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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61L
管理番号 1272248
審判番号 不服2012-5371  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-22 
確定日 2013-04-01 
事件の表示 特願2008-160270「熱処理装置の運転方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年1月7日出願公開、特開2010-176〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成20年6月19日の出願であって、平成23年9月30日付けで拒絶理由が通知され、同年12月5日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月16日付けで拒絶査定されたので、平成24年3月22日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書により明細書及び特許請求の範囲が補正され、平成24年7月11日付けで特許法第164条第3項に基づく報告書を引用した審尋がなされたが、回答書の提出はなかったものである。

第2 平成24年3月22日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年3月22日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正前及び補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する補正は、本件補正前における「耐圧容器」を本件補正により「耐圧容器がレトルト釜であり」として、発明特定事項である「耐圧容器」を「レトルト釜」に限定するものである。
そして、本件補正前後の請求項1に係る発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一なので、上記補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許法第17条の2第3項の規定に反する新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかを、請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について検討する。
本願補正発明は、次のとおりのものである。
「被処理物を収容自在な耐圧容器、前記耐圧容器内に蒸気を供給するための供給路、前記耐圧容器内の流体を外に排出するための排出路、及び前記排出路に開閉弁を備える熱処理装置において、
前記被処理物を前記耐圧容器内に配置し、前記耐圧容器内に蒸気を供給して前記被処理物の温度と、前記耐圧容器内の圧力とを上昇させて前記被処理物を熱処理する熱処理装置の運転方法であって、
前記被処理物が、飲食品を充填して密封した密封容器であり、
前記耐圧容器がレトルト釜であり、
前記被処理物の温度を上昇させる過程で、前記排出路の開閉弁を閉じて前記供給路から蒸気を供給して前記耐圧容器内の圧力を上昇させる加圧工程と、前記排出路の開閉弁を開けて前記耐圧容器内の流体の一部を排出する排出工程とを交互に実施する熱処理装置の運転方法。」

2.刊行物に記載された発明
(1)引用例1の記載事項
本願出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開昭59-78674号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「レトルト内にプラスチック容器包装食品及び医薬品を収容し高温の加熱殺菌媒体による加熱と加圧空気による加圧とを行い加圧条件下に高温加熱殺菌するプラスチック容器包装食品及び医薬品のレトルト殺菌方法において、前記加圧を窒素等の不活性ガスによる加圧媒体の導入により行うことを特徴とするプラスチック容器包装食品及び医薬品のレトルト殺菌方法」(特許請求の範囲)
(イ)「具体的にこの発明において、プラスチック容器包装食品とはプラスチック成形容器、プラスチック成形袋等の所謂レトルトパウチと呼ばれる包装体に内容物が封入されたものである。」(第2頁左上欄18行?同頁右上欄1行)
(ウ)「この発明において加熱殺菌媒体は一般には水蒸気を使用し、レトルト内に前記レトルトパウチを収容した後、先ず常法により該水蒸気を送り込みながら該レトルト内の空気を排気し空気を水蒸気と置換する。このためレトルト内に残存する空気即ち酸素は微量でありこれは概ね無視できる量である。」(第2頁右上欄2?8行)

(2)引用例1に記載された発明
記載事項(ア)によれば、引用例1には、レトルト内でプラスチック容器包装食品を、高温の加熱殺菌媒体と加圧媒体の導入により、高温加熱殺菌するレトルト殺菌方法が記載されている。
そして、具体的には、同(ウ)によれば、加熱殺菌媒体として水蒸気を使用し、レトルト内にレトルトパウチ(同(イ)によればプラスチック容器包装食品に相当)を収容した後に、水蒸気を送り込みながら該レトルト内の空気を排気して水蒸気と置換し、その後に、高温の加熱殺菌媒体である水蒸気と加圧媒体によりレトルト殺菌を行っている。
したがって、引用例1には、次の発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「レトルト内にレトルトパウチを収容し、水蒸気を送り込みながら該レトルト内の空気を排気して水蒸気と置換し、その後に、高温の加熱殺菌媒体である水蒸気と加圧媒体を導入して高温加熱殺菌を行うレトルト殺菌方法。」

3.対比と判断
(1)対比
本願補正発明と引用例1発明とを比較する。
まず、引用例1には、レトルト殺菌方法を行う具体的装置についての直接的な記載はない。しかし、引用例1発明においても、レトルトパウチを高温加熱と加圧により滅菌処理しているので、引用例1発明の「レトルト」は、本願補正発明におけると同様に「被処理物を収容自在な耐圧容器」及び「レトルト釜」でなければならないし、レトルトに蒸気を供給するための供給路、レトルト内の流体を外に排出するための排出路、及び排出路に開閉弁を備えた熱処理装置が、引用例1発明を実施する上で必要となることは明らかである。
このため、引用例1には、引用例1発明を実施する上で必要な熱処理装置が実質的に記載されているものと認められるから、該熱処理装置は、「被処理物を収容自在な耐圧容器、耐圧容器内に蒸気を供給するための供給路、耐圧容器内の流体を外に排出するための排出路、及び排出路に開閉弁を備える熱処理装置」である点で、本願補正発明における熱処理装置に相当する。
また、引用例1発明においても、その熱処理装置を運転するにあたり、被処理物であるレトルトパウチをレトルト内に収容し、高温の加圧殺菌媒体である水蒸気と加圧媒体を導入して高温加熱殺菌を行っているので、引用例1発明におけるレトルト殺菌方法は、本願補正発明における「被処理物を前記耐圧容器内に配置し、前記耐圧容器内に蒸気を供給して前記被処理物の温度と、前記耐圧容器内の圧力とを上昇させて前記被処理物を熱処理する熱処理装置の運転方法」に相当する。
さらに、引用例1発明においては、高温の加熱殺菌媒体である水蒸気と加圧媒体とを導入して高温加熱殺菌を行う前に、水蒸気を送り込みながらレトルト内の空気を排気して水蒸気と置換しているので、熱処理前に、空気を排気するとともに、置換した水蒸気により被処理物の温度の上昇が行われていると認められる。
一方、本願補正発明において行う「前記被処理物の温度を上昇させる過程で、排出路の開閉弁を閉じて前記供給路から蒸気を供給して前記耐圧容器内の圧力を上昇させる加圧工程と、前記排出路の開閉弁を開けて前記耐圧容器内の流体の一部を排出する排出工程とを交互に実施」することは、本願明細書の段落【0004】の記載によれば、レトルト釜内の残存空気を追い出すために行うものである。
このため、引用例1発明と本願補正発明とは、熱処理前に被処理物の温度を上昇させる過程で、レトルト釜内(耐圧容器内)の残存空気の追い出しを行う点で共通する。
そして、引用例1発明の「レトルトパウチ」は、記載事項(イ)によれば、包装体に食品である内容物が封入されたものであるので、本願補正発明の「飲食品を充填して密封した密封容器」に相当するし、引用例1発明における「水蒸気」は本願補正発明における「蒸気」と同義であるので、結局、本願補正発明と引用例1発明の一致点と相違点は、次のとおりとなる。
(i) 一致点
「被処理物を収容自在な耐圧容器、前記耐圧容器内に蒸気を供給するための供給路、前記耐圧容器内の流体を外に排出するための排出路、及び前記排出路に開閉弁を備える熱処理装置において、
前記被処理物を前記耐圧容器内に配置し、前記耐圧容器内に蒸気を供給して前記被処理物の温度と、前記耐圧容器内の圧力とを上昇させて前記被処理物を熱処理する熱処理装置の運転方法であって、
前記被処理物が、飲食品を充填して密封した密封容器であり、
前記耐圧容器がレトルト釜であり、
前記被処理物の温度を上昇させる過程で、レトルト釜内の残存空気の追い出しを行うことからなる熱処理装置の運転方法。」
(ii) 相違点
耐圧容器(レトルト釜)内の残存空気の追い出しを、本願補正発明においては、「排出路の開閉弁を閉じて供給路から蒸気を供給して耐圧容器内の圧力を上昇させる加圧工程と、排出路の開閉弁を開けて耐圧容器内の流体の一部を排出する排出工程とを交互に実施する」のに対し、引用例1発明では、「水蒸気を送り込みながらレトルト内の空気を排気して水蒸気と置換」することで行う点。

(2)判断
蒸気により被処理物に対して滅菌等の熱処理を行うにあたり、該熱処理に先立って熱処理槽内の空気を排出することを目的として、該熱処理層内の空気の排出と蒸気の導入を交互に繰り返して行うことは、本願出願前に周知の技術である。
例えば、本願出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開2002-119578号公報(以下「周知例1」という。)には、蒸気滅菌器の運転方法が記載されており(特許請求の範囲)、予熱工程に続いて行われる真空工程において、滅菌槽内の空気の排気と滅菌槽への蒸気の導入を交互に繰り返して行うことで、被滅菌物中に含まれる空気を十分に排出することができる旨が記載されている(段落【0018】【0019】)。
また、同じく特開2003-250866号公報(以下「周知例2」という。)には、蒸気処理工程を含むエンドトキシン活性の低減方法が記載されており(特許請求の範囲の請求項1)、予熱の後に実施される空気排除工程において(段落【0021】)、容器本体内に蒸気が加圧状態で充填される充填工程と充填された蒸気を外部に排出する排出工程を実施すること(段落【0023】)、及び、該充填工程と該排出工程を繰返して実施すると、容器本体内に残留している空気を効果的に排除することができる旨が記載されている(段落【0024】)。
さらに、本願出願前に頒布され、前置報告書で引用された特開平10-127740号公報(以下「周知例3」という。)には、蒸気により滅菌槽内の被滅菌物を滅菌する滅菌装置が記載されており(特許請求の範囲の請求項1)、滅菌槽内に被滅菌物を入れて滅菌する通常運転は、前処理工程、滅菌工程及び後処理工程を含むが、前処理工程の実行時には、滅菌槽内に加圧状態の蒸気を導入し、これにより滅菌槽の内外から、滅菌槽に収容した被滅菌物を加熱して所定温度に昇温すると共に滅菌槽内の空気の排出を行うが、この蒸気の導入と排出とを交互に行う方式が採用される旨が記載されている(段落【0017】)。
これらの周知例1?3の記載を参酌すれば、蒸気滅菌等の熱処理を行う熱処理槽内から該熱処理に先だって空気を排出するための手段として、熱処理槽内の空気の排気と蒸気の導入を繰り返して行うことは、当業者には周知の技術であるといえる。
そして、引用例1発明においては、水蒸気による殺菌に先立つ空気排気手段として、水蒸気を送り込みながら該レトルト内の空気を排気して水蒸気と置換することを採用しているが、同じく蒸気による高温熱処理の技術分野において、該高温熱処理に先立つ空気の排気手段として、処理槽内の空気の排気と蒸気の導入を繰り返すことは周知技術であり、空気を効果的に排除することは一般的な課題であるので、引用例1発明における空気排気手段として、該周知技術を採用してみようとすることは、当業者であれば容易に想到するところである。その効果も、空気の排気という点で異なるところはないので格別のものとすることはできない。
したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易になしえたものである。

(3)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、周知例1において予熱工程に続いて行われる真空工程や周知例2において予熱の後に実施される空気排除工程は、いずれも被処理物中に含まれる空気を排出するための工程に過ぎず、いずれの工程においても被処理物の温度を上昇させることについては記載されていないので、引用例1発明におけるレトルト内の空気を排気して水蒸気と置換する工程を、周知例1の真空工程や周知例2の空気排除工程で置き換えることはできない旨を主張する(第7頁)。
しかし、周知例1における真空工程や周知例2における空気排除工程においては、いずれも、空気の排気と共に蒸気の導入が繰り返されており、繰り返し導入される蒸気により被処理物の温度は上昇しているものと認める。
このことは、周知例3の記載からも確認することができる。すなわち、周知例3には上記したとおり、前処理工程の実行時には滅菌槽内に加圧状態の蒸気を導入し、これにより滅菌槽の内外から、滅菌槽に収容した被滅菌物を加熱して所定温度に昇温すること、及び、蒸気の導入・排出は交互に行われることが記載されている。
ここで、周知例3の「滅菌槽の内外から」の加熱のうちの「滅菌槽の内から」の加熱は、滅菌槽内に導入された加圧状態の蒸気によるものであることは明らかであるので、繰り返し導入される蒸気によって被滅菌物は加熱されて所定温度に昇温することが記載されているといえる。
以上のとおり、周知例1?3の記載から把握される周知技術である、蒸気による高温熱処理に先だって行われる処理槽からの空気の排気と蒸気の充填を交互に行うことによっても、処理槽内の被処理物の温度は上昇すると理解することができるので、請求人の主張を採用することはできない。

4.本件補正についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成24年3月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成23年12月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下「本願発明」という)。
「被処理物を収容自在な耐圧容器、前記耐圧容器内に蒸気を供給するための供給路、前記耐圧容器内の流体を外に排出するための排出路、及び前記排出路に開閉弁を備える熱処理装置において、
前記被処理物を前記耐圧容器内に配置し、前記耐圧容器内に蒸気を供給して前記被処理物の温度と、前記耐圧容器内の圧力とを上昇させて前記被処理物を熱処理する熱処理装置の運転方法であって、
前記被処理物が、飲食品を充填して密封した密封容器であり、
前記被処理物の温度を上昇させる過程で、前記排出路の開閉弁を閉じて前記供給路から蒸気を供給して前記耐圧容器内の圧力を上昇させる加圧工程と、前記排出路の開閉弁を開けて前記耐圧容器内の流体の一部を排出する排出工程とを交互に実施する熱処理装置の運転方法。」

2.進歩性の判断
本願発明は、上記第2[理由]で検討した本願補正発明の「耐圧容器がレトルト釜」について、「レトルト釜」との特定事項を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」の「[理由]3.(2)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-28 
結審通知日 2013-01-31 
審決日 2013-02-14 
出願番号 特願2008-160270(P2008-160270)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61L)
P 1 8・ 121- Z (A61L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小久保 勝伊  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官 中澤 登
松本 貢
発明の名称 熱処理装置の運転方法  
復代理人 太田 隆司  
代理人 北村 修一郎  
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