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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1271432
審判番号 不服2011-26928  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-13 
確定日 2013-03-11 
事件の表示 特願2009- 83286「処理ボックス」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月21日出願公開、特開2010-237314〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年3月30日の出願であって、平成23年7月19日に手続補正がなされ、同年8月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月13日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審における平成24年4月11日付けの審尋に対する回答書を同年8月7日に提出している。

第2 平成23年12月13日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成23年12月13日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成23年12月13日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであって、
本件補正前の請求項1に、
「少なくとも感光ドラムと、現像ローラと、感光ドラムと、現像ローラを収容する保護ケースと、前記保護ケースに伸縮可能に取り付けられる把持部とを備える処理ボックスにおいて、
前記感光ドラムは、静電潜像が形成されるように、前記保護ケースに取り付けられ、
前記現像ローラは、前記感光ドラムにおける静電潜像を現像し、
前記把持部は、拡張状態と前記拡張状態に対向する格納状態とを採り、
前記把持部は、把持部スライダーと、把持部支え座と、把持部捩りばねと、把持部ストッパーとを含み、
前記把持部支え座は、前記保護ケースに一体的に取り付けられ、
前記把持部ストッパーと把持部捩りばねは、前記把持部支え座に取り付けられ、
前記把持部捩りばねは、前記把持部ストッパーに取り付けられ、
前記把持部ストッパーは、一定の回復力を備えるようにプリテンション状態にある
ことを特徴とする処理ボックス。」とあったものを、

「 (A)感光ドラムと、
(B)現像ローラと、
(C)保護ケース(1)と、
前記保護ケース(1)は、前記感光ドラムと前記現像ローラとを収容し、
(D)把持部(2)と、
前記把持部(2)は、前記保護ケースに取り付けられ、
を有するプロセス・カートリッジにおいて、、
前記感光ドラムは、静電潜像が形成されるように、前記保護ケース(1)に取り付けられ、
前記現像ローラは、前記感光ドラムにおける静電潜像を現像し、
前記把持部(2)は、把持部スライダー(3)と、把持部支え座(4)と、把持部捩りばね(5)と、把持部ストッパー(6)とを含み、
前記把持部(2)は、前記把持部スライダー(3)が延びた拡張状態(図2)と前記把持部スライダー(3)が収縮している格納状態(図1)とを採り、
前記把持部支え座(4)は、前記保護ケース(1)に一体に取り付けられ、
前記把持部ストッパー(6)と把持部捩りばね(5)は、前記把持部支え座(4)に取り付けられ、
前記把持部捩りばね(5)は、前記把持部ストッパー(6)に取り付けられ、前記把持部ストッパー(6)が一定の回復力を備えるように、プリテンション状態にあり、
前記把持部スライダー(3)には、複数の突起(31)が形成され、
前記突起(31)と突起との間に、阻止溝(32)が形成され、
前記把持部ストッパー(6)は、阻止先端(61)と、プッシュプレート(62)と、回転軸(63)を有し、
前記把持部捩りばね(5)は、前記回転軸(63)に設けられ、
前記阻止先端(61)は、前記阻止溝(32)に嵌り、
前記阻止先端(61)の長さは、前記回転軸(63)から前記把持部スライダー(3)までの垂直距離よりも大きく、 これにより、前記阻止先端(61)は、前記突起(31)に当たり、前記把持部スライダー(3)がスライドするのを制限し、
前記プッシュプレート(62)に付勢力(F3)が加えられると、前記阻止先端(61)は、前記阻止溝(32)から外れ、前記把持部スライダー(3)は、自由にスライド可能になる
ことを特徴とするプロセス・カートリッジ。」とする補正を含むものである(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明について次のアないしエの補正をするものである。
ア 発明を特定するために必要な事項である「処理ボックス」を「プロセス・カートリッジ」として、カートリッジ形式のものであることを限定する。

イ 発明を特定するために必要な事項である「保護ケースに伸縮可能に取り付けられ、拡張状態と前記拡張状態に対向する格納状態とを採る把持部」を「保護ケース(1)に取り付けられ、前記把持部スライダー(3)が延びた拡張状態(図2)と前記把持部スライダー(3)が収縮している格納状態(図1)とを採る把持部(2)」として、「対向する」を具体化して限定する。

ウ 発明を特定するために必要な事項である「把持部スライダー」を「複数の突起が形成され、前記突起と突起との間に、阻止溝が形成され」ると限定し、発明を特定するために必要な事項である「把持部ストッパー」を「阻止先端と、プッシュプレートと、回転軸を有」すると限定し、発明を特定するために必要な事項である「把持部捩りばね」を「前記回転軸に設けられ」と限定するとともに、「前記阻止先端は、前記阻止溝に嵌り、前記阻止先端の長さは、前記回転軸から前記把持部スライダーまでの垂直距離よりも大きく、 これにより、前記阻止先端は、前記突起に当たり、前記把持部スライダーがスライドするのを制限し、前記プッシュプレートに付勢力が加えられると、前記阻止先端は、前記阻止溝から外れ、前記把持部スライダーは、自由にスライド可能になる」との限定を付加する。

エ (A)ないし(D)の見出し記号を付し、括弧をして図面において使用した符号及び図1、図2などの図番を付すとともに、「おいて、」に続けて誤って「、」を付す。

2 本件補正の目的
本件補正後の請求項1に係る本件補正は、上記1(2)のとおり、全体として、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、上記1(2)エの誤記である「、」を削除し訂正した本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開平3-132768号公報(以下「引用例」という。)」には、次の事項が図とともに記載されている。
(1)「2.特許請求の範囲
画像形成装置本体に着脱自在に装填されるプロセスカートリッジであって、その両側面に突設された凸部内に把手を摺動自在に嵌装したことを特徴とするプロセスカートリッジ。」(1頁左下欄4?8行)

(2)「3.発明の詳細な説明
(産業上の利用分野)
本発明は、画像形成装置本体に着脱自在に装填されるプロセスカートリッジに関する。
(従来の技術)
この種のプロセスカートリッジは、像担持体、現像装置、帯電装置、クリーニング装置等を同じハウジング内にコンパクトにまとめてユニットとして構成されるものである。
斯かるプロセスカートリッジの画像形成装置本体への着脱に際しては、該プロセスカートリッジ自体を直接把んでこれを着脱したり、本体とプロセスカートリッジとの間の僅かな空間を利用して設けられた簡易型の収納可能は把手を用いてプロセスカートリッジを着脱することが行なわれている。
(発明が解決しようとする課題)
しかしながら、プロセスカートリッジ自体を直接把んでこれを本体に対して着脱する場合には、プロセスカートリッジの形状によって把む場所が決まってしまうため、持ちにくい場合があり、又、プロセスカートリッジが大きくなると重くて持てないという問題がある。
又、本体とプロセスカートリッジとの間の空間を利用して設けられた把手を持ってプロセスカートリッジを着脱する場合には、把手が本体に入ってしまうため、プロセスカートリッジを本体に挿入する操作と持ち運ぶ操作とが異なり、操作性が悪いという問題がある。更に、把手の収納スペースが限られてしまうため、操作性を考慮した把手形状が得られないという問題もある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、画像形成装置本体に対して操作性良く、簡単に着脱することができるプロセスカートリッジを提供することにある。
(課題を解決するための手段)
上記目的を達成すべく本発明は、プロセスカートリッジの両側面に突設された凸部内に把手を摺動自在に嵌装したことをその特徴とする。
(作用)
本発明によれば、本体内に装填されているときには、把手を凸部内に格納しておき、プロセスカートリッジの着脱時には、把手を凸部から引き出してこれを使用することができるため、プロセスカートリッジを画像形成装置本体に対して操作性良く、簡単に着脱することができる。」(1頁左下欄9行?2頁左上欄15行)

(3)「(実施例)
以下に本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
第1図は本発明に係るプロセスカートリッジ10を装填して成る画像形成装置1の縦断面図であり、該画像形成装置1の本体2内にはプロセスカートリッジ10の他に、複数枚の用紙Pを収容して成る用紙カセット3、給紙ローラ4、レジストローラ5、レーザーユニット6、転写ローラ7、定着器8及び排紙ローラ9が収納されている。又、前記プロセスカートリッジ10は感光ドラム11を含んで構成されている。
ところで、画像形成装置本体2の一部は軸12を中心に回動することによって開閉する搬送ユニット13を構成しており、該搬送ユニット13は前記転写ローラ7、定着器8、排紙ローラ9を含んで構成されている。
而して、本画像形成装置1においては、ホスト側から送られてきた信号を受けてレーザーユニット6からレーザ光が発せられ、このレーザ光はプロセスカートリッジ10の感光ドラム11に照射されて感光ドラム11上には静電潜像が形成される。そして、この静電潜像は不図示の現像手段によってトナー像として顕画化される。
一方、用紙カセット3内の用紙Pは給紙ローラ4によってレジストローラ5に送られ、このレジストローラ5によって感光ドラム11とのタイミングをとって転写ローラ7に送られ、ここで前記感光ドラム11上に形成されたトナー像の転写を受ける。そして、この用紙P上に転写されたトナー像は定着器8によって定着され、トナー像の定着を受けた用紙Pは排紙ローラ9によって機外へ排出される。
ところで、プロセスカートリッジ10の両側面には、第4図に示すようにガイド部14が突設されており、このガイド部14内にはプロセスカートリッジ10を着脱するための把手15が摺動自在に嵌装されている。この把手15のガイド部14外に臨む端部には円板状のストッパ部15aが一体に形成されており、同把手15のガイド部14内に臨む中間部には、第5図及び第6図に示すようにストッパ爪16が形成されている。尚、第5図及び第6図はガイド部14を破断したプロセスカートリッジ10の側面図である。
一方、ガイド部14には把手15に形成された前記ストッパ爪16が係合すべきストッパ孔17が穿設されている。
第2図及び第3図は搬送ユニット13を開いた状態の画像形成装置1の斜視図であり、図示のように本体2の左右の内壁には凹溝状のレール18が形成されており、プロセスカートリッジ10はこれの両側面に突設された前記ガイド部14をレール18に係合せしめ、レール18に沿って本体2側に押し込むことによって本体2内の所定位置に収納される。
プロセスカートリッジ10が本体2内に収納されている状態は第2図に示されるが、この状態では把手15のストッパ部15aはレール18の外に小さく突出していて用紙Pの搬送の邪魔にならないようになっている。
而して、本体2内に収納されたプロセスカートリッジ10を取り出すには、先ず、把手15のストッパ部15aを手で持って該把手15を手前側に引き出す。すると、把手15は第6図に示すようにこれに形成されたストッパ爪16がガイド部14に穿設されたストッパ孔17に係合するまで引き出される。
このようにして把手15がガイド部14から所定長さだけ引き出されると、この把手15の引き出された部分を手で持ってプロセスカートリッジ10をレール18に沿って引き出すと、第3図に示すようにプロセスカートリッジ10が本体2から容易に取り出される。
又、プロセスカートリッジ10を本体2内に収納するには、第3図に示すように引き出された把手15の部分を手で持ってプロセスカートリッジ10をレール18に沿って押し込めばよい。そして、プロセスカートリッジ10が本体2内の所定位置に収納されると、引き出された把手15をガイド部14内に押し込めば、第2図に示すように該把手15のストッパ部15aのみが小さく突出する。その後、搬送ユニット13を閉じれば、画像形成装置1の前記画像形成動作の準備が整う。
以上のように、本実施例ではプロセスカートリッジ10の両側面に突設されたガイド部14内に把手15を収納し、該プロセスカートリッジ10を着脱するときにのみ把手15を引き出すようにしたため、把手15が余分なスペースを占めることがなく、プロセスカートリッジ10の形状、寸法とは無関係に該プロセスカートリッジ10を本体2に対して容易に着脱することができる。
又、プロセスカートリッジ10を本体2から引き出す操作と持ち運ぶ操作が同一となるため、該プロセスカートリッジ10の操作性が高められる。」(2頁左上欄16行?3頁右上欄10行)

(4)「次に、本発明の変更実施例を第7図乃至第9図に基づいて説明する。尚、第7図は搬送ユニットを開いた状態の画像形成装置の斜視図、第8図及び第9図は一部(ガイド部及びガイドレール)を破断したプロセスカートリッジの側面図である。
本実施例では、画像形成装置101の本体102の左右内壁に各々上下2本の凹溝状のレール118が形成され、これらレール118の中間に逃げ溝119が形成されている。
一方、プロセスカートリッジ110においては、その両側面に上下2本の凸状のガイド部114が穿設されており、これらガイド部114の中間にガイドレール120が突設されている。そして、各ガイドレール120には前記実施例におけると同様の把手115が摺動自在に嵌装されており、該把手115のガイド部114外へ臨む一端部には円板状のストッパ部115aが形成されており、把手115のガイド部114内に臨む中間部には第8図に示すようにストッパ溝106が形成されている。又、ガイドレール120の一部にはストッパ爪107が形成されている。
而して、プロセスカートリッジ110の本体102に対する着脱に際しては、第9図に示すように把手115をこれに形成したストッパ溝106がストッパ爪107に係合するまで引き出し、この引き出された把手115を手で持ってプロセスカートリッジ110に突設されたガイド部114を本体102に形成されたレール118に係合せしめ、プロセスカートリッジ10をレール118に沿って引き出し、或いは押込めば、該プロセスカートリッジ110の着脱を容易に行なうことができる。尚、プロセスカートリッジ110を本体102内に収納した後に搬送ユニット113を閉じれば、該搬送ユニット113は把手115に当接してこれをガイド部114内に押し込むため、把手115は搬送ユニット113を閉める動作に連動して自動的にガイド部114内に格納される。」(3頁右上欄11行?同頁右下欄8行)

(5)「(発明の効果)
以上の説明で明らかな如く本発明によれば、プロセスカートリッジの両側面に突設された凸部内に把手を摺動自在に嵌装したため、プロセスカートリッジを画像形成装置本体に対して操作性良く、簡単に着脱することができるという効果が得られる。」(3頁右下欄9?15行)

(6)第8図及び第9図の記載から、ストッパ爪107は、その先端部がガイドレール120に摺動自在に嵌装されている把手115を押圧するように弾性変形しており、把手115に形成したストッパ溝106がストッパ爪107の先端に対向する箇所に位置したとき、ストッパ爪107の先端が該ストッパ溝106に嵌合して両者が係合することが見て取れる。

(7)上記(1)ないし(6)から、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。
「像担持体、現像装置、帯電装置、クリーニング装置等を同じハウジング内にコンパクトにまとめてユニットとして構成され、一部が軸を中心に回動することによって開閉する搬送ユニットを構成している画像形成装置本体に着脱自在に装填されるプロセスカートリッジに関し、
従来のプロセスカートリッジの画像形成装置本体への着脱に際しては、該プロセスカートリッジ自体を直接把んでこれを着脱したり、本体とプロセスカートリッジとの間の僅かな空間を利用して設けられた簡易型の収納可能は把手を用いてプロセスカートリッジを着脱することが行なわれていたが、プロセスカートリッジ自体を直接把んでこれを本体に対して着脱する場合には、プロセスカートリッジの形状によって把む場所が決まってしまうため、持ちにくい場合があり、又、プロセスカートリッジが大きくなると重くて持てないという問題があり、又、本体とプロセスカートリッジとの間の空間を利用して設けられた把手を持ってプロセスカートリッジを着脱する場合には、把手が本体に入ってしまうため、プロセスカートリッジを本体に挿入する操作と持ち運ぶ操作とが異なり、操作性が悪いという問題があり、更に、把手の収納スペースが限られてしまうため、操作性を考慮した把手形状が得られないという問題もあるので、画像形成装置本体に対して操作性良く、簡単に着脱することができるプロセスカートリッジを提供することを目的として、
プロセスカートリッジの両側面に突設された凸部内に把手を摺動自在に嵌装することにより、画像形成装置本体内に装填されているときには、把手を凸部内に格納しておき、プロセスカートリッジの着脱時には、把手を凸部から引き出してこれを使用することができるため、プロセスカートリッジを画像形成装置本体に対して操作性良く、簡単に着脱することができるようにした、プロセスカートリッジであって、
前記像担持体は感光ドラムであり、前記現像装置は現像手段を有しており、前記凸部はガイドレールであり、レーザ光が前記感光ドラムに照射されて該感光ドラム上に静電潜像が形成されて、この静電潜像が前記現像手段によってトナー像として顕画化されるようになっており、
前記画像形成装置本体の左右内壁に各々上下2本の凹溝状の第1レールが形成され、該第1レールの中間に逃げ溝が形成され、
前記プロセスカートリッジの両側面には上下2本の凸状のガイド部が穿設され、該ガイド部の中間に前記ガイドレールが突設され、各ガイドレールには前記把手が摺動自在に嵌装されており、該把手の一端部には円板状のストッパ部が形成されており、該把手の中間部にはストッパ溝が形成され、又、前記ガイドレールの一部にはストッパ爪が形成され、該ストッパ爪は、その先端部が前記ガイドレールに摺動自在に嵌装されている前記把手を押圧するように弾性変形しており、前記把手に形成した前記ストッパ溝が前記ストッパ爪の先端に対向する箇所に位置したとき、前記ストッパ爪の先端が前記ストッパ溝に嵌合して両者が係合するようになっており、
プロセスカートリッジの画像形成装置本体に対する着脱に際しては、前記把手を、これに形成した前記ストッパ溝が前記ガイドレールに形成した前記ストッパ爪に係合するまで引き出し、この引き出された前記把手を手で持ってプロセスカートリッジに突設された前記ガイド部を画像形成装置本体に形成された前記第1レールに係合せしめてプロセスカートリッジを前記画像形成装置本体内に収納し、収納した後に前記搬送ユニットを閉じれば該搬送ユニットが前記把手に当接してこれを前記ガイド部内に押し込み前記把手が前記搬送ユニットを閉める動作に連動して自動的に前記ガイド部内に格納されるようにした、
プロセスカートリッジを第1レールに沿って引き出し、或いは押込めば、該プロセスカートリッジの着脱を容易に行なうことができるプロセスカートリッジ。」(以下「引用発明」という。)

4 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の現像手段が現像ローラであることが当業者に自明であるから、引用発明の「感光ドラムである像担持体」、「現像装置が有する現像ローラである現像手段」、「『プロセスカートリッジ』の『ハウジング』」、「『プロセスカートリッジの両側面に突設された凸部であるガイドレール』及び『一端部には円板状のストッパ部が形成されている把手』」、「プロセスカートリッジ」、「静電潜像」、「トナー像として顕画化」、「把手」、「凸部であるガイドレール」、「ストッパ爪」、「その先端部が前記ガイドレールに摺動自在に嵌装されている前記把手を押圧するように弾性変形しており」、「ストッパ溝」、「ストッパ爪の先端」及び「嵌合」は、それぞれ、本願補正発明の「感光ドラム」、「現像ローラ」、「保護ケース」、「把持部」、「プロセス・カートリッジ」、「静電潜像」、「現像」、「把持部スライダー」、「把持部支え座」、「把持部ストッパー」、「一定の回復力を備えるように、プリテンション状態にあり」、「阻止溝」、「阻止先端」及び「嵌り」に相当する。

(2)引用発明において、「把持部(凸部であるガイドレール及び一端部には円板状のストッパ部が形成されている把手)」は、プロセスカートリッジの両側面、すなわち「保護ケース(プロセスカートリッジのハウジング)」に突設された「把持部支え座(凸部であるガイドレール)」と、該「把持部支え座」に摺動自在に嵌装されている「把持部スライダー(把手)」とからなるものであるから、引用発明の「把持部」と本願補正発明の「把持部」とは、「前記保護ケースに取り付けられ」る点で一致し、引用発明の「把持部支え座」と本願補正発明の「把持部支え座」とは「保護ケースに一体に取り付けられ」る点で一致する。

(3)引用発明において、「プロセス・カートリッジ(プロセスカートリッジ)」は、「感光ドラム(像担持体)」、「現像ローラ(現像ローラである現像手段)」を有する現像装置、帯電装置、クリーニング装置等を同じ「保護ケース(ハウジング)」内にコンパクトにまとめてユニットとして構成されているから、引用発明の「保護ケース」と本願補正発明の「保護ケース」とは「前記感光ドラムと前記現像ローラとを収容し」ている点で一致し、引用発明の「プロセス・カートリッジ」と本願補正発明の「プロセス・カートリッジ」とは「感光ドラムと、現像ローラと、前記感光ドラムと前記現像ローラとを収容する保護ケースと、前記保護ケースに取り付けられた把持部とを有する」点で一致する。

(4)引用発明において、「プロセス・カートリッジ(プロセスカートリッジ)」は、レーザ光が「感光ドラム」に照射されて該「感光ドラム」上に「静電潜像」が形成されて、この「静電潜像」が前記「現像ローラ(現像手段)」によって「現像(トナー像として顕画化)」されるようになっており、かつ「感光ドラム」は「保護ケース(ハウジング)」内に収容されている(上記(3)参照。)から、引用発明の「現像ローラ」と本願補正発明の「現像ローラ」とは「前記感光ドラムにおける静電潜像を現像」する点で一致し、引用発明の「感光ドラム」と本願補正発明の「感光ドラム」とは「静電潜像が形成されるように、前記保護ケースに取り付けられ」ている点で一致する。

(6)引用発明の「把持部」は、プロセスカートリッジの両側面に突設された「把持部支え座(凸部であるガイドレール)」及び一端部には円板状のストッパ部が形成されている「把持部スライダー(把手)」とから成るものであり、前記「把持部スライダー」の中間部には「阻止溝(ストッパ溝)」が形成され、又、前記ガイドレールの一部には「把持部ストッパー(ストッパ爪)」が形成されているから、引用発明の「把持部」と本願補正発明の「把持部スライダー(3)と、把持部支え座(4)と、把持部捩りばね(5)と、把持部ストッパー(6)とを含む把持部」とは「把持部スライダーと、把持部支え座と、把持部ストッパーとを含」む点で一致する。

(7)引用発明の「プロセス・カートリッジ(プロセスカートリッジ)」は、「プロセス・カートリッジ」の両側面に突設された「把持部支え座(凸部)」内に「把持部スライダー(把手)」を摺動自在に嵌装することにより、画像形成装置本体内に装填されているときには、「把持部スライダー」を「把持部支え座」内に格納しておき、「プロセス・カートリッジ」の着脱時には、「把持部スライダー」を「把持部支え座」から引き出してこれを使用することができるものであるから、引用発明の「把持部」と本願補正発明の「把持部」とは「把持部スライダーが延びた拡張状態と把持部スライダーが収縮している格納状態とを採」る点で一致し、引用発明の「把持部ストッパー」と本願補正発明の「把持部ストッパー」とは「把持部支え座に取り付けられ」る点で一致する。

(8)引用発明の「把持部ストッパー(ストッパ爪)」は、その「阻止先端(先端部)」がガイドレールに摺動自在に嵌装されている把手を押圧するように弾性変形しているものであるから、上記(1)に照らせば、本願補正発明の「把持部ストッパー」と、「一定の回復力を備えるように、プリテンション状態にあ」る点及び「阻止先端を有」する点で一致する。

(9)引用発明の「把持部スライダー(把手)」の中間部には「阻止溝(ストッパ溝)」が形成されているから、本願補正発明の「把持部スライダー」と、「阻止溝が形成され」る点で一致する。

(10)引用発明では、把手に形成した「阻止溝(ストッパ溝)」が「阻止先端(ストッパ爪の先端)」に対向する箇所に位置したとき、前記「阻止先端」が前記「阻止溝」に「嵌り(嵌合して)」両者が係合するようになっているから、引用発明の「阻止先端」と本願補正発明の「阻止先端」とは「阻止溝に嵌」る点で一致する。

(11)上記(1)ないし(10)から、本願補正発明と引用発明とは、
「感光ドラムと、現像ローラと、保護ケースと、把持部とを有し、
前記保護ケースは、前記感光ドラムと前記現像ローラとを収容し、
前記把持部は、前記保護ケースに取り付けられている、
プロセス・カートリッジにおいて、
前記感光ドラムは、静電潜像が形成されるように、前記保護ケースに取り付けられ、
前記現像ローラは、前記感光ドラムにおける静電潜像を現像し、
前記把持部は、把持部スライダーと、把持部支え座と、把持部ストッパーとを含み、
前記把持部は、前記把持部スライダーが延びた拡張状態と前記把持部スライダーが収縮している格納状態とを採り、
前記把持部支え座は、前記保護ケースに一体に取り付けられ、
前記把持部ストッパーは、前記把持部支え座に取り付けられ、
前記把持部ストッパーが一定の回復力を備えるように、プリテンション状態にあり、
前記把持部スライダーには、阻止溝が形成され、
前記把持部ストッパーは、阻止先端を有し、
前記阻止先端は、前記阻止溝に嵌る、
プロセス・カートリッジ。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
本願補正発明では、前記把持部が「把持部捩りばね」も含んでおり、該「把持部捩りばね」は、前記把持部支え座及び前記把持部ストッパーに取り付けられており、前記把持部スライダーには、前記阻止溝の他に「複数の突起」も形成されており、前記阻止溝はこの「突起と突起との間」に形成されており、前記把持部ストッパーは、前記阻止先端の他に「プッシュプレート」及び「回転軸」も有しており、前記「把持部捩りばね」はこの「回転軸」に設けられており、前記阻止先端の長さは、前記「回転軸」から前記把持部スライダーまでの垂直距離よりも大きく、これにより、前記阻止先端は、前記「突起」に当たり、前記把持部スライダーがスライドするのを制限し、前記「プッシュプレート」に付勢力が加えられると、前記阻止先端は、前記阻止溝から外れ、前記把持部スライダーは、自由にスライド可能になるのに対して、
引用発明では、前記把持部が「捩りばね」を含んでおらず、前記把持部スライダーには「突起」が形成されておらず、前記把持部ストッパーは「プッシュプレート」も「回転軸」も有しておらず、前記阻止先端が前記把持部スライダーがスライドするのを制限するのか、そうではなく前記把持部スライダーは自由にスライド可能であるのかが明らかでない点。

5 判断
上記相違点について検討する。
(1)相対移動可能でかつロック可能な一対の部材の一方の部材に、傾斜面と垂直面とで構成された複数の凹凸形状を形成し、前記一対の部材の他方の部材に、先端に前記凹凸形状の凹部に嵌る凸部を備えるとともに後端が操作部となっているロック部材と、回転軸と、該回転軸に設けたねじりコイルばねとを有するロック手段を形成し、前記回転軸から前記ロック部材の先端までの長さが前記回転軸から前記複数の凹凸形状までの垂直距離よりも大きくて、前記ロック部材の先端の凸部が前記凹凸形状の凹部に嵌って、一対の部材の一方向への相対移動を制限するが、一対の部材のもう一方への相対移動は許容し、前記操作部をねじりコイルばねの付勢に抗するように操作することにより、前記ロック部材の先端の凸部が前記凹凸形状の凹部から外れて一対の部材が双方向へ自由に相対移動できるようになる、解除可能な相対移動部材のロック機構は、機械分野において本願の出願前に周知である(以下「周知技術」という。例.特開2004-75356号公報(【0060】?【0065】、【0071】?【0073】、図6?図11、図13参照。)、特開平11-139573号公報(【0016】、図8参照。))。

(2)引用発明のプロセスカートリッジは、画像形成装置本体内に収納する際には、把手に形成したストッパ溝がガイドレールに形成したストッパ爪に係合するまで把手を引き出すものであり、収納した後に搬送ユニットを閉じれば該搬送ユニットが把手に当接してこれをガイド部内に押し込み自動的に前記ガイド部内に格納されるものであるから、ストッパ溝とストッパ爪とは1組しかなく、ストッパ溝とストッパ爪との係合は強固なものではないので、狭いスペースでの着脱においても引き出し長さを調節して使用することができず、仮にストッパ溝とストッパ爪とを複数組設けて引き出し長さを多段に調節できるようにしても、ストッパ溝とストッパ爪との係合が強固でないため短く引き出して着脱している際にプロセスカートリッジの重さにより突然把手が更に引き出されてしまうこともあり得るものである。
してみると、引用発明には、収納した後に搬送ユニットを閉じれば該搬送ユニットが把手に当接してこれをガイド部内に押し込み自動的に前記ガイド部内に格納されるとともに、狭いスペースでの着脱等において把手の引き出し長さを調節して短く引き出した状態でも強固にロックして着脱できるようにするといった課題が内在していることは、機械分野の知識を有する当業者が上記(1)の周知技術に照らせば把握できる事項である。
したがって、引用発明において、収納した後に搬送ユニットを閉じれば該搬送ユニットが把手に当接してこれをガイド部内に押し込み自動的に前記ガイド部内に格納されるとともに、把手の引き出し長さを調節して短く引き出した状態でも強固にロックして着脱できるようにするために、引用発明において、前記ストッパ溝に代えて、周知技術の傾斜面と垂直面とで構成された複数の凹凸形状を採用して前記把手に形成し、前記ストッパ爪に代えて、周知技術の「先端に前記凹凸形状の凹部に嵌る凸部を備えるとともに後端が操作部となっているロック部材と、回転軸と、該回転軸に設けたねじりコイルばねとを有するロック手段」を採用して前記ガイドレールに形成し、前記ねじりコイルばねを該ガイドレール及び前記ロック部材にも取り付け、前記回転軸から前記ロック部材の先端までの長さが前記回転軸から前記複数の凹凸形状までの垂直距離よりも大きくて、前記ロック部材の先端の凸部が前記凹凸形状の凹部に嵌って、前記把手の引き出し方向への移動を制限するが、前記把手の格納方向への移動は許容し、前記操作部をねじりコイルばねの付勢に抗するように操作することにより、前記ロック部材の先端の凸部が前記凹凸形状の凹部から外れて前記把手が双方向へ自由に移動できるようにすることは、当業者が周知技術に基づいて容易に想到することができた程度のことである。

(3)上記(2)における、「ガイドレール及び把手」、「ねじりコイルばね」、「ガイドレール」、「ロック部材」、「把手」、「複数の凹凸形状の凹部」、「複数の凹凸形状の凸部」、「『凹凸形状の凹部に嵌る凸部』を備えた『ロック部材』の『先端』側」、「『操作部』となっている『ロック部材』の『後端』側」、「回転軸」、「回転軸からロック部材の先端までの長さ」、「回転軸から複数の凹凸形状までの垂直距離」、「ロック部材の先端の凸部が凹凸形状の凹部に嵌る」、「把手の引き出し方向への移動を制限」、「操作部をねじりコイルばねの付勢に抗するように操作する」、「ロック部材の先端の凸部が凹凸形状の凹部から外れ」及び「双方向へ自由に移動できる」は、それぞれ、本願補正発明の「把持部」、「把持部捩りばね」、「把持部支え座」、「把持部ストッパー」、「把持部スライダー」、「阻止溝」、「複数の突起」、「阻止先端」、「プッシュプレート」、「回転軸」、「阻止先端の長さ」、「回転軸から把持部スライダーまでの垂直距離」、「阻止先端は、突起に当たる」、「把持部スライダーがスライドするのを制限」、「プッシュプレートに付勢力が加えられる」、「阻止先端は、阻止溝から外れ」及び「自由にスライド可能」に相当するから、引用発明において、前記「把持部」を「把持部捩りばね」も含むものとし、該「把持部捩りばね」を、前記「把持部支え座」及び前記「把持部ストッパー」に取り付け、前記「把持部スライダー」を、「複数の突起」及びこの「突起と突起との間」の「阻止溝」が形成されたものとし、前記「把持部ストッパー」を、「阻止先端」、「プッシュプレート」及び「回転軸」を有するものとし、前記「把持部捩りばね」をこの「回転軸」に設け、前記「阻止先端」の長さが前記「回転軸」から前記「把持部スライダー」までの垂直距離よりも大きいものとし、これにより、前記「阻止先端」が前記「突起」に当たり、前記「把持部スライダー」がスライドするのを制限し、前記「プッシュプレート」に付勢力が加えられると、前記「阻止先端」が前記「阻止溝」から外れ、前記「把持部スライダー」が、自由にスライド可能になるようにすること、すなわち、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の構成となすことは、上記(2)からみて、当業者が周知技術にも基づいて容易になし得た程度のことである。

(4)本願補正発明の奏する効果は、当業者が引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測することができた程度のものである。

(5)したがって、本願補正発明は、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
本願補正発明は、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成23年7月19日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年7月19日に補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びそれらの記載事項は、上記「第2〔理由〕3」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2〔理由〕1(2)」のとおり、本願発明の発明特定事項を限定するものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕5」に記載したとおり、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-17 
結審通知日 2012-10-18 
審決日 2012-10-30 
出願番号 特願2009-83286(P2009-83286)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
P 1 8・ 575- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神田 泰貴  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 住田 秀弘
西村 仁志
発明の名称 処理ボックス  
代理人 三俣 弘文  

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