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審決分類 |
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01M 審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更 H01M 審判 全部無効 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 H01M 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 H01M 審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) H01M 審判 全部無効 2項進歩性 H01M |
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管理番号 | 1269748 |
審判番号 | 無効2010-800119 |
総通号数 | 160 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-04-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2010-07-15 |
確定日 | 2013-01-08 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3742144号発明「非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池用の平面状集電体」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3742144号は、平成8年5月8日に出願された特願平8-113710号の願書に添付した明細書の特許請求の範囲に記載された請求項1?4に係る発明について、平成17年11月18日に特許権の設定登録がなされたものである。 そして、本件審判は、当該特許の無効を請求するものであり、その主な手続の経緯は、次のとおりである。 平成22年 7月15日:審判請求 10月 4日:答弁書提出 11月15日:手続中止通知 平成23年 6月17日:手続中止解除通知 21日:併合審理通知 (併合案件 無効2010-800051 無効2010-800240) 7月21日:訂正請求 9月28日:審理事項通知 11月16日:口頭審理陳述要領書提出(請求人) 30日:口頭審理陳述要領書提出(被請求人) 12月 7日:口頭審理陳述要領書(2)提出(請求人) 14日:口頭審理 無効理由通知及び職権審理結果通知 16日:上申書提出(被請求人) 21日:意見書提出(被請求人) 訂正請求 先の訂正請求みなし取下 平成24年 1月 6日:上申書提出(請求人) 12日:併合分離通知 審理終結通知 2.訂正請求について 2-1.訂正の内容 平成23年12月21日付け訂正請求は、願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を訂正請求書に添付した訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。 [訂正事項1] 請求項1に「マット面」(本件特許公報1頁6行)とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。 [訂正事項2] 請求項1に「表面粗さとの差」(本件特許公報1頁7行)とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項3] 請求項1に「2.5μmより小さい」(本件特許公報1頁7?8行)とあるのを「1.3μm以下である」と訂正する。 [訂正事項4] 請求項2に「銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり」(本件特許公報1頁11行)とあるのを「銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり」と訂正する。 [訂正事項5] 請求項2に「マット面」(本件特許公報1頁12行)とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。 [訂正事項6] 請求項2に「表面粗さとの差」(本件特許公報1頁13行)とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項7] 請求項2に「2.5μmより小さい」(本件特許公報1頁13行?14行)とあるのを「1.3μm以下である」と訂正する。 [訂正事項8] 請求項3に「上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、防錆被膜によって被覆されていることを特徴とする請求項1記載の非水電解液二次電池」(本件特許公報1頁16?17行)とあるのを「平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、防錆被膜によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。」と訂正する。 [訂正事項9] 請求項4に「上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、シランカップリング剤によって被覆されていることを特徴とする請求項1記載の非水電解液二次電池」(本件特許公報1頁19?20行)とあるのを「平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、シランカップリング剤によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。」と訂正する。 [訂正事項10] 本件特許公報3頁3行に「マット面」とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。 [訂正事項11] 本件特許公報3頁4?5行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項12] 本件特許公報3頁5行に「2.5μmより小さいこと」とあるのを「1.3μm以下であること」と訂正する。 [訂正事項13] 本件特許公報3頁8?9行に「マット面の表面粗さ」とあるのを「マット面及び光沢面の表面粗さ」と訂正する。 [訂正事項14] 本件特許公報3頁10行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項15] 本件特許公報3頁10行に「2.5μmより小さいこと」とあるのを「1.3μm以下であること」と訂正する。 [訂正事項16] 本件特許公報3頁16行に「マット面」とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。 [訂正事項17] 本件特許公報3頁18行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項18] 本件特許公報3頁18行に「2.5μmより小さいこと」とあるのを「1.3μm以下であること」と訂正する。 [訂正事項19] 本件特許公報3頁40行に「マット面」とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。 [訂正事項20] 本件特許公報3頁41行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項21] 本件特許公報3頁41?42行に「2.5μmより大きい」とあるのを「1.3μmより大きい」と訂正する。 [訂正事項22] 本件特許公報3頁49行に「マット面」とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。 [訂正事項23] 本件特許公報4頁1行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項24] 本件特許公報4頁1行に「2.5μmより小さく」とあるのを「1.3μm以下で」と訂正する。 [訂正事項25] 本件特許公報4頁14行に「長さLだけだけ」とあるのを「長さLだけ」と訂正する。 [訂正事項26] 本件特許公報9頁13行に「マット面の表面粗さ」とあるのを「マット面及び光沢面の表面粗さ」と訂正する。 [訂正事項27] 本件特許公報9頁13行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項28] 本件特許公報9頁14行に「2.5μmより小さいこと」とあるのを「1.3μm以下であること」と訂正する。 [訂正事項29] 本件特許公報9頁22行に「マット面」とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。 [訂正事項30] 本件特許公報9頁23行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項31] 本件特許公報9頁24行に「2.5μmより小さく」とあるのを「1.3μm以下で」と訂正する。 [訂正事項32] 請求項1に「銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり」(本件特許公報1頁5行)とあるのを「銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり」と訂正する(※審決注:訂正請求書下線部記載の「11行」は誤記と認められる。)。 2-2.訂正要件の検討 訂正事項1?32について、訂正の目的やその余の訂正要件について検討する。 まず、「マット面と反対側の光沢面との表面粗さとの差」を「マット面と反対側の光沢面との表面粗さの差」に訂正する訂正事項2,6,11,14,17,20,23,27,30と、「長さLだけだけ」を「長さLだけ」に訂正する訂正事項25は、いずれも表現上の誤りを正すものであるから、誤記の訂正を目的とするものである(※審決注:関連訂正箇所に下線、以下同様。)。 そして、これらの訂正は、本件特許の出願時の願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 次に、請求項1,2に記載された「電解銅箔」を、「クロメート処理が施された電解銅箔」に訂正する訂正事項4,32は、請求項1,2に係る発明の発明特定事項であった「電解銅箔」について、その前処理を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書段落0032には、当該発明の実施例において、電解銅箔にクロメート処理を施すことが記載されていたから、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 次に、請求項1,2に記載された「マット面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さとの差が10点平均粗さにして2.5μmより小さい」を、「マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下」に訂正する訂正事項1,3,5,7、及び請求項1の記載を引用する請求項3,4を上記の記載を含む独立請求項に書き改める訂正事項8,9は、請求項1?4に係る発明の発明特定事項であった「マット面の表面粗さ」「マット面と光沢面の表面粗さの差」さらにこの二つの発明特定事項から計算上発明特定事項となる「光沢面の表面粗さ」について、その数値範囲をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。一方、発明の詳細な説明において同様の訂正をする訂正事項10,12,13,15,16,18,19,21,22,24,26,28,29,31は、請求項の記載に発明の詳細な説明を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 そして、本件特許明細書の請求項1には、光沢面の表面粗さの上限が、計算上5.5μmになること、段落0051には、当該発明の実施例において、光沢面の表面粗さが1.58?2.00μmであることが記載されていたから、該上限を3.0μmにすることが新たな技術的事項を導入することにはならない。むしろ、段落0015には、集電体表面の凹凸が大きい場合に充放電を繰り返すことより容量の劣化がおこること、段落0034には、実施例において、電解銅箔である負極集電体の両面に活物質を塗布することが記載されていたから、マット面と共に集電体表面を構成する光沢面の表面粗さの上限をマット面と同一にすることは、作用効果の観点から自明なことである。 また、段落0051には、実施例において、マット面と光沢面との表面粗さの差が0.28?1.3μmになることも記載されていた。 してみると、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 2-3.請求人の主張について 請求人は、本件訂正のうち、光沢面の表面粗さの上限を3.0μmとする訂正は、技術常識から自明なものでなく、さらに、実施例の記載と矛盾する結果、マット面と光沢面との表面粗さの差の上限を1.3μmとする訂正と齟齬を生じるから、これらの訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであると主張している。 しかしながら、上述したように、これらの訂正は、請求項1や実施例等、本件特許明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、既に発明特定事項であった各表面粗さの数値範囲をより限定するものにすぎない。 したがって、上記主張は採用できない。 2-4.まとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1?32よりなる本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項、第4項の規定に適合するものであるから、該訂正を認める。 3.本件発明の認定 本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?4に係る発明(以下、「本件発明1?4」という。)は、本件訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。 【請求項1】 平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、 負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする非水電解液二次電池。 【請求項2】 非水電解液二次電池の負極を構成する平面状集電体であって、 当該平面状集電体は、銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする平面状集電体。 【請求項3】 平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、 負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、防錆被膜によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。 【請求項4】 平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、 負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、シランカップリング剤によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。 4.本件特許の無効理由 これに対し、請求人が、本件訂正後において主張する本件特許の無効理由は、審判請求書、口頭審理陳述要領書及び上申書の記載からみて、次の無効理由1?7である。 無効理由1:本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないもであり、その特許は同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 無効理由2:本件発明2は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないもであり、その特許は同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 無効理由3:本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないもであり、その特許は同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 無効理由4:本件発明2は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないもであり、その特許は同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 無効理由5: 本件発明3は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2?6号証及び甲第9号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないもであり、その特許は同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 無効理由6: 本件発明4は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第7?10号証に記載された周知技術に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないもであり、その特許は同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 無効理由7: 本件発明1?4は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、その特許は、同法123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 そして、請求人は、本件審判において、次の書証を提出した。 甲第 1号証:特開平5-74479号公報 甲第 2号証:特開平5-279896号公報 甲第 3号証:特開平7-105952号公報 甲第 4号証:特開平8-306390号公報 甲第 5号証:特開平9-63564号公報 甲第 6号証:特開平7-201332号公報 甲第 7号証:特開平7-296802号公報 甲第 8号証:特開平8-111243号公報 甲第 9号証:特開平7-258870号公報 甲第10号証:特開平8-96801号公報 甲第11号証:JIS総目録1991 38?39頁 日本規格協会 1991.4.20 甲第12号証:日本工業規格 表面粗さの定義と表示 JIS B 0601-1982 日本規格協会 昭和57年8月31日 甲第13号証:JIS総目録1995 38?39頁 日本規格協会 1995.4.20 甲第14号証:日本工業規格 表面粗さ一定義及び表示 JIS B 0601-1994 日本規格協会 平成8年9月20日 甲第15号証:福田金属箔粉工業株式会社のパンフレット 「LBX 箔厚:6・8・10・15μm リチウムイオン二次電池用電解銅箔」 2010.3 甲第16号証:日鉱金属株式会社のパンフレット「微細配線用電解銅箔」 甲第17号証:日鉱金属株式会社のパンフレット「圧延銅箔厚箔」 甲第18号証:日鉱金属株式会社のパンフレット 「微細回路用BHYA処理圧延銅箔」 甲第19号証:古河電気工業株式会社のパンフレット「電解銅箔技術資料」 甲第20号証:古河電気工業株式会社のパンフレット「高周波対応銅箔」 甲第21号証:古河電気工業株式会社のパンフレット「FPC対応銅箔」 甲第22号証:古河サーキットフォイル株式会社のパンフレット 「F-WSフレキシブル基板用電解銅箔」 甲第23号証:古河サーキットフォイル株式会社のウェブサイト 2008/12/20 甲第24号証:日本製箔株式会社のウェブサイト 2008/12/20 甲第25号証:特開平7-268678号公報 甲第26号証:特開平9-157883号公報 甲第27号証:特開2000-196207号公報 甲第28号証:特開2004-269950号公報 甲第29号証:特開2005-175443号公報 甲第30号証:特開2006-152420号公報 甲第31号証:三井金属鉱業株式会社所属 立岡 歩作成の陳述書 平成22年7月13日 甲第32号証:特開平9-143785号公報 甲第33号証の1から甲第33号証の29: 特願平8-106743号の出願・審査関連書類 甲第34号証:特開平7-314603号公報 甲第35号証:特開平5-29740号公報 甲第36号証:特開平7-188969号公報 甲第37号証:特開平6-270331号公報 甲第38号証:特開平7-231152号公報 甲第39号証:特開平4-88185号公報 甲第40号証:特開平4-501887号公報 甲第41号証:特開平8-53789号公報 甲第42号証:大宮司弘昌 「電解銅箔の製造および特性評価に関する技術的問題について」 資源・素材学会誌107(1991)No.12 甲第43号証:平成23年(行ヶ)第10033号審決取消請求事件の 原告準備書面(1)14頁 甲第44号証:特開平5-6766号公報 甲第45号証:特開平8-236120号公報 甲第46号証:特開平7-192767号公報 甲第47号証:特公昭38-1965号公報 甲第48号証:特開昭48-20734号公報 甲第49号証:特開昭56-87694号公報 甲第50号証:特公昭60-15654号公報 甲第51号証:「4.2 銅はく」プリント回路技術便覧 250-266頁 日刊工業新聞社 昭和63年6月30日 甲第52号証:特開昭57-87324号公報 甲第53号証:特開昭58-84488号公報 甲第54号証:特開昭63-92090号公報 甲第55号証:日本電解株式会社のホームページ 2011/9/22 甲第56号証:特開平8-64201号公報 甲第57号証:特開平7-192767号公報 甲第58号証:特開平7-302594号公報 甲第59号証:特開平6-275270号公報 甲第60号証:特開平5-290853号公報 甲第61号証:特開平5-226004号公報 甲第62号証:特開平5-82171号公報 甲第63号証:新しい二次電池の開発と材料 44-63頁 シーエムシー 1994.3.1 甲第64号証:高性能二次電池と関連金属材料 87-93,113-120頁 日本金属学会 平成8年5月20日 甲第65号証:リチウムイオン二次電池-材料と応用- 1-3,14-15,153-156頁 日刊工業新聞社 1996.3.29 甲第66号証:松田好晴「リチウム二次電池開発の動向」 関西大学工学会誌 工学と技術 Vol.11 No.2 67-71頁 甲第67号証:藤本正久ら「リチウムイオン電池用高性能負極材料」 SANYO TECHNICAL REVIEW VOL.27 NO.1 MAR.1995 123-130頁 甲第68号証:福田秀樹ら「角形リチウムイオン電池」 SANYO TECHNICAL REVIEW VOL.28 NO.1 APR.1996 112-118頁 甲第69号証:中溝紫織ら「リチウムポリマー二次電池」 SANYO TECHNICAL REVIEW VOL.31 NO.2 NOV.1999 34-418頁 甲第70号証:美甘昌宏ら「銅箔の信頼性評価」 回路実装学会誌 Vol.2 No.2(1995) 90-95頁 甲第71号証:特開平3-276739号公報 甲第72号証:特開平5-47852号公報 甲第73号証の1:特開平3-296238号公報 甲第73号証の2:特許法第17条の2の規定による補正の掲載 (特開平3-296238号公報)平成6年4月8日 甲第74号証:特開平3-291987号公報 甲第75号証:特開平3-291988号公報 甲第76号証:特公昭52-47727号公報 甲第77号証:特公昭50-3744号公報 5.書証の記載事項 甲第1号証 ○摘記1-1 【0003】リチウムイオンをドープ・脱ドープできる炭素質材料を用いた非水系二次電池(例えば特開昭62-90863号公報等)が、負極にリチウム金属又はその合金を使用した二次電池に比して、安全性の点で格段に優れており、高エネルギー密度を得られることから注目されている。 【0004】特開昭60ー25315号公報、特開平1-241767号公報、特開平3-93164号公報に、集電体としての金属箔を用いることが提案されている。一般に、金属箔は圧延してつくられるので表面は滑らかであり、電池活物質粒子を金属箔表面とよく接着するためにバインダーの選択が重要であり、塗布あるいは塗工条件も厳しく管理する必要があった。 【0005】箔厚み10μm?30μmの金属箔に塗布あるいは塗工する速度にも制約があった。すなわち、乾燥温度を上げて塗布あるいは塗工速度を高めようとすると、塗布あるいは塗工面に亀裂がはいり、良品が得られなかった。従って、塗布あるいは塗工の生産効率に難点があった。 ○摘記1-2 【0017】本発明に用いる非水系電解質溶液には、電解質としては、例えばLiClO_(4 )、LiAsF_(6 )、LiPF_(6 )、LiBF_(4 )、CH_(3 )SO_(3 )Li、CF_(3 )SO_(3 )Li、(CF_(3 )SO_(2 ))_(2 )NLi等のリチウム塩のいずれか1種又は2種以上を混合したものが使用できる。 【0018】また、前記電解溶液の溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、γ-ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等のいずれか1種又は2種以上を混合したものが使用できる。 ○摘記1-3 【0020】本発明の集電体としての金属箔は、その表面粗度が平均として0.1?0.9μmであり、外観は艶消しを呈する。光沢、半光沢の外観を有する前記金属箔に、エッチング処理、レーザー処理、無電解メッキ、電解メッキ、サンドブラスト等により、表面粗度として0.1?0.9μm、好ましくは0.2?0.8μm、更に好ましくは0.6?0.8μmに制御する。また、電解メッキにより直接得られる銅箔、ニッケル箔等のうち上記表面粗度範囲に入るものを用いてもよい。 【0021】表面粗度0.1μm未満では接着性の向上は殆どなく、1μm以上では塗工中に金属箔の切断を招き好ましくない。表面粗度を測定するための試験片の調製は、まず金属箔から1cm角に切り出し、これを型に入れてエポキシ樹脂を流し込み硬化させる。常温で一日間放置後に型から取り出し、切断し、金属箔を含む樹脂切断面を自転および公転する研磨機で研磨し、エアブロー後、断面の顕微鏡写真を撮る。金属箔表面の凹部の深さを拡大写真で測定し、平均の深さを表面粗度とする。 甲第2号証 ○摘記2-1 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、クロメート処理において銅箔へのクロム付着量を制御することにより、銅箔と回路基材樹脂との加熱圧着時に、基材樹脂の相違に基づく物性の変化に対応して耐酸化性、耐食性を高い水準でバランスよく維持した銅箔の表面処理方法を提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、クロメート溶液中に特定の陽イオンを含有させることによって、クロメート処理による電流密度に伴なってクロメート付着量が変化することを知見し、本発明に到達した。 【0010】すなわち、本発明の銅箔の表面処理方法は、銅箔を、希土類元素、チタン、アルミニウム、ストロンチウムから選択される少なくとも1種の陽イオンを含有するクロメート溶液中で処理すること特徴とする。 【0011】本発明で用いられる出発材料としての銅箔は、電解銅箔でも圧延銅箔でもよい。また、この銅箔はクロメート処理前に片面が粗面化処理されていることが必要である。特に好ましい銅箔は、表面にひ素を含む銅層が電着され、さらにその上に、亜鉛、スズまたはこれらと銅の合金とからなる被着層が電着されているものであり、このような銅箔は特開昭55-15216号公報に詳述されている。 甲第3号証 ○摘記3-1 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、Cu、Al等の高導電率と、Ni、Fe、Ta、W等のリチウムとの反応性が低い性質とを組み合わせることに着想し、その方法について種々検討を重ねた結果、Cu、Al等の高導電率を示す金属材の、負極との接合を意図する表面に、Ni、Fe、Ta、W等のリチウムとの反応性が低い金属材よりなる層を形成して集電体を構成するようにすると、Cu、Al等の高導電率により電池の内部抵抗を低く抑えることができるとともに、表面の金属層により集電体がリチウムと反応することが抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0007】即ち、本発明のリチウム二次電池用集電体は、20℃における電気抵抗率が5×10^(-8)Ω・m以下の金属材(以下、金属材Aと称す)の、負極との接合を意図する表面に、金属材Aよりもリチウムとの反応性が低い金属材(以下、金属材Bと称す)よりなる層を形成してなるものであり、望ましくは該金属材Bよりなる層の厚さが0.05?5μmであるものである。また、本発明のリチウム二次電池は、リチウムまたはリチウム合金よりなる負極と正極と電解質とで構成され、該負極に上記リチウム二次電池用集電体を接合したものであり、望ましくは該負極が、リチウム含有率80原子%以上のリチウム合金よりなるものである。 ○摘記3-2 【0011】一方上記金属材Bは、集電体とリチウムとが合金化反応を起こして集電体の電気抵抗が大となったり、負極のリチウムが集電体のCuやAlに汚染されたりすることを抑制するためのものである。この金属材Bとしては、リチウムとの反応性が金属材Aよりも低いもの、望ましくは700℃におけるリチウムへの溶解度が1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下のものが使用され、具体的にはNi、Fe、Cr、Mo、W、Taより選ばれる一種の金属または二種以上の金属よりなる合金等が例示される。 甲第9号証 ○摘記9-1 【0002】 【従来の技術】従来の銅箔に対する表面処理は、基材との引き剥し強さの確保および耐熱耐酸化性、回路基板材料としての要求特性(耐塩酸性、耐湿性、半田濡れ性等)を満足させるため、亜鉛またはその合金をめっきした後、クロメート処理、さらにシランカップリング剤処理をする等の非常に多数の工程を必要とした。また、その際に使用するめっき浴の管理等が必要となり極めて煩雑である。一方、銅箔の平滑面ではこれらの処理が強くかかりすぎた場合には半田濡れ性に問題が生じる等の課題もある。 【0003】一方、銅および銅合金への有機防錆処理方法として、従来よりベンゾトリアゾール(BTA)およびその誘導体が公知であり広く用いられている。また、銅箔に対しての有機防錆剤の利用例としては保管用の一時防錆処理として上記したBTA処理が用いられてきている。 甲第12号証 ○摘記12-1(第2頁第2?5行) 3.1 中心線平均粗さ(Ra)の定義 3.1.1 中心線平均粗さの求め方 中心線平均粗さは,粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さlの部分を抜き取り,この抜取り部分の中心線をX軸,縦倍率の方向をY軸とし,粗さ曲線をy=f(x)で表したとき,次の式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。 ○摘記12-2(第12頁第21?25行) 4.2 Ra,Rmax,Rzの3種類を採用した理由 表面の性質は,この規格でいう表面粗さ,すなわち断面曲線の高さ方向の凸凹の関係した量ばかりでは定まらないのが普通で,その凸凹の山の形や間隔などを含めて“表面粗さ”という場合が多い。しかし,この規格では,凸凹の高さに関係した量だけを考え,しかも,適用範囲で述べているように表面粗さを中心線平均粗さ,最大高さ及び十点平均粗さの3種類の量に限定して,これで表面粗さを指定し,又は表示することにした。規格では定義していないが,他の“表面粗さ”もあり得るという考え方である。 甲第34号証 ○摘記34-1 【0031】銅箔の表面粗さをJIS-B-0601に規定されている中心線平均粗さRaで表示すると、電解銅箔の場合、通常S面はほぼ0.1?0.35μm、粗化処理されていないM面はほぼ0.1?2.0μmの範囲にあり、他方圧延銅箔の表面粗さは両面とも0.1?0.15μmであるが、このような表面粗さのいずれの銅箔を用いても、本発明の銅張積層体においては、十分な接着強度が得られるので銅箔の選択の範囲が広がるという利点がある。銅張積層体が高周波波形を信号とする用途に用いられる場合には、表皮効果の点から銅箔は表面粗さがRaで0.35μm以下、好ましくはRaで0.2μm以下のものを使用することが求められるが、この場合でも十分な接着強度が得られる。 甲第70号証 ○摘記70-1(第1頁左欄第20?25行) プリント配線板に使用されている銅箔は,ロールで機械的に伸銅された「圧延銅箔」と,電気めっきの技術を応用して製箔された「電解銅箔」の2種類に大きく分けられ,各々の材料特性を活かした使われ方がされている。圧延銅箔と電解銅箔の特性比較を表1に示した。ここに引用した数値は,主として35μm銅箔での参考値である。 ○摘記70-2 甲第72号証 ○摘記72-1 【要約】 【目的】 導体部として圧延銅箔を用い、光沢仕上げのハンダめっきをしても、表面反射によるマーク認識エラーの少ないTAB用テープキャリアを実現する。 【構成】 圧延銅箔の所要の部分にハンダめっきを施したTAB用テープキャリアにおいて、圧延銅箔として両面粗面化した圧延銅箔を用い、ハンダめっきされる面において、平均深さRa が0.05μm乃至2μm以下の表面粗さになるようにする。光沢仕上げのハンダめっきを施したとき、効果が大きい。 6.無効理由1?4について 無効理由1?4は、本件発明1,2が、甲第1号証に記載された発明であるか、当該発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張するものである。 そこで検討するに、本件発明1は、本件発明2の平面状集電体を用いた非水電解液二次電池に相当するから、まず本件発明2について判断し、次いで、本件発明1について判断する。 6-1.引用発明の認定 甲第1号証には、非水系電解質溶液を用いる非水系二次電池の負極集電体に圧延金属箔が用いられること(摘記1-1,1-2参照)や、光沢、半光沢の外観を有する当該金属箔の表面粗度をエッチング処理等により、0.1?0.9μmに制御すること(摘記1-3参照)が記載されている。 すなわち、甲第1号証には、 「非水系電解質溶液を用いる非水系二次電池の負極集電体であって、光沢、半光沢の圧延金属箔をエッチング処理等により表面粗度として0.1?0.9μmに制御してなる負極集電体。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 6-2.発明の対比 本件発明2と引用発明を比較する。 引用発明の「非水系電解質溶液を用いる非水系二次電池」が、本件発明2の「非水電解液二次電池」に相当し、圧延金属箔を用いた集電体が平面状であるのは明らかだから、本件発明2のうち、 「非水電解液二次電池の負極を構成する平面状集電体であって、当該平面状集電体は、箔からなる平面状集電体。」 の点は引用発明と一致し、両者は次の点で相違する。 相違点1:本件発明2が「銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔」であるのに対し、引用発明は「圧延金属箔をエッチング処理等」したものである点。 相違点2:本件発明2が「マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下である」のに対し、引用発明は「表面粗度として0.1?0.9μmに制御してなる」ものである点。 6-3.同一性・容易性の判断 上記相違点について検討する。 まず、相違点1について、甲第1号証には、引用発明について、圧延金属箔をエッチング処理等したもののほか、電解メッキにより直接得られる銅箔を用いてもよいこと(摘記1-3参照)が記載されており、これは電解銅箔を用いることを示唆するものと認められるが、クロメート処理を施すことについて記載や示唆はない。 ここで、請求人は、銅箔をクロメート処理することは周知技術であると主張し、甲第2?6,9,47?51号証を提出しているが、このうち甲第4,5号証は、本件特許の出願前の公知文献ではなく、一方、公知文献である書証には、絶縁樹脂基板と加熱圧着される印刷回路用銅箔に、耐酸化性向上のためクロメート処理すること(摘記2-1,9-1参照)や、リチウム二次電池用集電体銅箔に、リチウムと反応しないクロム金属層を設けること(摘記3-1,3-2参照)などが記載されているにすぎず、電池活物質粒子が常温で塗布され当該活物質との接着性と共に導電性が要求される集電体用銅箔(摘記1-1参照)に、クロメート処理することは記載も示唆もされていない。 次に、相違点2について、甲第1号証に、「表面粗度」を金属箔表面の凹部の平均の深さとして測定すること(摘記1-3参照)が記載されているが、この「表面粗度」と本件発明2の「10点平均粗さ」は測定方法が異なるから、両者の関係性が明らかでなく、両者を対応づけることができない。 ここで、請求人は、この「表面粗度」は、中心線平均粗さRaであると主張し、甲第11?14,71,72号証を提出しており、さらに、10点平均粗さRzがRaの10倍を越えることはないから、両面の表面粗度が0.1μmの場合に両者は同一になるし、そのような数値限定は当業者が実験的に容易になし得た数値範囲の最適化であると主張し、甲第15?31,34?42号証を提出している。 しかしながら、甲第12,14号証には、JIS規格によるRaの測定方法が、甲第1号証記載の表面粗度の測定方法とは異なること(摘記12-1参照)が記載されているし、甲第71,72号証には、「平均深さRa」との表現がある(摘記72-1参照)にすぎないから、請求人の上記主張を裏付ける根拠とはならない。むしろ、甲第12号証には、JIS規格では定義していない表面粗さもあり得ること(摘記12-2参照)が記載されているから、引用発明の「表面粗度」を、JIS規格のRaやRzと解する必然性はない。しかも、甲第34号証には、通常の圧延銅箔のRaが、両面で0.1?0.15μmであること(摘記34-1参照)が記載されているから、引用発明の「表面粗度」をRaと解すると、表面の滑らかな圧延箔を用いた従来技術の集電体(摘記1-1参照)まで含むことになり、不合理である。 すなわち、全証拠に基づいても、引用発明の「表面粗度」がRaであると確認することはできない。 さらに、請求人が提出した甲第70号証にも記載されているように、圧延銅箔が高硬度・高弾性である一方、電解銅箔は低硬度・低弾性である(摘記70-1,70-2参照)から、引用発明の数値限定が、硬質な圧延箔を前提に、活物質の塗布工程における接着性向上を目的として粗面化するものである(摘記1-1,1-3参照)に対し、本件発明2の数値限定は、軟質な電解箔を前提に、塗布工程ではなく、活物質とのプレス工程における変形性向上を目的として平滑化するものと解される(本件訂正明細書段落0013?0016参照)。 すなわち、両者の数値限定はその目的も異なるから、本件発明2の数値限定は、引用発明の数値限定から実験的に容易になし得たものではない。 してみると、引用発明において、相違点1,2を解消することは容易でない。 すなわち、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明ではないし、当該発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。本件発明2の平面状集電体を用いた非水電解液二次電池に相当する本件発明1も同様である。 したがって、無効理由1?4は失当である。 6-4.請求人の主張について 請求人は、無効理由1?4に関連して、本件発明2が、圧延銅箔並みの低粗度の電解銅箔を含むのであれば、圧延銅箔を集電体に用いるのは周知であるから、これを単に電解銅箔にすることは容易になし得たことであり、その効果も予測の範囲内であると主張している。 しかしながら、圧延銅箔並みの低粗度の電解銅箔を集電体に使用することについて記載や示唆する証拠は提出されていないし、上述したように、圧延銅箔と電解銅箔では物性が異なる(摘記70-1,70-2参照)から、作用効果が予測の範囲内であるともいえない。 したがって、上記主張も採用できない。 7.無効理由5,6について 無効理由5,6は、本件発明3,4が、甲第1号証に記載された発明並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張するものである。 そこで検討するに、本件発明3,4は、本件発明1,2と同様、「平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であ」ることを発明特定事項とするが、「6-3」で述べたように、該発明特定事項は、甲第1号証には記載されていないし、周知技術から容易になし得たものでもない。 してみると、本件発明3,4は、甲第1号証に記載された発明並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、無効理由5,6は失当である。 8.無効理由7について 8-1.発明の詳細な説明 本件訂正明細書には、次の記載がある。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、市販の電解銅箔を負極集電体に使用したリチウムイオン二次電池においては、電池特性、特に充放電でのサイクル特性が悪く、使用することができなかった。 【0007】 そこで、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、上述した問題は、電解金属箔の一方の主面に大きな凹凸が形成されて、電解金属箔の両主面の表面粗さの差が大きすぎるために生じていることがわかった。 【0010】 【課題を解決するための手段】 ・・・(中略)・・・ 【0013】 一般に、平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる電極は、活物質とバインダーとを含有する電極構成物質層が集電体の表面に塗布され、その後ロール圧延等でプレスされて作製される。このプレス工程は、電極を所定の密度に圧縮する作用と、適切な導電性を有するように活物質粒子間を接近させる作用とを有する。プレス工程を経た電極は、活物質粒子間、及び活物質と集電体との接触性が良くなり、電気伝導度が大きくなる。 【0014】 さらに、十分な電池特性を得るには、活物質粒子間、及び活物質と集電体の距離を小さくすると共に、集電体の形状が活物質表面の形状に沿って変形することが重要である。活物質表面に沿って集電体が変形した場合には、活物質と集電体との接触性がさらに良くなり、電気伝導度がさらに大きくなり、望ましい電池特性が得られる。 【0015】 しかし、活物質表面に沿って集電体が変形しない場合には、活物質と集電体の接触部分が少なくなり、電気伝導度が小さい。また、集電体表面の凹凸が大きい場合には、活物質と集電体の接触点も少ない。このような接触抵抗が大きい電極は、充放電を繰り返すと、活物質の充放電に伴う膨張収縮によるストレスや、接着剤であるバインダーの電解液への溶解などによって、集電体と活物質との距離が段々と大きくなり、一部の活物質が充放電に利用できない電気伝導度になって容量の劣化が起きる。 【0016】 したがって、この電解銅箔のマット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより大きい場合、或いはこのマット面と光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μmより大きい場合には、活物質が負極集電体に塗布されてプレスされる際に、集電体が活物質の表面に沿った変形が十分起こらず、また、表面の凹凸が大きいために活物質との接触点が少なく、充放電に伴って容量の劣化が起きて十分な電池特性が得られない。 【0029】 【実施例】 以下、本発明を適用した非水電解液二次電池について、好適な実施例を図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。 【0050】 そして、実施例1?実施例3及び比較例1で得られた電解銅箔において、その表面粗さ(10点平均粗さR_(Z))を表面粗さ計(株式会社小坂研究所製SE-3C型)で調べた。この結果を表1に示す。なお、光沢面の表面粗さを測定する際には、基準長さLを0.8mmとし、マット面の表面粗さを測定する際には、基準長さLを2.5mmとした。 【0051】 【表1】 【0052】 また、それぞれの電解銅箔を負極集電体に用いた実施例1?実施例3及び比較例1の円筒形非水電解液二次電池について、100サイクル後の容量維持率を調べた。その結果を図3、図4及び表2に示す。 【0053】 さらに、それぞれの電解銅箔を負極集電体に用いた実施例1?実施例3及び比較例1の円筒形非水電解液二次電池について、100サイクル前後のインピーダンスの変化を調べた。その結果を図5、図6及び表2に示す。 【0054】 【表2】 【0055】 図3、図5及び表2に示すように、マット面の表面粗さが3μm以上になると容量維持率が大幅に低下し、インピーダンスの変化が大きくなるため、マット面の表面粗さは、3μm未満が好ましい。また、図4及び図6に示すように、マット面と光沢面との表面粗さの差が大きくなるほど容量維持率が低くなり、インピーダンスが大きくなっている。このことから、マット面と光沢面との表面粗さの差は、2.5μm未満であることが好ましい。 ※審決注: 段落0055の下線部は、「1.3μm以下」の誤記と認められる。 8-2.サポート要件の判断 本件訂正明細書に記載された発明の詳細な説明には、本件発明1?4(以下、まとめて「本件発明」という。)が解決しようとする課題が、市販の電解銅箔を負極集電体に使用した場合の充放電サイクル特性の悪化にあり(段落0006)、当該課題が生じている原因が、市販の電解金属箔では、一方の主面に大きな凹凸が形成されて両主面の表面粗さの差が大きすぎるため、活物質の塗布後のプレス工程で、集電体が活物質に沿った変形をしないことにあることを見出し(段落0007、0013?0015)、その変形が容易になるように、電解銅箔の表面粗さを数値限定したこと(段落0016)が記載されている。 さらに、当該数値限定を満足する実施例1?3と、一方の主面であるマット面に大きな凹凸が形成されて両主面の表面粗さの差が大きすぎて当該数値限定を満足しない比較例1の電解銅箔を、それぞれ負極集電体に用いた円筒形非水電解液二次電池について、100サイクル後の容量維持率とインピーダンスを測定し、前者が後者より優れたものであること(段落0050?0055)が記載されている。 すなわち、発明の詳細な説明には、本件発明の課題とその課題を解決する手段、その具体例において課題が解決されたことが記載されている。 してみると、本件発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されたものである。 したがって、無効理由7は失当である。 9.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する理由と証拠方法によっては、本件発明1?4についての特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池用の平面状集電体 (57)【特許請求の範囲】 [請求項1] 平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、 負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする非水電解液二次電池。 [請求項2] 非水電解液二次電池の負極を構成する平面状集電体であって、 当該平面状集電体は、銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする平面状集電体。 [請求項3] 平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、 負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、防錆被膜によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。 [請求項4] 平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、 負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、シランカップリング剤によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。 【発明の詳細な説明】 [0001] [発明の属する技術分野] 本発明は、平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる電極を備える非水電解液二次電池に関し、特に平面状集電体の改良に関するものである。 [0002] [従来の技術] 近年の電子技術のめざましい進歩により、電子機器の小型化、軽量化、高性能化が進み、これら電子機器には、エネルギー密度の高い二次電池が要求されている。従来、これら電子機器に使用される二次電池としてニッケル・カドミウム電池や鉛電池などが挙げられるが、これら電池では、エネルギー密度が高い電池を得るという点で不十分であった。 [0003] このような状況下で、正極としてリチウムコバルト複合酸化物などのリチウム複合酸化物を使用し、負極として炭素材料などのようなリチウムイオンをドープ及び脱ドープ可能な物質を使用した非水電解液二次電池、いわゆるリチウムイオン二次電池の研究・開発が行われている。このリチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度を有し、自己放電も少なく、サイクル特性に優れ、かつ軽量という優れた特性を有する。 [0004] ところで、上記リチウムイオン二次電池の集電体としては、一般に金属箔が使用されている。特に、銅からなる金属箔は、リチウム金属と合金を形成しない、電気伝導性が良い、低コストといった特徴を有するため、負極集電体として多用されている。この銅箔には、一般に、銅板を機械的にローラ圧延した、いわゆる厚み10?30μmの圧延銅箔が使用されている。しかしながら、圧延銅箔は、圧延装置のサイズの規制から、幅の広いものを得るのが難しい。 [0005] 一方、銅の電解析出によって形成される、いわゆる電解銅箔は、圧延銅箔に比べ比較的幅の広いものも容易に得られる。また、この電解銅箔をリチウムイオン二次電池の負極集電体に使用した場合には、生産性が飛躍的に向上し、電池生産のコストを大幅に下げることができる。 [0006] [発明が解決しようとする課題] しかしながら、市販の電解銅箔を負極集電体に使用したリチウムイオン二次電池においては、電池特性、特に充放電でのサイクル特性が悪く、使用することができなかった。 [0007] そこで、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、上述した問題は、電解金属箔の一方の主面に大きな凹凸が形成されて、電解金属箔の両主面の表面粗さの差が大きすぎるために生じていることがわかった。 [0008] これまで電解金属箔は、一般にその用途が主にプリント基板、フレキシブル基板であり、プラスチックとの密着性を良くするために(アンカー効果をねらうために)、その主面に大きな凹凸を形成していた。そのため、この電解金属箔を非水電解液二次電池の集電体に用いた場合には、活物質表面に沿った変形が十分に起こらないため、活物質と集電体の接触が悪く、容量の劣化やサイクル特性の低下が生じていた。 [0009] 本発明は、上述のような問題点を解決するために提案されたものであり、活物質表面に沿って集電体が十分に変形し、活物質と集電体の接触性を良好に保って、充放電サイクルに優れた安価な非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池用の平面状集電体を提供することを目的とする。 [0010] [課題を解決するための手段] 本発明に係る非水電解液二次電池は、平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、負極の平面状集電体が、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、上記電解銅箔が、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする。 [0011] また、本発明は、非水電解液二次電池の負極を構成する平面状集電体であって、当該平面状集電体が、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、上記電解銅箔が、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする。 [0012] 本発明に係る非水電解液二次電池においては、上記平面状集電体の負極に、銅の電解析出から形成される電解銅箔を用いたことから、製造上の大きさの制約がなく、電池生産のコストを下げることができる。 また、本発明に係る非水電解液二次電池においては、集電体である電解銅箔のマット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることから、集電体と活物質との接触性が良く、電気伝導度が大きくなって、充放電サイクルに優れたものとなる。 [0013] 一般に、平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる電極は、活物質とバインダーとを含有する電極構成物質層が集電体の表面に塗布され、その後ロール圧延等でプレスされて作製される。このプレス工程は、電極を所定の密度に圧縮する作用と、適切な導電性を有するように活物質粒子間を接近させる作用とを有する。プレス工程を経た電極は、活物質粒子間、及び活物質と集電体との接触性が良くなり、電気伝導度が大きくなる。 [0014] さらに、十分な電池特性を得るには、活物質粒子間、及び活物質と集電体の距離を小さくすると共に、集電体の形状が活物質表面の形状に沿って変形することが重要である。活物質表面に沿って集電体が変形した場合には、活物質と集電体との接触性がさらに良くなり、電気伝導度がさらに大きくなり、望ましい電池特性が得られる。 [0015] しかし、活物質表面に沿って集電体が変形しない場合には、活物質と集電体の接触部分が少なくなり、電気伝導度が小さい。また、集電体表面の凹凸が大きい場合には、活物質と集電体の接触点も少ない。このような接触抵抗が大きい電極は、充放電を繰り返すと、活物質の充放電に伴う膨張収縮によるストレスや、接着剤であるバインダーの電解液への溶解などによって、集電体と活物質との距離が段々と大きくなり、一部の活物質が充放電に利用できない電気伝導度になって容量の劣化が起きる。 [0016] したがって、この電解銅箔のマット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより大きい場合、或いはこのマット面と光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μmより大きい場合には、活物質が負極集電体に塗布されてプレスされる際に、集電体が活物質の表面に沿った変形が十分起こらず、また、表面の凹凸が大きいために活物質との接触点が少なく、充放電に伴って容量の劣化が起きて十分な電池特性が得られない。 [0017] [発明の実施の形態] 本発明に係る非水電解液二次電池は、平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる電極を備えて構成され、上記平面状集電体の少なくとも負極が銅の電解析出から形成される電解銅箔からなる。そして、この電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面とは反対側の他方の主面である光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下で形成される。 [0018] なお、一般に、電解銅箔は、銅を主成分とする溶液を電解液とし、回転ドラムを電極として、ドラム表面に形成される。この時、形成された電解銅箔は、ドラム側の主面を光沢面と称し、電解液側のもう一方の主面をマット面と称す。 [0019] 上記電解銅箔は、表面の凹凸が小さく、マット面と光沢面との表面粗さの差が小さいため、プレス工程時に活物質表面に沿った変形が十分に起こり、活物質との接触性が良好に保たれる。 [0020] なお、上述する表面粗さは、JIS規格B0601において、10点平均線粗さ(R_(Z))についての定義がなされている。10点平均粗さ(R_(Z))は、図1に示すように、断面曲線から基準長さLだけ抜き取った部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高(Y_(p))の絶対値の平均値(│Y_(p1)+Y_(p2)+Y_(p3)+Y_(p4)+Y_(p5)│/5)と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高(Y_(v))の絶対値の平均値(│Y_(v1)+Y_(v2)+Y_(v3)+Y_(v4)+Y_(v5)│/5)との和を求めたものである。 [0021] 本発明は、電池を構成する物質について特に限定するものではないが、正極が少なくともリチウムを含む金属酸化物からなり、負極がリチウムをドープ及び脱ドープ可能な負極とからなるようないわゆるリチウムイオン二次電池において好適である。 [0022] また、本発明に係るリチウムイオン二次電池に用いられる負極集電体には、電解銅箔が用いられる。電解銅箔は、リチウム金属と合金を形成することがなく、電気伝導性が良く、低コストで生産できるなどの種々の利点を有している。 [0023] 上記電解銅箔の少なくとも一方の面には、銅箔の酸化を抑制するために、防錆被膜が被覆されていてもよい。また、上記電解銅箔の少なくとも一方の面には、銅箔表面と活物質との吸着性を向上させるために、シランカップリング剤からなる膜が被覆されていてもよい。 [0024] なお、上記リチウムイオン二次電池において、正極活物質としては、Li_(x)MO_(2)(但し、Mは、1種類以上の遷移金属を表す。xは、リチウムの組成比である。)を含んだ活物質が使用可能である。かかる活物質としては、Li_(x)CoO_(2)、Li_(x)NiO_(2)、Li_(x)Mn_(2)O_(4)、Li_(x)MnO_(3)、Li_(x)Ni_(y)Co_((1ーy))O_(2)などの複合酸化物が挙げられる。 [0025] 上記複合酸化物は、例えば、リチウム、コバルト、ニッケルの炭酸塩を出発原料とし、これら炭酸塩を組成に応じて混合し、酸素存在雰囲気下600℃?1000℃の温度範囲で焼成することにより得られる。また、出発原料は、炭酸塩に限定されず、水酸化物、酸化物からも同様に合成可能である。 [0026] 一方、負極活物質としては、リチウムをドープ及び脱ドープ可能なものであれば良く、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスなど)、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂などを適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭などの炭素質材料、あるいは、金属リチウム、リチウム合金(例えば、リチウム-アルミ合金)の他、ポリアセチレン、ポリピロールなどのポリマーも使用可能である。 [0027] 電解液には、リチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解させた電解液が用いられる。ここで有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、γ-ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、スルホラン、アセトニトリル、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの単独もしくは2種類以上の混合溶媒の使用が可能である。 [0028] 電解質には、LiClO_(4)、LiAsF_(6)、LiPF_(6)、LiBF_(4)、LiB(C_(6)H_(5))_(4)、LiCl、LiBr、CH_(3)SO_(3)Li、CF_(3)SO_(3)Liなどの使用が可能である。 [0029] [実施例] 以下、本発明を適用した非水電解液二次電池について、好適な実施例を図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。 [0030] 実施例1 本実施例で作製したリチウムイオン二次電池は、図2に示すように、正極集電体1に正極活物質2を塗布してなる正極3と、負極集電体4に負極活物質5を塗布してなる負極6とから構成される。そして、この非水電解液二次電池は、正極3、セパレータ7、負極6、セパレータ7をこの順に積層して積層電極体とし、この積層電極体を多数回巻回されてなる渦巻式電極体の上下に絶縁体8、9を配置した状態で電池缶10に収納してなるものである。 [0031] 先ず始めに、電解銅箔からなる負極集電体4は、次のようにして作製した。組成1で示される硫酸銅溶液を電解液として、貴金属酸化物被覆チタンを陽極に、チタン製回転ドラムを陰極として、電流密度50A/dm2、液温50℃の条件で電解することによって、厚み12μmの電解銅箔を得た。この電解銅箔の表面粗さについては、後述する測定法により測定し、表1に示した。 [0032] (組成1) 硫酸銅(CuSO_(4)・5H_(2)O) 350g/l 硫酸(H_(2)SO_(4)) 110g/l チオ尿素 0.4ppm アラビアゴム 0.8ppm 低分子量膠(分子量5000) 0.4ppm Cl^(-) 30ppm 次いで、この電解銅箔をCrO_(3);1g/l水溶液に5秒間浸漬して、クロメート処理を施し、水洗後乾燥させた。なお、ここでは、クロメート処理を行ったが、ベンゾトリアゾール系処理、或いはシランカップリング剤処理、又はクロメート処理後にシランカップリング剤処理を行ってもよいことは勿論である。 [0033] そして、負極6は次のようにして作製した。負極活物質5としては、出発原料として石油ピッチを用い、これを焼成して粗粒状のピッチコークスを得た。この粗粒状ピッチコークスを粉砕して平均粒径20μmの粉末とし、この粉末を不活性ガス中、1000℃にて焼成して不純物を除去し、コークス材料粉末を得た。 [0034] このようにして得られたコークス材料粉末を90重量部、結着材としてポリフッ化ビニリデンを10重量部の割合で混合して負極合剤を調整した。次いで、この負極合剤を溶剤であるN-メチルピロリドンに分散させてスラリーにした。そして、このスラリーを上述した厚さ12μmの帯状の電解銅箔である負極集電体4の両面に塗布し、乾燥後ローラプレス機で圧縮形成して、帯状負極6を得た。この帯状負極6は、成形後の負極合剤の膜厚が両面共に90μmで同一であり、その幅が55.6mm、長さが551.5mmに形成される。 [0035] 次に、正極3は、次にようにして作製した。正極活物質(LiCoO_(2))2は、炭酸リチウム0.5モルと炭酸コバルト1モルと混合し、空気中で900℃、5時間焼成してLiCoO_(2)を得た。 [0036] このようにして得られた正極活物質(LiCoO_(2))2を91重量%、導電剤としてグラファイトを6重量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを3重量%の割合で混合して正極合材を作製し、これをN-メチル-2ピロリドンに分散してスラリー状とした。次に、このスラリーを厚み20μmの帯状のナルミニウムからなる正極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥後ローラープレス機で圧縮成形して厚み160μmの帯状正極3を得た。この帯状正極3は、成形後の正極合剤の膜厚が表面共に70μmであり、その幅が53.6mm、長さが523.5mmに形成される。 [0037] このようにして作製された帯状正極3と、帯状負極6と、厚さが25μm、幅が58.1mmの微多孔性ポリプロピレンフィルムよりなるセパレータ7とを、上述したように積層し、これを積層電極体とした。この積層電極体は、その長さ方向に沿って負極6を内側にして渦巻型に多数回巻回され、最外周セパレータの最終端部をテープで固定されて、渦巻式電極体となる。この渦巻式電極体の中空部分は、その内径が、3.5mm、外形が17mmに形成される。 [0038] 上述のように作製された渦巻式電極体を、その上下両面に絶縁板8、9が設置された状態で、ニッケルメッキが施された鉄製の電池缶10に収納した。そして、正極3及び負極6の集電を行うために、アルミニウム製の正極リード13を正極集電体1から導出して電池蓋11に接続し、ニッケル製の負極リード14を負極集電体4から導出して電池缶10に接続した。 [0039] そして、この渦巻式電極体が収納された電池缶10に、プロピレンカーボネイトとジエチルカーボネイトとの等容量混合溶媒中にLiPF_(6)を1モル/lの割合で溶解した非水電解液5.0gを注入した。次いで、アスファルトで表面を塗布された絶縁封口ガスケット12を介して電池缶10をかしめることにより、電池蓋11を固定し、電池缶10内の気密性を保持させた。 [0040] 以上のようにして、直径18mm、高さ65mmの円筒形非水電解液二次電池(実施例1)を作製した。 [0041] 実施例2 先ず始めに、電解銅箔からなる負極集電体4は次のようにして作製した。組成2で示される硫酸銅溶液を電解液として、貴金属酸化物被覆チタンを陽極に、チタン製回転ドラムを陰極として、電流密度50A/dm2、液温50℃の条件で電解することによって、厚み12μmの電解銅箔を作成し、この電解箔にクロメート処理を行った。なお、この電解銅箔の表面粗さについては、後述する測定方法により測定し、表1に示した。 [0042] (組成2) 硫酸銅(CuSO_(4)・5H_(2)O) 350g/l 硫酸(H_(2)SO_(4)) 110g/l 1-メルカプト3-プロパンスルホン酸ナトリウム 1ppm ヒドロキシエチルセルロース 4ppm 低分子量膠(分子量3000) 4ppm Cl^(-) 30ppm 上述した電解金属箔を使用した以外は、実施例1と同様にして円筒形非水電解液二次電池(実施例2)を作製した。 [0043] 実施例3 先ず始めに、電解銅箔からなる負極集電体4は次のようにして作製した。組成3で示される硫酸銅溶液を電解液として、貴金属酸化物被覆チタンを陽極に、チタン製回転ドラムを陰極として、電流密度50A/dm^(2)、液温58℃の条件で電解することによって、厚み9μmの電解銅箔を得た。 [0044] (組成3) 硫酸銅(CuSO4・5H2O) 350g/l 硫酸(H2SO4) 110g/l 膠(分子量60000) 2ppm Cl- 30ppm この電解銅箔の表面粗さは、後述する測定方法により測定した結果、光沢面がRZ=2.00μm、マット面がRZ=3.52μmであった。 [0045] 次いで、この電解銅箔に、組成4で示される電解液からなる銅電解浴を用いて、電流密度6A/dm2、液温58℃でマット面に光沢銅メッキを施し、この電解銅箔の表面粗さを後述する測定方法により測定し、表1に示した。なお、本発明では、マット面に光沢銅メッキを施した面もマット面と表現する。そして、この銅メッキが施された電解銅箔に同様にクロメート処理を施した。 [0046] (組成4) 硫酸銅(CuSO_(4)・5H_(2)O) 240g/l 硫酸(H_(2)SO_(4)) 60g/l 膠 2ppm 日本シェーリング(株)製カバシラド210 メイキャップ剤 10cc/l 光沢剤(A) 0.5cc/l 光沢剤(B) 補充にのみ使用 Cl^(-) 30ppm 光沢剤の補充は、電流量1000Ahに対して光沢剤(A)及び光沢剤(B)を各々300cc添加した。 [0047] 上述した電解銅箔を使用した以外は、実施例1と同様にして円筒形非水電解液二次電池(実施例3)を作製した。 [0048] 比較例1 先ず始めに、電解銅箔からなる負極集電体4は次のようにして作製した。組成5で示される硫酸銅溶液を電解液として、貴金属酸化物被覆チタンを陽極に、チタン製回転ドラムを陰極として、電流密度50A/dm2、液温58℃の条件で電解することによって、厚み12μmの電解銅箔を作成し、この電解銅箔の表面粗さを後述する測定方法により測定し、表1に示した。そして、この電解銅箔にクロメート処理を行った。 [0049] (組成5) 硫酸銅(CuSO_(4)・5H_(2)O) 350g/l 硫酸(H_(2)SO_(4)) 110g/l 膠 2ppm Cl^(-) 30ppm 上述した電解銅箔を使用した以外は、実施例1と同様にして円筒形非水電解液二次電池(比較例1)を作製した。 [0050] そして、実施例1?実施例3及び比較例1で得られた電解銅箔において、その表面粗さ(10点平均粗さR_(Z))を表面粗さ計(株式会社小坂研究所製SE-3C型)で調べた。この結果を表1に示す。なお、光沢面の表面粗さを測定する際には、基準長さLを0.8mmとし、マット面の表面粗さを測定する際には、基準長さLを2.5mmとした。 [0051] [表1] [0052] また、それぞれの電解銅箔を負極集電体に用いた実施例1?実施例3及び比較例1の円筒形非水電解液二次電池について、100サイクル後の容量維持率を調べた。その結果を図3、図4及び表2に示す。 [0053] さらに、それぞれの電解銅箔を負極集電体に用いた実施例1?実施例3及び比較例1の円筒形非水電解液二次電池について、100サイクル前後のインピーダンスの変化を調べた。その結果を図5、図6及び表2に示す。 [0054] [表2] [0055] 図3、図5及び表2に示すように、マット面の表面粗さが3μm以上になると容量維持率が大幅に低下し、インピーダンスの変化が大きくなるため、マット面の表面粗さは、3μm未満が好ましい。また、図4及び図6に示すように、マット面と光沢面との表面粗さの差が大きくなるほど容量維持率が低くなり、インピーダンスが大きくなっている。このことから、マット面と光沢面との表面粗さの差は、2.5μm未満であることが好ましい。 [0056] また、電解銅箔のマット面の粗さは、実施例1及び実施例2のように、最初の電解条件によって規制してもよいし、実施例3のように、銅メッキを後から施して規制してもよい。 [0057] 以上のことから、上述した非水電解液二次電池においては、圧延銅箔に比べ製造上大きさの制約がなく、生産性が高い電解銅箔を負極集電体に用いていることから、生産性が向上し、電池生産コストを大幅に下げることができる。 [0058] さらに、上述した非水電解液二次電池においては、集電体である電解銅箔のマット面及び光沢面の表面粗さが3.0μmより小さく、光沢面とマット面との表面粗さの差が1.3μm以下であることから、集電体と活物質との接触性が良く、電気伝導度が大きくなって、充放電サイクルに優れたものとなる。 [0059] [発明の効果] 以上の説明からも明らかなように、本発明に係る非水電解液二次電池は、集電体に銅を電解析出して形成される電解銅箔を用いてなることから、電池の生産性を向上させ、電池生産のコストを下げることができる。 [0060] また、この電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下で形成される。このことから、本発明に係る非水電解液二次電池においては、集電体と活物質との接触性が良く、電気伝導度が大きくなって、充放電サイクルに優れたものとなる。 【図面の簡単な説明】 [図1]10点平均粗さ(R_(Z))の定義を説明するための断面図である。 [図2]本発明を適用した円筒形非水電解液二次電池の概略断面図である。 [図3]上記円筒形非水電解液二次電池において、電解銅箔のマット面の表面粗さと容量維持率との関係を示す特性図である。 [図4]上記円筒形非水電解液二次電池において、電解銅箔のマット面と光沢面との表面粗さの差と、容量維持率との関係を示す特性図である。 [図5]上記円筒形非水電解液二次電池において、電解銅箔のマット面の表面粗さと100サイクル後のインピーダンスとの関係を示す特性図である。 [図6]上記円筒形非水電解液二次電池において、電解銅箔のマット面と光沢面との表面粗さの差と、100サイクル後のインピーダンスとの関係を示す特性図である。 [符号の説明] 1 正極集電体、2 正極活物質、3 正極、4 負極集電体、5 負極活物質、6 負極、7 セパレータ、8 絶縁体、9 絶縁体、10 電池缶、11 電池蓋、12 絶縁封口ガスケット、13 正極リード、14 負極リード、 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2012-01-12 |
結審通知日 | 2012-01-17 |
審決日 | 2012-02-09 |
出願番号 | 特願平8-113710 |
審決分類 |
P
1
113・
854-
YA
(H01M)
P 1 113・ 121- YA (H01M) P 1 113・ 113- YA (H01M) P 1 113・ 855- YA (H01M) P 1 113・ 537- YA (H01M) P 1 113・ 841- YA (H01M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 青木 千歌子 |
特許庁審判長 |
吉水 純子 |
特許庁審判官 |
田中 則充 大橋 賢一 |
登録日 | 2005-11-18 |
登録番号 | 特許第3742144号(P3742144) |
発明の名称 | 非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池用の平面状集電体 |
代理人 | 北島 志保 |
代理人 | 上山 浩 |
代理人 | 上山 浩 |
復代理人 | 小川 直樹 |
代理人 | 上山 浩 |
復代理人 | 小川 直樹 |
代理人 | 高橋 雄一郎 |
復代理人 | 小川 直樹 |