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審決分類 審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  G01N
審判 全部無効 2項進歩性  G01N
管理番号 1268568
審判番号 無効2012-800035  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-03-27 
確定日 2012-11-28 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4457100号発明「照明装置」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件の特許第4457100号に係る出願は,平成18年11月14日(優先日:平成18年1月30日)に特許出願され,その後の平成22年2月12日に,その請求項1?10に係る発明につき,特許の設定登録がなされたものである。
これに対して,請求人より平成24年3月27日に本件無効審判の請求がなされたものであり,本件無効審判における経緯は,以下のとおりである。

平成24年 3月27日 無効審判請求(甲第1?10号証)
6月26日 答 弁 書(乙第1号証)
6月26日 訂正請求
7月25日 弁駁書(甲第11号証)
9月 4日 審理事項通知書
10月 9日 口頭審理陳述要領書(請求人)
10月 9日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
10月16日 第1回口頭審理
10月16日 審理終結

第2 平成24年6月26日付け訂正請求(以下「本件訂正請求」という)について
1 本件訂正請求の内容
(1)訂正事項1
訂正事項1は,本件特許の請求項1について,
「所定方向に並設された複数のLEDと、各LEDの並設方向に延びるように設けられた集光レンズとを備え、各LEDの光が集光レンズを通過して集光レンズから所定の距離だけ離れた位置であって前記LEDの並設方向に撮像範囲の長手を有するように配置されたラインセンサカメラの撮像位置に線状に集光し,これにより前記撮像位置を照明しこれをラインセンサカメラで撮像するように構成されたラインセンサカメラ撮像位置照明用の照明装置において、
この照明装置は、前記各LEDから前記集光位置までの光の経路中に光を主に各LEDの並設方向に拡散させる拡散レンズを備えると共に、前記集光レンズの各LED側の面によって受光レンズ部が形成され、
受光レンズ部を、各LED側に凸面状に形成するとともに各LEDの並設方向に延びるように形成し、各LEDにおいて他の照射角度範囲よりも光の照射量を多くした所定の照射角度範囲から照射される光を受光可能に配置し、
前記拡散レンズを複数のレンズ部から形成し、各レンズ部を、各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成するとともに、光の経路と交差する所定の面上に並ぶように配置し、
前記各レンズ部を、互いに近傍に配置されたレンズ部同士で各LEDの並設方向への曲率半径が異なるように形成した
ことを特徴とするラインセンサカメラ撮像位置照明用の照明装置。」
と訂正するものである。(なお下線部は訂正箇所を示す。以下同様)

(2)訂正事項2
訂正事項2は,本件特許明細書の段落【0008】について,
「【0008】
本発明は前記目的を達成するために、所定方向に並設された複数のLEDと、各LEDの並設方向に延びるように設けられた集光レンズとを備え、各LEDの光が集光レンズを通過して集光レンズから所定の距離だけ離れた位置であって前記LEDの並設方向に撮像範囲の長手を有するように配置されたラインセンサカメラの撮像位置に線状に集光し,これにより前記撮像位置を照明しこれをラインセンサカメラで撮像するように構成されたラインセンサカメラ撮像位置照明用の照明装置において、この照明装置は、前記各LEDから前記集光位置までの光の経路中に光を主に各LEDの並設方向に拡散させる拡散レンズを備えると共に、前記集光レンズの各LED側の面によって受光レンズ部が形成され、受光レンズ部を、各LED側に凸面状に形成するとともに各LEDの並設方向に延びるように形成し、各LEDにおいて他の照射角度範囲よりも光の照射量を多くした所定の照射角度範囲から照射される光を受光可能に配置し、前記拡散レンズを複数のレンズ部から形成し、各レンズ部を、各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成するとともに、光の経路と交差する所定の面上に並ぶように配置し、前記各レンズ部を、互いに近傍に配置されたレンズ部同士で各LEDの並設方向への曲率半径が異なるように形成している。」
と訂正するものである。

2 当審の本件訂正請求についての判断
(1)訂正事項1について
ア 「位置に線状に集光するようにした照明装置において」を「位置であって前記LEDの並設方向に撮像範囲の長手を有するように配置されたラインセンサカメラの撮像位置に線状に集光し,これにより前記撮像位置を照明しこれをラインセンサカメラで撮像するように構成されたラインセンサカメラ撮像位置照明用の照明装置において」とする訂正

該訂正は,訂正前の発明の特定事項である「各LEDの光が線状に集光する位置」について,「前記LEDの並設方向に撮像範囲の長手を有するように配置されたラインセンサカメラの撮像位置」という限定を加えるものであり,特許請求の範囲の減縮を目的としたものであることは明らかである。
そして,本件特許明細書の記載である
「【0001】
本発明は、例えば紙、鋼板などの帯状部材を成形する工程において、帯状部材の欠陥の有無を検査するためのラインセンサカメラの照明装置に関するものである。」
および
「【0025】
このように、本実施形態によれば、X方向に並設された各LED10から第2レンズ30までの光の経路中に拡散レンズ40が設けられ、拡散レンズ40は光を主にX方向に拡散させるとともに、拡散レンズ40を通過した光は第2レンズ30によって集光位置L1に集光されることから、X方向に並設された複数のLED10の光を無用に減衰させることなく集光位置L1に集光させることができ、しかも集光位置L1における光量のむらを低減することができる。これにより、例えば連続的に成形されて長手方向に高速で移動する帯状部材の表面に各LED10の光を集光させるとともに、光の照射されている部分をラインセンサカメラで撮像することにより、帯状部材の欠陥を高速且つ確実に検知することができ、生産性の向上及び品質の向上を図る上で極めて有利である。」からみて,「撮像範囲」および「撮像位置」なる用語が記載されていないものの,「検査するためのラインセンサカメラ」で撮像することが記載されており,該「ラインセンサカメラ」が「撮像範囲」および「撮像位置」を有することは技術常識であるから,上記訂正は,新たな技術的意義を追加することはなく,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内においてしたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないといえる。

イ 「前記各LEDから集光位置までの光の経路中に光を主に各LEDの並設方向に拡散させる拡散レンズを設けるとともに,集光レンズの各LED側の面によって受光レンズ部を形成し」を「この照明装置は、前記各LEDから前記集光位置までの光の経路中に光を主に各LEDの並設方向に拡散させる拡散レンズを備えると共に、前記集光レンズの各LED側の面によって受光レンズ部が形成され、」とする訂正

該訂正は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものであることは明らかである。

ウ 「ことを特徴とする照明装置。」を「ことを特徴とするラインセンサカメラ撮像位置照明用の照明装置。」とする訂正

該訂正は,上記「ア」にて検討した限定にともなう訂正であって,明りょうでない記載の釈明を目的とするものであることは明らかである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は,訂正事項1にともない,段落【0009】の記載を訂正するものであって,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

(3)まとめ
したがって,上記訂正事項1および2は,平成23年改正前の特許法134条の2第5項で読み替えて準用する特許法126条3項および4項の規定に適合するから,当該訂正を認める。

第3 本件発明
以上のように,本件訂正請求が認められることから,本件特許発明1?10は,本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。以下,「本件発明1」?「本件発明10」という。

【請求項1】
所定方向に並設された複数のLEDと、各LEDの並設方向に延びるように設けられた集光レンズとを備え、各LEDの光が集光レンズを通過して集光レンズから所定の距離だけ離れた位置であって前記LEDの並設方向に撮像範囲の長手を有するように配置されたラインセンサカメラの撮像位置に線状に集光し,これにより前記撮像位置を照明しこれをラインセンサカメラで撮像するように構成されたラインセンサカメラ撮像位置照明用の照明装置において、
この照明装置は、前記各LEDから前記集光位置までの光の経路中に光を主に各LEDの並設方向に拡散させる拡散レンズを備えると共に、前記集光レンズの各LED側の面によって受光レンズ部が形成され、
受光レンズ部を、各LED側に凸面状に形成するとともに各LEDの並設方向に延びるように形成し、各LEDにおいて他の照射角度範囲よりも光の照射量を多くした所定の照射角度範囲から照射される光を受光可能に配置し、
前記拡散レンズを複数のレンズ部から形成し、各レンズ部を、各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成するとともに、光の経路と交差する所定の面上に並ぶように配置し、
前記各レンズ部を、互いに近傍に配置されたレンズ部同士で各LEDの並設方向への曲率半径が異なるように形成した
ことを特徴とするラインセンサカメラ撮像位置照明用の照明装置。
【請求項2】
前記各レンズ部を、各LEDの並設方向と直交する方向に長い略楕円形状の凸レンズから形成した
ことを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
前記拡散レンズを、光の経路と交差する所定の面上に延びるように設けられた透明な基板と、基板上に並ぶように設けられた前記各レンズ部とから構成した
ことを特徴とする請求項1または2記載の照明装置。
【請求項4】
前記各LEDと受光レンズ部とを接触させた
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の照明装置。
【請求項5】
前記集光レンズを各LEDの並設方向に延びるロッドレンズから形成し、
前記受光レンズ部をロッドレンズにおける各LED側の面によって構成した
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の照明装置。
【請求項6】
前記集光レンズを各LEDの並設方向に延びるシリンドリカルレンズから形成し、
前記受光レンズ部をシリンドリカルレンズの凸面によって構成した
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の照明装置。
【請求項7】
前記集光レンズを、それぞれ各LEDの並設方向に延びるとともに光の経路と交差する方向に並設された2枚のシリンドリカルレンズから形成し、
前記受光レンズ部を各シリンドリカルレンズのうち各LED側のシリンドリカルレンズの凸面によって構成した
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の照明装置。
【請求項8】
前記拡散レンズを各シリンドリカルレンズの間に配置した
ことを特徴とする請求項7記載の照明装置。
【請求項9】
前記拡散レンズを前記受光レンズ部と各LEDとの間に配置した
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の照明装置。
【請求項10】
前記各レンズ部を前記所定の面上に不規則に並べて配置した
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の照明装置。

第4 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は,審判請求書,弁駁書および口頭審理陳述要領書によれば,本件訂正は,少なくとも,訂正が明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしなけれはならないとする訂正要件を満たしておらず,また,本件発明1?10は,本件特許優先日前に頒布された刊行物の記載に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定によって特許を受けることができないものであって,本件発明1?10に付与された本件各特許は,同法123条1項2号の規定により,無効とすべきものであると主張し,甲第1?11号証を提出している。

甲第 1号証:特開平 11-232912号公報
甲第 2号証:特開昭 61-294880号公報
甲第 3号証:特開2002-286978号公報
甲第 4号証:特開昭 62-269009号公報
甲第 5号証:特開平 04-069510号公報
甲第 6号証:特公平 01-031562号公報
甲第 7号証:特開平 04-314522号公報
甲第 8号証:特開平 07-140307号公報
甲第 9号証:実願平 05-035320号(実開平7-8804号)
のCD-ROM
甲第10号証:特開2000-280267号公報
甲第11号証:特開2001-215115号公報
以下,「甲1」?「甲11」という。

2 被請求人の主張
一方,被請求人は,答弁書および口頭審理陳述要領書において,上記無効理由は理由がないと主張し,乙第1号証を提出している。

乙第 1号証:特開2006-275836号公報
以下,「乙1」という。

第5 各証拠およびその内容
1 甲1について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲1には,「LED照明構造」に関して,図1?9とともに,次の事項が記載されている。

(甲1-ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報処理装置のイメージスキャナやOCRなどの被写体表面に光を照射して、被写体表面からの反射光を受光してイメージや文字情報を電気信号に変換して読み取る装置における被写体への照明手段であるLED照明構造に関わり、小型で消費電力が少なくそして光量むらを少なくできるLED照明構造の実現に関する。」

(甲1-イ)
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記の従来のLED照明構造の次の問題点の解決を課題とする。理想的な光源である熱陰極放電ランプなどの面光源に近づけるために、LEDを用いて、情報処理装置のイメージスキャナやOCRなどの被写体表面に光を照射してイメージや文字情報を電気信号に変換して読み取る装置における被写体への照明構造を、プリント配線板にLEDをアレイ状に配置した上部の所定位置に、LEDより発する光を収束する円柱状の凸レンズなどでなる光収束体を構成し、被写体に点光源の光を収束してLEDより発する光量の不足を補っている。しかしLEDより発する被写体に収束する点光源の光は円柱状の凸レンズの焦点位置になる収束光部が最も光量の高い部分となり焦点位置より外れた拡散光部とは光量の格差が大きく、光量分布状態は蛇腹状で、理想的形態の偏平な楕円形や長方形の光分布に程遠い光量むらの多いものであり、イメージや文字情報の読取品質の低下を招くことが発生した。」

(甲1-ウ)
「【0005】
【発明の実施の形態】まず、図1に示すように、LED1をアレイ状に配置した上部に光を収束および/または拡散する効果を持つ光誘導体2を構成した。この手段によって、LEDの省スペースと省エネルギー効果を活かした光源とできるため、小型で、消費電力の少ない照明構造にすることができる作用を得る。
【0006】次に、図2に示すように、前記光誘導体2を、波形または歯形状とした。この手段によって、LED光源の光を収束するともに、波形または歯形状部分でLED光源の光を鉛直方向以外では拡散させるため、光量むらの少ない照明構造にすることができる作用を得る。」

(甲1-エ)
「【0014】図1ないし図8の本発明に関わる実施例の図面に用いた符号について一括して以下に説明する。1は情報処理装置のイメージスキャナやOCRなどにおける被写体への照明の光源となるLEDである。2は情報処理装置のイメージスキャナやOCRなどにおける被写体照明光源であるLED1の光が通過して光の収束や拡散を行う光誘導体である。3は光誘導体2で光を屈折させるレンズである。4は光誘導体2で光を屈折させるレンズで円柱形状のシリンドリカルレンズである。5は情報処理装置のイメージスキャナやOCRなどにおけるイメージや文字情報を形成した、読み取り対象となる被写体である。6はLED側または被写体側の色補正を行うフィルタ部である。10はLED1をアレイ状に配置するプリント配線板である。11は光誘導体2で光を収束屈折させる凸レンズである。12は光誘導体2で光を拡散屈折させる凹レンズである。13はフィルタ部6をシリンドリカルレンズ4に着脱可能にするラッチ機構である。
【0015】図1は、本発明の原理図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。同図において、例えばプリント配線板10にチップ状のLED1をアレイ状に配置した上部の所定位置に、LED1より発する光を収束および/または拡散する効果を持つ、例えば楕円柱状の凸レンズ11と角柱状の凹レンズ12とでなる光誘導体2を構成した。このことによって、短焦点の凸レンズで収束した点光源の光を、凹レンズで拡散することで面光源に近づけ短い光路長であっても光量むらを少なくでき、LEDの省スペースと省エネルギー効果とを活かした光源にできるため、小型で、消費電力の少ない照明構造にすることができる。
【0016】図2は、本発明の実施例図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。同図において、LED1より発する光を収束および/または拡散する効果を持つ前記光誘導体2を、例えば角柱状の凹レンズ12の上部を長手方向に歯形状にした。なお、歯形に限定するのではなく、長手方向に波形にすることも好ましい。このことによって、LED光源の光を収束するともに、歯形または波形状部分でLED光源の光を鉛直方向以外では長手方向に拡散させるため、光量むらの少ない照明構造にすることができる。」

2 甲2について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲2には,「LED線状光源」に関して,第1図?第5図とともに,次の事項が記載されている。

(甲2-ア)
「(産業上の利用分野)
本発明は、照明用として使用されるLEDチップをアレイ状に並べたLED線状光源に関するものである。」(1頁左下欄10?13行)

(甲2-イ)
「・・・・・さらに高輝度タイプのLEDチップ2を2.5mmと1.25mmの間隔で配列した場合に実験結果によれば、電流値が一定の時に間隔が1.25mmの時の照度は、間隔が2.5mmの時の照度に比して約50%の増加しかない。即ち、配列間隔を短くすると、LEDチップ2の発熱量が増加して、発光量が減少するために配列間隔を短くするには限界がある。」(2頁左上欄19行?同頁右上欄6行)

(甲2-ウ)
「本発明に係るLED線状光源は上記のように構成されており、LEDチップ10の端面のPNジャンクション部13で発光される光を利用することによって、LEDチップ10の上面のアノード(又はカソード)12から発光される光よシも3倍程度の照度を得ることができる。また、第2図(イ)は、アノード(又はカソード)12から発光される上面発光型のLEDチップ10の配向特性であり、Cosine分布と呼ばれる球状の配光分布を示す。また、第2図(ロ)は、PNジャンクション部13から発光される端面発光型のLEDチップ10の配光特性を示し、ある種度指向性を持った配向特性になる。つまり、LEDチップ10の前方に配設したシリンドリカルレンズ40の見込み角内に入射する光の量は、第2図(ロ)で示したPNジャンクション部13から発光される端面発光型の方が多くなる。」(2頁右下欄5?20行)

3 甲3について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲3には,「照明ファイバモジュールの最適化方法及び照明ファイバモジュール」に関して,図1?図5とともに,次の事項が記載されている。

(甲3-ア)
「【0043】また、LED素子1の発光面1aとボールレンズ2とが当接しておれば、距離L1を設定する必要がないことから、簡易な組付け性を得ることができる。また、発明者らの実験によれば、発光面1aとボールレンズ2とが離れている場合よりも当接している場合の方が、発光面1aから出た光がボールレンズ2に直接入射しやすく、光ファイバ3による光の透過率を高くすることが判明した。」

4 甲4について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲4には,「レ-ザ鉛直器を用いた鉄骨柱の建方精度測定方法とその装置」に関して,第1図?第12図とともに,次の事項が記載されている。

(甲4-ア)
「・・・・・該異方性付与装置は、第4図の立面図I、平面図IIに示すように、焦点距離f_(l)、f_(2)の異なる2枚のンリンドリカルレンズ121、122を組み合わせて、レーザ鉛直器本体11がら発する断面円形のレーザビームを断面楕円形に変形させるよう構成している。」(2頁右下欄13?18行)

5 甲5について
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲5には,「トロイダル面の測定方法及び測定装置」に関して,第1図?第4図とともに,次の事項が記載されている。

(甲5-ア)
「L_(l)からL_(4)は、集束光学系9を構成するシリンドリカルレンズで、L_(l)及びL_(2)は、レンズ曲面の回転軸がy軸方向に平行であり、L_(3)及びL_(4)は、回転軸がL_(l)、L_(2)とは直交してZ軸方向に平行である。・・・・・」(4頁左下欄4?8行)

(甲5-イ)
「・・・・・例えば図示のL_(l)とL_(3)の二枚のシリンドリカルレンズだけがあればよい。」(4頁左下欄20行?同頁右下欄1行)

6 甲6について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲6には,「光学式測長器」に関して,第1図?第8図とともに,次の事項が記載されている。

(甲6-ア)
「第4図及び第5図は本発明の第1実施例を示し、図面に於いて12は発光源としてのLED、13は棒レンズ、14はレンズであり、以上により投光器15を構成する。・・・・・」(2頁3欄30?33行)

7 甲7について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲7には,「異方的光散乱材料、その製法およびプロジェクションテレビのスクリーン用レンチキュラーレンズ」に関して,図1?図7とともに,次の事項が記載されている。

(甲7-ア)
「【0031】実施例1
屈折率1.54の超低密度ポリエチレン(密度0.90)60重量部と、屈折率1.59のポリスチレン(分子量95000)40重量部を混練し、ポリエチレンをマトリックスとし、ポリスチレンを球状分散物(海島構造の島部分)とする相分離型樹脂組成物を調製した。この相分離型樹脂組成物を吐出口クリアランス0.7mmのT-ダイ式押出加工機に供給して溶融温度240℃にて押出加工を行なった。押出されたシート状の溶融樹脂を15m/分で押出し方向に強く引取り延伸をかけながら冷却して、本発明の異方的光散乱材料である厚さ50μmのフィルムを得た。
【0032】その際、海島構造の島部分であるポリスチレンの球状分散物は延伸方向に長軸を持つ回転楕円体型の異方的形状に変形され、秩序良く互いに平行移動した位置関係に均質に分散されていた。
【0033】異方的形状は、その長軸が約20μm、短軸が約1μmであった。得られたフィルム及び分散粒子の異方的形状について図1に示した。図1は、マトリックス樹脂1中に回転楕円体型の異方的形状の分散粒子2が分散している異方的光散乱材料8を表わす概略図である。分散粒子2の長軸は、延伸加工時のMD方向3と平行となっている。」

8 甲8について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲8には,「楕円型拡散器」に関して,図1?図10とともに,次の事項が記載されている。

(甲8-ア)
「【0011】本発明の1局面によると、制御された主として楕円型拡散パターンは安価であり、拡散粒子を細長い形状にし、2つの相互に直交する方向で異なった密度を有するようにスクリーンを通って分配させることにより拡散スクリーンに容易に設けられる。本発明の1実施例によると、図2で示されているシート20のような透明な重合体光拡散器材料は複数のアクリル拡散器粒子24を含む薄いアクリル重合体マトリクス22を含む。このような材料の1つは商標名プレキシガラス(Plexiglas)として市販されている拡散材料である。材料は基本的にプレキシガラスアクリルマトリクスで例えばマイクロ球体のような7ミクロンの粒子の懸濁液または乳濁液として形成され、0.5ミリメートルと3ミリメートルの厚さを含む。埋設された粒子はほぼ、球形構造を有する。厚さ3ミリメートルは本発明の実施では好ましい。図2で示されている市場で入手可能な拡散材料は図3の伸長軸30により示されているように垂直方向で延ばされた(伸長)マトリクス22aを提供するために本発明の原理により変形されている。伸長された材料22aの粒子24aは図2で示されている自然状態の本来の材料の間隔と同じ水平間隔を有する。しかしながら、図2で示され自然な状態の材料で水平間隔に等しい垂直間隔dは図3の均一に垂直の伸ばされた材料で距離d_(1)まで増加される。距離d_(1)は実質上2dに等しい。この伸長処理はもとの厚さの約半分までシートの厚さを減少し、この球体粒子を図3で示されているように楕円型の形態に引延ばす。伸長された楕円形態の粒子はレンズとして動作する。」

9 甲9について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲9には,「光拡散シート材」に関して,図1?図6とともに,次の事項が記載されている。

(甲9-ア)
「【0013】また、エンボスの形状としては、図4(a) および(b) に示したような凸形状であって、断面半円状あるいは半楕円状のものが適用可能であり、断面半円状エンボスの場合、直径(D) 1?10,000μm程度が、また断面半楕円状エンボスの場合、その長軸方向長さ(A) が2?10,000μm、短軸方向長さ(B) が1? 9,000μm、高さ(C) が1? 2,500μmであるのが、光拡散効果を考慮すれば好ましい。なお、前記断面半円状エンボスの別態様として、断面の輪郭形態が、円弧の一部に相当するようにエンボスを形成できることは勿論である。」

10 甲10について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲10には,「光拡散体の製造方法」に関して,図1?図5とともに,次の事項が記載されている。

(甲10-ア)
「【0008】
【発明の実施の形態】本発明をさらに詳細に説明する。本発明の製造方法により作製される光拡散体は、図1に示すように、その表面に不規則に配置されかつ延伸された凹凸形状を有する、いわゆる微小レンズアレーが形成されていることを特徴としている。図1は本発明の光拡散体の一例について、その表面の微小レンズアレーを示す顕微鏡写真を線画で模式的に示したもので、図中、10は光拡散体を、12は微小レンズアレーを示す。本発明の光拡散体は、前記の不規則に配置された凹凸の1つ1つの凸部においてその凸部の2つ以上の異なる切断面における屈折率が異なることにより、光拡散体として向上した機能を有する。すなわち、本発明の製造方法により製造される光拡散体の凸部は、製造工程においてモールドが延伸を受けることにより、原型における凸部の形状が特定の方向に伸ばされた形状を有している。図2には、本発明の光拡散体の製造において使用する原型の一例について、その表面の微小凹凸の顕微鏡写真を線画で模式的に表したものが示され、図中、14は原型を、16は微小凹凸を示している。この原型の表面に形成された微小凹凸形状の凸部の形状はおおむね半球状である。図3には、図2で示される原型にモールド樹脂を注型することにより作製され、原型の微小凹凸形状が転写されたモールドが示され、また、図4には、前記モールドを一方向に延伸した延伸モールドが示されている。この延伸モールドに硬化性樹脂を流し込み、次いで硬化させて本発明の光拡散体が作製される。
【0009】上記のように本発明の光拡散体は、図2で示されるような原型を用いて図3で示されるようなモールドを作製し、このモールドを一方向に延伸し、図4で示されるような延伸されたモールドを作製し、これに硬化性樹脂を注型・硬化して作ることができるが、使用する原型の凸部形状である半球が一方向に延伸された結果、光拡散体の凸部は前記半球より扁平(切断面の形状の曲率半径が大きい)の細長い形状のものに変わっている。したがって、光拡散体の凸部の、延伸方向と同じ方向の切断面における方が、延伸方向に直角の切断面の方より曲率半径が大きくなる。入射光が、光拡散体の微小凹凸が形成された面の方から反対側に抜ける場合、曲率半径の大きい断面を通過する光は、曲率半径の小さい断面を通過する光よりその屈折は小さくなり、光の拡散角度はより狭くなる。つまり、本発明の光拡散体は、拡散角度の異方性を制御することが可能である。これと逆方向に光が通過する場合も同様の原理が作用するので、拡散角度の異方性を制御することができる。したがって、本発明の光拡散体は、光拡散を行うと同時に光を特定の方向に集中的に拡散させることができ、例えば線状の入射光線が本発明の光拡散体に入射すると、強度分布が楕円形の拡散光となって透過することになり、本発明の光拡散体を液晶表示装置のバックライトの光拡散板や各種スクリーンに使用した場合、それらに優れた光拡散機能と正面集光機能を付与することができる。
【0010】本発明の光拡散体における不規則に配置された凹凸とは、凹凸が不規則に並ぶことを意味し、また、各凸部の高さは解像度と製造の観点からみて1μm?50μmの範囲にあることが適切であり、また各凸部の高さが均一である必要はないが高低の比が5:1以内程度に揃っている方が、映像の肌理の均一性の点から見て望ましい。また光拡散体を高解像度にするためには、各凹凸のピッチが50μm以下、好ましくは20μm以下にすることが望ましいが、解像度を特に高くする必要がない場合には、前記凹凸ピッチより大きくすることもできる。また前記ピッチは、1μm以上であることが望ましい。前記凹凸ピッチが0.5μm程度以下の場合は、いわゆるミー散乱が生じ、後方散乱が増えて光透過率が低下しやすい。また、本発明は、光拡散体の表面の凹凸の凸部形状を特に限定するものではなく、例えば以下の1から7の方法により形成されるあるいは選択される微小凹凸表面を有する原型と、その原型からのモールドの延伸の態様に基づいて形成される種々の凹凸形状を作製し得る。また本発明の光拡散体の表面に形成された凹凸は不規則に配置されることが必要であるが、その不規則さ、すなわち、ランダム性についても原型が有する微小凹凸の配置に応じたランダム性が発現する。」

11 甲11について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲11には,「LEDを用いた製品検査用ライン照明装置」に関して,図1?図8とともに,次の事項が記載されている。

(甲11-ア)
「【請求項1】 画像検査システムにおける製品検査用のライン照明装置であって、
基板上に光活性層および電流狭窄層を備えた狭窄型半導体発光素子を単または複数個備えてなるLED光源と、
該LED光源の出射光を被検査体表面に誘導してライン状光を形成させる光学系と、
を備えることを特徴とする製品検査用ライン照明装置。
【請求項2】 前記狭窄型半導体発光素子の複数個を線状に配列して構成されるLED光源を用いてなる請求項1記載の製品検査用ライン照明装置。
【請求項3】 前記狭窄型半導体発光素子の複数個を直列接続して構成されるLED光源を用いてなる請求項2記載の製品検査用ライン照明装置。
【請求項4】 前記狭窄型半導体発光素子が、スリット状の電流狭窄領域を備え且つ該電流狭窄領域に対応したスリット状の光出射窓を備えてなる請求項1?3の何れか1項に記載の製品検査用ライン照明装置。
【請求項5】 前記LED光源に供給する電力信号をパルス幅変調させるパルス幅変調回路を備えてなる請求項1?4の何れか1項に記載の製品検査用ライン照明装置。
【請求項6】 前記LED光源の出射光を集光して被検査体表面にライン状光を形成させる集光光学系としてシリンドリカルレンズを用いてなる請求項1?5の何れか1項に記載の製品検査用ライン照明装置。
【請求項7】 被検査体表面に形成したライン状光を走査させる走査光学系を備えてなる請求項1?6の何れか1項に記載の製品検査用ライン照明装置。

(甲11-イ)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被検査体の表面検査に用いるライン照明装置に関するものである。」

(甲11-ウ)
「【0002】
【従来の技術】近年、被検査体表面の凹凸欠陥などの表面性状や塵などの不純物を見出すための照明用光源として、発光ダイオード(LED)が広く使用されている。」

(甲11-エ)
「【0003】そこで、前述の安全基準や複雑な装置構成を避けるべくLED光源の使用を望んでも、LEDではレーザと比較すると指向性が低いため、被検査体に照射するライン状光の線幅が広がり易く、検出精度が低下するという問題がある。そこで、光学系を複雑な構造のものにした例もあるが、それでは製造工程が複雑になり製造コストが増すという問題があった。」

(甲11-オ)
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上の問題に鑑み、本発明が解決しようとするところは、たとえLED光源を採用しても、極細のライン状光を被検査体に照射し得て検出精度が低下することが無く、製造コストを低く抑えることが可能な簡易構成のライン照明装置を提供する点にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決すべく、本発明は、画像検査システムにおける製品検査用のライン照明装置であって、基板上に光活性層および電流狭窄層を備えた狭窄型半導体発光素子を単または複数個備えてなるLED光源と、該LED光源からの出射光を被検査体表面に誘導してライン状光を形成させる光学系と、を備えることを特徴としたものである。すなわち、電流狭窄層を備えたLED光源を採用することで光活性層における電流密度が高くなり高輝度のLED光を発することができ、検査用照明として十分スペクトル幅の狭い極細のライン状光を得ることができるから、被検査体表面におけるライン状光の線幅の広がりを抑えることが可能となる。
【0007】また、十分な光量を確保するには、前記狭窄型半導体発光素子の複数個を線状に配列してLED光源を構成するのが好ましく、更にはこれら狭窄型半導体発光素子を直列接続して駆動するのが望ましい。
【0008】また、十分な光量を確保するとともに被検査体表面に光切断法などに適した極細のライン状光を形成し易くするには、前記狭窄型半導体素子が、スリット状の電流狭窄領域を備え且つ該電流狭窄領域に対応したスリット状の光出射窓を備えることが好ましい。これにより、スリット状のLED光を出射して、被検査体表面におけるライン状光の線幅の広がりを抑えることができると同時に、照度を均一化させることが可能となる。また、このような狭窄型半導体素子を複数個用いる場合は、前記狭窄型半導体発光素子を直列接続するのが望ましい。」

(甲11-カ)
「【0012】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に係るライン照明装置の種々の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るライン照明装置の第1の実施形態を示す概略構成図である。本実施形態のライン照明装置は、調光制御部51からの電力信号により駆動されて線状光線2を出力するLED光源1と、このLED光源1から射出した線状光線2を集光して、矢印3の方向へ移送される被検査体4の表面4aにおいてライン状光2bを形成するシリンドリカルレンズ5と、を備えて構成されている。前記ライン状光2bの反射像はCCDカメラ6で撮像される。尚、被検査面4aとCCDカメラ6との間に、結像などのための光学系を適宜配置しても構わない。
【0013】図2に示すように、前記LED光源1は、LED格納ケース10に複数のLED11_(1),11_(2),11_(3),…,11_(n)を線状に配設して格納したものであり、これらLEDの各出射光が重ね合わされてなる線状光線2が、シリンドリカルレンズ5に入射して集光され、最終的に被検査面4aにライン長20?200mm、線幅50μm?5mm程度のライン状光2bが形成されることとなる。実際には、図3の概略断面図に示すように、このようなLED光源1はケース12の内部空間12aの後端部に配設され、その内部空間12aの前端部に上記シリンドリカルレンズ5が配設されている。また、前記ケース12の内壁には、被検査面4aに形成されるライン状光2bの照度を一様にすべく、光吸収層13がコーティングされている。」

(甲11-キ)
「【0021】上述のようにして被検査体表面4aに形成されたライン状光2bの像はCCDカメラ6で撮像される。CCDの出力信号は、画像解析部57に転送されてここでパターンマッチング処理などを施されることにより、当該被検査体表面の欠陥などの表面性状が検査され、その処理結果が表示装置58などに出力される。」

12 乙1について
本件特許の優先日後に頒布された刊行物である乙1には,「基板検査装置」に関して,図1?図5とともに,次の事項が記載されている。

(乙1-ア)
「【0039】
また、第2照明手段40は、基板とLED41との間に、レンチキュラレンズ42を備える。このレンチキュラレンズ42は、第2支持部材44上に立設される一対の柱部材46により第2支持部材44に固定される。このレンチキュラレンズ42の作用により、LED41から出射された光の基板上での照度分布を均一にすることが可能となる。さらに、第2照明手段40は、基板とレンチキュラレンズ42との間に、リニアフレネルレンズ43を備えてもよい。このリニアフレネルレンズ43は、LED41から基板への照射光軸上にあればよく、この実施形態では、レンチキュラレンズ42に接合して固定されている。ただし、本出願人の実験では段差の比較的大きい場合には、リニアフレネルレンズ43がない方が影を消す効果が高い場合もあることを確認している。なお、図4においては、リニアフレネルレンズ43およびレンチキュラレンズ42の図示を省略している。」

第6 当審の判断
1 甲1発明
上記記載事項(甲1-ア)?(甲1-エ)および図面(特に図1および図2)を総合すると,甲1には,以下の発明が記載されていると認められる。

「情報処理装置のイメージスキャナやOCRなどの被写体表面に光を照射して、被写体表面からの反射光を受光してイメージや文字情報を電気信号に変換して読み取る装置における被写体への照明手段であるLED照明構造であって,プリント配線板(10)上にアレイ状に配置したチップ状のLED(1)と,前記LEDより発する光を収束屈折させる楕円柱状の凸レンズ(11)と,前記LEDより発する光を拡散屈折させる角柱状の凹レンズ(12)とで構成することにより,短焦点の凸レンズで収束した点光源の光を,凹レンズで拡散することで偏平な楕円形や長方形の面光源に近づけ短い光路長であっても光量むらを少なくするとともに,前記凹レンズ(12)の上部を長手方向に歯形状または波形にして前記LEDより発する光を鉛直方向以外では長手方向に拡散させることにより,光量むらを少なくしたLED照明構造。」(以下「甲1発明」という)

2 甲11発明
上記記載事項(甲11-ア)?(甲11-キ)および図面(図1および図2)を総合すると,甲11には,以下の発明が記載されていると認められる。

「画像検査システムにおける製品検査用のライン照明装置であって,基板上に線状に配設された光活性層および電流狭窄層を備えた狭窄型半導体発光素子を複数個備えてなり,調光制御部からの電力信号により駆動されて線状光線を出力するLED光源と,該LED光源から射出した線状光線を集光して,移送される被検査体の表面においてライン長20?200mm,線幅50μm?5mm程度のライン状光を形成するシリンドリカルレンズと,を備えて構成されとともに,前記狭窄型半導体発光素子はスリット状の電流狭窄領域を備え且つ該電流狭窄領域に対応したスリット状の光出射窓を備え,前記ライン状光の反射像はCCDカメラで撮像される製品検査用ライン照明装置。」(以下「甲11発明」という)

3 本件発明1と甲1発明との対比・判断
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると,その機能・構造からみて,甲1発明の「アレイ状に配置したチップ状のLED(1)」,「凸レンズ(11)」,「凹レンズ(12)」および「LED照明構造」は,それぞれ,本件発明1の「所定方向に並設された複数のLED」,「各LEDの並設方向に延びるように設けられた集光レンズ」,「光を主に各LEDの並設方向に拡散させる拡散レンズ」および「照明装置」に相当することは明らかである。
そして,甲1発明では「被写体表面からの反射光を受光してイメージや文字情報を電気信号に変換」するのであるから,「撮像装置」を備えているといえる。
そうすると,両者は,
(一致点)
「所定方向に並設された複数のLEDと、各LEDの並設方向に延びるように設けられた集光レンズとを備え、各LEDの光が集光レンズを通過して集光レンズから所定の距離だけ離れた位置であって前記LEDの並設方向に撮像範囲の長手を有するように配置された撮像装置の撮像位置に集光し,これにより前記撮像位置を照明しこれを撮像装置で撮像するように構成された撮像位置照明用の照明装置において、
この照明装置は、前記各LEDから前記集光位置までの光の経路中に光を主に各LEDの並設方向に拡散させる拡散レンズを備えると共に、前記集光レンズの各LED側の面によって受光レンズ部が形成され、
受光レンズ部を、各LED側に凸面状に形成するとともに各LEDの並設方向に延びるように形成した
撮像位置照明用の照明装置。」
点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)
「撮像位置の光」が,本件発明1では「線状」であるのに対し,甲1発明では「偏平な楕円形や長方形の面」状である点。

(相違点2)
「拡散レンズ」について,本件発明1では「複数のレンズ部から形成し、各レンズ部を、各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成するとともに、光の経路と交差する所定の面上に並ぶように配置し、前記各レンズ部を、互いに近傍に配置されたレンズ部同士で各LEDの並設方向への曲率半径が異なるように形成」されているのに対し,甲1発明では「波形または歯形状の角柱状」である点。

(相違点3)
「受光レンズ部」が,本件発明1では「各LEDにおいて他の照射角度範囲よりも光の照射量を多くした所定の照射角度範囲から照射される光を受光可能に配置された」のに対し,甲1発明ではそのような構成か否か不明である点。

(2)相違点1についての判断
まず,相違点1について検討するに,甲2あるいは甲11に記載されているように,「LED線状光源」あるいは「ライン照明装置」は,本願優先日前周知であるといえる。
しかしながら,上記記載事項(甲1-イ)における「理想的な光源である熱陰極放電ランプなどの面光源に近づける」および「理想的形態の偏平な楕円形や長方形の光分布に程遠い光量むらの多いものであり」との記載からみて,甲1発明は,「理想的形態の偏平な楕円形や長方形の面光源に近づけ」ることを目的としており,積極的に「凹レンズで拡散することで面光源に近づけ」ているのであるから,「凹レンズ(12)の上部を長手方向に歯形状または波形にして前記LEDより発する光を鉛直方向以外では長手方向に拡散させ」ているとしても,同時に,図1(a)および図2(a)から明らかなように,「凹レンズ(12)」により,長手方向とは直交する方向にも拡散させることを必須の構成要件としている。この点において,甲1発明と本件発明1とは本質的に異なるといえる。
してみると,「LED線状光源」等が周知であるとしても,甲1発明において,「LEDより発する光」を線状にすることには,積極的な動機付けがなく,むしろ,阻害要因が存在するというべきであって,相違点1における本件発明1の構成とすることは,容易に想到し得る程度のこととは到底いえない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから,本件発明1は,相違点2?相違点3を検討するまでもなく,相違点1において,甲1発明および甲2?11記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないというべきである。

4 本件発明1と甲11発明との対比・判断
(1)対比
本件発明1と甲11発明とを対比すると,その機能・構造からみて,甲11発明の「基板上に線状に配設された狭窄型半導体発光素子」,「シリンドリカルレンズ」および「製品検査用ライン照明装置」は,それぞれ,本件発明1の「所定方向に並設された複数のLED」,「各LEDの並設方向に延びるように設けられた集光レンズ」および「照明装置」に相当することは明らかである。
そうすると,両者は,
(一致点)
「所定方向に並設された複数のLEDと、各LEDの並設方向に延びるように設けられた集光レンズとを備え、各LEDの光が集光レンズを通過して集光レンズから所定の距離だけ離れた位置であって前記LEDの並設方向に撮像範囲の長手を有するように配置された撮像装置の撮像位置に線状に集光し,これにより前記撮像位置を照明しこれを撮像装置で撮像するように構成された撮像位置照明用の照明装置。」
点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点4)
「照明装置」が,本件発明1では「前記各LEDから前記集光位置までの光の経路中に光を主に各LEDの並設方向に拡散させる拡散レンズを備えると共に、前記集光レンズの各LED側の面によって受光レンズ部が形成され、
受光レンズ部を、各LED側に凸面状に形成するとともに各LEDの並設方向に延びるように形成し、各LEDにおいて他の照射角度範囲よりも光の照射量を多くした所定の照射角度範囲から照射される光を受光可能に配置し、
前記拡散レンズを複数のレンズ部から形成し、各レンズ部を、各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成するとともに、光の経路と交差する所定の面上に並ぶように配置し、
前記各レンズ部を、互いに近傍に配置されたレンズ部同士で各LEDの並設方向への曲率半径が異なるように形成した」であるのに対し,甲1発明では「ライン状光を形成するシリンドリカルレンズ」を備えているのみである点。

(2)相違点4についての判断
本件特許明細書の段落【0007】に「本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所定方向に並設された複数の光源の光を無用に減衰させることなく所定の位置に線状に集光させることができ、しかも集光位置における光量のむらを低減することのできる照明装置を提供することにある。」と記載されていることからみて,相違点4における本件発明1の構成,すなわち,「拡散レンズ」と「受光レンズ部」の技術的意義は,「光源の光を無用に減衰させることなく」「集光位置における光量のむらを低減する」ことにあるといえる。
一方,甲11は本件特許明細書の段落【0004】に記載された従来技術としての特許文献2(当審注:「実開2001-215115号公報は「特開2001-215115号公報」の誤記であることは明らかである)であって,上記記載事項(甲11-オ)からみて,甲11発明は,「被検査体表面におけるライン状光の線幅の広がりを抑え」,「極細のライン状光を得る」と同時に「十分な光量を確保する」とともに「照度を均一化させる」ことを目的とするものであり,本件発明1の上記目的と略同一であるといえる。
しかしながら,上記記載事項(甲11-エ)の「光学系を複雑な構造のものにした例もあるが、それでは製造工程が複雑になり製造コストが増す」から明らかなように,甲11発明においては,その目的を達成するために,光学系を改良するのではなく,LED光源,すなわち「半導体発光素子」を改良することにより,すなわち,「狭窄型半導体発光素子がスリット状の電流狭窄領域を備え且つ該電流狭窄領域に対応したスリット状の光出射窓を備える」ことにより,達成しており,この点において,本件発明1と甲11発明とは,その課題解決手段において,本質的に異なるといえる。
してみると,甲2?10の記載により相違点4における本件発明1の「拡散レンズ」と「受光レンズ部」と同等の光学要素が本件特許優先日前周知あるいは公知であるとしても,甲11発明において,このような拡散レンズ」と「受光レンズ部」を採用する動機付けはなく,むしろ,阻害要因があるというべきであり,相違点4における本件発明1の構成とすることは,容易に想到し得る程度のこととは到底いえない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから,本件発明1は,甲11発明および甲2?10記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 本件発明2?10について
上記「3 本件発明1と甲1発明との対比・判断」および「4 本件発明1と甲11発明との対比・判断」において述べたように,本件発明1は,甲1発明,甲11発明および各甲号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないのであるから,さらに限定した発明である本件発明2?10も,甲1発明,甲11発明および各甲号証記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないことは明らかである。

第7 むすび
以上のとおり,請求人の主張する理由及び証拠によっては,本件発明1?10に係る特許は,無効とすることができない。
審判に関する費用については,特許法169条2項において準用する民事訴訟法61条の規定により,審判費用は,請求人の負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
照明装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紙、鋼板などの帯状部材を成形する工程において、帯状部材の欠陥の有無を検査するためのラインセンサカメラの照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の照明装置としては、帯状部材の幅方向に延びるように設けられた蛍光灯を用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、連続的に成形されて長手方向に移動する帯状部材に蛍光灯の光を照射するとともに、蛍光灯の光が照射される部分をラインセンサカメラで撮像し、ラインセンサカメラによって帯状部材の欠陥の有無を検知するようにしている。
【0003】
ところで、近年では技術の発達により帯状部材の成形速度が速くなり、ラインセンサカメラによる検知の高速化が要求されている。しかしながら、蛍光灯では高速で検知するために必要な光量を確保できないという問題点があった。
【0004】
そこで、他の照明装置として、帯状部材の幅方向に並設された複数のLEDと、各LEDの並設方向に延びるように設けられたシリンドリカルレンズとを備え、各LEDの光がシリンドリカルレンズを通過して帯状部材の表面に一直線状に集光するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平8-178860号公報
【特許文献2】実開2001-215115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、後者の照明装置では、光源として複数のLEDを使用しているので、集光位置において各LEDの並設方向に光量のむらを生じ、例えば他の部分より光量が少ない部分がラインセンサカメラによって欠陥として認識され、ラインセンサカメラによる欠陥の検知を正確に行うことができないという問題点があった。
【0006】
一方、各LEDから集光位置までの光の経路中にすりガラスを設けると、各LEDからの光を拡散させて集光位置における光量のむらを低減することができるが、すりガラスは入射した光を乱反射するため光量が無用に減衰し、集光位置の光量を確保するために各LEDの出力を大きくしなければならないという問題点があった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所定方向に並設された複数の光源の光を無用に減衰させることなく所定の位置に線状に集光させることができ、しかも集光位置における光量のむらを低減することのできる照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、所定方向に並設された複数のLEDと、各LEDの並設方向に延びるように設けられた集光レンズとを備え、各LEDの光が集光レンズを通過して集光レンズから所定の距離だけ離れた位置であって前記LEDの並設方向に撮像範囲の長手を有するように配置されたラインセンサカメラの撮像位置に線状に集光し、これにより前記撮像位置を照明しこれをラインセンサカメラで撮像するように構成されたラインセンサカメラ撮像位置照明用の照明装置において、この照明装置は、前記各LEDから前記集光位置までの光の経路中に光を主に各LEDの並設方向に拡散させる拡散レンズを備えると共に、前記集光レンズの各LED側の面によって受光レンズ部が形成され、受光レンズ部を、各LED側に凸面状に形成するとともに各LEDの並設方向に延びるように形成し、各LEDにおいて他の照射角度範囲よりも光の照射量を多くした所定の照射角度範囲から照射される光を受光可能に配置し、前記拡散レンズを複数のレンズ部から形成し、各レンズ部を、各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成するとともに、光の経路と交差する所定の面上に並ぶように配置し、前記各レンズ部を、互いに近傍に配置されたレンズ部同士で各LEDの並設方向への曲率半径が異なるように形成している。
【0009】
これにより、拡散レンズによってLEDの光が主に各LEDの並設方向に拡散することから、所定方向に並設された複数のLEDの光が無用に減衰することなく所定の位置に線状に集光するとともに、集光位置における光量のむらが低減する。また、集光レンズの各LED側の面によって受光レンズ部が形成され、受光レンズ部は各LED側に凸面状に形成されるとともに各LEDの並設方向に延びるように形成されているので、例えば各LEDがX方向に並設されるとともに各LEDが下方に向かって光を照射するように設けられている場合は、各LEDにおける所定の照射角度範囲から照射された光が受光レンズ部においてX方向と直交するY方向の内側に向かって屈折するとともに、この屈折によって光が集光レンズ内を下方に向かって進み、集光レンズの下面を通過した光が集光位置に集光する。このため、各LEDの所定の照射角度範囲から照射された光はほとんど減衰することなく集光位置に照射される。また、拡散レンズが複数のレンズ部から形成され、各レンズ部が、光の経路と交差する所定の面上に並ぶように配置されるとともに、各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成されているので、光は拡散レンズの各レンズを通過する際に各LEDの並設方向と直交する方向にはほとんど拡散されず、主に各LEDの並設方向に拡散される。さらに、各レンズ部は互いに近傍に配置されたレンズ部同士で各LEDの並設方向への曲率半径が異なるように形成されているので、各LEDの並設方向への光の拡散が効果的に行われる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定方向に並設された複数のLEDの光を無用に減衰させることなく所定の位置に線状に集光させることができ、しかも集光位置における光量のむらを低減することができるので、例えば高速で移動する帯状部材の表面に各LEDの光を集光させるとともに、光の照射されている部分をラインセンサカメラで撮像することにより、帯状部材の欠陥を高速且つ確実に検知することができ、生産性の向上及び品質の向上を図る上で極めて有利である。また、各LEDの所定の照射角度範囲から照射された光をほとんど減衰させることなく集光位置に照射することができるので、集光位置を明るく照明する上で極めて有利である。さらに、各LEDの並設方向への光の拡散が効果的に行われるので、光が線状に集光する位置の光量のむらを低減する上で極めて有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1乃至図9は本発明の第1実施形態を示すもので、図1は照明装置の斜視図、図2は照明装置のX方向断面図、図3は照明装置のY方向断面図、図4は照明装置の組立方法を示す斜視図、図5は拡散レンズの要部平面図、図6は拡散レンズのY方向断面図、図7は拡散レンズのX方向断面図、図8は各LEDによって光を照射する際の照明装置のY方向断面図、図9は各LEDによって光を照射する際の照明装置のX方向断面図である。
【0012】
この照明装置は、図1に示すX方向に延びるように形成された照明装置本体1と、X方向に並設された複数のLED10と、各LED10の並設方向に延びるように設けられた第1レンズ20及び第2レンズ30と、各レンズ20,30の間に設けられた拡散レンズ40とを備えている。
【0013】
照明装置本体1は、X方向に延びるように形成された平板状の天板部1aと、天板部1aのY方向両端からそれぞれ下方に延びる一対の平板状の側板部1bと、天板部1aのX方向両端からそれぞれ下方に延びる一対の端面部1cとを有する。即ち、照明装置本体1内は中空状に形成され、下方に開口している。照明装置本体1内には反射シート2が設けられ、反射シート2は各LED10の光が下方に向かって反射されるように曲面状に形成されている。
【0014】
各LED10は互いにX方向に等間隔をおいて配置され、それぞれ天板部1aの下面に固定されている。
【0015】
第1レンズ20及び第2レンズ30は周知のリニアフレネルレンズから成り、第1レンズ20及び第2レンズ30は各LED10の光をY方向に集光する。即ち、各LED10の光は第1レンズ20及び第2レンズ30によって図1に示す集光位置L1に集光される。詳しくは、各LED10の光は第1レンズ20によって略平行光になり、第1レンズ20を通過した光は第2レンズ30によって集光位置L1に集光される。集光位置L1は各LEDの並設方向であるX方向に延びる直線状の位置であり、第2レンズ30から所定の距離だけ離れている。
【0016】
拡散レンズ40は透明なポリカーボネイトや透明なポリエステル等の樹脂材料から成る。拡散レンズ40は、各レンズ20、30と同様に各LED10の並設方向に延びるように形成されたシート状の基板41と、基板41の上面に並ぶように設けられた複数のレンズ部42とを有する。即ち、基板41は第1レンズ20を通過して第2レンズ30に入射する光の経路と交差する所定の面上に延びるように設けられ、各レンズ部42は前記所定の面上に並ぶように設けられている。
【0017】
各レンズ部42は基板41の上面から上方に突出するように形成されるとともに、Y方向に長い略楕円形状に形成された凸レンズから成る。各レンズ部42は、例えばX方向の寸法が数十μm?数百μmに形成され、Y方向の寸法が数mm?数十mmに形成されている。即ち、各レンズ部42はX方向への曲率半径RXがY方向への曲率半径RYよりも小さい(図6及び図7参照)。また、Y方向への曲率半径RYは可能な限り大きくすることが好ましい。また、各レンズ部42は大きさが不規則になるように形成されている(図5参照)。これにより、互いに近傍に配置されたレンズ部42同士でX方向への曲率半径RXが異なる(図7参照)。この場合、近傍とは隣接していることを必ずしも必要とするものではない。例えば、互いに数個のレンズ部42を挟んで配置された2つのレンズ部42同士は互いに近傍に配置されている。また、各レンズ部42は基板41の上面に不規則に配置されている(図5参照)。
【0018】
拡散レンズ40は各レンズ20,30の間に配置され、図示しないボルトによって照明装置本体1の下端部に取付けられている(図4参照)。
【0019】
以上のように構成された照明装置において、各LED10によって第1レンズ20に光を照射すると、光は第1レンズ20、拡散レンズ40及び第2レンズ30を通過するとともに、集光位置L1に集光される。
【0020】
この時のY方向断面における光の経路は図8に示す通りである。即ち、各LED10から第1レンズ20に照射された光は第1レンズ20を通過することによって略平行光となる。また、光は第1レンズ20を通過した後に拡散レンズ40の各レンズ部42を通過する。ここで、各レンズ部42のY方向への曲率半径RYは可能な限り大きく形成されているので、光は各レンズ部42を通過する際にY方向に屈折しない。但し、各レンズ部42のY方向端部は小さな曲率半径RTを有するので、各レンズ部42のY方向端部を通過する光のみがY方向に屈折する。Y方向に屈折せずに拡散レンズ40を通過した光は第2レンズ30を通過すると集光位置L1に集光される。即ち、各LED10から第1レンズ20に照射された光の殆どが集光位置L1に集光される。
【0021】
また、この時のX方向断面における光の経路は図9に示す通りである。即ち、各LED10から第1レンズ20に照射された光は第1レンズ20によってX方向に屈折しない。また、光は第1レンズ20を通過した後に拡散レンズ40の各レンズ部42を通過する。ここで、各レンズ部42のX方向への曲率半径RXはY方向への曲率半径RYよりも小さく形成されているので、光は各レンズ部42の曲面に応じてX方向に屈折する。これにより、拡散レンズ40を通過することにより光がX方向に拡散される。また、拡散レンズ40を通過した光は第2レンズ30によってX方向に屈折しないので、光は拡散レンズ40によって屈折した方向に進む。
【0022】
即ち、拡散レンズ40は各LED10の光を主にX方向に拡散させる。各LED10から第1レンズ20に照射された光は、各レンズ20,30及び拡散レンズ40により、X方向に拡散されるとともにY方向に集光される。
【0023】
ここで、拡散レンズ40は互いに近傍に配置されたレンズ部42同士で各LED10の並設方向への曲率半径RXが異なるように形成されており、光はレンズ部42の曲面に応じてX方向に屈折するので、各LED10の光がX方向に屈曲する角度が不規則になり、X方向への光の拡散が効果的に行われる。
【0024】
また、各レンズ部42は基板41の上面に不規則に配置されているので、各LED10の光がX方向に屈曲する角度が不規則になり、X方向への光の拡散が効果的に行われる。
【0025】
このように、本実施形態によれば、X方向に並設された各LED10から第2レンズ30までの光の経路中に拡散レンズ40が設けられ、拡散レンズ40は光を主にX方向に拡散させるとともに、拡散レンズ40を通過した光は第2レンズ30によって集光位置L1に集光されることから、X方向に並設された複数のLED10の光を無用に減衰させることなく集光位置L1に集光させることができ、しかも集光位置L1における光量のむらを低減することができる。これにより、例えば連続的に成形されて長手方向に高速で移動する帯状部材の表面に各LED10の光を集光させるとともに、光の照射されている部分をラインセンサカメラで撮像することにより、帯状部材の欠陥を高速且つ確実に検知することができ、生産性の向上及び品質の向上を図る上で極めて有利である。
【0026】
前記拡散レンズ40に光の経路と交差する所定の面上に並ぶ複数のレンズ部42を設け、各レンズ部42を各LED10の並設方向であるX方向の曲率半径RXが各LED10の並設方向と直交する方向であるY方向への曲率半径RYよりも小さくなる曲面状に形成したので、光は拡散レンズ40の各レンズ部42を通過する際にY方向にほとんど拡散せずに主にX方向に拡散する。また、各レンズ部42はX方向及びY方向にそれぞれ所定の曲率半径RX,RYを有する滑らかな曲面から成るので、各レンズ部42は光を上方に反射することがない。このため、各LED10の光は無用に減衰することなく集光位置L1に照射される。
【0027】
また、各レンズ部42はX方向に長い略楕円形状の凸レンズから成るので、各レンズ部42をX方向の曲率半径RXがY方向への曲率半径RYよりも小さい曲面状に確実に形成することができ、前記機能を有する拡散レンズ40の製造を容易に行うことができる。
【0028】
また、拡散レンズ40を、第1レンズ20を通過して第2レンズ30に入射する光の経路と交差する所定の面上に延びるように設けられた透明な基板41と、基板41上に並ぶように設けられた複数のレンズ部42とから構成したので、簡単な構造によって拡散レンズ40の前記機能を確保することができ、製造コストの低減を図る上で極めて有利である。
【0029】
また、各レンズ部42は互いに近傍に配置されたレンズ部42同士でX方向への曲率半径RXが異なるように形成されているので、X方向への光の拡散が効果的に行われ、集光位置L1における光量のむらを低減する上で極めて有利である。
【0030】
さらに、各レンズ部42は基板41上に不規則に配置されているので、X方向への光の拡散が効果的に行われ、集光位置L1における光量のむらを低減する上で極めて有利である。
【0031】
また、各LED10の光を集光位置L1に集光するために第1レンズ20及び第2レンズ30を設けるとともに、各レンズ10,20の間に拡散レンズ40を設け、第1レンズ20は各LED10からの光を略平行光にして拡散レンズ40に入射するようにしたので、光が拡散レンズ40を通過し易くなり、拡散レンズ40による光量の減衰を抑制する上で極めて有利である。
【0032】
尚、本実施形態では、シート状の基板41の上面に複数の略楕円形状の凸レンズから成るレンズ部42を設けた拡散レンズ40を示したが、シート状の基板51の上面に複数のシリンドリカルレンズ部52を有する拡散レンズ50を用いることも可能である(図10及び図11)。この場合、拡散レンズ50は周知のレンチキュラーレンズであり、各シリンドリカルレンズ部52はY方向に延びるように設けられている。各シリンドリカルレンズ部52は、例えばX方向の寸法が数数十μm?数百μmに形成されている。これにより、光は拡散レンズ50を通過するとX方向にのみ拡散されるので、X方向に並設された複数のLED10の光を無用に減衰させることなく集光位置L1に集光させることができ、しかも集光位置L1における光量のむらを低減することができる。また、各シリンドリカルレンズ部52を、互いに近傍に配置されたシリンドリカルレンズ部52同士でX方向への曲率半径RXが異なるように形成することも可能である。
【0033】
また、本実施形態では、シート状の基板41の上面に複数の略楕円形状の凸レンズから成るレンズ部42を設けた拡散レンズ40を示したが、シート状の基板61の上面に複数の略楕円形状の凹レンズから成るレンズ部62を設けた拡散レンズ60を用いることも可能である(図12乃至図14参照)。この場合も、各レンズ部62のX方向の曲率半径RXはY方向の曲率半径RYよりも小さい。
【0034】
尚、本実施形態では、各LED10の光を集光位置L1に集光するために第1レンズ20及び第2レンズ30を用いたものを示したが、第2レンズ30のみを用いることも可能である(図15参照)。この場合、各LED10の光は直接拡散レンズ40に照射されるとともに、拡散レンズ40によって主にX方向に拡散され、拡散レンズ40を通過した光が第2レンズ30によって集光位置L1に集光される。
【0035】
また、本実施形態では、各LED10の光を集光位置L1に集光するために第1レンズ20及び第2レンズ30を用いたものを示したが、各レンズ20,30の代わりに第1レンズ70を用いることも可能である(図16参照)。この場合、第1レンズ70は周知のシリンドリカルレンズから成る。各LED10の光は第1レンズ70を通過した後に拡散レンズ40を通過する。これにより、各LED10の光は拡散レンズ40によって主にX方向に拡散され、第1レンズ70によって集光位置L1に集光される。
【0036】
また、拡散レンズ40の下面に平板状のガラス板80を設けることも可能である(図17参照)。これにより、樹脂材料から形成されている拡散レンズ40がガラス板80によって保護され、拡散レンズ40による光量の減衰を抑制する上で極めて有利である。
【0037】
尚、本実施形態では、各レンズ20,30と拡散レンズ40とを図示しないボルトによって組付けるようにしたものを示したが、各レンズ20,30と拡散レンズ40とを透明な両面テープまたは透明な接着剤によって互いに貼り合わせることも可能である。
【0038】
また、本実施形態では、各LED10の光を集光するための各レンズ20,30と拡散レンズ40とを別体で設けたものを示したが、上面に複数のレンズ部91を有するとともに下面にリニアフレネルレンズ部92を有する一枚のレンズ90を用いることも可能である(図18参照)。各レンズ部91は拡散レンズ40の各レンズ部42と同様に形成されている。この場合、各LED10の光を各レンズ部91に照射すると、照射された光は各レンズ部91によってX方向に拡散されるととに、リニアフレネルレンズ部92によって集光位置に集光される。即ち、各LED10の光の集光及び拡散を一枚のレンズで行うことができるので、照明装置の構造が簡素化され、製造コストの低減を図る上で極めて有利である。
【0039】
尚、本実施形態では、各LED10の光を集光するためにリニアフレネルレンズから成る各レンズ20,30を用いたものを示したが、各レンズ20,30の代わりにX方向に延びる円柱状のレンズを用いることも可能である。
【0040】
また、本実施形態では、各LED10を一直線状に並設したものを示したが、各LED10を曲線状に並設するとともに、各レンズ20,30及び拡散レンズ40を各LED10の並設方向に延びるように設けることも可能である。この場合、各LED10の光は所定の位置に曲線状に集光される。
【0041】
図19乃至図24は本発明の第2実施形態を示すもので、図19は照明装置の斜視図、図20は照明装置のY方向断面図、図21はLEDの一部断面側面図、図22はLEDの指向特性図、図23は各LEDによって光を照射する際の光の経路図、図24は照度の測定結果を示す表である。尚、第1実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0042】
この照明装置は、第1実施形態と同様の照明装置本体1及び拡散レンズ40と、X方向に並設され、それぞれ照明装置本体1の天板部1aの下面に固定された複数のLED100と、各LED100の並設方向に延びるように設けられたロッドレンズ110とを備えている。また、第1実施形態では照明装置本体1内に反射シート2を設けたが、第2実施形態では照明装置本体1内に反射シートを設けていない。
【0043】
各LED100は、LEDチップ101と、LEDチップ101を覆うように設けられた半球状の透明カバー102とを有する(図21参照)。また、各LED100は図22に示す指向特性を有し、各LED100は中央部から略40°の照射角度範囲の光の照射量が他の照射角度範囲の光の照射量に比べて多くなるように形成されている。ここで、各LED100の中央部から略40°の照射角度範囲内の光の照射量は最も照射量の多い中央部の光の照射量の70%以上である(図22参照)。ここでは、照射量が最も多い部分に対して略70%以上の照射量を有する照射角度範囲を他の照射角度範囲よりも光の照射量を多くしている範囲としている。また、各LED100において中央部から略40°の照射角度範囲が特許請求の範囲に記載した所定の照射角度範囲に相当する。尚、本実施形態では、照射量が最も多い部分に対して略70%以上の照射量を有する照射角度範囲を他の照射角度範囲よりも光の照射量を多くしている範囲としたが、照射量が最も多い部分に対して略90%以上の照射量を有する照射角度範囲を他の照射角度範囲よりも光の照射量を多くしている範囲とすることも可能である。
【0044】
ロッドレンズ110はアクリルなどの透明なプラスチックやガラスから成り、円柱状に形成されるとともに、各側板部1bによって両端を支持されている。ロッドレンズ110は各LED100の真下に各LED100に沿って延びるように設けられ、ロッドレンズ110の上面(各LED100側の面)によって受光レンズ部110aが形成されている。即ち、受光レンズ部110aは各LED100側に凸面状に形成され、受光レンズ部110aは各LED100の並設方向に延びるように形成されている。また、受光レンズ部110aは各LED100に接触しており、受光レンズ部110aは各LED100における中央部から略55°の照射角度範囲から照射される光を受光するようになっている。即ち、受光レンズ部110aは各LED100における中央部から略40°の照射角度範囲(以下、各LED100の所定の照射角度範囲とする。)から照射される光も受光するようになっている(図20参照)。
【0045】
各LED100の光は受光レンズ部110aによってY方向の内側に向かって屈折し、屈折した光はロッドレンズ110内を若干Y方向に広がりながら下方に向かって進む(図23参照)。これは、受光レンズ部110aが各LED100側に凸面状に形成されるとともに、空気の屈折率(1.0程度)に対してロッドレンズ110の屈折率(アクリルやガラスで1.5程度)が大きいためである。また、ロッドレンズ110内を通過した光はロッドレンズ110の下面を通過して略平行光になり、ロッドレンズ110から所定の距離だけ離れた集光位置L2に集光される(図19及び図23参照)。この集光位置L2は所定の幅寸法を有するとともにX方向に延びる直線状の位置である。ここで、ロッドレンズ110が円柱状に形成されているので、各LED100から受光レンズ部110aに照射される光のうち照射角度範囲外側の光は照射角度範囲内側の光に比べて受光レンズ部110aでの屈折が大きくなる(図23参照)。このため、集光位置L2におけるY方向両端側の照度が他の部分の照度よりも若干高くなり、Y方向両端側の照度が高い方がラインセンサカメラを用いた集光位置L2の撮像を行う上で有利である。
【0046】
拡散レンズ40はロッドレンズ110の下側に配置され、図示しないボルトによって照明装置本体1の下端部に取付けられている。
【0047】
以上のように構成された照明装置において、各LED100によってロッドレンズ110に光を照射すると、照射された光はロッドレンズ110を通過して集光位置L2に集光される。この時、ロッドレンズ110の下側に拡散レンズ40が配置されているので、第1実施形態に示すように、ロッドレンズ110を通過した光は拡散レンズ40によって主にX方向に拡散されて無用にY方向に拡散されることがない。このため、X方向に並設された複数のLED100の光を無用に減衰させることなく集光位置L2に集光させることができ、集光位置L2における光量のむらを低減することができる。これにより、例えば連続的に成形されて長手方向に高速で移動する帯状部材の表面に各LED100の光を集光させるとともに、光の照射されている部分をラインセンサカメラで撮像することにより、帯状部材の欠陥を高速且つ確実に検知することができる。
【0048】
このように、第2実施形態では、ロッドレンズ110の各LED100側に受光レンズ部110aが設けられ、受光レンズ部110aは各LED100の所定の照射角度範囲から照射される光を受光する。また、受光レンズ部110aは各LED100側に凸面状に形成されるとともに各LED100の並設方向に延びるように形成されており、受光レンズ部110aの屈折率は空気の屈折率よりも大きいので、各LED100における所定の照射角度範囲から照射された光が受光レンズ部110aにおいてY方向内側に向かって屈折するとともに、この屈折によって光がロッドレンズ110内を下方に向かって進み、ロッドレンズ110の下面を通過して略平行光となって集光位置L2に照射される。このため、各LED100の所定の照射角度範囲から照射された光はほとんど減衰することなく集光位置L2に照射される。また、各LED100は所定の照射角度範囲を他の照射角度範囲よりも光の照射量を多くしているので、第2実施形態は集光位置L2を明るく照明する上で極めて有利である。
【0049】
ここで、第1実施形態の反射シート2を用いて各LED100の光を下方に向かって反射する場合(比較例)とロッドレンズ110によって各LED100の光を下方に向かって屈折させる場合(実施形態A)の集光位置L2における照度の測定結果を図24に示す。比較例は第2実施形態においてロッドレンズ110の代わりに反射シート2を設けたものであり、その他の構成、各LED100への通電条件、測定位置などは同じである。これにより、比較例の場合でも十分な照度を得ることができるが、実施形態は比較例の略3倍の照度を得ることができるので、集光位置L2を効率良く照明する上で極めて有利である。
【0050】
また、各LED100と受光レンズ部110aとを接触させたので、各LED100と受光レンズ部110aとの距離を極力小さくすることができる。即ち、光が空気中を通過する際に生ずる拡散を極力少なくすることができ、しかも受光レンズ部110aは各LED100の照射角度範囲のうち極力広い照射角度範囲の光を受光するので、集光位置L2を効率良く照明する上で極めて有利である。
【0051】
また、各LED100からの光を集光位置L2に集光させるためにロッドレンズ110を用い、ロッドレンズ110の各LED100側の面によって受光レンズ部110aを形成したので、各LED100側に凸面上に形成されるとともに各LED100の並設方向に延びるように形成された受光レンズ部110aを安価に設けることができ、集光位置L2の照度を向上しながら製造コストの低減を図る上で極めて有利である。
【0052】
尚、第2実施形態では、各LED100の光がロッドレンズ110の上面(受光レンズ部110a)によって屈折するとともにロッドレンズ100内を下方に向かって進み、ロッドレンズ110の下面で屈折して集光位置L2に照射されるようにしたものを示したが、ロッドレンズ110の表面に反射防止膜を形成し、ロッドレンズ110の上面及び下面における反射による光の損失を低減することも可能である。この反射防止膜は物質の境界面で生ずる反射を低減するためにめがねや双眼鏡のレンズ等で用いられている周知の薄膜である。
【0053】
また、第2実施形態では、照明装置本体1内に反射シートが設けられていないものを示したが、照明装置本体1内に第1実施形態で用いた反射シート2を設けることも可能である(図25参照)。この場合、反射シート2はロッドレンズ110を上方から覆うように形成され、各LED100から照射される光のうち受光レンズ部110a以外の方向に照射される光が下方に向かって反射するように曲面状に形成されている。これにより、各LED100から照射される光のうち受光レンズ部110a以外の方向に照射される光も有効に利用され、集光位置L2の照度をより向上することができる。この場合の集光位置L2における照度(実施形態B)は反射シート2を設けない場合の照度(実施形態A)に比べて明らかに高くなる(図24参照)。
【0054】
尚、第2実施形態では、各LED100とロッドレンズ110の受光レンズ部110aとが接触するようにしたものを示したが、図26に示すように、各LED120と受光レンズ部110aとの間に所定の間隔G1を設けることも可能である。この場合、各LED120は中央部から略20°の照射角度範囲内の光の照射量が最も照射量の多い中央部の光の照射量の70%以上であり、中央部から略20°の照射角度範囲が特許請求の範囲に記載した所定の照射角度範囲に相当する。受光レンズ部110aは各LED120における中央部から略25°の照射角度範囲から照射される光を受光するようになっており、各LED100における中央部から略20°の照射角度範囲から照射される光も受光するようになっている。図26では照明装置本体1内に反射シート2が設けられているものを示す。各LED100の光は受光レンズ部110aによってY方向の内側に向かって屈折し、屈折した光はロッドレンズ110内を略平行光となって下方に向かって進む(図27参照)。また、ロッドレンズ110内を通過した光はロッドレンズ110の下面を通過してY方向に収束するように進み、ロッドレンズ110から所定の距離だけ離れた集光位置L3に集光される(図27参照)。この集光位置L3は前記集光位置L2よりも小さい所定の幅寸法を有するとともにX方向に延びる直線状の位置である。即ち、各LED100とロッドレンズ110との距離によって集光位置L3の幅寸法を変更することができる。また、受光レンズ部110aが各LED100側に凸面状に形成されているので、各LED120から受光レンズ部110aに照射される光のうち照射角度範囲外側の光は照射角度範囲内側の光に比べて受光レンズ部110aでの屈折が大きくなる(図26参照)。このため、集光位置L3におけるY方向両端側の照度が他の部分の照度よりも若干高くなり、ラインセンサカメラを用いて集光位置L3の撮像を行う上で有利である。
【0055】
尚、第2実施形態では、ロッドレンズ110の下側に拡散レンズ40のみを配置したものを示したが、ロッドレンズ110と拡散レンズ40との間にシリンドリカルレンズ130を配置することも可能である(図28参照)。図28では照明装置本体1内に反射シート2が設けられているものを示す。これにより、ロッドレンズ110を通過した平行光はシリンドリカルレンズ130によってY方向に収束し、前記集光位置L2よりも幅寸法の小さい集光位置に光を集光することができる。
【0056】
また、第2実施形態では、ロッドレンズ110の下側に拡散レンズ40を配置したものを示したが、拡散レンズ40を各LED100とロッドレンズ110の上面(受光レンズ部110a)との間に配置することも可能である(図29及び図30参照)。図29及び図30では照明装置本体1内に反射シート2を設けたものを示す。これにより、複数の拡散レンズ40を各LED100の並設方向に並べて設けることが可能となる。この場合、各拡散レンズ40の端部が各LED100の間に配置されるようにする。このため、前記集光位置L2に各拡散レンズ40の端部が影となってあらわれることがない。また、各LED100の光が主にX方向に拡散されてY方向に無用に拡散されることがないという第1実施形態の作用効果も得ることができる。
【0057】
このように、各LED100とロッドレンズ110の上面との間に拡散レンズ40を配置する場合は、複数の拡散レンズ40を各LED100の並設方向に並べて設けることができるので、照明装置本体1のX方向の寸法に応じた拡散レンズ40を準備する必要がない。即ち、拡散レンズ40の寸法を調整するために拡散レンズ40の端材が発生しないので、製造コストの低減を図る上で有利である。
【0058】
また、拡散レンズ40は光を主にX方向に拡散するようになっているので、受光レンズ部110aが各LED100の所定の照射角度範囲から照射される光を受光可能な位置に配置されていれば、前述と同様に集光位置L2を効率良く照明することができる。
【0059】
尚、第2実施形態では、LEDチップ101と透明カバー102とから成るLED100を用いたものを示したが、透明カバー102が設けられていないLEDチップ101から成るLED100を用いることも可能である。この場合、LED100の光源であるLEDチップ101と受光レンズ部110aとをさらに近づけることができる。
【0060】
図31は本発明の第3実施形態を示す照明装置のY方向断面図である。尚、第1実施形態及び第2実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0061】
この照明装置は第2実施形態においてロッドレンズ110の代わりにシリンドリカルレンズ140を設け、照明装置本体1内に第1実施形態と同様の反射シート2を設けたものである(図31参照)。シリンドリカルレンズ140はアクリルなどの透明なプラスチックやガラスから成る。また、シリンドリカルレンズ140は各LED100の真下に各LED100に沿って延びるように設けられるとともに、シリンドリカルレンズ140の上面(各LED100側の面)によって受光レンズ部140aが形成されている。また、シリンドリカルレンズ140は上側に凸面が設けられている。また、受光レンズ部140aは各LED100に接触しており、受光レンズ部140aは各LED100における中央部から略65°の照射角度範囲から照射される光を受光するようになっている。即ち、受光レンズ部110aは各LED100における中央部から略40°の照射角度範囲(以下、各LED100の所定の照射角度範囲とする。)から照射される光も受光するようになっている。これにより、各LED100の光は受光レンズ部140aによってY方向の内側に屈折するとともに、若干Y方向に広がりながら下方に向かって進む光となり、第2実施形態の集光位置L2よりも幅寸法の大きい集光位置に集光される。このため、各LED100における所定の照射角度範囲から照射された光はほとんど減衰することなく集光位置に照射される。また、ロッドレンズ110の代わりにシリンドリカルレンズ140を設けたので、照明装置本体1における光の照射方向の寸法を小さくすることができ、照明装置の小型化及び軽量化を図る上で極めて有利である。
【0062】
また、シリンドリカルレンズ140と拡散レンズ40との間に第1実施形態の第1レンズ20(リニアフレネルレンズ)を設けることも可能である(図32参照)。これにより、各LED100の光は受光レンズ部140aによって若干Y方向に広がりながら下方に進む光となり、その光が第1レンズ20によってY方向に収束する。即ち、各LED100の光が第2実施形態の集光位置L2よりも幅寸法の小さい集光位置に集光される。
【0063】
さらに、拡散レンズ40をシリンドリカルレンズ140と第1レンズ20との間に設けることも可能である(図33参照)。この場合、シリンドリカルレンズ140と第1レンズ20によって拡散レンズ40を保持することができるので、拡散レンズ40が薄く成形されている場合でも照明装置本体1への取付けを容易に行うことができ、製造コストの低減を図る上で有利である。また、拡散レンズ40がシリンドリカルレンズ140及び第1レンズ20によって保護されるので、拡散レンズ40の耐久性を向上する上で極めて有利である。
【0064】
また、図32において各LED100と受光レンズ部140aとの間に所定の隙間G2を設けることも可能である(図34参照)。この場合、受光レンズ部140aは各LED100における中央部から略40°の照射角度範囲(各LED100における所定の照射角度範囲)から照射される光を受光するようになっている。これにより、各LED100の光は受光レンズ部140aによってY方向の内側に向かって屈折するとともに、略平行光となって下方に向かって進み、第1レンズ20によってY方向に収束する。また、図32の場合に比べてY方向の収束が早くなる。即ち、各LED100と受光レンズ部140aとの距離によって集光位置を調整することができる。
【0065】
また、図32において第1レンズ20の代わりにシリンドリカルレンズ150を設けることも可能である(図35参照)。この場合、シリンドリカルレンズ150は下側に凸面を有している。これにより、各LED100の光は受光レンズ部140aによってY方向の内側に向かって屈折するとともに、若干Y方向に広がりながら下方に進む光となり、シリンドリカルレンズ150によって略平行光となるとともに、第2実施形態の集光位置L2と同様の集光位置に照射される。
【0066】
さらに、図35において各シリンドリカルレンズ140,150の間に拡散レンズ40を設けることも可能である(図36)。この場合でも各LED100の光は拡散レンズ40によって主にX方向に拡散されてY方向に無用に拡散されることがない。また、各シリンドリカルレンズ140,150によって拡散レンズ40を保持することができるので、拡散レンズ40が薄く成形されている場合でも照明装置本体1への取付けを容易に行うことができ、製造コストの低減を図る上で有利である。また、拡散レンズ40が各シリンドリカルレンズ140,150によって保護されるので、拡散レンズ40の耐久性を向上する上で極めて有利である。
【0067】
また、図32において第1レンズ20の代わりにロッドレンズ170を設けることも可能である(図37参照)。この場合、各LED100の光は受光レンズ部140aによって屈折するとともに、若干Y方向に広がりながら下方に進む光となり、ロッドレンズ170によってY方向に収束する。
【0068】
図38は本発明の第4実施形態を示す照明装置のY方向断面図である。尚、第1実施形態及び第2実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0069】
この照明装置は第2実施形態においてロッドレンズ110の代わりにロッドレンズ170及び平板状の透明板180を設け、照明装置本体1内に第1実施形態と同様の反射シート2を設けたものである。ロッドレンズ170はアクリルなどの透明なプラスチックやガラスから成り、各LED100に沿って延びるように設けられている。透明板180はアクリルなどの透明なプラスチックやガラスから成り、各LED100とロッドレンズ170との間に配置されている。また、透明板180は各LED100の真下に各LED100に沿って延びるように設けられ、透明板180の上面180aは各LED100に接触している。一方、第2実施形態に示すように、各LED100は中央部から略40°の照射角度範囲(各LED100の所定の照射角度範囲)内の光の照射量を他の照射角度範囲よりも多くしている。
【0070】
ここで、透明板180の上面180aは各LED100に接触しているので、各LED100において中央部から略40°の照射角度範囲内の光は透明板180の上面180aに照射される。また、透明板180の屈折率は空気の屈折率よりも大きいので、透明板180の上面180aによって各LED100の光がY方向の内側に向かって屈折し、若干Y方向に広がりながら下方に進む光となる。また、透明板180の下方にはロッドレンズ170が設けられているので、透明板180を通過した光はロッドレンズ170によって第2実施形態の集光位置L2と同様の集光位置に照射される。
【0071】
このように、第4実施形態によれば、各LED100とロッドレンズ170との間に透明板180が設けられ、各LED100と透明板180の上面180aとが接触しているので、各LED100の光は透明板180の上面に照射されるとともに、透明板180の上面180aによってY方向内側に向かって屈折し、その光がロッドレンズ170によって所定の集光位置に集光される。即ち、各LED100から出た光をY方向内側に向かって屈折させることができ、空気中を通過する際に生ずる拡散も極力少なくすることができるので、集光位置を効率良く照明する上で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1実施形態を示す照明装置の斜視図
【図2】照明装置のX方向断面図
【図3】照明装置のY方向断面図
【図4】照明装置の組立方法を示す斜視図
【図5】拡散レンズの要部平面図
【図6】拡散レンズのY方向断面図
【図7】拡散レンズのX方向断面図
【図8】各LEDによって光を照射する際の照明装置のY方向断面図
【図9】各LEDによって光を照射する際の照明装置のX方向断面図
【図10】第1実施形態の第1変形例を示す拡散レンズの要部平面図
【図11】第1実施形態の第1変形例を示す拡散レンズのX方向断面図
【図12】第1実施形態の第2変形例を示す拡散レンズの要部平面図
【図13】第1実施形態の第2変形例を示す拡散レンズのY方向断面図
【図14】第1実施形態の第2変形例を示す拡散レンズのX方向断面図
【図15】第1実施形態の第3変形例を示す照明装置のX方向断面図
【図16】第1実施形態の第4変形例を示す照明装置のX方向断面図
【図17】第1実施形態の第5変形例を示す照明装置のX方向断面図
【図18】第1実施形態の第6変形例を示すレンズのY方向断面図
【図19】本発明の第2実施形態を示す照明装置の斜視図
【図20】照明装置のY方向断面図
【図21】LEDの一部断面側面図
【図22】LEDの指向特性図
【図23】各LEDによって光を照射する際の光の経路図
【図24】照度の測定結果を示す表
【図25】第2実施形態の第1変形例を示す照明装置のY方向断面図
【図26】第2実施形態の第2変形例を示す照明装置のY方向断面図
【図27】第2実施形態の第2変形例において各LEDによって光を照射する際の光の経路図
【図28】第2実施形態の第3変形例を示す照明装置のY方向断面図
【図29】第2実施形態の第4変形例を示す照明装置のY方向断面図
【図30】第2実施形態の第4変形例を示す照明装置のX方向断面図
【図31】本発明の第3実施形態を示す照明装置の断面図
【図32】第3実施形態の第1変形例を示す照明装置のY方向断面図
【図33】第3実施形態の第2変形例を示す照明装置のY方向断面図
【図34】第3実施形態の第3変形例を示す照明装置のY方向断面図
【図35】第3実施形態の第4変形例を示す照明装置のY方向断面図
【図36】第3実施形態の第5変形例を示す照明装置のY方向断面図
【図37】第3実施形態の第6変形例を示す照明装置のY方向断面図
【図38】本発明の第4実施形態を示す照明装置のY方向断面図
【符号の説明】
【0073】
1…照明装置本体、2…反射シート、10…LED、20…第1レンズ、30…第2レンズ、40…拡散レンズ、41…基板、42…レンズ部、50…拡散レンズ、51…基板、52…シリンドリカルレンズ部、60…拡散レンズ、61…基板、62…レンズ部、70…第1レンズ、80…ガラス板、90…レンズ、91…レンズ部、92…リニアフレネルレンズ部、RX…X方向への曲率半径、RY…Y方向への曲率半径、100…LED、110…ロッドレンズ、110a…受光レンズ部、120…LED、130…シリンドリカルレンズ、140…シリンドリカルレンズ、140a…受光レンズ部、150…シリンドリカルレンズ、160…ロッドレンズ、170…ロッドレンズ、180…透明板、180a…上面、L1…集光位置、L2…集光位置、L3…集光位置。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に並設された複数のLEDと、各LEDの並設方向に延びるように設けられた集光レンズとを備え、各LEDの光が集光レンズを通過して集光レンズから所定の距離だけ離れた位置であって前記LEDの並設方向に撮像範囲の長手を有するように配置されたラインセンサカメラの撮像位置に線状に集光し、これにより前記撮像位置を照明しこれをラインセンサカメラで撮像するように構成されたラインセンサカメラ撮像位置照明用の照明装置において、
この照明装置は、前記各LEDから前記集光位置までの光の経路中に光を主に各LEDの並設方向に拡散させる拡散レンズを備えると共に、前記集光レンズの各LED側の面によって受光レンズ部が形成され、
受光レンズ部を、各LED側に凸面状に形成するとともに各LEDの並設方向に延びるように形成し、各LEDにおいて他の照射角度範囲よりも光の照射量を多くした所定の照射角度範囲から照射される光を受光可能に配置し、
前記拡散レンズを複数のレンズ部から形成し、各レンズ部を、各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成するとともに、光の経路と交差する所定の面上に並ぶように配置し、
前記各レンズ部を、互いに近傍に配置されたレンズ部同士で各LEDの並設方向への曲率半径が異なるように形成した
ことを特徴とするラインセンサカメラ撮像位置照明用の照明装置。
【請求項2】
前記各レンズ部を、各LEDの並設方向と直交する方向に長い略楕円形状の凸レンズから形成した
ことを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
前記拡散レンズを、光の経路と交差する所定の面上に延びるように設けられた透明な基板と、基板上に並ぶように設けられた前記各レンズ部とから構成した
ことを特徴とする請求項1または2記載の照明装置。
【請求項4】
前記各LEDと受光レンズ部とを接触させた
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の照明装置。
【請求項5】
前記集光レンズを各LEDの並設方向に延びるロッドレンズから形成し、
前記受光レンズ部をロッドレンズにおける各LED側の面によって構成した
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の照明装置。
【請求項6】
前記集光レンズを各LEDの並設方向に延びるシリンドリカルレンズから形成し、
前記受光レンズ部をシリンドリカルレンズの凸面によって構成した
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の照明装置。
【請求項7】
前記集光レンズを、それぞれ各LEDの並設方向に延びるとともに光の経路と交差する方向に並設された2枚のシリンドリカルレンズから形成し、
前記受光レンズ部を各シリンドリカルレンズのうち各LED側のシリンドリカルレンズの凸面によって構成した
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の照明装置。
【請求項8】
前記拡散レンズを各シリンドリカルレンズの間に配置した
ことを特徴とする請求項7記載の照明装置。
【請求項9】
前記拡散レンズを前記受光レンズ部と各LEDとの間に配置した
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の照明装置。
【請求項10】
前記各レンズ部を前記所定の面上に不規則に並べて配置した
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の照明装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2012-10-18 
出願番号 特願2006-308259(P2006-308259)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (G01N)
P 1 113・ 841- YA (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊田 直樹  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 信田 昌男
後藤 時男
登録日 2010-02-12 
登録番号 特許第4457100号(P4457100)
発明の名称 照明装置  
代理人 坂田 洋一  
代理人 坂田 洋一  
代理人 柳 順一郎  
代理人 矢口 太郎  
代理人 小林 幸夫  
代理人 柳 順一郎  
代理人 小原 弘揮  
代理人 矢口 太郎  
代理人 小林 幸夫  

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