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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1267607
審判番号 不服2011-26053  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-02 
確定日 2012-12-17 
事件の表示 特願2007-317033「車両用メータユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月25日出願公開、特開2009-137486〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年12月7日の出願であって、平成23年6月17日付けの拒絶理由通知に対して平成23年8月10日付けで意見書とともに明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたが、平成23年9月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年12月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けの手続補正書によって明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、当審において平成24年5月30日付けで書面による審尋がなされ、これに対して平成24年7月23日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成23年12月2日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成23年12月2日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正について
(1)本件補正の内容
平成23年12月2日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成23年8月10日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記(a)を、下記(b)と補正するものである。

(a)本件補正前の明細書の特許請求の範囲
「【請求項1】
車両の運転席に対向配置される車両用メータユニットであって、
ディスプレイと、
該ディスプレイの画面上に、該画面の奥行き方向に三次元的な広がりをもって視認されるメータ表示領域を形成するメータ表示領域形成手段と、
メータ指示値を表示する画像メータとしての画像機能部品である回転指針式アナログメータを少なくとも含んで構成される第一部品グループと、前記第一部品グループを構成する画像機能部品以外の画像機能部品を含む第二部品グループとに区分し、各々の部品グループが、前記メータ表示領域において前記奥行き方向の互いに異なる位置に存在するものとして視認されるよう、前記部品グループ毎に相違する立体画像処理を施して前記メータ表示領域に表示出力する画像機能部品表示手段と、を備え、
該画像機能部品表示手段は、前記画像メータとして円弧状の指示軌跡に沿って移動可能な指針と、該指示軌跡に沿って形成される目盛盤とを有し、かつ、一方が速度計とされる2つの回転指針式アナログメータの画像を左右に互いに隣接して表示するとともに、前記画像メータ以外の画像機能部品である非メータ画像機能部品の少なくとも1つをメータ間情報出力部として、2つの前記回転指針式アナログメータの円弧状の目盛盤の隣接対向する各内側上部と、前記画面上縁との間に形成されるくさび状のメータ間スペースに表示して、前記回転指針式アナログメータ及び前記メータ間情報出力部を含む前記第一部品グループが、前記第二部品グループよりも前記奥行き方向にて手前に存在するものとして視認されるよう前記立体画像処理を施すことを特徴とする車両用メータユニット。
【請求項2】
前記画像機能部品表示手段は前記立体画像処理を、前記画面視認方向手前にて前記画像機能部品を画面法線に対し傾斜する方向から照らす仮想光源を想定したときの該仮想光源による前記画像機能部品表面への陰影付与処理として、前記第一部品グループよりも、前記第二部品グループにおいて陰影が濃くなるように実施するものである請求項1記載の車両用メータユニット。
【請求項3】
前記陰影付与処理は、前記画像機能部品を斜め上方から照らす前記仮想光源を想定することにより、同じ前記画像機能部品に対し表面下側に向かうほど濃くなるように前記陰影を付与するものである請求項2記載の車両用メータユニット。
【請求項4】
前記画像機能部品表示手段は、前記第一部品グループを、前記奥行き方向において最も手前に位置する強調対象部品グループとし、該強調対象部品グループに属する前記画像機能部品のうち前記画面に沿う平面形態を有したものを強調対象画像部品として、該強調対象画像部品に前記陰影の付与処理を行なわない請求項2又は請求項3に記載の車両用メータユニット。
【請求項5】
前記画像機能部品表示手段は、2つの前記回転指針式アナログメータの一方の指示値を数字によりデジタル表示するデジタルメータを、前記第二部品グループの前記画像機能部品として表示するとともに、該デジタルメータの表示値を示す数字に前記陰影の付与処理を行なう請求項4記載の車両用メータユニット。
【請求項6】
前記画像機能部品表示手段は、前記メータ表示領域に前記画面の奥行き方向に延びる水平装飾面を表示するとともに、前記立体画像処理として、前記画面視認方向手前にて前記画像機能部品を斜め上方から照らす仮想光源を想定したとき、前記画像機能部品をなす前記デジタルメータの前記数字の前記水平装飾面への反射投影像を模した装飾用倒立影画像を、該数字の前記奥行き方向における存在位置を反映させた形で該水平装飾面上に付加表示する処理を行なう請求項5記載の車両用メータユニット。
【請求項7】
前記画像機能部品表示手段は、前記画像メータ以外の情報出力部として、車両のシフトレバーの現在選択中のポジションであるカレントポジションを表示するために、前記シフトレバーによるポジション選択順位系列に従い、それら複数のポジションに一対一に対応付けた形で表示用シンボルが定められ、前記カレントポジションに対応した表示用シンボルであるカレントシンボルを、前記第二部品グループの前記画像機能部品として選択的に表示するシフトポジション表示部を出力するものであり、かつ、前記カレントシンボルに対して前記陰影を付与するものである請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両用メータユニット。
【請求項8】
前記メータ間情報出力部は、接近中の道路分岐点における各レーンの指定進行方向を示す複数個の指定方向指示画像を、レーン配列を反映させた形で左右に隣接表示するレーン案内表示部である請求項2ないし請求項7のいずれか1項に記載の車両用メータユニット。
【請求項9】
2つの前記回転指針式アナログメータの前記目盛盤は、水平直径位置が画面高さ方向に互いに一致する関係にて表示されるとともに、前記レーン案内表示部は、前記メータ間スペースにて各前記目盛盤の前記水平直径位置よりも上側に表示される請求項8記載の車両用メータユニット。
【請求項10】
前記レーン案内表示部は、その下縁が前記メータ間スペースにて、各前記目盛盤の上縁位置よりも下側に位置するように表示される請求項9記載の車両用メータユニット。
【請求項11】
前記画像機能部品表示手段は、前記画像メータ以外の情報出力部として、車両のシフトレバーの現在選択中のポジションであるカレントポジションを表示するために、前記シフトレバーによるポジション選択順位系列に従い、それら複数のポジションに一対一に対応付けた形で表示用シンボルが定められ、前記カレントポジションに対応した表示用シンボルであるカレントシンボルを、前記第二部品グループの前記画像機能部品として選択的に表示するシフトポジション表示部を出力するものであり、かつ、前記カレントシンボルに対して前記陰影を付与するものであり、
前記シフトポジション表示部が前記メータ間スペースにて前記レーン案内表示部の下側に表示される請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載の車両用メータユニット。
【請求項12】
前記メータ間情報出力部は、接近中の道路分岐点における案内誘導方向を示す案内誘導表示部である請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の車両用メータユニット。
【請求項13】
前記メータ間情報出力部は、1又は複数の警告シンボルを表示する警告シンボル表示部である請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の車両用メータユニット。」

(b)本件補正後の明細書の特許請求の範囲
「【請求項1】
車両の運転席に対向配置される車両用メータユニットであって、
ディスプレイと、
該ディスプレイの画面上に、該画面の奥行き方向に三次元的な広がりをもって視認されるメータ表示領域を形成するメータ表示領域形成手段と、
メータ指示値を表示する画像メータとしての画像機能部品である回転指針式アナログメータを含んで構成され、前記奥行き方向において最も手前に位置する強調対象部品グループである第一部品グループと、前記第一部品グループを構成する画像機能部品以外の画像機能部品を含む第二部品グループとに区分し、各々の部品グループが、前記メータ表示領域において前記奥行き方向の互いに異なる位置に存在するものとして視認されるよう、前記部品グループ毎に相違する立体画像処理を施して前記メータ表示領域に表示出力する画像機能部品表示手段と、を備え、
該画像機能部品表示手段は、前記画像メータとして円弧状の指示軌跡に沿って移動可能な指針と、該指示軌跡に沿って形成される目盛盤とを有し、かつ、一方が速度計とされる2つの回転指針式アナログメータの画像を左右に互いに隣接して表示するとともに、前記画像メータ以外の画像機能部品である非メータ画像機能部品の少なくとも1つをメータ間情報出力部として、2つの前記回転指針式アナログメータの円弧状の目盛盤の隣接対向する各内側上部と、前記画面上縁との間に形成されるくさび状のメータ間スペースの上方側であって、前記円弧状の目盛盤の上縁位置と前記ディスプレイの画面の上縁との間のスペースに表示して、前記回転指針式アナログメータ及び前記メータ間情報出力部を含む前記第一部品グループが、前記第二部品グループよりも前記奥行き方向にて手前に存在するものとして視認されるよう前記立体画像処理を施すことを特徴とする車両用メータユニット。
【請求項2】
前記画像機能部品表示手段は前記立体画像処理を、前記画面視認方向手前にて前記画像機能部品を画面法線に対し傾斜する方向から照らす仮想光源を想定したときの該仮想光源による前記画像機能部品表面への陰影付与処理として、前記第一部品グループよりも、前記第二部品グループにおいて陰影が濃くなるように実施するものである請求項1記載の車両用メータユニット。
【請求項3】
前記陰影付与処理は、前記画像機能部品を斜め上方から照らす前記仮想光源を想定することにより、同じ前記画像機能部品に対し表面下側に向かうほど濃くなるように前記陰影を付与するものである請求項2記載の車両用メータユニット。
【請求項4】
前記画像機能部品表示手段は、前記強調対象部品グループに属する前記画像機能部品のうち前記画面に沿う平面形態を有したものを強調対象画像部品として、該強調対象画像部品に前記陰影の付与処理を行なわない請求項2又は請求項3に記載の車両用メータユニット。
【請求項5】
前記画像機能部品表示手段は、2つの前記回転指針式アナログメータの一方の指示値を数字によりデジタル表示するデジタルメータを、前記第二部品グループの前記画像機能部品として表示するとともに、該デジタルメータの表示値を示す数字に前記陰影の付与処理を行なう請求項4記載の車両用メータユニット。
【請求項6】
前記画像機能部品表示手段は、前記メータ表示領域に前記画面の奥行き方向に延びる水平装飾面を表示するとともに、前記立体画像処理として、前記画面視認方向手前にて前記画像機能部品を斜め上方から照らす仮想光源を想定したとき、前記画像機能部品をなす前記デジタルメータの前記数字の前記水平装飾面への反射投影像を模した装飾用倒立影画像を、該数字の前記奥行き方向における存在位置を反映させた形で該水平装飾面上に付加表示する処理を行なう請求項5記載の車両用メータユニット。
【請求項7】
前記画像機能部品表示手段は、前記画像メータ以外の情報出力部として、車両のシフトレバーの現在選択中のポジションであるカレントポジションを表示するために、前記シフトレバーによるポジション選択順位系列に従い、それら複数のポジションに一対一に対応付けた形で表示用シンボルが定められ、前記カレントポジションに対応した表示用シンボルであるカレントシンボルを、前記第二部品グループの前記画像機能部品として選択的に表示するシフトポジション表示部を出力するものであり、かつ、前記カレントシンボルに対して前記陰影を付与するものである請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両用メータユニット。
【請求項8】
前記メータ間情報出力部は、接近中の道路分岐点における各レーンの指定進行方向を示す複数個の指定方向指示画像を、レーン配列を反映させた形で左右に隣接表示するレーン案内表示部である請求項2ないし請求項7のいずれか1項に記載の車両用メータユニット。
【請求項9】
2つの前記回転指針式アナログメータの前記目盛盤は、水平直径位置が画面高さ方向に互いに一致する関係にて表示されるとともに、前記レーン案内表示部は、前記メータ間スペースにて各前記目盛盤の前記水平直径位置よりも上側に表示される請求項8記載の車両用メータユニット。
【請求項10】
前記レーン案内表示部は、その下縁が前記メータ間スペースにて、各前記目盛盤の上縁位置よりも下側に位置するように表示される請求項9記載の車両用メータユニット。
【請求項11】
前記画像機能部品表示手段は、前記画像メータ以外の情報出力部として、車両のシフトレバーの現在選択中のポジションであるカレントポジションを表示するために、前記シフトレバーによるポジション選択順位系列に従い、それら複数のポジションに一対一に対応付けた形で表示用シンボルが定められ、前記カレントポジションに対応した表示用シンボルであるカレントシンボルを、前記第二部品グループの前記画像機能部品として選択的に表示するシフトポジション表示部を出力するものであり、かつ、前記カレントシンボルに対して前記陰影を付与するものであり、
前記シフトポジション表示部が前記メータ間スペースにて前記レーン案内表示部の下側に表示される請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載の車両用メータユニット。
【請求項12】
前記メータ間情報出力部は、接近中の道路分岐点における案内誘導方向を示す案内誘導表示部である請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の車両用メータユニット。
【請求項13】
前記メータ間情報出力部は、1又は複数の警告シンボルを表示する警告シンボル表示部である請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の車両用メータユニット。」(なお、下線は審判請求人が補正箇所を明示するために付したものである。)

(2)本件補正の目的について
特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「第一部品グループ」について、本件補正前の「メータ指示値を表示する画像メータとしての画像機能部品である回転指針式アナログメータを少なくとも含んで構成される第一部品グループ」を、本件補正後の「メータ指示値を表示する画像メータとしての画像機能部品である回転指針式アナログメータを含んで構成され、前記奥行き方向において最も手前に位置する強調対象部品グループである第一部品グループ」と限定すると共に、特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「スペース」について、本件補正前の「2つの前記回転指針式アナログメータの円弧状の目盛盤の隣接対向する各内側上部と、前記画面上縁との間に形成されるくさび状のメータ間スペース」を、「2つの前記回転指針式アナログメータの円弧状の目盛盤の隣接対向する各内側上部と、前記画面上縁との間に形成されるくさび状のメータ間スペースの上方側であって、前記円弧状の目盛盤の上縁位置と前記ディスプレイの画面の上縁との間のスペース」と限定したものであり、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 独立特許要件についての検討
本件補正における特許請求の範囲の補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項1を引用する請求項13に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

2-1 引用文献
2-1-1 引用文献1
(1)原査定の拒絶理由に引用された本件出願前に頒布された刊行物である特開2004-157434号公報(以下、「引用文献1」という。)には、例えば、以下の記載がある。(なお、下線は、理解の一助のために当審で付したものである。)

(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両用表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に車両には車室内に車両用表示装置が設けられている。車両用表示装置には、現在、機械式表示装置が多く用いられているが、画像表示装置を採用することも検討されている。
【0003】
画像表示装置を採用した車両用表示装置としては、特許文献1に記載されているようなものもある。
【0004】
【特許文献1】
特開平11-16091号公報
【0005】
そして、画像表示装置を採用した場合には、表示のデザインやレイアウトを自在に設定できるという利点がある。」(段落【0001】ないし【0005】)

(b)「【0019】
図1?図3は、この発明の実施の形態1を示すものである。
【0020】
まず、全体的な構成を説明すると、一般に車両には車室内に表示装置1が設けられている。この実施の形態1では、図1に示すように、表示装置1として機械式表示装置ではなく、画像表示装置2を採用する。画像表示装置2は、表示器に画像を表示させるようにしたものである。画像表示装置2には、例えば、液晶パネル、ELパネル、その他のパネル状画像表示器が含まれる。なお、これらのものは、それぞれ固有の特徴および利点を有しており、目的に応じて使い分けられるものである。これらの画像表示装置2は、直接、または、間接的に視認できるように車室内に設置される。
【0021】
そして、画像表示装置2の画像表示領域3に、運転情報画像4を表示可能に構成する。運転情報画像4としては、例えば、速度計5、回転計6、距離計7、燃料計8、水温計9等が存在する。また、運転情報画像4として、地形情報等表示部10や、車間距離情報表示部11や、シフトレンジ表示部12等を設けても良い。なお、これらのものは、必ずしも全部が必要という訳ではない。反対に、必要に応じて、これら以外の運転情報画像4を設けることも可能である。
【0022】
図1では、画像表示領域3の左側部分に速度計5が表示され、右側部分に回転計6が表示されている。速度計5および回転計6はそれぞれ中央に向けて傾斜配置されたかの如き表示とすることにより、立体感や高級感等を出し得るように演出されている。また、速度計5の内部(特に下部)には距離計7が表示されている。画像表示領域3の中央部(特に上部)に燃料計8と水温計9とが表示されている。燃料計8と水温計9とは左右に隣接して表示されている。また、画像表示領域3の中央部(特に下部)に地形情報等表示部10が表示されている。地形情報等表示部10には、カーナビゲーション装置の地図データを二次元表示させても3次元表示させても良い。また、地形情報等表示部10には、実際の風景画像やその他の交通情報などを表示させても良い。地形情報等表示部10には車間距離情報表示部11を重ねて表示させても良い。図1では、車間距離情報表示部11は地形情報等表示部10のほぼ中央部に表示されている。また、地形情報等表示部10にはシフトレンジ表示部12を重ねて表示させても良い。図1では、シフトレンジ表示部12は地形情報等表示部10の隅(特に左下縁部)に表示されている。なお、各運転情報画像4の配置はこれに限るものではない。
【0023】
ここで、例えば、速度計5、回転計6、燃料計8、水温計9はそれぞれアナログ式メータ画像15となっている。アナログ式メータ画像15は指針16および指針回動領域17を有するものである。また、距離計7、車間距離情報表示部11はデジタル表示となっている。更に、地形情報等表示部10、シフトレンジ表示部12は画像表示となっている。
【0024】
上記のように、画像表示装置2に、指針16および指針回動領域17を有するアナログ式メータ画像15を表示した構成に対してこの発明では、指針回動領域17の外周に沿ってリング画像18を表示する。尚、指針回動領域17の外周とは、外周周辺部も含み、リング画像は指針の指示先端部と重ねて表示しても、重ねないで表示してもどちらでも良い。そして、リング画像18を光沢調表示19とする。ここで、光沢調表示19とは、光沢を有する素材感を再現した表示を指す。例えば、光沢調表示19には、金属光沢や、漆調光沢や、表面をクリア処理されたプラスチックが持つプラスチック調光沢や、その他これと同等の光沢が含まれる。なお、これらは、それぞれ固有の特徴および視覚効果を有しており、目的に応じて使い分けられるものである。更に、リング画像18の光沢調表示19における各部の輝度21を自在に変更可能に構成する。光沢調表示19とするためには、少なくとも高輝度部22と中間輝度部23と低輝度部24の3段階の異なる輝度21が必要となる。
【0025】
より具体的には、上記したように、速度計5、回転計6、燃料計8、水温計9はそれぞれ、アナログ式メータ画像15とされており、それぞれ、別個に指針回動領域17の外周に沿ってリング画像18を設ける。なお、必ずしも全てのアナログ式メータ画像15にリング画像18を設ける必要はなく、少なくとも、1つのアナログ式メータ画像15にリング画像18が設けられていれば良いことは言うまでもない。そして、各リング画像18を光沢調表示19とする。更に、このリング画像18の光沢調表示19における各部の輝度21を自在に変更させるようにする。ここでは、速度計5と回転計6のリング画像18が変更するようにしている。燃料計8、水温計9のリング画像18は特に、変更されていないが、変更するようにしても良いことは勿論である。
【0026】
この実施の形態1では、リング画像18の光沢調表示19における各部の輝度21の変更をランダムなものとする。ここで、速度計5、回転計6については、リング画像18の上に目盛が表示され、指針回動領域17の中に数値が表示されているが、必ずしもこれに限るものではなく、目盛は燃料計8、水温計9と同様に指針回動領域17の内部に表示するようにしても良い。反対に、目盛と数値をリング画像18の上に表示するようにしても良い。
(中略)
【0029】
なお、上記したような表示の制御は、図示しない画面制御装置を用いて行わせるようにする。この画面制御装置は、車速信号、回転数信号、走行距離信号、燃料残量信号、水温信号、地形情報等データ、車間距離信号、シフトレンジ検知信号などを入力して、速度計5、回転計6、燃料計8、水温計9の指針16、および、距離計7、地形情報等表示部10、車間距離情報表示部11、シフトレンジ表示部12の表示をそれぞれ制御する基本機能を備えている。
【0030】
具体的には、上記画面制御装置は、例えば、固定部表示用データと、可動部表示用データとを合成して表示する基本構成などとする。ここで、可動部表示用データは主として各指針16を表示するためのデータである。また、可動部表示用データには距離計7、地形情報等表示部10、車間距離情報表示部11、シフトレンジ表示部12を表示するためのデータ等も含まれている。固定部表示用データは、それ以外の固定部分を表示するためのデータである。固定部表示用データには、画像表示領域3の背景画像や指針回動領域17およびリング画像18を表示するためのデータを含んでいる。
【0031】
そして、この実施の形態1では、画面制御装置は、光沢調表示用データを固定部表示用データのリング画像18の表示に重ねて表示する拡張機能が付加される。ここで、光沢調表示用データは光沢調表示19を表示するためのデータである。更に、画面制御装置は、光沢調表示用データをランダムに生成したり、変形したりする拡張機能が付加されている。」(段落【0019】ないし【0031】)

(c)「【0037】
【発明の実施の形態2】
図4?図6は、この発明を具体化した実施の形態2を示すものである。なお、実施の形態1と同一ないし均等な部分については、同一の符号を付すものとし、説明が省略されている部分については、上記実施形態1の説明に準ずるものとする。
【0038】
まず、構成を説明すると、画像表示装置2に表示する運転情報画像4の構成は、基本的に実施の形態1のものと同じである。
【0039】
また、アナログ式メータ画像15の指針回動領域17の外周に沿ってリング画像18を表示し、リング画像18を光沢調表示19とすると共に、リング画像18の光沢調表示19における各部の輝度21を自在に変更可能に構成した点については実施の形態1のものと同じである。
【0040】
上記を達成するめための画面制御装置の基本的な構成についても実施の形態1のものと同じである。
【0041】
この実施の形態2のものでは、光沢調表示19されたリング画像18における指針16が現示している部分を、視認し易い輝度(易視認輝度部31)に自動的に変更可能に構成している点に特徴がある。
【0042】
この際、光沢調表示19されたリング画像18は、高輝度部22と中間輝度部23と低輝度部24との少なくとも3段階の異なる輝度21を有している。そして、リング画像18の指針16が現示している部分(易視認輝度部31)の輝度が視認し易い高輝度部22または中間輝度部23となるように構成している点に特徴がある。
(中略)
【0046】
ここでは、速度計5と回転計6の少なくとも一方(図では速度計5となっている)のリング画像18の光沢調表示19における指針16の現示部分が易視認輝度部31となるようにしている。燃料計8、水温計9のリング画像18は特に、指針16の現示部分の光沢調表示19が易視認輝度部31となるようにはされていないが、易視認輝度部31となるようにしても良いことは勿論である。
(中略)
【0055】
更に、この実施の形態2によれば、光沢調表示19されたリング画像18における指針16が現示している部分の輝度21を自動的に変更することにより、指針16を視認し易いものとすることができる。
【0056】
特に、指針16が現示している部分の輝度21を高輝度部22または中間輝度部23とすることにより、指針16および目盛をより視認し易くすることができる。」(段落【0037】ないし【0056】)

(2)上記(1)(a)ないし(c)及び図1ないし図9の記載から、以下のことが分かる。

(ア)上記(1)(a)ないし(c)及び図1ないし図9の記載から、引用文献1には、車室内に設けられる車両用表示装置1が記載されていることが分かる。ここで、車両用表示装置1は、車両の運転手が見るためのものであるから、車両の運転席に対向配置されることは自明である。

(イ)上記(1)(a)ないし(c)及び図1ないし図9の記載から、引用文献1に記載された車両用表示装置1は、画像表示装置2を採用し、該画像表示装置2には、パネル状の画像表示器が含まれ、該画像表示装置2の画像表示領域3に、運転情報画像4を表示可能に構成されていることが分かる。

(ウ)上記(1)(a)ないし(c)及び図1ないし図9の記載から、引用文献1に記載された画像表示装置2において、運転情報画像4が、立体感を出し得るように表示され、3次元表示させても良いことが分かる。

(エ)上記(1)(a)ないし(c)及び図1ないし図9の記載から、引用文献1に記載された画像表示装置2において、アナログ式メータ画像15である速度計5及び回転計6等のリング画像18は、輝度が視認しやすい高輝度部22または中間輝度部23となるように構成されていることが分かる。これらの画像を、「第1のグループ」と呼ぶことにする。

(オ)上記(1)(a)ないし(c)及び図1ないし図9の記載から、引用文献1に記載された画像表示装置2において、地形情報等表示部10は、3次元表示されており、奥行き方向に三次元的な広がりをもって表示されていることが分かる。ここで、地形情報等表示部10を含む画像のグループを、「第2のグループ」と呼ぶことにする。

(カ)上記(1)(a)ないし(c)及び上記(エ)、(オ)並びに図1ないし図9の記載から、引用文献1に記載された画像表示装置2において、速度計5及び回転計6等と、地形情報等表示部10とは、奥行き方向の互いに異なる位置に存在するものとして視認されるように表示出力されていることが分かる。

(キ)上記(1)(a)ないし(c)及び図1ないし図9の記載から、引用文献1に記載された画像表示装置2において、速度計5及び回転計6は、円弧状の指示軌跡に沿って移動可能な指針と、該指示軌跡に沿って形成される目盛盤とを有する回転指針式のアナログ式メータ画像15であり、左右に互いに隣接して表示されていることが分かる。

(ク)上記(1)(a)ないし(c)及び図1ないし図9の記載から、引用文献1に記載された画像表示装置2において、速度計5及び回転計6等の第1グループは、地形情報等表示部10を含む第2のグループよりも奥行き方向にて手前に存在するものとして視認されるように立体画像処理を施されていることが分かる。

(3)上記(1)、(2)及び図面の記載から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「車両の運転席に対向配置される車両用表示装置1であって、
画像表示器と、
該画像表示器の画面上に、該画面の奥行き方向に三次元的な広がりをもって視認される画像表示領域3を形成する画面制御装置と、
メータ指示値を表示するメータ画像としての運転情報画像4であるアナログ式メータ画像15を含んで構成され、前記奥行き方向において最も手前に位置する視認容易な運転情報画像4のグループである第1のグループと、前記第1のグループを構成する運転情報画像4以外の運転情報画像4を含む第2のグループとに区分し、各々の運転情報画像4のグループが、前記画像表示領域3において前記奥行き方向の互いに異なる位置に存在するものとして視認されるよう、前記運転情報画像4のグループ毎に相違する立体画像処理を施して前記画像表示領域3に表示出力する画面制御装置と、を備え、
前記画面制御装置は、前記メータ画像として円弧状の指針可動領域17に沿って移動可能な指針と、該指針可動領域17に沿って形成される目盛りと数値とを有し、かつ、一方が速度計5とされる2つのアナログ式メータ画像15を左右に互いに隣接して表示する、車両用表示装置1。」

2-1-2 引用文献2
(1)原査定の拒絶理由に引用された本件出願前に頒布された刊行物である特開2006-347445号公報(以下、「引用文献2」という。)には、例えば、以下の記載がある。(なお、下線は、理解の一助のために当審で付したものである。)

(a)「【0001】
本発明は、車両状態を指し示す値をメータ表示により情報を乗員に伝達する車両メータ装置の技術に関する。」(段落【0001】)

(b)「【0009】
実施例1の車両メータ装置1は、液晶表示部2、VFD表示部3、アナログ表示部4、ハーフミラー5,6、制御部7(図1,図2では図示しない)を主要な構成としている。
【0010】
液晶表示部2は、下面を表示部とし、インストルメントパネルのメータ表示を行う上部カバー内となる位置に配置される。
VFD表示部3は、蛍光表示管による表示を行うものであり、メータ表示を行う奥側に設ける。
アナログ表示部4は、燃料計41、水温計42からなり、メカ式の計器である。この燃料計41、水温計42は、虚像で表示するメータ表示の左右両側に配置される。
ハーフミラー5は、表示面を手前側の第1表示面21と奥側の第2表示面22に分割するように基端を位置させ、下方へ行くに従って手前側となるよう斜めに設け、基端より手前側の表示面をドライバのアイポイントへ向かって反射する。また、ハーフミラー5は、その奥側を透過して見ることができる透過率を有するものである。
ハーフミラー6は、第2表示面22の奥側端部を基端とし、下方へ行くに従って手前側となるよう斜めに設け、ハーフミラー5の基端から奥側の表示面をドライバのアイポイントへ向かって反射する。また、ハーフミラー6は、その奥側を透過して見ることができる透過率を有するものである。
【0011】
図3は、制御部7のブロック図である。
制御部7は、画像処理部71,72、入力部73を備え、車内通信網であるCANやセンサ類から入力部73によりメータ表示に使用するデータを取得し、表示内容を設定する。また、燃料計41、水温計42へ取得データの内の該当データを出力する。さらに、設定した表示内容に応じて、画像処理部71が液晶表示部2に表示する画像を生成、制御し、画像処理部72がVFD表示部3に表示する画像を生成、制御する。」(段落【0009】ないし【0011】)

(c)「【0012】
次に作用を説明する。
[メータ表示及び情報表示作用]
実施例1では、図2に示すように、分割された手前側の表示面をハーフミラー5で反射することによる第1表示像21a、分割された奥側の表示面をハーフミラー6で反射することによる第2表示像22a、VFD表示部3の表示部の表示像が、重なって虚像で表示される。
また、虚像のメータ表示の左右では、メカ式の燃料計と水温計が実像で表示される。
虚像のメータ表示の内容としては、図4に示すように、手前側の第1表示像21aに、車速メータ、タコメータ、オド・トリップメータ、レンジ位置が表示される。奥側の第2の表示位置には、車両の状態やスイッチの条件に応じて、情報表示部として、経路誘導動作中の場合にターンバイターンナビ、エアコン操作時にオーディオの状態表示、ETC通信時にETCの状態表示、白線検知システム作動時にレーンキープの状態表示、先行車追従システム作動時にオートクルーズの状態表示を行う。
また、警告表示をする場合には、警告表示がこれら表示より優先度が高いために、情報表示をやめて、第1表示像21aに警告表示を行う。
VFD表示部3は、第2表示像22aに重ねて、上記情報表示を行うとともに、液晶表示部2の不具合の際に必要なメータ表示を行う。
このように虚像表示による第1表示像21aと第2表示像22aにより、インパクト、迫力のある表示になる。これは、重ねた表示の奥行き感、また、重ねた表示上の移動による奥行き感や迫力感など、豊かな表現が可能になるためである。また、奥側となる第2表示像22aを第1表示像21aと同時に表示するようなコンテンツ表示をなるべく使用しないようにし、警告表示などある条件の際にだけ表示することで、効果的なインパクトや迫力を出すようにしてもよい。」(段落【0012】)

(2)上記(1)(a)ないし(c)及び図面の記載から、以下のことが分かる。

(ア)上記(1)(a)ないし(c)及び図1ないし7の記載から、引用文献2には、車両メータ装置1が記載されていることが分かる。

(イ)上記(1)(a)ないし(c)及び図1ないし7の記載から、引用文献2に記載された車両メータ装置1は、手前側の第1表示像21aと、奥側の第2表示像22aを備え、手前側の第1表示像21aには、車速メータ、タコメータ、オド・トリップメータ、レンジ位置が表示され、奥側の第2表示像22aには、ターンバイターンナビ、オーディオの状態表示、ETCの状態表示、レーンキープの状態表示、オートクルーズの状態表示が行われることが分かる。

(ウ)上記(1)(a)ないし(c)及び図1ないし7の記載から、引用文献2に記載された車両メータ装置1において、警告表示をする場合には、手前側の第1表示像21aに警告表示を行うことが分かる。

(エ)上記(1)(a)ないし(c)及び図1ないし7(特に図5(b)を参照。)の記載から、引用文献2に記載された車両メータ装置1において、警告表示は、回転指針式アナログメータである車速メータとタコメータの円弧状の目盛盤の隣接対向する各内側上部と画面上縁との間に形成されるくさび形のメータ間スペースの上方側であって、円弧状の目盛盤の上縁位置とディスプレイの画面の上縁との間のスペースにその大部分が表示されることが分かる。

(オ)上記(1)(a)ないし(c)及び図1ないし7(特に図5(b)を参照。)の記載から、引用文献2に記載された車両メータ装置1において、手前側の第1表示像21aには、車速メータ、タコメータ、及び警告表示を含む第1のグループが表示され、奥側の第2表示像22aには、ターンバイターンナビ、オーディオ、ETC、レーンキープ、オートクルーズ等の第2のグループが表示されることが分かる。

(3)上記(1)、(2)及び図面の記載から、引用文献2には次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「メータ指示値を表示する画像メータとしての画像機能部品である回転指針式アナログメータを含んで構成され、前記奥行き方向において最も手前に位置する第1表示像21aである第1のグループと、前記第1のグループを構成する画像機能部品以外の画像機能部品を含む第2のグループとに区分し、各々のグループが、前記メータ表示領域において前記奥行き方向の互いに異なる位置に存在するものとして視認されるよう、前記グループ毎に相違する立体画像処理を施して前記メータ表示領域に表示出力する画像処理部71と、を備え、
該画像処理部71は、前記画像メータとして車速メータ及びタコメータの画像を左右に互いに隣接して表示するとともに、前記画像メータ以外の画像機能部品である非メータ画像機能部品の少なくとも1つを警告表示として、車速メータ及びタコメータの円弧状の目盛盤の隣接対向する各内側上部と、前記画面上縁との間に形成されるくさび状のメータ間スペースの上方側であって、前記円弧状の目盛盤の上縁位置と前記ディスプレイの画面の上縁との間のスペースにその大部分を表示して、前記回転指針式アナログメータ及び前記警告表示を含む前記第1のグループが、前記第2のグループよりも前記奥行き方向にて手前に存在するものとして視認されるよう前記立体画像処理を施す車両メータ装置1。」

2-2 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「車両用表示装置1」は、その機能及び作用又は技術的意義からみて、本願補正発明における「車両用メータユニット」に相当し、以下同様に、「画像表示器」は「ディスプレイ」に、「画像表示領域3」は「メータ表示領域」に、「画面制御装置」は「メータ表示領域形成手段」及び「画像機能部品表示手段」に、「メータ画像」は「画像メータ」に、「運転情報画像4」は「画像機能部品」に、「アナログ式メータ画像15」は「回転指針式アナログメータ」及び「回転指針式アナログメータの画像」に、「(視認容易な運転情報画像4のグループである)第1のグループ」は「(強調対象部品グループである)第一部品グループ」に、「第2のグループ」は「第二部品グループ」に、「運転情報画像4のグループ」は「部品グループ」に、「指針可動領域17」は「指示軌跡」に、「目盛りと数値」は「目盛盤」に、「速度計5」は「速度計」に、それぞれ相当する。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「車両の運転席に対向配置される車両用メータユニットであって、
ディスプレイと、
該ディスプレイの画面上に、該画面の奥行き方向に三次元的な広がりをもって視認されるメータ表示領域を形成するメータ表示領域形成手段と、
メータ指示値を表示する画像メータとしての画像機能部品である回転指針式アナログメータを含んで構成され、前記奥行き方向において最も手前に位置する強調対象部品グループである第一部品グループと、前記第一部品グループを構成する画像機能部品以外の画像機能部品を含む第二部品グループとに区分し、各々の部品グループが、前記メータ表示領域において前記奥行き方向の互いに異なる位置に存在するものとして視認されるよう、前記部品グループ毎に相違する立体画像処理を施して前記メータ表示領域に表示出力する画像機能部品表示手段と、を備え、
前記画像機能部品表示手段は、前記画像メータとして円弧状の指示軌跡に沿って移動可能な指針と、該指示軌跡に沿って形成される目盛盤とを有し、かつ、一方が速度計とされる2つの回転指針式アナログメータの画像を左右に互いに隣接して表示する、車両用メータユニット。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願補正発明においては、「画像メータ以外の画像機能部品である非メータ画像機能部品の少なくとも1つをメータ間情報出力部として、2つの回転指針式アナログメータの円弧状の目盛盤の隣接対向する各内側上部と、画面上縁との間に形成されるくさび状のメータ間スペースの上方側であって、円弧状の目盛盤の上縁位置と前記ディスプレイの画面の上縁との間のスペースに表示して、回転指針式アナログメータ及びメータ間情報出力部を含む第一部品グループが、第二部品グループよりも前記奥行き方向にて手前に存在するものとして視認されるよう立体画像処理を施す」ものであり、「メータ間情報出力部は、1又は複数の警告シンボルを表示する警告シンボル表示部である」のに対し、引用発明においては、そのような「警告シンボル表示部である」「メータ間情報出力部」が「2つの回転指針式アナログメータの円弧状の目盛盤の隣接対向する各内側上部と、画面上縁との間に形成されるくさび状のメータ間スペースの上方側であって、円弧状の目盛盤の上縁位置とディスプレイの画面の上縁との間のスペースに表示」されるものではなく、したがって「回転指針式アナログメータ及びメータ間情報出力部を含む前記第一部品グループが、前記第二部品グループよりも前記奥行き方向にて手前に存在するものとして視認されるよう立体画像処理を施す」ものとはいえない点(以下、「相違点」という。)。

2-3 判断
相違点について検討する。
本願補正発明と引用文献2記載の技術とを対比すると、引用文献2記載の技術における「車両メータ装置1」は、その機能及び作用又は技術的意義からみて、本願補正発明における「車両用メータユニット」に相当し、以下同様に、「第1表示像21a」は「強調対象部品グループ」に、「第1のグループ」は「第一部品グループ」に、「第2のグループ」は「第二部品グループ」に、「グループ」は「部品グループ」に、「画像処理部71」は「画像機能部品表示手段」に、「車速メータ及びタコメータ」は「回転指針式アナログメータ」及び「円弧状の指示軌跡に沿って移動可能な指針と、該指示軌跡に沿って形成される目盛盤とを有し、かつ、一方が速度計とされる2つの回転指針式アナログメータ」に、「奥側の第2表示像22a」は「奥行き方向に奥側の位置」に、「第2のグループ」は「第二部品グループ」に、「車速メータ及びタコメータ」は「円弧状の指示軌跡に沿って移動可能な指針と、該指示軌跡に沿って形成される目盛盤とを有し、かつ、一方が速度計とされる2つの回転指針式アナログメータ」に、「警告表示」は「1又は複数の警告シンボルを表示する警告シンボル表示部であるメータ間情報出力部」に、それぞれ相当する。
そうすると、引用文献2記載の技術は、本願補正発明の用語を用いて、
「メータ指示値を表示する画像メータとしての画像機能部品である回転指針式アナログメータを含んで構成され、前記奥行き方向において最も手前に位置する強調対象部品グループである第一部品グループと、前記第一部品グループを構成する画像機能部品以外の画像機能部品を含む第二部品グループとに区分し、各々の部品グループが、前記メータ表示領域において前記奥行き方向の互いに異なる位置に存在するものとして視認されるよう、前記部品グループ毎に相違する立体画像処理を施して前記メータ表示領域に表示出力する画像機能部品表示手段と、を備え、
画像機能部品表示手段は、前記画像メータとして円弧状の指示軌跡に沿って移動可能な指針と、該指示軌跡に沿って形成される目盛盤とを有し、かつ、一方が速度計とされる2つの回転指針式アナログメータの画像を左右に互いに隣接して表示するとともに、前記画像メータ以外の画像機能部品である非メータ画像機能部品の少なくとも1つを1又は複数の警告シンボルを表示する警告シンボル表示部であるメータ間情報出力部として、2つの前記回転指針式アナログメータの円弧状の目盛盤の隣接対向する各内側上部と、前記画面上縁との間に形成されるくさび状のメータ間スペースの上方側であって、前記円弧状の目盛盤の上縁位置と前記ディスプレイの画面の上縁との間のスペースにその大部分を表示して、前記回転指針式アナログメータ及び前記1又は複数の警告シンボルを表示する警告シンボル表示部であるメータ間情報出力部を含む前記第一部品グループが、前記第二部品グループよりも前記奥行き方向にて手前に存在するものとして視認されるよう前記立体画像処理を施す車両用メータユニット。」
と言い換えることができる。
また、車両用メータユニットの技術分野において、ディスプレイの画面の上縁付近に警告シンボル表示を行うことは、周知技術(以下、「周知技術」という。例えば、上記引用文献2、特開2000-85408号公報(特に段落【0013】及び【図5】を参照。)、特開2000-101998号公報(特に段落【0013】、【図5】及び【図6】を参照。)、特開2006-76456号公報(特に段落【0023】、【0024】及び図3を参照。)、特開2005-99230号公報(特に段落【0056】及び図4ないし図10を参照。)等の記載を参照。)である。
してみれば、周知技術を踏まえて、引用発明において、引用文献2記載の技術を適用し、その際に警告シンボル表示部を円弧状の目盛盤の上縁位置とディスプレイの画面の上縁との間のスペースにおさめることにより、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明を全体としてみても、その奏する効果は、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術から当業者が予測できた範囲内のものであり、格別に顕著な効果ではない。

以上のように、本願補正発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
したがって、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 手続の経緯及び本願発明
平成23年12月2日付けの手続補正は前述したとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし13に係る発明は、平成23年8月10日付けの手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1を引用する請求項13に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2の〔理由〕1(1)の(a)の請求項1を引用する請求項13に記載したとおりのものである。

2 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び2並びにそれらの記載事項は、前記第2の〔理由〕2の2-1の2-1-1及び2-1-2に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記第2の〔理由〕2の2-2及び2-3において検討した本願補正発明における限定の一部を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものに相当する本願補正発明が、前記第2の〔理由〕2の2-3に記載したとおり、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-23 
結審通知日 2012-10-24 
審決日 2012-11-06 
出願番号 特願2007-317033(P2007-317033)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
P 1 8・ 575- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 有賀 信  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 金澤 俊郎
藤原 直欣
発明の名称 車両用メータユニット  
代理人 菅原 正倫  
代理人 張川 隆司  

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