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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) B42F
管理番号 1271037
判定請求番号 判定2012-600045  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2013-04-26 
種別 判定 
判定請求日 2012-11-09 
確定日 2013-02-25 
事件の表示 上記当事者間の特許第4236554号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「綴じ具」は、特許第4236554号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の請求の主旨は、イ号図面並びにその説明書に示す綴じ具(以下「イ号物件」)は、特許第4236554号発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。

第2 本件特許発明
本件判定請求では、請求人は本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)についての判定を求めており、本件特許発明の構成、目的及び効果は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて以下のとおりである。

1 本件特許発明の構成
本件特許発明を分説すると次のようになる(以下「構成要件(A)」などという。)。
(A)(a)ベースと、
(b)当該ベースとの間に紙葉類を押さえた状態で綴じ込み可能な押さえ部と、
(c)当該押さえ部を綴じ込み状態と非綴じ込み状態との間で操作可能な操作部と、
(d)前記綴じ込み状態において前記操作部の移動を規制するロック機構とを具備してなり、
(e)前記操作部に対する所定の操作力により前記ロック機構をロック状態と非ロック状態との間で操作可能に構成したものであって、
(B)前記操作部が、前記ベースに対して回動可能に設けられた操作部本体と、当該操作部本体の軸心と平行な軸心を中心に回動し得るように操作部本体に片持ち的に支持され、前記ロック状態を解除して前記非ロック状態に操作可能なロック解除部とを備えたものであり、
(C)前記ロック機構が、前記ロック解除部に設けた第1係合部と、前記ベースに設けられ前記ロック状態において前記第1係合部に係合し得る第2係合部とを備えてなり、
(D)前記ロック解除部を押し込む方向のみに与えられた操作力に基づいて前記ロック解除部が回動し、それに伴って前記第1係合部が回転面内から外れることなく前記第1係合部の前記第2係合部に対する相対位置が変位することにより、前記第1係合部と前記第2係合部との係合が解除され前記非ロック状態になるように構成している
(E)ことを特徴とする綴じ具。

2 本件特許発明の目的及び効果
明細書の記載によれば、本件特許発明は、「簡単な操作によってロック状態を解除することができるともに、安定かつ良好な操作感を得ることが可能な綴じ具、及びその綴じ具が適用されるファイルを提供すること」(段落【0008】)を目的とし、「ロック解除部を一方向に押し込むという簡単な操作によってロック状態を解除することが可能であるだけでなく、ロック機構の一部を構成する第1係合部がロック解除操作時に回転面内でのみ移動するように設定しているため、第1係合部のより安定した動作を実現し、ロック解除の操作がスムーズになり、操作の簡便性を有効に図ることができる。また、ロック解除部が操作部本体に対して操作部本体の軸心と平行な軸心を中心に回動可能に設けられているため、直感的に把握し得るロック解除操作時に付与する操作力の方向と、実際に付与する操作力の方向が同一となり、使い勝手に優れたものとなる。さらに、ロック機構が、第1係合部と第2係合部とから構成しているため、操作部に例えば上下方向のスライド動作を左右方向へのスライド動作に変換するカム等の比較的構造が複雑な変換部を設ける必要がなく、簡素な構造を用いることができ、製作工程の簡素化、コストの削減に資する。」(段落【0019】) という効果を奏するものである。

第3 イ号物件
請求人が提出したイ号図面及びその説明書によれば、イ号物件の構成を本件特許発明の構成の分説と対応するように分説すると、次のとおりのものと認められる(以下「構成(A’)」などという。)。
(A’)(a)ベース22と、
(b)当該ベース22との間に紙葉類Sを押さえた状態で綴じ込み可能な押さえ部70と、
(c)当該押さえ部70を綴じ込み状態と非綴じ込み状態との間で操作可能な操作部60と、
(d)前記綴じ込み状態において前記操作部60の移動を規制するロック機構28とを具備してなり、
(e)前記操作部60に対する所定の操作力により前記ロック機構28をロック状態に操作可能に構成したものであって、
(B’)前記操作部60が、前記ベース22に対して回動可能に設けられた操作部本体60a、60b、60c、60dと、
(C’)前記ロック機構28が、操作部本体の軸心と平行な軸心を中心に回動し得るようにベース22に片持ち的に支持され、前記ロック状態を解除して前記非ロック状態に操作可能なロック解除部とを備えたものであり、前記操作部本体60a、60b、60c、60dに設けた第1係合部68と、前記ベース22に支持されたロック機構28に設けられ前記ロック状態において前記第1係合部68に係合し得る第2係合部102とを備えてなり、
(D’)前記ロック機構(ロック解除部)28を押し込む方向のみに与えられた操作力に基づいて前記ロック機構(ロック解除部)28が回動し、それに伴って前記第2係合部102が回転面内から外れることなく前記第2係合部102の前記第1係合部68に対する相対位置が変位することにより、前記第2係合部102と前記第1係合部68との係合が解除され前記非ロック状態になるように構成している、
(E’)綴じ具。
なお、請求人は、上記構成(D’)において、「ロック機構(ロック解除部)28を押す又は引っ張る方向及び押し込む方向に与えられた操作力に基づいて前記ロック機構(ロック解除部)28が回動し」と特定したが、イ号物件は、ロック機構(ロック解除部)28を押し込む方向に与えられた操作力のみに基づいてロック機構(ロック解除部)28が回動しているものが開示されているのみ(イ号図面の図3D参照。)であって、ロック機構(ロック解除部)28を押す又は引っ張る方向に与えられた操作力に基づいて前記ロック機構(ロック解除部)28が回動しているものは開示されていないから、上記構成(D’)のとおり認定した。

第4 対比・判断
1 本件特許発明とイ号物件の各構成要件との対比・判断
(1)構成要件(A)(a)について
イ号物件の「ベース22」は、その構造、機能、作用からみて、本件特許発明の「ベース」に相当する。
したがって、構成(A’)(a)は構成要件(A)(a)を充足する。

(2)構成要件(A)(b)について
イ号物件の「紙葉類S」及び「押さえ部70」は、その構造、機能、作用からみて、それぞれ本件特許発明の「紙葉類」及び「押さえ部」に相当する。
したがって、構成(A’)(b)は構成要件(A)(b)を充足する。

(3)構成要件(A)(c)について
イ号物件の「操作部60」は、その構造、機能、作用からみて、本件特許発明の「操作部」に相当する。
したがって、構成(A’)(c)は構成要件(A)(c)を充足する。

(4)構成要件(A)(d)について
イ号物件の「ロック機構28」は、その構造、機能、作用からみて、本件特許発明の「ロック機構」に相当する。
したがって、構成(A’)(d)は構成要件(A)(d)を充足する。

(5)構成要件(A)(e)について
イ号物件の「操作部本体」及び「ロック解除部」は、その構造、機能、作用からみて、それぞれ本件特許発明の「操作部本体60a、60b、60c、60d」及び「ロック機構(ロック解除部)28」に相当する。
本件特許発明は、構成要件(A)(e)に特定されたとおり、操作部に対する所定の操作力によりロック機構をロック状態と非ロック状態との間で操作可能に構成したものである。
一方、イ号物件は、構成(A’)(e)に特定されたとおり、操作部60に対する所定の操作力によりロック機構28をロック状態に操作可能に構成したものであり、また下記(6)のとおり、構成(B’)において、操作部60は操作部本体60a、60b、60c、60dを備えるものと特定されている。しかしながら、下記(7)のとおり、構成(C’)において、ロック状態を解除して非ロック状態に操作可能なロック解除部であるロック機構28は、ベース22に支持されている(取り付けられている)と特定されているものであって、操作部60に備えられたものではなく、操作部60に対する所定の操作力によりロック機構28を非ロック状態に操作可能に構成しているとはいえない。
したがって、構成(A’)(e)は構成要件(A)(e)を充足しない。

(6)構成要件(B)について
本件特許発明は、構成要件(B)に特定されたとおり、操作部が、ベースに対して回動可能に設けられた操作部本体と、当該操作部本体の軸心と平行な軸心を中心に回動し得るように操作部本体に片持ち的に支持され、ロック状態を解除して非ロック状態に操作可能なロック解除部とを備えたものである。
一方、イ号物件の操作部60は、構成(B’)に特定されたとおり、操作部本体60a、60b、60c、60dを備えるものと特定されている。しかしながら、下記(7)のとおり、構成(C’)において、ロック状態を解除して非ロック状態に操作可能なロック解除部であるロック機構28は、ベース22に支持されている(取り付けられている)と特定されているものであって、操作部60に備えられたものではない。
したがって、構成(B’)は構成要件(B)を充足しない。

(7)構成要件(C)について
本件特許発明は、構成要件(C)に特定されたとおり、第1係合部はロック解除部に設けられ、第2係合部はベースに設けられて、ロック状態において前記第1係合部に係合し得るものである。
一方、イ号物件は、構成(C’)に特定されたとおり、第1係合部68は操作部本体60a、60b、60c、60dに設けられ、第2係合部102はロック機構(ロック解除部)28に設けられて、ロック状態において前記第1係合部68に係合し得るものである。
してみると、イ号物件の「第1係合部68」は、操作部本体60a、60b、60c、60dに設けられたものであって、本件特許発明のロック解除部に設けた「第1係合部」及びベースに設けられた「第2係合部」とは、その設置された位置が異なるものである。
したがって、構成(C’)は構成要件(C)を充足しない。

(8)構成要件(D)について
本件特許発明は、構成要件(D)に特定されたとおり、第1係合部は、ロック解除部の回動に伴って回転面内から外れることなく第2係合部に対する相対位置が変位するものであって、これにより、第1係合部と第2係合部との係合が解除され非ロック状態になるように構成している。
一方、イ号物件の第2係合部102は、構成(D’)に特定されたとおり、ロック機構(ロック解除部)28の回動に伴って回転面内から外れることなく第1係合部68に対する相対位置が変位するものであって、これにより、第2係合部102と第1係合部68との係合が解除され非ロック状態になるように構成しているものである。
してみると、イ号物件の「第2係合部102」は、本件特許発明の「第1係合部」に相当する。そして、イ号物件の「第1係合部68」は、第2係合部102との係合が解除され非ロック状態になるように構成しているものであるから、係る点において、本件特許発明の「第2係合部」に相当する。
したがって、構成(D’)は構成要件(D)を充足する。

(9)構成要件(E)について
イ号物件の「綴じ具」は、その構造、機能、作用からみて、本件特許発明の「綴じ具」に相当する。
したがって、構成(E’)は構成要件(E)を充足する。

2 まとめ
上記(1)?(9)に示すように、イ号物件は本件特許発明の構成要件(A)(a)?(A)(d)、(D)及び(E)は充足するものの、本件特許発明の構成要件(A)(e)、(B)及び(C)を充足するものとすることはできない。

3 均等について
均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するための条件は、最高裁判所により以下のとおり判示されている。
「特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、1)上記部分が特許発明の本質的部分ではなく、2)上記部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、3)上記のように置き換えることに、当業者が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、4)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、5)対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、上記対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属する。」
そして、特許発明の本質的部分については以下のとおり判示されている。
「特許発明の本質的部分とは、特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうちで、当該特許発明特有の課題解決手段を基礎づける特徴的な部分、言い換えれば、上記部分が他の構成に置き換えられるならば、全体として当該特許発明の技術的思想とは別個のものと評価されるような部分をいうものと解される。
そして、本質的部分に当たるかどうかを判断するに当たっては、特許発明を特許出願時における先行技術と対比して課題の解決手段における特徴的原理を確定した上で、対象製品の備える解決手段が特許発明における解決手段の原理と実質的に同一の原理に属するものか、それともこれとは異なる原理に属するものかという点から判断すべきものである。」
上記判示事項に沿って検討すると、本件特許発明と本件特許公報の参考文献記載の技術(特許出願時における先行技術)と対比すると、本件特許発明は、少なくとも「操作部本体の軸心と平行な軸心を中心に回動し得るように操作部本体に片持ち的に支持され」た「ロック解除部」を備えた点で上記参考文献記載の技術と相違する新規なものであって、つまり課題の解決手段における特徴的原理の一つといえるから、本件特許発明の本質的部分は、少なくとも構成要件(B)にある。
そして、上記「1(6)構成要件(B)について」のとおり、イ号物件は、構成要件Bを充足しない。
したがって、本件特許発明の本質的部分がイ号物件と異なっており、つまり本件特許発明は特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分があり、その異なる部分が特許発明の本質的部分であるから、上記判示事項の1)を満たしていない。
したがって、上記判示事項の2)?5)を検討するまでもなく、イ号物件は、本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するとすることはできない。

なお、被請求人に対し、本件判定請求書副本及び手続補正書を送付すると共に、答弁があれば提出するように求めたが、答弁書は提出されなかった。

第5 むすび
したがって、イ号物件は、本件特許発明の技術範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2013-02-15 
出願番号 特願2003-352694(P2003-352694)
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (B42F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 砂川 充  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 鈴木 秀幹
東 治企
登録日 2008-12-26 
登録番号 特許第4236554号(P4236554)
発明の名称 綴じ具、及びファイル  
代理人 岡田 全啓  
代理人 扇谷 一  
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