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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効200580136 | 審決 | 特許 |
無効2010800166 | 審決 | 特許 |
無効200680157 | 審決 | 特許 |
無効2012800020 | 審決 | 特許 |
無効200480135 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 B32B 審判 全部無効 2項進歩性 B32B |
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管理番号 | 1270039 |
審判番号 | 無効2012-800021 |
総通号数 | 160 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-04-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2012-03-05 |
確定日 | 2013-02-12 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4846849号発明「多孔性活性層がコーティングされた有機/無機複合分離膜及びこれを備えた電気化学素子」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件の主な手続を、整理して以下に示す。 (ア)特許出願:平成20年2月5日(特願2009-548167号) (本件特許出願は、日本を指定国とした国際特許出願である。) (イ)設定登録:平成23年10月21日(特許第4846849号、以下「特許明細書」という。) (ウ)審判請求:平成24年3月5日(特許第4846849号発明の特許請求の範囲の請求項1?21に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。) (エ)答弁書:平成24年7月19日 (オ)当審より両当事者への審尋:平成24年9月11日(記録原本に保存済) (カ)請求人よりの審尋への回答:平成24年9月21日(記録原本に保存済) (キ)被請求人よりの審尋への回答:平成24年9月24日(記録原本に保存済) 第2 当事者の主張 1.請求人の主張の概要 本件特許の全請求項(請求項1?21)は、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明と同一で新規性がないか、または、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証?甲第3号証、甲第6号証に記載された発明を適用して、または甲第2号証に記載された発明に甲第1号証、甲第3号証、甲第6号証に記載された発明を適用して、または甲第3号証に記載された発明に甲第1号証?甲第2号証、甲第6号証に記載された発明を適用して当業者が容易になし得た発明でもあり、少なくとも進歩性を有しない。よって、本件特許の請求項1?21(全請求項)は、特許法第29条第1項第3号または同条第2項の規定により特許を受けることができない。 2.請求項1に係る請求人の主張 審判請求書の「7-3-3-1. 請求項1および2の発明の無効理由」において、具体的に、請求人が請求項1について主張する無効の理由は以下のとおりである。 (ア)甲第1号証に記載された発明と同一である。 (イ)甲第2号証に記載された発明と同一である。 (ウ)甲第3号証に記載された発明と同一であるか、甲第3号証に記載された発明に甲第1号証?甲第2号証、甲第6号証に記載された発明を適用して当業者が容易になし得た発明であり、新規性、進歩性を欠くものである。 (なお、審判請求書の「理由の要点」には、本件特許の全請求項は、「甲第1号証に記載された発明に甲第2号証?甲第3号証、甲第6号証に記載された発明を適用」して、「甲第2号証に記載された発明に甲第1号証、甲第3号証、甲第6号証に記載された発明を適用」して、当業者が容易になし得た発明であると記載されているが、審判請求書の「7-3-3. 本件発明と証拠に記載された発明との対比」には具体的な理由が記載されていないし、請求人よりの審尋への回答においても具体的に主張していない。現時点において、具体的な理由を追加することは、審判請求の理由の要旨変更となるので、今後必要があれば、再度の審判請求を検討されたい。) 【証拠方法】 甲第1号証:特開2006-313736号公報 甲第2号証:国際公開第2006/062153号 甲第3号証:国際公開第2006/68428号 甲第4号証:特開平9-115519号公報 甲第5号証:特開平11-218397号公報 甲第6号証:特開2004-227972号公報 甲第7号証:国際公開第99/36981号(再公表特許) 甲第8号証:特開平11-213979号公報 甲第9号証:国際公開第00/079618号(再公表特許) 甲第10号証:特開平7-220759号公報 甲第11号証:特開平8-100034号公報 また、甲第3号証の翻訳文に代えて、甲第3号証の2として特表2008-524824号公報が提出されている。 3.被請求人の主張の概要 平成24年7月19日付けで提出された答弁書の記載を総合すると、被請求人の主張は、概略、次のとおりと認められる。 「本件特許の請求項1?21に係る発明は、請求人が提出した証拠に記載された発明ではなく、また、請求人が提出した証拠に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。」 第3 本件発明 本件特許の請求項1?21に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?21に記載された事項によって特定される発明である。 ここで、本件特許の請求項1に係る発明は次のとおりである(以下、「本件特許発明1」という。)。 「有機/無機複合分離膜であって、 (a)多数の気孔を持つポリオレフィン系多孔性基材と、 (b)前記多孔性基材の少なくとも一面にコーティングされ、多数の無機物粒子とバインダー高分子との混合物で形成された多孔性活性層とを備えてなり、 前記バインダー高分子が、 水滴接触角が70゜乃至140゜である第1バインダー高分子と、 水滴接触角が1゜乃至69゜である第2バインダー高分子との混合物であり、 前記多孔性活性層の剥離力が、5gf/cm以上であり、 前記有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率が、機械方向または直角方向で50%以下である、 有機/無機複合分離膜。」 第4 甲各号証の記載 1.甲第1号証 甲第1号証には、次の記載がある。 (1ア)請求項1に、 「正極と、負極と、樹脂製の微多孔質セパレータと、非水電解液とを備えた非水電解質二次電池であって、 前記正極の理論容量当たりの面積が190?800cm^(2)/Ahであり、 前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方と前記セパレータとの間に、10?60μmの厚みを有する多孔質耐熱層が配置されていること、を特徴とする非水電解質二次電池。」と記載されている。 【0002】に記載されているように、リチウムイオン二次電池(リチウム二次電池)は代表的な非水電解質二次電池である。 (1イ)【0012】に、「多孔質耐熱層3は、負極5の表面に形成しても、セパレータ2の表面に形成してもよい。」と記載されている。 (1ウ)【0013】に、「多孔質耐熱層3は、絶縁性フィラーおよび結着剤を含むことが好ましい。」と記載されている。 (1エ)【0013】に、「多孔質耐熱層3に用いる絶縁性フィラーには、・・・無機酸化物を用いることが好ましい。・・・無機酸化物のなかでも、特にアルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニアなどは、比熱、熱伝導率および耐熱衝撃性が高く、リチウム二次電池の使用環境下において電気化学的な安定性が高い点で好ましい。」と記載されている。 (1オ)【0014】に、「この絶縁性フィラーを結着させる結着剤としては、上述したPVDFのほかに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性アクリロニトリルゴム粒子(例えば日本ゼオン(株)製のBM-500B(商品名)など)などを用いることができる。PTFEやBM-500Bを採用する場合、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレンオキシド(PEO)または変性アクリロニトリルゴム(日本ゼオン(株)製のBM-720H(商品名))などと組み合わせて用いることが好ましい。」と記載されている。 (1カ)【0015】に、「このような多孔質耐熱層3は、絶縁性フィラーと少量の結着剤とを含む原料ペーストを、ドクターブレードまたはダイコートなどの方法で、負極5またはセパレータ2の表面に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。」と記載されている。 (1キ)【0015】に、「多孔質耐熱層3の厚みは、10?60μmの範囲とする」と記載されている。 (1ク)【0016】に、「多孔質耐熱層3の空隙率は、・・・40?80%が好適であり、45?65%が更に好適である。」と記載されている。 (1ケ)【0020】に、「本発明におけるセパレータ2は、200℃以下で融点をもつ樹脂製の微多孔質フィルムが望ましい。なかでも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物、エチレンおよびプロピレンの共重合体などが好ましい。」と記載されている。 (1コ)【0026】に、「タップ密度が1.2g/mlのアルミナ粉末950gを、BM-720H(固形分8重量部)625gおよび適量のNMPとともに双腕式練合機にて攪拌し、多孔質耐熱層形成用ペーストを調製した」と記載されている。つまり、多孔質耐熱層の無機酸化物(アルミナ)と結着剤(BM-720H)との重量比は95:5である。 上記の記載からみて、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という。)。 「無機酸化物からなる絶縁性フィラーを表面に結着剤と増粘剤とで結着させた樹脂製の微多孔質フィルムからなるセパレータ2であって、 セパレータ2は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物、エチレンおよびプロピレンの共重合体など樹脂製の微多孔質フィルムと、 絶縁性フィラーと結着剤とを含む原料ペーストを、ドクターブレードまたはダイコートなどの方法で、セパレータ2の表面に塗布してなる絶縁性フィラーを結着させる多孔質耐熱層3とを備えてなり、 前記絶縁性フィラーを結着させる前記結着剤が、 ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む群から選ばれた前記結着剤と、 カルボキシメチルセルロース(CMC)を含む群から選ばれた前記増粘剤を組み合わせて用いるものである セパレータ。」 2.甲第2号証 甲第2号証には、次の記載がある。 (2ア)【0006】に、「ポリプロピレン(PP)不織布を用いたセパレータ」と記載されている。 (2イ)【0021】には、「本発明のセパレータでは、内部短絡の防止やセパレータの形状安定性(特に高温時における形状安定性)の確保などのために、上記多孔質基体はフィラー粒子を含んでいる。即ち、上記多孔質基体の少なくとも一部をフィラー粒子で構成するか、または、多孔質基体の空孔内にフィラー粒子を含有させる。フィラー粒子としては、耐熱性および電気絶縁性を有しており、電解液やセパレータの製造の際に使用する溶媒に対して安定であり、さらに、電池の作動電圧範囲において酸化還元されにくい電気化学的に安定な微粒子が用いられる。」と記載されている。 (2イ)【0024】には、「(II)の態様のセパレータは、繊維状物で多孔質基体、例えば織布、不織布(紙を含む)などを構成し、その空孔内にフィラー粒子を含有させ、シャットダウン樹脂とともに多孔質膜を形成しているものである。」と記載されている。 (2ウ)【0048】には、「フィラー粒子は、有機粒子でも無機粒子でもよいが、分散性などの点から微粒子であるのが望ましく、安定性などの点から無機微粒子が好ましく用いられる。無機粒子の構成材料の具体例としては、例えば、酸化鉄、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、TiO_(2)、BaTiO_(2)、ZrO_(2)などの無機酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの無機窒化物、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶、シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶、モンモリロナイトなどの粘土が挙げられる。ここで、上記無機酸化物は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビンなどの鉱物資源由来物質またはこれらの人造物などであってもよい。また、金属、又はSnO_(2)、スズ-インジウム酸化物(ITO)などの導電性酸化物、又はカーボンブラック、グラファイトなどの炭素質材料などに例示される導電性材料の表面を、電気絶縁性を有する材料、例えば、上記の無機酸化物などで被覆することにより電気絶縁性を持たせた粒子であってもよい。上記の無機酸化物の中でも、Al_(2)O_(3)、SiO_(2)およびベーマイトが好ましく用いられる。」と記載されている。 (2エ)【0051】「前記(I)の態様のセパレータの多孔質基体は、多数のフィラー粒子をバインダなどにより一体化させて形成されるが、上記バインダとしては、EVA(酢酸ビニル由来の構造単位が20?35モル%のもの)、エチレン-エチルアクリレート共重合体などのエチレン-アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが用いられる。特に、150℃以上の耐熱温度を有する耐熱樹脂が好ましく用いられ、上記バインダは2種以上を併用しても構わない。なお、これらのバインダを使用する場合には、後述するセパレータ形成用の液状組成物の溶媒に溶解させるか、または分散させたエマルジョンの形態で用いればよい。」と記載されている。 (2オ)【0092】に、「(実施例5)バインダとして、SBRラテックス〔JSR社製"TRD-2001"(商品名)〕:300gおよびCMC〔ダイセル化学社製"2200"〕:30gと、水:4kgとを容器に入れ、均一に溶解するまで室温にて撹拌した。さらに、架橋PMMA微粒子(樹脂B)の水分散体〔ガンツ化成社製"スタフィロイド"(商品名)、平均粒径0.3μm、B_(R)=1.2、B_(T)=1.2〕:2.5kgを加え、ディスパーで、2800rpmの条件で1時間撹拌して分散させた。これに、実施例3と同様のフィラー粒子(板状ベーマイト微粒子):3kgを加え、ディスパーで、2800rpmの条件で3時間撹拌して、均一なスラリーとした。このスラリーを、アプリケーターを用いて、厚さ23μmのPP製不織布(日本バイリーン社製)上にギャップを50μmにして摺り切り塗布し、乾燥して、厚さ30μmのセパレータを得た。」と記載されている。 (2カ)段落【0120】には、「実施例1?実施例9および比較例1?比較例3のセパレータを、それぞれ、前述の正極および負極とともに渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。この巻回電極体を押しつぶして扁平状にし、電池容器内に装填し、前述の非水電解液を注入した後、封止を行って、実施例1A?実施例9Aおよび比較例1A?比較例3Aのリチウム二次電池を作製した。」と記載されている。 従って、甲第2号証には、「実施例5」として、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲2発明」という。)。 「ポリプロピレン製不織布上にSBR(スチレンブタジエンゴム)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、及び、板状ベーマイト微粒子を撹拌して得られたスラリーを塗布し、乾燥したセパレータであって、 繊維状物で多孔質基体であるポリプロピレン製不織布と、 ポリプロピレン製不織布上にSBRラテックス、CMC、及び、板状ベーマイト微粒子を塗布し、乾燥した多孔性層とを備えてなり、 多数の板状ベーマイト微粒子を一体化させるバインダが、 SBR(スチレンブタジエンゴム)と、 CMC(カルボキシメチルセルロース)との混合物である、 セパレータ。」 3.甲第3号証に記載された発明 甲第3号証には、次の記載がある(日本語訳は甲第3号証の2を参照して当審で作成した。)。 (3ア)「According to an aspect of the present invention, there is provided an organic/inorganic composite porous separator, which comprises (a) a polyolefin-based separator substrate; and (b) an active layer formed by coating at least one region selected from the group consisting of a surface of the substrate and a part of pores present in the substrate with a mixture of inorganic particles and a binder polymer, wherein the inorganic particles in the active layer are interconnected among themselves and are fixed by the binder polymer, and interstitial volumes among the inorganic particles form a pore structure. There is also provided an electrochemical device (preferably, a lithium secondary battery) comprising the same.」(第6ページ第19行?第31行)(本発明は、(a)ポリオレフィン系のセパレータ膜基材、及び(b)前記基材の表面及び前記基材に存在する気孔部の一部よりなる群から選ばれた1種以上の領域に無機物粒子及びバインダー高分子の混合物で塗布された活性層と、を含む有無機複合多孔性セパレータ膜であって、前記活性層が、バインダー高分子により無機物粒子同士が結び付き、無機物粒子同士の間隙により気孔構造が形成されたことを特徴とする有無機複合多孔性セパレータ膜及びこれを備える電気化学素子、好ましくは、リチウム二次電池を提供する。) (3イ)「According to another aspect of the present invention, there is provided a method for manufacturing an organic/inorganic composite porous separator, which includes the steps of : (a) dissolving a binder polymer into a solvent to form a polymer solution; (b) adding inorganic particles having lithium ion conductivity to the polymer solution obtained from step (a) and mixing them; and (c) coating the mixture of inorganic particles with a binder polymer obtained from step (b) onto at least one region selected from the group consisting of a surface of the substrate and a part of the pores present in the substrate, followed by drying.」(第7ページ第1行?第11行)(また、本発明は、(a)バインダー高分子を溶媒に溶解させて高分子溶液を得る段階と、(b)無機物粒子を前記段階(a)において得られた高分子溶液に加えて混合する段階と、(c)ポリオレフィン系のセパレータ膜基材の表面及び/または基材中の気孔部の一部に前記段階(b)において得られた混合物を塗布し乾燥する段階と、を含んでなる有無機複合多孔性セパレータ膜の製造方法を提供する。) (3ウ)「Non-limiting examples of the binder polymer that may be used in the present invention include polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene, polyvinylidene fluoride-co-trichloroethylene, polymethylmethacrylate, polyacrylonitrile, polyvinylpyrrolidone, polyvinyl acetate, polyethylene-co-vinyl acetate, polyethylene oxide, cellulose acetate, cellulose acetate butyrate, cellulose acetate propionate, cyanoethylpullulan, cyanoethyl polyvinylalcohol, cyanoethylcellulose, cyanoethylsucrose, pullulan, carboxymetyl cellulose, acrylonitrile-styrene-butadiene copolymer, polyimide or mixtures thereof. Other materials may be used alone or in combination, as long as they satisfy the above characteristics.」(第18ページ第16行?第28行)(使用可能なバインダー高分子の非制限的な例としては、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン、ポリビニリデンフルオライド-トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキシド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシルメチルセルロース、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体、ポリイミドまたはこれらの混合体などが挙げられる。これらの他にも、上述した特性を含む材料であれば、単独または混合して用いることができる。) (3エ)「The organic/inorganic composite porous separator may be manufactured by a conventional process known to one skilled in the art. One embodiment of a method for manufacturing the organic/inorganic composite porous separator according to the present invention, includes the steps of: (a) dissolving a binder polymer into a solvent to form a polymer solution; (b) adding inorganic particles to the polymer solution obtained from step (a) and mixing them; and (c) coating the mixture obtained from step (b) onto at least one region selected from the group consisting of the surface of a polyolefin-based separator substrate and a part of the pores present in the substrate, followed by drying.」(第21ページ第16行?第27行)(本発明による有無機複合多孔性セパレータ膜は、当業界における通常の方法により製造すればよく、その一実施の形態を挙げると、(a)バインダー高分子を溶媒に溶解させて高分子溶液を得る段階と、(b)無機物粒子を上記段階(a)において得られた高分子溶液に加えて混合する段階と、(c)ポリオレフィン系のセパレータ膜基材の表面及び/または基材中の気孔部の一部に前記段階(b)において得られた無機物粒子と高分子の混合物を塗布し乾燥する段階と、を含む方法がある。) (3オ)「Experimental Example 2. Evaluation for heat shrinkage of organic/inorganic composite porous separator The following experiment was performed to compare the organic/inorganic composite porous separator according to the present invention with a conventional separator . The organic/inorganic composite porous separators according to Examples 1 to 7 were used as samples . As a control , a PE separator was used. Each of the test samples was checked for its heat shrinkage after stored at a high temperature of 150 ℃ for 1 hour. The test samples provided different results after 1 hour at 150 ℃. The PE separator as a control was shrunk due to high temperature to leave only the outer shape thereof (see FIG. 5a) . On the contrary, the organic/inorganic composite porous separators according to the present invention showed good results with no heat shrinkage (see, FIG. 5b) .」 (第32ページ第10行?第26行)(実験例2.有機無機複合多孔性セパレータの熱収縮分析 本発明に従い製造された有機無機複合多孔性セパレータを従来の通常のセパレータと比較するために、下記の如き実験を行った。 試料としては、実施例1ないし実施例7に従い製造した有機無機複合多孔性セパレータを用い、対照群としては、PEセパレータをそれぞれ用いた。 上記各試料を150℃の温度において1時間放置した後、これらを集めて確認したところ、それぞれ異なる様子を示していた。対照群としてのPEセパレータは、高温により収縮して形体のみが残る程度に形状変化したのに対し(図5a参照)、本発明による有機無機複合多孔性セパレータは、熱収縮が全くみられない良好な状態を示していた(図5b参照))。 (3カ)「 Claims 1. An organic/inorganic composite porous separator, which comprises : (a) a polyolefin-based separator substrate; and (b) an active layer formed by coating at least one region selected from the group consisting of a surface of the substrate and a part of pores present in the substrate with a mixture of inorganic particles and a binder polymer, wherein the inorganic particles in the active layer are interconnected among themselves and are fixed by the binder polymer, and interstitial volumes among the inorganic particles form a pore structure .」(第38ページ第1行?第12行)(【特許請求の範囲】 【請求項1】 (a)ポリオレフィン系のセパレータ膜基材と、及び (b)前記基材の表面及び前記基材に存在する気孔部の一部よりなる群から選ばれた1種以上の領域に無機物粒子及びバインダー高分子の混合物で塗布された活性層とを含んでなる、有無機複合多孔性セパレータ膜であって、 前記活性層は、バインダー高分子により無機物粒子同士が結び付き、無機物粒子同士の間隙により気孔構造が形成されたことを特徴とする、有無機複合多孔性セパレータ膜。) 上記(3ア)?(3カ)の記載などからみて、甲第3号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲3発明」という。 ) 「有無機複合多孔性セパレータ膜であって、 気孔部を有するポリオレフィン系のセパレータ膜基材と、 基材の表面に塗布され、多数の無機物粒子とバインダー高分子の混合物を高分子溶液に加えた混合物を塗布し乾燥して形成された気孔構造が形成された活性塗布層とを備えてなり、 有無機複合多孔性セパレータ膜を150℃の温度において1時間放置した後、熱収縮が全くみられない 有無機複合多孔性セパレータ膜。」 4.甲第4号証に記載された発明 (4ア)【0025】に、「水に対する表面接触角が110°のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)」と記載されている。 5.甲第5号証:特開平11-218397号公報 (5ア)表4、7?8に、実施例4として、表面にカルボキシメチルセルロースの樹脂層を形成した試験片について、試験片表面に汚染物質(サラダ油またはフタル酸ジオクチル(DOP))を付着させた後、水道水によって24時間流水した後の水に対する接触角が11?18°であったことが記載されている(【0028】?【0039】参照)。さらに、【0040】には、「実施例No.1乃至8は・・・、流水後に汚染物質を付着させた場合に、汚染物質が付着していない場合と同様のレベルである接触角が20゜以下まで親水性が回復した。」と記載されており、汚染物質を付着させる前のカルボキシメチルセルロースの樹脂層の水に対する接触角が11?18°程度であることが明らかである。 6.甲第6号証:特開2004-227972号公報 (6ア)請求項1および2に、 「水溶性ポリマーの多孔膜とポリオレフィンの多孔膜とが積層されてなることを特徴とする非水電解液二次電池用セパレータ。」 「水溶性ポリマーの多孔膜が微粒子を含む多孔膜である請求項1記載の非水電解液二次電池用セパレータ。」 が記載されている。 (6イ)【0008】に、「耐熱性のある材質からなる多孔膜とポリオレフィンの多孔膜が積層されてなる非水電解液二次電池用セパレータについて鋭意検討した結果、耐熱性のある材質からなる多孔膜として水溶性ポリマーの多孔膜を用いると、高温での寸法安定性に優れたセパレータとなるだけではなく、意外にも負荷特性に優れた非水電解液二次電池を与えることを見出し、本発明を完成させるに至った。」と記載されている。 (6ウ)【0011】に、「水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸等が挙げられ、セルロースエーテル、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウムが好ましく、セルロースエーテルがさらに好ましい。セルロースエーテルとしては具体的には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、シアンエチルセルロース、オキシエチルセルロース等が挙げられ、長時間にわたる使用における劣化が少ないのでCMCが最も好ましい。」と記載されている。 (6エ)実施例1において、CMC9gとアルミナ微細粒子45gとを含むスラリー溶液(媒体:水)を多孔質ポリエチレンフィルム上に塗布し、乾燥させて得られた複合多孔質フィルムの150℃で10分間保持後の寸法保持率が86%であったことが記載されている(【0043】?【0045】参照)。 7.甲第7号証:WO99/36981 (7ア)比較例5において、ポリフッ化ビニリデンを3重量%と平均径0.01μmのアルミナ粉末を30重量%とを溶媒に溶解分散させたものをポリプロピレン・ポリエチレン・ポリプロピレン三層セパレータの両面に塗布して接着性樹脂層を形成し、正極及び負極とをセパレータの両側に接合して得られた電極体の負極/セパレータ間の接着強度(ピール強度)を測定した結果、20gf/cmであり、10gf/cm以上であったことが記載されている(第14頁下から7行?下から3行、第23頁の表3参照)。ここで測定されているのは、電極体の負極/セパレータ間の接着強度であるが、接着性樹脂層/セパレータ間の接着強度は、当然にこれ以上のものである。 (7イ)第8頁17行?同頁23行に、「本発明は、接着性樹脂の中にフィラー(充填材)を添加することにより、接着性樹脂層に多孔性を持たせたものである。・・・接着性樹脂溶液にフィラーを混合すると、フィラーによって接着性樹脂自体が多孔質構造を持ち、」と記載されている。 8.甲第8号証:特開平11-213979号公報 (8ア)実施例において、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの三層からなる多孔質な多層フィルム上にアクリル系粘着剤中に酸化錫を添加したワニス(SnO_(2)添加量:300?2000重量部)を両面に塗工して多孔質粘着剤層を形成し、熱処理して得られた電池用粘着剤付セパレーターと電極フィルムと貼り合わせ、その粘着力を測定した結果、10g/2cm以上を示す実施例が多数記載されている。例えば、実施例1は25g/2cm、実施例2は30g/2cm、実施例3は12g/2cm、実施例4は40g/2cm、実施例6は45g/2cm、実施例9は58g/2cmをそれぞれ有する(【0007】?【0011】、表1?3参照)。ここで測定されているのは、多孔質粘着剤層と電極との粘着力であるが、測定時に多孔質粘着剤層とベースの多層フィルムとが分離していないことから、多孔質粘着剤層とベースの多層フィルムとの粘着力は、この多孔質粘着剤層と電極との粘着力以上のものである。 9.甲第9号証:WO00/079618 (9ア)実施例3において、アルミナ超微粒子にポリフッ化ビニリデンを重量比30%混合したものを溶媒に溶解分散させたものを多孔性のポリプロピレンシートに塗布し、乾燥して得られたセパレータを用いた電池は、充電状態で170℃まで加熱した場合にも、セパレータが溶融して電極間が短絡するといった異常は認められなかったことが記載されている(第9頁下から5行?第10頁8行)。 10.甲第10号証:特開平7-220759号公報 (10ア)【0027】に、「活物質25を含有する電極活物質層26表面に微粒子27が結着剤とともに溶剤に分散されてなる微粒子スラリー28を塗布すると、スラリー28中の結着剤が固体微粒子27同士の接触界面あるいは固体微粒子27と活物質層26との接触界面近傍に集まる。これにより、この接触界面以外の部分がいわば孔の空いた状態になり、このような孔部を多数有する保護膜が形成される。」と記載されている。 11.甲第11号証:特開平8-100034号公報 (11ア)【0017】に、「SBR及び上記のグラフトポリマーのそれぞれを用いてプレパラート上に薄膜を形成させ、蒸留水とヨウ化メチレンの接触角を測定した。・・・SBRの接触角は100度」と記載されている。 第5 甲第1号証を主引例とする無効理由について 1.本件特許発明1と甲1発明との対比 (ア)後者の「結着剤と増粘剤」、「無機酸化物からなる絶縁性フィラー」からみて、「有機/無機」の成分を共に含むものであるといえる。そして、後者の「表面に結着剤と増粘剤とで結着させた」、及び、「セパレータ」が前者の「複合」、及び、「分離膜」に相当する。 したがって、後者の「無機酸化物からなる絶縁性フィラーを表面に結着剤と増粘剤とで結着させた樹脂製の微多孔質フィルムからなるセパレータ2」は、前者の「有機/無機複合分離膜」に相当する。 (イ)後者の「ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物、エチレンおよびプロピレンの共重合体など樹脂」がポリオレフィン系であることは技術常識である。そして、後者も「微多孔質フィルム」であることから、前者の「多孔性基材」に相当する。 したがって、後者の「ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物、エチレンおよびプロピレンの共重合体など樹脂製の微多孔質フィルム」は、前者の「多数の気孔を持つポリオレフィン系多孔性基材」に相当する。 (ウ)後者の「絶縁性フィラーと結着剤とを含む原料ペーストを、ドクターブレードまたはダイコートなどの方法で、セパレータ2の表面に塗布してなる」態様は、前者の「多孔性基材の少なくとも一面にコーティングされ」た態様に相当する。そして、後者の「セパレータ2の表面に塗布してなる絶縁性フィラーを結着させる多孔質耐熱層3」と前者の「多数の無機物粒子とバインダー高分子との混合物で形成された多孔性活性層」とは、後者の「活性」がどのようなものであるのかが特許明細書に定義されていないことから、後者の構成が明確であるとはいえないが、少なくとも両者は、「多数の無機物粒子とバインダー高分子との混合物で形成された多孔性層」であるといえる。 したがって、後者の「絶縁性フィラーと結着剤とを含む原料ペーストを、ドクターブレードまたはダイコートなどの方法で、セパレータ2の表面に塗布してなる絶縁性フィラーを結着させる多孔質耐熱層3」と、前者の「多孔性基材の少なくとも一面にコーティングされ、多数の無機物粒子とバインダー高分子との混合物で形成された多孔性活性層」とは、 「多孔性基材の少なくとも一面に塗布され、多数の無機物粒子とバインダー高分子との混合物で形成された多孔性層」なる概念で共通する。 (エ)後者の「絶縁性フィラーを結着させる前記結着剤が、 ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む群から選ばれた前記結着剤であり、 カルボキシメチルセルロース(CMC)を含む群から選ばれた前記増粘剤を組み合わせて用いるものである」態様と前者の 「バインダー高分子が、 水滴接触角が70゜乃至140゜である第1バインダー高分子と、 水滴接触角が1゜乃至69゜である第2バインダー高分子との混合物であ」る態様とは、 前者の「バインダー高分子」がどのようなものであるのかが特許明細書に定義されていないことから、前者の構成が明確であるとはいえないが、少なくとも両者は、「高分子材料」であるといえる。 そして、後者の「ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む群から選ばれた前記結着剤」、及び、「カルボキシメチルセルロース(CMC)を含む群から選ばれた前記増粘剤」と、前者の「第1バインダー高分子」、及び、「第2バインダー高分子」とは、「第1の高分子材料」、及び、「第2の高分子材料」との概念で共通する。 したがって、後者の「絶縁性フィラーを結着させる前記結着剤が、 ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む群から選ばれた前記結着剤であり、 カルボキシメチルセルロース(CMC)を含む群から選ばれた前記増粘剤を組み合わせて用いるものである」態様と、 前者の「バインダー高分子が、 水滴接触角が70゜乃至140゜である第1バインダー高分子と、 水滴接触角が1゜乃至69゜である第2バインダー高分子との混合物であり、 前記多孔性活性層の剥離力が、5gf/cm以上であり、 前記有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率が、機械方向または直角方向で50%以下である」態様とは、 「無機物粒子を結着させる材料が、 第1の高分子材料と、 第2の高分子材料との混合物である」との概念で共通する。 (オ)上記の「(ア)」を踏まえると、後者の「セパレータ」が前者の「有機/無機複合分離膜」に相当する。 ゆえに、両者は、「有機/無機複合分離膜であって、 多数の気孔を持つポリオレフィン系多孔性基材と、 前記多孔性基材の少なくとも一面にコーティングされ、多数の無機物粒子とバインダー高分子との混合物で形成された多孔性層とを備えてなり、 無機物粒子を結着させる材料が、 第1の高分子材料と、 第2の高分子材料との混合物である、 有機/無機複合分離膜。」である点で共通する。 そして、以下の点で両者は相違する。 [相違点1] 多孔性層に関し、本件特許発明1においては、多孔性「活性」層であることを特定しているのに対し、甲1発明においてはそのような特定はなされていない点。 [相違点2] 無機物粒子を結着させる材料を構成する第1と第2の無機物粒子を結着させる高分子材料に関し、本件特許発明1においては、「水滴接触角が70゜乃至140゜である第1バインダー高分子」と、「水滴接触角が1゜乃至69゜である第2バインダー高分子」との混合物であるのに対し、甲1発明では、絶縁性フィラーを結着させる前記結着剤と増粘剤が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と、カルボキシメチルセルロース(CMC)との混合物であるが、水滴接触角については特定されていない点。 [相違点3] 無機物粒子を結着させる材料を構成する第1と第2の無機物粒子を結着させる高分子材料に関し、本件特許発明1においては、「多孔性活性層の剥離力が、5gf/cm以上であり、前記有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率が、機械方向または直角方向で50%以下である」のに対し、甲1発明においてはそのような特定はなされていない点。 2.同一性の主張についての当合議体の判断 [相違点1について] (ア)本件特許発明1において、多孔性層が多孔性「活性」層であることの技術的な意義を検討する。 特許明細書の【0027】の「 本発明の有機/無機複合分離膜において、多孔性活性層の形成に使われる無機物粒子は電気化学的に安定さえすれば特に制限されない。」と記載されているが、本件特許発明1には、多孔性「活性」層であることが特定されており、これが、特許明細書の【0027】の「電気化学的に安定」なことを特定していると解することができない。 一方、同【0029】には、「前述した理由から、前記無機物粒子は誘電率定数が5以上、望ましくは10以上の高誘電率無機物粒子、リチウムイオン伝達能を持つ無機物粒子、またはこれらの混合体を含むことが望ましい。誘電率定数が5以上の無機物粒子の非制限的な例としては、BaTiO_(3)、Pb(Zr,Ti)O_(3)(PZT)、Pb_(1-x)La_(x)Zr_(1-y)Ti_(y)O_(3)(PLZT)、Pb(Mg_(3)Nb_(2/3))O_(3)‐PbTiO_(3)(PMN‐PT)、ハフニア(HfO_(2))、SrTiO_(3)、SnO_(2)、CeO_(2)、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO_(2)、Y2O_(3)、Al_(2)O_(3)、TiO_(2)、SiCまたはこれらの混合体などがある。」と記載され、同【0030】には、「特に、前述したBaTiO_(3)、Pb(Zr,Ti)O_(3)(PZT)、Pb_(1-x)La_(x)Zr_(1-y)Ti_(y)O3(PLZT)、Pb(Mg_(3)Nb_(2/3))O_(3)‐PbTiO_(3)(PMN‐PT)及びハプニア(HfO_(2))のような無機物粒子は、誘電率定数100以上の高誘電率特性を示すだけでなく、一定圧力を印加して引張または圧縮される場合、電荷が発生して両面の間に電位差が生じる圧電性を持つことで、外部衝撃による両電極の内部短絡発生を防止して電気化学素子の安全性向上を図ることができる。また、前述した高誘電率無機物粒子とリチウムイオン伝達能を持つ無機物粒子とを混用する場合、これらの相乗効果は倍加され得る。」と記載されており、同【0031】には、「本発明において、リチウムイオン伝達能を持つ無機物粒子は、リチウム元素を含むもののリチウムを貯蔵せずにリチウムイオンを移動させる機能を持つ無機物粒子を称するものであり、リチウムイオン伝達能を持つ無機物粒子は粒子構造の内部に存在する一種の欠陥によってリチウムイオンを伝達及び移動させることができるため、電池内のリチウムイオン伝導度が向上し、これにより電池性能の向上を図ることができる。」と記載されているので、特許明細書においては「活性」とは、一定圧力を印加して引張または圧縮される場合、電荷が発生して両面の間に電位差が生じる圧電性を持つことで、外部衝撃による両電極の内部短絡発生を防止して電気化学素子の安全性向上を図ること、及び、電池内のリチウムイオン伝導度が向上するものであると解される。 そうすると、甲第1号証には、一定圧力を印加して引張または圧縮される場合、電荷が発生して両面の間に電位差が生じる圧電性を持つことで、外部衝撃による両電極の内部短絡発生を防止して電気化学素子の安全性向上を図ること、及び、電池内のリチウムイオン伝導度が向上することは共に記載されていないし、審判請求書を精査してもそのような技術が甲第1号証に記載されているに等しいとは認められない。 (イ)してみると、相違点1に係る、多孔性層が多孔性「活性」層であることについては、甲1発明とは文言上相違するし、審判請求書を精査しても、多孔性層が多孔性「活性」層である点が甲第1号証に記載されているに等しいとは認められない。 [相違点2について] 請求人が主張するように、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の水滴接触角(水に対する接触角)は、甲第4号証に記載されているように、110°であり、一方、カルボキシメチルセルロース(CMC)の水滴接触角(水に対する接触角)は、甲第5号証に記載されているように、11?18°程度である。従って、PTFEは、本件特許発明1の第1バインダー高分子に相当し、CMCは、本件特許発明1の第2バインダー高分子に相当するといえるが、甲第1号証の摘記箇所である「(1オ)」には、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)以外の選択枝が記載され、増粘剤もカルボキシメチルセルロース(CMC)以外の選択枝が記載されており、これらから、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とカルボキシメチルセルロース(CMC)との組合わせを選択することは記載されていないし、審判請求書には技術常識を踏まえると記載されているに等しいものであるとも記載されていない。 そうすると、甲第1号証には、「水滴接触角が70゜乃至140゜である第1バインダー高分子」と、「水滴接触角が1゜乃至69゜である第2バインダー高分子」との混合物とすることが記載されていないし、審判請求書を精査してもそのような技術が甲第1号証に記載されているに等しいとは認められない。もし、格別な事情があるなら、その理由を追加して再度審判請求を検討されたい。 [相違点3について] 「多孔性活性層の剥離力が、5gf/cm以上であり、前記有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率が、機械方向または直角方向で50%以下である」点は、甲1発明には文言上特定されていないし、審判請求書を精査しても、「多孔性活性層の剥離力が、5gf/cm以上であり、前記有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率が、機械方向または直角方向で50%以下である」点が甲第1号証に記載されているに等しいとは認められない。 なお、請求人は、審判請求書第18頁21行?第19頁1行、及び、回答書において、概略以下の主張を行っている。 「相違点2(「相違点3」に相当)が実質的なものでない点については、審判請求書第18頁21行?第19頁1行で説明しております。この箇所の要点は次のとおりです。 甲第1号証には、多孔性活性層の剥離力、及び有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率について、明示の記載がない。しかしながら、本件明細書の趣旨からして、請求項1で規定される剥離力および熱収縮率は、請求項1の規定を満たす所定のバインダー高分子(第1バインダー高分子と第2バインダー高分子との混合物)を用いることで必然的に達成されるものである。甲第1号証には、請求項1の規定を満たす所定のバインダー高分子を用いた有機/無機複合分離膜が記載されており、構成上の差が無い。従って、請求項1で規定される剥離力および熱収縮率は、甲第1号証においても達成されていると認められる。 従って、相違点2(「相違点3」に相当)は実質的なものではない。」 しかしながら、甲第1号証に開示されたセパレータが、必然的に、「多孔性活性層の剥離力が、5gf/cm以上であり、前記有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率が、機械方向または直角方向で50%以下である」といえる根拠は審判請求書には何ら記載されていないし、示唆もされていないことから、上記の請求人の主張を採用することができない。 上記の根拠を裏付ける証拠を追加することは無効理由の要旨変更に相当するので、必要があれば、再度審判請求を検討されたい。 第6 甲第2号証を主引例とする無効理由について 1.本件特許発明1と甲2発明との対比 (ア)後者の「ポリプロピレン製不織布上にSBR(スチレンブタジエンゴム)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、及び、板状ベーマイト微粒子を塗布し、乾燥したセパレータ」は、前者の「有機/無機複合分離膜」に相当する。 (イ)後者の「繊維状物で多孔質基体であるポリプロピレン製不織布」は、前者の「多数の気孔を持つポリオレフィン系多孔性基材」に相当する。 (ウ)後者の「塗布し、乾燥した」ものである態様は、前者の「コーティング」に相当すると解される。 すると、後者の「ポリプロピレン製不織布上にSBR(スチレンブタジエンゴム)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、及び、板状ベーマイト微粒子を撹拌して得られたスラリーを塗布し、乾燥したセパレータ」と、前者の「多孔性基材の少なくとも一面にコーティングされ、多数の無機物粒子とバインダー高分子との混合物で形成された多孔性層」とは、「多孔性基材の少なくとも一面にコーティングされ、多数の無機物粒子とバインダー高分子との混合物で形成された多孔性層」なる概念で共通する。 (エ)後者の「多数の板状ベーマイト微粒子を一体化させるバインダが、 SBR(スチレンブタジエンゴム)と、 CMC(カルボキシメチルセルロース)との混合物である」態様と、 前者の「バインダー高分子が、 水滴接触角が70゜乃至140゜である第1バインダー高分子と、 水滴接触角が1゜乃至69゜である第2バインダー高分子との混合物であ」る態様とは、 「無機物粒子を結着させる材料が、 第1の無機物粒子を結着させる高分子材料と、 第2の無機物粒子を結着させる高分子材料との混合物である」との概念で共通する。 ゆえに、両者は、「有機/無機複合分離膜であって、 多数の気孔を持つポリオレフィン系多孔性基材と、 前記多孔性基材の少なくとも一面にコーティングされ、多数の無機物粒子とバインダー高分子との混合物で形成された多孔性層とを備えてなり、 無機物粒子を結着させる材料が、 第1の無機物粒子を結着させる高分子材料と、 第2の無機物粒子を結着させる高分子材料との混合物である、 有機/無機複合分離膜。」である点で共通する。 そして、以下の点で両者は相違する。 [相違点1'] 多孔性層に関し、本件特許発明1においては、多孔性「活性」層であることを特定しているのに対し、甲2発明においてはそのような特定はなされていない点。 [相違点2'] 無機物粒子を結着させる材料を構成する第1と第2の無機物粒子を結着させる高分子材料に関し、本件特許発明1においては、「水滴接触角が70゜乃至140゜である第1バインダー高分子」と、「水滴接触角が1゜乃至69゜である第2バインダー高分子」との混合物であるのに対し、甲2発明では、ポリプロピレン製不織布上にSBRラテックス、CMC、及び、板状ベーマイト微粒子を塗布し、乾燥した多孔性層であるが、水滴接触角については特定されていない点。 [相違点3'] 無機物粒子を結着させる材料を構成する第1と第2の無機物粒子を結着させる高分子材料に関し、本件特許発明1においては、「多孔性活性層の剥離力が、5gf/cm以上であり、前記有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率が、機械方向または直角方向で50%以下である」のに対し、甲2発明においてはそのような特定はなされていない点。 2.同一性の主張についての当合議体の判断 [相違点1'について] (ア)本件特許発明1において、多孔性層が多孔性「活性」層であることの技術的な意義は、上記「第5 甲第1号証を主引例とする無効理由について」の「2.同一性の主張についての当合議体の判断」の「[相違点1について]」で検討しているように、特許明細書においては「活性」とは、一定圧力を印加して引張または圧縮される場合、電荷が発生して両面の間に電位差が生じる圧電性を持つことで、外部衝撃による両電極の内部短絡発生を防止して電気化学素子の安全性向上を図ること、及び、電池内のリチウムイオン伝導度が向上することであると解される。 そうすると、甲第2号証には、一定圧力を印加して引張または圧縮される場合、電荷が発生して両面の間に電位差が生じる圧電性を持つことで、外部衝撃による両電極の内部短絡発生を防止して電気化学素子の安全性向上を図ること、及び、電池内のリチウムイオン伝導度が向上することは記載されていないし、審判請求書を精査してもそのような技術が甲第2号証に記載されているに等しいとは認められない。 (イ)してみると、相違点1'に係る、多孔性層が多孔性「活性」層であることについては、甲2発明とは文言上相違するし、審判請求書を精査しても、多孔性層が多孔性「活性」層である点が甲第2号証に記載されているに等しいとは認められない。 [相違点2'について] SBR(スチレンブタジエンゴム)の水滴接触角(水に対する接触角)は、甲第11号証に記載されているように、100°であり、一方、CMC(カルボキシメチルセルロース)の水滴接触角(水に対する接触角)は、甲第5号証に記載されているように、11?18°程度である。従って、SBRは、本件の第1バインダー高分子に相当し、CMC(カルボキシメチルセルロース)は、本件の第2バインダー高分子に相当することは明らかである。 よって、相違点2'は実質的なものではない。 [相違点3'について] 相違点3'に係る、「多孔性活性層の剥離力が、5gf/cm以上であり、前記有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率が、機械方向または直角方向で50%以下である」点は、甲2発明には文言上特定されていないし、審判請求書を精査しても、「多孔性活性層の剥離力が、5gf/cm以上であり、前記有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率が、機械方向または直角方向で50%以下である」点が甲第2号証に記載されているに等しいとは認められない。 なお、請求人は、審判請求書第19頁24行?第20頁4行、及び、回答書において、概略以下の主張を行っている。 「相違点2(「相違点3'」に相当)が実質的なものでない点については、審判請求書第19頁24行?第20頁4行で説明しております。この箇所の要点は次のとおりです。 甲第2号証には、多孔性活性層の剥離力、及び有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率について、明示の記載がない。しかしながら、本件明細書の趣旨からして、請求項1で規定される剥離力および熱収縮率は、請求項1の規定を満たす所定のバインダー高分子(第1バインダー高分子と第2バインダー高分子との混合物)を用いることで達成されるものである。甲第2号証には、請求項1の規定を満たす所定のバインダー高分子を用いた有機/無機複合分離膜が記載されており、構成上の差が無い。従って、請求項1で規定される剥離力および熱収縮率は、甲第2号証においても達成されていると認められる。 従って、相違点2(「相違点3'」に相当)は実質的なものではない。」 しかしながら、甲第2号証に開示されたセパレータが、必然的に、「多孔性活性層の剥離力が、5gf/cm以上であり、前記有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率が、機械方向または直角方向で50%以下である」といえる根拠は審判請求書には何ら記載されていないし、示唆もされていないことから、上記の請求人の主張を採用することができない。 上記の根拠を裏付ける証拠証拠を追加することは無効理由の要旨変更に相当するので、必要があれば、再度審判請求を検討されたい。 第7 甲第3号証を主引例とする無効理由について 1.本件特許発明1と甲3発明との対比 (ア)後者の「有無機複合多孔性セパレータ膜」が前者の「有機/無機複合分離膜」に相当する。 (イ)後者の「気孔部を有するポリオレフィン系のセパレータ膜基材」が前者の「多数の気孔を持つポリオレフィン系多孔性基材」に相当する。 (ウ)後者の「基材の表面に塗布され、多数の無機物粒子とバインダー高分子の混合物を高分子溶液に加えた混合物を塗布し乾燥して形成された気孔構造が形成された活性塗布層」が前者の「多孔性基材の少なくとも一面にコーティングされ、多数の無機物粒子とバインダー高分子との混合物で形成された多孔性活性層」に相当する。 (エ)後者の「有無機複合多孔性セパレータ膜を150℃の温度において1時間放置した後、熱収縮が全くみられない」態様と、 前者の「バインダー高分子が、 水滴接触角が70゜乃至140゜である第1バインダー高分子と、 水滴接触角が1゜乃至69゜である第2バインダー高分子との混合物であり、 前記多孔性活性層の剥離力が、5gf/cm以上であり、 前記有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率が、機械方向または直角方向で50%以下である」態様とは、 「有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率が、所定値以下である」との概念で共通する。 そうすると、両者は、 「有機/無機複合分離膜であって、 多数の気孔を持つポリオレフィン系多孔性基材と、 多孔性基材の少なくとも一面にコーティングされ、多数の無機物粒子とバインダー高分子との混合物で形成された多孔性活性層とを備えてなり 有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率が、所定値以下である 有機/無機複合分離膜。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点2''] 本件発明1では、バインダー高分子が、「水滴接触角が70゜乃至140゜である第1バインダー高分子と、水滴接触角が1゜乃至69゜である第2バインダー高分子との混合物」であるのに対し、甲3発明のバインダー高分子は、特定されていない点。 [相違点3''] 本件発明1では、バインダー高分子が、「多孔性活性層の剥離力が、5gf/cm以上であり、前記有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率が、機械方向または直角方向で50%以下であるである」のに対し、甲3発明のバインダー高分子は、有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率が、熱収縮が全くみられないが、剥離力、及び、熱収縮率が具体的には、特定されていない点。 2.同一性の主張についての当合議体の判断 [相違点2''について] 上記相違点2''について検討すると、甲第3号証には、バインダー高分子が、「水滴接触角が70゜乃至140゜である第1バインダー高分子と、水滴接触角が1゜乃至69゜である第2バインダー高分子との混合物」である点は記載されておらず、かつ、示唆もされていない。 [相違点3''について] 上記相違点3''について検討すると、甲第3号証には、「多孔性活性層の剥離力が、5gf/cm以上である」点は記載されておらず、かつ、示唆もされていない。 また、甲3発明のバインダー高分子は、「有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率が、熱収縮が全くみられない」ものであるが、本件特許発明1では「機械方向または直角方向」である点を特定しているが、甲3発明における熱収縮率はどの方向であるのかは何ら記載がない。 なお、請求人は、以下の点を主張している。 相違点1(「相違点2''」に相当)について、「甲第3号証には、本件明細書中において例示されている第1バインダー高分子および第2バインダー高分子の大半が記載されており、2種以上のバインダー高分子の混合物とすることも記載されている(指摘事項3イ)。従って、甲第3号証には、多孔性活性層のバインダー高分子として、水滴接触角が70゜乃至140゜である第1バインダー高分子と、水滴接触角が1゜乃至69゜である第2バインダー高分子との混合物が記載されており、上記相違点1は実質的なものではない。」と主張するが、上記指摘事項3イは、単に列記したのみであり、本件特許発明1のように親水性と疎水性のものを組み合わせた「水滴接触角が70゜乃至140゜である第1バインダー高分子と、水滴接触角が1゜乃至69゜である第2バインダー高分子との混合物」とすることが記載されていないので、上記の請求人の主張を採用することができない。 さらに、相違点2(「相違点3''」に相当)について、「甲第3号証には、多孔性活性層の剥離力が大きいことが記載されており(指摘事項3ソ)、甲第3号証に記載の有機/無機複合分離膜は、多孔性活性層の剥離力が10gf/cm以上であると推定される。従って、上記相違点2も実質的なものではない。」と主張するが、多孔性活性層の剥離力が10gf/cm以上であることが一般的な数値範囲であるのかは審判請求書には何ら記載も、示唆もなされていない。 3.容易性の主張についての当合議体の判断 [相違点2''について] 本件特許発明1において、バインダー高分子が、「水滴接触角が70゜乃至140゜である第1バインダー高分子と、水滴接触角が1゜乃至69゜である第2バインダー高分子との混合物」であることによる技術的な意義は、特許明細書の【0022】の「このように相異なる親水性を持つ第1バインダー高分子と第2バインダー高分子とをブレンド形態で使って高分子ブレンドの親水性を制御することで、有機/無機複合分離膜の熱的安定性改善に相乗効果を具現することができる。」と記載されているように、高分子ブレンドの親水性を制御することで、有機/無機複合分離膜の熱的安定性改善に相乗効果を具現するものであるといえる。 甲第1号証、及び、甲第2号証には組合わせの材料が他の証拠を参照すると、「水滴接触角が70゜乃至140゜である第1バインダー高分子と、水滴接触角が1゜乃至69゜である第2バインダー高分子との混合物」である組合わせの材料は記載されているが、甲第3号証には、高分子ブレンドの親水性を制御することで、有機/無機複合分離膜の熱的安定性改善に相乗効果を具現することは記載されていないし、審判請求書を精査しても、高分子ブレンドの親水性を制御することで、有機/無機複合分離膜の熱的安定性改善に相乗効果を具現する点が技術常識であることは記載も、示唆もされていない。 したがって、甲第3発明に、「水滴接触角が70゜乃至140゜である第1バインダー高分子と、水滴接触角が1゜乃至69゜である第2バインダー高分子との混合物」を採用することの動機づけがないので、相違点2''に係る相違点が当業者が容易に想到することができたとは認められない。 [相違点3''について] 上記相違点3''について検討すると、甲第3号証には、「多孔性活性層の剥離力が、5gf/cm以上である」点は記載されておらず、かつ、示唆もされていない。 また、甲3発明のバインダー高分子は、「有機/無機複合分離膜を150℃で1時間放置した後の熱収縮率が、熱収縮が全くみられない」ものであるが、本件特許発明1では「機械方向または直角方向」である点を特定しているが、甲3発明における熱収縮率はどの方向であるのかは何ら記載がない。 なお、請求人は、以下の点を主張している。 「相違点1(「相違点2''」に相当)に関する容易性について、甲第1号証および甲第2号証には、多孔性活性層のバインダー高分子として、水滴接触角が70゜乃至140゜である第1バインダー高分子と、水滴接触角が1゜乃至69゜である第2バインダー高分子との混合物が記載されており、甲第3号証において、甲第1号証または甲第2号証に記載された多孔性活性層のバインダー高分子を用いることは、当業者が容易に想到することである。また、甲第3号証の実施例2では、バインダー高分子として、本件の第1バインダー高分子に相当するPVdF-HFPを用いているが、これに加えて、甲第6号証に記載の本件の第2バインダー高分子に相当するCMC等(指摘事項6イ、6ウ)を用いることは当業者であれば容易に想到することである。多孔性活性層のバインダー高分子として、水滴接触角が70゜乃至140゜である第1バインダー高分子と、水滴接触角が1゜乃至69゜である第2バインダー高分子との混合物を用いることは当業者であれば容易に想到することであり、当業者が適宜なし得る程度の設計的変更に過ぎない。」と主張するが、甲第3号証には、高分子ブレンドの親水性を制御することで、有機/無機複合分離膜の熱的安定性改善に相乗効果を具現することは記載されていないし、審判請求書を精査しても、高分子ブレンドの親水性を制御することで、有機/無機複合分離膜の熱的安定性改善に相乗効果を具現する点が技術常識であることは記載も、示唆もされていないので、上記の請求人の主張を採用することができない。 「相違点2(「相違点3''」に相当)に関する容易性について、甲第3号証には、多孔性活性層の剥離力が大きいことが記載されており(指摘事項3ソ)、甲第3号証に記載の有機/無機複合分離膜は、多孔性活性層の剥離力が10gf/cm以上であると推定される。従って、上記相違点2は実質的なものではない。」と主張しているが、「甲第3号証に記載の有機/無機複合分離膜は、多孔性活性層の剥離力が10gf/cm以上であると推定される」根拠は何ら審判請求書には記載されていないので、上記の請求人の主張を採用することができない。 ケ まとめ 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明ではなく、また、甲各号証に記載された発明に基いて、当業者が本件特許発明1を容易に発明することができたとはいえない。そして、本件の請求項2?21に係る発明は、いずれも本件特許発明1の構成要件をすべて備える発明であるから、これら発明も、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明ではなく、また、甲各号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたとはいえない。 4 むすび 以上のとおり、請求項1?21に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証?甲第3号証に記載された発明ではなく、また、甲各号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえないから、請求人が主張する無効理由は、いずれも理由がない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-12-10 |
結審通知日 | 2012-12-12 |
審決日 | 2012-12-26 |
出願番号 | 特願2009-548167(P2009-548167) |
審決分類 |
P
1
113・
121-
Y
(B32B)
P 1 113・ 113- Y (B32B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 冨士 美香 |
特許庁審判長 |
仁木 浩 |
特許庁審判官 |
▲高▼辻 将人 熊倉 強 |
登録日 | 2011-10-21 |
登録番号 | 特許第4846849号(P4846849) |
発明の名称 | 多孔性活性層がコーティングされた有機/無機複合分離膜及びこれを備えた電気化学素子 |
代理人 | 堅田 健史 |
代理人 | 伊藤 克博 |
代理人 | 小野 暁子 |
代理人 | 宮嶋 学 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 柏 延之 |