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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M
管理番号 1268717
審判番号 不服2012-617  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-12 
確定日 2013-01-07 
事件の表示 特願2010-182775「ロータリー式気化器」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月 7日出願公開、特開2011-132945〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成22年8月18日の出願であって、平成23年6月27日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成23年8月26日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成23年10月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年1月12日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けの手続補正書により特許請求の範囲について補正する手続補正がなされ、その後、当審における平成24年6月18日付けの書面による審尋に対して、平成24年8月9日付けで回答書が提出されたものである。


第2.平成24年1月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年1月12日付けの手続補正を却下する。
〔理由〕
1.本件補正について
(1)本件補正の内容
平成24年1月12日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成23年8月26日付けの手続補正により補正された)特許請求の範囲の請求項1の下記(a)に示す請求項1の記載を、下記(b)に示す請求項1と補正するものである。

(a)本件補正前の請求項1
「【請求項1】
気化器本体の吸気通路に直交して配置され絞り通孔及び計量針を有した円柱状のスロットル弁と、該スロットル弁の中心軸線上に配置され前記計量針が挿入された燃料ノズルと、前記スロットル弁を弁軸方向に移動させるためのカム機構とを備えて、前記スロットル弁の上面中央から延びた弁軸をスロットル操作に応じて回動させることで前記スロットル弁が前記弁軸と一体的に回動しながら前記カム機構により前記弁軸方向に移動して空気流量及び燃料流量を調整するロータリー式気化器において、前記カム機構が、前記スロットル弁底面の外周側端縁から中心軸方向所定幅でその回動方向に沿って徐々に深くなるようにカム面を陥凹させて形成したカム溝、及び前記スロットル弁を回動自在に挿設した円柱状のスロットル弁室の底面と前記カム面との間に前記スロットル弁の中心軸線に直交する向きで前記スロットル弁室の側方から前記カム溝に挿入した部分を前記カム面に当接させてスロットル弁を底面側から支持する円柱状の支持ピンとからなることを特徴とするロータリー式気化器。」

(b)本件補正後の請求項1
「【請求項1】
気化器本体の吸気通路に直交して配置され絞り通孔及び計量針を有した円柱状のスロットル弁と、該スロットル弁の中心軸線上に配置され前記計量針が挿入された燃料ノズルと、前記スロットル弁を弁軸方向に移動させるためのカム機構とを備えて、前記スロットル弁の上面中央から延びた弁軸をスロットル操作に応じて回動させることで前記スロットル弁が前記弁軸と一体的に回動しながら前記カム機構により前記弁軸方向に移動して空気流量及び燃料流量を調整するロータリー式気化器において、前記カム機構が、前記スロットル弁底面の外周側端縁から中心軸方向所定幅でその回動方向に沿って徐々に深くなるようにカム面を陥凹させて形成したカム溝、及び前記スロットル弁を回動自在に挿設した円柱状のスロットル弁室の底面と前記カム面との間に前記スロットル弁の中心軸線に直交する向きで前記スロットル弁室の側方から前記カム溝に挿入した部分を前記カム面に当接させてスロットル弁を底面側から支持するスロットル弁の中心軸線に直交する向きを有する円柱状の支持ピンとからなることを特徴とするロータリー式気化器。」
なお、下線は審判請求人が付したものである。

(2)本件補正の目的
上記補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「円柱状の支持ピン」について「スロットル弁の中心軸線に直交する向きを有する」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2.引用文献
(1)引用文献の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-129303号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、以下の記載がある。
なお、下線は、発明の理解の一助として当審において付したものである。

ア.「【0008】
【実施例】図1に示すように、本発明によるロータリースロツトル弁式気化器は、ブロツク状の本体2に横方向に延びる円筒形の吸気通路1が貫通され、吸気通路1の一端部1aは空気清浄器に、他端部1bは機関の吸気ポートにそれぞれ接続される。本体2は吸気通路1を横切るように上端が開口する円筒部24を形成され、円筒部24の内部に円柱形のスロツトル弁21を回動可能に支持される。円筒部24の上端は軸受部材3を複数のボルト8により本体2に結合して閉鎖される。スロツトル弁21の上端部に形成した中空の弁軸25は、軸受部材3の軸孔7に回動可能に支持される。
【0009】本体2の円筒部24の底面24aの中心に軸部16が設けられる。スロツトル弁21は吸気通路1と連通可能のスロツトル孔19を備えており、かつスロツトル孔19の下端部に設けた軸孔17を軸部16に外挿支持される。軸受部材3とスロツトル弁21の上端部との間に、弁軸25を取り囲むコイルばね9が介装され、かつコイルばね9の一端がスロツトル弁21に、他端が軸受部材3にそれぞれ係止される。スロツトル弁21はコイルばね9の力により、後述する軸移動機構Aへ押し付けられ、かつスロツトル弁21が吸気通路1を絞る方向へ回転付勢される。
【0010】弁軸25の中空部はばね10を収容され、ばね10の力に抗して中空部に螺合したボルト23はニードル20を結合される。ニードル20はスロツトル孔19を横切り、軸部16の円筒部13に嵌合固定した燃料供給管15の燃料通路14へ挿通される。燃料通路14はスロツトル孔19へ臨む燃料供給管15の周壁に形成したノズル孔18と連通される。」(段落【0008】ないし【0010】)

イ.「【0011】スロツトル弁21の回動に伴つてスロツトル弁21に軸移動を与える軸移動機構Aは、円筒部24の底面24aに設けたカム面とスロツトル弁21の下端面に設けた支柱41とからなるカム機構により構成される。円筒部24の軸部16を囲む底面24aに周方向に傾斜するリードカムと称するカム面43が形成される。一方、スロツトル弁21の下端面に下方へ突出する支柱41が形成され、支柱41に転動可能に支持したボール42がコイルばね9の力により、カム面43へ係合される。
【0012】図2に格子模様により示すように、カム面43と支柱41は、軸部16を中心とする円周上に周方向等間隔に複数個(図示の実施例では2個)配設される。」(段落【0011】及び【0012】)

ウ.「【0013】次に、本発明によるロータリースロツトル弁式気化器の作動について説明する。弁軸25の上端部に結合したスロツトルレバー5により、スロツトル弁21を回動すると、スロツトル孔19の吸気通路1に連通する通路面積すなわちスロツトル弁21の開度が増加する。同時に、軸移動機構Aによりスロツトル弁21が押し上げられ、ニードル20が燃料供給管15から抜け出てノズル孔18の開度が増加し、燃料通路14からスロツトル孔19へ吸引される燃料流量が増加する。
【0014】詳しくは、スロツトル弁21はコイルばね9により下方へ付勢され、支柱41のボール42がカム面43へ押し付けられている。スロツトルレバー5を回動すると、スロツトル弁21が弁軸25と本体2の軸部16を中心として回動し、スロツトル弁21の回転角に応じてボール42がカム面43に沿つて転動し、スロツトル弁21に軸移動を与える。つまり、ニードル20が上昇し、ノズル孔18の開度が増加する。これにより機関の要求する燃料流量が、図示してない燃料供給機構から燃料供給管15のノズル孔18を経て、スロツトル弁21のスロツトル孔19へ供給され、吸気通路1を経て吸気と一緒に機関へ吸入される。」(段落【0013】及び【0014】)

エ.「【0016】図4に示す実施例は、円筒部24の底面24aに上方へ突出する複数の支柱41aを形成し、各支柱41aに支持したボール42aを、スロツトル弁21の下端面に形成したカム面に係合したものである。」(段落【0016】)

(2)引用文献に記載された事項
上記(1)ア.ないしエ.の記載及び図面を参酌して、本願補正発明の記載に対応させて整理すると、引用文献には下記事項オ.及びカ.が記載されていることが分かる。

オ.上記(1)ア.、イ.及びウ.の下線を付した部分、並びに図4を参酌すれば、「本体2の吸気通路1に直交して配置されスロツトル孔19及びニードル20を有した円柱状のスロツトル弁21と、該スロツトル弁21の中心軸線上に配置され前記ニードル20が挿入された燃料供給管15と、前記スロツトル弁21を弁軸方向に移動させるための軸移動機構Aとを備えて、前記スロツトル弁21の上面中央から延びた弁軸25をスロツトル操作に応じて回動させることで前記スロツトル弁21が前記弁軸25と一体的に回動しながら前記軸移動機構Aにより前記弁軸方向に移動して空気流量及び燃料流量を調整するロータリースロツトル弁式気化器」が記載されていることが分かる。

カ.上記(1)イ.、エ.の下線を付した部分、及びア.の段落【0008】における「円筒部24」についての下線を付した部分、並びに図4を参酌すれば、「前記軸移動機構Aが、前記スロツトル弁21底面でその回動方向に沿って傾斜するカム面43a、及び前記スロツトル弁21を回動自在に挿設した円筒部24の底面24aと前記カム面43aとの間に配置され、前記カム面43aに当接させてスロツトル弁21を底面側から支持する支柱41a、ボール42aとからなること」が記載されていることが分かる。

(3)引用文献に記載された発明
上記(1)ア.ないしエ.、(2)オ.及びカ.並びに図面を参酌すると、引用文献には、以下の発明(以下、「引用文献に記載された発明」という。)が記載されているといえる。
「本体2の吸気通路1に直交して配置されスロツトル孔19及びニードル20を有した円柱状のスロツトル弁21と、該スロツトル弁21の中心軸線上に配置され前記ニードル20が挿入された燃料供給管15と、前記スロツトル弁21を弁軸方向に移動させるための軸移動機構Aとを備えて、前記スロツトル弁21の上面中央から延びた弁軸25をスロツトル操作に応じて回動させることで前記スロツトル弁21が前記弁軸25と一体的に回動しながら前記軸移動機構Aにより前記弁軸方向に移動して空気流量及び燃料流量を調整するロータリースロツトル弁式気化器において、前記軸移動機構Aが、前記スロツトル弁21底面でその回動方向に沿って傾斜するカム面43a、及び前記スロツトル弁21を回動自在に挿設した円筒部24の底面24aと前記カム面43aとの間に配置され、前記カム面43aに当接させてスロツトル弁21を底面側から支持する支柱41a、ボール42aとからなるロータリースロツトル弁式気化器。」

3.対比
本願補正発明と引用文献に記載された発明とを対比すると、引用文献に記載された発明における「本体2」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「気化器本体」に相当し、以下同様に、「吸気通路1」は「吸気通路」に、「スロツトル孔19」は「絞り通孔」に、「ニードル20」は「計量針」に、「スロツトル弁21」は「スロットル弁」に、「燃料供給管15」は「燃料ノズル」に、「軸移動機構A」は「カム機構」に、「弁軸25」は「弁軸」に、「ロータリースロツトル弁式気化器」は「ロータリー式気化器」に、「カム面43a」は「カム面」に、「円筒部24」は「円柱状のスロットル弁室」に、「底面24a」は「スロットル弁室の底面」に、それぞれ、相当する。

してみると、両者は、
「気化器本体の吸気通路に直交して配置され絞り通孔及び計量針を有した円柱状のスロットル弁と、該スロットル弁の中心軸線上に配置され前記計量針が挿入された燃料ノズルと、前記スロットル弁を弁軸方向に移動させるためのカム機構とを備えて、前記スロットル弁の上面中央から延びた弁軸をスロットル操作に応じて回動させることで前記スロットル弁が前記弁軸と一体的に回動しながら前記カム機構により前記弁軸方向に移動して空気流量及び燃料流量を調整するロータリー式気化器」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願補正発明においては、カム機構が、スロットル弁底面の外周側端縁から中心軸方向所定幅でその回動方向に沿って徐々に深くなるようにカム面を陥凹させて形成したカム溝、及び前記スロットル弁を回動自在に挿設した円柱状のスロットル弁室の底面と前記カム面との間に前記スロットル弁の中心軸線に直交する向きで前記スロットル弁室の側方から前記カム溝に挿入した部分を前記カム面に当接させてスロットル弁を底面側から支持するスロットル弁の中心軸線に直交する向きを有する円柱状の支持ピンとからなるのに対し、
引用文献に記載された発明においては、カム機構が、スロツトル弁底面でその回動方向に沿って傾斜するカム面、及び前記スロツトル弁を回動自在に挿設した円柱状のスロットル弁室の底面と前記カム面との間に配置され、前記カム面に当接させてスロツトル弁を底面側から支持する支柱41a、ボール42aとからなる点(以下、「相違点」という。)。

4.判断
上記相違点について検討する。
ロータリー式気化器において、「カム機構を、スロットル弁の弁軸側の端部に設けたフランジの下面の外周側端縁から中心軸方向所定幅でその回動方向に沿って徐々に深くなるように形成したカム面、及び前記スロットル弁の中心軸線に直交する向きでスロットル弁室の側方から突設した部分を前記カム面に当接させてスロットル弁をフランジの下面側から支持するスロットル弁の中心軸線に直交する向きを有する支持ピンとから形成する」ことは、周知(例えば、特開2001-182620号公報の段落【0017】、【0018】、及び【図1】の記載、特開2000-18099号公報の段落【0012】、【0013】、及び【図1】の記載、特開平11-280558号公報の段落【0012】、【0013】、及び【図1】の記載、並びに特開平11-117813号公報の段落【0015】、【0016】、及び【図1】の記載参照、以下、「周知技術」という。)である。
そして、カム面を、陥凹させて形成したカム溝の底面で形成するか、突設させて形成したカム凸部の表面で形成するかは、例えば、原査定の拒絶の理由において周知例を示すものとして引用された実願昭56-187863号(実開昭58-92447号)のマイクロフィルムに「カム面を、陥凹させて形成したカム溝の底面で形成する」ことが記載され、引用文献の図1及び図2記載の実施例に「カム面を、突設させて形成したカム凸部の表面で形成する」ことも記載されているように、当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎない。
そうすると、引用文献に記載された発明において、スロットル弁底面とスロットル弁室の底面との間に、上記周知技術のカム機構の構成を適用し、当該適用に際して、カム面を、陥凹させて形成したカム溝の底面で形成するようにし、もって、上記相違点に係る本願補正発明のように特定することは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用文献に記載された発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
平成24年1月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成23年8月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2.1.(1)(a)」のとおりのものである。

1.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献、及びその記載事項は、上記「第2.2.」に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、上記「第2.1.(2)」で検討したように、本願補正発明から「円柱状の支持ピン」の限定事項である「スロットル弁の中心軸線に直交する向きを有する」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2.4.」に記載したとおり、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-12 
結審通知日 2012-11-13 
審決日 2012-11-27 
出願番号 特願2010-182775(P2010-182775)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F02M)
P 1 8・ 121- Z (F02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 淳  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 中野 宏和
金澤 俊郎
発明の名称 ロータリー式気化器  
代理人 橋本 京子  
代理人 橋本 克彦  

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