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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A62B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A62B
管理番号 1270373
審判番号 不服2011-23615  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-02 
確定日 2013-02-20 
事件の表示 特願2008-506567「長さ調節可能なホースを有する給気レスピレータ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月26日国際公開、WO2006/113203、平成20年10月 2日国内公表、特表2008-537902〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2006年4月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年4月15日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成19年10月12日付けで国内書面が提出され、平成21年3月25日付けで手続補正書が提出され、平成23年1月14日付けで拒絶理由通知がなされ、平成23年4月18日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年6月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年11月2日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、当審において平成24年1月20日付けで書面による審尋がなされ、これに対し、平成24年6月22日付けで回答書が提出されたものである。

第2. 平成23年11月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年11月2日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.本件補正
(1)本件補正の内容
平成23年11月2日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成23年4月18日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲である下記(a.)を、下記(b.)に補正するものである。

(a.)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
給気レスピレータであって、
(a)該給気レスピレータのユーザーによって携行されるように設計された清浄空気供給源、
(b)少なくとも該ユーザーの鼻及び口を覆ってフィットする大きさに作られた面体、及び
(c)清浄空気を該ユーザーに供給するために該清浄空気供給源から該面体に延びる長さ調節可能なホースであって、軸方向に加えられた張力がなくなれば自然に延びた状態の長さに戻るホース、を含む、給気レスピレータ。
【請求項2】
上記長さ調節可能なホースが、第1スリーブと管とを包含し、該第1スリーブは、該管を覆って配置され、且つ第1及び第2端部を有し、その際、該第1端部は、該管の該第1端部と係合し、該第2スリーブ端部は、該管を該第1スリーブ端部から離れた位置で握持する、請求項1に記載の給気レスピレータ。
【請求項3】
給気レスピレータであって、
(a)該給気レスピレータのユーザーによって携行されるように適合された清浄空気供給源、
(b)少なくとも該ユーザーの鼻及び口を覆ってフィットする大きさに作られた面体、
(c)該清浄空気供給源から該面体に延びるホース、及び
(d)軸方向に加えられた張力がなくなれば自然に延びた状態の長さに戻るよう該ホースの長さを調節するための手段、を含む、給気レスピレータ。
【請求項4】
上記ホースの上記長さを調節するための手段が、上記面体又は上記清浄空気供給源に取り付けられている、請求項3に記載の給気レスピレータ。」

(b.)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
給気レスピレータであって、
(a)該給気レスピレータのユーザーによって携行されるように設計された清浄空気供給源、
(b)少なくとも該ユーザーの鼻及び口を覆ってフィットする大きさに作られた面体、及び
(c)清浄空気を該ユーザーに供給するために該清浄空気供給源から該面体に延びる長さ調節可能なホースであって、
該ホースの伸縮を制限する手段を備えておらず、張力が加えられたときに伸びることができ、軸方向に加えられた張力がなくなれば自然に延びた状態の長さに戻るホース、を含む、給気レスピレータ。
【請求項2】
上記長さ調節可能なホースが、第1スリーブと管とを包含し、該第1スリーブは、該管を覆って配置され、且つ第1及び第2端部を有し、その際、該第1端部は、該管の該第1端部と係合し、該第2スリーブ端部は、該管を該第1スリーブ端部から離れた位置で握持する、請求項1に記載の給気レスピレータ。
【請求項3】
給気レスピレータであって、
(a)該給気レスピレータのユーザーによって携行されるように適合された清浄空気供給源、
(b)少なくとも該ユーザーの鼻及び口を覆ってフィットする大きさに作られた面体、
(c)該清浄空気供給源から該面体に延びるホース、及び
(d)該ホースの伸縮に制限を加えることなく、軸方向に張力が加えられたときに伸び、軸方向に加えられた張力がなくなれば自然に延びた状態の長さに戻るよう該ホースの長さを調節するための手段、を含む、給気レスピレータ。
【請求項4】
上記ホースの上記長さを調節するための手段が、上記面体又は上記清浄空気供給源に取り付けられている、請求項3に記載の給気レスピレータ。」
なお、下線は審判請求人が補正箇所を明確化するために付したものである。

(2)本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲に関して、本件補正前の請求項1及び3における発明特定事項である「ホース」に、本件補正後では「該ホースの伸縮を制限する手段を備えておらず、張力が加えられたときに伸びることができ、 」を、「該ホースの伸縮に制限を加えることなく、軸方向に張力が加えられたときに伸び、 」を、各々付加することで限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項によって特定された発明(以下、「本願補正発明」という)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2.引用文献に記載された発明
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第2999497号明細書(以下、「引用文献」という。)には、例えば、以下の記載がある。

ア.「This invention relates to the flexible hoses of breathing apparatus, and more particularly to means for limiting their stretching.
With the advent of jet aircraft and the resulting requirement for emergency bailouts at exceedingly high wind velocities, there has been established a need for an oxygen, mask breathing tube or hose that will not stretch very far during bailout. Such a hose must be flexible or elastic enough to permit the pilot to move his head up and down and from side to side when the mask is on his face. ・・・(中略)・・・
It is among the objects of this invention to provide in breathing apparatus an elastic hose that is prevented from stretching excessively beyond normal dimensions, and that is provided with a shock absorber to prevent undesirable snapping action as the stretching hose is restrained. Another object is to provide a hose stretch controller and shock absorbing device that can readily be applied to existing breathing apparatus.」(明細書第1ページ第1欄第9ないし48行)
〈当審仮訳〉
「本発明は、呼吸装置の可撓ホースに関係し、より具体的にはその伸張を制限する手段に関係する。
ジェット機の登場および超高風速における緊急脱出の必要性に伴い、その結果として脱出中にあまり長く伸びない酸素マスク呼吸チューブまたはホースの必要性が定着している。このようなホースは十分にしなやかでまたは伸縮自在であり、マスクを着用しているパイロットの頭の上下、左右の動きを可能にしなければならない。現在使用されている標準環状波形ゴム呼吸チューブは、容易にこの要求条件を満たし、通常の使用条件の下では全面的に満足できる。しかし、時速300マイルを超える速度で脱出が必要な場合、問題が生ずる。現在、平均脱出速度は、時速500マイルをかなり超えている。パイロットが自分の飛行機から緊急脱出したときに遭遇する高速空気流の突風の下で、ホースの伸張はその自由長の500パーセントにも達する。これは、いくつかの危険な状況をもたらすことがある。したがって、空気流の中でバタバタするホースが、着用者の顔からマスクをむしり取る可能性がある。高高度においては、これは、パイロットが生命を維持するために十分な酸素が存在する高度に降下する前に、酸素の欠乏によりパイロットが死亡することがある。あるいは、バタバタするホースがパイロットに固定されている酸素ボンベから外れる可能性がある。これは酸素の供給を断つのみならず、ホースがホイッピング・ホースの自由端の相当に重い金属連結装置でパイロットに打撃を与えるので重傷または死亡をもたらすことがある。もう1つの危険は、バタバタするホース自身がパイロットの重傷またはパイロットの着装しているその他の装備に破滅的な被害を引き起こすかもしれないことである。
通常の寸法を超えて過度に伸びず、かつ、伸びるホースが抑制されるときの望ましくない折損作用を防止する衝撃吸収材を備えたしなやかなホースを呼吸装置に設けることが本発明の1つの目的である。もう1つの目的は、既存呼吸装置に容易に適用できるホース伸張制御器具および衝撃吸収材を提供することである。」

イ.「Referring to FIGS. 1 and 2 of the drawing, a conventional oxygen breathing mask 1 may be a half mask as shown or a full mask. The lower part of the mask is provided with a downwardly inclined inlet passage defined by a cylindrical flange 2. Encircling this flange is the upper end of a conventional corrugated rubber breathing hose 3, the lower end of which is secured to a connector 4 that can be detachably connected to an aircraft oxygen system or to an oxygen bottle 5 strapped to the body of the pilot. If it becomes necessary for the pilot to bail out, he first makes sure that the connector is inserted in the neck of the oxygen bottle so that he will have oxygen in his descent by parachute through the rare atmosphere. The flexibility of the hose will permit its normal stretching without restraint as the pilot moves his head about. 」(明細書第1ページ第2欄第3ないし18行)
〈当審仮訳〉
「図1および2を参照する。従来の酸素吸入マスク1は、図示のようなハーフマスクまたはフルマスクである。マスクの下の部分に下方向に傾けられた入口通路(円筒フランジ2により画定されている)が設けられている。このフランジの周りを囲んでいるのは、従来の波形ゴム呼吸ホース3の上端である。このホースの下端は、航空機酸素システムまたはパイロットの身体にくくりつけられる酸素ボンベ5に脱着可能なように接続できる連結装置4に固定されている。パイロットは脱出する必要が生じた場合、先ず、希薄大気中をパラシュートで降下中に酸素を吸入できるように連結装置が酸素ボトルの首部に挿入されていることを確認する。ホースの可撓性は、パイロットが頭を動かすときにホースの通常の伸縮を制限なく許容する。」

ウ.「If the pilot has to bail out, the pressure of the air blast against the hose can stretch it until it pulls the cord 7 taut, whereupon the hose will be restrained. To avoid the severe and possibly dangerous snap or jerk that otherwise might occur when the cord is pulled taut, another feature of this invention is that the restraining cord likewise can stretch to a limited extent when the pressure of the hose against it exceeds a predetermined value. ・・・(中略)・・・ Of course, during this stretching of the cord, the hose stretches further a corresponding amount, but such additional abnormal stretching is very small compared with what would occur if the control cord were not used.」(明細書第1ページ第2欄第50行ないし第2ページ第3欄第11行)
〈当審仮訳〉
「パイロットが脱出しなければならない場合、ホースに対する突風の圧力は、ホースがコード7をピンと張るまでホースを伸ばすことができるが、この場合すぐにホースは抑制される。コードがピンと張られたときに、本発明によらなければ発生する可能性のある重大で、時には危険なスナップまたはジャークを回避するために、本発明は、抑制コードに対するホースの圧力が所定の値を超えたときに、抑制コードが同様に限定された程度まで伸張できるというもう1つの特徴をもっている。しかし、このコードは可撓性をもたず、永久的に伸張する材料から製造されているので、それを伸ばすために必要なエネルギーを吸収し、そのエネルギーを放出しない。したがって、このコードは、ファイバーまたは固体押し出しコードの形態の引き伸ばされていない合成プラスチック材料から製造されている。この材料は回復することなく伸張可能であり、ほとんど伸び始めるとすぐにその弾性限界に達する。この材料のもう1つの特質は、単位断面積あたりの引っ張り強さが弾性限界に達した後に、従来の材料のように減少する代わりに増加することである。ポリ塩化ビニリデンなどのビニル化合物の一定のポリアミドおよびポリマーがこの目的に適している。かかるポリマーの特性は、それらが長連鎖分子を含み、それらの結晶の一部がランダムに配置されている結晶性構造をもっていることである。コードが伸ばされたとき、その分子がお互いに平行な関係に引き伸ばされるので、コードは狭まる。伸張しながら、それは相当な量のエネルギーを吸収し、引き伸ばす力が除去されたときにそれは跳ね返ったり、元どおりになったりしないので、それは真の衝撃吸収材の役割を果たす。もちろん、このコードの伸張中、ホースはさらに対応する長さだけ伸びるが、かかる付加的な異常伸張は、制御コードが使用されなかった場合に伸びる長さと比較すると非常に短い。」

エ.「 1. In breathing apparatus, the combination with an axially elastic hose having its opposite ends secured to a mask and oxygen supply connector, of a stretch controller comprising a slack flexible cord extending through the hose, and means anchoring the ends of the cord at the mask and connector, said cord between said means being only enough longer than the length of the hose between the mask and connector to permit unrestrained normal stretching of the hose, and the cord being made from undrawn permanently-stretchable material,whereby when excessive tension is applied to the hose said cord will be elongated permanently a limited amount as the hose stretches a corresponding abnormal amount, the elongating cord absorbing energy and thereby serving as a shock absorber.
・・・(中略)・・・
3. In combination with a face mask and oxygen tank as used by jet pilots, a flexible rubber bellows type tubing attached at one end to an inlet pipe of the face mask and at the other end to an outlet pipe of the oxygen tank, said tubing having a nylon filament therein of small diameter relative to the diameter of the tubing, said inlet pipe and said outlet pipe each having a pin positioned across the inside thereof, said filament having a length approximately equal to the distance between the two pins when the bellows tubing is at normal length in a straight line, one end of the tubing being clamped to the exterior of the inlet pipe, one end of said filament being looped around the pin inside the inlet pipe and secured thereto, the other end of the tubing being clamped to the exterior of the outlet pipe, and the corresponding end of said filament being looped around the pin inside the outlet pipe and secured thereto, whereby the filament and tubing are separately attached directly to the face mask and oxygen tank and extreme flexibility of the bellows tubing is maintained but elongation to the breaking point is prevented by the filament. 」(明細書第2ページ第3欄第25行ないし第4欄第7行)
〈当審仮訳〉
「1. 呼吸装置における、マスクおよび酸素供給連結装置に固定された両端をもつ軸方向にしなやかなホースとこのホースの中に伸びる弛緩可撓コードを具備する伸張制御器具の組み合わせ及び前記コードの両端を前記マスクおよび前記連結装置に固定する手段であって、前記手段間の前記コードは前記ホースの自由な通常の伸張を許容するのに十分なだけ前記マスクと前記連結装置間の前記ホースの長さより長く、また、前記コードは引き伸ばされていない永久的に伸張可能な材料から製造されており、それがために過度の張力が前記ホースに加わった場合に前記ホースが対応する異常な長さだけ伸びたときに前記コードは一定限度の長さだけ永久的に伸び、したがって、伸びるこのコードがエネルギーを吸収し、それにより衝撃吸収材として働くことを特徴とするもの。
2. 前記コードは結晶の少なくとも一部がランダムに配置されている長連鎖結晶性ポリマーから製造される請求項1に記載した呼吸装置。
3. ジェットパイロットにより使用されるフェイスマスクおよび酸素タンクとの組み合わせにおける、一端において前記フェイスマスクの入口パイプに取り付けられ、他端において前記酸素タンクの出口パイプに取り付けられる可撓ゴム蛇腹型管であって、前記管がその中にその管の直径より細い直径のナイロン線条を含み、前記入口パイプおよび前記出口パイプがそれぞれその内部をよぎって配置されるピンを具備し、前記蛇腹管が直線上で平常の長さを呈しているときに前記線条が前記の2つのピン間の距離にほぼ等しい長さをもち、前記管の一端が前記入口パイプの外部に固定され、前記線条の一端が前記入口パイプ内の前記ピンの周りに巻き付けられ、かつ、そこに固定され、前記管の他端が前記出口パイプの外部に固定され、また、前記線条の対応する端部が前記出口パイプの内側の前記ピンの周りに巻き付けられ、かつ、そこに固定されており、したがって前記線条および前記管が別々に前記フェイスマスクおよび前記酸素タンクに直接取り付けられており、かつ、前記蛇腹管の極限可撓性は維持されるが、しかし破壊点までの伸張は前記線条により防止されることを特徴とする可撓ゴム蛇腹型管。」

(2)引用文献に記載された発明
上記(1)ア.ないしエ.及び図面の記載を参酌すると、引用文献には以下の事項が記載されていることが分かる。

オ.上記(1)イ.における「パイロットの身体にくくりつけられる酸素ボンベ5」との記載から、パイロットによって携行されるように設計された酸素ボンベ5があることが分かる。

カ.少なくともパイロットの鼻及び口を覆ってフィットする大きさに作られたフルマスクと、酸素をパイロットに供給するために酸素ボンベ5からフルマスクに延びるホースがあることが分かる。

キ.ホースは伸縮自在であり、張力が加えられたときに伸びることができる呼吸装置であることが分かる。

上記(1)ア.ないしエ.及びオ.ないしキの記載並びに図面の記載を参酌すると、引用文献には、以下の発明(以下、「引用文献に記載された発明」という。)が記載されているといえる。
「呼吸装置であって、
(a)該呼吸装置のパイロットによって携行されるように設計された酸素ボンベ5、
(b)少なくとも該パイロットの鼻及び口を覆ってフィットする大きさに作られたフルマスク、及び
(c)酸素を該パイロットに供給するために該酸素ボンベ5から該フルマスクに延びるホースであって、
張力が加えられたときに伸びることができるホースを含む、呼吸装置。」

3.対比
本願補正発明と引用文献に記載された発明とを対比すると、引用文献に記載された発明における「呼吸装置」は、その技術的意義からみて本願補正発明における「給気レスピレータ」に相当し、以下、「フルマスク」は「面体」に、「パイロット」は「ユーザー」に各々相当し、「酸素ボンベ5」は「清浄空気供給源」に「酸素供給源」である限りにおいて相当し、「酸素」は「清浄空気」に「酸素を含むガス」である限りにおいて相当することから、本願補正発明と引用文献に記載された発明とは、
「 給気レスピレータであって、
(a)該給気レスピレータのユーザーによって携行されるように設計された酸素供給源、
(b)少なくとも該ユーザーの鼻及び口を覆ってフィットする大きさに作られた面体、及び
(c)酸素を含むガスを該ユーザーに供給するために該酸素供給源から該面体に延びるホースであって、
張力が加えられたときに伸びることができるホース、を含む、給気レスピレータ。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点〉
(1)「酸素を含むガス」を供給する「酸素供給源」に関して、本願補正発明においては「清浄空気」を供給する「清浄空気供給源」であるのに対して、引用文献に記載された発明においては「酸素」を供給する「酸素ボンベ」である点(以下、「相違点1」という。)

(2)「ホース」に関して、本願補正発明においては「長さ調節可能」で、「ホースの伸縮を制限する手段を備えておらず」、「軸方向に加えられた張力がなくなれば自然に延びた状態の長さに戻る」のに対して、引用文献に記載された発明においては、上記の点を有しているのかどうか明確ではない点(以下、「相違点2」という。)

4.判断
相違点について検討する。
(1)相違点1について、
給気レスピレータなどの呼吸装置において、酸素を供給するにあたって酸素のみ用いるか、清浄空気を用いるかは、例えば、実願平4-11924号(実開平5-62268号)のCD-ROMにも開示されているように、当業者が必要に応じて適宜選択し得るものであって、当該選択に応じて相違点1に係る本願補正発明のように特定することは当業者が容易に推考し得るものである。

(2)相違点2について
給気レスピレータなどの呼吸装置におけるホースにおいて、ホースの長さを調節可能にしたものは周知(例えば、前審の拒絶理由通知で挙げた西独国特許第882185号明細書参照、以下、「周知技術1」という。)であり、また、軸方向に加えられた張力がなくなれば自然に延びた状態の長さに戻るホース自体も周知(例えば、上記実願平4-11924号(実開平5-62268号)のCD-ROM、登録実用新案公報第3057104号参照、以下、「周知技術2」という。)であり、相違点2に係る本願補正発明のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用文献に記載された発明、周知技術1及び周知技術2から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用文献に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.手続の経緯及び本願発明
平成23年11月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成23年4月18日付けの手続書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記第2.の〔理由〕1.(1)の(a.)に記載したとおりのものである。

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2.の〔理由〕2.のとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.の〔理由〕1.(2)で検討したように、本願補正発明から「該ホースの伸縮を制限する手段を備えておらず、張力が加えられたときに伸びることができ、 」の限定事項に係る発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2.の〔理由〕2.ないし4.に記載したとおり、引用文献に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

なお、請求人は平成24年6月22日付けの回答書において、補正案を提出しているものの、上記補正案を検討しても、結論においてかわらないものである。
 
審理終結日 2012-09-18 
結審通知日 2012-09-25 
審決日 2012-10-10 
出願番号 特願2008-506567(P2008-506567)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A62B)
P 1 8・ 121- Z (A62B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小原 一郎大山 健  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 柳田 利夫
藤原 直欣
発明の名称 長さ調節可能なホースを有する給気レスピレータ  
代理人 田中 光雄  
代理人 山田 卓二  

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