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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消さない。原査定の理由により拒絶すべきものである。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 補正却下を取り消さない。原査定の理由により拒絶すべきものである。 G06F
管理番号 1267459
審判番号 不服2011-8340  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-19 
確定日 2012-12-05 
事件の表示 特願2008-317365「タッチパネルの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 7月 9日出願公開、特開2009-151781〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯

本件は、平成20年12月12日(パリ条約による優先権主張、2007年12月21日、中国)の出願であって、平成21年12月28日付けで拒絶理由が通知され、平成22年4月5日付けで手続補正がなされ、同年7月30日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年11月10日付けで手続補正がなされたが、同年12月9日付けで前記同年11月10日付け手続補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年4月19日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。

第2 原審における補正却下の決定の当否について

[補正却下の決定の当否の結論]
原審において、平成22年12月9日付けでなされた、平成22年11月10日付けの手続補正の却下の決定を維持する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成22年11月10日付け手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
フレキシブル基板を提供する第一ステップと、
少なくとも一枚の、カーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブフィルムを製造する第二ステップと、
少なくとも一枚の前記カーボンナノチューブフィルムを含むカーボンナノチューブ構造体を、前記フレキシブル基板に設置して、前記カーボンナノチューブ構造体を有機溶剤で処理して加工する第三ステップと、
前記カーボンナノチューブ構造体及び前記フレキシブル基板をホットプレスして加工する第四ステップと、
前記カーボンナノチューブ構造体と電気的に接続させるように少なくとも二つの電極を設置する第五ステップと、を含むことを特徴とする静電容量方式タッチパネルの製造方法。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「カーボンナノチューブフィルムを製造する第二ステップ」について「カーボンナノチューブフィルム」が「カーボンナノチューブからなる」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例等
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に公開された、中山善萬,CNTの糸状長尺化とシート化技術の開発,ナノカーボンハンドブック,株式会社エヌ・ティー・エス,2007年7月17日,p.261-266(以下、引用例1という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a)「CNTの糸やシートを作るために使われるブラシ状CNTは化学気相合成(CVD)法により合成され多層のものである。基板はシリコンウェハー、その上に触媒として4?5nmの鉄薄膜を塗布してある。これを反応管内に設置し、大気圧のHe雰囲気中で700℃程度の温度まで昇温する。そこに原料ガスとしてアセチレンを導入する。数秒から十分程度で100?400μmの高さのブラシ状CNTがシリコン基板上に合成される。」(262頁左欄の記載。)

b)「ブラシ状CNTの端部分をつまみ基板表面に平行方向に引張ることにより、つまみ出した幅のCNTシートが引き出される。ブラシ状CNTでは基板表面に垂直にCNTが配向しているのに対し、後者の引き出されたシートではCNTがシート面内にあり、引き出し方向に配向していることに注意していただきたい。」(262頁右欄の記載。)

c)「ブラシ状CNTから幅広で引き出すとその幅のシートが引き出せる・・・CNTシート内では、引き出し方向にCNTが配向している。・・・また、このシートをガラス基板上に配置してエタノール等の液を滴下乾燥させることにより、厚みを50nm、密度を0.5g/cm^(3)にまで高めることができる。このとき、シートのガラス基板への接着力は非常に強い。」(264頁右欄の記載。)

d)「CNTシートは400nm?2μmの広範囲の光の波長に対して透過性が良い。・・・先の透明性を考慮すれば、透明導電膜としての用途も視野に入る。」(265頁左欄の記載。)

してみると、引用例1には以下の発明(以下「引用例1記載の発明」という。)が記載されている。
「ブラシ状CNTから、CNTが引き出し方向に配向しているシートを製造し、
前記シートを、前記ガラス基板上に配置して、エタノール等の液を滴下乾燥させることにより、厚みと密度を高める、ことを特徴とする透明電極膜の製造方法」

原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に公開された、国際公開第2005/104141号(以下、引用例2という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

e)「導電層12に使用される極細導電繊維4としては、カーボンナノチューブやカーボンナノホーン、カーボンナノワイヤ、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどの極細長炭素繊維、・・・が好ましく用いられる。」(段落[0032]の記載。)

f)「以上のようなタッチパネル用透明導電成形体は、例えば次の方法で効率良く量産することができる。・・・導電層形成用の前記バインダーを揮発性溶剤に溶解した溶液に極細導電繊維4を均一に分散させて塗液を調製・・・
第二の方法は、基材11と同種の熱可塑性樹脂フィルム又は相溶性のある異種の熱可塑性樹脂フィルムの片面に、上記塗液を塗布、固化させて導電層12を形成した導電性フィルムを作製し、この導電性フィルムを基材11の片面に重ねて熱プレスやロールプレスで熱圧着することによりタッチパネル用透明導電成形体1を製造する方法である。」(段落[0045]の記載。)

原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に公開された、国際公開第2006/030981号(以下、周知例1という。)には、以下の事項が記載されている。

g)「樹脂フィルムの表面部のみにカーボンナノチューブが分散もしくは層として包埋されている導電性フィルムであって、・・・導電性カーボンナノチューブフィルム。」(請求の範囲6.の記載。)

h)「請求項6から17のうちのいずれかの導電性カーボンナノチューブフィルムが少くともその構成の一部とされていることを特徴とするタッチパネル。」(請求の範囲22.の記載。)

i)「請求項22のタッチパネルであって、屈曲性を有することを特徴とするフレキシブルタッチパネル。」(請求の範囲23.の記載。)

本願の優先日前に公開された、特開2007-18226号公報(以下、周知例2という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

j)「【0017】
以下において、静電容量方式のタッチパネルセンサーを例にとって説明するが、本発明のタッチパネルセンサーは、これに限定されず、抵抗膜方式など、他の適切な方式のタッチパネルセンサーに適用可能であることは理解されたい。
図1は、本発明の静電容量方式のタッチパネルセンサーの1態様の上面図である。タッチパネルセンサー10は透明なフレキシブル基板1、前記透明なフレキシブル基板上に形成された透明導電膜2、金属もしくは金属合金からなる配線3、及び、前記透明導電膜2と前記配線3とを接続するための導電性インクもしくはペーストからなる電極4を含む。・・・
【0018】
タッチパネルセンサー10は透明なフレキシブル基板1を含む。・・・基板1は、公知の透明な絶縁性フィルムであってよく、・・・好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。」(段落【0017】?【0018】の記載。)

本願の優先日前に公開された、特開2004-145878号公報(以下、周知例3という。)には、以下の事項が記載されている。

k)「【0004】
最近では、2枚のプラスチックフィルムを重ね合わせた構造のタッチパネル(以下「フレキシブルタッチパネル」という)が開発され、PDAまたは携帯端末などのさらなる薄型化・軽量化を可能にするものとして期待されている。」(段落【0004】の記載。)

本願の優先日前に公開された、特開昭61-292832号公報(以下、周知例4という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

l)「本発明は、各種機器に用いられる静電容量方式を用いた入力装置に関するものである。」(第1頁左欄第11?12行の記載。)

m)「本発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、駆動電極と検知電極の構成及び形状で広いタッチ領域を確保することができ、しかもタッチパネルの表面上のタッチ電極が不要となり、またタッチパネル自身に凸部等を設ける加工も不要となるため、タッチパネルは平板状で使用でき、その結果使用性と信頼性の向上を図った入力装置が提供できるものである。」(第2頁左下欄第14行?同頁右下欄第1行の記載。)

n)「第1図において、1は強化ガラス等の誘電体からなる平板状パネル、2bは複数個の駆動電極、3bは駆動電極2bからの出力を平板状パネル1を介して検出する複数個の検知電極である。・・・7は各駆動電極または各検知電極間を電気的に接続する導電パターン、8は駆動電極2bと駆動回路4の間及び検知電極3bと検知回路5の間を電気的に接続する信号線、9は使用者が触れたことを検知できる領域であるタッチ領域である。」(第3頁左上欄第10行?同頁右上欄第3行の記載。)

o)「本実施例では、薄膜絶縁体10上に電極を構成したが、直接平板状パネル1の裏面に配置してもよく、また樹脂シート等の絶縁体を基材とするフレキシブルプリント基板に第1図に示したような電極構造をエッチングなどの手法でパターン化してもよい。」(第4頁左上欄第13?18行の記載。)

本願の優先日前に公開された、特開2004-272203号公報(以下、周知例5という。)には、以下の事項が記載されている。

p)「【0091】
一般に、低回路レリーフのプリント回路基板に液体の助けなしでドライフィルムを積層するときには、例えば回路線の周辺からの閉じ込められた空気を除去する方策をとらなければならない。・・・はんだマスク真空積層装置(SMVL)は、閉じ込められた空気を除去するのに有用だが、この積層装置では、排気サイクル後の大気圧積層力に制限される。より高い圧力が必要な場合には、SMVL積層に続いてホットプレス積層を使用することができ、あるいは真空プレスを積層に使用することもできる。」(段落【0091】の記載。)

本願の優先日前に公開された、特開昭62-276893号公報(以下、周知例6という。)には、以下の事項が記載されている。

q)「このオーバレイ被覆としてはフィルムを用いる場合、インクを用いる場合等があるが、フレキシブルプリント基板には一般にオーバレイフィルムが、リジッド基板にはインクを用いるのが主体であり、・・・オーバレイフィルムにより被覆する場合、オーバレイフィルム24を積層して加熱ロールにより密着させる(第1図(j)、第9図)。・・・又、第18図(当審注:第18図は第22図の誤記と認める。)に示す従来の導体回路板のようにオーバレイフィルム24と導体回路6間に空気層(気泡)が介在しないので導体回路6が酸化される心配もない。」(第8頁右上欄第20行?同頁左下欄第17行の記載。)

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比する。

引用例1記載の発明は「シート」を「ガラス基板上に配置」するものであるから、引用例1記載の発明が「ガラス基板」を提供するものであるのは明らかであり、「フレキシブル基板を提供する第一ステップ」を含む本願補正発明と「基板を提供する第一ステップ」を含む点で一致する。
引用例1記載の発明の「CNT」がカーボンナノチューブを表すのは明らかであり、引用例1記載の発明の「ブラシ状CNT」から製造された「CNTが引き出し方向に配向しているシート」は「カーボンナノチューブフィルム」であるから、引用例1記載の発明の「ブラシ状CNTから、CNTが引き出し方向に配向しているシートを製造」することは、本願補正発明の「少なくとも一枚の、カーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブフィルムを製造する第二ステップ」に相当する。
本願の明細書には「前記カーボンナノチューブ構造体は、所定の方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。本実施形態において、前記カーボンナノチューブ構造体は一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。・・・従って、前記カーボンナノチューブフィルムは、直接前記フレキシブル基板に接着することができる。」(段落【0027】の記載。)と記載されているから、本願補正発明の「カーボンナノチューブ構造体」は「カーボンナノチューブフィルム」と同一の場合を含むものであり、引用例1記載の発明の「シート」は本願補正発明の「少なくとも一枚の前記カーボンナノチューブフィルムを含むカーボンナノチューブ構造体」に相当する。
また、本願の明細書には「本実施形態において、前記有機溶剤はエタノールである。まず、前記カーボンナノチューブ構造体に前記有機溶剤を滴下して前記カーボンナノチューブ構造体を浸漬させる。」(段落【0031】の記載。)と記載されているから、引用例1記載の発明の「エタノール等の液を滴下乾燥させることにより、厚みと密度を高める」ことは本願補正発明の「有機溶剤で処理して加工」することに相当する。
従って、引用例1記載の発明の「前記シートを、前記ガラス基板に配置して、エタノール等の液を滴下乾燥させることにより、厚みと密度を高める」ことは、本願補正発明の「少なくとも一枚の前記カーボンナノチューブフィルムを含むカーボンナノチューブ構造体を、前記フレキシブル基板に設置して、前記カーボンナノチューブ構造体を有機溶剤で処理して加工する第三ステップ」と、「少なくとも一枚の前記カーボンナノチューブフィルムを含むカーボンナノチューブ構造体を、前記基板に設置して、前記カーボンナノチューブ構造体を有機溶剤で処理して加工するステップ」である点で一致する。
本願の明細書には「本発明のタッチパネルに利用されるカーボンナノチューブ構造体は、透明な導電構造体として利用される」(段落【0015】の記載。)と記載されているから、本願補正発明の「カーボンナノチューブ構造体」は「透明な導電構造体」としてタッチパネルに利用されるものであり、「カーボンナノチューブ構造体」の製造を含む「静電容量式タッチパネルの製造方法」は、「透明な導電構造体」の製造方法を含むものといえる。
そして、「透明な導電構造体」は「透明電極膜」に相当するから、引用例1記載の発明の「透明電極膜の製造方法」は本願補正発明の「静電容量式タッチパネルの製造方法」と、「透明な導電構造体の製造方法」である点で一致する。

したがって両者は、
「基板を提供する第一ステップと、
少なくとも一枚の、カーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブフィルムを製造する第二ステップと、
少なくとも一枚の前記カーボンナノチューブフィルムを含むカーボンナノチューブ構造体を、前記基板に設置して、前記カーボンナノチューブ構造体を有機溶剤で処理して加工する第三ステップと、を含むことを特徴とする透明な導電構造体の製造方法。」で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
[相違点1]本願補正発明の「基板」は「フレキシブル基板」であり、「前記カーボンナノチューブ構造体及び前記フレキシブル基板をホットプレスして加工する第四ステップ」を含むのに対し、引用例1記載の発明の「基板」は「ガラス基板」であり、ホットプレスによる加工のステップについて記載されていない点。

[相違点2]本願補正発明は、「前記カーボンナノチューブ構造体と電気的に接続させるように少なくとも二つの電極を設置する第五ステップ」を含み「透明な導電構造体」が「静電容量方式のタッチパネル」に用いられるのに対し、引用例1記載の発明は、電極を設置するステップについて記載されておらず、また、「透明な導電構造体」の用途が明示されていない点。

(4)判断
[相違点1]について
引用例2には、「導電層12に使用される極細導電繊維4としては、カーボンナノチューブ・・・などの極細長炭素繊維・・・が好ましく用いられる」と記載されると共に「導電層形成用の前記バインダーを揮発性溶剤に溶解した溶液に極細導電繊維4を均一に分散させて塗液を調整」、「基材11と同種の熱可塑性樹脂フィルム又は相溶性のある異種の熱可塑性樹脂フィルムの片面に、上記塗液を塗布、固化させて導電層12を形成した導電性フィルムを作製し、この導電性フィルムを基材11の片面に重ねて熱プレスやロールプレスで熱圧着することによりタッチパネル用透明導電成形体1を製造する方法」と記載されているから、引用例2には、カーボンナノチューブを用いた熱可塑性樹脂フィルムからなる導電性フィルムと、熱可塑性樹脂からなる基材を熱プレスすることによりタッチパネル用透明導電成形体を製造する技術が記載されているといえる。
また、周知例1?4に記載される様に、樹脂フィルムから成るフレキシブル基板を用いてフレキシブルタッチパネルを製造することは周知であるから、引用例1記載の発明に引用例2に記載された技術及び上記周知技術を適用し、基板としてフレキシブル基板を用い、カーボンナノチューブ構造体及び前記フレキシブル基板をホットプレスして加工してタッチパネルを製造することにより相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2]について
周知例2に「静電容量方式のタッチパネルセンサー」(段落【0017】記載。)、「前記透明導電膜2と前記配線3とを接続するための導電性インクもしくはペーストからなる電極4」(段落【0017】の記載。)と記載され、周知例4に「静電容量方式を用いた入力装置」(第1頁左欄第11?12行の記載。)、「本発明は・・・タッチパネルは平面状で使用でき」(第2頁左下欄第14?20行の記載。)、「7は各駆動電極または各検知電極間を電気的に接続する導体パターン」(第3頁左上欄第18?20行の記載。)と記載される様に、タッチパネルを静電容量方式とすること、タッチパネルの導電膜に接続させるように、外部回路と電気的に接続するための導体パターンを複数設ける、即ち、タッチパネルの導電膜に電気的に接続させるように少なくとも二つの電極を設けることは、それぞれ周知である。
よって、引用例1記載の発明に引用例2に記載された技術を適用し、タッチパネルを製造する際にタッチパネルを静電容量方式とすること、カーボンナノチューブ構造体と電気的に接続させるように少なくとも二つの電極を設置することに、格別の困難性はない。

また、周知例5,6に記載される様に、熱プレスにより、基板とフィルム間の空気が除去されることは周知の作用効果に過ぎず、本願補正発明の作用効果も、引用例1記載の発明、引用例2に記載された技術及び上記各周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例1記載の発明及び引用例2に記載された技術及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

よって、原審において、平成22年12月9日付けでなされた、平成22年11月10日付けの手続補正の却下の決定は、妥当なものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
平成22年12月9日付けでなされた、平成22年11月10日付けの手続補正の却下の決定は上記のとおり維持されるので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年4月5日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
フレキシブル基板を提供する第一ステップと、
少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを製造する第二ステップと、
少なくとも一枚の前記カーボンナノチューブフィルムを含むカーボンナノチューブ構造体を、前記フレキシブル基板に設置して、前記カーボンナノチューブ構造体を有機溶剤で処理して加工する第三ステップと、
前記カーボンナノチューブ構造体及び前記フレキシブル基板をホットプレスして加工する第四ステップと、
前記カーボンナノチューブ構造体と電気的に接続させるように少なくとも二つの電極を設置する第五ステップと、を含むことを特徴とする静電容量方式タッチパネルの製造方法。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2 (2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から、「カーボンナノチューブフィルムを製造する第二ステップ」について「カーボンナノチューブフィルム」が「カーボンナノチューブからなる」との構成を省くものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 (4)」に記載したとおり、引用例1、引用例2及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1、引用例2及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、引用例2に記載された発明及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-05 
結審通知日 2012-07-10 
審決日 2012-07-23 
出願番号 特願2008-317365(P2008-317365)
審決分類 P 1 8・ 575- ZB (G06F)
P 1 8・ 121- ZB (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 星野 昌幸森田 充功  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 稲葉 和生
山田 正文
発明の名称 タッチパネルの製造方法  
代理人 渡邊 隆  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 渡邊 隆  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  

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