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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2010800088 審決 特許
無効2014800135 審決 特許
無効2012800042 審決 特許
無効2011800071 審決 特許
無効2012800032 審決 特許

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審決分類 審判 一部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1269166
審判番号 無効2012-800084  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-05-24 
確定日 2013-01-21 
事件の表示 上記当事者間の特許第4659980号発明「二酸化炭素含有粘性組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第4659980号は、1998年10月5日(優先権主張1997年11月7日、日本国)を国際出願日として出願され、平成23年1月7日に特許権の設定登録がなされたものである。
これに対して、請求人は平成24年5月24日に特許無効審判を請求し、被請求人は平成24年8月9日付けで審判事件答弁書を提出した。
そして、平成24年11月27日に口頭審理が行われ、これに先立ち請求人は同年11月13日付けで口頭審理陳述要領書を提出し、被請求人は同年11月13日付けで口頭審理陳述要領書、同年11月21日付けで上申書を提出した。

第2 本件特許発明

本件特許第4659980号(以下、単に「本件特許」という。)の請求項1?13に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のものである。
「【請求項1】
部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットであって、
1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤の組み合わせ;又は
2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の組み合わせ
からなり、
含水粘性組成物が、二酸化炭素を気泡状で保持できるものであることを特徴とする、
含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット。
【請求項2】
得られる二酸化炭素含有粘性組成物が、二酸化炭素を5?90容量%含有するものである、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
含水粘性組成物が、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量を100としたとき、2時間後において50以上の容量を保持できるものである、請求項1又は2に記載のキット。
【請求項4】
含水粘性組成物がアルギン酸ナトリウムを2重量%以上含むものである、請求項1乃至3のいずれかに記載のキット。
【請求項5】
含有粘性組成物が水を87重量%以上含むものである、請求項1乃至4のいずれかに記載のキット。
【請求項6】
請求項1?5のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を有効成分とする、水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物。
【請求項7】
請求項1?5のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を含む部分肥満改善用化粧料。
【請求項8】
顔、脚、腕、腹部、脇腹、背中、首、又は顎の部分肥満改善用である、請求項7に記載の化粧料。
【請求項9】
部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を調製する方法であって、
1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤;又は
2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物;
を用いて、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有粘性組成物を調製する工程を含み、含水粘性組成物が、二酸化炭素を気泡状で保持できるものである、二酸化炭素含有粘性組成物の調製方法。
【請求項10】
調製される二酸化炭素含有粘性組成物が、二酸化炭素を5?90容量%含有するものである、請求項9に記載の調製方法。
【請求項11】
含水粘性組成物が、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量を100としたとき、2時間後において50以上の容量を保持できるものである、請求項9又は10に記載の調製方法。
【請求項12】
含水粘性組成物がアルギン酸ナトリウムを2重量%以上含むものである、請求項9乃至11のいずれかに記載の調製方法。
【請求項13】
含有粘性組成物が水を87重量%以上含むものである、請求項9乃至12のいずれかに記載の調製方法。」
(上記請求項1に係る発明を「本件特許発明1」といい、以下、請求項2?13に係る発明を、順次「本件特許発明2」、……、「本件特許発明13」という。なお、これらを総称して「本件特許発明」ということがある。)
第3 請求人の主張

請求人は「特許第4659980号の特許請求の範囲の請求項1?5、7?13に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として以下の書証を提出し、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、特許請求の範囲の記載が同条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、請求項1?5、7?13に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである旨を主張している。

〔証拠方法〕
甲第8号証:実験成績証明書(平成24年5月11日付け)
甲第9号証:勝野久美子、浦田秀子、田原靖昭(1995)、4章運動と体重お よび身体組成の変化(I部地域のウェルネス運動),生活・地 域からの健康づくり(長崎大学公開講座叢書7),p.41-52
(以上、平成24年5月24日付け審判請求書に添付して提出)
甲第10号証:乙第2号証男性被験者写真
甲第11号証:計測機器VISIA外観
http://www.souken-r.com/info/inspect.php?item=1&1=11
甲第12号証:甲第8号証の顔写真(モザイク無し)
甲第13号証:甲第8号証被験者M3顔写真比較
(以上、平成24年11月13日付け口頭審理陳述要領書に添付して提出)
第4 被請求人の主張

被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、上記請求人の主張する無効理由は、いずれも理由がないと主張し、証拠方法として以下の書証を提出している。

〔証拠方法〕
乙第1号証:日置正人氏による実験成績証明書(平成24年4月2日付け)
乙第2号証:日置正人氏による実験成績証明書(平成23年10月12日付 け)
乙第3号証:特開平6-329525号の公開特許公報
乙第4号証の1?21:「審判請求人の炭酸パックのチラシ、ウェブサイト の広告」と称する書証
乙第5号証:「審判請求人が炭酸パック「キアラ」の販売の際に配布した資 料」と称する書証
乙第6号証:大阪地方裁判所平成23年(ヨ)第20014号特許権侵害差 止等仮処分命令申立事件の仮処分決定
乙第7号証:福永健治氏作成のCO_(2)ジェルパックに関する鑑定意見書
(以上、平成24年8月9日付け審判事件答弁書に添付して提出)
乙第8号証:無効2011-800244(特許第4659980号無効審 判事件)の審決
乙第9号証:「機能性化粧品の開発II」、株式会社シーエムシー株式会社、
2006年8月22日 普及版第1刷(1996年8月30日 初版第1刷)、第189?191頁
乙第10号証:特開昭63-310807号の公開特許公報
乙第11号証:特開平3-161415号の公開特許公報
乙第12号証:「生化学辞典(第2版)」、株式会社東京化学同人、199 4年、「ボーア効果」の項目
乙第13号証:ボーア効果-Wikipedia(最終更新2012年8月21日)
(以上、平成24年11月21日付け上申書に添付して提出)

第5 当審の判断

1.発明の詳細な説明に記載されている事項

本件特許明細書の発明の詳細な説明には、部分肥満改善に関して、以下のように記載されている。なお、下線は当審で付加した。

ア 「技術分野 本発明は、・・・また所望する部位に使用すれば、その部位を痩せさせられる二酸化炭素含有粘性組成物とそれを用いる予防及び治療方法に関する。」(本件特許公報第2頁第40行?第3頁第6行)

イ 「背景技術 ・・・また本発明は、・・・部分肥満に有効な製剤とそれを用いる予防及び治療方法を提供することを目的とする。」(本件特許公報第3頁第7?31行)

ウ 「発明の開示 本発明者らは鋭意研究を行った結果、二酸化炭素含有粘性組成物が、・・・部分肥満解消作用、経皮吸収促進作用なども有することを発見して本発明を完成した。」(本件特許公報第3頁第32?36行)

エ 「本発明でいう「含水粘性組成物」とは、水に溶解した、又は水で膨潤させた増粘剤の1種又は2種以上を含む組成物である。該組成物に二酸化炭素を気泡状で保持させ、皮膚粘膜又は損傷皮膚組織等に適用した場合、二酸化炭素を皮下組織等に十分量供給できる程度に二酸化炭素の気泡を保持できる。」(本件特許公報第6頁第18?21行)

オ 「本発明の二酸化炭素含有粘性組成物を皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害の治療や予防目的、又は美容目的で使用する場合は、該組成物を直接使用部位に塗布するか、あるいはガーゼやスポンジ等の吸収性素材に含浸させるか、またはこれらの素材を袋状に成形してその中に該組成物を入れて使用部位に貼付してもよい。該組成物を塗布又は貼付した部位を通気性の乏しいフィルム、ドレッシング材などで覆う閉鎖療法を併用すれば更に高い効果が期待できる。該組成物を満たした容器に使用部位を浸すことも有効である。その場合、炭酸ガスボンベなどを用いて該組成物に二酸化炭素を補給すればより効果が持続する。」

カ 「実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、表中の数字は特にことわらない限り重量部を表す。
実施例1?84
炭酸塩含有含水粘性組成物と酸との組み合わせよりなる二酸化炭素含有粘性組成物を表1?表7に示す。
〔製造方法〕
増粘剤と精製水、炭酸塩を表1?表7のように組み合わせ、炭酸塩含有含水粘性組成物をあらかじめ調製する。酸は、固形の場合はそのまま、又は粉砕して、又は適当な溶媒に溶解又は分散させて、液体の場合はそのまま、又は適当な溶媒で希釈して用いる。炭酸塩含有含水粘性組成物と酸を混合し、二酸化炭素含有粘性組成物を得る。」(本件特許公報11頁32?40行)

キ 表1、2の実施例8、18、及び20(本件特許公報13?14頁。「炭酸塩含有含水粘性組成物」及び「酸」の組成が記載され、実施例8、18、20では、「炭酸塩含有含水粘性組成物」として炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウムを含む増粘剤、及び精製水が挙げられ、「酸」としてクエン酸が用いられており、発泡性や気泡の持続性が確認されている。)

ク 「試験例8(顔と腹部の部分痩せ試験)
41歳男性。ふっくらした頬と太いウエストを痩せさせたいと希望し、実施例8の組成物を1日1回15分間右頬に30g、腹部に100g塗布した。2ヶ月後に右頬が5名の評価者全員により明らかに小さくなったと判断された。腹部はウエストが6cm減少した。」(本件特許公報第46頁第33?36行)

ケ 「試験例9(肌質改善及び顔痩せ試験)
37歳女性。ふっくらした頬と荒れ肌、肌のくすみに悩み、種々の化粧品を試したが効果が得られなかった。実施例20の組成物50gを1日1回10分間顔全体に塗布したところ、1回目の塗布で肌のくすみが消えて白くなり、きめ細かい肌になった。2週間後には3名の評価者全員により、顔が小さくなったと判断された。」(本件特許公報第46頁第37?40行)

コ 「試験例13(腕の部分痩せ試験)
36歳女性。二の腕の太さを気にしていたため、実施例18の組成物30gを左の二の腕に塗布し、食品包装用フィルム(商品名サランラップ、旭化成社製)をその上からまいて6時間放置したところ、二の腕の周囲長が2cm減少した。」(本件特許公報第47頁第4?7行)

2.本件特許出願の優先日当時の技術常識

化粧料、美容分野における二酸化炭素の作用について、本件特許出願の優先日前に頒布された刊行物である甲第2号証、乙第10号証、乙第11号証には、それぞれ次のような記載がある(なお、下線は当審で付加した)。

(a)「本発明はパック剤に関し、更に詳細には、炭酸ガスによる血行促進作用によって皮膚をしっとりさせることができるパック剤に関する。」(甲第2号証の第1頁左欄第13?15行)

(b)「(技術分野) 本発明は、炭酸ガスによる血行促進作用によって皮膚を賦活化させる、ガス保留性、経日安定性、官能特性及び皮膚安全性に優れた発泡性化粧料に関する。
(従来技術)血行促進などの目的で炭酸ガスを配合した化粧料が従来から提案されている。」(乙第10号証の第1頁左欄第11?18行)

(c)「[産業上の利用分野] 本発明は、薬用化粧料、詳しくは、水溶性非イオン性高分子を含有し、炭酸ガスを高濃度で長時間保持することができ、血行促進効果の持続性が高く、・・・薬用化粧料に関する。」(乙第11号証の第1頁右欄第2?7行)

また、機能性化粧品に関する書籍である乙第9号証には、以下の記載がある(なお、乙第9号証は2006年に刊行された普及版であるが、乙第9号証の末尾に記載のように、当該普及版の内容は、本件特許出願の優先日前である1996年に刊行された当時のままであり、一部項目の削除のほか加筆・訂正などの手は加えられていないものである)。

(d)「肥満を大きく分けると、単純に脂肪が蓄積されたタイプと水太り・むくみ太りのタイプがあるが、前者は脂質分解促進により、後者は体液(血液・リンパ液)の循環の促進により解消される。」(乙第9号証の第189頁下から4?2行)

以上(a)?(d)の記載からみて、化粧料ないし美容分野において、二酸化炭素(炭酸ガス)には血行促進作用があること、肥満には単純に脂肪が蓄積されたタイプと水太り・むくみ太りのタイプの2種類があり、血液の循環促進(即ち、血行促進)によって、水太り・むくみ太りのタイプの肥満が解消されることは、本件特許出願の優先日当時の技術常識であった。

3.検討

発明の詳細な説明には、本件特許発明に係る二酸化炭素含有粘性組成物の具体的な製造方法(摘記事項カ)が記載されており、当該組成物は皮下組織等に十分量供給できる程度に二酸化炭素の気泡を保持するものであるところ(摘記事項エ)、例えば実施例8、20及び18において、発泡性や気泡の持続性が実際に確認されたことが記載されている(摘記事項キ)ので、当業者は、本件特許発明に係る二酸化炭素含有粘性組成物を、過度の試行錯誤を要することなく製造することができる。
また、本件特許発明に係る二酸化炭素含有粘性組成物を部分肥満改善用に用いること(摘記事項ア?ウ)が記載されており、具体的に試験例8、9及び13には、それぞれ、上記実施例8、20及び18で得られた二酸化炭素含有粘性組成物を被験者に使用したところ、顔と腹部の部分痩せ(試験例8)、肌質改善及び顔痩せ(試験例9)及び腕の部分痩せ(試験例13)の効果が得られたこと(摘記事項ク?コ)が記載されている。そして、これらの記載に加え、上記2.に記載した本件特許出願の優先日当時の技術常識も考慮すれば、当業者は、本件特許発明に係る二酸化炭素含有粘性組成物は部分肥満改善用の用途に使用できることを、容易に理解できる。
以上のように、発明の詳細な説明は、当業者が、本件特許発明1?5に係るキット、本件特許発明7及び8に係る化粧料を、製造できかつ使用できるように記載され、また、本件特許発明9?13に係る調製方法により二酸化炭素含有粘性組成物を調製できるように記載されているから、発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1?5、7?13の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
また、本件特許発明1?5、7?13は、上記摘記事項ア?エ、ク?コに記載された範囲内のものであるから、発明の詳細な説明に記載したものである。

4.請求人の主張についての判断

請求人は、本件特許発明は部分肥満改善効果を有しないから、特許法第36条第4項及び同条第6項第1号に規定する要件を満たさないとして、以下のように主張している。

(1)甲第8号証の実験成績証明書によれば、請求人が、本件特許明細書の試験例8、9及び13と同様の実験1?3を、それぞれ被験者5名に対して行ったところ、実験1?3のいずれにおいても、本件特許発明に係る二酸化炭素含有粘性組成物による部分肥満改善の効果は得られなかった。

(2)本件特許明細書における試験例8、9及び13は、それぞれ1人の被験者に対して行ったものであるが、この種の試験では同1条件で複数の被験者に対して試験を行い、試験結果を統計処理し、結論を出すことが常識であるにもかかわらず(甲第9号証)、標本数(被験者数)が少なく統計的有意差の検定もなされていない。顔の部分痩せについて、上記試験例8、9では、試験前後の被験者を同時に評価者に提示することは不可能であるから、試験前後の被験者の顔写真を提示したと考えられるが、いかなる写真を提示したかが不明である。
よって、本件特許明細書の試験例8、9及び13は、信憑性及び客観性を欠くものである。

上記請求人の主張について、以下に(2)、(1)の順で検討する。

(i)試験例8、9及び13の信憑性及び客観性について

本件特許明細書の試験例8、9及び13には、いずれも被験者に部分肥満改善の効果が得られたことが記載されている。そして、顔については、試験例8で「右頬が5名の評価者全員により明らかに小さくなったと判断された」、試験例9で「3名の評価者全員により、顔が小さくなったと判断された」と記載されているように、複数の評価者による全員一致の評価が得られたものであり、腹部及び腕については、試験前後の計測値により得られたものである(摘記事項ク?コ)ので、上記試験例における部分肥満改善の効果は、いずれも客観的な評価方法により得られた結果であるといえる。
このように、上記評価方法は、本件特許発明の二酸化炭素含有粘性組成物を美容目的で使用する場合(摘記事項オ)に部分肥満改善の効果を判断する方法としては、一定の信憑性及び客観性があるといえるものであるので、上記試験例において、被験者がそれぞれ1人であり、試験前後の顔写真の提示がないことや、甲第9号証に記載されるような統計的有意差の検定を行っていないことをもって、上記試験例で得られた結果が、信憑性及び客観性を欠いたものであるとするのは相当でない。

(ii)甲第8号証の実験成績証明書について

甲第8号証における実験では、例えば実験1の被験者M4及びM5で右頬脂肪面積の減少(第12頁の図1-1)、M1及びM2で右腹部皮下脂肪厚の減少(第13頁の図1-2)、M1及びM4で右腹部脂肪面積の減少(第13頁の図1-2)が示され、実験2の被験者F5で頬脂肪面積の減少(第20頁の図2-1)が示され、実験3の被験者F1で右上腕部脂肪厚の減少(第26頁の図3-1)が示されている。
このように、実験1?3の個々の被験者についてみれば、部分肥満改善効果が確認された例も示されているのであるから、甲第8号証の実験成績証明書によって、本件特許明細書の試験例8、9及び13に記載された結果を否定することはできない。

したがって、請求人の主張はいずれも認められない。

5.小括

以上のように、請求人が提示した主張及び証拠方法によっては、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないとはいえず、特許請求の範囲の記載が同条第6項第1号に規定する要件を満たしていないともいえないので、請求項1?5、7?13に係る発明の特許が、特許法第123条第1項第4号に該当するとはいえない。

第6 むすび

以上のとおり、請求人が提示した主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1?5、7?13に係る発明の特許を無効とすることができない。また、他にこれら発明の特許を無効にすべき理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、審決のとおり審決する。
 
審決日 2012-12-11 
出願番号 特願2000-520135(P2000-520135)
審決分類 P 1 123・ 537- Y (A61K)
P 1 123・ 536- Y (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩下 直人守安 智  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 前田 佳与子
内藤 伸一
登録日 2011-01-07 
登録番号 特許第4659980号(P4659980)
発明の名称 二酸化炭素含有粘性組成物  
代理人 山田 威一郎  
代理人 立花 顕治  
代理人 的場 照久  
代理人 田中 順也  
代理人 宮崎 伊章  

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