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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C03B
管理番号 1269391
審判番号 不服2009-19416  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-09 
確定日 2013-01-30 
事件の表示 特願2001-352281「高UV透過性ガラスを製造するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月31日出願公開、特開2002-211932〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年11月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2000年11月17日、ドイツ)の出願であって、平成18年10月12日付けで拒絶理由が起案され、平成19年4月5日付けで意見書及び明細書に係る手続補正書が提出され、平成20年6月3日付けで拒絶理由が起案され、同年12月4日付けで意見書が提出され、平成21年6月1日付けで拒絶査定が起案され、同年10月9日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同日付けで明細書に係る手続補正書が提出されたものである。さらに、平成23年9月20日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋が起案され、同年12月26日付けで回答書が提出され、さらに、当審において平成24年2月10日付けで拒絶理由及び補正却下の決定が起案され、同年8月9日付けで意見書及び明細書に係る手続補正書が提出されたものである。
そして、本願の請求項1に係る発明は、平成24年8月9日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「溶解物表面(15)を有するガラス溶解物が入った溶解槽(1)内で実施される溶解方法を用い、UV領域において高透過性を有するガラスを製造するための方法において、
前記溶解槽に、供給口(11)を通してガラス原材料の良く均一化された混合物を絶えず供給して、閉じた混合物の覆いが前記溶解物表面(15)上に形成されるようにし、
前記ガラスの溶解物に、常に前記溶解物表面(15)の下方でエネルギーを供給し、
前記溶解物表面の上側の空間ならびに前記溶解物表面そのものにはエネルギーを供給せず、
前記ガラス溶解物を前記溶解物表面(15)の下においてのみ攪拌し、
前記溶解物表面上で閉じた混合物の覆いとして載っている混合物を前記溶解物の中に一様に混入し、かつ混合することを特徴とする高透過性ガラスを製造するための方法であって、
前記ガラスの組成の範囲が、SiO_(2) 19?67重量%、PbO 20?80重量%、Na_(2)O 0?9重量%、K_(2)O 0?10.5重量%、As_(2)O_(3) 0?1重量%である、方法。」

第2 当審の拒絶理由
平成24年8月9日付けの手続補正書により補正され請求項1に対応する旧請求項6に関する当審の拒絶の理由6は、以下のとおりのものである。
「6.進歩性
本願発明1?13は、その出願前にその出願前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開平4-292423号公報(原査定の参考文献)
2.特開昭57-22122号公報(今回提示)
3.特開平6-56432号公報(今回提示)
4.特開平7-330342号公報(今回提示)
5.特開平8-301621号公報(原査定の引用文献8)
6.特開昭57-179050号公報(今回提示)
7.特開2000-264675号公報(今回提示)
8.特開平2-252626号公報(原査定の引用文献6)
9.特公昭42-7618号公報(原査定の引用文献7)
10.実願平1-7711号(実開平2-102432号)のマイクロフィルム(今回提示)
11.特開昭60-180930号公報(原査定の引用文献4)
12.特開平1-308843号公報(今回提示)
13.特開平8-290936号公報(今回提示)
14.特開昭50-160310号公報(今回提示)

6-1.本願発明1について、引用文献1-7
引用文献1における、「炉本体2」、「ガラス原料」、「原料投入口1」、「ガラス出口6」、「ガラス素地G」、「溶解用抵抗発熱体4(4’)」、「バッチ層3」、「スターラー7」は、それぞれ本願発明1における、「溶解槽(1)」、「ガラス原材料」、「供給口(11)」、「取出口(5)」、「溶湯」、「加熱素子(17.1,17.2,17.3,17.4)」、「混合物の覆い」、「攪拌装置(30)」に相当する。
そして、引用文献1には、上記「ガラス素地G」に浸漬されるレベルに上記「溶解用抵抗発熱体4(4’)」を設置し、上記「溶解用抵抗発熱体4(4’)」より下部がスターラー攪拌領域となるようにして、上記「ガラス素地G」を攪拌するようにした、ガラス溶融炉が記載されている。
(段落【0011】?【0019】、【図1】?【図6】を参照)

本願発明1と引用文献1を比較すると、以下の点で相違し、その余の点では一致する。
・相違点A
本願発明1の溶解装置には、「溶解槽(1)」の上方に「天井部(9)」が備えられ、「供給口(11)」が、「溶湯」の上側の前記「天井部(9)」の領域に設けられているのに対し、引用文献1には特段の記載がされていない点。

・相違点B
本願発明1の溶解装置は、「高UV透過性ガラス」を製造するための溶解装置であるのに対し、引用文献1にはガラスの種類について特定されていない点。

上記相違点A、Bについて検討する。
・相違点Aについて
熔融槽の上方に天井部を設けることは、例えば、引用文献2(第2頁右上欄第13行?左下欄第4行、第1図を参照)、引用文献3(段落【0003】、同【0011】、【図1】を参照)、引用文献4(段落【0012】、同【0030】、【図1】?【図5】を参照)、引用文献5(段落【0036】、【図1】?【図6】を参照)等に記載されているとおり、本願の優先日前に周知であり、引用文献1に記載のガラス溶融炉において、周知の天井部を設けることは、放熱防止や、検出器の設置等の状況に応じて、当業者が適宜なし得る事項に過ぎない。
また、引用文献1の「原料投入口1」は、「炉本体2」の上部に設けられていることからみて(段落【0017】を参照)、周知の天井部を設ければ、供給口が天井部の領域に位置することは、当業者にとって適宜なし得る事項である。

・相違点Bについて
引用文献1は、「ガラス素地G」の種類について特定していないが、UV透過性ガラスを熔融・攪拌して製造することは、例えば、引用文献6(第3頁右上欄第4?9行、第1?3図を参照)、引用文献7(段落【0031】、【図1】を参照)等に記載されているとおり、本願の優先日前に周知であり、引用文献1のガラス溶融炉において、著しく均質性のよい高品質なガラス素地が得られる(段落【0025】を参照)ことを鑑みると、該ガラス溶融炉を用いて周知のUV透過性ガラスを熔融・攪拌すれば、「高UV透過性ガラス」が得られることは、困難なくなし得ることである。
・・・
6-6.本願発明6について、引用文献1、6、7、10
引用文献1における、「ガラス素地」、「ガラス溶融炉」、「原料投入部」、「原料」、「バッチ層」は、それぞれ本願発明6における、「ガラス溶解物」、「溶解槽(1)」、「供給口(11)」、「ガラス原材料」、「混合物の覆い」に相当する。
そして、引用文献1には、上記「ガラス素地」に浸漬されるレベルに「ガラス素地溶解用抵抗発熱体」を設け、前記「ガラス素地溶解用抵抗発熱体」より下部の領域を攪拌するようにした、ガラス素地均質化方法が記載されている(特許請求の範囲【請求項1】、段落【0011】?【0019】、【図1】?【図6】を参照)。

本願発明6と引用文献1とを比較すると、以下の点で相違する。

・相違点E
本願発明6は、「UV領域において高透過性を有するガラス」を製造するための方法であるのに対し、引用文献1にはガラスの種類について特定されていない点。

・相違点F
本願発明6は、「ガラス原材料の良く均一化された混合物を絶えず供給して、閉じた混合物の覆いが前記溶解物表面(15)上に形成されるようにし」ているのに対し、引用文献1には特段の記載がない点。

上記相違点E、Fについて検討する。
・相違点Eについて
上記相違点Eは、上記相違点Bと実質的に同一であるから、上記「6-1.本願発明1について」の相違点Bの検討で述べたとおりである。

・相違点Fについて
引用文献1には、段落【0005】に、「原料がガラス素地表面を覆い(通常コールドトップといわれる)炉上部からの放熱を少なくした堅形ガラス溶融炉」と記載され、同段落【0017】に、「このガラス素地Gの表面にはガラス原料(バッチ)が均等に供給され、バッチ層3が形成されている。」と記載されている。

上記コールドトップ型の炉において、バッチ層を維持するために、絶えず原料を供給することは、引用文献10(第1頁第17行?第2頁第13行を参照)に記載されているから、引用文献1のガラス素地均質化方法においても、上記「バッチ層3」を形成するにあたり、上記「ガラス原料(バッチ)」を絶えず供給しているといえる。
よって、上記相違点Fは、実質的な相違点とはならず、そうでないとしても、引用文献1のガラス素地均質化方法において、バッチ層を維持するために、絶えず原料を供給すること、すなわち、相違点Fに係る本願発明6の特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得ることである。
・・・」

第3 引用文献の記載事項
3-1.引用文献1には、図面と共に下記の記載がある。
(ア)「最上部に原料投入部を有し、最下部にガラス素地出口を備え、ガラス素地に浸漬するレベルに、少なくとも一つの開口を有し炉の水平断面のほぼ全領域をおおう板状のガラス素地溶解用抵抗発熱体を設けた竪型ガラス溶融炉において、炉上部よりバッチ層、前記板状発熱体を通して攪拌用スタ-ラ-を挿入し、板状発熱体より下部の領域において板状発熱体を通過したガラス素地を強制攪拌することにより均質化することを特徴とするガラス素地均質化方法。」(特許請求の範囲 請求項1)
(イ)「【作用】ガラス素地溶解用抵抗発熱体は、ガラス素地を通してガラスバッチを均質に溶解させる。溶解した素地は、この発熱体の開口部を通り、スタ-ラ-の存在する領域において、このスタ-ラ-によって引き起こされる強制流により混合が促進される。
すなわち、ガラス素地溶解用抵抗発熱体下部のガラス素地領域に、攪拌用スタ-ラ-を挿入し、発熱体より上部の流れを著しく乱すことなく、このスタ-ラ-の引き起こす強制流によって混合を促進させることにより、熱対流を抑制して熱履歴の短いガラス素地すなわち加熱が不十分で泡や未溶解物を含んだガラス素地が流出して製品に欠点を生じさせることや、ガラス素地表面のバッチの不均一な溶解を引き起こすことを防止できるという、特開平2-199030号に係るガラス溶解炉の板状発熱体による溶解方式の利点を損なうことなく、ガラス素地の均質性を向上させることができる。
ここで、ガラス素地溶解用抵抗発熱体は、スタ-ラ-によるガラス素地の流れに対する邪魔板としても働き、そのため例えばガラス素地中に電極を挿入し、直接通電加熱により原料を溶解する炉においては泡、未溶解物をガラス素地中に巻き込んでしまう程度の強さの流れでも、本発明においては抵抗発熱体の邪魔板の効果により低減され、問題とならない場合があり、一般により強い攪拌を用いることができる。」(段落【0011】?【0013】)
(ウ)「本実施例のガラス溶融炉においては、種瓦よりなる炉本体2は、上部に平面視で四角形をなす原料投入口1、底部にガラス出口(本実施例では下方へ突出するスロ-ト)6が設けられ、内部には溶融したガラス素地Gが保持されている。このガラス素地Gの表面にはガラス原料(バッチ)が均等に供給され、バッチ層3が形成されている。しかして、炉内のガラス素地Gに浸漬されるレベルに、当該レベルにおける炉の水平断面のほぼ全領域にわたって、開口5が形成された板状の発熱部4a(4a’)を有するガラス素地溶解用抵抗発熱体4(4’)が設置されている。板状の発熱部4a(4a’)より下部の領域における炉の水平断面形状は、八角形である。」(段落【0017】)
3-2.引用文献6には、図面とともに下記の記載がある。
(ア)「重量%で、SiO_(2) 24?40%、PbO 40?72%、Nb_(2)O_(3) 1?12%、Na_(2)Oおよび/またはK_(2)O 0.5?7%、および上記各金属元素の一種または二種以上の弗化物をF_(2)として合計0.1?1.5%の範囲で含有することを特徴とする光学ガラス。」(特許請求の範囲)
(イ)「従来、上記光学恒数を有するガラスとしては、多量のPbOを有するSiO_(2)-PbO-R_(2)O(Rはアルカリ金属元素)系ガラスが知られているが、このガラスは溶融性に富む利点をもつ反面において、PbO含有量が高いため、化学的耐久性に劣り、レンズの研磨過程や長期間にわたる使用過程において、レンズ表面が化学的に侵蝕されて、いわゆる「ヤケ」を生じやすく、また分光透過性が悪く着色の程度が大きい。」(第1頁左欄第15行?同右欄第3行)
(ウ)「なお、本発明のガラスにおいて、As_(2)O_(3)および/またはSb_(2)O_(3)は、ガラス溶融の際の脱泡清澄剤として有効であり、任意に添加し得るが、これらの量は1%以下で十分である。・・・
つぎに、本発明の光学ガラスの実施組成例(No.1?No.16)をこれらのガラスの光学恒数(nd、νd)および化学耐久性(RW、RA)についての測定試験結果とともに表1に示す。また、表1には実施例No.1、2および3とそれぞれ同等の光学恒数を有するSiO_(2)-PbO-R_(2)O系のガラスNo.I、IIおよびIIIを比較組成例として示してある。」(第2頁右下欄第3?20行)
(エ)「

」(第4頁)
(オ)「

」(第4頁)
3-3.引用文献7には、図面とともに下記の記載がある。
(ア)「多成分系ガラス光ファイバーは、光伝送損失が石英系ガラス光ファイバーに比べて大きいため、長距離の伝送には適していないが、ファイバーの径を太くしたり、上述したNAを変えることが容易にできるため、光源やセンサーとの結合効率が良好であり、短距離伝送用や内視鏡用イメージスコープ、ライトガイド、センサー用等に用いられている。
上記用途の多成分系ガラス光ファイバーおいて、耐候性に優れたクラッドガラスとして一般的にソーダ・ライム・シリケートガラスが用いられており、このクラッドガラスよりも屈折率が高く、十分な耐失透性を有する点から、コアガラスとしては、特開昭50-160310号公報(審決注:原査定の引用文献14)等に記載されているSiO_(2)-PbO-R_(2)O系(R_(2)Oはアルカリ金属酸化物)のガラスがよく用いられている。しかし、このガラスは、後述する図1に示すとおり、短波長域での光線透過性が劣るため、伝送経路が長くなると透過光が黄色味を帯びて、演色性が低下するという問題がある。」(段落【0005】?【0006】)
(イ)「【実施例】次に、本発明の光ファイバー用ガラスにかかる実施組成例(No.1?No.14)と、前記従来の技術として挙げた特開昭50-160310号公報、特開昭62-70245号公報および特開平2-293346号公報中の実施例と同様の組成を有するガラスの比較組成例(No.A?No.C)を、それぞれ得られたガラスの屈折率(nd)、軟化点(SP)、平均線膨張係数(α100?300℃)、着色度および失透試験の測定結果とともに表1および表2に示した。」(段落【0023】)
(ウ)【表2】には、前記従来の技術として挙げた特開昭50-160310号公報の実施例と同様の組成を有するガラスの比較組成例(No.B)について得られたガラスの屈折率(nd)、軟化点(SP)、平均線膨張係数(α100?300℃)、着色度および失透試験の測定結果が示されている。(段落【0027】)
(エ)「また、図1は、上記表1中の本発明の実施組成例No.8のガラスおよび上記表2中の比較組成例No.Bのガラスから得た、平行に対面を研磨した厚さ10±0.1mmの試料の分光透過率を測定した結果を示す図である。図1に見られるとおり、本発明にかかる実施組成例No.8のガラスの実線で示した分光透過率曲線は、比較組成例No.Bのガラスの点線で示した分光透過率曲線より短波長側にシフトしており、上記比較組成例のガラスと比べて、短波長域での光線透過性が優れていることが図1からも分かる。」(段落【0029】)
(オ)「

」(図1)
3-4.引用文献10には、図面とともに下記の記載がある。
(ア)「[従来の技術]
従来からガラス溶融のためにコールドトップ方式を採用した電気溶融炉が使用されている(例えば特公昭56-19289号)。
斯かる溶融炉においては、溶解槽上部には原料供給装置によって供給された粉状の原料層が存在し、この原料層の厚さをある範囲内で、しかも液面全体をできるだけ均等の厚さに維持して蔽うことにより溶解槽上部からの放熱を防止し、溶解槽内部を所定温度に維持している。
この原料層を一定の厚さに保持し液面を蔽うことをバッチカバーと称している。
一定のバッチカバーを維持するには溶融されたガラスの引き出し量、溶融に必要な電力量、引き出し量に見合う原料供給量、それぞれが一定の条件でバランスしている場合、安定状態を継続することができる。」(第1頁第17行?第2頁第13行)

第4 当審の判断
4-1.引用発明の認定
引用文献1の記載事項(ア)には、「最上部に原料投入部を有し、最下部にガラス素地出口を備え、ガラス素地に浸漬するレベルに、少なくとも一つの開口を有し炉の水平断面のほぼ全領域をおおう板状のガラス素地溶解用抵抗発熱体を設けた竪型ガラス溶融炉において、炉上部よりバッチ層、前記板状発熱体を通して攪拌用スタ-ラ-を挿入し、板状発熱体より下部の領域において板状発熱体を通過したガラス素地を強制攪拌することにより均質化することを特徴とするガラス素地均質化方法」が記載されている。
そして、記載事項(イ)には、「ガラス素地溶解用抵抗発熱体は、ガラス素地を通してガラスバッチを均質に溶解させる。溶解した素地は、この発熱体の開口部を通り、スタ-ラ-の存在する領域において、このスタ-ラ-によって引き起こされる強制流により混合が促進される。すなわち、ガラス素地溶解用抵抗発熱体下部のガラス素地領域に、攪拌用スタ-ラ-を挿入し、発熱体より上部の流れを著しく乱すことなく、このスタ-ラ-の引き起こす強制流によって混合を促進させることにより、熱対流を抑制して熱履歴の短いガラス素地すなわち加熱が不十分で泡や未溶解物を含んだガラス素地が流出して製品に欠点を生じさせることや、ガラス素地表面のバッチの不均一な溶解を引き起こすことを防止」することが記載され、記載事項(ウ)には、「ガラス素地Gの表面にはガラス原料(バッチ)が均等に供給され、バッチ層3が形成されている」ことが記載されている。

これらの記載事項を本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、
「原料投入部を有し、ガラス素地Gの表面にはガラス原料(バッチ)が均等に供給され、バッチ層が形成され、ガラス素地に浸漬するレベルに、板状のガラス素地溶解用抵抗発熱体を設けた竪型ガラス溶融炉において、板状発熱体より下部の領域において板状発熱体を通過したガラス素地を強制攪拌し、熱対流を抑制してガラス素地表面のバッチの不均一な溶解を引き起こすことを防止することにより均質化するガラス素地均質化方法。」
の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されていると認められる。

4-2.対比
そこで、本願発明と引用1発明とを対比すると、まず、引用1発明の「原料投入部」、「ガラス素地」は、本願発明の「供給口(11)」、「ガラス溶解物」に相当することは明らかであり、引用1発明の「竪型ガラス溶融炉」は、本願発明の「ガラス溶解物が入った溶解槽」に他ならない。また、引用1発明の「ガラス素地均質化方法」は、本願発明の「溶解槽(1)内で実施される溶解方法を用いたガラスを製造するための方法」を限定的に表現したものということができる。
また、引用1発明の「ガラス素地Gの表面にはガラス原料(バッチ)が均等に供給され、バッチ層が形成され」ることは、引用文献10の記載事項(ア)に、「原料層を一定の厚さに保持し液面を覆うことをバッチカバーと称し」、「一定のバッチカバーを維持するには溶融されたガラスの引き出し量、溶融に必要な電力量、引き出し量に見合う原料供給量、それぞれが一定の条件でバランスしている場合、安定状態を継続することができる」ことが記載されていることを踏まえれば、本願発明の「供給口(11)を通してガラス原材料の良く均一化された混合物を絶えず供給して、閉じた混合物の覆いが前記溶解物表面(15)上に形成されるようにし」たことに相当するといえる。
そして、引用1発明において「ガラス素地に浸漬するレベルに、板状のガラス素地溶解用抵抗発熱体を設けた竪型ガラス溶融炉において、板状発熱体より下部の領域において板状発熱体を通過したガラス素地を強制攪拌」することは、本願発明の「ガラス溶解物を前記溶解物表面(15)の下においてのみ攪拌」することに相当することは当然であり、引用1発明において「ガラス素地表面のバッチの不均一な溶解を引き起こすことを防止することにより均質化する」ことは、本願発明の「溶解物表面上で閉じた混合物の覆いとして載っている混合物を前記溶解物の中に一様に混入し、かつ混合する」ことと同義である。
さらに、引用1発明の「ガラス素地に浸漬するレベルに、板状のガラス素地溶解用抵抗発熱体を設けた」こと及び「熱対流を抑制してガラス素地表面のバッチの不均一な溶解を引き起こすことを防止する」ことで熱対流をも抑制することは、引用文献1の記載事項(イ)に未溶解物をガラス素地に巻き込まないようにする旨あるように、撹拌と発熱体以外の他のエネルギー供給手段の影響を受けずにバッチの均一な溶解を実現することを目的にしていることであるから、本願発明の「ガラスの溶解物に、常に前記溶解物表面(15)の下方でエネルギーを供給し、前記溶解物表面の上側の空間ならびに前記溶解物表面そのものにはエネルギーを供給せず」に相当すると認められる。

してみると、両者は、
「溶解物表面(15)を有するガラス溶解物が入った溶解槽(1)内で実施される溶解方法を用い、ガラスを製造するための方法において、
前記溶解槽に、供給口(11)を通してガラス原材料の良く均一化された混合物を絶えず供給して、閉じた混合物の覆いが前記溶解物表面(15)上に形成されるようにし、
前記ガラスの溶解物に、常に前記溶解物表面(15)の下方でエネルギーを供給し、
前記溶解物表面の上側の空間ならびに前記溶解物表面そのものにはエネルギーを供給せず、
前記ガラス溶解物を前記溶解物表面(15)の下においてのみ攪拌し、
前記溶解物表面上で閉じた混合物の覆いとして載っている混合物を前記溶解物の中に一様に混入し、かつ混合するガラスを製造するための方法。」
で一致し、以下の点で相違点する。

相違点a:本願発明は、製造するガラスが「UV領域において高透過性を有する」のに対し、引用1発明は、「ガラス素地均質化」を目的とするものの、ガラスの特性について特定がない点

相違点b:本願発明は、「ガラスの組成の範囲が、SiO_(2) 19?67重量%、PbO 20?80重量%、Na_(2)O 0?9重量%、K_(2)O 0?10.5重量%、As_(2)O_(3) 0?1重量%である」のに対し、引用1発明は、ガラスの組成について特定がない点

4-3.相違点の判断
相違点a、bは、何れも平成24年8月9日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載されたいわゆるフリントガラスすなわちSiO_(2)-PbO-R_(2)O系(R_(2)Oはアルカリ金属酸化物)のガラスの特性、組成に関するのでまとめて検討する。
例えば、引用文献7には、記載事項(ア)に、「多成分系ガラス光ファイバーおいて、・・・コアガラスとしては、特開昭50-160310号公報等に記載されているSiO_(2)-PbO-R_(2)O系(R_(2)Oはアルカリ金属酸化物)のガラスがよく用いられている。しかし、このガラスは、後述する図1に示すとおり、短波長域での光線透過性が劣るため、伝送経路が長くなると透過光が黄色味を帯びて、演色性が低下するという問題がある。」と、SiO_(2)-PbO-R_(2)O系(R_(2)Oはアルカリ金属酸化物)のガラスでは、短波長域での光線透過性が課題であることが記載され、記載事項(イ)には、「特開昭50-160310号公報の実施例と同様の組成を有するガラスの比較組成例(No.B)について」と記載されている。さらに、記載事項(エ)には、「比較組成例No.Bのガラスの点線で示した分光透過率曲線より短波長側にシフトしており、上記比較組成例のガラスと比べて、短波長域での光線透過性が優れていることが図1からも分かる。」ことが記載されており、SiO_(2)-PbO-R_(2)O系(R_(2)Oはアルカリ金属酸化物)のガラスが多成分系ガラス光ファイバーのコアガラスとしてよく用いられ、このガラスは、短波長域での光線透過性が劣り、その改良が求められていることが課題であることが記載されている。
また、引用文献6には、記載事項(イ)に「従来、上記光学恒数を有するガラスとしては、多量のPbOを有するSiO_(2)-PbO-R_(2)O(Rはアルカリ金属元素)系ガラスが知られているが、このガラスは溶融性に富む利点を持つ反面において、・・・分光透過性が悪く着色の程度が大きい。」との記載があり、SiO_(2)-PbO-R_(2)O(Rはアルカリ金属元素)系ガラスにNb_(2)2O_(3)と金属弗化物を含有することにより400nm以下の波長の領域において分光透過率を改善したことが記載されている。
よって、SiO_(2)-PbO-R_(2)O系(R_(2)Oはアルカリ金属酸化物)のガラスが多成分系ガラス光ファイバーのコアガラスとしてよく用いられ、このガラスは、短波長域での光線透過性が劣り、その改良が求められたことは従来より広く知られていた課題と認められる。
また、引用文献1の記載事項(イ)には、特定のガラスに限定されることなく、熱履歴の短いガラス素地すなわち加熱が不十分で泡や未溶解物を含んだガラス素地が流出して製品に欠点を生じさせることや、ガラス素地表面のバッチの不均一な溶解を引き起こすことを防止してガラス素地の均質性を向上させることができることが記載されている。
さらに、泡や未溶解物を含んだガラス素地が流出して製品に欠点を生じさせることを防止して品質の良いものを得ることは、一般的な技術課題ということができ、短波長域での光線透過性の劣化の原因に熱履歴の短いガラス素地すなわち加熱が不十分で泡や未溶解物を含んだガラス素地が流出や不均一な溶解やガラス素地表面のバッチの不均一な溶解が原因と推測されるから、引用1発明に、引用文献6、7に記載された短波長域での光線透過性が課題である多量のPbOを有するSiO_(2)-PbO-R_(2)O(Rはアルカリ金属元素)系ガラスに適用することは、当業者であれば容易に想到し得ることであるというべきである。

そして、本願明細書及び図面の記載を検討しても、本願発明が相違点aおよびbに係る特定事項を採用することにより、当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものとは認められない。

したがって本願発明は、当審の拒絶理由の引用文献1に記載された発明並びに引用文献6及び引用文献10に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 当審の拒絶理由に対する意見書の主張について
請求人は、平成24年8月9日付けの意見書において、「そして、本願発明1は、かかる特徴に基づき、特定の組成のガラスに対して、透過率の優れたガラスの製造を可能にするという顕著な効果を奏するものになっています。具体的には、本願の表3に示されるように、フリントガラス(表4に示される組成のガラス)に対しては、本願の製造方法に従った場合、従来の方法に従った場合よりも、有意に透過率の優れたガラスを得ることができます。この点に関しては、平成20年12月4日付けの第2回意見書に載せた比較実験の結果(図2の有鉛ガラスの結果)につきましても、是非ともご検討頂きますようにお願い申し上げます。」と主張するが、同意見書において提示された図2(有鉛ガラス)からは図1(無鉛ガラス)の場合と比較して本願の発明と称するHTまたはHHTの製造方法によって得られたガラスが波長370nmから450nmにおいて同程度の実質的透過率の向上が認められるというくらいであるから、無鉛ガラスを有鉛ガラスに置き換えることにより格別顕著な効果があったとは認められない。
したがって、上記主張を採用することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、当審の拒絶理由の引用文献1に記載された発明並びに引用文献6及び引用文献10に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-30 
結審通知日 2012-09-04 
審決日 2012-09-18 
出願番号 特願2001-352281(P2001-352281)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 直也塩見 篤史藤代 佳  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 中澤 登
木村 孔一
発明の名称 高UV透過性ガラスを製造するための方法  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  
代理人 志賀 正武  
代理人 実広 信哉  
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