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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1269231
審判番号 不服2012-5086  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-19 
確定日 2013-01-21 
事件の表示 特願2010-534722「冷却装置を有するリニアモータコイル組立体」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月29日国際公開,WO2010/047129〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,2009年10月23日(優先権主張,2008年10月23日,日本国)を国際出願日とする出願であって,平成23年12月27日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成24年3月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付け手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「上面と下面を有するベースプレートと,前記ベースプレートの上下面のうち一方の面に長手方向に一列に取り付けられ,前記ベースプレートの幅方向に延びるように形成された鉄心と,前記鉄心にそれぞれ設けられた複数のコイルと,前記複数のコイルの中を蛇行しつつ前記複数のコイルに接触して該コイルの高さ以上の高さに設定され第1の冷媒を通す第1の冷却管とを含む,前記ベースプレートの上下面のうち他方の面をテーブルに取付け可能なリニアモータコイル組立体において,
前記ベースプレートは前記ベースプレートの他方の面に長手方向に該ベースプレートの全長にわたって直線的に延びるとともに,前記鉄心の幅以上の幅に形成された溝を有し,リニアモータコイル組立体は前記溝の中に設けられ第2の冷媒を通し直線的に延びる扁平冷却管を有する第2の冷却管をさらに含むことを特徴とするリニアモータコイル組立体。」
と補正された。

上記補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「長手方向に固定された一列の鉄心」について「長手方向に一列に取り付けられ,ベースプレートの幅方向に延びるように形成された鉄心」へと限定し,同じく「複数のコイルに接触し第1の冷媒を通す第1の冷却管」について「複数のコイルの中を蛇行しつつ前記複数のコイルに接触して該コイルの高さ以上の高さに設定され第1の冷媒を通す第1の冷却管」へと限定し,同じく「ベースプレートの全長にわたって直線的に延びる溝」について「ベースプレートの全長にわたって直線的に延びるとともに,鉄心の幅以上の幅に形成された溝」へと限定し,同じく「第2の冷媒を通す第2の冷却管」について「第2の冷媒を通し直線的に延びる扁平冷却管を有する第2の冷却管」へと限定するものであって,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
a)原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-224961号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,リニアモータ,該リニアモータを適用したステージ装置及び露光装置,該露光装置を適用したデバイス製造方法に関する。」

・「【0004】冷却の第2の目的は,高い精度が要求される半導体製造装置や工作機械等に適用されるリニアモータの温度環境をコントロールすることである。コイルがショートしない範囲での温度上昇であっても,コイルの温度上昇によって,その熱がリニアモータ全体の温度を上昇させる。さらに,リニアモータの温度上昇は,リニアモータを支持する構造体や移動テーブル等の温度上昇を招き,構造体や移動テーブル等を変形させてしまう。したがって,冷却によって温度環境をコントロールし,各種の部材の変形を防ぐ必要がある。」

・「【0040】図1は,本発明の好適な実施の形態としての可動磁石型リニアモータの構造を模式的に示す断面図である。図2は,図1に示すリニアモータの固定子150側の概観を示す斜視図である。図1に示す可動子100は,界磁永久磁石102と,可動子ヨーク101とを有する。永久磁石102は,高い剛性を有する材質で構成されており,可動子100の移動方向(すなわち,y方向)に並べられている。可動子ヨーク101の材質は,例えば鉄やケイ素鋼などである。可動子ヨーク101は,永久磁石102が発生する磁束を通す機能の他,永久磁石102を支持する機能を有する。
【0041】このリニアモータを例えばステージ装置に組み込む場合は,可動部の質量を小さくし,剛性を向上させるために,可動子ヨーク101の背面をセラミック部材で支持することが好ましい。可動子ヨーク101自体の厚みは,磁路を形成するために最低限必要な厚みを確保すればよい。
【0042】固定子150は,可動子100の移動方向に沿ってコイルユニット160のコアとなる複数の突部を備えた固定子ヨーク151を有する。固定子ヨーク151の該突部は櫛歯形状を有する積層鉄心で構成されている。3相駆動するために,固定子ヨーク151の鉄心歯151Tとなる突状部材(以降は「鉄心歯」と記載する)に対して1つおきに上下一対の部分コイル161,162で構成されるコイルユニット160が保持され,または取り付けられ,または固定され,または巻かれている(以降は「巻かれている」と記載する)。隣り合う鉄心歯151の間のスロットは,その長手方向が図1において紙面に垂直(x方向)に伸びている。各コイルユニット160は,コイル引出し線183を通して随時給電され磁界を作る。コイル160によって作られる磁界と永久磁石102によって作られ磁界との相互作用によって可動子100を駆動するための駆動力が発生する。
【0043】コイルユニット160は,上部側の部分コイル(以下,上部コイルともいう)161と下部側の部分コイル(以下,下部コイルともいう)162とに分割されている。上部コイル161と下部コイル162は,2連コイルになっていて,連続して巻き線が施されている。すなわち,下部コイル162の巻き終わり部分の導線が上部コイル161の巻き始め部分の導線に繋がっている。両部分コイル161,162の巻き方向は同じである。上部コイル161と下部コイル162との間には,第1冷却配管(冷媒流路)153が配置されている。第1冷却配管153の材質は,外部から内部への熱伝達の効率を高めるために,熱伝導率の良いものが良い材料,例えば銅又はステンレスが好ましい。冷媒154は,比熱が大きく,粘度が小さく,不活性の物質が好ましく,例えば,通常の冷凍機に用いられている冷媒や,脱気された純水などを採用することができる。」

・「【0048】一方,本発明の好適な実施の形態によれば,冷却配管153の上下が部分コイル161,162に対面しているので,冷却配管153はその上下において部分コイル161,162から直接吸熱することができ,部分コイル161,162から効率的に吸熱することができる。」

・「【0056】コイルユニット160は鉄心歯151Tに巻き付けられているので,コイルユニット160が発生する熱の全てが第1冷却配管153に伝達するわけではなく,一部の熱は固定子ヨーク(積層鉄心)151に伝達される。これにより固定子ヨーク(積層鉄心)151の温度が上昇してしまう。そこで,固定子ヨーク(積層鉄心)151の冷却も行うことが好ましい。固定子ヨーク151の冷却は,例えば,固定子ヨーク151を固定するための固定子取付台170を冷却することによって行うことができる。この実施の形態では,固定子取付台170を冷却しこれにより固定子ヨーク151を冷却するために,固定子取付台170中に第2冷却配管171が配置されている。」

・「【0060】第2冷却配管171の構成例を図5を参照して説明する。固定子取付台170に第2冷却配管171を設けるために,この実施の形態では,固定子取付台170を上部固定子取付台170aと下部固定子取付台170bとに分割する。図5では,上部固定子取付台170aは,y軸を中心として180度回転させて示されている。すなわち,y軸を中心として上部固定子取付台170aをさらに180度回転させて下部固定子取付台170bに重ねることにより,固定子取付台170が構成される。
【0061】上部固定子取付台170aには第2冷却配管171(第2冷却配管溝171a)を設け,下部固定子取付台170bには冷媒が外部に漏れることを防止するためのシール部材(例えばOリング)を配置する。
【0062】シール部材(Oリング)は,図5(b)には図示されていないが,実際にはシール溝171dに取り付られる。シール溝171dは,第2配管171を構成する第2冷却配管溝171cの経路を囲むように配置されている。シール溝171dは,上部固定子取付台170a側に設けてもよいが,この場合は,第2冷却配管入口171a及び第2配管出口171bの経路とシール溝の経路とが干渉しないようにする必要があるので,上部固定子取付台170aの厚みを厚くする必要がある。したがって,シール溝171は,下部固定子取付台171d側に設けた方がよい。
【0063】図5に示す構成例では,第2冷却配管溝171cは,蛇行して配置されているが,このような構成に代えて,例えば,直線状の複数の配管(溝)を並べてもよいし,詳細な構成例を後述する第1冷却配管153と同様の構成としてもよいし,他の適切な構成を採用することもできる。」

・「【0079】具体的な例として,図12に示すウエハステージ1206に本発明のリニアモータを適用した例を説明する。Xリニアモータ1101X及びYリニアモータ1101Yの固定子は,実際には図2に示すように隔壁180によって密閉されているが,図11では,理解を深めるためにコイルや固定子ヨーク(積層鉄心)が見える状態にしてある。また,図12に示す例では,各リニアモータは,上下に対向配置された一対の固定子の間に可動子が配置されている。作図上の便宜のために図11では第1冷却配管は省略されているが,実際には図1や図3に示すように,リニアモータの各コイルユニットは上下に分割され,その間に第1冷却配管が配置されている。」

・「【0084】・・・Xリニアモータ1101Xの可動磁石を挟むように各Xリニアモータ1101Xは上下一対の固定子を有する。固定子には,前述のように部分コイルに分割されたコイルユニットや積層鉄心が具備されている。この固定子は,ステージ定盤1105に固定されている。」

・「【0097】
【発明の効果】本発明によれば,例えば,リニアモータの冷却効率を高めることができる。これにより,例えば,リニアモータのコイルにより大きな電流を流すこと,すなわち,リニアモータの出力を向上させることができる。」

・図1及び図4には,上面と下面を有する固定子取付台170の上面に長手方向に一列に取り付けられ,前記固定子取付台170の幅方向に延びるように形成された鉄心歯151Tと,前記鉄心歯151Tに設けられた複数の部分コイル161,162の間を蛇行しつつ前記複数の部分コイル161,162に接触する第1冷却配管153と,固定子取付台170の中に長手方向に該固定子取付台170の全長にわたって形成された第2冷却配管溝171cを有し,該第2冷却配管溝171cから構成される第2冷却配管171が設けられた態様が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「上面と下面を有する固定子取付台170と,前記固定子取付台170の上面に長手方向に一列に取り付けられ,前記固定子取付台170の幅方向に延びるように形成された鉄心歯151Tと,前記鉄心歯151Tに一つおきに設けられた複数の部分コイル161,162と,前記複数の部分コイル161,162の間を蛇行しつつ前記複数の部分コイル161,162に接触して冷媒154を通す第1冷却配管153とを含む,前記固定子取付台170の下面をステージ定盤1105に固定可能なリニアモータの固定子150において,
前記固定子取付台170は前記固定子取付台170の中に長手方向に該固定子取付台170の全長にわたって直線状に形成された第2冷却配管溝171cを有し,リニアモータの固定子150は前記溝から構成され冷媒172を通し直線状の配管としての第2冷却配管171を含むリニアモータの固定子150。」

b)同じく,引用された特開2001-128438号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0027】図1において,リニアモータ10は,ベースプレート11上に取り付けられた電機子12と冷却部材としての扁平冷却配管20とを備えており,電機子12の鉄心13はI字状の例えば珪素鋼板からなる電磁鋼板を積層して溶接または接着することにより構成されている。電機子12の詳細な構成は図3に示されており断面I字状の鉄心13の凹部に絶縁材15を被覆した上からコイル14を巻回することにより個々の電機子12が構成されている。」

・「【0032】次に,本発明の1つの特徴としての冷却部材について説明する。冷却部材としての扁平冷却配管20は,図1に示すように,S字状に連続的に折り曲げられた蛇行状の扁平配管となっており,その両端20a,20bは第1のマニホールド21と第2のマニホールド22に溶接されて配管されている。扁平冷却配管20は,例えば自動車のラジエータに用いられるものを採用することができ,図3および図6に示すように,断面が扁平で内部に多数の冷却液を循環させるための透孔25が扁平冷却配管20の幅方向の全てにわたって形成されている。
【0033】したがって,従来のパイプ形状の配管と比較して配管内を流す冷却液量を充分に取ることができると共に発熱体に接する表面積を広く取ることができる。」

・「【0047】
【発明の効果】以上詳細に説明したように本発明に係るリニアモータによれば,鉄心にコイルを巻回し製作された電機子をコイルの外周形状寸法にあわせて予め成形された可塑性の扁平冷却管の蛇行部分の間に挿入して組み付けることができるので,コイルをI字状の鉄心の凹部に可能な限り高密度にかつ所定の幅で巻回することができると共に,このコイルおよび珪素鋼板の鉄心の上下両端部にまでわたって扁平冷却管が略々全面で当接することになり,コイルの発熱をより効果的に冷却することができる・・・」

・図1,図2及び図3には,鉄心13にそれぞれ設けられた複数のコイル14と,前記複数のコイル14の中を蛇行しつつ前記複数のコイル14に接触して該コイル14の高さ以上の高さに設定された扁平冷却配管20を有する構成が示されている。

c)同じく,引用された特開2001-218444号公報(以下「引用例3」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0025】〈高推力リニアモータの構造〉高推力リニアモータは,図1の横断面図に示すように,可動部10と固定部20とリニアガイド30とリニアエンコーダ40とを備えている。そして,可動部10はリニアガイド30を介して固定部20と直線方向に摺動自在に連結している。また,リニアエンコーダ40は可動部10側に固定されたセンサ可動部41と固定部20側に沿って固定されたリニアスケール42とを有し,可動部10の移動位置を検出する。
【0026】可動部10は,図2に示すように,コイルC1,C2,C3 を巻回した磁性部材(コア)11と,このコア11およびコイルC1?C3の有効導体部Cb(図6参照)を除き略全体的に覆う一対の側面コアカバー12及び上面コアカバー13と,この側面コアカバー12及び上面コアカバー13にコア11を固定する際に用いるカバー取付板(連結手段)14と,被搬送物を載置するテーブル15と,を備えている。
【0027】コア11は,電磁鋼板の薄板を打ち抜いて形成されたものを重ね合わせて作成したものである。このコア11は,図3に示すように,軸方向に対して交差する方向の両側に突出した鉄の部分の歯(突極)Tと,この歯Tと歯Tとの間に形成されたスロットSとが,複数・交互に形成されている。
【0028】コイルC1,C2,C3 は,図2及び図4に示すように,U相C1,W相C2,V相C3 の3相で構成され,対応する両側のスロットS同士に渡って交互に巻回されている。従って,この実施の形態の高推力リニアモータは3相駆動方式である。そして,U相C1,W相C2,V相C3は隣り合う相の電気角が異なるようにU相C1,W相C2,V相C3 の順にスロットSに巻回されている。なお,図2及び図4において相を示すアルファベット文字の上に「-」を付したものは,コイルの巻回方向が隣接する相と反対方向であることを意味する。そして,コア11に巻回されたコイルC1,C2,C3 は,1磁極の幅Pmに対し3分の1ピッチずらした3相配置形機電子となっている。また,コイルC1,C2,C3 は,図6に示すように,その上端部と下端部に当たる推力に寄与しない無効導体部Ca,Caと,その側面部に当たる推力に寄与する有効導体部Cbとに分けられる。
【0029】側面コアカバー12及び上面コアカバー13は一対のカバーを構成し,アルミ系材質で形成されている。そして,側面コアカバー12は,3相配置形機電子(コア11及びコイルC1,C2,C3 )の前部・底部・後部を覆うように,側断面がコ形状を有している。一方,上面コアカバー13は,3相配置形機電子の頂部を覆う平板形状を有している。また,上面コアカバー13は上面の長手方向中央部に溝13aが形成されており,この溝13aには冷却パイプ16が収納される。」

・「【0032】冷却パイプ16は,外形がU字形状に形成され,上面コアカバー13上面の溝13a内に収納されている。冷却パイプ16の両先端は,可動部10の軸方向の一端に設けられた継手取付板19を介して継手(ハーフユニオン)18,18と接続している。継手18,18はそれぞれ冷却配管17,17と接続している。冷却配管17は冷却ガスを冷却パイプ16に供給し,あるいは冷却パイプ16内を通過した冷却ガスを排出する。従って,冷却パイプ16及び冷却配管17,17は,冷却ガスを循環させることによって,3相配置形機電子を冷却する熱交換器として作用する。
【0033】テーブル15は,図1に示すように,下面中央部にて上面コアカバー13の上面と連結し,下面両側にてリニアモータ30の摺動ブロック31と連結している。」

・図2には,上面コアカバー13の,テーブル15に取付け可能な面である上面に形成された溝13aが,長手方向に該上面コアカバー13の全長にわたって直線的に延びる所定幅を有する態様が示されている。

(3)対比
そこで,本願補正発明と引用発明とを対比する。

まず,後者の「固定子取付台170」は前者の「ベースプレート」に,後者の「固定子取付台170の上面」は前者の「ベースプレートの上下面のうち一方の面」に,後者の「鉄心歯151T」は前者の「鉄心」に,それぞれ相当している。

次に,後者の「鉄心歯151Tに一つおきに設けられた」態様と前者の「鉄心にそれぞれ設けられた」態様とは,「鉄心に設けられた」との概念で共通し,後者の「部分コイル161,162」は前者の「コイル」に相当するから,結局,後者の「鉄心歯151Tに一つおきに設けられた複数の部分コイル161,162」と前者の「鉄心にそれぞれ設けられた複数のコイル」とは,「鉄心に設けられた複数のコイル」との概念で共通している。

続いて,後者の「複数の部分コイル161,162の間」は前者の「複数のコイルの中」に,後者の「冷媒154」は前者の「第1の冷媒」に,後者の「第1冷却配管153」は前者の「第1の冷却管」にそれぞれ相当するから,結局,後者の「複数の部分コイル161,162の間を蛇行しつつ前記複数の部分コイル161,162に接触して冷媒154を通す第1冷却配管153」と前者の「複数のコイルの中を蛇行しつつ前記複数のコイルに接触して該コイルの高さ以上の高さに設定され第1の冷媒を通す第1の冷却管」とは,「複数のコイルの中を蛇行しつつ前記複数のコイルに接触して第1の冷媒を通す第1の冷却管」との概念で共通している。

また,後者の「固定子取付台170の下面」は前者の「ベースプレートの上下面のうち他方の面」に,後者の「ステージ定盤1105」は前者の「テーブル」に,後者の「固定可能」は前者の「取付け可能」に,後者の「リニアモータの固定子150」は前者の「リニアモータコイル組立体」に,それぞれ相当している。

さらに,後者の「固定子取付台170の中に」とする態様と前者の「ベースプレートの他方の面に」とする態様とは,「ベースプレートに」との概念で共通し,後者の「直線状に形成された」態様は前者の「直線的に延びる」態様に,後者の「第2冷却配管溝171c」は前者の「溝」にそれぞれ相当するから,結局,後者の「固定子取付台170は前記固定子取付台170の中に長手方向に該固定子取付台170の全長にわたって直線状に形成された第2冷却配管溝171cを有し」た態様と前者の「ベースプレートは前記ベースプレートの他方の面に長手方向に該ベースプレートの全長にわたって直線的に延びるとともに,鉄心の幅以上の幅に形成された溝を有し」た態様とは,「ベースプレートは前記ベースプレートに長手方向に該ベースプレートの全長にわたって直線的に延びる溝を有し」たとの概念で共通している。

加えて,後者の「冷媒172」は前者の「第2の冷媒」に相当し,後者の「直線状の配管」と前者の「直線的に延びる扁平冷却管」とは,「直線的に延びる冷却通路」との概念で共通し,後者の「第2冷却配管171」と前者の「第2の冷却管」とは,「第2の冷却用通路」との概念で共通するから,結局,後者の「溝から構成され冷媒172を通し直線状の配管としての第2冷却配管171を含む」と前者の「溝の中に設けられ第2の冷媒を通し直線的に延びる扁平冷却管を有する第2の冷却管をさらに含む」とは,「溝の位置に形成され第2の冷媒を通し直線的に延びる冷却通路としての第2の冷却通路を含む」との概念で共通している。

したがって,両者は,
「上面と下面を有するベースプレートと,前記ベースプレートの上下面のうち一方の面に長手方向に一列に取り付けられ,前記ベースプレートの幅方向に延びるように形成された鉄心と,前記鉄心に設けられた複数のコイルと,前記複数のコイルの中を蛇行しつつ前記複数のコイルに接触して第1の冷媒を通す第1の冷却管とを含む,前記ベースプレートの上下面のうち他方の面をテーブルに取付け可能なリニアモータコイル組立体において,
前記ベースプレートは前記ベースプレートに長手方向に該ベースプレートの全長にわたって直線的に延びる溝を有し,リニアモータコイル組立体は前記溝の位置に形成され第2の冷媒を通し直線的に延びる冷却通路としての第2の冷却通路を含むリニアモータコイル組立体。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点1]
複数のコイルが「鉄心に設けられた」態様に関し,本願補正発明は,「鉄心にそれぞれ設けられた」としているのに対し,引用発明は,「鉄心に1つおきに設けられた」とされている点。
[相違点2]
複数のコイルの中を蛇行しつつ前記複数のコイルに接触して第1の冷媒を通す第1の冷却管に関し,本願補正発明は,「該コイルの高さ以上の高さに設定され」た態様であるのに対し,引用発明は,かかる態様とされていない点。
[相違点3]
ベースプレートが有する溝の位置に関し,本願補正発明は,ベースプレート「の他方の面」,即ち,ベースプレート「のテーブルに取付け可能な面」としているのに対し,引用発明は,ベースプレート「の中」である点。
[相違点4]
ベースプレートが有する溝の大きさに関し,本願補正発明は,「鉄心の幅以上の幅に形成された」としているのに対し,引用発明は,かかる限定が付されていない点。
[相違点5]
第2の冷却通路に関し,本願補正発明は,「溝の中に設けられ」第2の冷媒を通し直線的に延びる「扁平」冷却管を有する第2の冷却管をさらに含むのに対し,引用発明は,「溝から構成され」第2の冷媒(冷媒172)を通し直線状の配管としての第2冷却配管を含むが,溝と別体の配管を有していない点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。

・相違点1及び2について
例えば,引用例2にも開示されているように,鉄心(「鉄心13」が相当)にそれぞれ設けられた複数のコイル(「コイル14」が相当)と,前記複数のコイルの中を蛇行しつつ前記複数のコイルに接触して該コイルの高さ以上の高さに設定された扁平冷却管(「扁平冷却配管20」が相当)を有することで,発熱体に接する表面積を広く取ることができ,結果,コイルの発熱をより効果的に冷却し得るようにすることは,リニアモータの分野における周知技術である。

引用発明において,コイルの発熱をより効果的に冷却することは,当然に要求されるべき課題であるといえるから,かかる課題の下に上記周知技術を複数のコイル及び第1の冷却管に採用して相違点1及び2に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものというべきである。

・相違点3及び4について
例えば,引用例3にも開示されているように,ベースプレート(「上面コアカバー13」が相当)のテーブルに取付け可能な面である他方の面(「上面」,即ち,「テーブル15に取付け可能な面」が相当)に長手方向に該ベースプレートの全長にわたって直線的に延びるとともに,所定幅に形成された溝(「溝13a」が相当)を有し,前記溝の中に冷媒(「冷却ガス」が相当)を通す(「供給する」態様が相当)冷却管(「冷却パイプ16」が相当)を設ける(「収納する」態様が相当)ように構成することは,リニアモータの分野における慣用技術である。

引用発明において,第2の冷却管を設けるベースプレートが有する溝の位置に関し,上記慣用技術に倣い,ベースプレートのテーブルに取付け可能な面である他方の面とすることで相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者にとって容易である。

また,上記溝の所定幅を「鉄心の幅以上の幅」とすることに関しては,本願の明細書中に何等の説明もなされておらず,そのような溝により格別顕著な効果が奏されるとも解されないから,相違点4は単なる設計的事項にすぎないものというべきである。

そうすると,相違点3及び4は,格別の相違点であるとはいえない。

・相違点5について
リニアモータの技術分野において,冷却のための冷媒を供給する通路を溝の中に配置した「管」を用いて構成することは,慣用手段である(必要であれば,本願明細書に先行技術文献として提示された特許3856057号公報(特開平11-27926号)の冷却用溝52の中に装着した冷媒導管8a等を参照)。
そして,冷却用通路を溝自体で構成するか,溝の中の管を用いて構成するかは,冷却用通路を配置する部材の場所や構造,製造の容易性,冷媒のシール性,冷却効率等,種々の観点を考慮して,適宜選択すべき事項に過ぎない。したがって,引用発明において,上記慣用手段を採用して第2冷却配管を溝内に別体としての配管を配置して構成することは,当業者が容易になし得たことである。なお,この際に,引用発明における下部固定子取付台のシール溝が不要となり,構成が簡易化される効果が得られることも,当業者にとって自明な事項といえる。
また,ベースプレートを冷却する第2の冷却管についても,効果的な冷却は当然に要求されるべき課題であるといえるから,かかる課題の下で,引用発明に上記慣用手段を採用する際に,上記周知技術に倣い,第2の冷却管を表面積を広く取ることができる扁平冷却管に改変して相違点5に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして,本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も,引用発明,上記周知技術,上記慣用技術及び上記慣用手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって,本願補正発明は,引用発明,上記周知技術,上記慣用技術及び上記慣用手段に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって,本件補正は,改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,平成23年10月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「上面と下面を有するベースプレートと,前記ベースプレートの上下面のうち一方の面に長手方向に固定された一列の鉄心と,前記鉄心にそれぞれ設けられた複数のコイルと,前記複数のコイルに接触し第1の冷媒を通す第1の冷却管とを含む,前記ベースプレートの上下面のうち他方の面をテーブルに取付け可能なリニアモータコイル組立体において,
前記ベースプレートは前記ベースプレートの他方の面に長手方向に該ベースプレートの全長にわたって直線的に延びる溝を有し,リニアモータコイル組立体は溝の中に設けられ第2の冷媒を通す第2の冷却管をさらに含むことを特徴とするリニアモータコイル組立体。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及び,その記載事項は,前記「2.[理由](2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は,前記「2.[理由](1)」で検討した本願補正発明から「長手方向に固定された一列の鉄心」について「長手方向に一列に取り付けられ,ベースプレートの幅方向に延びるように形成された鉄心」への限定を省き,同じく「複数のコイルに接触し第1の冷媒を通す第1の冷却管」について「複数のコイルの中を蛇行しつつ前記複数のコイルに接触して該コイルの高さ以上の高さに設定され第1の冷媒を通す第1の冷却管」への限定を省き,同じく「ベースプレートの全長にわたって直線的に延びる溝」について「ベースプレートの全長にわたって直線的に延びるとともに,鉄心の幅以上の幅に形成された溝」への限定を省き,同じく「第2の冷媒を通す第2の冷却管」について「第2の冷媒を通し直線的に延びる扁平冷却管を有する第2の冷却管」への限定を省いたものである。

そうすると,本願発明と引用発明とを対比した際の相違点は,前記「2.[理由](3)」で抽出した相違点1,3及び5のみとなるため,前記「2.[理由](4)」での検討を踏まえれば,本願発明も,引用発明,上記周知技術,上記慣用技術及び上記慣用手段に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,上記周知技術,上記慣用技術及び上記慣用手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため,本願は,同法第49条第2号の規定に該当し,拒絶をされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-26 
結審通知日 2012-11-27 
審決日 2012-12-10 
出願番号 特願2010-534722(P2010-534722)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H02K)
P 1 8・ 121- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 當間 庸裕  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 田村 嘉章
川口 真一
発明の名称 冷却装置を有するリニアモータコイル組立体  
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