する。
【0036】
以上説明したフォトルミネセンス蛍光体を備えた発光ダイオードは、以下のような特徴を有する。
1.通常、発光素子(LED)から放出される光は、発光素子に電力を供給する電極を介して放出される。放出された光は、発光素子に形成された電極の陰となり、特定の発光パターンを有し、そのために全ての方向に均一に放出されない。しかしながら、蛍光体を備えた発光ダイオードは、蛍光体により発光素子からの光を散乱させて光を放出するので、不要な発光パターンを形成することなく、広い範囲に均一に光を放出することができる。
2.発光素子(LED)からの光は、単色性ピークを有するといっても、ある程度のスペクトル幅をもつので演色性が高い。このことは、比較的広い範囲の波長を必要とする光源として使用する場合には欠かせない長所になる。例えば、スキャナーの光源等に用いる場合は、スペクトル幅が広いほうが好ましい。
【0037】
以下に説明する実施形態1,2の発光ダイオードは、図1又は図2に示す構造を有する発光ダイオードにおいて、可視光域における光エネルギーが比較的高い窒化物系化合物半導体を用いた発光素子と、特定のフォトルミネッセンス蛍光体とを組み合わせたことを特徴とし、これによって、高輝度の発光を可能にし、長時間の使用に対して発光効率の低下や色ずれが少ないという良好な特性を有する。
【0038】
一般的に蛍光体においては、短い波長の光を吸収して長い波長の光を放出する蛍光体の方が、長い波長の光を吸収して短い光を放出する蛍光体に比較して変換効率が優れているので、本発明の発光ダイオードにおいては、短い波長の青色系の発光が可能な窒化ガリウム系半導体発光素子(発光素子)を用いることが好ましい。また、高い輝度の発光素子を用いることが好ましいことは言うまでもない。
【0039】
このような窒化ガリウム系半導体発光素子と組み合わせて用いるのに適したフォトルミネセンス蛍光体としては、
1.発光素子102,202に近接して設けられ、太陽光の約30倍から40倍にもおよぶ強い光にさらされることになるので、強い強度の光の照射に対して長時間耐え得るように、耐光性に優れていること。
【0040】
2.発光素子102,202によって励起するために、発光素子の発光で効率よく発光すること。特に、混色を利用する場合、紫外線ではなく青色系発光で効率よく発光すること。
【0041】
3.青色系の光と混色されて白色になるように、緑色系から赤色系の光が発光可能なこと。
4.発光素子102,202に近接して設けられ、該チップを発光させる際の発熱による温度変化の影響を受けるので、温度特性が良好であること。
【0042】
5.色調が組成比あるいは複数の蛍光体の混合比を変化させることにより、連続的に変化させることができること。
6.発光ダイオードが使用される環境に応じた耐候性があること、
などの特性が要求される。
【0043】
実施の形態1.
本願発明に係る実施の形態1の発光ダイオードは、発光層に高エネルギーバンドギャッブを有し、青色系の発光が可能な窒化ガリウム系化合物半導体素子と、黄色系の発光が可能なフォトルミネセンス蛍光体である、セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネッセンス蛍光体とを組み合わせたものである。これによって、この実施形態1の発光ダイオードにおいて、発光素子102,202からの青色系の発光と、その発光によって励起されたフォトルミネセンス蛍光体からの黄色系の発光光との混色により白色系の発光が可能になる。
【0044】
また、この実施形態1の発光ダイオードに用いた、セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネッセンス蛍光体は耐光性及び耐候性を有するので、発光素子102,202から放出された可視光域における高エネルギー光を長時間その近傍で高輝度に照射した場合であっても発光色の色ずれや発光輝度の低下が極めて少ない白色光が発光できる。
【0045】
以下、本実施形態1の発光ダイオードの各構成部材について詳述する。
(フォトルミネセンス蛍光体)
本実施形態1の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体は、半導体発光層から発光された可視光や紫外線で励起されて、励起した光と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体である。具体的にはフォトルミネセンス蛍光体として、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体である。本発明では、該蛍光体として、YとAlを含みセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体、又は、一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ce(但し、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種)であらわされる蛍光体を用いることが好ましい。窒化ガリウム系化合物半導体を用いた発光素子が発光するLED光と、ボディーカラーが黄色であるフォトルミネセンス蛍光体が発光する蛍光光が補色関係にある場合、LED光と、蛍光光とを混色して出力することにより、全体として白色系の光を出力することができる。
【0046】
本実施形態1において、このフォトルミネセンス蛍光体は、上述したように、コーティング樹脂101,コーティング部201を形成する樹脂(詳細は後述する)に混合して使用されるので、窒化ガリウム系発光素子の発光波長に対応させて、樹脂などとの混合比率、若しくはカップ部105又は筺体204の凹部への充填量を種々調整することにより、発光ダイオードの色調を、白色を含め電球色など任意に設定できる。
【0047】
このフォトルミネセンス蛍光体の含有分布は、混色性や耐久性にも影響する。例えば、フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部やモールド部材の表面側から発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高くした場合は、外部環境からの水分などの影響をより受けにくくでき、水分による劣化を防止することができる。他方、フォトルミネセンス蛍光体を、発光素子からモールド部材等の表面側に向かって分布濃度が高くなるように分布させると、外部環境からの水分の影響を受けやすいが発光素子からの発熱、照射強度などの影響をより少なくでき、フォトルミネセンス蛍光体の劣化を抑制することができる。このような、フォトルミネセンス蛍光体の分布は、フォトルミネセンス蛍光体を含有する部材、形成温度、粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状、粒度分布などを調整することによって種々の分布を実現することができ、発光ダイオードの使用条件などを考慮して分布状態が設定される。
【0048】
実施形態1のフォトルミネセンス蛍光体は、発光素子102,202と接したり、あるいは近接して配置され、照射強度(Ee)として、3W・cm^(-2)以上10W・cm^(-2)以下においても高効率でかつ十分な耐光性を有するので、該蛍光体を用いることにより、優れた発光特性の発光ダイオードを構成することができる。
【0049】
また、実施形態1のフォトルミネセンス蛍光体は、ガーネット構造を有するので、熱、光及び水分に強く、図3(A)に示すように、励起スペクトルのピークを450nm付近にすることができる。また、発光ピークも図3(B)に示すように、580nm付近にあり700nmまで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。また、実施形態1のフォトルミネッセンス蛍光体は、結晶中にGdを含有することにより、460nm以上の長波長域における励起発光効率を高くすることができる。Gdの含有量の増加により、発光ピーク波長が、長波長に移動し、全体の発光波長も長波長側にシフトする。すなわち、赤みの強い発光色が必要な場合、Gdによる置換量を多くすることで達成することができる。
一方、Gdが増加するするとともに、青色光によるフォトルミネッセンスの発光輝度は低下する傾向にある。
【0050】
特に、ガーネット構造を有するYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで、発光波長が、短波長側にシフトするまた組成のYの一部をGdで置換することにより、発光波長が長波長側にシフトする。
【0051】
表1に一般式(Y_(1-a)Gd_(a))_(3)(Al_(1-b)Ga_(b))_(5)O_(12):Ceで表されるYAG系蛍光体の組成とその発光特性を示す。
【0052】
【0053】
【表1】

表1に示した各特性は、460nmの青色光で励起して測定した。又表1における輝度と効率は一の材料を100として相対値で示している。
AlをGaによって置換する場合、発光効率と発光波長を考慮してGa:Al=1:1から4:6の間の比率に設定することが好ましい。同様に、Yの一部をGdで置換する場合は、Y:Gd=9:1?1:9の範囲の比率に設定することが好ましく、4:1?2:3の範囲に設定することがより好ましい。Gdの置換量が2割未満では、緑色成分が大きく赤色成分が少なくなるからであり、Gdの置換量が6割以上になると、赤み成分を増やすことができるが、輝度が急激に低下する。特に、発光素子の発光波長によるがYAG系蛍光体中のYとGdとの比率を、Y:Gd=4:1?2:3の範囲に設定することにより、1種類のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を用いて黒体放射軌跡にほぼ沿った白色光の発光が可能な発光ダイオードを構成することができる。また、YAG系蛍光体中のYとGdとの比率を、Y:Gd=2:3?1:4の範囲に設定すると、輝度は低いが電球色の発光が可能な発光ダイオードを構成することができる。尚、Ceの含有量(置換量)は、0.003?0.2の範囲に設定することにより、発光ダイオードの相対発光光度を70%以上にできる。含有量が0.003未満では、Ceによるフォトルミネッセンスの励起発光中心の数が減少することにより光度が低下し、逆に0.2より大きくなると濃度消光が生じる。
【0054】
以上のように、組成のAlの一部をGaで置換することにより発光波長を短波長にシフトさせることができ、また、組成のYの一部をGdで置換することで、発光波長を長波長へシフトさせることができる。このように組成を変化することで発光色を連続的に調節することが可能である。また、波長が254nmや365nmであるHg輝線ではほとんど励起されず450nm付近の青色系発光素子からのLED光による励起効率が高い。さらに、ピーク波長がGdの組成比で連続的に変えられるなど窒化物半導体発光素子の青色系発光を白色系発光に変換するための理想条件を備えている。
【0055】
また、実施形態1では、窒化ガリウム系半導体を用いた発光素子と、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット蛍光体(YAG)に希土類元素のサマリウム(Sm)を含有させたフォトルミネセンス蛍光体とを組み合わせることにより、発光ダイオードの発光効率をさらに向上させることができる。
【0056】
このようなフォトルミネセンス蛍光体は、Y、Gd、Ce、Sm、Al及びGaの原料として酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し、それらを所定の化学量論比で十分に混合して混合原料を作製し、作製された混合原料に、フラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰め、空気中1350?1450℃の温度範囲で2?5時間焼成して焼成品を得、次に焼成品を水中でポールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通すことにより作製できる。
【0057】
上述の作製方法において、混合原料は、Y、Gd、Ce、Smの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合することにより作製してもよい。
【0058】
一般式(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Sm_(r))_(3)Al_(5)O_(12)で表すことができるフォトルミネセンス蛍光体は、結晶中にGdを含有することにより、特に460nm以上の長波長域の励起発光効率を高くすることができる。また、ガドリニウムの含有量を増加させることにより、発光ピーク波長を、530nmから570nmまで長波長に移動させ、全体の発光波長も長波長側にシフトさせることができる。赤みの強い発光色が必要な場合、Gdの置換量を多くすることで達成できる。一方、Gdが増加すると共に、青色光によるフォトルミネセンスの発光輝度は徐々に低下する。したがって、pは0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましい。さらに好ましくは0.6以下である。
【0059】
また、一般式(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Sm_(r))_(3)Al_(5)O_(12)で表されるSmを含むフォトルミネセンス蛍光体は、Gdの含有量を増加させても温度特性の低下を少なくできる。
すなわち、Smを含有させることにより、高温度におけるフォトルミネセンス蛍光体の発光輝度の劣化は大幅に改善される。その改善される程度はGdの含有量が多くなるほど、大きくなる。特に、Gdの含有量を増加させてフォトルミネセンスの発光の色調に赤みを付与した組成の蛍光体は、温度特性が悪くなるので、Smを含有させて温度特性を改善することが有効である。なお、ここで言う温度特性とは、450nmの青色光による常温(25℃)における励起発光輝度に対する、同蛍光体の高温(200℃)における発光輝度の相対値のことである。
【0060】
Smの含有量rは0.0003≦r≦0.08の範囲であることが好ましく、これによって温度特性を60%以上にすることができる。この範囲よりrが小さいと、温度特性の改良効果が小さくなる。また、この範囲よりrが大きくなると温度特性は逆に低下してくる。また、Smの含有量rは0.0007≦r≦0.02の範囲であることがさらに好ましく、これによって温度特性は80%以上にできる。
【0061】
Ceの含有量qは、0.003≦q≦0.2の範囲であることが好ましく、これによって、相対発光輝度が70%以上にできる。ここで、相対発光輝度とは、q=0.03の蛍光体の発光輝度を100パーセントとした場合における発光輝度のことをいう。
【0062】
Ceの含有量qが0.003以下では、Ceによるフォトルミネセンスの励起発光中心の数が減少するために輝度が低下し、逆に、0.2より大きくなると濃度消光が生ずる。
ここで、濃度消光とは、蛍光体の輝度を高めるために付活剤の濃度を増加していくとある最適値以上の濃度では発光強度が低下することである。
【0063】
本願発明の発光ダイオードにおいては、Al、Ga、Y及びGdやSmの含有量が異なる2種類以上の(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Sm_(r))_(3)Al_(5)O_(12)フォトルミネセンス蛍光体を混合して用いてもよい。これによって、蛍光発光中のRGBの波長成分を増やすことができ、これに、例えばカラーフィルターを用いることによりフルカラー液晶表示装置用としても利用できる。
【0064】
(発光素子102、202)
発光素子は、図1及び図2に示すように、モールド部材に埋設されることが好ましい。
本願発明の発光ダイオードに用いられる発光素子は、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体を効率良く励起できる窒化ガリウム系化合物半導体である。窒化ガリウム系化合物半導体を用いた発光素子102,202は、MOCVD法等により基板上にInGaN等の窒化ガリウム系半導体を発光層として形成することにより作製される。発光素子の構造としては、MIS接合、PIN接合やPN接合などを有するホモ構造ヘテロ構造あるいはダブルヘテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる程度に薄く形成した単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。特に、本願発明においては、発光素子の活性層をInGaNの単一量子井戸構造とすることにより、フォトルミネセンス蛍光体の劣化がなく、より高輝度に発光する発光ダイオードとして利用することができる。
【0065】
窒化ガリウム系化合物半導体を使用した場合、半導体基板にはサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO等の材料が用いることができるが、結晶性の良い窒化ガリウムを形成させるためにはサファイア基板を用いることが好ましい。このサファイア基坂上にGaN、AlN等のバッファ層を介してPN接合を形成するように窒化ガリウム半導体層を形成する。窒化ガリウム系半導体は、不純物をドーブしない状態でN型導電性を示すが、発光効率を向上させるなど所望の特性(キャリヤ濃度等)のN型窒化ガリウム半導体を形成するためには、N型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜ドープすることが好ましい。
一方、p型窒化ガリウム半導体を形成する場合は、p型ドーパンドであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープする。尚、窒化ガリウム系化合物半導体は、p型ドーパントをドーブしただけではp型化しにくいためp型ドーパント導入後に、炉による加熱、低速電子線照射やプラズマ照射等によりp型化させることが好ましい。エッチングなどによりp型及びN型の窒化ガリウム半導体の表面を露出させた後、各半導体層上にスバッタリング法や真空蒸着法などを用いて所望の形状の各電極を形成する。
【0066】
次に、以上のようにして形成された半導体ウエハー等を、ダイシングソーにより直接フルカットする方法、又は刃先幅よりも広い幅の溝を切り込んだ後(ハーフカット)、外力によって半導体ウエハーを割る方法、あるいは、先端のダイヤモンド針が往復直線運動するスクライバーにより半導体ウエハーに極めて細いスクライブライン(経線)を例えば碁盤目状に引いた後、外力によってウエハーを割る方法等を用いて、半導体ウエハーをチップ状にカットする。このようにして窒化ガリウム系化合物半導体からなる発光素子を形成することができる。
【0067】
本実施形態1の発光ダイオードにおいて白色系を発光させる場合は、フォトルミネセンス蛍光体との補色関係や樹脂の劣化等を考慮して発光素子の発光波長は400nm以上530nm以下に設定することが好ましく、420nm以上490nm以下に設定することがより好ましい。発光素子とフォトルミネセンス蛍光体との効率をそれぞれより向上させるためには、450nm以上475nm以下に設定することがさらに好ましい。実施形態1の白色系発光ダイオードの発光スペクトルの一例を図4に示す。ここに例示した発光ダイオードは、図1に示すリードタイプのものであって、後述する参考例1の発光素子とフォトルミネッセンス蛍光体とを用いたものである。ここで、図4において、450nm付近にピークを持つ発光が発光素子からの発光であり、570nm付近にピークを持つ発光が発光素子によって励起されたフォトルミネセンスの発光である。
【0068】
また、表1に示した蛍光体とピーク波長465nmの青色LED(発光素子)とを組み合わせた白色系発光ダイオードで、実現できる色再現範囲を図16に示す。この白色系発光ダイオードの発光色は、青色LED起源の色度点と蛍光体起源の色度点とを結ぶ直線上のいずれかに位置するので、表1の1?7の蛍光体を使用することにより、色度図中央部の広範な白色領域(図16中斜線を付した部分)をすべてカバーすることができる。図17は、白色系発光ダイオードにおける蛍光体の含有量を変化させた時の発光色の変化を示したものである。ここで、蛍光体の含有量は、コーティング部に使用する樹脂に対する重量パーセントで示している。図17から明らかなように、蛍光体の量を増やせば蛍光体の発光色に近付き、減らすと青色LEDに近付く。
【0069】
なお、本願発明では、蛍光体を励起する光を発生する発光素子に加えて、蛍光体を励起しない発光素子を一緒に用いることもできる。具体的には、蛍光体を励起可能な窒化物系化合物半導体である発光素子に加えて、蛍光体を実質的に励起しない、発光層がガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐やインジウムアルミニウム燐などである発光素子を一緒に配置する。このようにすると、蛍光体を励起しない発光素子からの光は、蛍光体に吸収されることなく外部に放出される。これによって、紅白が発光可能な発光ダイオードとすることができる。
【0070】
以下、図1及び図2の発光ダイオードの他の構成要素について説明する。
(導電性ワイヤー103、203)
導電性ワイヤー103、203としては、発光素子102、202の電極とのオーミック性、機械的接続性、電気伝導性及び熱伝導性がよいものが求められる。熱伝導度としては0.01cal/(s)(cm^(2))(℃/cm)以上が好ましく、より好ましくは0.5cal/(s)(cm^(2))(℃/cm)以上である。また、作業性を考慮すると導電性ワイヤーの直径は、10μm以上、45μm以下であることが好ましい。特に、蛍光体が含有されたコーティング部とモールド部材とをそれぞれ同一材料を用いたとしても、どちらか一方に蛍光体が入ることによる熱膨張係数の違いにより、それらの界面においては、導電性ワイヤーは断線し易い。そのために導電性ワイヤーの直径は、25μm以上がより好ましく、発光面積や取り扱い易さの観点から35μm以下が好ましい。導電性ワイヤーの材質としては、金、銅、白金、アルミニウム等の金属及びそれらの合金が挙げられる。
このような材質、形状からなる導電性ワイヤーを用いることにより、ワイヤーボンディング装置によって、各発光素子の電極と、インナー・リード及びマウント・リードとを容易に接続することができる。
【0071】
(マウント・リード105)
マウント・リード105は、カップ部105aとリード部105bとからなり、カップ部105aに、ダイボンディング装置で発光素子102を載置する十分な大きさがあれば良い。また、複数の発光素子をカップ内に設け、マウント・リードを発光素子の共通電極として利用する場合においては、異なる電極材料を用いる場合があるので、それぞれに十分な電気伝導性とボンディングワイヤー等との接続性が求められる。また、マウント・リード上のカップ内に発光素子を配置すると共に蛍光体をカップ内部に充填する場合は、蛍光体からの光が当方的に放出されたとしても、カップにより所望の方向に反射されるので、近接して配置させた別の発光ダイオードからの光による疑似点灯を防止することができる。ここで、擬似点灯とは、近接して配置された別の発光ダイオードに電力を供給していなくても発光しているように見える現象のことをいう。
【0072】
発光素子102とマウント・リード105のカップ部105aとの接着は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂やイミド樹脂等の熱硬化性樹脂などを用いて行うことができる。また、フェースダウン発光素子(基板側から発光を取り出すタイプであって、発光素子の電極をカップ部105aに対向させて取り付けるように構成されたもの)を用いる場合は、該発光素子をマウント・リードと接着させると共に電気的に導通させるために、Agペースト、カーボンペースト、金属バンプ等を用いることができる。さらに、発光ダイオードの光利用効率を向上させるために発光素子が配置されるマウント・リードのカップ部の表面を鏡面状とし、表面に反射機能を持たせても良い。この場合の表面粗さは、0.1S以上0.8S以下が好ましい。また、マウント・リードの具体的な電気抵抗としては300μΩ・cm以下が好ましく、より好ましくは、3μΩ・cm以下である。また、マウント・リード上に複数の発光素子を積置する場合は、発光素子からの発熱量が多くなるため熱伝導度がよいことが求められ、その熱伝導度は、0.01cal/(s)(cm^(2))(℃/cm)以上が好ましく、より好ましくは0.5cal/(s)(cm^(2))(℃/cm)以上である。これらの条件を満たす材料としては、鉄、銅、鉄入り銅、錫入り銅、メタライズパターン付きセラミック等が挙げられる。
【0073】
(インナー・リード106)
インナー・リード106は、マウント・リード105上に配置された発光素子102の一方の電極に、導電性ワイヤー等で接続される。マウント・リード上に複数の発光素子を設けた発光ダイオードの場合は、インナー・リード106を複数設け、各導電性ワイヤー同士が接触しないよう各インナー・リードを配置する必要がある。例えば、マウント・リードから離れるに従って、各インナー・リードのワイヤーボンディングされる各端面の面積を順次大きくすることによって、導電性ワイヤー間の間隔を開けるようにボンディングし、導電性ワイヤー間の接触を防ぐことができる。インナー・リードの導電性ワイヤーとの接続端面の粗さは、密着性を考慮して1.6S以上1OS以下に設定することが好ましい。
【0074】
インナー・リードは、所望の形状になるように型枠を用いた打ち抜き加工等を用いて形成することができる。さらには、インナー・リードを打ち抜き形成後、端面方向から加圧することにより所望の端面の面積と端面高さを調整するようにしても良い。
【0075】
また、インナー・リードは、導電性ワイヤーであるボンディングワイヤー等との接続性及び電気伝導性が良いことが求められる。具体的な電気抵抗としては、300μΩ・cm以下であることが好ましく、より好ましくは3μΩ・cm以下である。これらの条件を満たす材料としては、鉄、銅、鉄入り銅、錫入り銅及び銅、金、銀をメッキしたアルミニウム、鉄、銅等が挙げられる。
【0076】
(コーティング部101)
コーティング部101は、モールド部材104とは別にマウント・リードのカップに設けられるものであり、本実施の形態1では、発光素子の発光を変換するフォトルミネセンス蛍光体が含有されるものである。コーティング部の具体的材料としては、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーンなどの耐侯性に優れた透明樹脂や硝子などが適する。また、フォトルミネセンス蛍光体と共に拡散剤を含有させても良い。具体的な拡散剤としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等を用いることが好ましい。
さらに、蛍光体をスパッタリングにより形成する場合、コーティング部を省略することもできる。この場合、膜厚を調整したり蛍光体層に開口部を設けることで混色表示が可能な発光ダイオードとすることができる。
【0077】
(モールド部材104)
モールド部材104は、発光素子102、導電性ワイヤー103、フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部101などを外部から保護する機能を有する。本実施形態1では、モールド部材104にさらに拡散剤を含有させることが好ましく、これによって発光素子102からの指向性を緩和させることができ、視野角を増やすことができる。また、モールド部材104は、発光ダイオードにおいて、発光素子からの発光を集束させたり拡散させたりするレンズ機能を有する。従って、モールド部材104は、通常、凸レンズ形状、凹レンズ形状さらには、発光観測面から見て楕円形状やそれらを複数組み合わせた形状に形成される。また、モールド部材104は、それぞれ異なる材料を複数積層した構造にしてもよい。モールド部材104の具体的材料としては、主としてエポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂などの耐候性に優れた透明樹脂や硝子などが好適に用いられる。また、拡散剤としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等を用いることができる。さらに、本願発明では、拡散剤に加えてモールド部材中にフォトルミネセンス蛍光体を含有させてもよい。すなわち、本願発明では、フォトルミネセンス蛍光体をコーティング部に含有させても良いし、モールド部材中に含有させてもよい。モールド部材にフォトルミネセンス蛍光体を含有させることにより、視野角をさらに大きくすることができる。また、コーティング部とモールド部材の双方に含有させてもよい。またさらに、コーティング部をフォトルミネセンス蛍光体が含有された樹脂とし、モールド部材を、コーティング部と異なる部材である硝子を用いて形成しても良く、このようにすることにより、水分などの影響が少ない発光ダイオードを生産性良く製造できる。また、用途によっては、屈折率を合わせるために、モールド部材とコーティング部とを同じ部材を用いて形成してもよい。本願発明においてモールド部材に拡散剤や着色剤を含有させることによって、発光観測面側から見た蛍光体の着色を隠すことができると共により混色性を向上させることができる。すなわち、蛍光体は強い外光のうち青色成分を吸収し発光し、黄色に着色しているように見える。しかしながら、モールド部材に含有された拡散剤はモールド部材を乳白色にし、着色剤は所望の色に着色する。これによって、発光観測面から蛍光体の色が観測されることはない。さらに、発光素子の主発光波長が430nm以上では、光安定化剤である紫外線吸収剤を含有させることがより好ましい。
【0078】
発明の実施2.
本発明に係る実施の形態2の発光ダイオードは、発光素子として発光層に高エネルギーバンドギャップを有する窒化ガリウム系半導体を備えた素子を用い、フォトルミネセンス蛍光体として、互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体、好ましくはセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含む蛍光体を用いる。これにより実施の形態2の発光ダイオードは、発光素子によって発光されるLED光の発光波長が、製造バラツキ等により所望値からずれた場合でも、2種類以上の蛍光体の含有量を調節することによって所望の色調を持った発光ダイオードを作製できる。
この場合、発光波長が比較的短い発光素子に対しては、発光波長が比較的短い蛍光体を用い、発光波長が比較的長い発光素子には発光波長が比較的長い蛍光体を用いることで発光ダイオードから出力される発光色を一定にすることができる。
蛍光体に関して言うと、フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表されるセリウムで付活された蛍光体を用いることもできる。但し、0<r≦1、0≦s≦1、Reは、Y、Gd、Laから選択される少なくとも一種である。これにより発光素子から放出された可視光域における高エネルギーを有する光が長時間高輝度に照射された場合や種々の外部環境の使用下においても蛍光体の変質を少なくできるので、発光色の色ずれや発光輝度の低下が極めて少なく、かつ高輝度の所望の発光成分を有する発光ダイオードを構成できる。
【0079】
(実施の形態2のフォトルミネセンス蛍光体)
実施の形態2の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体について詳細に説明する。実施の形態2においては、上述したように、フォトルミネセンス蛍光体として組成の異なる2種類以上のセリウムで付活されたフォトルミネセンス蛍光体を使用した以外は、実施の形態1と同様に構成され、蛍光体の使用方法は実施の形態と同様である。
【0080】
また、実施形態1と同様に、フォトルミネセンス蛍光体の分布を種々変える(発光素子から離れるに従い濃度勾配をつける等)ことによって耐候性の強い特性を発光ダイオードに持たせることができる。このような分布はフォトルミネセンス蛍光体を含有する部材、形成温度、粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状、粒度分布などを調整することによって種々調整することができる。
したがって、実施形態2では、使用条件などに対応させて、蛍光体の分布濃度が設定される。また、実施の形態2では、2種類以上の蛍光体をそれぞれ発光素子から出力される光に対応して配置を工夫(例えば、発光素子に近い方から順番に配置する等)することによって発光効率を高くすることができる。
【0081】
以上のように構成された実施形態2の発光ダイオードは、実施形態1と同様、照度強度として(Ee)=3W・cm^(-2)以上10W・cm^(-2)以下の比較的高出力の発光素子と接する或いは近接して配置された場合においても高効率でかつ十分な耐光性を有する発光ダイオードを構成できる。
【0082】
実施形態2に用いられるセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG系蛍光体)は、実施形態1と同様、ガーネット構造を有するので、熱、光及び水分に強い。また、実施形態2のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、図5(A)の実線に示すように励起スペクトルのピークを450nm付近に設定でき、かつ発光スペクトルの発光ピークを図5(B)の実線に示すように510nm付近に設定でき、しかも発光スペクトルを700nmまで裾を引くようにブロードにできる。
これによって、緑色系の発光をさせることができる。また、実施形態2の別のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、励起スペクトルのピークを図5Aの破線に示すように450nm付近にでき、かつ発光スペクトルの発光ピークを図5(B)の破線に示すように600nm付近に設定でき、しかも発光スペクトルを750nmまで裾を引くブロードにできる。これによって、赤色系の発光が可能となる。
ガーネット構造を持ったYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで発光波長が短波長側にシフトし、また組成のYの一部をGd及び/又はLaで置換することで、発光波長が長波長側へシフトする。AlのGaへの置換は、発光効率と発光波長を考慮してGa:Al=1:1から4:6が好ましい。同様に、Yの一部をGd及び/又はLaで置換することは、Y:Gd及び/又はLa=9:1から1:9であり、より好ましくは、Y:Gd及び/又はLa=4:1から2:3である。置換が2割未満では、緑色成分が大きく赤色成分が少なくなる。また、6割以上では、赤み成分が増えるものの輝度が急激に低下する。
【0083】
このようなフォトルミネセンス蛍光体は、Y、Gd、Ce、La、Al、Sm及びGaの原料として酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し、それらを化学量論比で十分に混合して原料を得る。又は、Y、Gd、Ce、La、Smの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合して混合原料を得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰め、空気中1350?1450℃の温度範囲で2?5時間焼成して焼成品を得、次に焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通すことで得ることができる。本実施形態2において、組成の異なる2種類以上のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、混合して用いても良いし、それぞれ独立して配置(例えば、積層)して用いても良い。2種類以上の蛍光体を混合して用いた場合、比較的簡単に量産性よく色変換部を形成することができ、2種類以上の蛍光体を独立して配置した場合は、所望の色になるまで重ね合わせることにより、形成後に色調整をすることができる。また、蛍光体をそれぞれ独立して配置して用いる場合、LED素子に近いほうに、光をより短波長側で吸収発光しやすい蛍光体を設け、LEDより離れた所に、それよりも長波長側で吸収発光しやすい蛍光体を配置することが好ましい。これによって効率よく吸収及び発光させることができる。
【0084】
以上のように本実施形態2の発光ダイオードは、蛍光物質として、組成の異なる2種類以上のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を用いている。これによって、所望の発光色が効率よく発光可能な発光ダイオードを構成することができる。即ち、半導体発光素子が発光する光の発光波長が、図6に示す色度図のA点からB点に至る線上に位置する場合、組成の異なる2種類以上のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体の色度点(C点及びD点)である図6のA点,B点,C点及びD点で囲まれた斜線内にある任意の発光色を発光させることができる。実施形態2では、LED素子、蛍光体の組成若しくはその量を種々選択することによって調節することができる。特に、LED素子の発光波長に対応して、所定の蛍光体を選択することによりLED素子の発光波長のバラツキを補償することにより、発光波長のバラツキが少ない発光ダイオードを構成することができる。また、蛍光物質の発光波長を選択することにより、RGBの発光成分を高輝度に含んだ発光ダイオードを構成することができる。
【0085】
さらに、実施形態2に用いるイットリウム・アルミニウム・ガーネット系(YAG系)蛍光体は、ガーネット構造を有するので、実施形態2の発光ダイオードは、長時間高輝度に発光させることができる。また、実施形態1及び2の発光ダイオードは、発光観測面からみて蛍光体を介して発光素子を設ける。また、発光素子からの光よりもより長波長側に発光する蛍光物質を用いているので、効率よく発光させることができる。さらに、変換された光は発光素子から放出される光よりも長波長側になっているために、発光素子の窒化物半導体層のバンドギャップよりも小さく、該窒化物半導体層に吸収されにくい。従って、蛍光体が等方的に発光するために発光された光はLED素子にも向かうが、蛍光体によって発光された光はLED素子に吸収されることはないので、発光ダイオードの発光効率を低下させることはない。
【0086】
(面状発光光源)
本発明に係る別の実施形態である面状発光光源の例を図7に示す。
図7に示す面状発光光源では、実施形態1又は2で用いたフォトルミネセンス蛍光体が、コーティング部701に含有されている。これによって、窒化ガリウム系発光素子が発生する青色系の光を、コーティング部で色変換した後、導光板704及び散乱シート706を介して面状にして出力する。
【0087】
詳細に説明すると、図7の面状発光光源において、発光素子702は、絶縁層及び導電性パターン(図示せず)が形成されたコの字形状の金属基板703内に固定される。発光素子の電極と導電性パターンとを導通させた後、フォトルミネセンス蛍光体をエポキシ樹脂と混合して発光素子702が積載されたコの字型の金属基板703の内部に充填する。
こうして固定された発光素子702は、アクリル性の導光板704の一方の端面にエポキシ樹脂などで固定される。導光板704の一方の主面上の散乱シート706が形成されていない部分には、点状に発光する蛍現象防止のため白色散乱剤が含有されたフィルム状の反射部材707が形成される。
【0088】
同様に、導光板704の他方の主表面(裏面側)全面及びや発光素子が配置されていない他方の端面上にも反射部材705を設け発光効率を向上させるように構成する。これにより、例えば、LCDのバックライト用として十分な明るさを有する面状発光の発光ダイオードを構成することができる。
【0089】
この面状発光の発光ダイオードを用いた液晶表示装置は、例えば、導光板704の一方の主面上に、透光性導電性パターンが形成された硝子基板間(図示せず)に液晶が注入された液晶装置を介して偏光板を配し構成する。
【0090】
本発明に係る別の実施形態である面状の発光装置の例を、図8、図9とに示す。図8に示す発光装置は、発光ダイオード702によって発生された青色系の光を、フォトルミネセンス蛍光体が含有された色変換部材701を介して白色系の光に変換した後、導光板704によって面状にして出力するように構成されている。
【0091】
図9に示す発光装置は、発光素子702が発光する青色系の光を、導光板704によって面状にした後、導光板704の一方の主表面に形成された、フォトルミネッセンス蛍光体を有する散乱シート706によって白色光に変換して面状の白色光を出力するように構成されている。ここで、フォトルミネッセンス蛍光体は、散乱シート706に含有させても良いし、或いはバインダー樹脂と共に散乱シート706に塗布してシート状に形成してもよい。さらには、導光板704上にフォトルミネセンス蛍光体を含むバインダーを、シート状ではなく、ドット状に直接形成してもよい。
【0092】
<応用例>
(表示装置)
次に、本願発明に係る表示装置について説明する。図10は本願発明に係る表示装置の構成を示すブロック図である。該表示装置は、図10に示すように、LED表示器601と、ドライバー回路602、画像データ記憶手段603及び階調制御手段604を備えた駆動回路610とからなる。
ここで、LED表示器601は、図11に示すように、図1又は図2に示す白色系の発光ダイオード501が、筺体504にマトリクス状に配列され、白黒用のLED表示装置として使用される。ここで、筺体504には遮光部材505が一体で成形されている。
【0093】
駆動回路610は、図10に示すように、入力される表示データを一時的に記憶する画像データ記憶手段(RAM)603と、RAM603から読み出したデータに基づいてLED表示器601のそれぞれの発光ダイオードを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算して出力する階調制御手段604と、階調制御手段604から出力される信号によってスイッチングされて、発光ダイオードを点灯させるドライバー602とを備える。
階調制御回路604は、RAM603に記憶されるデータを取り出してLED表示器601の発光ダイオード点灯時間を演算して点滅させるパルス信号をLED表示器601に出力する。以上のように構成された表示装置において、LED表示器601は、駆動回路から入力されるパルス信号に基づいて表示データに対応した画像を表示することができ、以下のような利点がある。
【0094】
すなわち、RGBの3つの発光ダイオードを用いて白色系の表示をさせるLED表示器は、RGBの各発光ダイオードの発光出力を調節して表示させる必要があるため、各発光ダイオードの発光強度、温度特性などを考慮して各発光ダイオードを制御しなければならないので、該LED表示器を駆動する駆動回路は複雑になるという問題点があった。しかしながら、本願発明の表示装置においては、LED表示器601が、RGBの3種類の発光ダイオードを用いることなく、本願発明に係る白色系の発光が可能な発光ダイオード501を用いて構成されているので、駆動回路がRGBの各発光ダイオードを個別に制御する必要がなく、駆動回路の構成を簡単にでき、表示装置を安価にできる
【0095】
また、RGBの3つの発光ダイオードを用いて白色系の表示をさせるLED表示器は、1画素毎に、RGBの3つの発光ダイオードを組み合わせて白色表示させるためには、3つの各発光ダイオードをそれぞれ同時に発光させて混色する必要があり、一画素あたりの表示領域が大きくなり、高精細に表示させることができなかった。しかしながら、本願発明の表示装置におけるLED表示器は、1個の発光ダイオードで白色表示できるので、より高精細に白色系表示させることができる。さらに、3つの発光ダイオードの混色によって表示するLED表示器は、見る方向や角度によって、RGBの発光ダイオードのいずれかが部分的に遮光され表示色が変化する場合があるが、本願発明のLED表示器ではそのようなことはない。
【0096】
以上のように本願発明に係る白色系の発光が可能な発光ダイオードを用いたLED表示器を備えた表示装置は、より高精細化が可能であり、安定した白色系の表示ができ、さらに、色むらを少なくできる特長がある。また、本願発明に係る白色表示が可能なLED表示器は、従来の赤色、緑色のみを用いたLED表示器に比べ人間の目に対する刺激が少なく長時間の使用に適している。
【0097】
(本願発明の発光ダイオードを用いた他の表示装置の例)
本願発明の発光ダイオードを用いることにより、図12に示すように、RGBの3つの発光ダイオードに本願発明の発光ダイオードを加えたものを1絵素とするLED表示器を構成することができる。そして、このLED表示器と所定の駆動回路とを接続することにより種々の画像を表示することができる表示装置を構成できる。この表示装置における駆動回路は、モノクロームの表示装置と同様に、入力される表示データを一時的に記憶する画像データ記憶手段(RAM)と、RAMに記憶されたデータに基づいて各発光ダイオードを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算する階調制御回路と、階調制御回路の出力信号でスイッチングされて、各発光ダイオードを点灯させるドライバーとを備える。ただし、この駆動回路は、RGBと白色系に発光する各発光ダイオードをそれぞれ制御する専用の回路を必要とする。階調制御回路は、RAMに記憶されるデータから、それぞれの発光ダイオードの点灯時間を演算して、点滅させるパルス信号を出力する。ここで、白色系の表示を行う場合は、RGB各発光ダイオードを点灯するパルス信号のパルス幅を短く、あるいは、パルス信号のピーク値を低く、あるいは全くパルス信号を出力しないようにする。他方、それを補償するように(すなわち、パルス信号のパルス幅を短く、あるいは、パルス信号のピーク値を低く、あるいは全くパルス信号を出力しない分を補うように)白色系発光ダイオードにパルス信号を供給する。これにより、LED表示器の白色を表示する。
【0098】
このように、RGBの発光ダイオードに白色発光ダイオードを追加することによって、ディスプレーの輝度を向上させることができる。また、RGBの組合せで白色を表示しようとすると、見る角度によってRGBのうちのいずれか1つ又はいずれか2つの色が強調され、純粋な白を表現することができないが、本表示装置のように白色の発光ダイオードを追加することにより、そのような問題を解決することができる。
【0099】
このような表示装置における駆動回路では、白色系発光ダイオードを所望の輝度で点灯させるためのパルス信号を演算する階調制御回路としてCPUを別途備えることが好ましい。階調制御回路から出力されるパルス信号は、白色系発光ダイオードのドライバーに入力されてドライバーをスイッチングさせる。ドライバーがオンになると白色系発光ダイオードが点灯され、オフになると消灯される。
【0100】
(信号機)
本願発明の発光ダイオードを表示装置の1種である信号機として利用した場合、長時間安定して発光させることが可能であると共に発光ダイオードの一部が消灯しても色むらなどが生じないという特長がある。本願発明の発光ダイオードを用いた信号機の概略構成として、導電性パターンが形成された基坂上に白色系発光ダイオードを所定の配列に配置する。このような発光ダイオードを直列又は直並列に接続された発光ダイオードの回路を発光ダイオード群として扱う。発光ダイオード群を2つ以上用いそれぞれ渦巻き状に発光ダイオードを配置させる。全ての発光ダイオードが配置されると円状に全面に配置される。
各発光ダイオード及び基板から外部電力と接続させる電源コードをそれぞれ、ハンダにより接続した後、鉄道信号用の匡体内に固定する。LED表示器は、遮光部材が付いたアルミダイキャストの匡体内に配置され表面にシリコーンゴムの充填材で封止されている。匡体の表示面は、白色レンズを設けてある。また、LED表示器の電気的配線は、筺体の裏面から筺体を密閉するためにゴムパッキンを介して通し、筺体内を密閉する。このようにして白色系信号機を形成することができる。本願発明の発光ダイオードを、複数の群に分け中心部から外側に向け輪を描く渦巻き状などに配置し、並列接続することでより信頼性が高い信号機を構成することができる。この場合、中心部から外側に向け輪を描くことにより、信頼性が高い信号機を構成することができる。中心部から外側に向け輪を描くことには、連続的に輪を描くものも断続的に配置するものの双方を含む。したがって、LED表示器の表示面積などを考慮して、配置される発光ダイオードの数や発光ダイオード群の数を種々選択することができる。この信号機により、一方の発光ダイオード群や一部の発光ダイオードが何らかのトラブルにより消灯したとしても他方の発光ダイオード群や残った発光ダイオードにより信号機を円形状に均一に発光させることが可能となり、色ずれが生ずることもない。渦巻き状に配置してあることから中心部を密に配置することができ電球発光の信号と何ら違和感なく駆動させることができる。
【0101】
<参考例>
以下、本願発明の参考例について説明する。
(参考例1)
参考例1は、発光素子として、GaInN半導体を用いた発光ピークが450nm、半値幅30nmの発光素子を用いた例である。参考例1の発光素子は、洗浄されたサファイ基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジウム)ガス、窒素ガス及びドーバントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化ガリウム系化合物半導体を成膜することにより作製される。成膜時に、ドーパントガスとしてSiH_(4)とCp_(2)Mgと、を切り替えることによってN型導電性を有する窒化ガリウム半導体とP型導電性を有する窒化ガリウム半導体を形成する。参考例1のLED素子は、N型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層と、P型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウム半導体層であるコンタクト層を備え、N型導電性を有するコンタクト層とP型導電性を有するクラッド層との間に厚さ約3nmの、単一量子井戸構造を構成するためのノンドープInGaNからなる活性層が形成されている。尚、サファイア基板上には、バッファ層として低温で窒化ガリウム半導体層が形成されている。また、P型窒化ガリウム半導体は、成膜後400℃以上の温度でアニールされている。
【0102】
エッチングによりP型及びN型の各半導体表面を露出させた後、スパッタリングによりn側p側の各電極がそれぞれ形成される。こうして作製された半導体ウエハーにスクライブラインを引いた後、外力を加えて個々の発光素子に分割した。
【0103】
以上のようにして作製された発光素子を、銀メッキした鋼製のマウント・リードのカップ部にエポキシ樹脂でダイボンディングした後、発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードとをそれぞれ直径が30μmの金線を用いてワイヤーボンディングして、リードタイプの発光ダイオードを作製した。
【0104】
一方、フォトルミネセンス蛍光体は、Y、Gd、Ceの希土類元素を所定の化学量論比で酸に溶解した溶解液を修酸で共沈させ、沈澱物を焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムを混合して、この混合原料にフラックスとしてフツ化アンモニウムを混合して坩堝に詰めて、空気中1400℃の温度で3時間焼成した後、その焼成品をボールミルを用いて湿式粉砕して、洗浄、分離、乾燥後、最後に篩を通すことにより作製した。その結果、フォトルミネセンス蛍光体は、YがGdで約2割置換されたイットリウム・アルミニウム酸化物として(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceが形成された。尚、Ceの置換は0.03であった。
【0105】
以上のようにして作製した(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ce蛍光体80重量部とエポキシ樹脂100重量部とをよく混合してスラリーとし、このスラリーを発光素子が載置されたマウント・リードのカップ内に注入した後、130℃の温度で1時間で硬化させた。こうして発光素子上に厚さ120μmのフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部を形成した。なお、本参考例1では、コーティング部においては、発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体が徐々に多く分布するように構成した。
【0106】
照射強度は、約3.5W/cm^(2)である。その後、さらに発光素子やフォトルミネセンス蛍光体を外部応力、水分及び塵芥などから保護する目的でモールド部材として透光性エポキシ樹脂を形成した。ここで、モールド部材は、砲弾型の型枠の中に、リードフレームにボンディングされ、フォトルミネセンス蛍光体を含んだコーティング部に覆われた発光素子を挿入して、透光性エポキシ樹脂を注入した後、150℃5時間にて硬化させて形成した。
【0107】
この要に形成した発光ダイオードは、発光観測正面から見ると、フォトルミネセンス蛍光体のボディーカラーにより中央部が黄色っぽく着色されていた。
こうして得られた白色系が発光可能な発光ダイオードの色度点、色温度、演色性指数を測定した結果、それぞれ、色度点は、(x=0.302、y=0.280)、色温度8080K、演色性指数(Ra)=87.5と三波長型蛍光灯に近い性能を示した。また、発光効率は9.51m/wと白色電球並であった。さらに、温度25℃60mA通電、温度25℃20mA通電、温度60℃90%RH下で20mA通電の各寿命試験においても蛍光体に起因する変化は観測されず通常の青色発光ダイオードと寿命特性に差がないことが確認できた。
【0108】
(比較例1)
フォトルミネセンス蛍光体を(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ce蛍光体から(ZnCd)S:Cu、Alとした以外は、参考例1と同様にして発光ダイオードの形成及び寿命試験を行った。形成された発光ダイオードは通電直後、参考例1と同様、白色系の発光が確認されたが輝度は低かった。また、寿命試験においては、約100時間で出力がゼロになった。劣化原因を解析した結果、蛍光体が黒化していた。
【0109】
これは、発光素子の発光光と蛍光体に付着していた水分あるいは外部環境から進入した水分により光分解し蛍光体結晶表面にコロイド状亜鉛金属を析出し外観が黒色に変色したものと考えられる。温度25℃20mA通電、温度60℃90%RH下で20mA通電の寿命試験結果を参考例1の結果と共に図13に示す。輝度は初期値を基準にしそれぞれの相対値を示す。図13において、実線が参考例1であり波線が比較例1を示す。
【0110】
(参考例2)
参考例2の発光ダイオードは、発光素子における窒化物系化合物半導体のInの含有量を参考例1の発光素子よりも増やすことにより、発光素子の発光ピークを460nmとし、フォトルミネセンス蛍光体のGdの含有量を参考例1よりも増やし(Y_(0.6)Gd_(0.4))_(3)Al_(5)O_(12):Ceとした以外は参考例1と同様にして発光ダイオードを作製した。
以上のようにして作製した発光ダイオードは、白色系の発光可能であり、その色度点、色温度、演色性指数を測定した。それぞれ、色度点(x=0.375、y=0.370)、色温度4400K、演色性指数(Ra)=86.0であった。
【0111】
図18(A?C)にそれぞれ、参考例2のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
また、この参考例2の発光ダイオードを100個作製し、初期の光度に対する1000時間発光させた後における光度を調べた。その結果、初期(寿命試験前)の光度を100%とした場合、1000時間経過後における平均光度は、平均して98.8%であり特性に差がないことが確認できた。
【0112】
(参考例3)
参考例3の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体としてY、Gd、Ceの希土類元素に加えSmを含有させた、一般式(Y_(0.39)Gd_(0.57)Ce_(0.03)Sm_(0.01))_(3)Al_(5)O_(12)蛍光体を用いた以外は、参考例1と同様に作製した。この参考例3の発光ダイオードを100個作製し、130℃の高温下において評価した結果、参考例1の発光ダイオードと比較して平均温度特性が8%ほど良好であった。
【0113】
(参考例4)
参考例4のLED表示器は、参考例1の発光ダイオードが、図11に示すように銅パターンを形成したセラミックス基坂上に、16×16のマトリックス状に配列されて構成される。尚、参考例4のLED表示器では、発光ダイオードが配列された基板は、フェノール樹脂からなり遮光部材505が一体で形成された筺体504内部に配置され、発光ダイオードの先端部を除いて筺体、発光ダイオード、基板及び遮光部材の一部をピグメントにより黒色に着色したシリコーンゴム506が充填される。また、基板と発光ダイオードとの接続は、自動ハンダ実装装置を用いてハンダ付けを行った。
【0114】
以上のように構成されたLED表示器を、入力される表示データを一時的に記憶するRAM及びRAMに記憶されるデータを取り出して発光ダイオードを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算する階調制御回路と階調制御回路の出力信号でスイッチングされて発光ダイオードを点灯させるドライバーとを備えた駆動手段によって駆動することにより白黒LED表示装置として使用できることを確認した。
【0115】
(参考例5)
参考例5の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式(Y_(0.2)Gd_(0.8))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いた以外は、参考例1と同様にして作製した。この参考例5の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、色度点(平均値)は(x=0.450,y=0.420)であり、電球色の光を発光することができた。
【0116】
図19(A?C)にそれぞれ、参考例5のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
また、参考例5の発光ダイオードは、参考例1の発光ダイオードに比較して輝度が約40%低かったが、寿命試験においては、参考例1と同様に優れた耐候性を示していた。
【0117】
(参考例6)
参考例6の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式Y_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いた以外は、参考例1と同様にして作製した。この参考例6の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、参考例1に比較してやや黄緑色がかった白色の光を発光することができた。
図20(A?C)にそれぞれ、参考例6のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
また、参考例6の発光ダイオードは、寿命試験においては、参考例1と同様に優れた耐候性を示していた。
【0118】
(参考例7)
参考例7の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式Y_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いた以外は、参考例1と同様にして作製した。この参考例7の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、参考例7の発光ダイオードは、輝度は低いが緑色がかった白色の光を発光することができ、寿命試験においては、参考例1と同様に優れた耐候性を示していた。
図21(A?C)にそれぞれ、参考例7のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
【0119】
(参考例8)
参考例8の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として、一般式Gd_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表されるYを含まない蛍光体を用いた以外は、参考例1と同様にして作製した。この参考例8の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、参考例8の発光ダイオードは、輝度は低いが、寿命試験においては、参考例1と同様に優れた耐候性を示していた。
【0120】
(参考例9)
参考例9の発光ダイオードは、図7に示す構成を有する面状発光の発光装置である。
発光素子として発光ピークが450nmのIn_(0.05)Ga_(0.95)N半導体を用いた。発光素子は、洗浄させたサファイア基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジュウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化ガリウム系化合物半導体を成膜することにより形成した。ドーパントガスとしてSiH_(4)とCp_(2)Mgと、を切り替えることによってN型導電性を有する窒化ガリウム半導体とP型導電性を有する窒化ガリウム半導体を形成しPN接合を形成した。半導体発光素子としては、N型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層、N型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層を形成した。N型導電性を有するクラッド層とP型導電性を有するクラッド層との間にダブルヘテロ接合となるZnドープInGaNの活性層を形成した。なお、サファイア基板上には、低温で窒化ガリウム半導体を形成し、バッファ層として用いた。P型窒化物半導体層は、成膜後400℃以上の温度でアニールされている。
【0121】
各半導体層を成膜した後、エッチングによりPN各半導体表面を露出させた後、スパッタリングにより各電極をそれぞれ形成し、こうして出来上がった半導体ウエハーをスクライブラインを引いた後、外力により分割させ発光素子として発光素子を形成した。
銀メッキした銅製リードフレームの先端にカップを有するマウント・リードに発光素子をエポキシ樹脂でダイボンディングした。発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードと、をそれぞれ直径が30μmの金線でワイヤボンディングし電気的導通を取った。
【0122】
モールド部材は、砲弾型の型枠の中に発光素子が配置されたリードフレームを挿入し透光性エポ樹脂を混入後、150℃5時間にて硬化させ青色系発光ダイオードを形成させた。青色系発光ダイオードを端面が全て研磨されたアクリル性導光板の一端面に接続させた。アクリル板の片面及び側面は、白色反射部材としてチタン酸バリウムをアクリル系バインダー中に分散したものでスクリーン印刷及び硬化させた。
【0123】
一方、フォトルミネセンス蛍光体は、緑色系及び赤色系をそれぞれ必要なY、Gd、Ce、Laの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400°Cの温度範囲で3時間焼成して焼成品を得た。焼成品をそれぞれ水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して形成した。
【0124】
以上のようにして作製された、一般式Y_(3)(Al_(0.6)Ga_(0.4))_(5)O_(12):Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体120重量部と、同様にして作製された、一般式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体100重量部とを、エポキシ樹脂100重量部とよく混合してスラリーとし、このスラリーを厚さ0.5mmのアクリル層上にマルチコーターを用いて均等に塗布、乾燥し、厚さ約30μmの色変換部材として蛍光体膜を形成した。
蛍光体層を導光板の主発光面と同じ大きさに切断し導光板上に配置することにより面状の発光装置を作製した。以上のように作製した発光装置の色度点、演色性指数を測定した結果、色度点は、(x=0.29,y=0.34)であり、演色性指数(Ra)は、92.0と三波長型蛍光灯に近い性能を示した。また、発光効率は12 lm/wと白色電球並であった。さらに耐侯試験として室温60mA通電、室温20mA通電、60℃90%RH下で20mA通電の各試験においても蛍光体に起因する変化は観測されなかった。
【0125】
(比較例2)
参考例9の一般式Y_(3)(Al_(0.6)Ga_(0.4))_(5)O_(12):Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体、及び一般式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体からなるフォトルミネセンス蛍光体に代えて、それぞれペリレン系誘導体である緑色有機蛍光顔料(シンロイヒ(SINLOIHI)化学製FA-001)と赤色有機蛍光顔料(シンロイヒ化学製FA-005)とを用いて同量で混合攪拌した以外は、参考例9と同様にして発光ダイオードを作製して参考例9と同様の耐侯試験を行った。作製した比較例1の発光ダイオードの色度点は、(x=0.34,y=0.35)であった。耐侯性試験として、カーボンアークで紫外線量を200hrで太陽光の1年分とほぼ同等とさせ時間と共に輝度の保持率及び色調を測定した。また、信頼性試験として発光素子を発光させ70℃一定における時間と共に発光輝度及び色調を測定した。この結果を参考例9と共に図14及び図15にそれぞれ示す。図14,15から明らかなように、いずれの試験においても、参考例9は、比較例2より劣化が少ない。
【0126】
(参考例10)
参考例10の発光ダイオードは、リードタイプの発光ダイオードである。
参考例10の発光ダイオードでは、参考例9と同様にして作製した450nmのIn_(0.05)Ga_(0.95)Nの発光層を有する発光素子を用いた。そして、銀メッキした銅製のマウント・リードの先端のカップに発光素子をエポキシ樹脂でダイボンディングし、発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードとをそれぞれ金線でワイヤーボンディングし電気的に導通させた。
【0127】
一方、フォトルミネセンス蛍光体は、一般式Y_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体と一般式(Y_(0.2)Gd_(0.8))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体とをそれぞれ以下のようにして作製して混合して用いた。すなわち、必要なY、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400°Cの温度範囲で3時間焼成してそれぞれ焼成品を得た。焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して所定の粒度の第1と第2の蛍光体を作製した。
【0128】
以上のようにして作製された第1の蛍光体及び第2の蛍光体それぞれ40重量部を、エポキシ樹脂100重量部に混合してスラリーとし、このスラリーを発光素子が配置されたマウント・リード上のカップ内に注入した。注入後、注入されたフォトルミネセンス蛍光体を含有する樹脂を130℃1時間で硬化させた。こうして発光素子上に厚さ120μのフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部材を形成した。なお、このコーティング部材は、発光素子に近いほどフォトルミネセンス蛍光体の量が徐々に多くなるように形成した。その後、さらに発光素子やフォトルミネセンス蛍光体を外部応力、水分及び塵芥などから保護する目的でモールド部材として透光性エポキシ樹脂を形成した。モールド部材は、砲弾型の型枠の中にフォトルミネセンス蛍光体のコーティング部が形成されたリードフレームを挿入し透光性エポキシ樹脂を混入後、150℃5時間にて硬化させて形成した。このようにして作製された参考例10の発光ダイオードは、発光観測正面から視認するとフォトルミネセンス蛍光体のボディーカラーにより中央部が黄色っぽく着色されていた。
【0129】
以上のように作製した参考例10の発光ダイオードの色度点、色温度、演色性指数を測定した結果、色度点は、(x=0.32,y=0.34)であり、演色性指数(Ra)=89.0、発光効率は10lm/wであった。さらに耐侯試験として室温60mA通電、室温20mA通電、60℃90%RH下で20mA通電の各試験においてもフォトルミネセンス蛍光体に起因する変化は観測されず通常の青色系発光ダイオードと寿命特性に差がないことが確認できた。
【0130】
(参考例11)
LED素子として発光ピークが470nmのIn_(0.4)Ga_(0.6)N半導体を用いた。
発光素子は、洗浄させたサファイア基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジュウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化ガリウム系化合物半導体を成膜させることにより形成した。ドーパントガスとしてSiH_(4)とCp_(2)Mgと、を切り替えることによってN型導電性を有する窒化ガリウム半導体とP型導電性を有する窒化ガリウム半導体を形成しPN接合を形成した。LED素子としては、N型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層、P型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層を形成した。N型導電性を有するコンタクト層とP型導電性を有するクラッド層との間に厚さ約3nmのノンドープInGaNの活性層を形成することにより単一井戸構造とした。なお、サファイア基板上には、低温で窒化ガリウム半導体をバッファ層として形成した。
【0131】
以上のように各層を形成した後、エッチングによりPN各半導体表面を露出させ、スパッタリングによりp側及びn側の各電極を形成した。こうして出来上がった半導体ウエハーをスクライブラインを引いた後、外力により分割させ発光素子として発光素子を形成した。
【0132】
この発光素子を銀メッキした銅製のマウント・リードのカップにエポキシ樹脂を用いてダイボンディングした。発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードと、をそれぞれ直径30μmの金線でワイヤーボンディングし電気的導通を取った。
【0133】
モールド部材は、砲弾型の型枠の中に発光素子が配置されたリードフレームを挿入し透光性エポキシ樹脂を混入後、150℃5時間にて硬化させ青色系発光ダイオードを形成した。青色系発光ダイオードを端面が全て研磨されたアクリル性導光板の一端面に接続した。アクリル板の片面及び側面は、白色反射部材としてチタン酸バリウムをアクリル系バインダー中に分散したものをスクリーン印刷及び硬化して膜状に形成した。
【0134】
一方、フォトルミネセンス蛍光体は、一般式(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表され比較的短波長側の黄色系が発光可能な蛍光体と、一般式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表され比較的長波長側の黄色系が発光可能な蛍光体とを以下のようにして作製して混合して用いた。これらの蛍光体は、それぞれ必要なY、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400℃の温度範囲で3時間焼成して焼成品を得た。焼成品をそれぞれ水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して形成した。
【0135】
以上のように作製した比較的短波長側の黄色系蛍光体100重量部と比較的長波長側の黄色系蛍光体100重量部とを、アクリル樹脂1000重量部とよく混合して押し出し成形し、厚さ約180μmの色変換部材として用いる蛍光体膜を形成した。蛍光体膜を導光板の主発光面と同じ大きさに切断し導光板上に配置することにより発光装置を作製した。
このようにして作製した参考例11の発光装置の色度点、演色性指数を測定した結果、色度点は、(x=0.33,y=0.34)であり、演色性指数(Ra)=88.0を示した。また、発光効率は10 lm/wであった。
【0136】
図22(A?C)にはそれぞれ、参考例11に使用した、式(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体、式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体及び発光素子の各発光スペクトルを示す。また、図23には、参考例11の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。さらに耐侯試験として室温60mA通電、室温20mA通電、60℃90%RH下で20mA通電の各試験においても蛍光体に起因する変化は観測されなかった。同様に、この蛍光体の含有量を種々変えることによって発光素子からの波長が変化しても所望の色度点を維持させることができる。
【0137】
(参考例12)
参考例12の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式Y_(3)In_(5)O_(12):Ceで表されるAlを含まない蛍光体を用いた以外は、参考例1と同様にして発光ダイオードを100個作製した。参考例9の発光ダイオードは、輝度は低いが寿命試験において参考例1と同様に優れた耐候性を示していた。
【0138】
以上説明したように、本発明に係る発光ダイオードは、所望の色を有する光を発光することができ、長時間高輝度の使用においても発光効率の劣化が少なくしかも耐候性に優れている。従って、一般的な電子機器に限られず、高い信頼性が要求される車載用、航空産業用、港内のブイ表示用及び高速道路の標識照明など屋外での表示や照明として新たな用途を開くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明に係る実施の形態のリードタイプの発光ダイオードの模式的断面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のチップタイプの発光ダイオードの模式的断面図である。
【図3】(A)は実施形態1のセリウムで付活されたガーネット系蛍光体の励起スペクトルを示すグラフであり、(B)は実施形態1のセリウムで付活されたガーネット系蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
【図4】実施の形態1の発光ダイオードの発光スペクトルを示すグラフである。
【図5】(A)は実施形態2のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体の励起スペクトルを示すグラフであり、(B)は実施形態2のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
【図6】実施形態2の発光ダイオードの発光色を説明するための色度図であり、図中、A及びB点は発光素子が発光する光の発光色を示し、C点、D点は、それぞれ2種類のフォトルミネッセンス蛍光体からの発光色を示す。
【図7】本発明に係る別の実施形態の面状発光光源の模式的な断面図である。
【図8】図7とは異なる面状発光光源の模式的な断面図である。
【図9】図7及び図8とは異なる面状発光光源の模式的な断面図である。
【図10】本願発明の応用例である表示装置のブロック図10である。
【図11】図10の表示装置のLED表示器の平面図である。
【図12】本願発明の発光ダイオード及びRGBの4つの発光ダイオードを用いて一絵素を構成したLED表示器の平面図である。
【図13】(A)は、参考例1及び比較例1の発光ダイオードの寿命試験の結果を示すグラフであって、25℃における結果であり、(B)は、参考例1及び比較例1の発光ダイオードの寿命試験の結果を示すグラフであって、60℃,90%RHにおける結果である。
【図14】(A)は、参考例9及び比較例2の耐候性試験の結果を示すグラフであり、経過時間に対する輝度保持率を示し、(B)は、参考例9及び比較例2の耐候性試験の結果を示すグラフであり、試験前後の色調の変化を示す。
【図15】(A)は、参考例9及び比較例2の発光ダイオードの信頼性試験における輝度保持率と時間との関係を示すグラフであり、(B)は、参考例9及び比較例2の発光ダイオードの信頼性試験における色調と時間との関係を示したグラフである。
【図16】表1に示した蛍光体とピーク波長465nmの青色LEDとを組み合わせた発光ダイオードにより実現できる色再現範囲を示す色度図である。
【図17】表1に示した蛍光体とピーク波長465nmの青色LEDとを組み合わせた発光ダイオードにおける蛍光体の含有量を変化させたときの発光色の変化を示す色度図である。
【図18】(A)は、(Y_(0.6)Gd_(0.4))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される参考例2のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(B)は、発光ピーク波長460nmを有する参考例2の発光素子の発光スペクトルを示し、(C)は、参考例2の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
【図19】(A)は、(Y_(0.2)Gd_(0.8))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される参考例5のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(B)は、発光ピーク波長450nmを有する参考例5の発光素子の発光スペクトルを示し、(C)は、参考例5の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
【図20】(A)は、Y_(3)A_(15)O_(12):Ceで表される参考例6のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(B)は、発光ピーク波長450nmを有する参考例6の発光素子の発光スペクトルを示し、(C)は、参考例6の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
【図21】(A)は、Y_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表される参考例7のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(B(は、発光ピーク波長450nmを有する参考例7の発光素子の発光スペクトルを示し、(C)は、参考例7の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
【図22】(A)は、(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される参考例11のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(B)は、(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される参考例11のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(C)は、発光ピーク波長470nmを有する参考例11の発光素子の発光スペクトルを示す。
【図23】参考例11の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウム系半導体を発光層に含む第1の発光素子と、その第1の発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体と、を備えた発光装置において、
前記第1の発光素子の発光ピーク波長は420nmから490nmの範囲にあり、
前記蛍光体の発光ピーク波長は510nmから600nmの範囲にあり、
前記第1の発光素子からの光と前記蛍光体からの光との混色により白色系を発光し、
前記発光装置は、前記第1の発光素子とは別に、ガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐、インジウムアルミニウム燐から選択された半導体を発光層に含む、前記蛍光体を実質的に励起しない第2の発光素子を備えたことを特徴とする発光装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2012-07-02 
出願番号 特願2006-196344(P2006-196344)
審決分類 P 1 113・ 161- YA (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 居島 一仁門田 かづよ柏崎 康司  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 服部 秀男
岡▲崎▼ 輝雄
登録日 2008-05-16 
登録番号 特許第4124248号(P4124248)
発明の名称 発光装置  
代理人 加治 梓子  
代理人 古城 春実  
代理人 玄番 佐奈恵  
代理人 牧野 知彦  
代理人 鮫島 睦  
代理人 吉村 誠  
代理人 古城 春実  
代理人 高橋 綾  
代理人 鮫島 睦  
代理人 黒田 健二  
代理人 田村 啓  
代理人 言上 恵一  
代理人 加治 梓子  
代理人 田村 啓  
代理人 玄番 佐奈恵  
代理人 高橋 綾  
代理人 牧野 知彦  
代理人 言上 恵一  
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