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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1269142
審判番号 不服2012-3013  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-16 
確定日 2013-01-24 
事件の表示 特願2007-199785「電子部品装着装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年2月19日出願公開、特開2009-38147〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年7月31日の出願であって、平成23年11月10日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成24年2月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。

第2 平成24年2月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年2月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
平成24年2月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項2は、次のように補正された。なお、補正前の請求項1は本件補正により削除された。
「複数の吸着ノズルが並設された装着ヘッドを備えて、部品供給装置から前記吸着ノズルにより取出した電子部品をプリント基板上に装着する電子部品装着装置において、中央部に前記電子部品の吸着用の真空通路が形成され昇降する各ノズル軸の下端部に前記吸着ノズルを設け、上昇した状態の前記各吸着ノズルを下降するように付勢するバネを前記ノズル軸の周囲に巻回するように設け、前記各バネをその下端が前記ノズル軸の下部に固定された保護筒体内に収め、且つ、前記各バネの下端を前記ノズル軸の下部に支持し、前記各バネが外部に露出しないように前記各バネを保護したことを特徴とする電子部品装着装置」(なお、下線部は補正箇所を示す。)
上記補正は、願書に最初に添付した明細書の段落【0017】に「前記ノズル軸体22を囲むように且つ前記ノズル軸体22に形成された第1段差部25と前記案内筒体24に形成された段差部26との間に張架されて前記ノズル軸体22及び吸着ノズル15を下降するように付勢するコイル状のバネ27」と記載され、また、図4において、各バネ27の下端をノズル軸体22の下部の第1段差部25で支持している態様が図示されていることに基づいてなされたものであるから、上記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項に規定された新規事項追加禁止に違反するものではない。
また、上記補正は、補正前の請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項である「ノズル軸」について、「昇降する」との限定を付加するとともに、同じく「バネ」について、「前記各バネの下端を前記ノズル軸の下部に支持し」との限定を付加したものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項2に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、上記補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-36163号公報(以下、「引用例1」という。)には、「電子部品装着装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、部品吸着位置に電子部品を供給する複数の部品供給ユニットと、この部品供給ユニットから電子部品を吸着してプリント基板上に装着する複数の吸着ノズルを有した装着ヘッドとを備えた電子部品装着装置、特に部品吸着位置に電子部品を供給する複数の部品供給ユニットと、駆動源により一方向に移動可能なビームにこれに沿った方向に駆動源により移動可能な装着ヘッドと、この装着ヘッドに前記部品供給ユニットから電子部品を吸着してプリント基板上に装着する複数の吸着ノズルとを備えた電子部品装着装置に関する。」
イ 「【0004】
そこで本発明は、吸着ノズルに吸着保持された電子部品の吸着状態を装着前に検出装置で検出し、吸着状態が不良の場合には他の吸着ノズルに保持された良好な電子部品の装着のための吸着ノズルの移動途中で落下させないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため第1の発明は、部品吸着位置に電子部品を供給する複数の部品供給ユニットと、この部品供給ユニットから電子部品を吸着してプリント基板上に装着する複数の吸着ノズルを有した装着ヘッドとを備えた電子部品装着装置において、前記吸着ノズルに吸着保持された電子部品の吸着状態を装着前に検出する検出装置と、この検出装置により前記吸着ノズルに吸着保持された電子部品の吸着状態が不良とされた場合には他の吸着ノズルに吸着保持された電子部品の吸着状態が良好な前記電子部品の装着動作に伴う水平移動のための駆動源を減速するように制御する制御装置とを設けたことを特徴とする。」
ウ 「【0012】
各装着ヘッド体7は下部に設けられ12本の各バネ12により下方へ付勢されている吸着ノズル15を有する装着ヘッド16を備えている。そして、各装着ヘッド体7の各装着ヘッド16には、基板認識カメラ19が設けられ、位置決め部5に位置するプリント基板Pに付された位置決めマーク(図示せず)を撮像する。」
エ 「【0015】
また、30はスリップリングであり、スリップリング30は装着装置本体と装着ヘッド16との間の通信及び後述するノズル支持部の回転モータへの電力供給のために設けられている。また、31は装着ヘッド16下部に設けられそれぞれ所定間隔を存して円周上に12本配設された各吸着ノズル15を上下動可能に支持するノズル支持体、32は同じく装着ヘッド16下部の外筒体、33は外筒体32とノズル支持体31との間に設けられた吸着ノズル15のθ回転用の例えばパルスモータであるノズル回転モータである。このノズル回転モータ33のロータ34はノズル支持体31の外周面に設けられ、外筒体32に設けられたステータ35の内側でノズル支持体31と共にθ方向に回転可能に設けられる。」
オ 「【0017】
例えば、装着ヘッド16に設けられ部品の吸着を行うと選択された吸着ノズル15による電子部品Dの吸着動作が終了し、ノズル支持体31が回転する度に、電子部品Dの下端面の高さ位置を各CCD素子の受光状態より遮光から受光に変わる境界位置として検出することにより部品が図5に示すように正常に吸着されている場合と、吸着すべきでない面が吸着され所謂立ち状態となっている場合や斜めに吸着されている場合とが区別して検出される。即ち、吸着ノズル15が下降して部品供給ユニット3から電子部品Dを吸着取出し、上昇した後にノズル回転モータ33の駆動によりノズル支持体31を回転させ、電子部品Dを吸着保持している吸着ノズル15を旋回させ、その旋回中に吸着ノズル15が吸着している電子部品Dが前記反射体44と受光ユニット46との間に位置するので、複数位置で電子部品Dの下端面の高さ位置を検出することにより、部品の有無検出及び吸着姿勢の検出等が可能となる。尚、ノズル支持体31が回転しながら移動するときに検出する構成にしたが、電子部品Dが前記反射体44と受光ユニット46との間に位置したときに前記回転を停止させて検出するようにしてもよい。
【0018】
そして、吸着ノズル15が電子部品Dを吸着していない場合には、発光素子42からの光のうち遮光されるべき光(吸着されている電子部品により)が受光ユニット46に受光されることとなるので電子部品Dの「無し」を検出し、各ノズル軸64の側方に設けられた後述する真空バルブ入切用作動体であるソレノイドバルブ82の動作により吸着ノズル15に真空源47に連通する流路を遮断し、真空源47からの真空通路を断って真空吸着動作を停止してリークを防止し、また吸着すべきでない面が吸着され所謂立ち状態となっているとか斜めに吸着されていると検出した場合には、装着ヘッド16及び吸着ノズル15を回収箱79上方に移動させて電子部品Dを落下させる。」
カ 「【0019】
50は装着ヘッド16に設けられたノズル昇降装置であり、以下、このノズル昇降装置について説明する。51はヘッド側ベース22に取り付けられたノズル昇降用のノズル昇降モータ、52はノズル昇降モータ51の回転軸511が連結部材59により連結されノズル昇降モータ51により回転駆動されるボールネジ、53はこのボールネジ52に螺合してボールネジ52の回転により昇降する昇降体、55はヘッド側ベース22に取り付けられ昇降体53の昇降を案内するガイド、56は昇降体53の下端に回転自在に取り付けられたローラである。
【0020】
更に57は装着ヘッド16の中心軸60が中心を貫通した第1筒体であり、この第1筒体57に形成された環状の鍔部58はローラ56の上に位置し、第1筒体57はローラ56に支持されている。ここで、第1筒体57は例えばボールスプラインから構成され、鍔部58の上面にその下端が当接したバネ61により下方に付勢される共に、後述するプーリのθ回転と共にθ回転し、且つ昇降体53の昇降に伴うローラ56の昇降に伴い昇降する。62は第1筒体57の下部に固定され第1筒体57と共にθ回転するノズル支持部材であり、このノズル支持部材62の下端には、円周方向に水平に伸びた昇降支持片63が形成されている。そして、この昇降支持片63は第1筒体57の昇降に伴い昇降し、昇降支持片63の下降により複数の吸着ノズルのうち所定の吸着ノズル15が下降する。
【0021】
即ち、それぞれの吸着ノズル15から上方に延びた各ノズル軸64の上端にはローラ65が回転自在に取り付けられ、後述するノズル選択装置により選択された1本の吸着ノズル15のノズル軸64上端のローラ65が昇降支持片63の上面に乗っている状態で、第1筒体57の下降に伴うノズル支持部材62及び昇降支持片63の下降により昇降する。即ち、昇降支持片63及びローラ65が例えば昇降支持片63A及びローラ65Aにて示した位置まで下降した場合には、この下降に伴い、所定のノズル15が下降する。更に、ノズル昇降モータ51の回転量を制御して、昇降体53下降時の停止高さを調整することにより、前記吸着ノズル15を所定ストローク降下させることとなる。」
キ 「【0026】
80はエアー切替バルブで、各ノズル15より周方向外側の位置に各ノズル15に対応して等角度間隔に設けられ、個別にエアーの吸引と吹き出しとの切替が可能である。このエアー切替バルブ80は上部に設けられたケース81と、このケース81内に上部が位置し、通電がCPU90からの信号により制御されるソレノイドバルブ82とから構成されている。ソレノイドバルブ82はケース81の内面に設けられた環状の電磁石83と、この電磁石83への通電、非通電によりケース81内を昇降し、上部には電磁石83に対応して円柱状の永久磁石84が設けられた通路切替体85などから構成されている。この通路切替体85とケース81下部の筒部81Aとの間には、上から下に順番にエアーブロー用通路86、ノズル連通通路87、真空引き用通路88とが形成されている。また、ノズル軸64にはノズル15の内部通路及びノズル連通通路87と連通するノズル軸通路100が形成され、通路切替体85の昇降により、ノズル連通通路87を介してノズル通路100と真空引き用通路88或いはエアーブロー用通路86との間の連通が切り替る。
【0027】
即ち、ソレノイドバルブ82の電磁石83への通電により通路切替体85が上昇しているときには、真空引き用通路88とノズル連通通路87とが連通し、ノズル連通通路87とエアーブロー用通路86とが遮断され、吸着ノズル15の内部通路はノズル軸通路100、ノズル連通通路87及び真空引き用通路88を介して真空源47と連通し、吸着ノズル15は電子部品の真空吸着を維持する。また、電磁石83が非通電になり、通路切替体85が下降しているときには、真空源47に連通した真空引き用通路88とノズル連通通路87とが遮断され、ノズル連通通路87とエアーブロー用通路86とが連通し、吸着ノズル15による電子部品Dの真空吸着を止めると共に吸着ノズル15の内部通路にエアー供給源48からの空気がエアーブロー用通路86、ノズル連通通路87及びノズル軸通路100を介して吹き込まれる。
【0028】
このように、各吸着ノズル15に対応してそれぞれ設けられたエアー切替バルブ80(ソレノイドバルブ82の電磁石83)への通電、非通電により、吸着ノズル15と真空源47或いはエアー供給源48との連通を切り替えることができ、選択された吸着ノズル15に対応したエアー切替バルブ80を個別に切り替えることができる。」
ク 図6には、ノズル軸64の周囲に巻回するように設けたバネ12が図示されている。

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに倣って整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数の吸着ノズル15が円周上に配設された装着ヘッド16を備えて、部品供給ユニット3から前記吸着ノズル15により取出した電子部品Dをプリント基板P上に装着する電子部品装着装置において、内部に前記電子部品Dの吸着用の真空源47に連通する流路が形成され昇降する各ノズル軸64の下端部に前記吸着ノズル15を設け、前記各吸着ノズル15を下方へ付勢するバネ12を前記ノズル軸64の周囲に巻回するように設けた電子部品装着装置」

(2)引用例2
同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である国際公開第98/23141号(以下、「引用例2」という。)には、「電子部品実装装置及び方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
サ 「上記ヘッド部6内のノズル5又は規制部材54の上端部には、図10に示すように、コイルバネ20を装着して、常時はこのコイルバネ20の付勢力によりノズル5又は規制部材54をヘッド部6に対して下端位置まで付勢し続けており、真空排気装置27に接続されているノズル5の吸引通路5aにより部品8をノズル5の下端に吸着したのち又はチャック31により部品8を把持したのち、部品8を基板4に押し込むとき、部品8に過負荷が作用すると上記コイルバネ20が縮むことにより、部品8が破損するのを防止できるようにしている。」(明細書14頁12?19行)
シ 図3には、ノズル5を有するヘッド部6を備えて、部品供給カセット3からノズル5により取出した部品8を基板4上に装着する電子部品実装装置が図示されている。
ス 図10には、ノズル5を有するヘッド部6が図示されている。図10から、ノズル5の上部にはノズル軸が設けられ、ノズル軸及びノズル5には真空排気装置27に連通する吸引通路5aが形成されており、ノズル軸の周囲にはコイルバネ20が設けられ、そのコイルバネ20は、上端がヘッド部6に支持され、下端がノズル軸の下部に支持されるとともに、ヘッド部6に一体に形成された筒状部によって全体的に覆われていることが看取できる。

3 対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、その意味、機能又は作用などからみて、後者の「吸着ノズル15」は前者の「吸着ノズル」に相当し、以下同様に、「装着ヘッド16」は「装着ヘッド」に、「部品供給ユニット3」は「部品供給装置」に、「電子部品D」は「電子部品」に、「プリント基板P」は「プリント基板」に、「内部」は「中央部」に、「真空源47に連通する流路」は「真空通路」に、「バネ12」は「バネ」に、それぞれ相当する。また、後者の「円周上に配設された装着ヘッド16」は前者の「並設された装着ヘッド」に相当し、後者の「前記各吸着ノズル15を下方へ付勢するバネ12」は前者の「上昇した状態の前記各吸着ノズルを下降するように付勢するバネ」に相当する。

したがって、両者は、本願補正発明の用語を用いて表現すると、
[一致点]
「複数の吸着ノズルが並設された装着ヘッドを備えて、部品供給装置から前記吸着ノズルにより取出した電子部品をプリント基板上に装着する電子部品装着装置において、中央部に前記電子部品の吸着用の真空通路が形成され昇降する各ノズル軸の下端部に前記吸着ノズルを設け、上昇した状態の前記各吸着ノズルを下降するように付勢するバネを前記ノズル軸の周囲に巻回するように設けた電子部品装着装置」の発明である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明は、「前記各バネをその下端が前記ノズル軸の下部に固定された保護筒体内に収め、且つ、前記各バネの下端を前記ノズル軸の下部に支持し、前記各バネが外部に露出しないように前記各バネを保護した」ものであるのに対して、引用発明は、そのように構成されていない点。

4 判断
上記相違点について検討する。
引用発明は、複数の吸着ノズル15が円周上に配設された装着ヘッド16を備えて、部品供給ユニット3から前記吸着ノズル15により取出した電子部品Dをプリント基板P上に装着する電子部品装着装置であり、内部に電子部品Dの吸着用の真空源47に連通する流路が形成され昇降する各ノズル軸64の下端部に前記吸着ノズル15を設け、前記各吸着ノズル15を下方へ付勢するバネ12を前記ノズル軸64の周囲に巻回するように設けたものであるから、バネ12は外部に露出している。そして、電子部品装着装置においては、近接配置された部材同士が相互に干渉しないようにすることは、当業者が当然に考慮することであり、複数の吸着ノズル15及びノズル軸64が僅かな隙間をもってノズル支持体31に上下動可能に支持されているような電子部品装着装置においては、ノズル軸64の周囲に巻回され外部に露出しているバネ12が伸縮するとき、バネ12が横に膨らんで座屈し、少なくともノズル支持体31の壁面に擦れたり接触するなどして干渉を起こす可能性があることは当業者が容易に予測し得ることであり、これに対処すべき動機付けは十分にあるといえる。
一方、引用例2には、「コイルバネ20は、上端がヘッド部6に支持され、下端がノズル軸の下部に支持されるとともに、ヘッド部6に一体に形成された筒状部によって全体的に覆われている」点(上記ス参照)が記載されており、この記載事項から、コイルバネ20はその筒状部によって外部に露出しないように保護されていると当業者は容易に理解することができる。してみると、引用例2には、「ヘッド部6に一体に形成された筒状部にコイルバネ20を収め、且つ、コイルバネ20の下端をノズル軸の下部に支持し、コイルバネ20が外部に露出しないようにコイルバネ20を保護した構成」が記載されているということができる。そして、引用例2に記載された「コイルバネ20」はその機能又は作用からみて本願補正発明の「バネ」に相当し、同様に、「ヘッド部6」は「装着ヘッド」に、「筒状部」は「保護筒体」にそれぞれ相当し、さらに、引用例2に記載された「ヘッド部6に一体に形成された筒状部」は、「上端がヘッド部6に固定された筒状部」ということができるから、引用例2には、本願補正発明の用語を用いて表現すると、「バネをその上端が装着ヘッドに固定された保護筒体内に収め、且つ、バネの下端をノズル軸の下部に支持し、バネが外部に露出しないようにバネを保護した構成」が記載されているものと認められる。ここで、引用例2に記載された発明と本願補正発明との差異は、要するに保護筒体の上端をヘッドに固定したか、保護筒体の下端をノズル軸の下部に固定したかの違いに過ぎない。
そして、引用発明と引用例2に記載された発明とは、どちらも部品供給装置から吸着ノズルにより取り出した電子部品をプリント基板上に装着する電子部品装着装置である点で共通の技術分野に属するものである。
そうすると、引用例1及び2に接した当業者であれば、引用発明において、バネ12と近接配置された部材との干渉を避けるために、引用例2に記載された発明を適用し、バネ12を保護筒体内に収めるようにすることは、格別創意を要することなく容易になし得ることであり、その際に、保護筒体の上端をヘッドに固定するか、保護筒体の下端をノズル軸の下部に固定するかは二者択一であり、当業者が適宜選択し得る設計的事項というべきである。
したがって、引用発明において、保護筒体の下端をノズル軸の下部に固定し、相違点に係る本願補正発明のように構成することは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明が奏する効果は、引用例1及び2に記載された発明から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

なお、審判請求人は、審尋に対する平成24年10月22日付け回答書において、「引用文献2(審決注:本審決の「引用例2」を指す。以下同様)には、『各バネをその下端が前記ノズル軸の下部に固定された保護筒体内に収める点』が記載されていなく、本願発明1(審決注:本審決の「本願補正発明」を指す。以下同様)の特徴が記載も示唆もされておりません。
従いまして、引用文献2は引用文献1(審決注:本審決の「引用例1」を指す。以下同様)に組み合わせられなく、引用文献1及び2に記載されました装置から本願発明1が奏します上記a)に記載の『バネを保護する保護筒体の下端が固定され、保護筒体を支持するノズル軸の下部によりバネの下端は支持され、吸着ノズルがその下端部に設けられたノズル軸の下部を保護筒体の支持とバネの支持とに兼用することができ、装着ヘッドの機構の簡素化を図ることができます。』という作用効果を到底期待することはできません。
更に、引用文献2においては、バネが外部に露出しないように保護する保護筒体はヘッド部に設けられているので、ノズル軸の周囲に巻回するように設けられたバネは、バネが設けられたノズル軸がヘッド部に取り付けられるまで、バネのほぼ全体が露出しており、バネが傷む或いはバネに埃等が付き易いという問題が発生しますが、本願発明1では、ノズル軸に設けられたバネはその下端がノズル軸の下部に固定された保護筒体内に収められているため、バネが傷む或いはバネに埃等が付き易いという問題を回避することもできます。」(「ハ)」の項参照)と主張する。
しかしながら、審判請求人が主張する上記作用効果はいずれも、その構成から当業者であれば予測し得る程度のものであって格別なものとはいえない。保護筒体の上端を装着ヘッドに固定するか、あるいは保護筒体の下端をノズル軸の下部に固定するか、どちらを選択するかは、その構成のもつメリットとデメリットを勘案して当業者が適宜決定するのが普通であり、設計的事項にすぎない。
よって、審判請求人の主張は採用できない。

5 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成23年10月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「複数の吸着ノズルが並設された装着ヘッドを備えて、部品供給装置から前記吸着ノズルにより取出した電子部品をプリント基板上に装着する電子部品装着装置において、中央部に前記電子部品の吸着用の真空通路が形成された各ノズル軸の下端部に前記吸着ノズルを設け、上昇した状態の前記各吸着ノズルを下降するように付勢するバネを前記ノズル軸の周囲に巻回するように設け、前記各バネをその下端が前記ノズル軸の下部に固定された保護筒体内に収め、前記各バネが外部に露出しないように前記各バネを保護したことを特徴する電子部品装着装置」

2 引用例
引用例1及び2の記載事項並びに引用発明は、前記「第2」の「2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2」の「1」の本願補正発明から、「ノズル軸」についての限定事項である、「昇降する」との事項を省くとともに、同じく「バネ」についての限定事項である、「前記各バネの下端を前記ノズル軸の下部に支持し」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」の「3」及び「4」に記載したとおり、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項2に係る発明)は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そうすると、本願発明が特許を受けることができないものである以上、請求項1に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-21 
結審通知日 2012-11-29 
審決日 2012-12-12 
出願番号 特願2007-199785(P2007-199785)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山中 なお奥村 一正  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 窪田 治彦
常盤 務
発明の名称 電子部品装着装置  
代理人 相澤 清隆  

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