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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C02F |
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管理番号 | 1271384 |
審判番号 | 不服2011-19594 |
総通号数 | 161 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-05-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-09-12 |
確定日 | 2013-03-14 |
事件の表示 | 特願2006-162359号「水の水質改質方法およびその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月27日出願公開、特開2007-330844号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成18年6月12日の出願であって、平成23年2月3日付けの拒絶理由が通知され、同年4月12日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年6月8日付けで拒絶査定され、これに対して同年9月12日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものであり、その後、特許法第164条第3項に基づく報告を引用した平成24年4月20日付けの審尋が通知され、同年7月5日付けで回答書が提出されたものである。 2.補正の適否・本願発明 (2-1)補正内容 平成23年9月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に係る補正を含み、補正前後の請求項1の記載は、次のとおりである。 (補正前) 「【請求項1】 被処理水を高圧下のもとで高速水流となし、これを高硬度の壁面に向けて噴射衝突させることで、水分子の凝集力として作用している水素結合力やファンデルワールス力に抗して、被処理水を構成している水分子の集合体であるクラスターを単分子に近い状態に解離させ、 このようにして形成された単分子に近い状態に解離させた極性を有する水分子に、一部可視光領域を含む紫外線を照射して共鳴振動を励起させ、他のイオン原子・イオン分子に対しての親水性・水和性の高い高振動活性状態にある水分子とした後、 該親水性・水和性の高い高振動活性状態にある水分子からなる水に、植物種子類、各種高分子類、非晶質材料、結晶材料、各種双極性分子材料の少なくとも1つを投入し、前記一部可視光領域を含む紫外線を照射しつつ稼動することで、前記材料に含まれる結晶水等各種態様の水の改質を通じて、前記材料を改質可能にすることを特徴とした水の水質改質方法。」 (補正後) 「【請求項1】 被処理水を高圧下のもとで高速水流となし、これを高硬度の壁面に向けて噴射衝突させることで、水分子の凝集力として作用している水素結合力やファンデルワールス力に抗して、被処理水を構成している水分子の集合体であるクラスターを単分子に近い状態に解離させて小クラスター化させ、 このようにして形成された単分子に近い状態に解離させた極性を有する小クラスター化した水分子に、一部可視光領域を含む紫外線を照射して共鳴振動を励起させ、他のイオン原子・イオン分子に対しての親水性・水和性の高い高振動活性状態にある水分子とした後、 該親水性・水和性の高い高振動活性状態にある小クラスター化した水分子からなる水に、植物種子類、各種高分子類、非晶質材料、結晶材料、各種双極性分子材料の少なくとも1つを投入し、前記一部可視光領域を含む紫外線を照射しつつ稼動することで、前記材料に含まれる結晶水等各種態様の水と、前記小クラスター化した高振動活性状態にある水分子との間の水和性に関する相互影響により、前記材料を改質可能にしたことを特徴とした水の水質改質方法。」 請求項1に係る補正の補正事項は、 (i)補正前の「被処理水を構成している水分子の集合体であるクラスターを単分子に近い状態に解離させ」を、補正後の「被処理水を構成している水分子の集合体であるクラスターを単分子に近い状態に解離させて小クラスター化させ」とし、 (ii)補正前の「水分子」(2箇所)を、補正後の「小クラスター化した水分子」(2箇所)とし、 (iii)補正前の「前記材料に含まれる結晶水等各種態様の水の改質を通じて、前記材料を改質可能にする」を、補正後の「前記材料に含まれる結晶水等各種態様の水と、前記小クラスター化した高振動活性状態にある水分子との間の水和性に関する相互影響により、前記材料を改質可能にした」にするものである。 (2-2)補正の適否の判断 (i)については、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「被処理水を構成している水分子の集合体であるクラスターを単分子に近い状態に解離させ」ることについて、このように解離させることが「小クラスター化させ」ることに該当することを明らかにし、 (ii)については、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「水分子」について、上記(i)で示したように、上記が明らかにされることで、この水分子が「小クラスター化した水分子」に該当することを明らかにし、 (iii)については、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「材料に含まれる結晶水等各種態様の水の改質を通じて、材料を改質可能に」することについて、上記(i)で示したように、上記が明らかにされ、及び、「単分子に近い状態に解離させた極性を有する水分子に、一部可視光領域を含む紫外線を照射して共鳴振動を励起させ、他のイオン原子・イオン分子に対しての親水性・水和性の高い高振動活性状態にある水分子と」することが請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項であることで、材料の改質が「結晶水等各種態様の水と、小クラスター化した高振動活性状態にある水分子との間の水和性に関する相互影響により」行われる改質に該当することを明らかにするものであり、かつ、下記「3.拒絶査定の理由」で示すように、記載不備を指摘しているので、請求項1に係る補正は、平成18年法律第55条改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的にするものである。 そして、願書の最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)には、 「【0005】 上述した課題を解決するため、本発明に係る水の水質改質方法にあっては、被処理水を破砕して水分子同士の水素結合によるクラスターが分解された破砕水を形成する水破砕工程と、この形成された破砕水に一部可視光領域を含む紫外線を照射して極性水分子に共鳴振動を励起させ、他のイオン原子・イオン分子に対しての親水性・水和性の高い活性水とする光化学反応工程とから成ることを特徴としたものである。 【0006】 また、光化学反応工程は、植物種子類、各種高分子類、非晶質材料、結晶材料、各種双極性分子や結晶水を含む材料の少なくとも1つを破砕水中に浸漬し、前記紫外線を照射することで、材料に含まれる各種形態の水の改質を通じて、諸材料を改質可能にするものである。」及び 「【0015】 すなわち、第1の手順では、被処理水に30?100気圧レベルの高圧をかけて、それを高硬度の壁面に向けて噴射衝突させて、被処理水中に保持されて懸濁の主因をなしている無機、有機の水以外の不純物を分離させる。同時に、液体の凝集力として作用していると考えられるファンデルワールス力(双極子-双極子間の分散型相互作用)や水素結合力に抗して、被処理水を構成している水分子の集合体であるクラスターを単分子に近い状態に解離させる。」との記載があり、これらからして、請求項1に係る補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであるので、平成18年法律第55条改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定を満足するものである。 上記で示したように、請求項1に係る補正は、明りょうでない記載の釈明を目的にするものであり、当初明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであるので、本件補正は適法なものであるとする。 (2-3)本願発明 上記(2-2)より、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年9月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される上記(2-1)(補正後)のとおりである。 3.拒絶査定の理由 拒絶査定の理由は、「この出願については、平成23年2月3日付け拒絶理由通知書に記載した理由3及び4によって、拒絶をすべきものです。 なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。」であり、拒絶理由の「理由3」及び「理由4」は、「この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」及び「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」であり、拒絶査定の「理由3」及び「理由4」の内容は、以下のとおりである。 (理由3) 「平成23年4月12日付け手続補正書により、補正前の請求項1を引用する請求項2に係る発明において、及び、補正前の請求項3、4を引用する請求項9に係る発明において、『破砕水』を『水分子の凝集力として作用している水素結合力やファンデルワールス力に抗して、被処理水を構成している水分子の集合体であるクラスターを単分子に近い状態に解離させた極性を有する水分子』とし、『活性水』を『高い高振動活性状態にある水分子』として、各々を新たな請求項1、2に係る発明とする補正が行われた。 そして、出願人は意見書において、先の拒絶理由3に対して以下の通り主張している。 (A)『破砕水の植生への作用効果』の実験結果について(【0045】)は、水の小クラスター化と植生に対する浸透圧の関係を目視するためのものであること。 (B)『諸材料を破砕水に浸漬することにより、当該材料を改質可能とする水の水質改質方法』の技術的意義とは、換言すれば、『熱振動エネルギーで変成する温泉卵の浸漬水に更なるエネルギーを加えて卵の変性改質を更に進行させる』のと物理的には同意であって、例えば含水率約2%の66ナイロン筐体を、上記のように処理すれば、ナイロンに含有された水分子が振動の二次伝播を受け、三次伝播と進行するであること。 しかしながら、先の拒絶理由3で述べた通り、この出願の当初明細書には観測された現象と出願人が主張するところの水分子クラスター、水和性との因果関係は何ら科学的、客観的な根拠をもって示されておらず、これは、意見書においても同様である。 そうしてみると、先の拒絶理由3で述べた通り、本願発明に係る処理水に諸材料を浸漬し、紫外線照射することにより、当該諸材料に含まれる水の改質を通じて、前記材料を改質可能にするという本願発明の技術的意義が依然として理解できない。 よって、この出願の発明の詳細な説明は本願請求項1-6に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものではない。」及び (理由4) 「請求項1-6 ・・・(省略)・・・ そして、出願人は意見書において、『破砕水』、『活性水』について、参考資料1、2を提示している。 しかしながら、前記参考資料には水素結合についての一般的な説明、水分子の分子対であるところのクラスターについての一般的な説明は記載されているものの、出願人が主張するような『分子の凝集力として作用している水素結合力やファンデルワールス力に抗して、被処理水を構成している水分子の集合体であるクラスターを単分子に近い状態に解離させた極性を有する水分子』に共鳴振動を励起させて得た『高い高振動活性状態にある水分子』からなる水に諸材料を浸漬させ、紫外線を照射することで、当該諸材料に含まれる水の改質を通じて前記材料を改質可能とする点については、何ら具体的に示されていない。 そうしてみると、本願発明に係る諸材料を改質可能にする水の水質改質方法及び装置において、具体的に如何なる反応が起こっているのか依然として理解ができず、先の拒絶理由4は解消していない。」 4.当審の判断 本願発明は、「材料に含まれる結晶水等各種態様の水と、小クラスター化した高振動活性状態にある水分子との間の水和性に関する相互影響により、材料を改質可能にした」ことを発明特定事項にするものである。 ここで、「水クラスターを定性、定量の両面で分析する技術は、現状では見当たらず、傾向分析で判断せざるをえない状況である」ことは、回答書において請求人が認めているように、水質を改質する技術分野において良く知られた技術事項である。 そうすると、当初明細書の【0042】ないし【0048】、平成23年4月12日付け物件提出書の物件1ないし4、平成23年9月12日付け物件提出書の物件aないしj、及び、平成24年7月5日付け回答書に添付の添付資料1等の実施に係る事項を勘案したとしても、「小クラスター化した水分子」が確認できない以上、観測された現象からみて「材料に含まれる結晶水等各種態様の水」と「小クラスター化した水分子」との間に「水和性に関する相互影響(物理的・化学的反応)」が生起している可能性が推測されるものの、「小クラスター化した水分子」そのものによる反応(水和性に関する相互影響)(発明特定事項)を具体的に確認することは当然できず、故に、処理水に諸材料を浸漬し、紫外線照射することにより、当該諸材料に含まれる水の改質を通じて、材料を改質可能にするという本願発明の技術的意義が依然として明らかでなく、また、上記反応を発明特定事項にすることは、発明を不明確にするといわざるを得ない。 したがって、拒絶査定と同じく、「先の拒絶理由3で述べた通り」「この出願の発明の詳細な説明は、本願発明について、経済産業省令(特許法施行規則第24条の2)で定めるところにより記載されたものではない。」及び「本願発明に係る諸材料を改質可能にする水の水質改質方法・・・において、具体的に如何なる反応(小クラスター化した水分子そのものによる反応)(水和性に関する相互影響)が起こっているのか依然として理解ができず、先の拒絶理由4は解消していない。」というべきである。 よって、本願発明は、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第2号に規定する要件に反するものであるので、特許を受けることができない。 5.むすび したがって、本願発明は、 特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 それゆえ、本願は、特許請求の範囲の請求項2ないし6に係る発明について、検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-12-20 |
結審通知日 | 2013-01-08 |
審決日 | 2013-01-21 |
出願番号 | 特願2006-162359(P2006-162359) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(C02F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川島 明子 |
特許庁審判長 |
豊永 茂弘 |
特許庁審判官 |
中澤 登 國方 恭子 |
発明の名称 | 水の水質改質方法およびその装置 |
代理人 | 平田 功 |
代理人 | 平田 功 |