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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) H04N |
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管理番号 | 1268303 |
判定請求番号 | 判定2012-600038 |
総通号数 | 158 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2013-02-22 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2012-10-05 |
確定日 | 2013-01-08 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3549195号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面及びその説明書に示す「『音声認識によるSaas型議事録作成支援サービス』によって提供される音声付き音声認識結果ファイルを保持した記録媒体」は、特許第3549195号発明の請求項6に記載された発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 本件判定請求の趣旨は、 イ号図面並びにその説明書に示す、「『音声認識によるSaas型議事録作成支援サービス』によって提供される音声付き音声認識結果ファイルを保持した記録媒体」は、特許第3549195号(以下、本件特許という)の請求項6に記載された発明(以下、本件特許発明という)の技術的範囲に属する、との判定を求める。 というものである。 第2 本件特許発明 本件特許発明は、本件特許明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項6に記載された次のとおりのものと認める。 [本件特許発明](請求項6) 開始位置と終了位置とによって再生個所を特定可能な記録媒体(a)の特定部分に対応する句(p1)における当該開始位置情報及び終了位置情報、及び句の関連情報(P)を記録したことを特徴とする記録媒体(b)(c)。 第3 イ号図面及びその説明書に示す「『音声認識によるSaas型議事録作成支援サービス』によって提供される音声付き音声認識結果ファイルを保持した記録媒体」 請求人が判定を求めている、イ号図面及びその説明書に示す「『音声認識によるSaas型議事録作成支援サービス』によって提供される音声付き音声認識結果ファイルを保持した記録媒体」(以下、「イ号物件」ともいう)は、イ号物件説明書(甲第12号証)、甲第3ないし11号証の記載から、「サンプル結果.fvp」をサンプルではなく、本来の認識結果ファイル「・・・.fvp」として、次のとおりのものと認める。 [イ号物件] 議事録音声の特定部分に対応する、開始時間(stimeプロパティ)と終了時間(etimeプロパティ)の時間情報、および当該特定部分の議事内容である文字情報( を記録した記録媒体。 第4 対比判断 1 本件特許発明について 本件特許発明の記録媒体(b)(c)は、 「開始位置と終了位置とによって再生個所を特定可能な記録媒体(a)の特定部分に対応する句(p1)における当該開始位置情報及び終了位置情報」 及び 「句の関連情報(P)」 を記録する。 本件特許発明の記録媒体(b)(c)は、本件特許明細書の発明の詳細な説明において「記録媒体b」、「記録媒体(b)」として説明される記録媒体b、もしくは、「記録媒体c」として説明される記録媒体cをいうものと認められる。 記録媒体(b)について、 発明の詳細な説明において、 「本発明は、開始位置と終了位置とによって特定部分を再生可能な記録媒体(a)を再生するための記録媒体再生装置において、・・記録媒体(a)及び記録媒体(b)は、記録媒体制御装置を介してコンピュータに接続され、前記記録媒体(b)は、記録媒体(a)の前記特定部分に対応する句(p1)の開始位置及び終了位置の位置情報と句(p1)に関連づける情報(P)とを有するフレームカードと・・を備え、・・前記記録媒体(a)の特定部分を、音響装置若しくは表示装置へ再生出力可能とする・・」(【0011】)、 「本発明の効果の特徴は、以上のすべての機能について、既存の記録媒体aをそのまま活用できることにある。すでに数多く製作されている記録媒体aに対して、必要に応じて、画像や文字を関連付けた制御ファイルa1を作成することで、記録媒体aの資源を引き出し、数倍する価値を生み出すことができ、こうした記録媒体aに対する価値創造的な編集作業を、プレーヤーMを使うことにより、多くのユーザーが実現できることにある。」(【0042】) 等と説明され、 また、 審査段階における平成15年9月4日付け意見書においても、「3 本願発明について」において「記録媒体aを再生する装置、及び、再生方法、再生される記録媒体に関するものです。」と説明されることから、 本件特許発明の記録媒体(b)は、「既存の記録媒体aをそのまま活用できる」ように、記録媒体(a)を再生するための記録媒体であると認められる。 記録媒体(c)について、 発明の詳細な説明において、「本発明を実現するには記録媒体aと制御ファイルa1とが同一の制御系の中で同時に開かれなければならないので、記録媒体aと制御ファイルa1に同一の識別番号を付与し、制御系で記録媒体aが開かれたときには、それと同一の識別番号を持つ制御ファイルa1を制御系の中から検索して、自動的に開くか、開く準備をする。その逆に制御ファイルa1が選択されたときには、それと同一の識別番号を持つ記録媒体aをシステムのなかから検索し、それを開く。あるいは、記録媒体aと制御ファイルa1の内容を同時に保持する新しい記録媒体cを利用する。」(【0017】)とされ、記録媒体(b)の使用においてもそうである「同一の識別番号を持つ記録媒体aをシステムのなかから検索し、それを開く。」に対して、「あるいは」という対案として、「記録媒体aと制御ファイルa1の内容を同時に保持する新しい記録媒体c」と説明される。 「記録媒体c」の使用について発明の詳細な説明は詳細を記載していないが、この記載によると、「記録媒体c」は、「あるいは」という対案である「同一の識別番号を持つ記録媒体aをシステムのなかから検索し、それを開く。」ではなく、同じ媒体である記録媒体cに「記録媒体aと制御ファイルa1の内容を同時に保持する」ことで、「同一の識別番号を持つ記録媒体aをシステムのなかから検索し、それを開く。」の「媒体の検索」を行わないで、記録媒体cの中から再生を行うことが想定される。 しかしながら、記録媒体cも、発明の詳細な説明全体の記載ぶりや上記意見書の説明から、記録媒体(a)を再生するための「新しい」記録媒体cであって、「すでに数多く製作されている記録媒体aに対して、必要に応じて、画像や文字を関連付けた制御ファイルa1を作成することで、記録媒体aの資源を引き出し、数倍する価値を生み出すことができ、こうした記録媒体aに対する価値創造的な編集作業を、プレーヤーMを使うことにより、多くのユーザーが実現できる」ための記録媒体cと認められ、本件特許明細書においては、記録媒体cが記録媒体c自体の中に保持する内容を再生を行うものであっても、「記録媒体aと制御ファイルa1の内容を同時に保持する」ことで記録媒体cが記録媒体c自体の中に保持する記録媒体aの内容を再生するものであり、すなわち、記録媒体cは、記録媒体c自体の中に保持する記録媒体aの内容を再生を行うことで、記録媒体aを再生するための記録媒体であると説明されていると認められる。 このようであるから、本件特許発明の「記録媒体(b)(c)」は、記録媒体(a)を再生するためのものであり、請求項6が「記録媒体aの内容が記録されている場所は何ら特定していません。」(判定請求書7頁、4行)としても、本件特許発明の「記録媒体(b)(c)」が、上記のように、記録媒体aの内容の記録されている場所に関わらず記録媒体aの内容を再生することで、「記録媒体(a)」という記録媒体を再生するためのものであると理解され、それと共に、請求項6において「・・記録媒体(a)の特定部分に対応する句(p1)における当該開始位置情報及び終了位置情報、・・を記録したことを特徴とする記録媒体(b)(c)」と特定することから、本件特許発明は、「既存の記録媒体aをそのまま活用できる」ように、「記録媒体(a)」を再生するための技術思想としての「記録媒体(b)(c)」であると認められる。 2 イ号物件について 甲第9号証(別紙SaaS型議事録作成支援サービス仕様書)Page1によると、「音声認識結果をダウンロード」とあり、甲第3号証(アプリケーション「VoiceGraphy/編集ツール」のインストール)で編集ツールがダウンロードされ、「C:\・・・」と表示されるCドライブに「サンプル結果.fvp」が記録されていると同様に、音声付き音声認識結果ファイルは、編集用ツールであるPCのCドライブ(普通には記録媒体としてハードディスクが想定される)の記録媒体に記録されると認められる。イ号物件の記録媒体を以下、「記録媒体(ハードディスク)」ともいう。 3 対比判断 本件特許発明の句(p1)は、「記録媒体(b)(c)」においての「再生の対象」であると認められると共に、「開始位置と終了位置とによって再生個所を特定可能な記録媒体(a)の特定部分に対応する句」であって、「記録媒体(a)」において「開始位置と終了位置とによって」「特定」される「再生個所」に存在して再生される記録媒体(a)においての「再生の対象」の部分に「対応する」ものと認められる。 イ号物件の「記録媒体(ハードディスク)」には、音声認識結果ファイル「・・・.fvp」が記録され、VoiceGraphy/編集ツールで音声認識結果ファイル「・・・.fvp」を用いて、例えば「只今より教育文化常任委員会を開催します。」という議事録音声が再生(甲第7号証7、8頁)され、イ号物件の「記録媒体(ハードディスク)」には再生の対象として例えば「只今より教育文化常任委員会を開催します。」という議事録音声(0000.wma等で記録。甲第5、6号証)が認められ、イ号物件の音声認識結果ファイル「・・・.fvp」の議事録音声は、「記録媒体(ハードディスク)」の再生の対象であるといえるから、本件特許発明の句(p1)と、「記録媒体(b)(c)」の「再生の対象」であるという点では一致する。 しかしながら、本件特許発明の句(p1)は「記録媒体(b)(c)」の「再生の対象」ではあるが、「開始位置と終了位置とによって再生個所を特定可能な記録媒体(a)の特定部分に対応する句」である。そして、本件特許発明は、上記のように、この「記録媒体(a)」を再生するための技術思想であるといえ、本件特許発明の句(p1)は「記録媒体(b)(c)」の「再生の対象」であり、「記録媒体aの内容が記録されている場所は何ら特定していません。」ものとしても、本件特許発明において、この句(p1)は「開始位置と終了位置とによって再生個所を特定可能な記録媒体(a)の特定部分に対応する」ものであって、このことではじめて本件特許発明の効果を生じるものといえる。 イ号物件の「議事録音声」は記録媒体(ハードディスク)の再生の対象であるが、記録媒体(ハードディスク)の再生は、議事録編集のため、また、音声付き議事録として社内向けWebで再生されるために行われる。 イ号物件の「議事録音声」は、議事録の認識結果(例えば「只今より教育文化常任委員会を開催します。」のテキスト)と共に記録媒体(ハードディスク)に記録され、記録媒体(ハードディスク)に記録された「『音声認識によるSaas型議事録作成支援サービス』によって提供される」議事録として再生される。 このように、イ号物件における「議事録音声」の再生は、「『音声認識によるSaas型議事録作成支援サービス』によって提供される」議事録として再生されるのであり、「『音声認識によるSaas型議事録作成支援サービス』によって提供される」議事録は、『音声認識によるSaas型議事録作成支援サービス』によって提供されてはじめて記録媒体(ハードディスク)に記録されるのであるから、イ号物件における「議事録音声」の再生は、議事録が提供された記録媒体である記録媒体(ハードディスク)の再生のためになされるものと認められる。このことを本件特許発明に対応付けてみると、記録媒体(b)(c)の再生のために再生がなされるということになり、記録媒体(a)の再生のために再生がなされるということはできない。 イ号物件において「議事録音声」が「『音声認識によるSaas型議事録作成支援サービス』によって提供される」ために、発言した音声の音声ファイルをアップロードするが、この際、収録は「ICレコーダに収録」(甲第9号証page1)され、収録された音声は、ICレコーダの記憶媒体であるICメモリに記録され、また、アップロードされた音声ファイルはアップロード先である「弊社」において、何らかの記録媒体に記録されることが想定されるが、ICメモリや「弊社」の記録媒体は、「議事録音声」が「『音声認識によるSaas型議事録作成支援サービス』によって提供される」ための素材を記録するものと認められ、提供された議事録音声の再生は、上記したように、記録媒体(ハードディスク)の再生のために、記録媒体(ハードディスク)自体を再生することでなされると認められ、提供された議事録としてICメモリや「弊社」の記録媒体を再生することを想定するものとは認められず、ICメモリや「弊社」の記録媒体を再生するための記録媒体(ハードディスク)であるということはできない。すなわち、ICメモリや「弊社」の記録媒体を本件特許発明の記録媒体(a)ということはできない。 したがって、イ号物件 「議事録音声の特定部分に対応する、開始時間(stimeプロパティ)と終了時間(etimeプロパティ)の時間情報、および当該特定部分の議事内容である文字情報( を記録した記録媒体。」 には、本件特許発明の「記録媒体(a)」に対応する構成は認められない。 このようであるから、イ号物件には、本件特許発明の「記録媒体(a)」に対応する構成は認められず、イ号物件は本件特許発明の技術的範囲に属するということができない。 したがって、イ号物件は本件特許発明の技術的範囲に属しない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、イ号図面並びにその説明書に示す、「『音声認識によるSaas型議事録作成支援サービス』によって提供される音声付き音声認識結果ファイルを保持した記録媒体」は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2012-12-21 |
出願番号 | 特願2001-55901(P2001-55901) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 明 |
特許庁審判長 |
奥村 元宏 |
特許庁審判官 |
小池 正彦 松尾 淳一 |
登録日 | 2004-04-30 |
登録番号 | 特許第3549195号(P3549195) |
発明の名称 | 記録媒体再生装置、記録媒体再生方法、及び記録媒体 |
代理人 | 酒匂 禎裕 |
代理人 | 工藤 一郎 |
代理人 | 高崎 仁 |