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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1268229
審判番号 不服2012-282  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-06 
確定日 2013-01-04 
事件の表示 特願2008-208815「光インドアケーブル及び光インドアケーブル敷設方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月25日出願公開、特開2010- 44254〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成20年8月14日の出願であって、平成23年5月13日付けで手続補正がなされ、同年10月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年1月6日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成24年1月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年1月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成24年1月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前(平成23年5月13日付け手続補正後のもの)の特許請求の範囲として、

「【請求項1】
光ファイバと、
前記光ファイバの外周を覆う被覆と、を備える光インドアケーブルであって、
前記被覆の表面に、不規則に起伏する凹凸を設け、
前記凹凸は、触針で試料の表面をなぞり該触針の上下運動を検出する接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときの、JIS B 0601で規定されている算術平均粗さが1μm以上9μm以下である
ことを特徴とする光インドアケーブル。
【請求項2】
光ファイバと、
前記光ファイバの外周を覆う被覆と、を備える光インドアケーブルであって、
前記被覆の表面に、不規則に起伏する凹凸を設け、
前記凹凸は、共焦点方式のうちの超深度形状測定顕微鏡を用いる非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときの、JIS B 0601で規定されている算術平均粗さが5μm以上30μm以下である
ことを特徴とする光インドアケーブル。
【請求項3】
前記被覆は、表面の素材に、平均粒子径が前記凹凸の表面粗さと略等しい微粒子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光インドアケーブル。
【請求項4】
前記微粒子が、架橋ポリエチレンからなることを特徴とする請求項3に記載の光インドアケーブル。
【請求項5】
前記被覆は、表面の素材に、フッ素又はシリコンを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光インドアケーブル。
【請求項6】
前記フッ素又はシリコンは、前記凹凸よりも平均粒子径の小さい粉体であることを特徴とする請求項5に記載の光インドアケーブル。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の光インドアケーブルの長手方向の端部を先頭にして、当該光インドアケーブルを配管に押し込む工程を有することを特徴とする光インドアケーブル敷設方法。」

とあったものを、補正後の特許請求の範囲として、

「【請求項1】
光ファイバと、
前記光ファイバの外周を覆う被覆と、を備える光インドアケーブルであって、
前記被覆の表面に、不規則に起伏する凹凸を設け、
前記凹凸は、触針で試料の表面をなぞり該触針の上下運動を検出する接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときの、JIS B 0601で規定されている算術平均粗さが1.93μm以上9.20μm以下である
ことを特徴とする光インドアケーブル。
【請求項2】
光ファイバと、
前記光ファイバの外周を覆う被覆と、を備える光インドアケーブルであって、
前記被覆の表面に、不規則に起伏する凹凸を設け、
前記凹凸は、共焦点方式のうちの超深度形状測定顕微鏡を用いる非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときの、JIS B 0601で規定されている算術平均粗さが16.8μm以上28.7μm以下である
ことを特徴とする光インドアケーブル。
【請求項3】
前記被覆は、表面の素材に、平均粒子径が前記凹凸の表面粗さと略等しい微粒子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光インドアケーブル。
【請求項4】
前記微粒子が、架橋ポリエチレンからなることを特徴とする請求項3に記載の光インドアケーブル。
【請求項5】
前記被覆は、表面の素材に、フッ素又はシリコンを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光インドアケーブル。
【請求項6】
前記フッ素又はシリコンは、前記凹凸よりも平均粒子径の小さい粉体であることを特徴とする請求項5に記載の光インドアケーブル。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の光インドアケーブルの長手方向の端部を先頭にして、当該光インドアケーブルを配管に押し込む工程を有することを特徴とする光インドアケーブル敷設方法。」

と補正することを含むものである。

そして、本件補正は、補正前の請求項2において、「(光ファイバの外周を覆う被覆の表面に設けられた)凹凸」の、「共焦点方式のうちの超深度形状測定顕微鏡を用いる非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときの、JIS B 0601で規定されている算術平均粗さ」について、「5μm以上30μm以下」とされていたものを、「16.8μm以上28.7μm以下」(以下「本件補正事項」という。)と補正することを含むものである。

2 新規事項
本件補正が、願書に最初に添付した明細書または図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるか否かにつき検討する。

本件補正事項に関して、当初明細書等には、以下の記載がある。

(1)「【0001】
本発明は、マンション等の既設配管への挿入もしくは任意のケーブルの引き抜きを容易にし、既設配管スペースに多条敷設を容易にする低摩擦の光インドアケーブルに関する。」

(2)「【0004】
通線機を用いた従来の光インドアケーブル敷設方法では、既設のケーブルが通線機及び光インドアケーブルと接触して摩擦が起こる。この摩擦があるために、配管内に光インドアケーブルを敷設する十分なスペースがあっても、敷設可能なケーブル数は数条程度が限界であり、屋内配線の全戸光化に対応できないという問題があった。
【0005】
より具体的には、22mmφの配管を例にとると、配管内に既に直径8.8mmメタルケーブルがある状態で従来の光インドアケーブルを通線機を通して1条ずつ牽引すると、最初の1条目は問題ないが、条数が増加するにつれ配管内でのケーブルの摩擦力の増加に伴い急激に牽引張力が増大し、わずか3条目では牽引張力が20kgに達する。この3条目を引き抜く際には引抜張力がさらに37kgにも達する。4条目の牽引はできなかった。つまり、10?30戸の中規模マンションにおいては少なくとも30条の通線が必要となるが、従来の光インドアケーブルではそれができないという問題があった。」

(3)「【0008】
そこで、上記課題を解決するために、本発明に係る光インドアケーブルは、光ファイバと、前記光ファイバの外周を覆う被覆と、を備える光インドアケーブルであって、前記被覆の表面に、不規則に起伏する凹凸を設けたことを特徴とする。
被覆の表面に不規則に起伏する凹凸があることで、光インドアケーブル表面における接触面積が減るので、光インドアケーブル表面の動摩擦係数を小さくすることができる。本発明により、既設配管へのケーブル敷設において、既設配管へ挿入若しくは任意のケーブルの引抜を容易にし、しかも既設のケーブルに損傷を与えるなどの影響を及ぼさない低張力牽引を可能にする。これにより、従来不可能であった既設配管への多条敷設を実現し、既設配管の行き詰まりの問題を解決して全戸光化を可能とする。
しかも、低摩擦性ゆえに、剛直性を得ることで、従来必ず通線機が必要であったものが、通線機を使用せずとも、ケーブルのみの力で自立的に配管のスペースをたどっての挿入が可能となる。これにより1条あたりの敷設施工時間の大幅な短縮が実現され、光通信サービスにおける全戸光配線を実現することができる。
【0009】
本発明に係る光インドアケーブルでは、前記凹凸は、1μm以上30μm以下の表面粗さを有することが好ましい。表面粗さが1μm以上30μm以下のときに光インドアケーブル表面の動摩擦係数を小さくすることができる。ここで、表面粗さは、基準長さにおける高さの絶対値の平均をいう。
【0010】
前記凹凸は、接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときに1μm以上9μm以下の表面粗さを有することが好ましい。特に、前記凹凸は、接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときに1μm以上3μm以下又は8μm以上9μm以下の表面粗さを有することが好ましい。また、前記凹凸は、非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときに5μm以上30μm以下の表面粗さを有することが好ましい。
【0011】
前記凹凸は、非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときに5μm以上30μm以下の表面粗さを有し、かつ接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときに1μm以上3μm以下の表面粗さを有することが好ましい。また、非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときに5μm以上30μm以下の表面粗さを有し、かつ接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときに8μm以上9μm以下の表面粗さを有することが好ましい。」

(4)「【0019】
図1は、本実施形態に係る光インドアケーブルの構成概略図である。本実施形態に係る光インドアケーブル91は、光ファイバ11と、光ファイバの外周を覆う被覆12と、を備える。

【0022】
図1に示す被覆12の表面には、不規則に起伏する凹凸が設けられている。凹凸が不規則に起伏するので、光インドアケーブル91の凹凸同士がはまりこむことがなく、被覆12の接触面積を減らすことができる。また、図3及び図4に示す実施例にて示すように、被覆12の表面における動摩擦係数を被覆12の表面が平坦なときに比べて低減することができる。
【0023】
凹凸は、1μm以上30μm以下の表面粗さを有することが好ましい。ここで、表面粗さは、基準長さにおける高さの絶対値の平均をいう。1μm以上30μm以下の表面粗さを有するとき、図3及び図4に示す実施例の結果より光インドアケーブル表面の動摩擦係数を小さくすることができる。このとき、動摩擦係数が0.2を下回るので、光インドアケーブルの挿入が可能となる。表面粗さが1μm未満となる場合、接触式及び非接触式の表面粗さ測定法で得られた動摩擦係数が0.2を超え、凹凸がなくなるに従って動摩擦係数は増加した。表面粗さが30μm超となる場合、非接触式の表面粗さ測定法で得られた動摩擦係数が0.2を超える傾向がみられた。
【0024】
表面粗さの評価指標について説明する。例えば、市販の接触式表面粗さ測定法において触針(スタイラス)が試料の実表面上を走査したとき、円すい型の先端部(先端球中心)の軌跡が作る曲線(測定曲線)を縦軸と横軸からなる座標としてプロットし、一定間隔でサンプリング(ディジタル化)して得られる曲線を測定断面曲線といい、測定断面曲線から一定の長さを抜き取った部分の長さ(基準長さ)における高さの絶対値の平均によって表面粗さが定義され、JIS規格として規定されている。例えば、JIS B 0601:2001で規格されている算術平均粗さRaである。規定は、JIS B 0651などの他の規格であってもよい。
【0025】
接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときには、凹凸は、1μm以上9μm以下の算術平均粗さを有することが好ましい。このとき、図3及び図4に示す実施例の結果より動摩擦係数が0.2を下回るので、光インドアケーブルの挿入が可能となる。特に、凹凸は、1μm以上3μm以下、又は、8μm以上9μm以下の表面粗さを有することが好ましい。これらの表面粗さとすることで、図3及び図4に示す実施例の結果より、動摩擦係数を最小にすることができる。接触式の表面粗さ測定法は、触針で試料の表面をなぞり、触針の上下運動を検出する。
【0026】
非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときには、凹凸は、5μm以上30μm以下の表面粗さを有することが好ましい。このとき、図3及び図4に示す実施例の結果より動摩擦係数が0.2を下回るので、光インドアケーブルの挿入が可能となる。非接触式の表面粗さ測定法は、触針の代わりに光を用いた測定法であり、例えば共焦点方式又は白色干渉方式がある。

【0028】
接触式と非接触式の両方の表面粗さ測定法を用いて測定可能な場合には、凹凸は、接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときには1μm以上9μm以下の算術平均粗さを有し、かつ、非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときには5μm以上30μm以下の表面粗さを有することが好ましい。特に、凹凸は、接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときには1μm以上3μm以下又は8μm以上9μm以下の算術平均粗さを有し、かつ、非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときには5μm以上30μm以下の表面粗さを有することが好ましい。
【0029】
上述の表面粗さを有する構造を被覆12に成形するには、例えば、押出成型後のラインにサンドブラスト等の表面粗化工程を組み込む方法や、押出成型後のラインに上下方向及び左右方向の任意粗面のロールを通し粗面を転写してファイバの表面を粗化する方法や、被覆材料に任意の粒子径の微粒子を混合してファイバを押出成型で製造する方法等がある。微粒子は、架橋ポリエチレン等の耐圧性及び耐熱性に優れかつ硬い素材で形成されていることが好ましい。」

(5)「【0032】

【実施例1】
【0033】
ポリエチレン試料について表面粗さを変化させ、それぞれについて動摩擦係数を測定した。表面粗さは、JIS B 0601で規格されている算術平均粗さRaを示す。本実施例では、表面粗さを、接触式の表面粗さ測定法を用いて測定した。動摩擦係数の測定において、引っ張り速度は10m/s、測定速度は0.3mm/s、測定距離は5mmであった。
【0034】
図3は、接触式の表面粗さ測定法を用いて測定した表面粗さに対して動摩擦係数をプロットしたものである。接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときに1μmから約9μmの算術平均粗さRaを有する範囲で、光インドアケーブルの挿入が可能となる0.2以下の動摩擦係数の値となった。より好ましくは2μmから3μmまたは8μmから9μmの算術平均粗さRaを有する範囲で動摩擦係数が最小化されることがわかった。
【実施例2】
【0035】
実施例1と同様に、ポリエチレン試料について表面粗さを変化させ、それぞれについて動摩擦係数を測定した。表面粗さは、JIS B 0601で規格されている算術平均粗さRaを示す。本実施例では、表面粗さを、非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定した。動摩擦係数の測定において、引っ張り速度は10m/s、測定速度は0.3mm/s、測定距離は5mmであった。
【0036】
図4は、非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定した表面粗さに対して動摩擦係数をプロットしたものである。非接触式の表面粗さ測定法には、共焦点方式のうちの超深度形状測定顕微鏡を用いた。非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときには5μmから30μmの算術平均粗さRaを有する範囲で動摩擦係数が最小化されることがわかった。」

以上のとおり、当初明細書等には、
a 光ファイバと、前記光ファイバの外周を覆う被覆と、を備える光インドアケーブルにおいて、前記被覆の表面に、不規則に起伏する凹凸を設けることで、光インドアケーブル表面における接触面積が減るので、光インドアケーブル表面の動摩擦係数を小さくできること((3)【0008】)、
b 前記凹凸は、1μm以上30μm以下の表面粗さ(基準長さにおける高さの絶対値の平均)を有することが好ましく、表面粗さが1μm以上30μm以下のときに光インドアケーブル表面の動摩擦係数を小さくする(0.2を下回る)ことができ、光インドアケーブルの挿入が可能となること((3)【0009】、(4)【0023】)、
c 前記凹凸は、接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときに1μm以上9μm以下の表面粗さ(算術平均粗さ)を有することが好ましく、このとき、図3及び図4に示す実施例の結果より動摩擦係数が0.2を下回るので、光インドアケーブルの挿入が可能となり、また、前記凹凸は、非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときに5μm以上30μm以下の表面粗さを有することが好ましいこと((3)【0010】、(4)【0025】)、
d 前記凹凸は、非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときに5μm以上30μm以下の表面粗さを有することが好ましく、このとき、図3及び図4に示す実施例の結果より動摩擦係数が0.2を下回るので、光インドアケーブルの挿入が可能となり、また、接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときに8μm以上9μm以下の表面粗さを有することが好ましいこと((3)【0011】、(4)【0026】)、
e 接触式と非接触式の両方の表面粗さ測定法を用いて測定可能な場合には、凹凸は、接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときには1μm以上9μm以下の算術平均粗さを有し、かつ、非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときには5μm以上30μm以下の表面粗さを有することが好ましいこと((4)【0028】)、
f 実施例1において、ポリエチレン試料について表面粗さを変化させ、それぞれについて動摩擦係数を、接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したところ、図3より、1μmから約9μmの(JIS B 0601で規格されている)算術平均粗さRaを有する範囲で、光インドアケーブルの挿入が可能となる0.2以下の動摩擦係数の値となり、より好ましくは2μmから3μmまたは8μmから9μmの算術平均粗さRaを有する範囲で動摩擦係数が最小化されることがわかったこと((5)【0033】、【0034】)、
g 実施例2において、実施例1と同様に、ポリエチレン試料について表面粗さを変化させ、それぞれについて動摩擦係数を、共焦点方式のうちの超深度形状測定顕微鏡を用いる非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したところ、図4より、5μmから30μmの算術平均粗さRaを有する範囲で動摩擦係数が最小化されることがわかったこと((5)【0035】、【0036】)、
は記載されているものと認められる。
しかしながら、上記本件補正事項(「(光ファイバの外周を覆う被覆の表面に設けられた)凹凸」の、「共焦点方式のうちの超深度形状測定顕微鏡を用いる非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときの、JIS B 0601で規定されている算術平均粗さ」が「16.8μm以上28.7μm以下」であること)については記載されてはおらず、また、前記本件補正事項が当初明細書等の記載から自明な事項である、ということもできない。
よって、本件補正事項は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであって、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものとはいえない。

なお、上記本件補正事項に関し、請求人は、平成24年9月13日付け回答書(2.(1))において、「平成24年1月6日付け手続補正書…の請求項2における「算術平均粗さが16.8μm以上28.7μm以下である」との記載は、…本願の願書に最初に添付した図面の…図4において、「動摩擦係数」が0.2を超える測定結果が存在しない「表面粗さRa」の数値範囲を特定したものです。より具体的には、…図4において、「表面粗さRa」の変化に対して、「動摩擦係数」が0.2以下となるプロットのみが含まれるグラフ上の領域を特定し、その領域内のプロットのうち、「表面粗さRa」が最小であるプロット及び最大であるプロットを特定し、それら2つのプロットの「表面粗さRa」をそれぞれ数値範囲の下限値及び上限値としたものです。…前回の手続補正書の請求項…2に記載した数値範囲は、該当するプロットさえ特定できれば、…図4のグラフから、当該グラフの横軸の目盛りに基づいた一般的な比例計算等によって、容易に特定することができるものです。よって、前回の手続補正書の請求項…2に…記載した…「16.8μm以上28.7μm以下」との数値は、十分な技術的意味を有しているとともに、…図4の記載から自明であると思料します。」と主張する。
しかしながら、本願の図4のグラフを見ても、上記「算術平均粗さ」の数値範囲が、「16.8μm以上28.7μm以下」であることを特定することはできないから、本件補正事項が図4の記載から自明なものである、ということはできない。

したがって、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成23年5月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1において、補正前の請求項2として記載したとおりのものである。

2 刊行物記載の発明
本願の出願前に頒布された、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平9-197221号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ファイバを圧送によりパイプ内に通線する方法に用いられる光ファイバ圧送用ユニット…に関するものである。」

(2)「【0002】
【従来の技術】図2に、光ファイバ圧送用ユニットの圧送の説明図を示す。従来より光ファイバを布設する方法として、予め、内部に中空のパイプ11を有するケーブルを布設しておき、必要に応じてこのパイプ11内に光ファイバを通線する方法が行われている。また光ファイバは、これを取扱い易くするために、数心ずつまとめた構造の光ファイバ圧送用ユニット12として用いられている。そして、この光ファイバ圧送用ユニット12をパイプ11内に通線して布設する1つの方法として、図2に示すように、パイプ11内を加圧して一方向の空気流を生じさせ、この空気流によって光ファイバ圧送用ユニット12を圧送する方法が行われている。また、このような光ファイバ圧送用ユニット12の圧送方法は光ファイバの布設だけでなく、補修の際にも用いることができるものである。
【0003】光ファイバ圧送用ユニット12は、複数本の光ファイバ素線を被覆層にて一体化したものである。該被覆層の最外被覆層は、光ファイバ圧送用ユニット12の軽量化を図るとともに、パイプ内壁との摩擦力の低減或いは空気流による推進力を大きくする等を考慮して、ポーラス(多孔性の)構造であって、一般に、発泡ポリエチレンを用いて形成されている。」

(3)「【0007】本発明は、…ポーラスな構造を有して、圧送特性に優れた光ファイバ圧送用ユニットおよび生産性、経済性に優れた製法を提供することを課題とする。」

(4)「【0011】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の光ファイバ圧送用ユニットの例を示す断面図である。図1に示すように、本発明の光ファイバ圧送用ユニット12は、複数本の光ファイバ素線13を被覆層14、15で一体化してなる光ファイバ圧送用ユニットであって、最外被覆層15が気泡15aを含む紫外線硬化性樹脂等の光硬化性樹脂又は気泡15aを含む熱硬化性樹脂で構成されいいる(審決注:「構成されている」の誤りと認める。)とともに、気泡15aの最外被覆層15における体積比率が10%以上であるものである。

【0013】気泡15aの体積比率は、10%以上、好ましくは、10%?60%、更に好ましくは、20?50%である。このように多量な気泡15aが含まれると、軽量であるとともに、光ファイバ圧送用ユニット12の表面に凹凸15bが多数存在して表面が粗となり、該ユニット12の表面積が大きくなる。従って、圧送用空気による推進力が大となるので、光ファイバ圧送用ユニット12を圧送し易い。光ファイバ圧送用ユニット12の表面は、表面粗さRa(μm)で、20?50μmであることが好ましい。なお、表面粗さRa(μm)とは、JIS B0601 に規定されている、中心線平均粗さRa(μm)である。」

したがって、上記記載事項を総合すると、引用刊行物には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている、と認められる。

「光ファイバを圧送によりパイプ内に通線する方法に用いられる光ファイバ圧送用ユニットであって、
前記光ファイバ圧送用ユニット12は、複数本の光ファイバ素線13を被覆層14、15で一体化してなる光ファイバ圧送用ユニットであり、最外被覆層15が気泡15aを含む紫外線硬化性樹脂等の光硬化性樹脂又は気泡15aを含む熱硬化性樹脂で構成されているとともに、気泡15aの最外被覆層15における体積比率が10%以上であり、
前記光ファイバ圧送用ユニット12の表面は、JIS B0601 に規定されている中心線平均粗さRa(μm)である表面粗さRa(μm)で、20?50μmであることが好ましい、光ファイバ圧送用ユニット。」

3 対比
本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明は、「光ファイバを圧送によりパイプ内に通線する方法に用いられる光ファイバ圧送用ユニットであって、前記光ファイバ圧送用ユニット12は、複数本の光ファイバ素線13を被覆層14、15で一体化してなる」ものであるから、引用発明の「複数本の光ファイバ素線13」、「(複数本の光ファイバ素線13を一体化する)被覆層14、15」及び「(複数本の光ファイバ素線13を被覆層14、15で一体化してなる)光ファイバ圧送用ユニット」は、それぞれ、本願発明の「光ファイバ」、「(前記光ファイバの外周を覆う)被覆」及び「(光ファイバと、前記光ファイバの外周を覆う被覆と、を備える)光インドアケーブル」に相当する。

(2)引用発明の「光ファイバ圧送用ユニット12」は、その「表面」が、「JIS B0601 に規定されている中心線平均粗さRa(μm)である表面粗さRa(μm)で、20?50μmであることが好ましい」ものであるから、引用発明は、本願発明の「前記被覆の表面に、不規則に起伏する凹凸を設け」との事項を備える。

したがって、両者は、
「光ファイバと、
前記光ファイバの外周を覆う被覆と、を備える光インドアケーブルであって、
前記被覆の表面に、不規則に起伏する凹凸を設けた、
光インドアケーブル。」
である点で一致し、以下の点において相違する。

相違点
被覆の表面の凹凸が、本願発明では、共焦点方式のうちの超深度形状測定顕微鏡を用いる非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときの、JIS B 0601で規定されている算術平均粗さが5μm以上30μm以下であるのに対し、引用発明では、そのような粗さのものであるのか否か明らかではない点。

4 判断
上記相違点につき検討する。
本願発明において、「(光ファイバの外周を覆う被覆の表面に設けられた)凹凸」を、「共焦点方式のうちの超深度形状測定顕微鏡を用いる非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときの、JIS B 0601で規定されている算術平均粗さが5μm以上30μm以下」と定めたことの技術上の意義は、本願明細書の記載(【0026】、【0036】)によれば、上記「非接触式の表面粗さ測定法」を用いて測定したときに、算術平均粗さRaがその範囲で動摩擦係数が0.2を下回り、光インドアケーブルの(既設配管への)挿入が可能となる点にあるものと解される。
一方、引用発明において、「光ファイバ圧送用ユニット12の表面」を、「JIS B0601 に規定されている中心線平均粗さRa(μm)である表面粗さRa(μm)で、20?50μm」と定めたことの技術上の意義は、引用刊行物の【従来の技術】に関する、「『従来より…(複数本の光ファイバ素線を被覆層にて一体化した)光ファイバ圧送用ユニット12…を(中空の)パイプ11内に通線して布設する1つの方法として、…パイプ11内を加圧して一方向の空気流を生じさせ、この空気流によって光ファイバ圧送用ユニット12を圧送する方法が行われ』、『該被覆層の最外被覆層は、…パイプ内壁との摩擦力の低減…等を考慮して…形成されている』」(上記2(2)【0002】、【0003】)との記載に照らせば、「光ファイバ圧送用ユニット12の表面」と「(中空の)パイプ内壁」との摩擦力を低減させる点にあることは明らかである。
そうすると、引用発明の技術上の意義は、本願発明の上記技術上の意義と共通するものであると認められる。
しかるところ、引用発明において、「(光ファイバ圧送用ユニット12の表面の)表面粗さRa(μm)」の値は、上記の技術上の意義に沿って、適宜設計的に定められるべきものであって、この「表面粗さRa(μm)」の値を、本願発明のごとく、「共焦点方式のうちの超深度形状測定顕微鏡を用いる非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときの、JIS B 0601で規定されている算術平均粗さ」の値を用いて特定することに格別の困難性があるものとは認められない。
また、本願発明において、上記の「…非接触式の表面粗さ測定法を用いて測定したときの…算術平均粗さ」の値を、具体的に「5μm以上30μm以下」と特定したことに、当業者が予測可能な域を超えるほどの格別の臨界的意義があるものとは認められない。

以上の検討によれば、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願発明の奏する効果が、引用発明から当業者が予測可能な域を超えるほどの格別顕著なものとは認められない。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-06 
結審通知日 2012-11-07 
審決日 2012-11-20 
出願番号 特願2008-208815(P2008-208815)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奥村 政人  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 星野 浩一
江成 克己
発明の名称 光インドアケーブル及び光インドアケーブル敷設方法  
代理人 豊田 義元  
代理人 本山 泰  
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