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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1269380
審判番号 不服2011-9617  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-09 
確定日 2013-01-28 
事件の表示 特願2000-269376「引込み式物差し組立体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年9月7日出願公開、特開2001-241901〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1-手続経緯の概要】
本件出願手続、及び本件審判請求の概要は、次のとおりである。
平成12年 8月 2日:本件出願(優先日:平成11年8月4日)
(優先基礎出願番号:US/09/366783)
平成12年10月 2日:翻訳文提出
平成19年 7月 9日:審査請求
平成22年 5月28日:拒絶理由の通知(起案日:同年同月24日)
平成22年 8月19日:意見書・補正書提出
平成23年 1月 7日:拒絶査定の謄本送達(起案日:同年同月4日)
平成23年 5月 9日:本件審判請求・補正書提出
平成24年 1月13日:審尋(起案日:同年同月12日)
平成24年 6月12日:回答書提出

【第2-本願発明】
本件審判請求時の補正(以下、「本件補正」という)は、特許請求の範囲について補正するもので、査定時の請求項13の引用項を請求項3から請求項12に変更することにより、原査定の拒絶理由の一つである請求項18の記載不備を解消するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから、本件補正は、適法である。

本件出願の請求項1?18に係る発明は、本件補正により、補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものであると認める。
【請求項1】
「引込み式の物差し組立体であって、
ハウジング組立体と、
前記ハウジング組立体内に回転可能に取付けられたリールと、
一端を前記リールに連結した金属リボンで形成され、前記リールに対して接線方向の位置から、前記ハウジング組立体の離隔した開口を通って外方へ伸長するように前記ハウジング組立体に対して構成され配置された細長いブレードと、
前記ブレードが自由端にフック部材を有し、このフック部材はフック部および該フック部から全体的に直角に延在する取付け部を含み、この取付け部は前記ブレードに沿って前記フック部の厚さに概して等しい量の限定された相対移動をできるようにブレードの自由端に連結されていることと、
前記ハウジング組立体の開口から外部へ伸長して常態の凹-凸横断面形状にある時に前記細長いブレードを前記リール上に巻き上げて平坦な横断面形状で接触する渦巻きコイル配列にする方向へ、前記リールを前記ハウジング組立体内で回転させるために、前記ハウジング組立体および前記リール間に構成され配置された金属リボンで形成されたコイルばねと、
前記ハウジング組立体の開口から外部へ伸長したどの位置でも前記ブレードを保持するため、また前記ブレードが保持されたどの位置からも該ブレードを解放するために、手で作動されるように構成され配置されたブレード保持組立体とを含み、
前記ばねの金属リボンは、前記ブレードの金属リボンの幅の95%?120%の幅を有する引込み式物差し組立体。」

【第3-原査定の拒絶の理由の概要-容易想到性】
原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明が、平成22年5月28日に通知された拒絶理由通知書に記載されているように、本件出願の優先日である平成11年8月4日より前の平成11年7月21日に日本国内において頒布された刊行物である特開平11-194002号公報(以下、「刊行物1」という)に記載された発明、及び同じく平成11年1月29日に日本国内において頒布された刊行物である特開平11-23203号公報(以下、「刊行物2」という)に記載された発明、及び本件出願の優先日前の周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

【第4-刊行物1に記載された事項-引用発明1】
(4-1-刊行物1に記載された事項)
刊行物1には、【図1】?【図6】と共に、次のことが記載されている。
「・・・
【発明の名称】巻尺
・・・
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内にテープを周囲に巻回する回転ドラムを軸支し、この回転ドラムにテープを巻き込み方向に付勢する付勢手段を内装した巻尺に於いて、ケース前壁にケース内方に押し込み可能であり且つ上下動可能な制動操作部を設けると共に、該制動操作部を押し込むことにより回転ドラムに接触する第一のブレーキシューと、該制動操作部を下げることによりテープの出入口の背後でテープに接触する第二のブレーキシューとを同制動操作部に接続させたことを特徴とする巻尺
【請求項2】
前記制動操作部の上方部をケース内方へ押すことにより、第一のブレーキシューが回転ドラムと接触すると共に、該制動操作部の下方部をその下方のテープの出入口方向に移動させることにより、第二のブレーキシューがテープと接触することを特徴とする請求項1の巻尺
【請求項3】
前記制動操作部が複数の部材により構成され、そのうち上方部材をケース内方へ押すことにより、第一のブレーキシューが回転ドラムと接触し、下方部材をテープの出入口方向に移動させることにより、第二のブレーキシューがテープと接触することを特徴とする請求項1の巻尺
【請求項4】
前記制動操作部に接続されている二つのブレーキシューの一方を、操作時のみテープを停止させ、他方を、テープを停止状態に保持することを特徴とする請求項1の巻尺
【請求項5】
前記第一のブレーキシューを、操作時のみテープを停止させ、前記第二のブレーキシューを、テープを停止状態に保持することを特徴とする請求項4の巻尺
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、テープの巻込用付勢手段が内装された巻尺に関し、テープに対して異なった制動を選択できるようにした機構を有する巻尺に関するものである。
【0002】
【従来技術と問題点】
従来、テープを巻き込み方向に付勢するコイルバネ等の付勢手段が内装された巻尺には、テープを付勢手段の付勢力に抗して任意の引き出し位置に停止させる制動装置を備えるものが多い。それらの中には、制動操作部のボタンやレバーを操作することによって、引き出したテープを任意の位置に停止させたまま保持する制動装置(ロック機構を有する制動装置)、また操作時のみテープを停止させる制動装置(自動復帰機構を有する制動装置)がある。また、この上述した二種類の制動装置を備えるものもあり、使用状況に応じて作業者が使い分けている。
【0003】
そして、二種類の制動装置を備える巻尺は、制動装置またその制動操作部の設置部位がそれぞれ異なった部位に設置されている。その一つで、ロックを解除するまで引き出したテープが任意の位置に停止したまま保持される制動装置は、安全確実に操作可能な部位であるケース前壁に制動操作部が設けられることが多い。もう一つの制動装置、制動操作部の操作時のみ引き出したテープを停止させておくことができる制動装置は、ケース側面またはケース底面にその制動操作部が設けられることが多い。
【0004】
そして、ケース側面またはケース底面に設けられた制動操作部の操作により一時的にテープを停止させるとき、特にケース側面に制動操作部が設けられている巻尺は、作業者の手に巻尺本体を支持する力と、引き出したテープを停止させる制動操作部の押圧力の二つの力を要求することになり、かなりの力的負担が作業者の手にかかっていた。すなわち、指で摘むように巻尺を支持していなければならなかった。
【0005】
このため、測定時の巻尺の支持状態が不安定で、頻繁に持ち替えを行ったり、巻尺を落下させてしまったり、急に引き込まれたテープによって負傷してしまう危険があった。また、ケース底面に制動操作部が設けられている巻尺は、ケース側面に制動操作部が設けられた巻尺にあるような問題はないが、引き出したテープを数センチメートルまたは数十センチメートルづつ引き込みながら行う測定作業時は、制動調節する指の押圧力の調節が難しいなどの欠点があった。
【0006】
そして、上述のケース側面またはケース底面に設けられた制動操作部の操作によりテープを一時的に停止させて、その状態を維持したままでテープをその位置に停止させた状態にする場合、もう片方の手でケース前壁の制動操作部を操作しなければならないため極めて操作性が悪く、また、巻尺の保持状態も不安定であることから、この操作に於いても巻尺を落下させてしまったり、急に引き込まれたテープによる負傷の危険があった。
【0007】
【目的】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたもので、引き出したテープを任意の位置に停止させたまま保持する制動装置と、操作時のみテープを停止させる制動装置の両方を備える巻尺のそれぞれの制動操作に於いて、巻尺を確実に支持することができると共に、その操作を安全且つ容易にすることができる巻尺を提供することを目的とするものである。
【0008】
【問題を解決するための手段】
本発明の要旨とするところは、ケース内にテープを周囲に巻回する回転ドラムを軸支し、この回転ドラムにテープを巻き込み方向に付勢する付勢手段を内装した巻尺に於いて、ケース前壁にケース内方に押し込み可能であり且つ上下動可能な制動操作部を設けると共に、該制動操作部を押し込むことにより回転ドラムに接触する第一のブレーキシューと、該制動操作部を下げることによりテープの出入口の背後でテープに接触する第二のブレーキシューとを同制動操作部に接続させたことを特徴とする巻尺である。
【0009】
この巻尺をさらに詳しく説明すると、本巻尺は、ケース内にテープを周囲に巻回する回転ドラムを軸支し、この回転ドラムにテープを巻き込み方向に付勢する付勢手段を内装させた巻尺に関するものであり、付勢手段としてテープを巻き込み方向に付勢するコイルバネは内端をケース内に設けられている軸に巻き取られて、また、そのコイルバネの外端はテープに連結されており、テープを引き出すことによってコイルバネに巻き込みエネルギーが蓄積されるようになっている。
【0010】
このように構成されている巻尺ケース前壁に、テープを減速または停止させて、さらに停止させたまま保持することができる制動装置の制動操作部を設けたもので、制動の必要時には、この制動操作部を適宣操作することによって、制動が行われる。制動操作部と接続されている第一のブレーキシューは回転ドラムと接触してテープを制動させ、同じく制動操作部に接続した第二のブレーキシューはケース内のテープの出入り口の背後でこれを下に押圧することによりテープと接触して停止させる。
【0011】
ケース前壁とは、テープの出入口からケースの最高部(頂点部)の間に位置する壁を指すものであり、この部位の好適位置に制動装置の制動操作部を設けるのが望ましい。そして、制動操作部は好適な素材(樹脂/金属材等)で形成して、それに接続される第一のブレーキシューを弾性板やスプリングまた制動操作部自体等によって、回転ドラムから所望の間隔を開けて弾発的に支持するのがよい。また、第二のブレーキシューは従来技術を適宣用いてテープとの間隔の維持や停止状態の維持をすればよい。
【0012】
制動操作部は、それを単一の部品で構成して、その一部、特に上方部をケース内方へ押したときに第一のブレーキシューが回転ドラムと接触するようにし、また、その全部をテープの出入口方向に移動させたときに第二のブレーキシューがテープと接触するのがよい。あるいは、制動操作部を複数の部品で構成して、その部材の上方の部材をケース内方へ押したときに第一のブレーキシューが回転ドラムと接触するようにし、そして、下方の部材(テープ出入口側)をテープの出入口方向に移動させたときに第二のブレーキシューがテープと接触するようにしてもよい。
【0013】
第一および第二のブレーキシューを有するそれぞれの制動機構部は、その構造や機能等を特に限定するものではないが、望ましくは、一方の制動機構部を操作時のみテープを停止させることができる機構(自己復帰機構)とし、他方をテープを停止状態に保持させた状態で維持する機構(ロック機構)とするのがよい。望ましくは、第一のブレーキシューを有する制動機構部を操作時のみテープを停止させることができる制動機構部とし、第二のブレーキシューを有する制動機構部をテープを停止状態に保持させた状態で維持する制動機構部とするのがよい。
【0014】
ブレーキシューを接触させる回転ドラムの部位は、特にその部位を限定するものではないが、望ましくはディスク周縁と接触させるのがよい。ディスク周縁とは、ディスクの縁のみを指すものではなく、ディスクの内周面から外周面の縁に近接した部位をも含むものである。また、好適な機構を用いて、ブレーキシューを回転ドラムのディスクの内周面や外周面と接触させるようにしてもよい。ディスクの内周面とは、回転ドラムのテープの巻胴側の面を指すものである。そして、ブレーキシューは、回転ドラムの両側のディスクに接触させるようにするのが望ましい。
【0015】
ブレーキシューの形状・材質等は、制動性能を損なうことがなければそれらを特に限定するものではない。ブレーキシューを回転ドラムのディスク周縁と接触させる場合は、ブレーキシューの接触面にディスク幅より多少広い溝を設け、その溝とディスク周縁が接触するようにし、ブレーキシューの接触安定性を向上させるようにしてもよい。ブレーキシューと制動操作部との接続方法は特に限定するものではなく好適な方法で接続すればよい。また、第一および第二それぞれのブレーキシューと制動操作部を一体の部品として形成してもよい。
【0016】
【作用】
本発明の巻尺は以上のような構造のため、テープを一旦停止させたい時や引き込みスピードを減速させたい時は、ケース前壁に設けられている制動操作部の上方部をケース内方へ押す。これにより、制動操作部と接続されている第一のブレーキシューが、テープ巻き取り用の回転ドラムのディスク周縁に押圧されてテープに制動がかかる。また、テープを停止状態のまま維持させたい時、ケース前壁に設けられている制動操作部の全部をテープの出入口方向に移動させる。これにより、制動操作部と接続されている第二のブレーキシューが、テープと接触しテープに制動がかかり、テープをその位置に停止させたまま維持する。
【0017】
テープの引き出し、また引き込みをさせるには、制動操作部を元の位置に戻す(ロック解除)ことにより可能となる。これらの操作をする時、巻尺を支持している手および指は、親指以外の指でケースの底面を支え、親指の付け根およびその付け根付近の手のひらでケース上部を支えて、そして親指によって制動操作部が適宣操作される。これにより、巻尺の支持力を十分得られると共に、制動操作を的確に行うことができる。
【0018】
【実施例】
本発明の巻尺を図面に従って説明すると、図1は、本発明に係わる巻尺のハーフケースを外した状態の側面図であり、1はケース前壁13に制動操作部21を設けた本発明に係わる巻尺、2は制動装置で、制動操作部21と第一ブレーキシュー22と第二ブレーキシュー23を備えて、制動操作部21は、ハーフケース11およびハーフケース12(図示せず)に、テープ7の出入口6方向への進退動作を可能に支持される。3はテープ7の巻き取り用の回転ドラムで、ハーフケース11およびハーフケース12(図示せず)の内壁15に立設された軸16に軸支される。31はディスク周縁で、制動時の制動操作部21の上方部21aの押し込みにより、第一ブレーキシュー22が接触する。
【0019】
5はテープ7を巻き込み方向に付勢するコイルバネ、6はテーフ7(当審注:「テープ7」の誤記と認める)が出入する出入口で、また71はテープ7の係止片である。また、17は、制動時に第二ブレーキシュー23と共に、テープ7の停止状態を維持するための制動突部である。図2は、本発明に係わる巻尺の正面図であり、操作時のみテープ7を停止させることができる機能と、テープ7を停止状態のまま維持する機能を備える制動装置2の制動操作部21が巻尺1のケース前壁13に設けられているので、テープ7を一旦停止させたい時や引き込みスピードを減速させたい時は、ケース前壁13に設けられている制動操作部21の上方部21aをケース内方へ押す。
【0020】
これにより、制動操作部21の上方部21aと接続されている第一ブレーキシュー22が、テープ7巻き取り用の回転ドラム3のディスク周縁31に押圧されてテープ7に制動がかかる。(図1を参照)また、テープ7を停止状態のまま維持させたい時は、ケース前壁13に設けられている制動操作部21の全部をテープ7の出入口6方向に移動させる。これにより、制動操作部21と接続されている第二ブレーキシュー23が、テープ7と接触しテープ7に制動がかかり、テープ7をその位置に停止させたまま維持する。(図1を参照)
【0021】
図3は、他の実施例の巻尺のハーフケースを外した状態の側面図であり、制動装置2の制動操作部21が複数の部材、上方部21aと下方部21bの二つの部材で構成される。第一ブレーキシュー22と接続されている上方部21aは、弾性板4によってハーフケース11およびハーフケース12(図示せず)の開口14に弾発支持される。また、第二ブレーキシュー23と接続されている下方部21bは、ハーフケース11およびハーフケース12(図示せず)に、テープ7の出入口6方向への進退動作を可能に支持される。
【0022】
図4は、図3の巻尺の正面図であり、制動操作部21が複数の部材、上方部21aと下方部21bの二つの部材で構成されているので、テープ7を一旦停止させたい時や引き込みスピードを減速させたい時は、ケース前壁13に設けられている制動操作部21の上方部21aをケース内方へ押す。これにより、制動操作部21の上方部21aと接続されている第一ブレーキシュー22が、テープ7巻き取り用の回転ドラム3のディスク周縁31に押圧されてテープ7に制動がかかる。(図3を参照)また、テープ7を停止状態のまま維持させたい時は、ケース前壁13に設けられている制動操作部21の下方部21bを、テープ7の出入口6方向に移動させる。これにより、制動操作部21の下方部21bと接続されている第二ブレーキシュー23が、テープ7と接触しテープ7に制動がかかり、テープ7をその位置に停止させたまま維持する。(図3を参照)
【0023】
図5は、制動操作部の上方部の一構造を示す部分断面図である。また、図6は、他の構造の制動操作部の上方部を示す部分断面図であり、上方部21aがハーフケース11およびハーフケース12の開口14内に抜け止め25によって脱落不能に設けられ、上方部21aの下方端部がケース部材と一体成型された第一ブレーキシュー24と接しており、上方部21aをケース内方へ押すことによって第一ブレーキシュー24が回転ドラム3のディスク内面32側に曲がると共に、ディスク内面32を押圧してテープ7に制動がかかる。
【0024】
【効果】
本発明の巻尺は以上のように、それぞれ異なる機能を持つ制動装置の制動操作部を巻尺のケース前壁に集設してあり、操作者は状況にあった制動を選択して通常のケース保持状態のままで制動操作を行える。テープを一時的に停止させたい時や引き込みスピードを減速させ引きだし長さを調整したい時、あるいはテープを引き出し状態のまま維持させたい時など、巻尺を保持する手のの位置を変えること無しに同一状態で操作でき、巻尺を確実に支持することができる。また、それぞれの制動装置の制動操作部を一つの制動操作部で共用しているため、部品点数の軽減や製造コストの点でも有利である。そして、テープの制動操作を安全且つ容易にすることができると共に、テープの制動コントロールを的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる巻尺のハーフケースを外した状態の側面図
【図2】本発明に係わる巻尺の正面図
【図3】他の実施例の巻尺のハーフケースを外した状態の側面図
【図4】図3の巻尺の正面図
【図5】制動操作部の上方部の一構造を示す部分断面図
【図6】他の構造の制動操作部の上方部を示す部分断面図
【符号の説明】
1-巻尺,11-ハーフケース,12-ハーフケース,13-ケース前壁,14-開口,15-内壁,16-軸,17-制動突部,18-突部,
2-制動装置,21-制動操作部,21a-上方部,21b-下方部,
22-第一ブレーキシュー,23-第二ブレーキシュー,
24-第一ブレーキシュー,25-抜け止め,
3-回転ドラム,31-ディスク周縁,32-ディスク内面,4-弾性板,5-コイルバネ,6-出入口,7-テープ,71-係止片」

(4-2-刊行物1に記載された技術的事項の認定)
(技術的事項1について)
刊行物1の記載「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、テープの巻込用付勢手段が内装された巻尺に関し、・・・」及び「【0018】【実施例】本発明の巻尺を図面に従って説明すると、図1は、本発明に係わる巻尺のハーフケースを外した状態の側面図であり、1はケース前壁13に制動操作部21を設けた本発明に係わる巻尺、・・・」及び【図1】等から、次の技術的事項(以下、「技術的事項1」という)が読み取れる。
(技術的事項1)
《テープ7の巻込用付勢手段が内装された巻尺1》

(技術的事項2について)
刊行物1の記載「【0018】【実施例】本発明の巻尺を図面に従って説明すると、図1は、本発明に係わる巻尺のハーフケースを外した状態の側面図であり、1はケース前壁13に制動操作部21を設けた本発明に係わる巻尺、2は制動装置で、制動操作部21と第一ブレーキシュー22と第二ブレーキシュー23を備えて、制動操作部21は、ハーフケース11およびハーフケース12(図示せず)に、テープ7の出入口6方向への進退動作を可能に支持される。3はテープ7の巻き取り用の回転ドラムで、ハーフケース11およびハーフケース12(図示せず)の内壁15に立設された軸16に軸支される。・・・」等から、次の技術的事項(以下、「技術的事項2」という)が読み取れる。
(技術的事項2)
《ハーフケース11およびハーフケース12》

(技術的事項3について)
刊行物1の記載「【0018】【実施例】・・・3はテープ7の巻き取り用の回転ドラムで、ハーフケース11およびハーフケース12(図示せず)の内壁15に立設された軸16に軸支される。」及び「【0020】これにより、制動操作部21の上方部21aと接続されている第一ブレーキシュー22が、テープ7巻き取り用の回転ドラム3のディスク周縁31に押圧されてテープ7に制動がかかる。(図1を参照)・・・」等から、次の技術的事項(以下、「技術的事項3」という)が読み取れる。
(技術的事項3)
《ハーフケース11およびハーフケース12の内壁15に立設された軸16に軸支されるテープ7の巻き取り用の回転ドラム3》

(技術的事項4について)
刊行物1の記載「【0009】この巻尺をさらに詳しく説明すると、本巻尺は、ケース内にテープを周囲に巻回する回転ドラムを軸支し、この回転ドラムにテープを巻き込み方向に付勢する付勢手段を内装させた巻尺に関するものであり、付勢手段としてテープを巻き込み方向に付勢するコイルバネは内端をケース内に設けられている軸に巻き取られて、また、そのコイルバネの外端はテープに連結されており、テープを引き出すことによってコイルバネに巻き込みエネルギーが蓄積されるようになっている。」及び「【0018】【実施例】本発明の巻尺を図面に従って説明すると、図1は、本発明に係わる巻尺のハーフケースを外した状態の側面図であり、1はケース前壁13に制動操作部21を設けた本発明に係わる巻尺、2は制動装置で、制動操作部21と第一ブレーキシュー22と第二ブレーキシュー23を備えて、制動操作部21は、ハーフケース11およびハーフケース12(図示せず)に、テープ7の出入口6方向への進退動作を可能に支持される。3はテープ7の巻き取り用の回転ドラムで、ハーフケース11およびハーフケース12(図示せず)の内壁15に立設された軸16に軸支される。・・・」及び「【0019】5はテープ7を巻き込み方向に付勢するコイルバネ、6はテーフ7(当審注:「テープ7」の誤記と認める)が出入する出入口で、・・・」及び「【0020】これにより、制動操作部21の上方部21aと接続されている第一ブレーキシュー22が、テープ7巻き取り用の回転ドラム3のディスク周縁31に押圧されてテープ7に制動がかかる。(図1を参照)また、テープ7を停止状態のまま維持させたい時は、ケース前壁13に設けられている制動操作部21の全部をテープ7の出入口6方向に移動させる。これにより、制動操作部21と接続されている第二ブレーキシュー23が、テープ7と接触しテープ7に制動がかかり、テープ7をその位置に停止させたまま維持する。(図1を参照)」及び【図1】【図2】等から、次の技術的事項(以下、「技術的事項4」という)が読み取れる。
(技術的事項4)
《巻き取り用の回転ドラム3によって回転ドラム3の周囲に巻き取られ、ハーフケース11およびハーフケース12に形成された出入口6から出入するテープ7》

(技術的事項5について)
刊行物1の記載「【0019】5はテープ7を巻き込み方向に付勢するコイルバネ、6はテーフ7(当審注:「テープ7」の誤記と認める)が出入する出入口で、また71はテープ7の係止片である。・・・」及び【図1】【図2】等から、次の技術的事項(以下、「技術的事項5」という)が読み取れる。
(技術的事項5)
《テープ7の係止片71》

(技術的事項6について)
刊行物1の記載「【0019】5はテープ7を巻き込み方向に付勢するコイルバネ、・・・」等から、次の技術的事項(以下、「技術的事項6」という)が読み取れる。
(技術的事項6)
《テープ7を巻き込み方向に付勢するコイルバネ5》

(技術的事項7について)
刊行物1の記載「【0018】【実施例】本発明の巻尺を図面に従って説明すると、図1は、本発明に係わる巻尺のハーフケースを外した状態の側面図であり、1はケース前壁13に制動操作部21を設けた本発明に係わる巻尺、2は制動装置で、制動操作部21と第一ブレーキシュー22と第二ブレーキシュー23を備えて、制動操作部21は、ハーフケース11およびハーフケース12(図示せず)に、テープ7の出入口6方向への進退動作を可能に支持される。3はテープ7の巻き取り用の回転ドラムで、ハーフケース11およびハーフケース12(図示せず)の内壁15に立設された軸16に軸支される。31はディスク周縁で、制動時の制動操作部21の上方部21aの押し込みにより、第一ブレーキシュー22が接触する。」及び「【0019】5はテープ7を巻き込み方向に付勢するコイルバネ、6はテーフ7(当審注:「テープ7」の誤記と認める)が出入する出入口で、また71はテープ7の係止片である。また、17は、制動時に第二ブレーキシュー23と共に、テープ7の停止状態を維持するための制動突部である。図2は、本発明に係わる巻尺の正面図であり、操作時のみテープ7を停止させることができる機能と、テープ7を停止状態のまま維持する機能を備える制動装置2の制動操作部21が巻尺1のケース前壁13に設けられているので、テープ7を一旦停止させたい時や引き込みスピードを減速させたい時は、ケース前壁13に設けられている制動操作部21の上方部21aをケース内方へ押す。」及び「【0020】これにより、制動操作部21の上方部21aと接続されている第一ブレーキシュー22が、テープ7巻き取り用の回転ドラム3のディスク周縁31に押圧されてテープ7に制動がかかる。(図1を参照)また、テープ7を停止状態のまま維持させたい時は、ケース前壁13に設けられている制動操作部21の全部をテープ7の出入口6方向に移動させる。これにより、制動操作部21と接続されている第二ブレーキシュー23が、テープ7と接触しテープ7に制動がかかり、テープ7をその位置に停止させたまま維持する。(図1を参照)」等から、次の技術的事項(以下、「技術的事項7」という)が読み取れる。
(技術的事項7)
《ハーフケース11およびハーフケース12に形成された出入口6から出入りするテープ7をその位置で停止させたまま維持するための第二ブレーキシュー23を備えて、ハーフケース11およびハーフケース12にテープ7の出入口6方向への進退動作を可能に支持される制動操作部21》

(4-3-引用発明1の認定)
上記の(4-2-刊行物1に記載された技術的事項の認定)の(技術的事項1)?(技術的事項7)を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という) が記載されていると認められる。
(引用発明1)
「テープ7の巻込用付勢手段が内装された巻尺1であって、
ハーフケース11およびハーフケース12と、
ハーフケース11およびハーフケース12の内壁15に立設された軸16に軸支されるテープ7の巻き取り用の回転ドラム3と、
巻き取り用の回転ドラム3によって回転ドラム3の周囲に巻き取られ、ハーフケース11およびハーフケース12に形成された出入口6から出入するテープ7と、
テープ7の係止片71と、
テープ7を巻き込み方向に付勢するコイルバネ5と、
ハーフケース11およびハーフケース12に形成された出入口6から出入りするテープ7をその位置で停止させたまま維持するための第二ブレーキシュー23を備えて、ハーフケース11およびハーフケース12にテープ7の出入口6方向への進退動作を可能に支持される制動操作部21とを含む、
テープ7の巻込用付勢手段が内装された巻尺1。」

【第5-両発明の対比】
本願発明と引用発明1とを対比する。
(5-1-主たる構成要素についての対比)
本願発明と引用発明1の主たる構成要素についての対比をすると、次のとおりである。
全体的構成からみて 、引用発明1の「テープ7の巻込用付勢手段が内装された巻尺1」は、本願発明の「引込み式の物差し組立体」に相当する。
引用発明1の「ハーフケース11およびハーフケース12」は、本願発明の「ハウジング組立体」に相当する。
引用発明1の「回転ドラム3」は、本願発明の「リール」に相当する。
引用発明1の「ハーフケース11およびハーフケース12に形成された出入口6」は、本願発明の「ハウジング組立体の離隔した開口」に相当する。
引用発明1の「テープ7」は、本願発明の「細長いブレード」に相当する。
引用発明1の「係止片71」は、本願発明の「フック部材」に相当する。
引用発明1の「コイルバネ5」は、本願発明の「コイルばね」に相当する。
引用発明1のテープ7の停止位置維持の機能は、本願発明のブレードの伸長位置保持の機能と共通するから、引用発明1の「制動操作部21」は、本願発明の「ブレード保持組立体」に相当する。

(5-2-構成要素の細部についての対比)
上記(5-1-主たる構成要素についての対比)を踏まえて、さらに両発明の構成要素の細部について対比する。
(細部の対比1)
引用発明1の「ハーフケース11およびハーフケース12の内壁15に立設された軸16に軸支されるテープ7の巻き取り用の回転ドラム3」と、本願発明の「前記ハウジング組立体内に回転可能に取付けられたリール」とを対比する。
引用発明1においても、ハーフケース11およびハーフケース12内で巻き取り用の回転ドラム3が回転可能に軸16に軸支されているから、引用発明1と本願発明とにおいて、この構成要素に関して相当関係がある。

(細部の対比2)
引用発明1の「巻き取り用の回転ドラム3によって回転ドラム3の周囲に巻き取られ、ハーフケース11およびハーフケース12に形成された出入口6から出入するテープ7」と、本願発明の「一端を前記リールに連結した金属リボンで形成され、前記リールに対して接線方向の位置から、前記ハウジング組立体の離隔した開口を通って外方へ伸長するように前記ハウジング組立体に対して構成され配置された細長いブレード」とを対比する。
引用発明1の「回転ドラム3」、「ハーフケース11およびハーフケース12に形成された出入口6」、「テープ7」は、各々、本願発明の「リール」、「ハウジング組立体の離隔した開口」、「細長いブレード」に相当することは既述のとおりである。
引用発明1の「テープ7」と「回転ドラム3」との結合関係は不明であるが、本願発明の「細長いブレード」と「リール」とは「連結」されている。
引用発明1において、回転ドラム3の周囲に巻き取られているテープ7の係止片71側は、回転ドラム3の周囲に巻き取られたテープ7と回転ドラム3の周囲との接線位置からハーフケース11およびハーフケース12の出入口6を通って、ハーフケース11およびハーフケース12の外方に伸長するように構成されていると言える。よって、引用発明1の「テープ7」は、本願発明の「前記リールに対して接線方向の位置から、前記ハウジング組立体の離隔した開口を通って外方へ伸長するように前記ハウジング組立体に対して構成され配置された細長いブレード」である点で相当関係がある。

(細部の対比3)
引用発明1の「テープ7の係止片71」と、本願発明の「前記ブレードが自由端にフック部材を有し、このフック部材はフック部および該フック部から全体的に直角に延在する取付け部を含み、この取付け部は前記ブレードに沿って前記フック部の厚さに概して等しい量の限定された相対移動をできるようにブレードの自由端に連結されていること」とを対比する。
引用発明1の「係止片71」は、本願発明の「フック部材」に相当することは既述のとおりである。
引用発明1において、テープ7の自由端に係止片71が設けられているとは言えるが、係止片71とテープ7との取り付けに関する具体的構成については明らかではない。よって、引用発明1の係止片71とテープ7との取り付けと、本願発明の「該フック部から全体的に直角に延在する取付け部を含み、この取付け部は前記ブレードに沿って前記フック部の厚さに概して等しい量の限定された相対移動をできるようにブレードの自由端に連結されていること」には相当関係がない。

(細部の対比4)
引用発明1の「テープ7を巻き込み方向に付勢するコイルバネ5」と、本願発明の「前記ハウジング組立体の開口から外部へ伸長して常態の凹-凸横断面形状にある時に前記細長いブレードを前記リール上に巻き上げて平坦な横断面形状で接触する渦巻きコイル配列にする方向へ、前記リールを前記ハウジング組立体内で回転させるために、前記ハウジング組立体および前記リール間に構成され配置された金属リボンで形成されたコイルばね」とを対比する。
引用発明1の「コイルバネ5」は、本願発明の「コイルばね」に相当することは既述のとおりである。
引用発明1において、テープ7がハーフケース11およびハーフケース12の外部に伸長した時、テープ7の横断面形状が凹-凸形なのか平坦形なのかは不明である。刊行物1の【図2】の巻尺1の正面図の係止片71のテープ7との接続部形状が弧状であることから、テープ7がハーフケース11およびハーフケース12の外部に伸長した時、テープ7の横断面形状が弧状であることは十分に推測される。
引用発明1において、テープ7が回転ドラム3の周囲に巻き取られた時、テープ7の横断面形状が平坦形で、テープ7が接触する渦巻きコイル配列状態であることは明らかである。何故なら、刊行物1の【図5】の断面図の回転ドラム3の周囲に巻き取られたテープ7の接触状態が平坦状であることと、テープ7の横断面形状が弧状あるいは凹-凸形のままでは、テープ7の直線的自立性が発揮されて、テープ7を回転ドラム3の周囲に巻き取ることができないからである。
引用発明1において、テープ7は、ハーフケース11およびハーフケース12内の回転ドラム3がコイルバネ5により回転させられて、回転ドラム3の周囲に巻き取られるから、引用発明1のこの構成に関し、本願発明の「前記リールを前記ハウジング組立体内で回転させるために」「配置された」「コイルばね」と相当関係がある。
ところで、本願発明の「前記ハウジング組立体および前記リール間に構成され配置された」「コイルばね」は、この文言どおりには解釈できない。何故なら、この構成について本件出願の明細書及び図面等を総合すると、ハウジング組立体の内部にリールが存在し、さらにそのリールの内部にコイルばねが存在することが開示されており、ハウジング組立体の内部でリールの外部にコイルばねが存在することは開示されていないからである。よって、本願発明のハウジング組立体とリールとコイルばねの配置構成については、本件出願の明細書及び図面等に開示された、ハウジング組立体の内部にリールが存在し、さらにそのリールの内部にコイルばねが存在するものと解釈せざるを得ない。そうすると、引用発明1のハーフケース11およびハーフケース12と回転ドラム3とコイルバネ5との配置構成は、刊行物1の図面から明らかなように、本願発明のハウジング組立体の内部にリールが存在し、さらにそのリールの内部にコイルばねが存在するものと相当関係がある。

(細部の対比5)
引用発明1の「ハーフケース11およびハーフケース12に形成された出入口6から出入りするテープ7をその位置で停止させたまま維持するための第二ブレーキシュー23を備えて、ハーフケース11およびハーフケース12にテープ7の出入口6方向への進退動作を可能に支持される制動操作部21」と、本願発明の「前記ハウジング組立体の開口から外部へ伸長したどの位置でも前記ブレードを保持するため、また前記ブレードが保持されたどの位置からも該ブレードを解放するために、手で作動されるように構成され配置されたブレード保持組立体」とを対比する。
引用発明1の「制動操作部21」は、本願発明の「ブレード保持組立体」に相当することは既述のとおりである。
刊行物1の記載「【0017】テープの引き出し、また引き込みをさせるには、制動操作部を元の位置に戻す(ロック解除)ことにより可能となる。これらの操作をする時、巻尺を支持している手および指は、親指以外の指でケースの底面を支え、親指の付け根およびその付け根付近の手のひらでケース上部を支えて、そして親指によって制動操作部が適宣操作される。これにより、巻尺の支持力を十分得られると共に、制動操作を的確に行うことができる。」からみて、引用発明1の「ハーフケース11およびハーフケース12に形成された出入口6から出入りするテープ7をその位置で停止させたまま維持するための第二ブレーキシュー23を備えて、ハーフケース11およびハーフケース12にテープ7の出入口6方向への進退動作を可能に支持される制動操作部21」と、本願発明の「前記ハウジング組立体の開口から外部へ伸長したどの位置でも前記ブレードを保持するため、また前記ブレードが保持されたどの位置からも該ブレードを解放するために、手で作動されるように構成され配置されたブレード保持組立体」とは相当関係がある。

(細部の対比6)
引用発明1の「コイルバネ5」及び「テープ7」と、本願発明の「前記ばねの金属リボンは、前記ブレードの金属リボンの幅の95%?120%の幅を有する」とを対比する。
引用発明1の「コイルバネ5」、「テープ7」は、各々、本願発明の「前記ばね」、「前記ブレード」に相当することは既述のとおりである。
ここで、引用発明1の「コイルバネ5」、「テープ7」の材質についてはさておくとして、これらの幅に着目すると、引用発明1において、刊行物1の【図5】あるいは【図6】の部分断面図によれば、コイルバネ5もテープ7も回転ドラム3のディスク内面32間に同一幅で配置しているように見て取れる。

(5-3-総合的対比)
上記(5-1-主たる構成要素についての対比)及び(5-2-構成要素の細部についての対比)に依拠して、本願発明と引用発明1との実質的な一致点及び相違点を、本願発明の発明特定事項の用語を優先して記述すると、次のとおりである。

(一致点)
「引込み式の物差し組立体であって、
ハウジング組立体と、
前記ハウジング組立体内に回転可能に取付けられたリールと、
前記リールに対して接線方向の位置から、前記ハウジング組立体の離隔した開口を通って外方へ伸長するように前記ハウジング組立体に対して構成され配置された細長いブレードとを含み、
前記ブレードが自由端にフック部材を有するものであり、さらに、
前記ハウジング組立体の開口から外部へ伸長した前記細長いブレードを前記リール上に巻き上げて平坦な横断面形状で接触する渦巻きコイル配列にする方向へ、前記リールを前記ハウジング組立体内で回転させるために、前記ハウジング組立体および前記リール間に構成され配置されたコイルばねと、
前記ハウジング組立体の開口から外部へ伸長したどの位置でも前記ブレードを保持するため、また前記ブレードが保持されたどの位置からも該ブレードを解放するために、手で作動されるように構成され配置されたブレード保持組立体とを含む、
引込み式物差し組立体。」

(相違点1)
引用発明1の「テープ7」と、本願発明の「細長いブレード」との相違点に関し、次のように三分節する。
(相違点1-1)
引用発明1の「テープ7」と「回転ドラム3」との結合関係は不明であるが、本願発明の「細長いブレード」と「リール」とは「連結」されている点。
(相違点1-2)
引用発明1の「テープ7」の材質は不明であるが、本願発明の「細長いブレード」の材質は「金属」である点。
(相違点1-3)
引用発明1において「テープ7」が「ハーフケース11およびハーフケース12」の外部に伸長した時、「テープ7」の横断面形状が不明であるが、本願発明においては、「細長いブレード」が「ハウジング組立体」の外部に伸長した時、「細長いブレード」の横断面形状が「常態の凹-凸」である点。

(相違点2)
引用発明1において「係止片71」と「テープ7」との取り付けに関する具体的構成については明らかではないのに対し、本願発明においては「フック部材」と「細長いブレード」との取り付けに関する構成が「このフック部材は該フック部から全体的に直角に延在する取付け部を含み、この取付け部は前記ブレードに沿って前記フック部の厚さに概して等しい量の限定された相対移動をできるようにブレードの自由端に連結されていること」とあるように具体的である点。

(相違点3)
引用発明1の「コイルバネ5」の材質は不明であるが、本願発明の「コイルばね」の材質は「金属」である点。

(相違点4)
引用発明1において「コイルバネ5」の幅と「テープ7」の幅の比は不明であるが、本願発明においては「コイルばね」の幅と「細長いブレード」の幅の比が「前記ばねの金属リボンは、前記ブレードの金属リボンの幅の95%?120%の幅を有する」とあるように具体的に数値限定されている点。

【第6-当審の判断-相違点について-容易想到性】
上記相違点1?4を個別に検討し、最後に総合的判断について述べる。
(6-1-相違点1について)
最初に(相違点1-1)について検討する。
引用発明1の属する技術分野である、巻込用付勢手段が内装された巻尺において、測長用メジャーテープ(引用発明1では「テープ7」である)の一端と、測長用メジャーテープを巻尺内部に巻き取るリール(引用発明1では「回転ドラム3」である)とを連結することは、本件出願優先日前に周知であるから、この周知技術を引用発明1に適用して本願発明のようにすることは、当業者が容易に成し得たことである。
なお、上記周知技術については、例えば米国特許第3049317号明細書の第3欄第9?12行の記載「The tape H has its inner end secured at Q,FIGURE 2,to the outer periphery of reel D and is withdrawable through a slot R conjointly formed by the casing halves.」(当審仮訳:テープHは、図2のQにおいて、リールDの外周囲に結合する内端部を有し、ハーフケースに連帯して設けられた孔Rを通して引き込むことが出来る。)、同じく第3欄第40、41行の記載「The tape has its inner end secured to the reel at 25a.」(当審仮訳:テープは、25aにおいて、リールに結合する内端部を有する。)、同じく第6欄第62?68行の記載「FIGURE 10 illustrates the securing of the winding spring 44 to the spring core gear wheel 37 and to the spool core 41.The spool core 41 comprises two lugs 65,66,whereof the lug 65 is used for fastening the the outer end of the spring by means of a pin 67,and the lug 66 is provided for fastening the connectig piece 68 of the tape measure by means of the pin 69.」(当審仮訳:図10は、巻き込みバネ44のバネ中心歯車輪37及び巻き枠芯41との結合を模式的に示す。巻き枠芯41は二つの突起65、66を含み、突起65はピン67によってバネの外端を巻き枠芯41に結合させるために用いられ、突起66はピン69によって巻き尺の連結部材68を巻き枠芯41に結合させるために備えられる。)を参照されたい。

次に(相違点1-2)及び(相違点1-3)について検討する。
引用発明1の属する技術分野である、巻込用付勢手段が内装された巻尺において、測長用メジャーテープ(引用発明1では「テープ7」である)の材質を金属すること、及び、測長用メジャーテープが巻尺筐体(引用発明1では「ハーフケース11およびハーフケース12」である)の外部に伸長した時、測長用メジャーテープの横断面形状を「常態の凹-凸」である形状とすることは、本件出願優先日前に周知であるから、この周知技術を引用発明1に適用して本願発明のようにすることは、当業者が容易に成し得たことである。
なお、上記周知技術については、例えば特開平7-159101号公報の段落【0010】の記載「2は金属製、繊維強化合成樹脂等からなる巻尺テープであり、その断面形状は特に限定されず偏平状でも弧状であってもよいが、一般には弧状のものが自立性を有するので好適に使用される。・・・」を参照されたい。ここで、上記周知技術を示す文献の段落【0010】の巻尺テープの断面形状に関する記載「弧状」は、本願発明の細長いブレードがハウジング組立体の外部へ伸長した場合の横断面形状である「常態の凹-凸」に相当すると認められる。

(6-2-相違点2について)
引用発明1の属する技術分野である、巻込用付勢手段が内装された巻尺において、巻尺テープ(引用発明1では「テープ7」である)とフック部材(引用発明1では「係止片71」である)との取り付けに関しては、刊行物2の段落【0012】等に記載された技術を挙げることができる。

刊行物2の段落【0012】の記載は、次のとおりである。
「【発明の実施の形態】
図1は、本発明の巻尺テープの実施の形態に用いられるフック部材の一実施例を説明するためのもので、図1(A)は正面図、図1(B)は左側面図、図1(C)は右側面図、図1(D)は下側面図である。図中、2はフック部材、2aは装着部、2bはフック部、2cはリベット穴、2dは読取用穴、Lは中心線である。装着部2aは、図示しない巻尺テープの曲面に合わせた曲面状に形成され、リベット穴2cと読取用穴2dが開けられている。リベット穴2cは、中心線Lより振り分けた2列に配置され、それぞれの列に2つずつ設けられている。リベット穴2cの形が長穴であることによって、挿入されるリベットに対して、図1(A)でいえば、装着部2aが左右に移動可能である。移動量は、フック部2bの厚みと同じ値であり、それにより上述したように、外法を測定する場合でも、内法を測定する場合でも、フック部材が移動することによって、巻尺テープの0点の位置が測定の起点となり、フック部材のフック部の厚みが測定誤差とならない。・・・」

刊行物2の上記記載等を総合することにより、次の発明(以下、「引用発明2」という)を認定することができる。
(引用発明2)
「巻尺テープ1とフック部材2との取り付け技術に関し、フック部材2をフック部2bとフック部2bから全体的に直角に延在する装着部2aとから構成し、装着部2aを巻尺テープ1に沿ってフック部2bの厚み等しい量だけ移動可能なように巻尺テープ1の自由端に連結すること。」

そうすると、引用発明1における係止片71とテープ7との取り付けに関する具体的構成として引用発明2を引用発明1に適用して本願発明のようにすることは、当業者が容易に成し得たことである。

(6-3-相違点3について)
引用発明1の属する技術分野である、巻込用付勢手段が内装された巻尺において、巻込用付勢手段を構成するコイルバネの材質を金属とすることは、本件審判請求人自身が本件出願明細書の段落【0004】で自認しているように、本件出願優先日前に周知であるから、この周知技術を引用発明1に適用して本願発明のようにすることは、当業者が容易に成し得たことである。

(6-4-相違点4について)
既述のとおり、引用発明1の「コイルバネ5」の幅と「テープ7」の幅の関係については、刊行物1の【図5】あるいは【図6】の部分断面図によれば、両者は略等しいように見て取れる。

ところで、引用発明1の属する技術分野である、巻込用付勢手段が内装された巻尺において、巻尺テープの幅と、巻込用付勢手段を構成するコイルバネの幅との関係について、図面上見て取れるものとして、次のものが挙げられる。
(場合1-「コイルバネ」の幅が「巻尺テープ」の幅より短い図)
特開平7-294203号公報の【図1】(b)の巻き尺ケースの断面図を見ると、「ぜんまい状ばね4」の幅が「メジャーテープ3」の幅より短いことが見て取れる。
(場合2-「コイルバネ」の幅と「巻尺テープ」の幅が等しい図)
刊行物1の他に、原査定で引用された刊行物である、特開昭55-4584号公報の第2、3図の「スプリング28」と「テープ34」や、実願昭60-182283号(実開昭62-91201号)のマイクロフィルムの第2図の「ゼンマイ2」と「計測用目盛部分3」や、実願昭59-62556号(実開昭60-174803号)のマイクロフィルムの第3図の「スプリング23」と「ルール25」や、米国特許第3049317号明細書のFIG.1の「leaf spring 2」と「tape H」を参照。
(場合3-「コイルバネ」の幅が「巻尺テープ」の幅より長い図)
米国特許第3049317号明細書のFIG.3の「spiral spring 24」と「tape 25」並びにFIG.5の「spiral winding spring 44」と「tape 42」を参照。

以上の事例からみて、刊行物1に係る「コイルバネ5」の幅と「テープ7」の幅は、略等しいと解するのが自然である。

次に、本願発明の「コイルばね」の幅と「細長いブレード」の幅との関係についての上下限の数値(95%と120%)について、特別な技術的意義があるのか否か、検討する。

例えば、本件出願の【図9】に関する箇所での、本願発明と従来技術との比較では、細長いブレードについて平坦時の幅が広いものを用いれば、細長いブレードの厚さが薄くとも、細長いブレードの直線突出長の割合が高まることは推測できるが、「細長いブレード」の幅と「コイルばね」の幅との比と、引込み式物差し組立体のサイズとの、直接的な関連性は、把握することができない。
その他、本件出願の明細書及び図面等を総合しても、本願発明の発明特定事項である「前記ばねの金属リボンは、前記ブレードの金属リボンの幅の95%?120%の幅を有する」点により、コイルばねの径を小さくし、引込み式物差し組立体を手に納まる小さなサイズにするという、本願発明の作用効果が実現されることの客観的な説明が成されていると解することはできない。
してみると、本願発明の「コイルばね」の幅と「細長いブレード」の幅との関係についての上下限の数値(95%と120%)について、特別な技術的意義を見出すことは不可能であると言うべきである。

結局、本願発明において、上記の本願発明の作用効果を奏するための必須構成要件として、細長いブレードを引き込む所望のばね力を保持すべく幅広なコイルばねを使用した上で、さらにコイルばねを薄くすることによりコイルばねの径を小さくし、その結果として、リール径を小さくすることによって、引込み式物差し組立体を手に納まる小さなサイズにするべく、例えば細長いブレードの幅とコイルばねとの所定の関係に加えて、細長いブレードの厚さとコイルばねの厚さとの関係が特定されていればともかく、両者の幅についての関係の特定にとどまり、厚さについての関係が特定されていない本願発明にあっては、相違点4は、実質的な相違点とは言えない。

(6-5-本願発明の容易想到性についての総合的見解)
既述したように、本願発明と引用発明1との上記相違点1?4は、引用発明2及び本件出願優先日前の周知技術に基づいて、当業者が容易に想到可能な事項である。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明1及び引用発明2及び本件出願優先日前の周知技術から、当業者が予測可能なものであって、格別のものではない。
よって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2及び本件出願優先日前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

【第7-審判請求人の主張について】
審判請求人は、審判請求書等において、概略、本願発明と引用発明1との上記相違点4を根拠に、当業者が本願発明を容易に想到できたものではない旨主張している。しかしながら、この相違点4については上述のとおりであって、審判請求人の主張は採用できない。

また、審判請求人は、特に知財高裁の平成21年(行ケ)第10002号審決取消請求事件における判例を挙げて、特許図面は構成を理解しやすく図示するものであって、実寸で示されているものとは限らないので、引用発明1の解釈を図面の記載のみで認定するのは不当である旨主張している。
当然のことながら、当審は、上記知財高裁の平成21年(行ケ)第10002号審決取消請求事件における新規性についての判示『・・・しかし,特許出願に際して,願書に添付された図面は,設計図ではなく,特許を受けようとする発明の内容を明らかにするための説明図にとどまり,同図上に,当業者に理解され得る程度に技術内容が明示されていれば足り,これによって当該部分の寸法や角度等が特定されるものではない。・・・引用例には,本願発明と実質的に同一の発明が記載されているとした上で,本願発明は特許法29条1項3号に該当する旨判断している。しかし,同号所定の「刊行物に記載された」というためには,当業者がその刊行物を見れば,特別の思考を要することなく実施し得る程度にその内容が開示されている必要がある。・・・このように,本願発明につき特許法29条1項3号を適用することはできず,審決に,この点に関する誤りがあることは明らかである(なお,本判決は,本願発明が進歩性など他の特許要件を満たすか否かについては,何ら判断を示すものではない。)・・・』を十分踏まえ、本願発明と引用発明1との相違点4について判断したものである。
すなわち、この判決例は、寸法の大小関係が図面の記載と矛盾する箇所(ステントの内径寸法は、通常、スリーブの末端部分の内径寸法より小さい1.397mmとなるところ、引用例の図3では、ステントの内径がスリーブの末端部分の内径よりも大きく図示されている。)が存在する場合に、「このような図面のみに基づいて,引用例における部材の大小関係を認定することは適切ではない。」旨、判示したものであり、刊行物1の図面の記載内容にかかる矛盾のない本件とその事案を異にするものである。

なお、審尋に対する回答書には、補正案は提示されなかった。

【第8-むすび】
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2、及び本件出願優先日前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項2?18に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-28 
結審通知日 2012-09-04 
審決日 2012-09-18 
出願番号 特願2000-269376(P2000-269376)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須中 栄治  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 ▲高▼木 真顕
森 雅之
発明の名称 引込み式物差し組立体  
代理人 浅村 肇  
代理人 浅村 皓  
代理人 森 徹  

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