• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) B42F
管理番号 1271038
判定請求番号 判定2012-600046  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2013-04-26 
種別 判定 
判定請求日 2012-11-09 
確定日 2013-02-25 
事件の表示 上記当事者間の特許第4288861号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「綴じ具」は、特許第4288861号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の請求の主旨は、イ号図面並びにその説明書に示す綴じ具(以下「イ号物件」)は、特許第4288861号発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。

第2 本件特許発明
本件判定請求では、請求人は本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)についての判定を求めており、本件特許発明の構成、目的及び効果は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて以下のとおりである。

1 本件特許発明の構成
本件特許発明を分説すると次のようになる(以下「構成要件(A)」などという。)。
(A)(a)ベースに一端側が支持されて他端を自由端として移動可能に設けられた操作部材と、
(b)当該操作部材の移動によって前記ベースに対して離間接近可能に設けられた押え部材と、
(c)この押え部材と前記操作部材との間に設けられたばね部材と、
(d)前記押え部材が綴じ込み位置に設定されたときに前記操作部材をロックするロック手段とを備えた綴じ具において、
(B)前記操作部材は第1及び第2の操作領域を備え、
(C)前記第1の操作領域を所定方向に操作したときに前記操作部材をロックして押え部材を綴じ込み位置に保つ一方、
(D)前記第2の操作領域を前記所定方向に操作したときに前記ロックを解除して押え部材をベースから離間可能としたことを特徴とする
(E)綴じ具。

2 本件特許発明の目的及び効果
明細書の記載によれば、本件特許発明は、「一方向に向けられた力を操作部材に加えるだけで当該操作部材のロックと、その解除とを可能とした綴じ具を提供すること」(段落【0009】)を目的とし、「操作部材に付与する力の方向、若しくは、操作部材の回転方向に沿う軌跡を変えることなくロック及びロック解除を可能としたことで極めて簡便な操作感を得ることのできる綴じ具を提供することができる。特に、操作部材に第1及び第2の操作領域を設けるとともに、第2の操作領域を第1の操作領域に対する操作方向と同様にしてロックを解除を可能とした構成によれば、第2の操作領域を単に操作するだけでロック解除が可能な簡便性を得ることができる。つまり、従来のように操作部材に対して押圧力の付与と水平方向に移動させる力の付与とを同時に働かせる必要性がなくなるため、操作部材に対する操作力を確実に付与することができる。しかも、操作部材にねじれ等の変形がもたらされることも解消することが可能となる」(段落【0071】)という効果を奏するものである。

第3 イ号物件
請求人が提出したイ号図面及びその説明書によれば、イ号物件の構成を本件特許発明の構成の分説と対応するように分説すると、次のとおりのものと認められる(以下「構成(A’)」などという。)。
(A’)(a)押え部材70が、被綴じ物を押圧するロック状態とロックを解除するロック解除状態とに移動するように操作するために、ベース22に一端側が支持されて他端を自由端として設けられた操作部材60と、
(b)前記操作部材60の移動によって前記ベース22に対して離間接近可能に設けられ、被綴じ物を押圧して保持する押圧部76を有する、押え部材70と、
(c)押え部材70と操作部材60との間に設けられて、前記押え部材70をロックされた状態に付勢するばね部材50と、
(d)前記押え部材70を操作部材60の第1の操作領域の操作により、ロックされた状態において前記操作部材60に係合し、かつ、前記ロックを解除するロック解除状態において前記操作部材60から外れるように、前記ベース22に対して変位可能に前記ベース22に設けられた、ロック解除部を有するロック部材28とを備えている、綴じ具において、
(B’)操作部材60は、第1の操作領域を備え、
(C’)前記操作部材60は、自由端側に、ロック部材28を係止するための係合孔66が穿設されており、前記ロック部材28は、前記操作部材60の前記係合孔66の孔縁に係止されて、前記押え部材70が被綴じ物を押圧するロック状態になるように構成され、
(D’)ロック解除部をベース22側に向けて押し下げて前記係合孔60の孔縁から脱係させて前記押え部材70がロックを解除するロック解除状態になるように構成されている
(E’)綴じ具。
なお、請求人は、イ号物件の構成(A’)(d)において、「?綴じ具である。」と特定したが、本件特許発明の構成要件(A)(d)に対応するように「綴じ具において、」と認定し、以下同様に、上記構成(B’)における「?を備える。」との特定を、上記構成要件(B)に対応するように「?を備え、」と認定し、また上記構成要件(E)に対応するように構成(E’)を設けて、「綴じ具。」と認定した。

第4 対比・判断
1 本件特許発明とイ号物件の各構成要件との対比・判断
(1)構成要件(A)(a)について
イ号物件の「ベース22」及び「操作部材60」は、その構造、機能、作用からみて、それぞれ本件特許発明の「ベース」及び「操作部材」に相当する。
したがって、イ号物件は構成要件(A)(a)を充足する。

(2)構成要件(A)(b)について
イ号物件の「押さえ部70」は、その構造、機能、作用からみて、本件特許発明の「押さえ部」に相当する。
したがって、イ号物件は構成要件(A)(b)を充足する。

(3)構成要件(A)(c)について
イ号物件の「ばね部材50」は、その構造、機能、作用からみて、本件特許発明の「ばね部材」に相当する。
したがって、イ号物件は構成要件(A)(c)を充足する。

(4)構成要件(A)(d)について
イ号物件のロック部材28は、構成(C’)に特定されたとおり、操作部材60の係合孔66の孔縁に係止されて、押え部材70が被綴じ物を押圧するロック状態になるように構成されているから、イ号物件の「係合孔66の孔縁」及び「ロック部材28(具体的には「係合凸部102」である。)」は、本件特許発明の「ロック手段」に相当する。
したがって、イ号物件は構成要件(A)(d)を充足する。

(5)構成要件(B)について
イ号物件の「第1の操作領域」は、その構造、機能、作用からみて、それぞれ本件特許発明の「第1の操作領域」に相当する。
本件特許発明は、構成要件(B)に特定されたとおり、操作部材に第1及び第2の操作領域を備えているものである。
一方、イ号物件は、構成(B’)に特定されたとおり、操作部材60に第1の操作領域を備えるが、第2の操作領域を備えていない。
したがって、イ号物件は構成要件(B)を充足しない。
なお、被請求人は、本件特許発明の「第2の操作領域」という文言は、「第1の操作領域とともに操作部材に備えられた領域であって、ロックを行う際に第1の操作領域に加えられる操作の方向(所定方向)と同一の方向(前記所定方向)をなすロック解除用の操作を受ける領域」と意味するものであって、イ号綴じ具の操作部材60における係合孔66の孔縁nにより構成される領域Nが、本件特許発明における「第2の操作領域」に相当する旨主張する(判定請求答弁書第3頁第2?4、25?27行参照。)。
しかしながら、第2の操作領域に関して、本件特許発明の構成要件(D)には、「第2の操作領域を前記所定方向に操作したときにロックを解除して押え部材をベースから離間可能とした」と特定され、また本件特許明細書には、「第2の操作領域を第1の操作領域に加える操作方向と同一の方向に操作するだけでロック解除が可能な簡便性を得ることができる。」(段落【0011】)、「押え部材13による綴じ込み解除する場合、すなわち、操作部材12のロックを解除する場合には、第2の操作領域51を第1の操作領域50と同様に、設置面部20側に押圧操作すればよい。この押圧操作により、第2の操作領域51は、前述したスリット48の形成により、独立して面位置を低くする方向に変位することができる。」(段落【0042】)、「第2の操作領域51は、別部品からなる駒状部材80によって構成されている。」(段落【0049】)、及び「前記駒状部材80は、前記陥没部84内で脱落が規制された状態で上下に移動可能となっており、この駒状部材80が下降したときに、接触部材57の下縁57Aが延長軸部74(図36参照)を押し下げることで当該延長軸部74と、ベース側の図示省略したフック部とのロックが解除可能とされている。」(段落【0051】)と記載されており、これらの事項から、「第2の操作領域」とは、操作部材のロックを解除する場合に、操作者が第1の操作領域に加えられるロックを行う際の操作の方向(所定方向)と同一の方向(前記所定方向)の操作を行う領域を意味とするものである。してみると、被請求人の上記主張は、採用できない。

(6)構成要件(C)について
本件特許発明は、構成要件(C)に特定されたとおり、第1の操作領域を所定方向に操作したときに操作部材をロックして押え部材を綴じ込み位置に保つものである。
一方、イ号物件は、構成(C’)に特定されたとおり、ロック部材28は、操作部材60の係合孔66の孔縁に係止されて、押え部材70が被綴じ物を押圧するロック状態になるように構成され、またイ号図面の図3Dには、操作部材60の操作部60cの自由端側の部位(第1の操作領域)をベース22側に向けて押し下げ操作して、ロック部材28と操作部材60の係合孔66の孔縁とを係止させることが開示されている。してみると、イ号物件は、第1の操作領域を所定方向に操作したときに操作部材60をロックして押え部材70を綴じ込み位置に保つものといえる。
したがって、イ号物件は構成要件(C)を充足する。

(7)構成要件(D)について
本件特許発明は、構成要件(D)に特定されたとおり、第2の操作領域を前記所定方向に操作したときにロックを解除して押え部材をベースから離間可能としたものである。
一方、イ号物件のロック部材28のロック解除部は、構成(D’)に特定されたとおり、ベース22側に向けて押し下げられて、押え部材70のロックを解除するものであるから、イ号物件の「ロック解除部」は、本件特許発明の「第2の操作領域」に相当する。また、ロック解除部の操作方向は、ベース22側に向けての押し下げ操作であるから、上記(6)のとおり、第1の操作領域の操作方向と同方向といえる。してみると、イ号物件は、ロック解除部を第1の操作領域の同じ所定方向(前記所定方向)に操作したときにロックを解除して押え部材70をベース22から離間可能としたものといえる。
したがって、イ号物件は構成要件(D)を充足する。

(8)構成要件(E)について
イ号物件の「綴じ具」は、その構造、機能、作用からみて、本件特許発明の「綴じ具」に相当する。
したがって、イ号物件は構成要件(E)を充足する。

2 まとめ
上記1(1)?(8)に示すように、イ号物件は本件特許発明の構成要件(A)(a)?(A)(d)、(C)、(D)、及び(E)は充足するものの、本件特許発明の構成要件(B)を充足するものとすることはできない。

3 均等について
均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するための条件は、最高裁判所により以下のとおり判示されている。
「特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、1)上記部分が特許発明の本質的部分ではなく、2)上記部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、3)上記のように置き換えることに、当業者が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、4)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、5)対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、上記対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属する。」
そして、特許発明の本質的部分については以下のとおり判示されている。
「特許発明の本質的部分とは、特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうちで、当該特許発明特有の課題解決手段を基礎づける特徴的な部分、言い換えれば、上記部分が他の構成に置き換えられるならば、全体として当該特許発明の技術的思想とは別個のものと評価されるような部分をいうものと解される。
そして、本質的部分に当たるかどうかを判断するに当たっては、特許発明を特許出願時における先行技術と対比して課題の解決手段における特徴的原理を確定した上で、対象製品の備える解決手段が特許発明における解決手段の原理と実質的に同一の原理に属するものか、それともこれとは異なる原理に属するものかという点から判断すべきものである。」
上記判示事項に沿って検討するに、本件特許発明と本件特許公報の参考文献記載の技術(特許出願時における先行技術)と対比すると、本件特許発明は、「操作部材は第1及び第2の操作領域を備え、前記第1の操作領域を所定方向に操作したときに前記操作部材をロックして押え部材を綴じ込み位置に保つ一方、前記第2の操作領域を前記所定方向に操作したときに前記ロックを解除して押え部材をベースから離間可能とした」点で上記参考文献記載の技術と相違する新規なものであって、つまり、この点が、「一方向に向けられた力を操作部材に加えるだけで当該操作部材のロックと、その解除とを可能とした」(本件特許明細書の段落【0009】)という課題の解決手段における特徴的原理といえるから、本件特許発明の本質的部分は、構成要件(B)?(D)にある(なお、本件特許発明の本質的部分が、構成要件(B)?(D)にあることは、被請求人も認めるところである(判定請求答弁書第7頁第18?27行参照。)。)。
そして、上記「1(5)構成要件(B)について」のとおり、イ号物件は、構成要件(B)を充足しない。
したがって、本件特許発明の本質的部分がイ号物件と異なっており、つまり本件特許発明は特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分があり、その異なる部分が特許発明の本質的部分であるから、上記判示事項の1)を満たしていない。
したがって、上記判示事項の2)?5)を検討するまでもなく、イ号物件は、本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するとすることはできない。

第5 むすび
したがって、イ号物件は、本件特許発明の技術範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2013-02-15 
出願番号 特願2001-76370(P2001-76370)
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (B42F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 砂川 充  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 鈴木 秀幹
東 治企
登録日 2009-04-10 
登録番号 特許第4288861号(P4288861)
発明の名称 綴じ具  
代理人 岡田 全啓  
代理人 赤澤 一博  
代理人 宮澤 岳志  
代理人 扇谷 一  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ