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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) B23F
管理番号 1268302
判定請求番号 判定2012-600033  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2013-02-22 
種別 判定 
判定請求日 2012-09-06 
確定日 2012-12-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第4475817号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「機械加工前のギヤ等の歯付き被加工物を機械加工する方法および装置」は、特許第4475817号発明の技術的範囲に属する。 
理由 第1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号カタログに示す「三菱歯車研削盤 ZE15B ZE24B」(以下これを「イ号物件」という。)が、特許第4475817号の請求項1及び3に係る発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2.本件特許発明
1.手続の経緯
ドイツ国出願 平成10年12月14日
本件出願 平成11年12月 8日
拒絶理由通知 平成21年 3月17日
誤訳訂正書・意見書 平成21年 6月23日
特許査定 平成22年 2月18日
設定登録 平成22年 3月19日
判定請求 平成24年 9月 6日
回答書 平成24年10月 1日(ファクシミリで提出)
答弁書 提出なし

2.本件特許発明
本件特許第4475817号の特許請求の範囲の請求項1及び3に記載された発明は、特許請求の範囲、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び3に記載された事項により特定されるとおりであり、その構成、目的は、以下のとおりである。

(1)発明の構成
請求項1及び3に係る発明(以下「本件特許発明1及び3」という。)の構成要件を分説すると以下のとおりである(以下「構成要件A」などという。)。
なお、この分説は請求人の判定請求書によるものであるが、妥当なものと認められるので、これに準じた。

「【請求項1】
A.装置台と、
B.この装置台上で動く第1のスライドと、
C.この第1のスライド上に取り付けられて仕上げ工具を留める仕上げ工具用スピンドルと、
D.前記装置台上において少なくとも2つの位置に移動可能に設置されるキャリヤと、
E.このキャリヤ上に回転可能に取り付けられる少なくとも2本の被加工物用スピンドルであって、それぞれが1個のモータで駆動される被加工物用スピンドルと、
F.少なくとも1本のセンタリングプローブを備える仕上げ装置に配置された機械加工前の歯の付いた被加工物を機械加工する方法であって、
G.前記仕上げ工具が被加工物の歯の隙間に衝突することなく入り込めるようにするために必要な前記被加工物用スピンドルの操作が、前記被加工物用スピンドルの一本に新しく留められた未加工の被加工物について、前記未加工の被加工物に前記仕上げ工具が入り込む位置にキャリヤが到達する前に行われる方法。

【請求項3】
a.装置台と、
b.この装置台に設けられ第1の軸の回りに回転可能で第1のモータによって駆動される仕上げ工具を留めるための仕上げ工具用スピンドルと、
c.第2のモータによって動かされ少なくとも前記装置台上で2つの位置まで移動可能なキャリヤと、
d.それぞれが1個の第3のモータを備え被加工物を留める少なくとも2本の被加工物用スピンドルであって、前記キャリヤ上でそれぞれが互いに距離をおいて設置され2本の第2の軸の回りで回転する被加工物用スピンドルを備える、
e.機械加工前の歯の付いた被加工物を機械加工する装置であって、
f.前記両被加工物用スピンドルはそれぞれが1個のロータリエンコーダに接続され、前記被加工物が前記仕上げ工具に入りこむことができる前記キャリヤの位置以外にある、一つの前記被加工物の歯のフランクの位置を測定する少なくとも1個のセンタリングプローブを備えた装置。」

(2)発明の目的
特許明細書には、以下の記載がある。

「【0006】
【発明の概要】
本発明の目的は、機械加工前の歯の付いた被加工物を精密加工する際のコストを減らすことである。
【0007】
上記の目的は、一態様において装置台を備えた仕上げ加工装置上で、機械加工前の歯の付いた被加工物を機械加工する本発明によって達成される。本発明においては、仕上げ工具を留める仕上げ工具用のスピンドルは、第1のスライドに取り付けられ、この第1のスライドは装置台上で移動することができる。被加工物を運ぶキャリヤは、装置台上で移動可能に配置され、少なくとも2つの位置まで移動することができる。キャリヤ上には、少なくとも2本の被加工物用スピンドルが回転可能に取り付けられ、それぞれが1個のモータで駆動される。また、少なくとも1本のセンタリングプローブが設置される。仕上げ工具が被加工物の歯の間に入り込む際不要な衝突をさせないために行う被加工物用スピンドルの操作(センタリング操作)は、被加工物用スピンドルの1本に新しく留められた機械加工前の被加工物について、この機械加工前の被加工物に仕上げ工具が入り込む位置にキャリヤが到達する前に行われる。」

よって、本件特許発明の目的は、キャリヤ上に被加工物用スピンドルを少なくとも2本設け、被加工物を保持した被加工物用スピンドルが加工位置に到達する前に、被加工物用スピンドルのセンタリング操作を終えておくことで、生産に要する時間を短縮し、コストを減らすものである。

第3.イ号物件
1.イ号物件に関する資料
請求人は、イ号物件を説明するものとして、カタログ、及び国際公開明細書(国際公開2011/121822号)を添付している。
カタログの「非加工時間の短縮」なる項目中には、「特許出願中」と記載されている。
当該出願が、添付された国際公開明細書に係るものであるかは、明らかでないものの、被請求人から特段の主張がないことから、当該明細書をイ号説明書として扱う。

2.カタログ
カタログには、イ号物件に関し、以下の記載がある。

(上部)
「三菱が誇る歯車加工技術で高精度・高能率研削を実現」

(左上部)
「ZE15B/24BにおけるC/Tの更なる短縮」
「非加工時間の短縮
ツインテールストック仕様によるワーク交換位置での歯合せにより非加工時間を短縮(特許出願中)
・非加工時間約5秒(ピニオンギヤ加工時)
まる1 テールストックでワークをクランプ
まる2 交換位置で歯合せ後、カウンタコラム旋回
まる3 加工位置で同期回転しながらテールストック下降、クランプ、加工開始」

(中央部図面)
従来機ZE15Aの説明として、「リングローダでワークロード後、歯合せ、加速、加工、減速を行う。」と記載され、加工工具側に歯合せセンサが示されている。
ZE15Bの説明として、「〈ツインテールストック〉/2つのテールストックが旋回し、交互にワークを交換/各テールストックは回転駆動(ビルトインスピンドルモータ)、上下動作(サーボモータ)、ワーククランプ(油圧)が可能」と記載され、旋回するカウンタコラムのワーク交換位置側に歯合わせセンサが示されている。

3.国際公開明細書
国際公開明細書には、イ号物件に関し、以下の記載がある。

「【0001】
本発明は、砥石による被加工歯車の研削を行うに先立って、ねじ状砥石と被加工歯車とが噛み合い可能な回転位相関係となるような歯合わせ動作を行うようにした歯車加工機械に関する。
背景技術
【0002】
従来から、熱処理後の歯車をねじ状砥石等により研削し、その歯車の歯面を効率良く仕上げ加工するものとして、歯車研削盤が提供されている。・・・。」

「【0008】
上記課題を解決する第1の発明に係る歯車加工機械は、
歯車加工用工具による被加工歯車の加工を行うに先立って、前記歯車加工用工具と被加工歯車とが噛み合い可能な回転位相関係となるような歯合わせ動作を行うようにした歯車加工機械において、
ベッドに回転可能に支持され、前記歯車加工用工具による加工を行うためのワーク加工位置に配置された被加工歯車を回転させるワーク加工用回転軸と、
被加工歯車を保持可能なテールストックと、
前記ベッドに回転可能に支持され、前記テールストックを、前記ワーク加工位置側と未加工の被加工歯車に交換するためのワーク交換位置側との間でワーク旋回軸周りに旋回させると共に、ワーク旋回軸方向に移動可能に支持するワーク旋回手段と、
前記ワーク旋回手段に設けられ、前記テールストックをワーク旋回軸方向に移動させるワーク移動手段と、
前記テールストックに設けられ、当該テールストックに保持された被加工歯車を回転させるワーク歯合わせ用回転軸と、
前記ワーク歯合わせ用回転軸によって回転された被加工歯車の回転位相を検出する回転位相検出手段と、
前記ワーク旋回手段及び前記ワーク移動手段によって、前記テールストックに保持された被加工歯車を前記ワーク加工位置に配置する前に、前記回転位相検出手段が検出した回転位相に基づいて、被加工歯車が前記歯車加工用工具と噛み合い可能な回転位相となるように、前記ワーク歯合わせ用回転軸の回転を制御する制御手段とを備える
ことを特徴とする。」

「【0013】
図1及び図2に示すように、歯車研削盤(歯車加工機械)1には、ベッド11が設けられており、このベッド11上には、コラム12が水平なX軸方向に移動可能に支持されている。コラム12には、サドル13が鉛直なZ軸方向に昇降可能に支持されており、このサドル13には、砥石ヘッド14がX軸方向及びZ軸方向と直交するY軸方向に移動可能に支持されている。そして、砥石ヘッド14には、砥石主軸15がY軸方向と平行な砥石回転軸B周りに回転可能に支持されており、この砥石主軸15の先端には、外周面に螺旋状にねじ山が形成されたねじ状砥石(歯車加工用工具)16が着脱可能に装着されている。」

「【0019】
更に、図1乃至図3に示すように、ベッド11上には、ワーク旋回装置(ワーク旋回手段)30が、テーブル21を挟んだコラム12の反対側に設けられている。詳細は後述するが、このワーク旋回装置30は、未加工のワークW1に交換するためのワーク交換位置P1と、その未加工のワークW1をねじ状砥石16により研削するためのワーク加工位置P2との間で、テールストック50が保持したワークW1を搬送するものである。
【0020】
ワーク旋回装置30は、固定部31と回転部32とを有している。固定部31は、ベッド11上に固定されており、回転部32は、その固定部31の上部に、軸受33,34を介して、ワーク旋回軸C2周りに回転可能に支持されている。
【0021】
回転部32の下端には、軸部32aが形成されている。この軸部32aの外周面と固定部31の内周面との間には、固定子と回転子とからなるワーク旋回用モータ35が設けられており、当該軸部32aの下端には、回転角度検出器36が設けられている。従って、ワーク旋回用モータ35を駆動させることにより、回転部32をワーク旋回軸C2周りに回転させることができる。このとき、回転部32の回転角度は、回転角度検出器36により検出されるようになっている。」

「【0023】
そして、ワーク交換台41には、歯合わせ用センサ(回転位相検出手段)43が取付板44を介して取り付けられている。この歯合わせ用センサ43は、近接センサ等の非接触式センサであって、ワークW1の歯部及び歯溝部(山谷)や左右両歯面の位置を検出するものである。・・・。
【0024】
一方、回転部32における対向した各側面には、Z軸方向に延在した左右一対のガイドレール37がそれぞれ設けられている。これら各組のガイドレール37には、テールストック50がZ軸方向に昇降可能に支持されており、・・・。
【0025】
テールストック50内には、円筒状のワーク歯合わせ用回転軸52が軸受53を介して回転可能に支持されており、その下端には、ワークアーバ54が接続されている。そして、これらワーク歯合わせ用回転軸52内及びワークアーバ54内には、ワーク保持用ロッド55がそれらの軸方向に摺動可能に支持されている。また、ワーク保持用ロッド55の下端には、係合部材56が接続されており、この係合部材56の下端には、球状の係合部56aが形成されている。なお、この係合部56aは、上述したワーククランプ用ロッド24の把持部24aと係合可能となっている。
【0026】
更に、ワークアーバ54の下端とワーク保持用ロッド55の下端との間には、これらの外周面に亘って、環状のコレット57が設けられている。コレット57は、ワークW1をその内側から保持可能とするものであって、その外径は、ワークW1の内径よりも僅かに小さく形成されている。」

「【0031】
また、テールストック50の内周面とワーク歯合わせ用回転軸52(ばね収容部52a)の外周面との間には、固定子と回転子とからなるワーク歯合わせ用モータ60が設けられており、当該ワーク歯合わせ用回転軸52の上端には回転角度検出器60が設けられている。従って、ワーク歯合わせ用モータ60を駆動させることにより、ワーク歯合わせ用回転軸52と共にワーク保持用ロッド55が回転するため、コレット57により保持したワークW1を回転させることができる。このとき、ワーク歯合わせ用回転軸52の回転角度は、回転角度検出器61により検出されるようになっている。」

「【0033】
従って、歯車研削盤1を用いてワークW1の研削を行う場合には、図3に示すように、先ず、ワーク交換位置P1であるワーク取付治具42上において、加工済みのワークW1から未加工のワークW1に交換する。
【0034】
次いで、ワーク交換位置P1の軸上に旋回済みのテールストック50を下降させ、そのコレット57をワークW1の内側に配置する。
【0035】
そして、ワーク保持用ばね58の作用により、コレット57を拡径させて、ワークW1を保持した後、テールストック50を僅かに上昇させる。
【0036】
次いで、ワーク歯合わせ用モータ60を駆動させ、ワークW1を低速の歯合わせ用回転速度で回転させる。このとき、歯合わせ用センサ43によって、ワークW1の歯(山谷)からその回転位相誤差が検出される。
【0037】
そして、検出したワークW1の回転位相誤差に基づいて、ワーク歯合わせ用モータ60をその回転位相誤差が修正されるように更に駆動させ、ワークW1を高速の加工用回転速度で回転させる。
【0038】
これと同時に、テールストック50を更に上昇させた後、ワーク旋回用モータ35を駆動させ、ワークW1を保持したテールストック50をワーク旋回軸C2周りに旋回させる。これにより、ワークW1が、ワーク加工位置P2側に移動することとなり、ワーク回転軸C1と同軸上に配置されることになる。
【0039】
次いで、テールストック50を下降させ、ワークW1をワーク加工位置P2となるワーク加工用回転軸22上に配置する。
【0040】
このとき、係合部材56の係合部56aがワーククランプ用ロッド24の把持部24aに把持されると共に、シリンダ室22aの上側空間部への油圧の供給により、ワーククランプ用ロッド24が下方に向けて摺動するため、ワーク加工用回転軸22とワークアーバ54と間で、ワークW1がクランプされることになる。これにより、ワークW1は、クランプされた状態で、ワーク回転軸C1周りに加工用回転速度で回転することになる。なお、ワーク加工用回転軸22は、ワークW1がクランプされる前に予め上記加工用回転速度で回転している。
【0041】
そして、コラム12、サドル13、砥石ヘッド14、砥石主軸15を駆動させ、ねじ状砥石16を、砥石回転軸Bに回転させながら、クランプされたワークW1に噛み合わせる。
【0042】
次いで、このような噛み合い状態から、ねじ状砥石16をZ軸方向に揺動させることにより、当該ねじ状砥石16の刃面により、ワークW1の歯面が研削される。」

4.イ号物件の認定
上記のとおり、カタログ、及び国際公開明細書には、装置の構造とその動作が記載されていることから、イ号物件は「方法」、「装置」のいずれにも該当する。
なお、カタログ及び国際公開明細書の記載に矛盾するところはないから、用語は国際公開明細書の記載に基づくものとした。

(1)「方法」としてのイ号物件
イ号物件を「方法」と解し、本件特許発明1の分説A.?E.に対応させて整理すると、イ号物件は、以下の構成を具備するものと認められる(以下「構成ア」などという。)。

「ア.ベッド11と、
イ.このベッド11上で水平なX軸方向に移動するコラム12と、
ウ.このコラム12に、鉛直なZ軸方向に昇降可能に支持されたサドル13と、このサドル13に、Y軸方向に移動可能に取り付けられた砥石ヘッド14と、砥石ヘッド14に回転可能に取り付けられてねじ状砥石16を装着する砥石主軸15と、
エ.前記ベッド11上においてテールストック50が保持したワークW1を、交換位置P1と加工位置P2との間で、ワーク旋回軸C2周りの旋回により搬送するワーク旋回装置30と、
オ.このワーク旋回装置30の回転部32における対向した各側面に取り付けられたテールストック50と、テールストック50内に回転可能に支持された歯合わせ用回転軸52と、歯合わせ用回転軸52の下端に接続されたワークアーバ54であって、それぞれがワーク歯合わせ用モータ60で駆動される歯合わせ用回転軸52と、
カ.歯合わせ用センサ43を備える仕上げ装置に配置されたワークW1を機械加工する方法であって、
キ.前記テールストック50に保持されたワークW1を前記ワーク加工位置P2に配置する前に、前記歯合わせ用センサ43が検出した検出結果に基づいて、ワークW1が前記ねじ状砥石16と噛み合い可能な回転位相となるように、前記歯合わせ用回転軸52の回転を制御する方法。」
(以下「イ号方法」という。)

(2)「装置」としてのイ号物件
イ号物件を「装置」と解し、本件特許発明3の分説a.?f.に対応させて整理すると、イ号物件は、以下の構成を具備するものと認められる(以下「構成サ」などという。)。

「サ.ベッド11と、
シ.このベッド11に、コラム12、サドル13、砥石ヘッド14を介して設けられ砥石回転軸Bの回りに回転されるねじ状砥石16を装着する砥石主軸15と、
ス.ワーク旋回用モータ35によって旋回されベッド11上においてテールストック50が保持したワークW1を、交換位置P1と加工位置P2との間で、ワーク旋回軸C2周りの旋回により搬送するワーク旋回装置30と、
セ.このワーク旋回装置30の回転部32における対向した各側面に取り付けられたテールストック50と、テールストック50内に回転可能に支持された歯合わせ用回転軸52と、歯合わせ用回転軸52の下端に接続されワークW1を保持するワークアーバ54であって、それぞれがワーク歯合わせ用モータ60で駆動される歯合わせ用回転軸52とを備える、
ソ.ワークW1を機械加工する装置であって、
タ.前記両歯合わせ用回転軸52の上端には回転角度検出器61が設けられ回転角度が検出されるようにされ、前記ワークW1が加工位置P2以外にある、ワークW1の歯部及び歯溝部(山谷)や左右両歯面の位置を検出する歯合わせ用センサ43を備えた装置。」
(以下「イ号装置」という。)

第4.当審の対比・判断
1.本件特許発明1について
イ号物件(イ号方法)が本件特許発明1の構成要件AないしGを充足するか否かについて、構成要件Aをイ号物件の構成アに、構成要件Bを構成イに、のごとく順次対応させて、検討する。

(1)構成要件Aについて
イ号物件の「ベッド11」が本件特許発明1の「装置台」に相当することは技術常識に照らして明らかである。
そうすると、イ号物件の構成アは、本件特許発明1の構成と一致するから、構成要件Aを充足する。

(2)構成要件Bについて
イ号物件の「コラム12」は「ベッド11(装置台)上で水平なX軸方向に移動する」ものであるから、本件特許発明1の「装置台上で動く」「第1のスライド」に相当するものであることは明らかである。
そうすると、イ号物件の構成イは、本件特許発明1の構成と一致するから、構成要件Bを充足する。

(3)構成要件Cについて
イ号物件の「ねじ状砥石16を装着する砥石主軸15」が、本件特許発明1の「仕上げ工具を留める仕上げ工具用スピンドル」に相当することは明らかである。
イ号物件の「砥石主軸15」は、「コラム12(第1のスライド)に、鉛直なZ軸方向に昇降可能に支持されたサドル13と、このサドル13に、Y軸方向に移動可能に取り付けられた砥石ヘッド14と、砥石ヘッド14に回転可能に取り付けられ」る、すなわち第1のスライドに、「サドル13、砥石ヘッド14を介して」取り付けられるものである。
本件特許発明1の「仕上げ工具を留める仕上げ工具用スピンドル」と「第1のスライド」との関係について、特許明細書の段落0012、図2を参照すると、仕上げ工具用スピンドル17は、第2のスライド25、キャリヤ20を介して、第1のスライド15に取り付けられている。
したがって、本件特許発明1の「取り付けられ」とは、他の部材を介して間接的に取り付けられるものを含むものである。
そうすると、イ号物件の構成ウは、本件特許発明1の構成と一致するから、構成要件Cを充足する。

(4)構成要件Dについて
イ号物件の「ワーク旋回装置30」は、「テールストック50が保持したワークW1を、交換位置P1と加工位置P2との間で、ワーク旋回軸C2周りの旋回により搬送する」ものであるから、本件特許発明1の「少なくとも2つの位置に移動可能に設置される」「キャリヤ」に相当する。
そうすると、イ号物件の構成エは本件特許発明1の構成と一致するから、構成要件Dを充足する。

(5)構成要件Eについて
イ号物件の「ワークアーバ54」は、「歯合わせ用回転軸52の下端に接続され」ることから、「歯合わせ用回転軸52」と一体的に回転する。そして、一体回転する両者は、「テールストック50内に回転可能に支持され」ており、「テールストック50」は、「ワーク旋回装置30の回転部32における対向した各側面に取り付けられ」ている。
すなわち、「歯合わせ用回転軸52」及び「ワークアーバ54」は、ワーク旋回装置30(キャリヤ)の「対向した各側面」に、テールストック50を介して、回転可能に取り付けられることになる。「歯合わせ用回転軸52」及び「ワークアーバ54」は、「対向した各側面」に取り付けられるのであるから、国際公開公報の図1?3からも明らかなとおり、「2本」ということになる。
イ号物件の「ワークアーバ54」は、国際公開公報の段落0026、0040の記載からみて、ワークW1を保持するものである。
また、本件特許発明1の「被加工物用スピンドル」は、特許明細書の段落0007、0008の記載からみて、「被加工物を留める」ものである。
よって、イ号物件の一体回転する「歯合わせ用回転軸52」及び「ワークアーバ54」は、本件特許発明1の「被加工物用スピンドル」に相当する。
イ号物件の「ワーク歯合わせ用モータ60」は、本件特許発明1の「モータ」に相当する。
そうすると、イ号物件の構成オは本件特許発明1の構成と一致するから、構成要件Eを充足する。

(6)構成要件Fについて
イ号物件の「歯合わせ用センサ43」は、国際公開公報の段落0023、0036の記載からみて、ワークW1の歯部及び歯溝部(山谷)や左右両歯面の位置を検出するものである。
また、本件特許発明1の「センタリングプローブ」は、特許明細書の段落0008の記載からみて、「被加工物の歯のフランクの位置を測定する」ものである。
よって、イ号物件の「歯合わせ用センサ43」は、本件特許発明1の「センタリングプローブ」に相当する。
イ号物件の「ワークW1」は、本件特許発明1の「機械加工前の歯の付いた被加工物」に相当する。
そうすると、イ号物件の構成カは本件特許発明1の構成と一致するから、構成要件Fを充足する。

(7)構成要件Gについて
イ号物件の「ワーク加工位置P2」とは、ワークW1(未加工の被加工物)をねじ状砥石16(仕上げ工具)で加工する位置であるから、イ号物件の「テールストック50に保持されたワークW1を前記ワーク加工位置P2に配置する前」は、本件特許発明1の「被加工物用スピンドルの一本に新しく留められた未加工の被加工物について、前記未加工の被加工物に前記仕上げ工具が入り込む位置にキャリヤが到達する前」に相当する。
イ号物件の「ワークW1が前記ねじ状砥石16と噛み合い可能な回転位相となるように、前記歯合わせ用回転軸52の回転を制御する」は、本件特許発明1の「歯合わせ動作の歯の隙間に衝突することなく入り込めるようにするために必要な前記被加工物用スピンドルの操作が」「行われる」に相当する。
そうすると、イ号物件の構成キは本件特許発明1の構成と一致するから、構成要件Gを充足する。

(8)まとめ
よって、イ号物件の構成アないしキは、いずれも本件特許発明1の構成要件AないしGを充足する。

2.本件特許発明3について
イ号物件(イ号装置)が本件特許発明3の構成要件aないしfを充足するか否かについて、同様に検討する。

(1)構成要件aについて
イ号物件の「ベッド11」が本件特許発明3の「装置台」に相当することは技術常識に照らして明らかである。
そうすると、イ号物件の構成サは、本件特許発明3の構成と一致するから、構成要件aを充足する。

(2)構成要件bについて
イ号物件の「回転軸B」は本件特許発明3の「第1の軸」に相当し、同様に「ねじ状砥石16を装着する砥石主軸15」は「仕上げ工具を留めるための仕上げ工具用スピンドル」に相当するものであることは明らかである。
イ号物件の「砥石主軸15(仕上げ工具用スピンドル)」は、ベッド11(装置台)に「コラム12、サドル13、砥石ヘッド14を介して」設けられている。
本件特許発明3の「仕上げ工具用スピンドル」と「装置台」との関係について、特許明細書の段落0012、図2を参照すると、仕上げ工具用スピンドル17は、第2のスライド25、キャリヤ20、第1のスライド15を介して、装置台1に設けられている。
したがって、本件特許発明3の「設けられ」とは、他の部材を介して間接的に設けられるものを含むものである。
イ号物件の「砥石主軸15(仕上げ工具用スピンドル)」は「回転軸B(第1の軸)の回りに回転される」ことから、「何らかの駆動手段」を有することは明らかである。
本件特許発明3の「第1のモータ」は、特許明細書の段落0012には「サーボモータ」の例が記載されているが、サーボモータである必然性については何ら記載されていないから、駆動手段であれば良いものである。
したがって、イ号物件の構成シは、本件特許発明3の構成と一致するから、構成要件bを充足する。

(3)構成要件cについて
イ号物件の「ワーク旋回用モータ35」は本件特許発明3の「第2のモータ」に相当し、同様に「旋回され」は「動かされ」に相当するものであることは明らかである。
イ号物件の「ワーク旋回装置30」は、「テールストック50が保持したワークW1を、交換位置P1と加工位置P2との間で、ワーク旋回軸C2周りの旋回により搬送する」ものであるから、本件特許発明1の「少なくとも2つの位置に移動可能に設置される」「キャリヤ」に相当する。
そうすると、イ号物件の構成スは本件特許発明3の構成と一致するから、構成要件cを充足する。

(4)構成要件dについて
イ号物件の「ワークアーバ54」は「ワークW1を保持」し、「歯合わせ用回転軸52の下端に接続され」ることから、「歯合わせ用回転軸52」と一体的に回転する。そして、一体回転する両者は、「テールストック50内に回転可能に支持され」ており、「テールストック50」は、「ワーク旋回装置30の回転部32における対向した各側面に取り付けられ」ている。
すなわち、「歯合わせ用回転軸52」及び「ワークアーバ54」は、「被加工物を留める」ものであり、ワーク旋回装置30(キャリヤ)の「対向した各側面」に、すなわち「互いに距離をおいて設置され」ており、テールストック50を介して、回転可能に取り付けられることになる。「歯合わせ用回転軸52」及び「ワークアーバ54」は、「対向した各側面」に取り付けられるのであるから、国際公開公報の図1?3からも明らかなとおり、「2本」ということになる。
よって、イ号物件の一体回転する「歯合わせ用回転軸52」及び「ワークアーバ54」は、本件特許発明3の「被加工物用スピンドル」に相当する。
イ号物件の「ワーク歯合わせ用モータ60」は、本件特許発明3の「第3のモータ」に相当する。
そうすると、イ号物件の構成セは本件特許発明3の構成と一致するから、構成要件dを充足する。

(5)構成要件eについて
イ号物件の「ワークW1」は、本件特許発明3の「機械加工前の歯の付いた被加工物」に相当する。
そうすると、イ号物件の構成ソは本件特許発明3の構成と一致するから、構成要件eを充足する。

(6)構成要件fについて
イ号物件の一体回転する「歯合わせ用回転軸52」及び「ワークアーバ54」は本件特許発明3の「被加工物用スピンドル」に相当し、イ号物件の「回転角度検出器61」は本件特許発明3の「ロータリエンコーダ」に相当する。
イ号物件の「回転角度検出器61」は、「回転角度」を検出するために、「歯合わせ用回転軸52(被加工物用スピンドル)の上端に」「設けられ」るものであるから、「ロータリエンコーダ」と「被加工物用スピンドル」とは「接続」されたものと言える。
よって、イ号物件の「両歯合わせ用回転軸52の上端には回転角度検出器61が設けられ回転角度が検出されるようにされ」は、本件特許発明3の「両被加工物用スピンドルはそれぞれが1個のロータリエンコーダに接続され」に相当する。
イ号物件の「ワークW1が加工位置P2以外にある」は本件特許発明3の「被加工物が前記仕上げ工具に入りこむことができる前記キャリヤの位置以外にある」に相当し、同様に「ワークW1の歯部及び歯溝部(山谷)や左右両歯面の位置を検出する」「歯合わせ用センサ43」は「被加工物の歯のフランクの位置を測定する」「センタリングプローブ」に相当する。
そうすると、イ号物件の構成タは本件特許発明3の構成と一致するから、構成要件fを充足する。

(7)まとめ
よって、イ号物件の構成サないしタは、いずれも本件特許発明3の構成要件aないしfを充足する。

第6.むすび
以上のとおり、イ号物件(イ号方法)は、本件特許発明1の構成要件AないしGの全てを充足し、イ号物件(イ号装置)は、本件特許発明3の構成要件aないしfの全てを充足するから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2012-12-07 
出願番号 特願2000-587920(P2000-587920)
審決分類 P 1 2・ 1- YA (B23F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 泰二郎  
特許庁審判長 豊原 邦雄
特許庁審判官 千葉 成就
長屋 陽二郎
登録日 2010-03-19 
登録番号 特許第4475817号(P4475817)
発明の名称 機械加工前のギヤ等の歯付き被加工物を機械加工する方法および装置  
代理人 渡辺 喜平  
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