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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1271805
審判番号 不服2011-24251  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-09 
確定日 2013-03-21 
事件の表示 特願2007-154825「通信端末装置、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月25日出願公開、特開2008-311705〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成19年 6月12日の出願であって、平成23年 8月 3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年11月 9日付けで審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成23年11月 9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成23年11月 9日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「 【請求項1】
表示部に複数の画面を表示可能な通信端末装置であって、
表示部に画面を表示中に着信があった場合に、表示中の画面とともに着信画面を表示する表示制御手段と、
前記着信の着信相手の優先度に基づいて、前記表示制御手段によって表示される着信画面を、着信のための操作である主要操作が可能な優先画面とするか、前記主要操作よりも困難と見なされる操作である一部操作が可能もしくは操作が不可能な非優先画面とするかを判別する判別手段と、
前記判別手段によって着信画面を優先画面とすると判別された場合に、着信画面を優先画面とし、着信画面以外の画面を非優先画面とする優先制御手段と、
前記優先制御手段によって優先画面となった着信画面の操作に応じた処理をする操作制御手段と、
を備えることを特徴とする通信端末装置。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を
「 【請求項1】
表示部に複数の画面を独立して表示可能な通信端末装置であって、
表示部に画面を表示中に着信があった場合に、表示中の画面とともに着信画面を表示する表示制御手段と、
前記着信の着信相手の優先度に基づいて、前記表示制御手段によって表示される着信画面を、着信のための操作である主要操作が可能な優先画面とするか、前記主要操作よりも困難と見なされる操作である一部操作が可能もしくは操作が不可能な非優先画面とするかを判別する判別手段と、
前記判別手段によって着信画面を優先画面とすると判別された場合に、着信画面を優先画面とし、着信画面以外の画面を非優先画面とする優先制御手段と、
前記優先制御手段によって優先画面となった着信画面の操作に応じた処理をする操作制御手段と、
を備えることを特徴とする通信端末装置。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。(当審注:アンダーラインは補正箇所を示す。)

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「通信端末装置」が「複数の画面を表示可能」であることを「複数の画面を独立して表示可能」と限定するから、特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び特許法第17条の2第5項(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて、以下検討する。

[補正後の発明]
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりのものである。

[引用発明]
(A)原査定の拒絶理由に引用された国際公開第2006/040794号パンフレット(以下、「引用例1」という。)には、「着信通知プログラム、着信通知方法及び携帯端末装置」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「[0001] 本発明はメール等のネットワークからの情報が着信した際に画面上に着信通知を 表示する着信通知プログラム、着信通知方法及び携帯端末装置装置に関し、特に、 起動中のアプリケーションの画像表示に対し適切に着信通知を表示する着信通知プログラム、着信通知方法及び携帯端末装置装置に関する。」(1頁)

ロ.「[0018] 本発明は携帯端末装置を提供する。本発明の携帯端末装置は、
メール等のデータが着信した際に、起動中のアプリケーションに対するキー入力状態を検出するキー検出部と、
検出されたキー入力状態からアプリケーション画面を優先表示させるか着信通知を優先表示させるかを判定する判定部と、
アプリケーション画面の優先表示を判定した場合はアプリケーション画面に影響のないように着信通知を表示し、着信通知の優先表示を判定した場合はアプリケーション画面の前面となるように着信通知を表示制御する着信表示制御部と、
を備えたことを特徴とする。」(3?4頁)

ハ.「[0020] 本発明によれば、例えばキー入力の頻度が高い状態を検出したらアプリケーション優先と判定して着信通知をアプリケーション画面の隅に小さく表示しており、ゲーム中やメール作成中などのアプリケーション起動中の割り込まれたくないような状況で、メールの着信通知に煩わされることはなく、またアプリケーションを起動している状態で放置しても、着信を知ることができる。」(4頁)

ニ.「[0025] 図2は本発明による着信通知機能を備えた携帯電話のブロック図である。図2において、携帯電話10は制御ボード12、複数のキー15を備えたキー入力部14、カラー表示可能な液晶ディスプレイユニット16で構成される。
・・・・・中略・・・・・
[0028] アプリケーション実行環境20に設けられた各アプリケーションは、 MPU18の CPUにより実行されており、各アプリケーションを起動すると液晶ディスプレイユニット16の前面にアプリケーション画面を表示し、ユーザは液晶ディスプレイユニット16のアプリケーシヨン画面を見ながらキー入力部14のキー15を操作して必要な入出力を行なう
[0029] アプリケーション実行環境20に対しては、本発明の着信通知機能を実現するため、キー検出部40、キー入力状態判定部42、キー判定基準設定部44、タイマ46、着信表示制御部48及び画面表示部50が設けられている。
・・・・・中略・・・・・
[0031] キー入力状態判定部42は、キー検出部 40から得られたキー入力状態につきアブリケーシヨン画面を優先表示させるか、着信通知を優先表示させるかを判定する。キー入力状態の判定は、キー判定基準設定部44により設定された判定基準に基づいて行なわれる。」(5?6頁)

ホ.「[0039] 図4は図2の携帯電話10におけるアプリケーション起動中の着信表示の説明図である。図4(A)はキー入力状態判定部42でアプリケーション画面の優先表示を判別した場合であり、液晶ディスプレイユニット16の画面全体にわたり起動中のアプリケーシヨンに対応したアプリケーション画面66を表示しており、この状態でメール着信が行なわれ、キー入力状態としてアプリケーション画面の優先表示が判別されるため、アプリケーション画面66の右上隅に小さく着信通知を示す小さなアイコンであるピクト68を表示している。
[0040] 図4(B)はキー入力状態判定部42で着信通知の優先表示が判定された場合であり、アプリケーション画面66の中央の前面に着信通知メッセージ70を大きく目立つように表示している。
[0041] すなわち本発明によればアプリケーション起動中にキー入力を頻繁に行なっていると図4(A)のようにアプリケーション画面66を妨げないように画面隅に小さく着信通知としてピクト68が表示され、一方、アプリケーション起動中にキー入力を行なうことなく例えばブラウザを起動してコンテンツを眺めているようなキー入力がほとんどない場合には、図4(B)のようにアプリケーション画面66の中央に大きく着信通知メッセージ70が表示される。」(7頁)

ヘ.「[0042] 図5は本発明による着信通知処理のフローチャートであり、キー入力状態の判定基準として図3(A)の判定基準テーブル52を使用した場合である。
[0043] 図5において、ステップS1でメール着信の有無をチェックしており、メール着信があるとステップ S2に進み、アプリケーションが起動中か否かチェックする。アプリケーションが起動中であればステップS3に進み、アプリケーションごとに定めた例えば図3(A)のような判定基準テーブル52の中から、現在起動中のアプリケーションに対応したキー入力判定基準を取得する。
[0044] 続いてステップS4でキー入力状態をキー検出部40から読み込む。続いてステップS5でステップS3で得られたキー入力の判定基準とステップS4で読み込んだ検出されたキー入力状態とを比較し、アプリケーション優先のキー入力状態か否か判定する。
[0045] 例えば現在起動中のアプリケーションが図3(A)の判定基準テーブル52におけるゲームであった場合に、着信表示優先のキー入力判定基準56として「5秒以内にキー入力」が設定されていることから、このときのキー入力状態の検出値としてキー入力の時間間隔と比較し、キー入力の時間間隔が5秒以内であればアプリケーション優先のキー入力状態と判定し、ステップS6に進み、図4(A)に示したようにアプリケーション画面66の隅に小さく着信通知を示す小さなアイコンとしてのピクト68を表示させる。
[0046] 一方、ステップ S5においてキー入力状態の検出値として読み込んだキー入力の間隔時間がキー入力の判定基準である5秒を超えていた場合には、着信通知優先のキー入力状態と判定してステップS7に進み、図4(B)のようにアプリケーション画面66前面の中央に目立つように拡大して着信通知メッセージ70を表示する。
[0047] なお、着信通知のリアルタイム性を確保するために、キー入力状態の取り込みは、着信とは独立にアプリケーションが起動されているときは常に判定しておくようにし、着信時は、直近の判定状態を用いて着信方法を決定するようにしても良い。
[0048] 続いてステップS8でメールオープンの有無をチェックしており、メールオープンがあればステップS9で着信表示を消去し、ステップS10で停止指示があるまでステップS1からの処理を繰り返す。」(7?8頁)

上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、
(a)上記ニ.の記載及び図2から、引用例1には「液晶ディスプレイユニット16」を有する「携帯端末装置」又は「携帯電話10」が記載され、同イ.?ハ.、ホ.の記載から、当該「携帯端末装置」は、「液晶ディスプレイユニット16」に「起動中のアプリケーションの画面66」と「着信通知」を同時に表示することが可能であると認められる。
そして、上記ホ.[0039]の「・・・着信通知を示す小さなアイコンであるピクト68・・・」、[0040]の「・・・着信通知メッセージ70を大きく目立つように表示している。」等の記載及び図4(A)(B)から、「着信通知」は一種の画面ということができるので、引用例1の「携帯端末装置」は、表示部に複数の画面が表示可能であると認められる。
(b)上記ロ.の「・・・本発明の携帯端末装置は、メール等のデータが着信した際に、・・・アプリケーション画面に影響のないように着信通知を表示し、・・・アプリケーション画面の全面となるように着信通知を表示制御する表示制御手段と、を備えたことを特徴とする。」、同ニ.[0028]?[0029]の「・・・各アプリケーションを起動すると液晶ディスプレイユニット16の前面にアプリケーション画面を表示し、・・・本発明の着信通知機能を実現するため、・・・着信表示制御部48及び画面表示部50が設けられている。」及び同ホ.の記載から、引用例1の「携帯端末装置」が、「液晶ディスプレイユニット16」に「アプリケーション画面」を表示中にメール等の「着信」があった場合に、表示中の「アプリケーション画面」とともに「着信通知」の画面を表示する表示制御手段を備えることは明らかである。
(c)上記ロ.の「・・・検出されたキー入力状態からアプリケーション画面を優先表示させるか着信通知を優先表示させるかを判定する判定部と、アプリケーション画面の優先表示を判定した場合はアプリケーション画面に影響のないように着信通知を表示し、着信通知の優先表示を判定した場合はアプリケーション画面の前面となるように着信通知を表示制御する着信表示制御部・・・」及び同ホ.の記載において、「アプリケーション画面」を「優先表示」したときは、「着信通知」は非優先表示となり、「着信通知」の画面を「優先表示」したときは、「アプリケーション画面」は非優先表示となるといえるので、引用例1の「携帯端末装置」は、「キー入力状態」に基づいて、「着信通知」の画面を優先表示とするか、非優先表示とするかを判定する判定部を備えるものと認められる。
さらに、当該「判定部」において、「着信通知」の画面が優先表示と判定された場合には、「着信通知」の画面を「アプリケーション画面」の前面に大きく目立つように表示することで優先表示し、「アプリケーション画面」は非優先表示とするよう制御するものと認められるので、引用例1の「携帯端末装置」は、当該制御のための制御手段を備えるといえる。
(d)上記ヘ.[0046]?[0048]の「・・・ステップ S5においてキー入力状態の検出値として読み込んだキー入力の間隔時間がキー入力の判定基準である5秒を超えていた場合には、着信通知優先のキー入力状態と判定してステップS7に進み、図4(B)のようにアプリケーション画面66前面の中央に目立つように拡大して着信通知メッセージ70を表示する。・・・続いてステップS8でメールオープンの有無をチェックしており、メールオープンがあれば・・・」という記載から、優先表示となった着信通知の画面を表示した後、メールを開封する操作をすることができることは明らかであるから、引用例1の「携帯端末装置」は、優先表示となった着信通知の画面に基づく操作に応じた処理をする手段を備えることは明らかである。
したがって、上記引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「液晶ディスプレイ16に複数の画面を表示可能な携帯端末装置であって、
液晶ディスプレイに16にアプリケーション画面66を表示中に着信があった場合に、表示中のアプリケーション画面66とともに着信通知の画面を表示する表示制御手段と、
キー入力状態に基づいて、前記表示制御手段によって表示される着信通知の画面を優先表示とするか、非優先表示とするかを判定する判定手段と、
前記判定手段によって着信通知の画面が優先表示と判定された場合に、着信通知の画面を優先表示し、アプリケーション画面66を非優先表示する制御手段と、
前記制御手段によって優先表示となった着信通知の画面に基づく操作に応じた処理をする手段と、
を備える携帯端末装置。」

(B)同じく原査定の拒絶理由に引用された国際公開第2006/038586号パンフレット(以下、「引用例2」という。)には、「電話装置」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「[0004] しかしながら、従来のテレビ受信装置では、テレビ視聴中に電話の着信があった場合、すべての着信について着信の報知がなされ、テレビ視聴の中断や割り込みがなされるという課題があった。また、着信の履歴を表示する場合においても、指示部で使用者からの指示があって始めて着信の履歴が表示されるという欠点があり、一つのテレビ番組の視聴を終えたときに着信の履歴を自動的に確認することができないという点で不利がある。
[0005] 本発明はこのような課題を解決して、発信者によりテレビ視聴中の着信報知を行う場合と行わない場合とを区別することができ、また、指定されたテレビ番組の視聴の終了後に視聴期間中にあった着信履歴を視聴していたテレビ番組終了後に自動的に表示することができる電話装置を提供することを目的とする。」(1?2頁)

ロ.「[0006] 上記目的を達成するために、本発明は、テレビ放送を受信するテレビ受信部と、電話通信を行う電話通信部と、電話の着信を検出し電話通信部を介して着信時に得られる発信者を特定するための発信者情報を検出する着信検出部と、発信者を特定するための発信者情報をあらかじめ電話帳情報として記憶する電話帳部と、テレビ受信部で受信したテレビ放送の内容を表示する表示部と、テレビ放送の内容を表示部に表示中に着信検出部により着信を検出した場合、着信検出部から得られた発信者情報と電話帳情報とを対比して、発信者情報と電話帳情報とがー致した時には表示部にテレビ放送の内容と発信者情報または電話帳情報とを同時に表示し、一致しない時には発信者情報または電話帳情報を表示しないよう制御する着信表示制御部とを備えることを特徴としている。」(2頁)

ハ.「[0052] また、表示部9へのテレビ画面と着信表示窓11との同時表示の形態としては、重ね合わせのほか、半透過表示(着信表示窓11と重なるテレビ画面の領域において、テレビ画面の輝度を下げた上で着信表示窓11を重ねてテレビ画面が透過するように表示)やテレビ画面を縦方向または横方向、または対角線方向に縮小表示して、着信表示窓11とテレビ画面とが重ならないように表示部 9にテレビ画面と同時に表示することも可能である。また、着信表示窓 11の領域を区切ることなぐ文字情報やアイコン、画像情報をスーパーインポーズによってテレビ画面上に表示することも可能である。」(14頁)

ニ.「[0059] 図4(a)は実施例2の電話装置における内部の構成図である。(なお、実施例1と同様の構成を有する部分については、同一符号を付してその説明を省略する。)
[0060] 図4の電話装置において、実施例1と相違する点は電話帳部7に各電話帳情報の各人毎に着信表示可否情報13を加え、この着信表示可否情報13を設定するための操作部12を設けた点である。電話帳部7に設定される着信表示可否情報13は、電話帳部7に登録される各登録者名毎、または電話番号や電子メールアドレスなどの発信者を特定するための発信者情報毎に操作部12を用いて使用者によって設定されるものである。例えばこの情報に1ビットを割り当て、「1」を設定したときには、当該発信者または当該発信者情報に一致する発信者から、テレビ視聴中に着信があつたときには着信を表示することを「可」として、「0」を設定したときには「否」と意味づけることとすることができる。
[0061] 図5には本発明の実施例2における電話装置の動作フローを表したフローチャートを示している。(なお、実施例2と同様の構成を有する部分については、同一符号を付してその説明を省略する。)
[0062] 図5の電話装置の動作フローを表したフローチャートにおいて、実施例1と相違する点は電話帳部7に該当する発信者情報があると判断した(S6のはい)後に、着信表示可否情報13の内容を確認するステップ(S10)を加えた点である。着信表示可否情報13が「否:0」と設定されていれば (S10のいいえ)、実施例1と同様の着信報知の処理(S3)を行い、「可:1」と設定されていれば(S10のはい)、実施例1と同様の着信表示の処理 (S7)を行う。
[0063] 以上のように構成した本発明の実施例2における電話装置においては、電話帳にあらかじめ登録している発信者からの着信であっても、あらかじめ設定された発信者からの着信のみを表示でき、それ以外の発信者からのテレビ視聴中の着信についてはテレビ画面と同時に着信が表示されることを防止できるという効果を奏する。」(15?16頁)

ホ.「[0069] また、グループによる分類の他、着信すべき発信者の重要度に応じた順位付けを行い、各発信者情報を順位分けして、順位毎にテレビ視聴中に着信があったときの着信表示の可否の設定を行うことも可能となる。」(17頁)

ヘ.「[0095] なお、テレビ視聴中に電子メールの着信をテレビ画面と同時に表示する場合においては、図15(a)に示すように発信者情報である発信者のメールアドレス等を表示する着信表示窓11の中に電子メールの返事を出す処理の指示を受け付ける電子メール返信指示部23を設け、テレビ視聴中に電子メールの着信があり、それが表示された状態において使用者により電子メールへの返信を行う場合は、電子メール返信指示部23に対してボタンの押下などにより指示を行うことによって、電子メールの返事を入力する窓24を表示する構成とすることも可能である。また、この処理は実施例1?3または実施例5に記載したテレビ視聴中の着信表示時(図2、図5のS7、図12、図14のS25)にも適用可能である。」(22?23頁)

上記引用例2の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、
(a)上記ニ.の記載及び図4から、引用例2には、「表示部9」を有する「電話装置」が記載され、同イ.?ハ.、ニ.[0063]、へ.の記載及び図15から、引用例2の「電話装置」は、「表示部9」に「テレビ画面」と電子メール等の「着信表示」の画面を同時に表示することが可能であると認められ、「着信表示制御部8」が当該表示のための制御を行うことは明らかである。
さらに、上記ハ.の「・・・テレビ画面を縦方向または横方向、または対角線方向に縮小表示して、着信表示窓11とテレビ画面とが重ならないように表示部 9にテレビ画面と同時に表示することも可能である。・・・」という記載から、「表示部9」に「テレビ画面」と「着信表示」の画面が重ならないように表示することが可能であることも明らかであり、「テレビ画面」は1つの画面であるから、引用例2の「電話装置」は、表示部に複数の画面を重ならないように表示可能な「電話装置」といえる。
(b)上記イ.[0005]の「・・・発信者によりテレビ視聴中の着信報知を行う場合と行わない場合とを区別することができ、・・・」、同ニ.[0060]の「・・・各人毎に着信表示可否情報13を加え、この着信表示可否情報13を設定するための操作部12を設けた点である。電話帳部7に設定される着信表示可否情報13は、電話帳部7に登録される各登録者名毎、または電話番号や電子メールアドレスなどの発信者を特定するための発信者情報毎に操作部12を用いて使用者によって設定されるものである。例えばこの情報に1ビットを割り当て、「1」を設定したときには、当該発信者または当該発信者情報に一致する発信者から、テレビ視聴中に着信があつたときには着信を表示することを「可」として、「0」を設定したときには「否」と意味づけることとすることができる。」及び[0063]の「・・・電話帳にあらかじめ登録している発信者からの着信であっても、あらかじめ設定された発信者からの着信のみを表示でき、それ以外の発信者からのテレビ視聴中の着信についてはテレビ画面と同時に着信が表示されることを防止できる・・・」及び同ホ.の「・・・着信すべき発信者の重要度に応じた順位付けを行い、各発信者情報を順位分けして、順位毎にテレビ視聴中に着信があつたときの着信表示の可否の設定を行うことも可能となる。」という記載において、発信者毎に着信表示の可否を設定すること、あるいは、発信者の重要度に応じた順位付けをして、順位毎に着信表示の可否を設定することは、発信者に優先度を付与し、優先度に基づいて着信表示の可否を判別するものと認められるので、引用例2の「電話装置」は、着信してきた相手の優先度に基づいて、「テレビ画面」の表示中に「着信表示」の画面の表示を制御するものと認められる。
(c)上記ヘ.の記載及び図15から、引用例2の「電話装置」では、「着信表示」の画面に「返信指示部23」のボタンが設けられ、当該ボタンを操作すると、着信した電子メールの内容が表示されるとともに返事を入力することができるものと認められるので、表示された「着信表示」の画面は着信に係る操作が可能であり、引用例2の「電話装置」は、「着信表示」の画面の操作に応じた処理をする手段を備えるものといえる。
したがって、上記引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「表示部に複数の画面を重ならないように表示可能な電話装置であって、
表示部に画面を表示中に着信があった場合に、表示中の画面とともに着信表示の画面を表示し、前記着信してきた相手の優先度に基づいて、着信表示の画面の表示を制御する着信表示制御部と、
前記着信表示制御部によって表示された着信表示の画面は着信に係る操作が可能であって、前記着信表示の画面の操作に応じた処理をする手段と、
を備えた電話装置。」

[対比・判断]
補正後の発明と引用発明1とを対比すると、
(A)引用発明1の「液晶ディスプレイ16」は補正後の発明の「表示部」に相当し、引用発明1の「携帯端末装置」は、「携帯電話10」でもあり、メール等の通信を行うものであるから、補正後の発明の「通信端末装置」と実質的な差異はない。
(B)引用発明1の「アプリケーション画面66を表示中」、「表示中のアプリケーション画面66」及び「アプリケーション画面66」は、それぞれ補正後の発明の「画面を表示中」、「表示中の画面」及び「着信画面以外の画面」に相当し、引用発明1の「着信通知の画面」は補正後の発明の「着信画面」に相当する。
(C)引用発明1の「キー入力状態に基づいて」と補正後の発明の「前記着信の着信相手の優先度に基づいて」とは、いずれも「所定の基準に基づいて」という点で一致する。
(D)引用発明1の「優先画面」、「非優先表示」とすることと、補正後の発明の「優先画面」、「非優先画面」とすることは、実質的な差異はないので、引用発明1の「優先表示」、「非優先表示」と補正後の発明の「着信のための操作である主要操作が可能な優先画面」、「前記主要操作よりも困難と見なされる操作である一部操作が可能もしくは操作が不可能な非優先画面」は、いずれも「優先画面」、「非優先画面」という点で一致する。
(E)引用発明1の「判定」、「判定手段」、「制御手段」は補正後の発明の「判別」、「判別手段」、「優先制御手段」にそれぞれ相当する。
(F)引用発明1の「前記制御手段によって優先表示となった着信通知の画面に基づく操作に応じた処理をする」と補正後の発明の「前記優先制御手段によって優先画面となった着信画面の操作に応じた処理をする」とは、いずれも「前記優先制御手段により優先画面となった着信画面に係る操作に応じた処理をする」という点で一致し、引用発明1の「手段」と補正後の発明の「操作制御手段」とは、実質的な差異はない。
したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「表示部に複数の画面を表示可能な通信端末装置であって、
表示部に画面を表示中に着信があった場合に、表示中の画面とともに着信画面を表示する表示制御手段と、
所定の基準に基づいて、前記表示制御手段によって表示される着信画面を、優先画面とするか、非優先画面とするかを判別する判別手段と、
前記判別手段によって着信画面を優先画面とすると判別された場合に、着信画面を優先画面とし、着信画面以外の画面を非優先画面とする優先制御手段と、
前記優先制御手段によって優先画面となった着信画面に係る操作に応じた処理をする操作制御手段と、
を備えることを特徴とする通信端末装置。」

<相違点>
イ.上記「複数の画面を表示可能」に関し、補正後の発明は「複数の画面を独立して表示可能」であるのに対し、引用発明1では「独立して表示可能」であることは明示されていない点。
ロ.上記「所定の基準」に関し、補正後の発明は「着信の着信相手の優先度」であるのに対し、引用発明1は「キー入力状態」である点。
ハ.上記「優先画面」、「非優先画面」に関し、補正後の発明は「着信のための操作である主要操作が可能な優先画面」、「前記主要操作よりも困難と見なされる操作である一部操作が可能もしくは操作が不可能な非優先画面」であるのに対し、引用発明1では当該構成は明示されていない点。
ニ.上記「着信画面に係る操作に応じた処理をする」に関し、補正後の発明は「着信画面の操作に応じた処理をする」のに対し、引用発明1では当該構成は明示されていない点。

まず、上記相違点イ.及びロ.について検討する。
平成23年11月 9日付け審判請求書における請求人の主張を参酌すると、補正後の発明の「複数の画面を独立して表示可能」とは、複数の画面が重ならずに表示されることを意味するものと認められる。
一方、「表示部に複数の画面を重ならないように表示可能な電話装置であって、表示部に画面を表示中に着信があった場合に、表示中の画面とともに着信表示の画面を表示する表示制御手段を備え、前記着信してきた相手の優先度に基づいて、着信表示の画面の表示を制御」することは、上記引用発明2の構成として公知である。
そして、引用発明2の電話装置も通信端末装置といえるものであり、表示中の画面に対し、着信表示の画面の表示を制御するものであるから、上記相違点イ.及びロ.に関し、引用発明1の「複数の画面を表示可能」、「キー入力状態」を「複数の画面を独立して表示可能」、「着信してきた相手の優先度」とすることは、引用発明1に引用発明2が備える構成を採用することにより容易になし得るものである。
次に、上記相違点ハ.及びニ.について検討する。
引用発明2の「着信表示の画面は着信に係る操作が可能」は、上記[引用発明](B)のヘ.及び(c)に記載したように、着信したメールを開封してメールの内容を表示する操作ができるものであるから、補正後の発明の「着信のための操作である主要操作が可能」と実質的な差異はない。
そして、引用発明2の「前記着信表示制御部によって表示された着信表示の画面」は、「前記着信してきた相手の優先度に基づいて」表示をしたものであるから、引用発明1の「優先画面(優先表示)」に引用発明2の「着信表示の画面」の構成を採用することは容易になし得ることであり、その際、引用発明1の「非優先画面(非優先表示)」の着信画面は、例えば、予め割り当てられたキー操作のような従来からの操作が可能なものに止まり、「優先画面」の操作と比べて制限された操作で、利便性に欠けるものとなることは明らかである。また、引用発明1において、「非優先画面(非優先表示)」の着信画面は、非優先である以上、「優先画面(優先表示)」に係る操作を妨げることがないよう、操作が不可能なのもとすることは適宜なし得ることである。
よって、上記相違点ハ.に係る構成は、引用発明1に引用発明2の構成を採用することにより容易になし得るものである。
同様に、上記相違点ニ.に係る構成も引用発明1に引用発明2の「着信表示の画面の操作に応じた処理をする」構成を採用することにより容易になし得るものである。
そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明1、2から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、上記補正後の発明は上記引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成23年11月 9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、「第2.1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項中の[引用発明]の項で、引用発明1、2として認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明1とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から、当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に上記補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、上記引用例1、2に記載された発明に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-16 
結審通知日 2013-01-22 
審決日 2013-02-04 
出願番号 特願2007-154825(P2007-154825)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高野 洋  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 山本 章裕
萩原 義則
発明の名称 通信端末装置、及びプログラム  
代理人 木村 満  

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