• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01F
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F
管理番号 1267299
審判番号 不服2011-20315  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-20 
確定日 2012-12-06 
事件の表示 特願2007-163058「非接触電力伝送機器及びその受電用コイルブロックの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月 4日出願公開,特開2008-294385〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は,平成19年6月20日(特許法第41条第1項による優先権主張 平成19年4月24日)に出願されたものであって,平成23年3月23日付け拒絶の理由に対し,同年5月30日に手続補正がなされたが,同年6月15日に拒絶をすべき旨の査定がなされたものであり,これに対し,平成23年9月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に,同日付けで手続補正がなされたものである。
その後,当審の平成24年5月10日付け審尋に対し,同年7月17日に回答書が提出された。

第2 平成23年9月20日付け手続補正の却下の決定

《補正の却下の決定の結論》

平成23年9月20日付け手続補正を却下する。

《補正の却下の決定の理由》

1 本件手続補正の概要
平成23年9月20日付け手続補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲について,本件補正前

「 【請求項1】
一次側送電用コイルからの電力を受けるための二次側受電用のコイルを備えた非接触電力伝送機器であって,平面コイルとして形成された上記二次側受電用コイルに,該コイルの一次側送電コイルの反対側の片面である背面に位置する磁性層と,電磁ノイズの遮断用のシールド層と,断熱層のうちの少なくとも磁性層が積層一体化され,上記磁性層は,上記二次側受電用コイルの上記背面を覆っていると共に,上記二次側充電用コイルの素線間の隙間のうち上記背面側の隙間に埋め込まれていることを特徴とする非接触電力伝送機器。
【請求項2】
上記二次側受電用コイルに少なくとも磁性層が積層された受電用コイルブロックが機器の外殻構成部材に設けられていることを特徴とする請求項1記載の非接触電力伝送機器。
【請求項3】
上記二次側受電用コイルに少なくとも磁性層が積層された受電用コイルブロックが機器内に配設されている機能部材の一面に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の非接触電力伝送機器。
【請求項4】
上記二次側受電用コイルに少なくとも磁性層が積層された受電用コイルブロックが機器に対して着脱自在なカード型部材として設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の非接触電力伝送機器。
【請求項5】
二次側受電用コイルの背面側に磁性層とシールド層と断熱層がこの順で積層されていることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の非接触電力伝送機器。
【請求項6】
背面側に磁性層が積層された二次側受電用コイルの一次側送電コイル側の片面側に層状の放熱材が取り付けられていることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の非接触電力伝送機器。
【請求項7】
請求項1?4のいずれか1項に記載の非接触式電力伝送機器における二次側受電用コイルと磁性層の積層物としての受電用コイルブロックの製造方法であって,結晶性金属材料あるいは非結晶性金属材料で構成された磁性材のプレス成形で磁性層を形成しているとを特徴とする非接触電力伝送機器の受電用コイルブロックの製造方法。
【請求項8】
請求項5に記載の非接触電力伝送機器における二次側受電用コイルと磁性層とシールド層と断熱層の積層物としての受電用コイルブロックの製造方法であって,シールド材の片面に断熱材を塗工後,乾燥固定させ,次いでシールド材の他面に磁性層を介して二次側受電用コイルを貼り合わせていることを特徴とする非接触電力伝送機器の受電用コイルブロックの製造方法。」

とあったものを,本件補正により

「 【請求項1】
一次側送電用コイルからの電力を受けるための二次側受電用のコイルを備えた非接触電力伝送機器であって,平面コイルとして形成された上記二次側受電用コイルに,該コイルの一次側送電コイルの反対側の片面である背面に位置する磁性層と,電磁ノイズの遮断用のシールド層と,断熱層とが積層一体化されると共に,上記二次側受電用コイルの背面側に上記磁性層と上記シールド層と上記断熱層がこの順で積層され,
上記磁性層は,上記二次側受電用コイルの上記背面を覆っていると共に,上記二次側受電用コイルの素線間の隙間のうち上記背面側の隙間に埋め込まれていることを特徴とする非接触電力伝送機器。
【請求項2】
上記二次側受電用コイルに少なくとも磁性層が積層された受電用コイルブロックが機器の外殻構成部材に設けられていることを特徴とする請求項1記載の非接触電力伝送機器。
【請求項3】
上記二次側受電用コイルに少なくとも磁性層が積層された受電用コイルブロックが機器内に配設されている機能部材の一面に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の非接触電力伝送機器。
【請求項4】
上記二次側受電用コイルに少なくとも磁性層が積層された受電用コイルブロックが機器に対して着脱自在なカード型部材として設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の非接触電力伝送機器。
【請求項5】
背面側に磁性層が積層された二次側受電用コイルの一次側送電コイル側の片面側に層状の放熱材が取り付けられていることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の非接触電力伝送機器。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1項に記載の非接触式電力伝送機器における二次側受電用コイルと磁性層の積層物としての受電用コイルブロックの製造方法であって,結晶性金属材料あるいは非結晶性金属材料で構成された磁性材のプレス成形で磁性層を形成していることを特徴とする非接触電力伝送機器の受電用コイルブロックの製造方法。
【請求項7】
請求項1?5のいずれか1項に記載の非接触電力伝送機器における二次側受電用コイルと磁性層とシールド層と断熱層の積層物としての受電用コイルブロックの製造方法であって,シールド材の片面に断熱材を塗工後,乾燥固定させ,次いでシールド材の他面に磁性層を介して二次側受電用コイルを貼り合わせていることを特徴とする非接触電力伝送機器の受電用コイルブロックの製造方法。」

としようとするものである。
なお,下線は当審で付したものである。

2 補正の目的について
(1) 請求項1について
本件補正による請求項1は,本件補正前の請求項1を引用する請求項5の発明特定事項の全てを含み,かつ,本件補正前の請求項1に記載されていた「のうちの少なくとも磁性層が」を本件補正により「とが」とすることで,選択的に記載されていた事項の一部を削除するものであるから,本件補正前の請求項5の発明を特定する事項をさらに特定するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2) 請求項6及び7について
本件補正による請求項6は,本件補正前の請求項7と,引用する請求項の記載が,本件補正前「請求項1?4のいずれか1項に記載の」とあったものが,本件補正により「請求項1?5のいずれか1項に記載の」となっているほか,同一である。
また,本件補正による請求項7は,本件補正前の請求項8と,引用する請求項の記載が,本件補正前「請求項5に記載の」とあったものが,本件補正により「請求項1?5のいずれか1項に記載の」となっているほか,同一である。
しかしながら,本件補正前の請求項7及び8は,本件補正による請求項5に対応する事項,すなわち「背面側に磁性層が積層された二次側受電用コイルの一次側送電コイルの片面側に層状の放熱材が取り付けられる」「非接触電力伝送機器」を発明特定事項とする本件補正前の請求項6を引用していなかったものである。
一方で,本件補正による請求項6及び7の発明は,本件補正による請求項5を追加して引用することにより,「非接触電力伝送機器の受電用コイルブロックの製造方法」の対象物に,「背面側に磁性層が積層された二次側受電用コイルの一次側送電コイルの片面側に層状の放熱材が取り付けられる」ものを新たに含むこととなっている。
すると,本件補正による請求項6及び7は,「背面側に磁性層が積層された二次側受電用コイルの一次側送電コイルの片面側に層状の放熱材が取り付けられる」という,本件補正前の請求項7及び8の発明に,本件補正前の請求項7及び8の発明では特定されていなかった新たな技術事項を追加するものであるところ,発明を特定するために必要な事項をさらに追加する補正の目的は,特許法第17条の2第5項各号に掲げられた事項のいずれにも該当しない。

(3) 小括
以上のように,本件補正は,特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項を目的とするものでない。

3 独立特許要件について
既に検討したように,本件補正は特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項を目的とするものではないが,本件補正による特許請求の範囲の請求項1の発明(以下,「本件補正発明」という。)は,特許請求の範囲の減縮をしようとするものであるから,本件補正発明が,出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて,以下,検討する。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は,前記1に,本件補正による特許請求の範囲の請求項1の発明として示したとおりのものである。

(2) 刊行物の記載事項
この出願の優先日前に頒布された刊行物であり,原査定の拒絶の理由で引用された特開平8-079976号公報(以下,「文献1」という。)には,図面と共に以下の事項が記載されている。なお,下線は当審で付したものである。
「【0013】
【課題を解決するための手段】図1は本発明の原理説明図である。本発明は前記の目的を達成するため,充電部と被充電部とを分離して構成し,前記充電部には,送信側コイル15と共振用コンデンサ29からなる並列共振回路を含む発振回路(高周波発振回路)を備え,前記被充電部には,充電時に前記発振回路の送信側コイル15と電磁結合して電圧を誘起させるための受信側コイル16と,該受信側コイル16に誘起した電圧により充電可能な2次電池18を備えた非接触型充電器において,前記被充電部の受信側コイル16と並列に共振用コンデンサ34を接続して並列共振回路を構成した。
【0014】また,前記被充電部において,並列共振回路を構成する受信側コイル16と2次電池18との間に,充電部で発生した電磁界の遮蔽を行うための電磁遮蔽板17を配置した。
【0015】
【作用】前記構成に基づく本発明の作用を,図1に基づいて説明する。2次電池18への充電を行う場合は,被充電部を充電部の上に載せた状態で,電源を投入して行う。この充電状態では,送信側コイル15と受信側コイル16が対向配置されるので,これらのコイルが,トランスのコイルと同様に機能する。すなわち,送信側コイル15がトランスの1次捲線で,受信側コイル16がトランスの2次コイルとして機能する。
【0016】充電時に充電部の発振回路が発振すると,該発振回路を構成する並列共振回路が所定の周波数で共振した状態となる。この時,送信側コイル15と受信側コイル16が電磁結合し,送信側コイル15で発生した磁束が受信側コイル16に鎖交し,受信側コイル16に電圧が誘起する。
【0017】この誘起した電圧により,受信側コイル16と共振用コンデンサ34からなる被充電部の並列共振回路が共振し,この並列共振回路の出力で2次電池18を充電する。すなわち,充電時には,充電部の並列共振回路と,被充電部の並列共振回路が同時に共振し2次電池18の充電を行う。
【0018】前記のように,被充電部での並列共振回路が共振することにより,充電電流が大きくなっても,2次電池の端子電圧は大きな値に維持できる。このため,2次電池の急速充電が可能になる。
【0019】特に,共振用コンデンサ34の容量値が大きくなると,2次電池18への充電電流,及び2次電池の端子電圧が極めて大きくなり,2次電池18へ短時間に大電流を流すことが可能となって,効率の良い急速充電ができる。
【0020】
【実施例】以下,本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお,以下に説明する実施例は,非接触型充電式電動シェーバーに適用した例である。
【0021】図2?図7は本発明の実施例を示した図であり,図2?図7中,10は充電部スタンド,11は充電部スタンドハウジング,12は電動シェーバー,13は電動シェーバーハウジング,14はプリント板,15は送信側コイル,16は受信側コイル,17は電磁遮蔽板,18は2次電池,19はフェライトコア,20は電動シェーバー載置部,22は電源プラグ,23はヒューズ,24は全波整流回路,25は平滑用コンデンサ,26は発振用コンデンサ,27はスイッチング用トランジスタ,28は起動抵抗,29は共振用コンデンサ,30は帰還用コイル,34は共振用コンデンサ,35は平滑用コンデンサ,36は整流用ダイオード,37は定電流素子,38は電流計,39は電圧計,41,42はスイッチング用トランジスタ,43はチョークコイル,44,45は起動抵抗,46は第1の送信側コイル,47は第2の送信側コイル,49は第1の受信側コイル,50は第2の受信側コイル,51は平滑用チョークコイルを示す。
【0022】§1:非接触型充電式電動シェーバーの説明・・・図2,図3参照
図2は非接触型充電式電動シェーバーの説明図1であり,A図は側面図,B図は平面図である。また,図3は非接触型充電式電動シェーバーの説明図2であり,A図は図2のX-Y方向断面図,B図はA図の一部拡大図である。
【0023】本実施例の非接触型充電式電動シェーバーは,電動シェーバー12と,充電部スタンド10で構成されている。そして,充電部スタンド10には充電部が設けてあり,電動シェーバー12には被充電部が設けてある。
【0024】前記充電部スタンド10には充電部スタンドハウジング11が設けてあり,この充電部スタンドハウジング11内に充電部が設けてある。電動シェーバー12には電動シェーバーハウジング13が設けてあり,この電動シェーバーハウジング13内に被充電部が設けてある。
【0025】また,前記充電部スタンドハウジング11の一部に,電動シェーバー12を載せて置くための電動シェーバー載置部20が設けてある。そして,電動シェーバー12を使用する時は,電動シェーバー載置部20から電動シェーバー12を取り出して使用し,それ以外の時は,電動シェーバー12を電動シェーバー載置部20上に載せておくことにより,非接触で充電を行うように構成されている。
【0026】前記充電部スタンドハウジング11内に設けた充電部には,充電用の高周波発振回路等の回路部品が設けてあるが,これらの回路部品は,プリント板14上に搭載されている。そして,前記回路部品の内,送信側コイル15は,フェライトコア19に巻いた状態で前記プリント板14上に搭載する。
【0027】この場合,フェライトコア19に巻いた送信側コイル15は,電動シェーバー載置部20と対向する位置で,かつ前記電動シェーバー載置部20に最も近い位置に配置する。
【0028】前記電動シェーバーハウジング13内に設けた被充電部には,コイルとコンデンサの並列共振回路が設けてあるが,その並列共振回路を構成する受信側コイル16が電動シェーバーハウジング13の内部に設けてある。また,電動シェーバーハウジング13内には,電磁遮蔽板17,2次電池18等が設けてある。
【0029】この場合,受信側コイル16は,電動シェーバー12を電動シェーバー載置部20に載せた状態で,電動シェーバー載置部20に最も近い位置となるように配置し,かつ,送信側コイル15と対向するように位置決めして配置する。
【0030】また,2次電池18は,電動シェーバー12を電動シェーバー載置部20に載せた状態で,電動シェーバー載置部20から遠い位置に配置し,電磁遮蔽板17は,受信側コイル16と2次電池18の間に配置することで,送信側コイル15からの電磁遮蔽を行っている。
【0031】前記電磁遮蔽板17が無い場合は,送信側コイル15で発生した電磁界が2次電池18まで達し,2次電池18の金属体に渦電流が流れる。その結果,2次電池が発熱し2次電池が劣化する恐れがある。しかし,電磁遮蔽板17を設けることにより,送信側コイル15で発生した電磁界を遮蔽し,前記2次電池18の発熱を防止することができる。
【0032】前記2次電池としては,例えば,ニッケル・カドミウム電池,ニッケル・水素電池,リチウム・イオン電池等が使用可能である。また,電磁遮蔽板17は,例えば,複合フェライト(フェライトと樹脂の複合体)で構成する。」

以上の記載及び図面の記載から,文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「充電部スタンドには充電部が設けられ,電動シェーバーには被充電部が設けられ,電動シェーバーを電動シェーバー載置部上に載せておくことにより,送信側コイルと受信側コイルが電磁結合し,送信側コイルで発生した磁束が受信側コイルに鎖交し,受信側コイルに電圧が誘起することで,非接触で充電を行うように構成されている非接触型充電式電動シェーバーであって,
前記充電部には,送信側コイルが電動シェーバー載置部と対向する位置で,かつ前記電動シェーバー載置部に最も近い位置に配置され,
前記電動シェーバーには電動シェーバーハウジングが設けてあり,この電動シェーバーハウジング内に被充電部が設けてあり,
前記被充電部には,受信側コイル,電磁遮蔽板,2次電池等が設けてあり,受信側コイルは,電動シェーバーを電動シェーバー載置部に載せた状態で,電動シェーバー載置部に最も近い位置となるように配置し,かつ,送信側コイルと対向するように位置決めして配置され,
前記2次電池は,電動シェーバーを電動シェーバー載置部に載せた状態で,電動シェーバー載置部から遠い位置に配置され,
前記電磁遮蔽板は,送信側コイルで発生した電磁界が2次電池まで達しないように遮蔽するものであって,受信側コイルと2次電池の間に配置されている
非接触型充電式電動シェーバー。」

(3) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 引用発明は「送信側コイルと受信側コイルが電磁結合し,送信側コイルで発生した磁束が受信側コイルに鎖交し,受信側コイルに電圧が誘起することで,非接触で充電」をするものであるから,引用発明の「送信側コイル」は本件補正発明の「一次側送電用コイル」に,引用発明の「送信側コイルで発生した磁束が受信側コイルに鎖交し,受信側コイルに電圧が誘起する」ものである「受信側コイル」は,本件補正発明の「一次側送電用コイルからの電力を受けるため」の「二次側受電用コイル」に相当する。
そして,引用発明の「非接触型充電式電動シェーバー」は本件補正発明の「非接触電力伝送機器」に相当する。
よって,引用発明と本件補正発明は,「一次側送電用コイルからの電力を受けるための二次側受電用のコイルを備えた非接触電力伝送機器」である点で,一致する。
イ 引用発明の「受信側コイル」は,図1の記載から平面状のものと認められるから,引用発明の「受信側コイル」は,本件補正発明の「平面コイルとして形成された上記二次側受電用コイル」に相当する。
引用発明の「送信側コイルで発生した電磁界が2次電池まで達しないように遮蔽する」「電磁遮蔽板」は,不要電磁界を遮蔽するものであるから,本件補正発明の「電磁ノイズの遮断用の」「シールド」に相当する。
そして,引用発明の「電磁遮蔽板」は,図1の記載から,受信側コイルの送信側コイル側でない側に位置し,かつ,積層関係にあるということができるから,本件補正発明の「該コイルの一次側送電コイルの反対側の片面である背面に位置する」「電磁ノイズの遮断用のシールド層」に相当し,かつ,「上記二次側受電用コイルの背面側に」「積層され」たものにも相当する。
よって,本件補正発明と引用発明は,「平面コイルとして形成された上記二次側受電用コイルに,該コイルの一次側送電コイルの反対側の片面である背面に位置する電磁ノイズの遮断用のシールド層が積層されると共に,上記二次側受電用コイルの背面側に上記シールド層が積層され」ている点で一致する。

(4) 一致点及び相違点
以上のように,本件補正発明と引用発明は以下の点で一致する。
「一次側送電用コイルからの電力を受けるための二次側受電用のコイルを備えた非接触電力伝送機器であって,平面コイルとして形成された上記二次側受電用コイルに,該コイルの一次側送電コイルの反対側の片面である背面に位置する電磁ノイズの遮断用のシールド層が積層されると共に,上記二次側受電用コイルの背面側に上記シールド層が積層されていることを特徴とする非接触電力伝送機器。」

そして,以下の各点で相違する。

相違点1 本件補正発明は,「平面コイルとして形成された上記二次側受電用コイルに,該コイルの一次側送電コイルの反対側の片面である背面に位置する磁性層」を有し,「上記磁性層は,上記二次側受電用コイルの上記背面を覆っていると共に,上記二次側受電用コイルの素線間の隙間のうち上記背面側の隙間に埋め込まれている」ものであるのに対し,引用発明の「受信側コイル」は「平面コイル」ではあるものの,このような磁性層を有するものではない点。

相違点2 本件補正発明は,「断熱層」を有し,「磁性層と,電磁ノイズの遮断用のシールド層と,断熱層とが積層一体化されると共に,上記二次側受電用コイルの背面側に上記磁性層と上記シールド層と上記断熱層がこの順で積層され」ているのに対し,引用発明は「断熱層」を有していない点。

(5) 相違点についての判断
ア 相違点1について
磁性体に平面コイルが埋め込まれるようにされ,1次コイルとは反対側の面は磁性体の面が存在するように構成された非接触充電器用平面コイルは,この出願の優先日前に頒布された刊行物であり,原査定の拒絶の理由で引用された特開2003-173921号公報(以下,「周知例1」という。),同じく特開2004-047701号公報(以下,「周知例2」という。)(いずれも図面参照。)に記載されているように,この出願前周知である。
そして,引用発明とかかる周知技術は,いずれも,非接触型充電に関するものであるから,引用発明の「受信側コイル」をかかる周知技術のものとすることで,本件補正発明の「磁性層は,上記二次側受電用コイルの上記背面を覆っていると共に,上記二次側受電用コイルの素線間の隙間のうち上記背面側の隙間に埋め込まれている」ようなコイルとすることは,当業者であれば容易になし得ることである。

イ 相違点2について
この出願の優先日前に頒布された刊行物であり,原査定の拒絶の理由で引用された特開2003-272938号公報(以下,「周知例3」という。)には,
「【0027】図1と図2に示すバッテリ100は,繰り返して充電が可能な二次電池であり,たとえばリチウムイオン電池等である。受電コイル70は,第2セラミックス部材73に対して固定されている。受電コイル70は筐体12の内部に突出して位置しているが,この受電コイル70とバッテリ100の間には,断熱および電気絶縁性部材64が配置されている。受電コイル70はプリント基板60側に電気的に接続されているが,バッテリ100もプリント基板60に対して電気的に接続されている。受電コイル70からの熱および電気の絶縁を図るために,断熱および電気絶縁性部材64が,バッテリ100と受電コイル70の間に配置されている。これによりバッテリ100は,受電コイル70の生じる熱から保護され,電気絶縁性も確保できる。」
と記載され,周知例3の図2を参照すると,「バッテリ100」と「断熱および電気絶縁性部材64」が接するように配置されている。
また,同じくこの出願の優先日前に頒布された刊行物であり,原査定の拒絶の理由で引用された特開2006-314138号公報(以下,「周知例4」という。)には,
「【請求項5】
前記一次コイル及び/又は前記二次コイルから前記非接触送電手段及び/又は前記非接触受電手段内の電子回路基板への放熱を遮断するためのセラミックス板を該一次コイル及び/又は該二次コイルと該電子回路基板間に配設したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の非接触充電装置。」
と記載され,周知例4の図4を参照すると,「充電回路13」の基板と「セラミックス板12」が接するように配置されている。
周知例3,周知例4に例示されるように,非接触電力伝送機器の二次コイルと,バッテリ等の間を,バッテリ等に接するように配置された部材により断熱することにより,非接触電力伝送機器のバッテリ等を熱から保護することは,この出願前周知の技術である。
そして,引用発明とかかる周知技術は,いずれも,非接触型充電に関するものであるから,引用発明にかかる周知技術を適用することは当業者であれば容易になし得ることであり,この場合,引用発明は,「電磁遮蔽板は,受信側コイルと2次電池の間に配置され」たものであって,「前記2次電池は,電動シェーバーを電動シェーバー載置部に載せた状態で,電動シェーバー載置部から遠い位置に配置され,」というものであるから,引用発明に,断熱のための部材をバッテリ等に接するように配するというかかる周知技術を適用すると,「受信側コイル」,「電磁遮蔽板」,断熱のための部材,「2次電池」の順となることは明らかである。
また,複数の部材を一体的に積層することは普通になされており,そのように構成することは格別困難な事項ではないから,相違点1で検討した周知の背面に磁性体を有するコイルの磁性体,引用発明の「電磁遮蔽板」,前記周知の断熱部材を一体のものとすることで,本件補正発明の「磁性層と,電磁ノイズの遮断用のシールド層と,断熱層とが積層一体化」されたものとなるように構成することは,当業者であれば適宜なし得ることである。

ウ そして,引用発明にこれらの周知技術を適用することで本件補正発明のようにすることにより,格別顕著な効果が生じるものとはいえない。

(6) 小括
以上検討したように,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,出願の際独立して特許を受けることができないものであり,平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項で準用する特許法第126条第5項に規定する要件を満たしていないものである。

4 補正の却下の決定のむすび
以上のように,本件補正は,特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項を目的とするものではない。
また,本件補正発明は,特許法第29条第2項の規定により,出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項で準用する特許法第126条第5項に規定する要件を満たしていない。
したがって,本件補正は,特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下をすべきものである。
よって,結論のとおり決定する。


第3 本願発明
以上のように本件補正は却下されたから,この出願の特許請求の範囲の請求項1の発明(以下,「本願発明」という。)は,前記第2《補正の却下の決定の理由》1に,本件補正前の請求項1の発明として示したとおりのものである。

第4 刊行物の記載事項
刊行物の記載事項は,前記第2《補正の却下の決定の理由》3(2) に示したとおりである。

第5 対比及び判断
本願発明は,本件補正発明の「受電用コイルに,該コイルの一次側送電コイルの反対側の片面である背面に位置する磁性層と,電磁ノイズの遮断用のシールド層と,断熱層とが積層一体化され」を「受電用コイルに,該コイルの一次側送電コイルの反対側の片面である背面に位置する磁性層と,電磁ノイズの遮断用のシールド層と,断熱層のうちの少なくとも磁性層が積層一体化され」とすることで,「シールド層」及び「断熱層」について「積層一体化」の必須の対象から削除し,かつ,「二次側受電用コイルの背面側に磁性層とシールド層と断熱層がこの順で積層されている」という特定を削除したものに相当する。
すると,本件補正発明が引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件補正発明の発明特定事項の一部を削除した本願発明も,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第6 むすび
以上のように,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,この出願については,他の請求項に論及するまでもなく,原査定の拒絶の理由により拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-25 
結審通知日 2012-10-02 
審決日 2012-10-22 
出願番号 特願2007-163058(P2007-163058)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01F)
P 1 8・ 575- Z (H01F)
P 1 8・ 57- Z (H01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 正文  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 関谷 隆一
齊藤 健一
発明の名称 非接触電力伝送機器及びその受電用コイルブロックの製造方法  
代理人 北出 英敏  
代理人 西川 惠清  
代理人 水尻 勝久  
代理人 坂口 武  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ