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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A23L
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
管理番号 1268582
審判番号 無効2010-800108  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-06-25 
確定日 2012-12-27 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4351611号「液体調味料」の特許無効審判事件についてされた平成23年 3月 4日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成23年(行ケ)第10119号 平成23年6月3日決定)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許無効審判被請求人花王株式会社は、下記1記載の特許の特許権者であり、その経緯概要は下記2のとおりである。

1.特許第4351611号「液体調味料」
特許出願 平成16年11月16日
出願番号 特願2004-332366号
設定登録 平成21年7月31日

2.経緯概要
平成22年 6月25日 無効審判請求 請求項1-3
(無効2010-800108号)
請求人:濱道久
平成22年 9月13日 被請求人より答弁書および訂正請求書提出
平成22年10月28日 訂正拒絶理由通知
平成22年12月 1日 被請求人より訂正意見書提出
平成23年 1月17日 通知書
平成23年 2月 8日 請求人より口頭審理陳述要領書提出
被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成23年 2月22日 口頭審理
平成23年 3月 4日 第一次審決(請求成立)
平成23年 4月13日 第一次審決取消請求
(平成23年(行ケ)第10119号)
平成23年 4月22日 訂正審判請求(訂正2011-390047号)
平成23年 6月 3日 知的財産高等裁判所において、特許法第181条 第2項の規定による審決の取消しの決定
平成23年 6月13日 訂正請求のための期間指定通知
平成23年 6月27日 被請求人より訂正請求
(特許法第134条の3第5項の規定に基づき、
訂正2011-390047号の請求書に添付さ
れた訂正した明細書及び特許請求の範囲を、同条
第3項の規定により援用した特許法第134条
2第1項の訂正の請求がなされたものとみなした
。)
平成23年 8月12日 請求人より弁駁書提出

なお、平成23年6月27日に特許法第134条の2第1項の訂正の請求がされたものとみなされたため、特許法第134条の2第4項の規定により、平成22年9月13日付けの訂正請求は取り下げられたものとみなされ、また、特許法第134条の3第4項の規定により、平成23年4月22日に審判請求された訂正2011-390047号は取り下げられたものとみなされた。

第2 訂正の許否についての判断
1.訂正事項
(1)請求項1の食塩濃度を「9質量%以下」から「7?9質量%」とする。
(2)請求項1のコハク酸若しくはそのアルカリ金属塩の濃度の下限値を遊離のコハク酸換算で、「0.01質量%」から「、コハク酸二ナトリウム0.05質量%の遊離コハク酸換算量」とする。
(3)請求項1のコハク酸若しくはそのアルカリ金属塩の濃度の上限値を遊離のコハク酸換算で、「1.5質量%」から「1質量%」とする。
(4)請求項1の「、及び/又はリンゴ酸もしくはそのアルカリ金属塩を遊離のリンゴ酸換算で0.1?1.5質量%」を削除する。

2.判断
上記1.(1)は本件特許明細書【0011】中「本発明の液体調味料の(A)食塩の含有量は9質量%以下であるが、更に7?9質量%、特に8?9質量%であることが血圧降下作用及び風味(塩味を十分に感じる)の点から好ましい。」の記載に基づくもので、食塩濃度範囲を減縮するものである。上記1.(3)は本件特許明細書【0015】中「中でも乳酸、コハク酸、リンゴ酸又はその塩が好ましく、本発明の液体調味料中の含有量は、それぞれ遊離の酸に換算した場合、(中略)コハク酸は0.004?2質量%、更に0.06?1.5質量%、特に0.1?1質量%、(中略)含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。」の記載に基づくもので、コハク酸若しくはそのアルカリ金属塩の濃度の上限値を下げることで当該濃度範囲を減縮するものである。また、上記1.(4)はリンゴ酸もしくはそのアルカリ金属塩を用いる選択肢を削除するものであり、特許請求の範囲を減縮するものである。これらの訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものではない。
次に上記1.(2)について検討する。上記1.(2)は本件特許明細書【0041】表1中の試験品1-5の欄中の「(C)風味改良剤 コハク酸二ナトリウム」「風味改良剤添加量(質量%) 0.05」の記載に基づくもので、コハク酸若しくはそのアルカリ金属塩の濃度を遊離のコハク酸換算した際の下限値に関するものであるが、「コハク酸二ナトリウム0.05質量%の遊離のコハク酸換算量」の表現する内容について以下に検討する。
コハク酸二ナトリウムには無水物と六水和物が知られている。本件特許明細書にはいずれを使用したかについての明示の記載はないが、無水物を使用していた場合「コハク酸二ナトリウム0.05質量%の遊離のコハク酸換算量」は、116/162*0.05=0.04質量%となり、六水和物を使用していた場合は116/270*0.05=0.02質量%となる。いずれにしても、訂正前の「遊離のコハク酸換算で、0.01質量%」よりも下限値が上がっており、コハク酸若しくはそのアルカリ金属塩の濃度の下限値を上げることで当該濃度範囲を減縮するものである。したがって、使用するコハク酸二ナトリウムの形態に関わらず、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。そして、当該訂正は新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものではない。

3.弁駁書における請求人の主張について
平成23年8月12日付け弁駁書において、請求人は訂正請求について以下のような主張を行っているので、これについて検討する。

(1)請求人の主張
コハク酸二ナトリウムには無水物と六水和物とが存在し、無水物であるか六水和物であるかによって、「コハク酸二ナトリウム0.05質量%の遊離コハク酸換算量」には二つの下限値が存在することになる。このように、遊離コハク酸換算量の下限値をコハク酸二ナトリウムの遊離コハク酸換算量で規定することによって、訂正後の遊離コハク酸換算量の数値範囲自体が不明確となる。したがって、本件訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明とも認められない。以上のとおりであるから、本件訂正事項は、特許法第134条の2第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものではなく、訂正後の数値範囲自体が不明確となる不適法な訂正であるから、本件訂正事項の請求は認容されるべきではない。

(2)検討
コハク酸二ナトリウムが無水物か六水和物かにかかわらず、本件訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものと解せることは、上記第2 2.で述べたとおりである。また、特許法第134条の2第5項で読み替えて準用する特許法第126条第5項が適用されるのは、特許無効審判の請求がされていない請求項に係る第1項ただし書第1号又は第2号であるが、本件無効審判では請求項1?3全てについて無効審判が請求されており、いわゆる独立特許要件は課されないから、本件訂正請求の認否判断は「訂正後の数値範囲自体が不明確となる」か否かには影響を受けない。
よって、本件訂正請求に係る請求人の主張は採用できない。

4.小括
以上のとおりであるから、本件訂正事項は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第3、4項の規定に適合するものであるから、請求項1および請求項1を引用する請求項2、3に係る本件訂正を認める。

第3 本件審判請求について
1.本件発明の認定
上述のように、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?3に係る発明は、訂正後の特許請求の範囲【請求項1】?【請求項3】に記載した以下のとおりのものと認める。(以下、「本件特許発明1?3」という。)

「【請求項1】
次の成分(A)?(C):
(A)食塩7?9質量%、
(B)カリウム1?4.2質量%、
(C)コハク酸若しくはそのアルカリ金属塩を遊離のコハク酸換算で、コハク酸二ナトリウム0.05質量%の遊離コハク酸換算量?1質量%
を含有する減塩醤油類。

【請求項2】
減塩醤油類中の(D)窒素の含有量が、アスパラギン酸及びグルタミン酸により1.6質量%以上としたものである請求項1記載の減塩醤油類。

【請求項3】
減塩醤油類中にアスパラギン酸を1?3質量%、グルタミン酸を1?2質量%含有し、かつアスパラギン酸/(B)カリウム≧0.25(質量比)である請求項1又は2記載の減塩醤油類。」

2.請求人の主張、および被請求人の主張
これに対して、請求人は、証拠方法として以下の甲第1?4号証を提出し、本件特許発明1?3について、以下の理由により無効にすべきであると主張している。

(1)本件特許の発明の詳細な説明には、請求項1に記載された数値限定全体にわたる十分な数の具体例が示されておらず、発明の詳細な説明の他所の記載から見ても、また、出願時の技術常識に照らしても、当該具体例から請求項に記載された数値範囲全体まで拡張ないし一般化できるとは言えず、また、本件特許の発明の詳細な説明には、当業者が本件特許発明1?3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないため、特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。(以下、「無効理由1」という。)
(2)本件特許の請求項1に記載の「(A)食塩9質量%以下、」については、「以下」という上限だけを示す数値範囲限定がある結果、発明の範囲が不明確であるため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、同法第123条第1項第4号に該当し、請求項1を引用する請求項2、3についても同様であるから、本件特許発明1?3は無効とすべきである。(以下、「無効理由2」という。)
(3)本件特許の請求項1に係る発明は、ア 構成要件(C)としてコハク酸若しくはそのアルカリ金属塩を採用した場合、甲第1号証と本件特許の請求項1に係る発明との相違点は塩化カリウム含有量のみで、その点は甲第3号証に記載されているから、本件特許の請求項1に係る発明は甲第1号証と甲第3号証に記載された発明とから当業者が容易になし得たものである、イ 構成要件(C)としてリンゴ酸若しくはそのアルカリ金属塩を採用した場合、甲第1号証と本件特許の請求項1に係る発明との相違点は塩化カリウム含有量に加えて、リンゴ酸若しくはそのアルカリ金属塩の含有量も相違点となるが、その点は、甲第2号証に記載されているから、本件特許の請求項1に係る発明は甲第1号証?甲第3号証に記載された発明から当業者が容易になし得たものである、ウ 甲第3号証と甲第2号証に記載された発明とから当業者が容易になし得たものである、とし、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていないから、同法第123条第1項第2号に該当し、請求項2、3についても同様であるから、本件特許発明1?3は無効とすべきである。(ア、イについては、平成23年2月22日付第1回口頭審理調書参照)(以下、「無効理由3」という。)

甲第1号証:特開2002-345430号公報
甲第2号証:特開2004-275097号公報
甲第3号証:特開2002-325554号公報
甲第4号証:特開平11-187841号公報

これに対して、被請求人は、本件審判の請求は成り立たないと主張している。(証拠の提出無し)

第4 無効理由1(サポート要件および実施可能要件違反)について
1.請求人の主張
請求人は、本件特許は、以下の理由で特許法第36条第6項第1号および同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないと主張する。

(1)本件特許発明1の構成要件(食塩、カリウム、コハク酸若しくはそのアルカリ金属塩)の組み合わせについて
発明の詳細な説明の表1及び表2によれば、食塩、カリウム、コハク酸若しくはそのアルカリ金属塩を含む減塩醤油の各成分の含有量の数値範囲は、ナトリウムが2.93?3.37質量%(食塩相当で7.44?8.56質量%)、カリウムが0.25?4.43質量%、コハク酸又はコハク酸二ナトリウムが0?2.00質量%(遊離のコハク酸換算で0?0.14質量%)である。
食塩、コハク酸若しくはそのアルカリ金属塩については、きわめて狭い範囲でしか立証されておらず、それ以外の範囲で良好な塩味が得られるか否かは不明である。また、出願時の技術常識からみて、それ以外の範囲で良好な塩味が得られるか否かを推認することは不可能である。

(2)本件特許発明1の構成要件(食塩、カリウム、リンゴ酸若しくはそのアルカリ金属塩)の組み合わせについて
発明の詳細な説明の表1及び表2によれば、食塩、カリウム、リンゴ酸若しくはそのアルカリ金属塩を含む減塩醤油の各成分の含有量の数値範囲は、ナトリウムが3.36質量%(食塩相当量で8.5質量%),カリウムが2.5質量%、リンゴ酸が0.2質量%の一点のみである。
すなわち、当該組み合わせについては、わずか1つの実施例でしか立証されていない。そのため、それ以外の範囲で良好な塩味が得られるか否かは不明である。また、出願時の技術常識からみて、それ以外の範囲で良好な塩味が得られるか否かを推認することは不可能である。

2.判断
(1)本件特許発明1の構成要件(食塩、カリウム、コハク酸若しくはそのアルカリ金属塩)の組み合わせについて

まず、食塩濃度について検討する。特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(平成17年(行ケ)第10042号特許取消決定取消請求事件(平成17年11月11日判決言渡))。
ここで、本件特許明細書の発明の詳細な説明中「本発明は、食塩含有量が低いにもかかわらず塩味のある液体調味料に関する。」(【0001】)、「本発明の目的は、食塩濃度が低いにもかかわらず塩味のある、液体調味料を提供することにある。」(【0006】)、「本発明によれば、食塩含有量が9質量%以下であるにもかかわらず、塩味を十分に感じることのできる液体調味料が得られる。」(【0010】)などから判断するに、本件特許発明1は、少なくとも「食塩濃度が低いにもかかわらず塩味のある減塩醤油を得ること」を課題とするものと認められる。そこでまず、請求項1に係る発明が、当該課題が解決できることを当業者が認識できるように発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものであるかについて、以下検討する。
【表1】において、試験品1-17はカリウム濃度が本件特許発明1の範囲外であることを考慮すると、本件特許発明1に関して【表1】で実際に検討されているのは食塩濃度がナトリム含有量で2.97質量%(試験品1-16)から3.26質量%(試験品1-19)の数値範囲となる。また、本件特許発明1に関して【表2】で実際に検討されているのは、食塩濃度がナトリウム含有量で3.34質量%(試験品2-8)から3.36質量%(試験品2-4)の数値範囲である。仮に全てのナトリウムが食塩由来であったと仮定した場合、【表1】で実際に検討されている数値範囲は食塩濃度でおよそ7.5質量%?8.2質量%であり、【表2】で実際に検討されている数値範囲はおよそ8.50質量%?8.54質量%である。実際には、食塩以外の由来のナトリウムも存在することから、一概に食塩濃度を計算することは困難であるが、いずれにしても、本件特許発明1に記載されたような「(A)食塩濃度7?9質量%」の全範囲に渡る濃度範囲で実際に検証が行われているとは言えない。
ここで、上述のように、本件特許発明1は、「食塩濃度が低いにもかかわらず塩味のある減塩醤油を得ること」を課題のひとつとするから、請求項1に係る発明の下限である食塩濃度7質量%の際に「食塩濃度が低いにもかかわらず塩味のある減塩醤油を得ること」ができることが、当業者が認識できるように発明の詳細な説明に記載された範囲を超えていれば、サポート要件違反となるし、逆に範囲内であれば食塩濃度におけるサポート要件違反はないことになる。
食塩濃度7質量%とは、実際に実施例で実証されている7.5質量%の93%程度の食塩濃度であり、食塩濃度7質量%はそれ自体相当程度の塩味を呈すると考えられるところ、食塩濃度7.5質量%の際に達成されていた「食塩濃度が低いにもかかわらず塩味のある減塩醤油類」を得る点は、食塩濃度が7質量%になっても消失するとは考えにくく、苦みや減塩醤油としての総合評価はさておき、当該課題については、食塩濃度が7質量%であっても、本来の食塩濃度に比して強い塩味が達成されていると考えるのが自然である。
とすれば、食塩濃度が7?9質量%である請求項1において、「食塩濃度が低いにもかかわらず塩味のある減塩醤油を得ること」という本件請求項1に係る発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように発明の詳細な説明に記載された範囲を超えているとは言うことができず、食塩濃度についてサポート要件違反とは言うことができない。
次に、コハク酸若しくはそのアルカリ金属塩濃度について検討する。本件の発明の詳細な説明の【表1】および【表2】によれば、コハク酸二ナトリウムで0.01?2.00質量%の場合(試験品1-4、試験品1-8。コハク酸二ナトリウムが無水物の場合、遊離コハク酸換算で0.007?1.46質量%に相当。六水和物の場合、遊離コハク酸換算で0.004?0.88質量%に相当。)と、コハク酸で0.2質量%(試験品2-4)の場合が実際に検証されている。試験品1-8はしょうゆとしての風味の好ましさで「2」、コメントで「味のバランスがくずれる」、と記載されているように、減塩醤油類として、優れたものであるとは言えない。しかしながら、対照と比べて塩味が強いとしたパネルが18人(20人中)いたことが記載されており、本件特許発明の目的の一つが、「食塩含有量が低いにもかかわらず塩味のある、液体調味料を提供する」(本件明細書【0006】)ことであることに鑑み、試験品1-8においても、塩味の実証はなされていると解せられる。請求項1で規定されているコハク酸若しくはそのアルカリ金属塩濃度範囲は、遊離のコハク酸換算でコハク酸二ナトリウム0.05質量%の遊離コハク酸換算量?1質量%(すなわち、コハク酸二ナトリウムが無水物の場合、遊離コハク酸換算で0.04質量%?1質量%、六水和物の場合、遊離コハク酸換算で0.02質量%?1質量%)であるから、コハク酸二ナトリウムの無水物を使用した場合、請求項1に記載のコハク酸濃度範囲の全部分において、塩味が得られるかの検証が実際に行われていると認められる。
コハク酸二ナトリウムとして六水和物を使用した場合は、請求項1におけるコハク酸若しくはそのアルカリ金属塩の遊離コハク酸換算での上限値が1質量%であるのに対し、実際に実証されているのは0.88質量%までなので、全ての範囲において実施例での検証がなされているわけではない。しかしながら、実際に実証がなされている0.88質量%は請求項1の上限である1質量%の88%に該当するもので、コハク酸若しくはそのアルカリ金属塩濃度範囲の相当部分については実施例における検証がなされているし、0.88質量%の際に達成されていた「食塩濃度が低いにもかかわらず塩味のある減塩醤油」を得る点は、遊離コハク酸濃度が1質量%になっても消失するとは考えにくく、苦味や減塩醤油としての総合評価はさておき、当該課題については遊離コハク酸濃度が1質量%であっても、達成されていると考えるのが自然である。したがって、この範囲については、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されていないとは言えない。
また、このような課題を解決する本件特許発明1の「減塩醤油類」についてはそれを生産し、使用することが困難であるとも言えない。
したがって、本件特許の請求項1について、食塩濃度、コハク酸若しくはそのアルカリ金属塩の濃度範囲に関し、発明の詳細な説明に記載されていない、あるいは当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないとまでは言えない。また、請求項2、3は請求項1を引用してさらに限定するものであって、請求項2、3の発明特定事項は本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているものであって、そして請求項2、3で限定した事項が当該課題解決を妨げるものとも言えないので、請求項2、3も当然、当該課題を解決するものであるから、請求項2、3についても発明の詳細な説明に記載されていない、あるいは当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないとまでは言えない。このため、本件特許発明1?3の構成要件(食塩、カリウム、コハク酸若しくはそのアルカリ金属塩)の組み合わせについて、特許法第36条第6項第1号および同法第36条第4項第1号の要件を満たしていないとは言えない。

(2)本件特許発明1の構成要件(食塩、カリウム、リンゴ酸若しくはそのアルカリ金属塩)の組み合わせについて
上述のように、本件訂正請求が認められる結果、リンゴ酸若しくはそのアルカリ金属塩を使用する場合については削除されている。このため、この点についての審判請求人主張の無効理由には理由がない。

3.小括
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1?3は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていないとは言えず、また、本件特許の発明の詳細な説明は同法第36条第4項第1号の要件を満たしていないとは言えない。

第5 無効理由2(明確性違反)について
1.請求人の主張
本件の請求項1に記載の発明特定事項のうち、「(A)食塩9質量%以下、」については、「以下」という上限だけを示す数値範囲限定がある結果、発明の範囲が不明確である。仮に「(A)食塩9質量%以下、」が0を含む数値範囲限定である場合、本件特許の請求項1に係る発明においては、食塩が必須成分ではなく任意成分であると解される。
一方、本件特許公報の発明の詳細な説明には、「本願で記載する「醤油」は、日本農林規格の「しょうゆ」と同一概念である」と記載されている。ここで、日本農林規格の「しょうゆ」には、食塩水の形で添加された食塩が必須成分として含まれていることから、当該成分が任意成分であると解される請求項1の記載と矛盾する。また、発明の詳細な説明に、それが任意成分であることが理解できるような記載も存在しない。
そのため、本件特許の請求項1の用語は多義的であり、発明の範囲が不明確である。また、請求項1に従属する請求項2、3についても同様である。

2.判断
上述のように本件訂正請求は認められるから、本件請求項1の食塩濃度は「7?9質量%」である。したがって、本件特許の請求項1に係る発明において、食塩が任意成分であると解する余地はなく、発明の範囲が不明確になるような用語の多義性の問題はない。
よって、本件特許の請求項1は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていないとは言えないし、請求項1を引用する請求項2、3も同様である。

第6 無効理由3(進歩性違反)について
1.請求人の主張
請求人は、本件特許の請求項1に係る発明について、(1)構成要件(C)としてコハク酸若しくはそのアルカリ金属塩を採用した場合、甲第1号証と本件特許の請求項1に係る発明との相違点は塩化カリウム含有量のみで、その点は甲第3号証に記載されているから、本件特許の請求項1に係る発明は甲第1号証と甲第3号証に記載された発明とから当業者が容易になし得たものである、(2)構成要件(C)としてリンゴ酸若しくはそのアルカリ金属塩を採用した場合、甲第1号証と本件特許の請求項1に係る発明との相違点は塩化カリウム含有量に加えて、リンゴ酸若しくはそのアルカリ金属塩の含有量も相違点となるが、その点は、甲第2号証に記載されているから、本件特許の請求項1に係る発明は甲第1号証?甲第3号証に記載された発明から当業者が容易になし得たものである、(3)甲第3号証と甲第2号証に記載された発明とから当業者が容易になし得たものである、とし、請求項2、3に係る発明についても同様に当業者が容易になし得たものである、と主張している。((1)(2)については、平成23年2月22日付第1回口頭審理調書参照)
このうち、(2)の理由については、上述のように本件訂正請求が認められる結果、構成要件(C)としてリンゴ酸若しくはそのアルカリ金属塩を採用した場合については削除されているので、その対象を欠くものであって、この理由により本件特許の請求項1?3に係る発明についての特許を無効とすることができないことは明らかであるから、以下、(1)および(3)について検討する。

2.甲第1?3号証の記載
(1)甲第1号証
ア 「食塩、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸およびコハク酸またはその塩を含有する食塩味調味料。」(【請求項9】 )

イ 「飲食品の美味しさを損なうことなく食塩、特にナトリウムの摂取量を減少させる方法は、一般に減塩方法と呼ばれている。減塩方法としては、それ自身が食塩味を呈する物質(以下、食塩代替物質という)を使用する方法、それ自身は食塩味を呈しないが食塩と共存させるとその食塩味を増強する物質(以下、食塩味増強物質という)を使用する方法等が知られている。
食塩代替物質としては、例えばカリウム塩、アンモニウム塩、塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸からなるペプチド、グルコン酸のアルカリ金属塩等が知られている。食塩味増強物質は、食塩味を殆どまたは全く呈しないため、それ自身で食塩代替することはできないが、食塩の食塩味を増強することにより食塩の使用量を減少させ、減塩させることができる。」(【0005】?【0006】)

ウ 「このように、減塩方法として食塩代替物質を使用する方法や、食塩味増強物質を使用する方法が数多く提案されている。しかし、嗜好性、効果、経済性、安全性等の点から満足すべき減塩方法は開発されていない。
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、飲食品の食塩味増強方法、食塩味増強剤、食塩味調味料および食塩味増強飲食品を提供することにある。」(【0008】?【0009】)

エ 「【発明の実施の形態】酸性アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸等があげられ、アスパラギン酸が好適に用いられる。塩基性アミノ酸としては、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等があげられ、アルギニンが好適に用いられる。」(【0020】)

オ 「本発明の食塩味増強方法の対象となる飲食品としては、食塩を含有しない飲食品でも食塩を含有する飲食品でも、飲食時に食塩が含まれるものであれば特に制限はないが、減塩飲食品が好適に用いられる。減塩飲食品は、通常の食塩濃度に比べて食塩濃度が低い濃度の飲食品をいうが、一般には、食塩濃度が通常の食塩濃度の80%以下である飲食品をいう。通常の食塩濃度は、飲食品の種類、製品により異なるが、本発明で適用される飲食品の食塩濃度は特に制限はない。
飲食品としては、例えば味噌、醤油、たれ、だし、ドレッシング、マヨネーズ、トマトケチャップ等の調味料、お吸い物、コンソメスープ、卵スープ、ワカメスープ、フカヒレスープ、ポタージュ、みそ汁等のスープ類、麺パスタ類(そば、うどん、ラーメン、パスタ等)のつゆ、スープ、ソース類、おかゆ、雑炊、お茶漬け等の米調理食品、ハム、ソーセージ、チーズ等の畜産加工品、かまぼこ、干物、塩辛、珍味等の水産加工品、漬物等の野菜加工品、ポテトチップス、煎餅、クッキー等の菓子スナック類、煮物、揚げ物、焼き物、カレー等の調理食品等があげられる。」(【0026】?【0027】)

カ 「本発明の食塩味調味料は、食塩、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸およびコハク酸またはその塩を含有し、必要に応じて、無機塩、酸、アミノ酸類、核酸系呈味物質、糖類、天然調味料、香辛料、賦形剤等、飲食品に使用可能な各種添加物を含有していてもよい。
無機塩としては、食塩、塩化カリウム、硫酸マグネシウム等があげられる。酸としては、アスコルビン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、脂肪酸等のカルボン酸、およびそれらの塩等があげられる。該塩としては、ナトリウムおよびカリウム塩等があげられる。」(【0029】?【0030】)

キ 「アミノ酸類としては、グルタミン酸ナトリウム、グリシン等があげられる。核酸系呈味物質としては、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等があげられる。糖類としては、ショ糖、ブドウ糖、乳糖等があげられる。」(【0031】)

ク 「飲食品に使用する食塩味増強剤または食塩味調味料の量は、目的とする飲食品中の食塩濃度にもよるが、目的とする飲食品重量に対して、酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸との混合物換算で0.2?2重量%であることが好ましく、0.5?1重量%であることがさらに好ましく、遊離のコハク酸換算で0.005?0.5重量%であることが好ましく、0.005?0.05重量%であることがさらに好ましい。」(【0034】)

(2)甲第2号証
ア 「しかしながら、上記のような従来の食塩代替物質や塩味増強剤を使用した減塩方法は、特に得られる飲食品の風味の点で十分に満足できるものではなかった。例えば、塩化カリウムや塩化アンモニウムは独特の苦味を有しており、タンパク加水分解物も苦味を有するペプチドを含んでいるため、飲食品に塩味だけでなく、好ましくない風味までも付与してしまうという問題があった。
したがって、本発明の目的は、飲食品の風味を良好に維持しつつ、その塩味を効果的に増強させ、結果的に塩分添加量を減少できる飲食品の塩味増強方法及びそれに用いられる調味料を提供することにある。」(【0010】?【0011】)

イ 「γ-アミノ酪酸と、有機酸及び/又はその塩とを含有することを特徴とする調味料。」(【請求項6】)

ウ 「本発明で用いられる有機酸としては、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸等が例示でき、これらの有機酸の混合物を用いることもできる。また、有機酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が例示できる。」(【0028】)

エ 「上記調味料は、GABA1質量部に対して、有機酸及び/又はその塩を0.0005?2,000質量部、更には昆布エキスを0.1?2000,000質量部の比率で含むことが好ましく、有機酸及び/又はその塩を0.05?20質量部、更には昆布エキスを10?1,000質量部の比率で含むことがより好ましい。GABAに対する、有機酸及び/又はその塩や昆布エキスの含有比率が上記範囲外であると、有機酸の有する好ましくない風味や昆布の風味が強くでてしまい、少なすぎると十分な塩味増強効果が得られない。」(【0033】)

オ 「本発明の塩味増強方法においては、飲食品中に、GABAが0.00005?1質量%、有機酸及び/又はその塩が0.0005?1質量%となるように添加することが好ましく、GABAが0.0002?0.004質量%、有機酸及び/又はその塩が0.001?0.05質量%となるように添加することがより好ましい。GABAや、有機酸及び/又はその塩の添加量が多すぎると、飲食品にGABAや有機酸の有する好ましくない風味が付与されてしまい、少なすぎると十分な塩味増強効果が得られない。」(【0042】)

(3)甲第3号証
ア 「塩化ナトリウム含量が3?20g/dL、塩化カリウム含量が1.5?17g/dLかつNa/K重量比が2以下であり、糖類および/または昆布エキスを含む液体調味料。」(【請求項1】)

イ 「旨味調味料、果汁、酢および甘味料から選択される1種類または複数を更に含有する、請求項1?5記載の液体調味料。」(【請求項6】)

ウ 「【課題を解決するための手段】本発明者らは、Na/K重量比が好適とされている2以下で、塩化ナトリウムの代替塩として使用する塩化カリウム由来の独特な異味が消去された液体調味料を開発すべく鋭意検討した結果、糖類および/または昆布エキスを加えることにより、下記の如く優れた液体調味料を提供することができることを見出した。」(【0008】)

エ 「本発明において液体調味料とは、醤油をベースとする調味料を意味し、例えば、醤油を始め、各種つゆ、ポン酢等を例示することができる。」(【0010】)

オ 「旨味調味料としては、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、グリシン等のアミノ酸系旨味調味料、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等の核酸系旨味調味料、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の有機酸塩を挙げることができる。また、甘味料としては、甘草エキス等の植物抽出物を挙げることができる。このような旨味調味料や甘味料等を使用することにより、場合により、糖類や昆布エキスの含量を減らすことができる。」(【0016】)

カ 「実施例8
昆布醤油(昆布エキス含量2.0g/dL)
総窒素含量1.70g/dL、塩化ナトリウム含量9.75g/dLの醤油690mLに塩化カリウム54.4g、昆布エキス20g、グルタミン酸ナトリウム15g、甘草エキス0.8gを加えた後、水を用いて1000mLにメスアップし、最終的な塩化ナトリウム含量7.03g/dL、塩化カリウム含量5.44g/dLかつNa/K重量比0.97の標記液体調味料を調製した。」(【0026】)

3.本件特許の請求項1に係る発明が、甲第1号証と甲第3号証に記載された発明から当業者が容易になし得たものであるかについての検討
(1)甲第1号証に記載の発明について
まず、甲第1号証に記載の事項について検討する。2.(1)アの記載より、食塩、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸およびコハク酸またはその塩を含有する食塩味調味料が記載されている。そして、2.(1)オには、甲第1号証記載の発明の食塩味増強技術の対象となる飲食品として減塩飲食品が挙げられ、また飲食品として醤油が例示されている。そして、減塩飲食品は一般には食塩濃度が通常の食塩濃度の80%以下である飲食品を言うことが記載されている。したがって、甲第1号証には、食塩、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸およびコハク酸またはその塩を含有する食塩味調味料として、減塩醤油もその対象になり得ること、そして、通常の醤油(濃口醤油)は食塩濃度が16?17%程度であることが技術常識であるから、その80%以下、すなわち、その減塩醤油の食塩濃度は14%以下程度であることが記載されていると言える。また、2.(1)クに「飲食品に使用する食塩味増強剤または食塩味調味料の量は、目的とする飲食品中の食塩濃度にもよるが、目的とする飲食品重量に対して、酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸との混合物換算で0.2?2重量%であることが好ましく、0.5?1重量%であることがさらに好ましく、遊離のコハク酸換算で0.005?0.5重量%であることが好ましく、0.005?0.05重量%であることがさらに好ましい。」とあることから、コハク酸またはその塩の含有量は、遊離のコハク酸換算で0.005?0.5重量%が好ましいことが記載されている。
また、2.(1)カでは「本発明の食塩味調味料は、食塩、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸およびコハク酸またはその塩を含有し、必要に応じて、無機塩、酸、アミノ酸類、核酸系呈味物質、糖類、天然調味料、香辛料、賦形剤等、飲食品に使用可能な各種添加物を含有していてもよい。」とされ、無機塩の例として「塩化カリウム」がその一つとして挙げられており、食塩、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸およびコハク酸またはその塩を含有する食塩味調味料に塩化カリウムをさらに含有させてもよいことが記載されている。
以上を総合すると、甲第1号証には、「食塩、塩化カリウム、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸およびコハク酸又はその塩を含有し、食塩濃度は14%程度以下、コハク酸又はその塩の含有量は遊離のコハク酸換算で0.005?0.5重量%が好ましい減塩醤油類」について記載されている。

(2)対比
次いで、本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明を対比する。本件特許発明の「コハク酸若しくはそのアルカリ金属塩を遊離のコハク酸換算で、コハク酸二ナトリウム0.05質量%の遊離コハク酸換算量」は、コハク酸二ナトリウムの無水物を使用している場合、0.04質量%であり、六水和物を使用している場合は、0.02質量%であるから、両者は
「(A)食塩7?9質量%、
(B)カリウム
(C)コハク酸若しくはそのアルカリ金属塩を遊離のコハク酸換算で、コハク酸二ナトリウム0.05質量%の遊離コハク酸換算量?0.5質量%、
を含有する減塩醤油類」
である点で一致し、
本件特許発明1ではカリウム1?4.2質量%を含むものであるのに対し、甲第1号証に記載された発明ではカリウム含量が不明な点(相違点(ア))
で、相違する。

(3)判断
上記相違点(ア)について検討する。
まず、甲第1号証記載のカリウムについて検討する。2.(1)イの記載より、飲食品の美味しさを損なうことなく食塩、特にナトリウムの摂取量を減少させる減塩方法として、カリウム塩を食塩代替物質として使用することで減塩する方法が従来より知られていることが読み取れ、2.(1)ウの記載より、カリウム塩を食塩代替物質として使用することを含め従来の方法では、嗜好性、効果、経済性、安全性等の観点から満足するものとはなっていなかったことが読み取れる。そして、そのような従来の問題点を解決すべく2.(1)ア記載の請求項9に係る発明がなされたもので、食塩、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸およびコハク酸又はその塩を含有する食塩味調味料という具体的構成を採用することで、従来の問題点の解決を図ったものである。とすると、嗜好性等の観点から問題があると従来より認識されていたカリウム塩を、2.(1)アに記載されたような食塩、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸およびコハク酸又はその塩を含有する食塩味調味料に、何らの工夫無しに食味に影響する程度の量を付加することは考えられず、付加する場合には、嗜好性等の観点から問題が生じないことが確認できる範囲でなされることになるから、付加するカリウム塩濃度については慎重な検討が必要になるはずである。
次いで、甲第3号証の記載について検討する。上記2.(3)ウの記載より、塩化ナトリウムの代替塩として使用されていた塩化カリウムに独特の異味があること、またその異味を消去すべく糖類および/または昆布エキスを加えることにより優れた液体調味料を提供することができたことが読み取れる。具体的には、上記2.(3)ア、イの記載より、塩化ナトリウム含量が3?20g/dL、塩化カリウム含量が1.5?17g/dLかつNa/K重量比が2以下であり、糖類および/または昆布エキスに、旨味調味料を含む液体調味料であり、旨味調味料としては上記2.(3)オの記載よりコハク酸ナトリウムが一例として挙げられている。そして、2.(3)カには、実施例8として、昆布醤油(昆布エキス含量2.0g/dL)であって、総窒素含量1.70g/dL、塩化ナトリウム含量9.75g/dLの醤油690mLに塩化カリウム54.4g、昆布エキス20g、グルタミン酸ナトリウム15g、甘草エキス0.8gを加えた後、水を用いて1000mLにメスアップし、最終的な塩化ナトリウム含量7.03g/dL、塩化カリウム含量5.44g/dLかつNa/K重量比0.97の標記液体調味料、つまり、食塩7.03質量%、カリウム2.86質量%を含む醤油類が記載されている。
すなわち、甲第3号証に記載の発明は、塩化カリウムの異味を消去する目的を達成するためになされたもので、糖類および/または昆布エキスを必須の構成要件として当該目的を達成しようとするものであって、そのような手段を採用することではじめて甲第3号証記載のような濃度で塩化カリウムを使用した場合の塩化カリウムの異味が消去されているものである。仮に、糖類および/または昆布エキス以外の物質で当該異味問題を解決しようとする場合は、糖類および/または昆布エキスの手段で行う場合と必ずしも作用機序が同じでないため、糖類および/または昆布エキスで異味が解決できたカリウム濃度がそのまま該当するとはおよそ考えられず、物質毎に、異味問題が解決されるカリウム濃度範囲を検討する必要があると認められる。甲第1号証においてカリウム塩を付加する場合には、その濃度等について慎重な検討が必要になることは既に述べたとおりであり、糖類および/または昆布エキスを使用している甲第3号証記載のカリウム濃度を、糖類および/または昆布エキスという塩化カリウムの異味消去手段をそもそも使用していない甲第1号証に単純に適用することはできない、と考えるのが当業者にとって妥当である。
とすれば、甲第1号証に記載のカリウム塩に関し、その濃度を甲第3号証に記載の範囲とするといった、請求人主張の組み合わせを当業者が行うとは認められない。このため、甲第1号証と甲第3号証に基づいて当業者が容易に本件特許の請求項1に係る発明をすることができたとは、認められない。

4.本件特許の請求項1に係る発明が、甲第3号証と甲第2号証に記載された発明とから当業者が容易になし得たものであるかについての検討
(1)甲第3号証に記載の発明について
甲第3号証に記載された発明について検討する。上記2.(3)ウの記載より、塩化ナトリウムの代替塩として使用されていた塩化カリウムに独特の異味があること、またその異味を消去すべく糖類および/または昆布エキスを加えることにより優れた液体調味料を提供することができたことが読み取れる。具体的には、上記2.(3)ア、イの記載より、塩化ナトリウム含量が3?20g/dL、塩化カリウム含量が1.5?17g/dLかつNa/K重量比が2以下であり、糖類および/または昆布エキスに、旨味調味料を含む液体調味料であり、旨味調味料としては上記2.(3)オの記載よりコハク酸ナトリウムが一例として挙げられている。そして、2.(3)エより、液体調味料として醤油が例示されている。また、2.(3)カには、実施例8として、昆布醤油(昆布エキス含量2.0g/dL)であって、総窒素含量1.70g/dL、塩化ナトリウム含量9.75g/dLの醤油690mLに塩化カリウム54.4g、昆布エキス20g、グルタミン酸ナトリウム15g、甘草エキス0.8gを加えた後、水を用いて1000mLにメスアップし、最終的な塩化ナトリウム含量7.03g/dL、塩化カリウム含量5.44g/dLかつNa/K重量比0.97の標記液体調味料、すなわち、食塩7.03質量%、カリウム2.86質量%を含む醤油類が記載されている。
すなわち、甲第3号証には、「糖類および/または昆布エキスに、食塩7.03質量%、カリウム2.86質量%、コハク酸ナトリウム、を含む減塩醤油類」が記載されている。

(2)対比
甲第3号証に記載された発明と本件特許発明1とを対比すると、両者は、
「(A)食塩7?9質量%、
(B)カリウム1?4.2質量%
(C)コハク酸ナトリウム
を含有する減塩醤油類」
である点で一致し、
本件特許発明1では糖類および/または昆布エキスは必須の構成要件ではないのに対し、甲第3号証に記載の発明では課題解決のために必須の構成要件である点(相違点(イ))
および
コハク酸若しくはそのアルカリ金属塩の含有量が本件特許発明1では遊離のコハク酸換算でコハク酸二ナトリウム0.05質量%の遊離コハク酸換算量?1質量%であるのに対し、甲第3号証では記載がない点(相違点(ウ))
で相違する。

(3)判断
まず、上記相違点(ウ)について検討する。
甲第2号証の記載について検討する。2.(2)アより、甲第2号証記載の発明は、飲食品の風味を良好に維持しつつ、その塩味を効果的に増強させ、結果的に塩分添加量を減少できる飲食品を得ることを目的とし、具体的には2.(2)イに記載のようなγ-アミノ酪酸(GABA)と、有機酸及び/又はその塩とを含有することを特徴とする調味料という構成で、当該目的を達成しようとしたものである。有機酸としては、2.(2)ウに記載されているように、リンゴ酸やコハク酸、そしてそれらのナトリウム塩等が例示されている。そして、2.(2)エより、有機酸及び/又はその塩の濃度は、GABA1質量部に対して、有機酸及び/又はその塩を0.0005?2,000質量部とすることが望ましいとされ、GABAに対する、有機酸及び/又はその塩や昆布エキスの含有比率が上記範囲外であると、有機酸の有する好ましくない風味や昆布の風味が強くでてしまい、少なすぎると十分な塩味増強効果が得られないことが記載されている。また、2.(2)オより、GABAや、有機酸及び/又はその塩の添加量が多すぎると、飲食品にGABAや有機酸の有する好ましくない風味が付与されてしまい、少なすぎると十分な塩味増強効果が得られないことが、記載されている。
これらのことから、甲第2号証に記載の発明は、GABAを必須の構成要件とし、使用する有機酸の量もGABAに対する比で定められているもので、そもそもGABAを使用しない甲第3号証におけるコハク酸若しくはそのアルカリ金属塩の使用量として、GABAをもとに定められる甲第2号証に記載された量を採用することはできないと認められる。
次いで、上記相違点(イ)について検討する。上述のように、甲第3号証記載の発明においては糖類および/または昆布エキスが課題解決のために必須の構成要件である一方、本件特許発明1においては、糖類および/または昆布エキスについての記述が全く存在せず、減塩醤油であれば当然それが添加されているという技術常識もない。また、甲第2号証や本件特許出願時の技術常識を参酌しても、甲第3号証記載の発明から糖類および/または昆布エキスの使用を除くといった思想は見あたらないことから、糖類および/または昆布エキスを必須の構成要件とする甲第3号証から、糖類および/または昆布エキスを使用しない本件特許発明1を導き出すことは、当業者にとって容易であるとは認められない。
よって、甲第3号証と甲第2号証に基づいて当業者が容易に本件特許の請求項1に係る発明をすることができたとは、認められない。

なお、甲第4号証は、請求人により本件特許発明3の進歩性欠如という無効理由に対して提示されたものであるが、上述のように本件特許発明1の進歩性が否定されない以上、甲第4号証について検討するまでもなく、本件特許発明1を引用し、さらに限定する本件特許発明3の進歩性も否定されない。

5.小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲第1?4号証に基づいて当業者が容易になし得たものであるとは認められず、本件特許発明1を引用してさらに限定する本件特許発明2、3についても同様であると認められる。

第7 弁駁書における請求人の主張について
平成23年8月12日付け弁駁書において、仮に訂正請求が認められた場合について、請求人は概ね下記(1)?(6)のような理由により、訂正後の請求項1?3の記載は独立特許要件を満たさない旨の主張を行っているので、各々について検討する。

(1)実施例において使用されたコハク酸二ナトリウムが六水和物である場合、コハク酸二ナトリウムが無水物である場合が明細書に記載されていないので、サポート要件および実施可能要件違反である。また、実施例において使用されたコハク酸二ナトリウムが無水物である場合、コハク酸二ナトリウムが六水和物である場合が明細書に記載されていないので、サポート要件および実施可能要件違反である。
(2)コハク酸含有量の上限値に関して、請求項1は食塩、カリウム、コハク酸若しくはそのアルカリ金属塩を構成要件とする減塩醤油であるため、表1を基にサポート要件が判断されるべきであるし、請求項2はアスパラギン酸およびグルタミン酸の添加により窒素含有量が1.6質量%以上に調整されているため、表2を基にサポート要件が判断されるべきである。とすると、0.15?1質量%(無水物の場合)、0.09?1質量%(六水和物)の数値範囲がサポートされていない。コハク酸含有量は所定の数値範囲を超えると減塩醤油としての味のバランスが崩れ、発明の課題を解決することができないので、出願時の技術常識に照らしても、数値範囲全体にまで拡張乃至一般化できない。よって、本件特許の請求項1、および請求項1を引用する請求項3はサポート要件および実施可能要件に違反している。
(3)食塩の含量について、実施例でサポートされているのは7.5?8.2質量%のみである。そして、本件特許発明は減塩醤油類に関する発明であって、塩味はもとより、風味や全体としての味が重要であると考えられている。したがって、総合評価である醤油としての風味や好ましさが低い減塩醤油類は、本発明の課題を解決するとは言えない。そして、他の構成成分とのバランス次第で減塩醤油類としての評価が異なるものが存在すると容易に予想されるのであるから、食塩含有量の下限値について、7?7.5質量%未満の数値範囲については実際に検証されておらず、減塩醤油類としての総合評価が不明である以上、請求項1および請求項1に従属している請求項3について、発明の詳細な説明においてサポートされているとは言えないし、実施可能要件が満たされているとも認められない。
(4)請求項2において、窒素含有量をサポートしている実施例の数値範囲は1.65?1.74質量%である。そのため、少なくとも1.74質量%以上の窒素含有量である減塩醤油については、当該具体例から拡張ないし一般化できるとは言えず、サポート要件及び実施可能要件が満たされているとは言えない。請求項2に従属している請求項3についても同様である。
(5)コハク酸二ナトリウムには無水物と六水和物とが存在し、無水物であるか六水和物であるかによって、「コハク酸二ナトリウム0.05質量%の遊離コハク酸換算量」には二つの下限値が存在することになるため、発明の範囲が不明確である。
(6)請求項1?3に係る発明は、甲第1?4号証に記載されている事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

まず、訂正請求が認められた後に「独立特許要件」なるものはそもそも課されていないので、「訂正請求が認められたとしても?独立特許要件を満たさない。」という請求人の主張は、その趣旨が不明であるが、(1)?(6)の主張はこれらの理由により本件特許を無効とすべきであるとの意味と解して以下に検討する。

(4)は、請求項2の窒素含有量に関する主張であるが、この主張は、審判請求書の請求の理由において具体的に特定した、特許を無効とする根拠となる事実を実質的に変更するものであるから、当該主張は請求の理由の要旨を変更するものであり、当該主張による審判請求書の要旨を変更する補正は認められない。なお、当該請求項2の窒素含有量に関する主張に関して、被請求人が実質的反論をする必要が生じると認められるから、この補正は審理を不当に遅延させるおそれがあるものであるし、審判請求の当初に記載できなかった合理的理由は存在せず、また、訂正請求に起因して請求の理由の補正が必要になったものとも認められないから、当該請求の理由の要旨の変更は、特許法第131条の2第2項において許可することができるものにも該当しない。
(5)は、「コハク酸二ナトリウム」に無水物と六水和物があることに起因する主張であって、請求の理由に存在しないものであって、当初請求書に記載した「特許を無効にする根拠となる事実」それ自体を差し替え、追加、変更する補正に該当し、請求の理由の要旨を変更するものであるから、当該主張による審判請求書の要旨を変更する補正は認められない。なお、「コハク酸二ナトリウム」に無水物と六水和物が存在することは、審判請求前より広く知られていた事実であり、審判請求の当初に記載できなかった合理的理由は存在しない。また、訂正請求に起因して請求の理由の補正が必要になったものとも認められず、当該請求の理由の要旨の変更は、特許法第131条の2第2項において許可することができるものにも該当しない。
(1)については上記第4 2.(1)で、(2)(3)については上記第4 で、(6)については上記第6 で述べたとおりである。

第8 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては,本件特許の請求項1ないし3に係る発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については,特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
液体調味料
【技術分野】
【0001】
本発明は、食塩含有量が低いにもかかわらず塩味のある液体調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
醤油に代表される液体調味料は、日本料理だけでなく、各種の料理になくてはならない調味料として広く使用されている。一方、食塩の過多な摂取は、腎臓病、心臓病、高血圧症に悪影響を及ぼすことから、あらゆる飲食品が低食塩化されており、代表的なものとして減塩醤油が挙げられる。そして、減塩醤油は食塩含有量が9w/w%以下と定められている。
【0003】
このように食塩の摂取量を制限するには減塩された液体調味料の使用が望ましい。しかし、減塩された液体調味料は、食塩含有量が低いことから、いわゆる塩味が十分感じられず、味がもの足りないと感じる人が多い。そのため食塩の摂取量制限が勧められている割には、減塩された液体調味料は普及しておらず、減塩醤油は使用量が増加していない。
【0004】
液体調味料の味のもの足りなさを改良する手段としては、様々な取り組みがなされている。例えば、減塩醤油においては、食塩代替物として塩化カリウムを使用する方法があるが(特許文献1及び2)、同時に使用するクエン酸塩の味の影響や、糖アルコールにより塩味もマスキングされてしまうという問題点がある。また、減塩醤油にトレハロースを添加する方法(特許文献3)、カプサイシンを添加する方法(特許文献4)、シソ葉エキスを添加する方法(特許文献5)では、それら添加物の風味を異味として感じてしまうという問題点がある。低塩・淡色・高窒素にする方法(特許文献6)では、コク味の増強がみられるが塩味については言及されていない。更に、減塩醤油の技術ではないが、食塩を低減させた場合に塩味を増強する方法として、特定の有機酸、アミノ酸等を組み合わせて添加するという技術もある(特許文献7)。
【0005】
【特許文献1】特許第2675254号公報
【特許文献2】特公平06-97972号公報
【特許文献3】特開平10-66540号公報
【特許文献4】特開2001-245627号公報
【特許文献5】特開2002-165577号公報
【特許文献6】特公平05-007987号公報
【特許文献7】特開平11-187841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら従来の減塩された食品の風味を改良する取り組みは、それぞれ一定の効果を上げているが、未だ十分とはいえない。特に食塩含有量の低下と塩味の両立という点で十分とはいえない。
本発明の目的は、食塩含有量が低いにもかかわらず塩味のある、液体調味料を提供することにある。
【0007】
なお、本願における「減塩醤油類」とは、製品100g中のナトリウム量が3550mg(食塩として9g)以下の「しょうゆ」、および「しょうゆ加工品」をいい、栄養改善法の病者用の特別用途食品に限定されるものではない。「しょうゆ」とは、日本農林規格に定めるところの液体調味料であり、「しょうゆ加工品」とは、日本農林規格に適合する「しょうゆ」に調味料、酸味料、香料、だし、エキス類等を添加した、「しょうゆ」と同様の用途で用いられる液体調味料をいう。ここで、本願で記載する「醤油」は、日本農林規格の「しょうゆ」と同一概念である。また、本願で記載する「液体調味料」は、減塩醤油類、及び減塩醤油の規格からは外れるが本願の要件を備えた調味料を含める概念とする。なお、液体調味料の業界においては、配合物質の含有量は、通常w/v%にて表記するが、本願においては、各成分の配合量は液体調味料全体中の質量%で記載した。この場合、例えば醤油の窒素分の場合、「1.6質量%」は、「1.9w/v%」に相当する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、食塩含有量を9質量%以下にしても塩味を感じさせる手段について検討してきた結果、食塩含有量を9質量%以下と低くし、かつカリウムを0.5?4.2質量%とした系で、特定の風味改良成分を含有させることにより、塩味がより強く感じられ、味の良好な液体調味料が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の成分(A)?(C):
(A)食塩9質量%以下、
(B)カリウム0.5?4.2質量%、
(C)価数が2以下の有機酸又はその塩、リン酸のアルカリ金属塩、無機炭酸塩、無機アンモニウム塩、澱粉分解物、蛋白分解物、甘味料、植物抽出エキス及び多糖類から選択される1種又は2種以上の物質を含有する液体調味料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、食塩含有量が9質量%以下であるにもかかわらず、塩味を十分に感じることのできる液体調味料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の液体調味料の(A)食塩の含有量は9質量%以下であるが、更に7?9質量%、特に8?9質量%であることが血圧降下作用及び風味(塩味を十分に感じる)の点から好ましい。なお、本発明における「含有量」とは、以下特に記載がない場合は、液体調味料全体中の割合をいう。
【0012】
本発明の液体調味料の(B)カリウムの含有量は0.5?4.2質量%であるが、好ましくは1?3.6質量%、更に1.5?3.1質量%であることが、食塩含有量が低いにもかかわらず塩味を増強させ、かつ苦味を生じない点から好ましい。また、カリウムは塩味があり、かつ異味が少ない点から塩化カリウムであることが好ましい。塩化カリウムを用いる場合は1?7質量%、更に2?6質量%、特に3?5質量%配合することが好ましい。
【0013】
食塩含有量とカリウム含有量を前記範囲に調整するには、例えば仕込水として食塩と例えば塩化カリウムの混合溶液を用いて醤油を製造する方法;塩化カリウム単独の溶液を仕込水として用いて得た醤油と食塩水を単独で仕込水として用いて得た醤油とを混合する方法;食塩水を仕込水として用いた通常の醤油を電気透析、膜処理等によって食塩を除去した脱塩醤油に塩化カリウムを添加する方法等が挙げられる。
【0014】
本発明の液体調味料の成分(C)は風味改良剤として作用するものであり、価数が2以下の有機酸又はその塩、リン酸のアルカリ金属塩、無機炭酸塩、無機アンモニウム塩、澱粉分解物、蛋白分解物、甘味料、植物抽出エキス及び多糖類から選択される1種又は2種以上の物質である。
【0015】
価数が2以下の有機酸又はその塩としては、乳酸、フマル酸、アジピン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸、グルコン酸、パントテン酸、又は飽和脂肪族モノカルボン酸並びにこれらのナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、又はカルシウム等のアルカリ土類金属の塩が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、アスコルビン酸も同様の作用を有するものとして用いられる。中でも乳酸、コハク酸、リンゴ酸又はその塩が好ましく、本発明の液体調味料中の含有量は、それぞれ遊離の酸に換算した場合、乳酸は0.9?3質量%、更に1.3?3質量%、特に1.5?2.5質量%、コハク酸は0.004?2質量%、更に0.06?1.5質量%、特に0.1?1質量%、リンゴ酸は0.05?2質量%、更に0.1?1.5質量%含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。飽和脂肪族モノカルボン酸(炭素数6以上)は、本発明の液体調味料に1?100質量ppm含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。その他のものは、本発明の液体調味料中に0.01?3質量%、好ましくは0.02?2質量%含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。
【0016】
リン酸のアルカリ金属塩には、リン酸二水素ナトリウム塩、リン酸水素二ナトリウム塩、リン酸三ナトリウム塩、リン酸二水素カリウム塩、リン酸水素二カリウム塩、リン酸三カリウム塩、トリポリリン酸ナトリウム塩、トリポリリン酸カリウム塩、メタリン酸ナトリウム塩、又はメタリン酸カリウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらは、本発明の液体調味料中に0.01?2質量%、好ましくは0.02?1質量%含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。
【0017】
無機炭酸塩としては、炭酸のナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、炭酸マグネシウム塩、重曹等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらは、本発明の液体調味料中に0.01?2質量%、好ましくは0.02?1質量%、含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。
【0018】
無機アンモニウム塩としては、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらは、本発明の液体調味料中に0.01?2質量%、好ましくは0.02?1質量%、含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。
【0019】
澱粉分解物には、デキストリン、酸分解澱粉、酸化澱粉、シクロデキストリン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらは、本発明の液体調味料中に0.01?2質量%、好ましくは0.02?1質量%含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。
【0020】
蛋白分解物としては、ゼラチン部分分解物、大豆ペプチド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらは、本発明の液体調味料中に0.01?2質量%、好ましくは0.02?1質量%、含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。
【0021】
甘味料としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等の人工甘味料、タマリンド莢エキス等の抽出甘味料、またショ糖、乳糖等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらは、本発明の液体調味料中に0.01?2質量%、好ましくは0.02?1質量%、含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。
【0022】
植物抽出エキスとしては、しそ抽出物、唐辛子抽出物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。しそ抽出物は、本発明の液体調味料中に0.01?5質量%、好ましくは0.02?3質量%含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。唐辛子抽出物は、本発明の液体調味料中に0.01?5質量ppm、好ましくは0.02?1質量ppm含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。多糖類としては、カラギーナン、グアガム等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。これらは、本発明の液体調味料中に0.01?2質量%、好ましくは0.02?1質量%含有されることが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。
【0023】
本発明の液体調味料においては、成分(C)を除いた部分の液体調味料中の(D)窒素含有量が、成分(C)以外の物質により1.6質量%以上としたものであることが、食塩含有量が低いにもかかわらず塩味を増強させ、かつ苦味を生じない点から好ましい。また、窒素の含有量は1.6?2質量%であることがより好ましい。通常、醤油においては窒素含有量を高くするとまろやかな味になり、塩味が低下するといわれているところ、食塩含有量が低く、カリウムが含まれている醤油であって、窒素含有量を上記範囲とすることにより、塩味が向上することは全く予想外であった。
【0024】
通常の醤油の窒素含有量は1.2?1.6質量%であるが、窒素含有量を1.6質量%以上とするには、通常の方法で醸造した醤油に、アミノ酸等の窒素を含有する物質を本発明の規定範囲の量となるように添加すること、又は濃縮及び脱塩の工程を施すことにより達成できる。例えば、減塩濃縮法によって食塩を除去するとともに、水を主成分とする揮発成分での希釈率を調整する方法や、電気透析装置によって食塩を除去する際に起こるイオンの水和水の移動を利用して、窒素分も同時に濃縮する方法等がある。また、通常より食塩分の低い減塩醤油をRO膜や減圧濃縮により、窒素含有量を高める方法や、逆に、たまり醤油、再仕込み醤油のような窒素含有量の高い醤油から脱塩することによる方法等がある。
【0025】
本発明の液体調味料においては、窒素含有量を高める方法として、成分(C)以外の窒素を含有する物質を添加することが好ましい。窒素含有物質の中でも、アミノ酸、特に酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸が塩味の増強、及び持続性の点から好ましい。液体調味料中の含有量は、酸性アミノ酸が2質量%超、及び/又は塩基性アミノ酸が1質量%超であることが好ましい。また、酸性アミノ酸は2質量%超5質量%以下、更に2.4?4.5質量%、特に2.5?3.8質量%であることが、塩味の持続性の点から好ましく、塩基性アミノ酸は1質量%超3質量%以下、更に1.2?2.5質量%、特に1.5?2質量%であることが、塩味の持続性の点から好ましい。なお、本発明の液体調味料は、醸造調味料をベースとしたものが塩味の持続性、風味等の点から好ましいが、この場合には、アミノ酸は原料醤油由来のものも含み、上記範囲に満たない場合には酸性アミノ酸、又は塩基性アミノ酸塩等を別添することが好ましい。なお、本発明にいう「酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸」は、遊離(フリー)のアミノ酸又はアミノ酸塩の状態のものを指すが、本発明に規定する含有量は、遊離のアミノ酸に換算した値をいう。
【0026】
また、本発明の液体調味料においては、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸の中でも酸性アミノ酸であるアスパラギン酸、グルタミン酸が塩味の持続性の点から好ましく、更に、アスパラギン酸とグルタミン酸を併用することが、塩味の持続性の点から好ましい。この場合、アスパラギン酸の含有量は1?3質量%が好ましく、更に1.2?2.5質量%、特に1.2?2質量%であることが、塩味の持続性の点から好ましい。アスパラギン酸は、醸造調味料をベースとした場合には原料由来のものも含み、上記範囲に満たない場合にはL-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸ナトリウム等を別添することが好ましい。また、グルタミン酸の含有量は1?2質量%が好ましく、更に1.2?2質量%、特に1.3?1.8質量%であることが、塩味の持続性の点から好ましい。グルタミン酸は、醸造調味料をベースとした場合には原料由来のものも含み、上記範囲に満たない場合にはL-グルタミン酸、L-グルタミン酸ナトリウム等を別添することが好ましい。
【0027】
塩基性アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、及びオルニチンが挙げられるが、中でもリジン、ヒスチジンが好ましく、特にヒスチジンが好ましい。リジンの含有量は0.5?1質量%であることが塩味の刺激感の点で好ましく、ヒスチジンの含有量は0.2?2質量%、更に0.5?1質量%であることが、塩味の増強及び持続性の点から好ましい。これらの塩基性アミノ酸も醸造調味料をベースとした場合には原料由来のものも含み、上記範囲に満たない場合には、別添することが好ましい。
【0028】
本発明の液体調味料においては、特にアスパラギン酸/(B)カリウムの質量比が0.25以上であることが好ましく、更に0.3以上、特に0.46以上、殊更0.5以上であることが、塩化カリウム由来の苦味を消失させる点から好ましい。
【0029】
また、本発明の液体調味料においては、成分(C)を除いた部分の液体調味料中のアスパラギン酸/(D)窒素の含有量の質量比を0.5以上とすることが好ましい。当該質量比は、更に0.6以上、特に0.7以上であることが塩味を強くし、シャープさを向上させる点から好ましい。
【0030】
更に、本発明の液体調味料においては、更に、(E)核酸系調味料、及び他のアミノ酸系調味料等を含有することが相乗的に塩味を増強できる点、及び塩味のみならず、苦味の低減、醤油感の増強等の点から好ましい。
具体的には、核酸系調味料としては、5′-グアニル酸、5′-イノシン酸等のナトリウム、カリウムあるいはカルシウム塩等が挙げられる。核酸系調味料の含有量は00.005?0.2質量%が好ましく、0.01?0.1質量%が特に好ましい。
【0031】
他のアミノ酸系調味料としては酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、及びこれらの塩以外のもの、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、シスチン、スレオニン、チロシン、イソロイシンあるいはこれらのナトリウム塩又はカリウム塩等が挙げられ、これらを1種又は2種以上配合することができる。アミノ酸系調味料の含有量は、それぞれ遊離のアミノ酸に換算した場合、グリシンは0.3質量%超、アラニンは0.7質量%超、フェニルアラニンは0.5質量%超、シスチンは質量%超、スレオニンは0質量%超、チロシンは0.2質量%超、イソロイシンは0.5質量%超であり、かつそれぞれ上限は1.5質量%以下が好ましい。中でもイソロイシンが塩味の持続性の点で好ましく、含有量は0.5質量%超1質量%以下であることが好ましい。
【0032】
また、本発明の液体調味料においては、pHが3?6.5、更に4?6、特に4.5?5.5であることが、風味が劣化しない点から好ましい。更に、塩素量4?9質量%、固形分量20?45質量%の特数値を有することが好ましい。
【0033】
また、本発明の液体調味料には、好み等に応じてエタノール、みりん、醸造酢等を添加することができ、つゆ、たれ等、種々の醤油加工品に応用できる。
【実施例】
【0034】
(1)試験品1及び2の調製法
カリウム含有量の異なる減塩醤油2種を、それぞれ減塩醤油A、及びBとした。これらの醤油をベース醤油として、それぞれ塩化カリウム、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-グルタミン酸ナトリウム、各種風味改良剤を添加し、表1及び表2に示す配合量とした。
【0035】
(2)食塩含有量の測定法
食塩の含有量はナトリウム含有量を測定し、これを食塩の含有量に換算することにより求めた。ナトリウム含有量は原子吸光光度計(Z-6100形日立偏光ゼーマン原子吸光光度計)により測定した。
【0036】
(3)カリウム及び塩化カリウム含有量の測定法
カリウムの含有量は上述のナトリウム含有量測定のものと同じもので測定した。
【0037】
(4)窒素含有量の測定法
窒素濃度は全窒素分析装置(三菱化成TN-05型)により測定した。
【0038】
(5)遊離アミノ酸含有量の測定法
全系中の遊離アミノ酸含有量は、アミノ酸分析計(日立L-8800)により測定した。
【0039】
(6)評価方法
得られた液体調味料について、パネラー20名による2点識別試験法で塩味及び苦味を官能評価した。また、醤油としての風味の好ましさを総合評価として行った。なお、試験品1の対照は減塩醤油A、試験品2の対照は減塩醤油Bとした。総合評価は、下記の基準により行った。得られた結果を表1及び表2に示す。
【0040】
〔総合評価の判断基準〕
5:非常に好ましい塩味を持ち、かつ、味の調和に優れている。
4:非常に好ましい塩味を持ち、味の調和がとれている。
3:良好な塩味を持ち、味の調和がとれている。
2:味の調和に若干欠ける。
1:味の調和に欠け、苦味や異味を感じる。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示すように、減塩醤油Aに風味改良剤であるコハク酸二ナトリウムを0?2%の範囲で添加した。この場合、塩化カリウムを4質量%となるように配合した。その結果、添加量が0.2質量%程度で良好な塩味が得られた(試験品1-1?8)。
また、減塩醤油Aにコハク酸二ナトリウムを添加した系において、塩化カリウムを含有量を変化させた。この場合、コハク酸二ナトリウムは0.05質量%となるように配合した。その結果、液体調味料中に塩化カリウムを1?7質量%の範囲で添加した場合に良好な塩味が得られ、さらに、2?6質量%の範囲、特に3?5質量%の範囲で非常に良好な塩味が得られた(試験品1-9?17)。
更に、コハク酸二ナトリウム0.05質量%、塩化カリウム4質量%を減塩醤油Bに配合した場合には、減塩醤油Aの場合と比較してより塩味が強く、好ましい風味となった(試験品1-18)。
また、減塩醤油AにL-コハク酸二ナトリウム0.05%及び塩化カリウム4質量%を配合し、さらにL-アスパラギン酸ナトリウム1質量%及びL-グルタミン酸ナトリウム0.5質量%を添加した系では、より塩味が強く、好ましい風味となった(試験品1-19)。
【0043】
【表2】

【0044】
表2に示すように、ベース醤油を減塩醤油Bとし、種々の風味改良剤を添加した。この場合、塩化カリウムを4質量%、L-アスパラギン酸ナトリウム1質量%、L-グルタミン酸ナトリウム0.5質量%となるように配合した(試験品2-1?22)。この結果、種々の風味改良剤の添加により、塩味が増強し、カリウムの苦味が抑制され、好ましい風味となった。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)?(C):
(A)食塩7?9質量%、
(B)カリウム1?4.2質量%、
(C)コハク酸若しくはそのアルカリ金属塩を遊離のコハク酸換算で、コハク酸二ナトリウム0.05質量%の遊離コハク酸換算量?1質量%
を含有する減塩醤油類。
【請求項2】
減塩醤油類中の(D)窒素の含有量が、アスパラギン酸及びグルタミン酸により1.6質量%以上としたものである請求項1記載の減塩醤油類。
【請求項3】
減塩醤油類中にアスパラギン酸を1?3質量%、グルタミン酸を1?2質量%含有し、かつアスパラギン酸/(B)カリウム≧0.25(質量比)である請求項1又は2記載の減塩醤油類。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2011-08-26 
結審通知日 2011-09-01 
審決日 2011-09-15 
出願番号 特願2004-332366(P2004-332366)
審決分類 P 1 113・ 537- YA (A23L)
P 1 113・ 536- YA (A23L)
P 1 113・ 121- YA (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三原 健治  
特許庁審判長 鵜飼 健
特許庁審判官 内田 俊生
加々美 一恵
登録日 2009-07-31 
登録番号 特許第4351611号(P4351611)
発明の名称 液体調味料  
代理人 伊藤 健  
代理人 山本 博人  
代理人 中嶋 俊夫  
代理人 中嶋 俊夫  
代理人 吉永 貴大  
代理人 有賀 三幸  
代理人 有賀 三幸  
代理人 山本 博人  
代理人 高野 登志雄  
代理人 高野 登志雄  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 伊藤 健  
代理人 村田 正樹  
代理人 村田 正樹  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
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