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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1267360
審判番号 不服2011-13957  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-30 
確定日 2012-12-14 
事件の表示 特願2006-297621「リソグラフ方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月 1日出願公開、特開2007- 53403〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年4月12日(パリ条約による優先権主張1999年4月16日、米国)に出願した特願2000-111051号の一部を平成18年11月1日に新たな特許出願としたものであって、平成23年2月23日付で拒絶査定がなされ、その後、平成23年6月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同日付け手続補正書により補正がなされたものである。
本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
(a)特定の波長の輻射線を第1のパターンを有するマスクに照射するステップと、
(b)材料層をその上に有する基板上に形成されたエネルギー感受性材料層に第1のパターンの像を投射するステップと、
(c)エネルギー感受性材料層中に第1のパターンを形成するために、前記像を現像するステップと、
(d)下部材料層に第1のパターンを転写するステップと、
(e)第1のパターン上にエネルギー感受性レジスト材料層を形成するステップと、
(f)特定の波長の輻射線を第2のパターンを有するマスクに照射するステップと、
ここで、該波長は、第1のパターンを有するマスクに照射される輻射線の波長と同一であるか又は異なる、
(g)第2のパターンの像をエネルギー感受性レジスト材料層に投射するステップと、
ここで、該像は、所望のパターンを画成するために第1のパターンと第2のパターンが協働するように、下部の第1のパターンと位置合せされる、
(h)第2のパターンをエネルギー感受性材料中に形成するために、前記像を現像するステップと、
(i)第1及び第2のパターンから所望のパターンを現像するステップとからなり、
ここで、該所望のパターンは、輻射線の波長のうちの少なくとも一つの波長よりも小さい寸法を有する、
ことを特徴とする製品を製造するためのリソグラフ方法。」

なお、本願発明の「材料層」及び「下部材料層」は、本願明細書の【0013】等を参照すると、同一ものであると認められる。

2.引用刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前である平成5年4月2日に頒布された特開平5-82487号公報(以下「引用刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。(後述する引用発明の認定に関連する箇所に下線を付した。)
(1)「基板上の被エッチング層にコンタクトホールを形成する際に用いるエッチングマスクの形成方法であって、前記被エッチング層上に、スルーホールの側壁の一方側を形成する第1のエッチングマスクを設ける第1の工程と、前記被エッチング層上に、前記第1のエッチングマスクの一部分にオーバラップする状態にして、前記スルーホールの側壁の他方側を形成する第2のエッチングマスクを設ける第2の工程とよりなることを特徴とするエッチングマスクの形成方法。」(【請求項1】)
(2)「【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するためになされたエッチングマスクの形成方法である。すなわち、第1の工程で、基板上の被エッチング層上に、スルーホールの側壁の一方側を形成する第1のエッチングマスクを設け、その後第2の工程で、被エッチング層上に、第1のエッチングマスクの一部分にオーバラップする状態にして、スルーホールの側壁の他方側を形成する第2のエッチングマスクを設ける。」(【0006】)
(3)「【実施例】本発明の実施例を図1に示す形成工程図により説明する。図では、左側にレイアウト図を示し、右側に当該レイアウト図中のスルーホール形成部分の断面図を示す。
図に示すように第1の工程で、基板11の上面に成膜されている被エッチング層12〔例えば酸化シリコン(SiO_(2))層よりなる〕の上面に、例えば化学的気相成長法によって、窒化シリコン(Si_(3)N_(4))層13を形成する。次いで例えば回転塗布法によって、Si_(3)N_(4)層13の上面にレジスト膜14を成膜する。その後通常の感光・現像工程を行って、レジスト膜14の2点鎖線で示す部分を除去し、Si_(3)N_(4)層用エッチングマスク15を形成する。このSi_(3)N_(4)層用エッチングマスク15の側壁16の一部は、エッチングによって、後述するスルーホール21の側壁の一方側22と同様の形状に形成される。その形状は、例えばL字形状に形成される。続いて上記Si_(3)N_(4)層用エッチングマスク15を用いて、例えば異方性ドライエッチングによって、Si_(3)N_(4)層13の1点鎖線で示す部分を除去し、第1のエッチングマスク17を形成する。したがって、第1のエッチングマスク17の側壁の一部は、L字形状に形成され、スルーホール21の側壁の一方側22を構成する。 その後、例えばアッシャー処理により、Si_(3)N_(4)用エッチングマスク15を除去する。次に図に示すように第2の工程で、例えば回転塗布法によって、上記第1のエッチングマスク17側の全面を覆う状態に、レジスト膜18を上記被エッチング層12上に形成する。次いで通常のホトリソグラフィーによって、上記レジスト膜18の2点鎖線で示す部分を除去して、第1のエッチングマスク17の一部分にオーバラップする状態の第2のエッチングマスク19を形成する。この第2のエッチングマスク19の側壁の一部は、スルーホール21の側壁の他方側23を構成する。この側壁の他方側23は、例えば逆L字形状に形成される。したがって、第1のエッチングマスク17のL字形状に形成した部分(スルーホールの側壁の一方側22に対応する部分)と第2のエッチングマスク19の逆L字形状に形成した部分(スルーホールの側壁の他方側23に対応する部分)とによってスルーホール21が形成される。上記の如くして、スルーホール21を有するコンタクトホール用エッチングマスク10が完成する。」(【0008】?【0010】)
(4)「本エッチングマスクの形成方法では、上記の如くに、スルーホール21が形成されるように第1のエッチングマスク17に第2のエッチングマスク19を重ね合わせるので、スルーホール21の寸法精度は、第1のエッチングマスク17と第2のエッチングマスク19との重ね合わせ精度によって決定される。例えば設計ルールが0.5μmの場合の重ね合わせ精度は通常0.15μm程度なので、g線ステッパを使用した場合に、スルーホール21を0.15μm程度の径に形成することが可能になる。この結果、上記コンタクトホール用エッチングマスク10を用いて、被エッチング層12を異方性エッチングした場合には、被エッチング層12におよそ0.15μmの径のコンタクトホール(図示せず)を形成することが可能になる。なおi線ステッパを用いることにより、0.1μm径のスルーホールの形成も可能である。この場合には、コンタクトホールの径が0.1μm程度になる。」(【0012】)
(5)図1には、【0008】?【0010】に記載された形成工程が図示されている。
上記引用刊行物の記載内容から、引用刊行物には、
「(A)基板11の上面に成膜された被エッチング層12の上面に窒化シリコン層13を形成し、
(B)次いで、窒化シリコン層13上に第1のレジスト膜14を成膜し、通常の感光・現像工程を行って、L字形状を有する窒化シリコン層用エッチングマスク15を形成し、
(C)次いで、上記エッチングマスク15を用いて窒化シリコン層13をエッチングしてスルーホール21の側壁の一方側22を構成するL字形状を有する第1のエッチングマスク17を形成し、
(D)次いで、上記第1のエッチングマスク17上に第2のレジスト膜18を形成し、通常のホトリソグラフィーによって、スルーホール21の側壁の他方側23を構成する逆L字形状を有する第2のエッチングマスク19を形成し、
(E)上記第1のエッチングマスク17に上記第2のエッチングマスク19を重ね合わせて、上記第1のエッチングマスク17のL字形状と上記第2のエッチングマスク19の逆L字形状とによって形成されたスルーホール21を有するコンタクトホール用エッチングマスク10を用いて、上記被エッチング層12をエッチングしてコンタクトホールを形成し、該コンタクトホールの径が、上記第1のレジスト膜14、第2のレジスト膜18を露光する光の波長がg線、i線の場合、それぞれ、0.15μm、0.1μmの寸法を有する
ホトリソグラフィー方法。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「基板11」、「窒化シリコン層13」、「第1のレジスト膜14」、「L字形状」、「第2のレジスト膜18」、「逆L字形状」、「コンタクトホール」、「ホトリソグラフィー方法」が、それぞれ、本願発明の「基板」、「材料層」、「エネルギー感受性材料層」、「第1のパターン」、「エネルギー感受性レジスト材料層」、「第2のパターン」、「所望のパターン」、「リソグラフ方法」に相当する。
また、引用発明では、「(A)基板11の上面に成膜された被エッチング層12の上面に窒化シリコン層13を形成し、(B)次いで、窒化シリコン層13上に第1のレジスト膜14を成膜し、通常の感光・現像工程を行って、L字形状を有する窒化シリコン層13用エッチングマスク15を形成」するが、「通常の感光・現像工程」とは、パターンを有するマスクに光を照射し、そのパターンの像をレジスト膜に投射して露光し、その像を現像する工程を意味することは、当業者には明かであるから、引用発明は、本願発明の「(a)特定の波長の輻射線を第1のパターンを有するマスクに照射するステップ」、「(b’)材料層を有する基板上に形成されたエネルギー感受性材料層に第1のパターンの像を投射するステップ」及び「(c)エネルギー感受性材料層中に第1のパターンを形成するために、前記像を現像するステップ」を有することは明かである。
また、引用発明は、「(C)次いで、上記エッチングマスク15を用いて窒化シリコン層13をエッチングしてスルーホール21の側壁の一方側22を構成するL字形状を有する第1のエッチングマスク17を形成」するものであり、この「上記エッチングマスク15を用いて窒化シリコン層13をエッチングしてスルーホール21の側壁の一方側22を構成するL字形状を有する第1のエッチングマスク17を形成」することは、「エッチングマスク15」の「L字形状」を「窒化シリコン層13」に転写することであることが当業者には明かであるから、引用発明は、本願発明の「(d)下部材料層に第1のパターンを転写するステップ」を有することは明かである。
また、引用発明は、「(D)次いで、上記第1のエッチングマスク17上に第2のレジスト膜18を形成し、通常のホトリソグラフィーによって、スルーホール21の側壁の他方側23を構成する逆L字形状を有する第2のエッチングマスク19を形成」するものであり、「通常のホトリソグラフィー」とは、パターンを有するマスクに光を照射し、そのパターンの像をレジスト膜に投射して露光し、その像を現像する工程を意味すること、及び、「(E)上記第1のエッチングマスク17に上記第2のエッチングマスク19を重ね合わせて、上記第1のエッチングマスク17のL字形状と上記第2のエッチングマスク19の逆L字形状とによって形成されたスルーホール21を有する」ことが、「L字形状」と「逆L字形状」が協働するように「第1のエッチングマスク17」と「第2のエッチングマスク19」が位置合わせされることを意味すること、及び、「(B)・・第1のレジスト膜14を成膜し、通常の感光・現像工程を行って」に使用される露光光の波長と「(D)・・第2のレジスト膜18を形成し、通常のホトリソグラフィーによって」に使用される露光光の波長が同一であるか又は異なることが、当業者には明かであるから、引用発明は、本願発明の「(e)第1のパターン上にエネルギー感受性レジスト材料層を形成するステップと、(f)特定の波長の輻射線を第2のパターンを有するマスクに照射するステップと、ここで、該波長は、第1のパターンを有するマスクに照射される輻射線の波長と同一であるか又は異なる、(g)第2のパターンの像をエネルギー感受性レジスト材料層に投射するステップと、ここで、該像は、所望のパターンを画成するために第1のパターンと第2のパターンが協働するように、下部の第1のパターンと位置合せされる、 (h)第2のパターンをエネルギー感受性材料中に形成するために、前記像を現像するステップ」を有することは明かである。
また、引用発明は、「上記第1のエッチングマスク17に上記第2のエッチングマスク19を重ね合わせて、上記第1のエッチングマスク17のL字形状と上記第2のエッチングマスク19の逆L字形状とによって形成されたスルーホール21を有するコンタクトホール用エッチングマスク10を用いて、上記被エッチング層12をエッチングしてコンタクトホールを形成し、該コンタクトホールの径が、上記第1のレジスト膜14、第2のレジスト膜18を露光する光の波長がg線、i線の場合、それぞれ、0.15μm、0.1μmの寸法を有する」ものであるが、g線の波長が0.436μm、i線の波長が0.365μmであることを考慮すれば、引用発明は、本願発明の「(i)第1及び第2のパターンから所望のパターンを現像するステップとからなり、ここで、該所望のパターンは、輻射線の波長のうちの少なくとも一つの波長よりも小さい寸法を有する」を有することは明かである。
そうすると、両者は、
「 (a)特定の波長の輻射線を第1のパターンを有するマスクに照射するステップと、
(b’)材料層を有する基板上に形成されたエネルギー感受性材料層に第1のパターンの像を投射するステップと、
(c)エネルギー感受性材料層中に第1のパターンを形成するために、前記像を現像するステップと、
(d)下部材料層に第1のパターンを転写するステップと、
(e)第1のパターン上にエネルギー感受性レジスト材料層を形成するステップと、
(f)特定の波長の輻射線を第2のパターンを有するマスクに照射するステップと、
ここで、該波長は、第1のパターンを有するマスクに照射される輻射線の波長と同一であるか又は異なる、
(g)第2のパターンの像をエネルギー感受性レジスト材料層に投射するステップと、
ここで、該像は、所望のパターンを画成するために第1のパターンと第2のパターンが協働するように、下部の第1のパターンと位置合せされる、
(h)第2のパターンをエネルギー感受性材料中に形成するために、前記像を現像するステップと、
(i)第1及び第2のパターンから所望のパターンを現像するステップとからなり、
ここで、該所望のパターンは、輻射線の波長のうちの少なくとも一つの波長よりも小さい寸法を有する、
ことを特徴とする製品を製造するためのリソグラフ方法。」
において一致し、
所望のパターンを形成する対象が、本願発明では「材料層をその上に有する基板」であるのに対して、引用発明では「基板11の上面に成膜された被エッチング層12」である点(相違点)で相違する。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
一般に半導体デバイスやリソグラフ用マスクを製造するためのリソグラフ方法において、所望のパターンを形成する対象としては、基板自体はもちろん、基板の上に形成された様々な種類の層がその対象となることは当業者には技術常識である。また、引用発明において、「被エッチング層12」ではなく、「基板11」自体に所望のパターンを形成するべく、「基板11」の上に「窒化シリコン層13」を形成することに阻害要因はない。してみると、引用発明において、「基板11」の上に「窒化シリコン層13」を形成し、本願発明のように構成することは当業者には容易である。
さらに、本願発明が奏し得る効果は、引用発明が奏し得る効果から予測ができる程度のものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

※補正案について
出願人は、平成24年5月24日付け回答書において、補正案を提示している。この補正案による請求項1は、補正案前の請求項1の記載から「(d)下部材料層に第1のパターンを転写するステップと、」を削除し、「(e)・・(i)・・有する」を「(d)・・(h)・・有し」と補正し、新たに「(i)単一層である下部材料層に前記所望のパターンを完全に転写するステップと、」を追加したものである。
この請求項1についての補正案は、特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、仮に手続補正書として提出されたとしても、同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるので、新規性進歩性等の特許要件についての検討は行っていない。

5.むすび
したがって、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-18 
結審通知日 2012-07-23 
審決日 2012-08-03 
出願番号 特願2006-297621(P2006-297621)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩本 勉  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 神 悦彦
川俣 洋史
発明の名称 リソグラフ方法  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  
代理人 岡部 正夫  
代理人 朝日 伸光  

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