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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23F
管理番号 1273139
審判番号 不服2012-10145  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-31 
確定日 2013-04-15 
事件の表示 特願2010-224965「クロゲン酸類含有飲料」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月 6日出願公開、特開2011- 129〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年 5月28日に出願した特願2004-159677号(以下、「原出願」という。)の一部を平成22年10月 4日に新たな特許出願としたものであって、平成24年 2月24日付けで拒絶査定がなされ、これを不服として平成24年 5月31日付けで拒絶査定不服審判が請求されたが、平成24年10月31日付けで当審による最初の拒絶理由が通知され、これに対して平成24年12月26日付けで意見書が提出されたものである。

本願発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)及び請求項2に係る発明(以下、「本願発明2」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
カフェイン含有量が0.2重量%以下である脱カフェインしたコーヒー豆を水又はエタノール濃度60重量%以下のエタノール水溶液で抽出し、得られた抽出物を乾燥し、そして、乾燥された抽出物を焙煎粉砕コーヒー豆に混合することを含む、クロロゲン酸類とカフェインとの重量比が2以上である焙煎粉砕コーヒー豆の製造方法。」

「【請求項2】
カフェイン含有量が0.2重量%以下である脱カフェインしたコーヒー豆を水又はエタノール濃度60重量%以下のエタノール水溶液で抽出し、得られた抽出物を乾燥し、そして、乾燥された抽出物を可溶性粉末コーヒーに混合することを含む、クロロゲン酸類の含有量が5.0重量%以上であり、かつクロロゲン酸類とカフェインとの重量比が2以上である可溶性粉末コーヒーの製造方法。」


2 当審による最初の拒絶理由通知の概要
平成24年10月31日付けの当審による最初の拒絶理由通知の概要は、以下のとおり。
「1 本件出願の下記の請求項に係る発明は、・・(略)・・特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

請求項1?4
引用刊行物
刊行物1:特表昭63-502319号公報(原審の文献1)
刊行物2:特開平8-23939号公報(当審追加)
周知例1:特開平2-20249号公報(原審の文献6)
周知例2:特開昭63-22145号公報(原審の文献5)
周知例3:国際公開第2002/100192号(当審追加)
備考
1 刊行物1に記載された発明
上記刊行物1には、クロロゲン酸が、焙煎によって減少してしまうため(2頁右下欄8?14行)、カフェインを除去した未加工コーヒー(豆)を水で抽出し、抽出液を、焙煎粉砕コーヒー(豆)或いはインスタントコーヒー粉末に添加することで、クロロゲン酸の量を高める事(請求項1、5、18及び3頁左下欄1行)が記載されている。
2 請求項1、2及び4に係る発明について
(1)相違点
・・(略)・・
ア 脱カフェインしたコーヒー豆のカフェイン含有量。
イ クロロゲン酸含有の抽出液を乾燥してから混入させる点。
ウ 混入後のクロロゲン酸とカフェインとの重量比。
(2)相違点ア及びウについて
・・(略)・・当業者の実施化に際しての設計的事項にすぎない。
(3)相違点イについて
ア 抽出物を乾燥させる点について
コーヒー等植物からの抽出物を各種飲食品と混合させる際に、・・(略)・・抽出物の形態を適宜変えて混合させることは周知の技術手段であり、例えば、・・・刊行物2の【0014】に、・・(略)・・
イ 可溶性粉末コーヒーの場合
・・(略)・・インスタントコーヒーに、・・(略)・・粉末状態での添加方法を採用しようとすることはごく自然な発想・・(略)・・
ウ 焙煎粉砕コーヒー豆の場合
・・(略)・・乾燥物(粉体)を添加することはよく知られた技術であり、上記刊行物2、周知例3のように脱カフェインしたコーヒー生豆からの抽出物においても、乾燥物を得ることが行われている・・(略)・・」


3 引用刊行物及びその摘記事項
当審による最初の拒絶理由通知で引用した原出願の出願日前に国内又は外国において頒布された刊行物1、2及び周知例1?3には、それぞれ次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で引いたものである。以下、同じ。)

(1)刊行物1(特表昭63-502319号公報)には、「コーヒーおよびその製造法」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
(刊1ア)「請求の範囲
1. 2.8重量%を越える高められたクロロゲン酸含量を有する焙煎コーヒー、あるいは8.5重量%を越える高められたクロロゲン酸含量を有するインスタントコーヒー粉末。
・・(略)・・
4. 未加工のコーヒーから取り出され、焙煎コーヒーに添加される成分、特にクロロゲン酸の含量が高められたコーヒー。
5. 未加工のコーヒーを溶媒で処理することにより抽出物を調製し、該抽出されたコーヒーおよび/または抽出されなかったコーヒーを焙煎し、必要に応じて濃縮抽出物の全体または一部を焙煎コーヒーに粉砕前または粉砕後に添加し、そして該コーヒーを乾燥させる、請求の範囲第1項から第4項に記載のコーヒーの製造方法。
6. 前記溶媒として水を用いる、請求の範囲第5項に記載の方法。
・・(略)・・
12. 単離されたクロロゲン酸を焙煎コーヒーに添加する、請求の範囲第1項から第3項に記載の焙煎コーヒーの製造方法。
・・(略)・・
18. カフェインを除去、または部分的にカフェインを除去した未加工のコーヒーを出発物質として用いるか、あるいは抽出の間にカフェインが部分的にまたは完全に該未加工のコーヒーから除去される,請求の範囲第5項から第7項に記載の方法。」(1頁左欄1行?2頁左上欄最終行)

(刊1イ)「本発明はクロロゲン酸含量の高い焙煎コーヒーまたはインスタントコーヒー、およびその製造方法に関する。
・・(略)・・クロロゲン酸は、未加工のコーヒー成分のなかで焙煎によりその含量が有意に減少する成分である。・・(略)・・
未加工のコーヒーからカフェインを除去することによる、低カフェインコーヒーまたはカフェインを含有しないコーヒーの種々の製造法が知られている。これらの方法においては、未加工のコーヒーは水もしくは他のある溶液で抽出され・・(略)・・上記抽出物からカフェインが除去される・・(略)・・そのような方法により、どのようにして未加工のコーヒーからカフェインが除去され、そのコーヒーがカフェイン以外のすべての抽出可能な成分で飽和された抽出物と接触するようになるかが述べられている。・・(略)・・この方法によりまた、未加工の低カフェインコーヒーまたは未加工の脱カフェインコーヒーが得られる。これを焙煎すると他の成分、特にクロロゲン酸の有意の部分が失われる。・・(略)・・コーヒーの焙煎時にクロロゲン酸含量の著しい減少を避けることが望ましい。通常、コーヒーのクロロゲン酸含量は焙煎中に約40から80%に減少する。従って、焙煎コーヒー中には、約2重量%、そしてせいぜい約2.4?2.6重量%のクロロゲン酸が存在するだけである・・(略)・・
従って本発明は、クロロゲン酸含量の高い焙煎コーヒーまたはクロロゲン酸含量の高いインスタントコーヒー粉末に関する。この焙煎コーヒーのクロロゲン酸含量は、2.8重量%を越える量、好ましくは少なくとも3重量%(例えば3.25重重%もしくはそれ以上)であり、インスタントコーヒー粉末のクロロゲン酸含量は8.5重量%を越える量である。」(2頁右上欄3行?3頁左上欄10行)

(刊1ウ)「上記のように、本発明の特別な点は、クロロゲン酸を含有する抽出物を焙煎コーヒーに加えることにより、クロロゲン酸濃度の高い焙煎コーヒーが得られ得るということである。しかし、本発明の他の実施態様によれば、グリーンコーヒー豆または他の植物から得たクロロゲン酸を焙煎コーヒーに混合することもまた可能である」(4頁左上欄16行?21行)

(刊1エ)「本発明の方法はまた、カフェインを除去したもしくは部分的に除去した、焙煎コーヒーを製造するのに用いられ得る。その場合は、未加工のコーヒーをもとにし、そのコーヒーからカフェインが部分的にもしくは全部除去される。」(4頁右上欄最終行?左下欄3行)

(刊1オ)「本発明に従って、粉末状の可溶性あるいはインスタントコーヒーを得ることもできる。市販のインスタントコーヒー粉末は、通常の使用量の場合コーヒー100ml当り約51から72mgのクロロゲン酸含量となる。約3.5から5.0重量%のクロロゲン酸を含む。通常の焙煎コーヒーは、標準的なフィルター調製法を用いてコーヒー100ml当り約130mgのクロロゲン酸を含むコーヒー飲料となり、換言するとインスタントコーヒー粉末のクロロゲン酸含量は特に低い。本発明の焙煎コーヒーを用いると、コーヒー飲料はコーヒー100mg当り160mg以上のクロロゲン酸量を含む。このように、本発明に従い、インスタントコーヒーを生産する工程における適切な個所で、あるいは完成したインスタントコーヒー粉末に、高いクロロゲン酸含量のコーヒーが得られることを確実にするために、充分なクロロゲン酸を加えた。この目的のために、約5?7重量%、特に約6重量%のクロロゲン酸をインスタントコーヒー粉末に添加することが通常必要であり、それによりクロロゲン酸の含量は少なくとも約8.5重量%となる。」(4頁右下欄1行?17行)

(刊1カ)「本発明の処理を施した焙煎コーヒー」の乾燥物中のクロロゲン酸含量として、5頁右上欄の表1、右下欄の表2、6頁左上欄の表3にそれぞれそれぞれ、3.19%、3.30%、3.28%が示されている。

(2)刊行物2(特開平8-23939号公報)には、「飲料の香味劣化防止剤および飲料の香味劣化防止方法」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
(刊2ア)「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは飲料の香味劣化防止について鋭意研究した結果、飲料にイソクロロゲン酸、カフェー酸、クロロゲン酸、コウジ酸、ネオクロロゲン酸、フェルラ酸、プソイドクロロゲン酸、没食子酸、からなる群の1種または2種以上と、併せてリンゴ抽出物とを添加することにより相乗効果が発揮され飲料の香味劣化防止に顕著な効果のあることを見いだした。・・(略)・・」

(刊2イ)「【0008】本発明でいうイソクロロゲン酸、カフェー酸、クロロゲン酸、・・(略)・・はこれらの精製品でも未精製品でもよく、またこれらの成分を産生する植物、動物、微生物等天然物より得られた粗精製物であってもかまわないし、・・(略)・・コーヒー豆、・・(略)・・その他から水、アルコール・・(略)・・抽出される成分をそのまま使用することもできる。・・(略)・・それらの濃縮物であっても、凍結乾燥や噴霧乾燥等を行なった粉末でもよく、どのような剤形のものでも使用できる。・・(略)・・」

(刊2ウ)「【0014】
【実施例】
参考例1
機械粉砕したコーヒーの生豆500gを超臨界流体抽出装置の2L容量の抽出槽に仕込み、二酸化炭素とエントレーナとして水を用いて45℃、200気圧で6時間抽出して脱脂、脱臭、脱カフェインした。次いで50%(v/v)エタノール5Lを加えて4時間50℃で攪拌抽出した。固形分を除去し、抽出液を減圧乾固し、65gの乾固物を得た(以下コーヒー抽出物という)。
・・(略)・・
【0021】実施例5
コーヒー抽出物を3gとリンゴ抽出物B3gとを混合した香味劣化防止剤5を6g調製した。」

(刊2エ) 上記(刊2ア)から、刊行物2には、香味劣化防止のために「イソクロロゲン酸、カフェー酸、クロロゲン酸、コウジ酸、ネオクロロゲン酸、フェルラ酸、プソイドクロロゲン酸、没食子酸、からなる群の1種または2種以上」(以下、「クロロゲン酸等」という。)と「リンゴ抽出物」とを用いること、また、(刊2ウ)の【0021】から、コーヒー抽出物とリンゴ酸とを混合して香味劣化防止剤としていることがそれぞれ記載されているから、コーヒー抽出物がクロロゲン酸類等である。そして、コーヒー抽出物は、【0014】から、コーヒー生豆を脱カフェインした後の50%エタノール抽出物であること、(刊2イ)には、クロロゲン酸等は、コーヒー豆等の植物からの抽出物でよいこと、が記載されているから、【0014】で抽出されたコーヒー抽出物はクロロゲン酸類含有物である。

(3)周知例1(特開平2-20249号公報)には、「コーヒー生豆の脱カフェイン法」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
(周1ア)「(従来技術)
カフエインはコーヒー、紅茶、緑茶などに含まれていて人体に及ぼす生理作用は古くから知られており、興奮剤や利尿剤あるいは強心剤として用いられている。ところがカフエインのこのような性質は睡眠の妨げとなつたり、心臓に疾患のある人にとつてはむしろ有害な作用を及ぼすことになるため、最近コーヒーからカフエインを除去した脱カフエインコーヒーが好まれる傾向にあり、コーヒー豆からカフエインを除去する脱カフエイン法がいくつか知られている。
従来から知られている脱カフエイン法には、(1)水抽出法、(2)有機溶媒抽出法、(3)超臨界ガス法がある。」(2頁左上欄2?15行)

(周1イ)「(実施例1)
一例として、10kgのコーヒー生豆(コロンビア)を・・(略)・・。 次に、前処理コーヒー生豆5kgを・・(略)・・。
この結果、下記に示すように脱カフエイン率90.2%の脱カフエインコーヒー生豆が得られた。
原料コーヒー生豆 脱カフエインコーヒー生豆
(乾燥後)
カフエイン(wt%)1.33 0.13
水 分(wt%)9.9 10.1」(5頁左下欄8行?右下欄10行、なお、表中の罫線は省略した。)

(4)周知例2(特開昭63-22145号公報)には、「生コーヒーの脱カフエイン方法」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
(周1ア)「驚くべきことに、本発明による特定の組み合わせが有効な脱カフェイン法となり、・・(略)・・
第2の利点は、特許請求の範囲の方法が、培抄後の処理コーヒーの味に偏りを起こす物質の生成で問題を生じないことであり、これは恐らくはクロロゲン酸の分解が低減される事実によるものであろう。」(2頁右下欄11?最終行)

(周2イ)「実施例
カフェイン含有量1.2重量%の生コーヒーを、70℃において6時間水で抽出した。この抽出は、液体を抽出されるコーヒー上と炭素カラム上とに交互に通過させることによって行なった。こうして抽出液を活性炭で処理し、次に実質的にカフェインから解放されたpH4.8の抽出液を得た。
実験が終わった後、湿った生コーヒーを乾燥し、抽出液と合わせた。最終的に得られた生コーヒーのカフェイン含有量は0.1重量%(生コーヒーに対して)であった。」(4頁左上欄11行?右上欄1行)

(4)周知例3(国際公開第2002/100192号)には、「TASTE MODIFIERS COMPRISING A CHLOROGENIC ACID(クロロゲン酸を含む味覚改変剤:以下、英文の後の()内の日本語は、当審による翻訳である。)」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
(周3ア)「Claims
・・・・・・
13. A method of forming a chlorogenic acid extract, comprising the steps of extracting chlorogenic acid from a botanical source in a solvent composed of water and/or a polar organic solvent at 30-80 ℃ one or more times.
・・・・・・
15. Method according to claims 13 or 14, wherein the organic solvent used for extraction is selected from the group consisting of methanol, ethanol, n-propanol, 2-propanol, acetone and propylene glycol, preferably methanol and ethanol, most preferably ethanol, the composition of the solvent being in the range of 100/0 water/organic solvent (w/w) to 10/90 water/organic solvent (w/w), more preferably in the range of 50/50 water/organic solvent (w/w) to 30/70 water/organic solvent (w/w).
・・・・・・
19. A method according to any of the claims 13-18, extracting chlorogenic acid from green coffee beans, preferably green robusta coffee beans.
20. An extract obtainable according to any of the claims 13-19.(特許請求の範囲 ・・(略)・・
13.水および/または極性有機溶媒からなる溶媒中において、30℃?80℃において、1回または2回以上の、植物性供給源からクロロゲン酸を抽出する工程を含む、クロロゲン酸抽出物を形成するための方法。
・・(略)・・
15.抽出に用いられる有機溶媒が、・・(略)・・最も好ましくはエタノールから選ばれ、溶媒の組成が、水/有機溶媒100/0?10/90までの範囲(w/w)、より好ましくは50/50?30/70の範囲(w/w)である、請求項13または14に記載の方法。
・・(略)・・
19.緑色コーヒー豆、好ましくは緑色ロブスタコーヒー豆からクロロゲン酸を抽出する、請求項13?18のいずれかに記載の方法。
20.請求項13?19のいずれかによって得られる抽出物。)」(17頁1行?19頁10行)

(周3イ)「Green robusta coffee beans may be extracted with constant agitation in solvents composed of water and polar organic solvents. The organic solvents that may be used include methanol, ethanol, ・・・・ The beans may either be the regular beans or decaffeinated beans. They may be extracted either as whole beans or after grinding. The extraction may be carried out either with water alone or with water in combination with one or more solvents listed above.(緑色ロブスタコーヒー豆からの抽出は、水および極性有機溶媒からなる溶媒中において、一定に撹拌し続けることによって行ってよい。使用できる有機溶媒には、メタノール、エタノール、・・(略)・・を含む。豆は、普通のものでもカフェインを抜いた豆でもよい。豆全体または挽いた後のものでも抽出は行える。抽出は水だけで行っても、水と上記の1種または2種以上の溶媒とを組み合わせて行ってもよい。)」(8頁下から3行?9頁2行)

(周3ウ)「The aqueous solution obtained after any of the above operations may be further concentrated under vacuum. It may be directly dried under vacuum to a tan-colored powder. Alternatively, it may be concentrated to a solid content of about 20% to 45% of the total weight, followed by spray-drying to a tan-colored powder. The spray-drying may be performed with or without carriers.
Example 1
Extraction and Purification by Precipitation
Whole green robusta coffee beans (21.8 kg) are extracted with a water and ethanol (95%) mixture at a ratio of 85/15 w/w. The beans are loaded in a conical-shaped extractor and the solvent is circulated at 60℃ for 16 hours. The extract is collected by draining from the extractor and the residual beans are extracted with fresh solvent of the same composition for two more times. The amount of solvent used for each extraction is between 2 to 4.5 times of the bean weight. The extracts are combined and concentrated to 36.3 kg. An amount of ethanol equal to the extract weight is added to induce the precipitation of protein and other insoluble material in the extract. The precipitation is discarded and the supernatant is collected by filtration and further concentrated to 9.8 kg. The concentrated extract is spray-dried without addition of carrier to form a tan-colored powder. For every kilogram of green coffee bean, 146 gram of powder is obtained. The powder is water-soluble, it forms a clear solution in water. The chlorogenic acid content is analyzed by HPLC. The analysis reveals the presence of several different types of chlorogenic acid, which amount to about 35% of the total mass of the extract. (上記のあらゆる処理の後に得られる水相は、さらに真空下で濃縮してよい。それは、真空下で黄褐色の(tan-colored)粉末までに直接乾燥できる。あるいは、全重量の固形重量の約20%?45%の固体まで濃縮し、黄褐色粉末になるまでスプレードライを行ってもよい。前記スプレードライは、担体の有無にかかわらず行うことができる。
例1
沈殿による抽出と精製
緑色ロブスタコーヒー豆全粒(21.8kg)を、水とエタノール(95%)85/15(w/w)の割合の混合溶媒で抽出する。豆を円錐形の抽出装置につめ、溶媒を60℃で16時間循環させる。抽出物を抽出装置からの排出口で集め、残った豆を同じ組成の新しい溶媒でさらに2回以上抽出する。それぞれの抽出に使われる溶媒量は、豆重量の2?4.5倍の間である。抽出物をまとめ、36.3kgまで濃縮する。抽出物重量に対し同量のエタノールを抽出物中のタンパク質や他の不溶成分の沈澱を誘導するために加える。沈澱を捨て、上澄みをろ過で集め、9.8kgまでさらに濃縮する。濃縮抽出物を、担体を加えることなく、スプレードライによって黄褐色の粉末にする。緑色コーヒー豆全キログラム中に対し、146グラムの粉末が得られる。この粉末は水溶性であり、水中で透明な液体になる。クロロゲン酸濃度はHPLCによって分析される。分析によって、数種の異なる型のクロロゲン酸の存在と、それが抽出物の全量の35%の量であることが明らかになる。)」(10頁下から13行目?11頁5行)


4 当審の判断
(1)刊行物1に記載の発明
ア 上記摘記事項(刊1ア)?(刊1エ)、(刊1カ)を整理すると、刊行物1には、
「2.8重量%を越える、好ましくは少なくとも3重量%、例えば3.25重重%もしくはそれ以上に高められたクロロゲン酸含量を有する焙煎コーヒーの製造方法であって、
未加工のコーヒーを溶媒である水で処理することにより抽出物を調製し、当該調製は、カフェインを除去または部分的に除去した低カフェインコーヒーまたは脱カフェインコーヒーである未加工のコーヒーを出発物質として用いるか、あるいは抽出の間にカフェインが部分的にまたは完全に該未加工のコーヒーから除去される調製であって、
該抽出されたコーヒーおよび/または抽出されなかったコーヒーを焙煎し、必要に応じて濃縮抽出物の全体または一部を焙煎コーヒーに粉砕前または粉砕後に添加・混合し,そして該コーヒーを乾燥させるコーヒーの製造方法」
に関する発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

イ 上記摘記事項(刊1ア)、(刊1イ)、(刊1オ)を整理すると、刊行物1には、
「8.5重量%を越える高められたクロロゲン酸含量を有するインスタントコーヒー粉末の製造方法であって、
完成したインスタントコーヒー粉末に、高いクロロゲン酸含量のコーヒーが得られることを確実にするために、充分なクロロゲン酸を加えるコーヒーの製造方法」
に関する発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。


(2)本願発明1と引用発明1との対比・判断
ア 本願発明1と引用発明1との対比
(ア)引用発明1の「未加工のコーヒー」および「クロロゲン酸」は、それぞれ本願発明1の「コーヒー豆」および「クロロゲン酸類」に相当する。
(イ)引用発明1の調製は、未加工のコーヒーを処理するに際して、「カフェインを除去または部分的に除去した低カフェインコーヒーまたは脱カフェインコーヒーである未加工のコーヒーを出発物質として用いるか、あるいは抽出の間にカフェインが部分的にまたは完全に該未加工のコーヒーから除去」するものであり、出発物質としての「未加工のコーヒー」を、「脱カフェインコーヒーである未加工のコーヒーを出発物質として用いる」ことが選択肢として特定されていることは明らかである。したがって、引用発明1の「カフェインを除去または部分的に除去した低カフェインコーヒーまたは脱カフェインコーヒーである未加工のコーヒーを出発物質として用いるか,あるいは抽出の間にカフェインが部分的にまたは完全に該未加工のコーヒーから除去される調製」に用いられる「未加工のコーヒー」は、本願発明1の「脱カフェインしたコーヒー豆」に相当する。
(ウ)引用発明1の「溶媒である水で処理することにより抽出物を調製」は、本願発明1の「水又はエタノール濃度60重量%以下のエタノール水溶液で抽出」に相当する。
(エ)刊行物1の摘記事項(刊1ウ)中の「クロロゲン酸を焙煎コーヒーに混合することもまた可能である」との記載から、引用発明1の「添加・混合」は、本願発明1の「混合」に相当し、引用発明1の「濃縮抽出物の全体または一部を焙煎コーヒーに粉砕前または粉砕後に添加・混合」するにおける、「粉砕後に添加・混合」をする場合は、、本願発明1の「抽出物を焙煎粉砕コーヒー豆に混合する」と、「抽出物を焙煎粉砕コーヒー豆に混合する」点で一致している。

そうすると、両者は、
「 脱カフェインしたコーヒー豆を水又はエタノール濃度60重量%以下のエタノール水溶液で抽出し、抽出物を焙煎粉砕コーヒー豆に混合することを含む、焙煎粉砕コーヒー豆の製造方法。」
の点で一致するものの、次の点で相違する。

相違点1:脱カフェインしたコーヒー豆が、本願発明1は、「カフェイン含有量が0.2重量%以下である」のに対して、引用発明1は、カフェイン含有量が不明である点。

相違点2:本願発明1では、「得られた抽出物を乾燥し、そして、乾燥された抽出物を焙煎粉砕コーヒー豆に混合」しているのに対して、引用発明1では、「濃縮抽出物の全体または一部を焙煎コーヒーに粉砕前または粉砕後に添加し、そして該コーヒーを乾燥させ」ている点。

相違点3:本願発明1では、「クロロゲン酸類とカフェインとの重量比が2以上である」のに対して、引用発明1では、「2.8重量%を越える、好ましくは少なくとも3重量%、例えば3.25重重%もしくはそれ以上に高められたクロロゲン酸含量を有」しているものの、カフェインの量が不明である点。

相違点の判断
(ア)相違点1について
a 刊行物1には、摘示事項(刊1イ)の「未加工の低カフェインコーヒーまたは未加工の脱カフエインコーヒーが得られる。これを焙煎すると他の成分、特にクロロゲン酸の有意の部分が失われる。」との記載から、カフェインの量を少なくしてクロロゲン酸を焙煎により失われないようにしたいとの課題を有していることは明らかである。また、請求項12に記載されているようにクロロゲン酸を単離して焙煎コーヒーに添加したり、請求項18に記載されている「カフェインを除去,または部分的にカフェインを除去した未加工のコーヒーを出発物質として用いるか,あるいは抽出の間にカフェインが部分的にまたは完全に該未加工のコーヒーから除去」のように、未加工コーヒー(豆)からの抽出物として、積極的にカフェインを除いて、クロロゲン酸の割合を高めたいとの技術が記載されている。
また、焙煎後に抽出物を加えるコーヒー(豆)として、請求項5には、「抽出されたコーヒーおよび/または抽出されなかったコーヒーを焙煎」とされており、出発物質として抽出に用いられた脱カフェインコーヒー(豆)を焙煎に用いることも選択肢となっている。
したがって、刊行物1には、直接的な記載はないものの、一般的なコーヒーに比べカフェインを積極的に除いて、或いはできるだけ増加させないようにして、焙煎したコーヒー(豆)のクロロゲン酸含有量を高めたいという技術が開示されていることは明らかである。

b 一方、脱カフェインコーヒー豆におけるカフェイン量は、豆の種類及び産地、脱カフェインコーヒー豆の製造方法(抽出物の抽出方法及び、抽出物の特定処理後の被抽出コーヒー豆への再添加等)により、種々の脱カフェインコーヒー豆が知られており、カフェイン含有量が0.2重量%以下のものは、周知例1の0.13wt%(摘記事項(周1イ))、周知例2の0.1重量%(摘記事項(周2イ))或いは下記の例のように周知である。

c また、カフェインを積極的に除去すると共に、他の物質については、極力除去或いは分解させないようにした脱カフェイン方法によって製造された脱カフェインコーヒー豆も、周知例2の摘記事項(周2ア)、或いは下記の周知例4?6のように周知である。
<周知例の記載事項>
周知例4:特公昭51-36344号公報
「特許請求の範囲
1 生コーヒーを湿つた二酸化炭素と、二酸化炭素の臨界温度及び臨界圧以上で接触させることにより生コーヒーからカフエインを除去することを特徴とする、生コーヒーのカフエイン除去法。」(1頁左欄特許請求の範囲)
「液状二酸化炭素を用いて、すなわち二酸化炭素の臨界温度以下の温度で相応する圧力下で、蒸解した生コーヒーからカフエインを除去することは不利である。それというのもこの場合はコーヒー豆からカフエインばかりでなく、コーヒーを焙る際にその芳香を作るに必要な他の物質も同時に大量に除去されるからである。
これとは異なり本発明方法においては、ほとんどカフエインだけが除去される。生コーヒーのカフエイン残有含有量は、0.01%以下の値にすることができる。」(3頁左上欄3行?右上欄2行)

周知例5:特開昭55ー29995号公報
「原料コーヒーを水性液体で抽出し、抽出液からカフエインを吸着剤上に吸着させ続いて残りの抽出物をコーヒー豆と一緒にする方法もまた知られている。・・(略)・・吸着剤特に活性炭にコーヒー中のカフエイン以外の物質がかなり多量に吸着されて失われるのでこのような生成物は抽出物低含有になる。
そこで、原料コーヒーからカフエインを効果的に除去し、最終生成物に好ましくない味および(または)芳香を与えずまた抽出物含有量をほとんど減らさない方法の捜索が続けられた。」(2頁右上欄最終行?左下欄11行)
「さらに詳しくは活性炭によつてかなりの量吸量されるコーヒー抽出物の内容は、多くの糖類及びクロロゲン酸である。これらの物質に対する活性炭の吸着効果を減少させるためにしょ糖および(または)ブドウ糖および(または)他の炭水化物を活性炭に予付与する。更にまたは後者の代わりにクロロゲン酸を使うこともできる」(3頁右上欄10?16行)
「本発明によって、明るい色と良好なカップ性・・(略)・・をもち、炒ることができる満足できる脱カフエイン原料コーヒーが得られる。このコーヒーは、抽出物含有量が22%を超え、カフエイン含有量は0.1%以下である(炒った後)、」(4頁左下欄15?19行)

周知例6:特開平3-65140号公報
「1.摂取時に低い胃酸反応を惹起するにすぎない、リンゴ酸の大部分を除去されたがクロロゲン酸の大部分を保有する培焼アラビカコーヒー製品。
・・(略)・・
5.脱カフェインした請求項1記載の培焼アラビカコーヒー製品。」(1頁左下欄5?18行)
「本発明のコーヒー製品がカフェインの50%より多く除去し、好ましくは90%より多い除去まで脱カフェインさせることが好ましい。」(4頁左下欄3?5行)
「脱リンゴ酸抽出物の第2アリコート(4.5ガロン)を用いて、3インチ直径、4フィート高さジャケット付きガラスカラム・・(略)・・内で、脱カフェインしたコロンビア(Colombian)コーヒー1kgから1.5時間脱リンゴ酸した。豆状に通した後、・・(略)・・
脱リンゴ酸後、蒸留水1lを用いて豆から抽出物を洗い流した。次に豆を最終重量985gになるまで160°Fにおいて1.25時間風乾させた。脱リンゴ酸の前後でのグリーンコーヒーの分析は次の通りであった:」(7頁左下欄11行?右下欄4行)
「 ・・(略)・・クロロゲン酸 ・・(略)・・ カフェイン
・・(略)・・%乾量基準 ・・(略)・・ %乾量基準
出発
コロンビア ・・(略)・・ 7.07 ・・(略)・・ 0.056脱リンゴ酸
コロンビア ・・(略)・・ 5.08 ・・(略)・・ 0.065」(7頁右下欄の表)
・6頁の左上欄の第1表には、脱カフェインのサンプルとして、A、B、D、E、H、Iのカフェイン含有量が乾量基準で0.043%?0.065%であること、脱カフェインしてないC、F、Gは、1.46%?2.42%であることが記載されており、7頁右下欄の表には、脱カフェインしたコロンビアコーヒー(7頁左下欄14、15行)を用いた「脱リンゴ酸の前後でのグリーンコーヒーの分析」(7頁右下欄2、3行)結果として、出発コロンビアの及び脱リンゴ酸コロンビアのクロロゲン酸が7.07%、5.08%であること、カフェインが0.056%、0.065%であることが示されている。

d 加えて、脱カフェインを行ってから、クロロゲン酸等を抽出すること自体が、刊行物2の摘記事項(刊2エ)、周知例3の摘記事項(周3イ)等に記載されている。

e してみると、カフェインを積極的に除いて、或いは増加させないようにして、焙煎したコーヒー(豆)のクロロゲン酸の含有量を高めたいという技術が刊行物1に記載されており、カフェイン含有量が0.2重量%以下である脱カフェインコーヒー豆、及び脱カフェインに際して、他の物質を除去乃至は分解させないようにした脱カフェイン豆の製造方法の何れも周知の事項であり、加えて、脱カフェイン豆からクロロゲン酸を抽出すること自体も知られていることから、引用発明1において、クロロゲン酸を得るために用いる出発物質として、カフェイン含有量が0.2重量%以下の脱カフェインコーヒー豆を採用することは、当業者ならば容易に想到し得た事項である。

(イ)相違点3について
a 引用発明1において、焙煎粉砕したコーヒー(豆)に添加する抽出物は、脱カフェインコーヒー(豆)からの抽出物であることは、上記相違点1での検討の通りであり、例えば、周知例6の7頁の表によれば、脱カフェインコーヒー(豆)自体は、概ね、クロロゲン酸7.07%、カフェイン0.056%程度を含有しており、両者の比は100倍以上となっている。
当該脱カフェインコーヒー(豆)自体のカフェイン含有量が、上記のように極めて少ないことから、その抽出物についても、クロロゲン酸に比べカフェイン自体の含有量は極めて少ないか或いは、実質的に、カフェインを含んでいないものである。
また、抽出物を更に単離等により積極的にカフェインを除いてクロロゲン酸のみを取り出すことも刊行物1には記載されていることも鑑みれば、抽出物を添加した焙煎粉砕したコーヒー(豆)におけるクロロゲン酸量とカフェインとの重量比は、概ね、引用発明1の「2.8重量%を超える、好ましくは少なくとも3重量%、例えば3.25重重%もしくはそれ以上に高められたクロロゲン酸量」と、抽出物を添加される前に焙煎粉砕コーヒー(豆)が有していたカフェイン量との比とすることは、当業者ならば容易に想到し得たものである。
そこで、引用発明1の「抽出されたコーヒーおよび/または抽出されなかったコーヒーを焙煎」との発明特定事項から、抽出物を加えられる前に焙煎粉砕されたコーヒー(豆)として、抽出時に用いた脱カフェインコーヒー(豆)、及び、抽出に用いていない一般のコーヒー(豆)のそれぞれのカフェイン含有量について以下確認する。

b まず、引用発明1において、抽出物が添加される焙煎粉砕された豆として、抽出時に用いた脱カフェインコーヒー(豆)を用いる場合について検討する。
一般に、脱カフェインコーヒー(豆)のカフェイン含有量として、上記相違点1で指摘した例を含め、周知例1で0.13wt%、周知例2で0.1重量%、周知例4で0.01%以下、周知例5で0.1%以下、周知例6で0.043?0.065%等が例示されているように、0.1重量%程度以下とすることは周知である。
そして、引用発明1の焙煎粉砕後のコーヒー(豆)のクロロゲン酸含有量は、「2.8重量%を超える、好ましくは少なくとも3重量%、例えば3.25重重%もしくはそれ以上に高められた」ものであるから、クロロゲン酸類とカフェインとの重量比を2以上とすることは、適宜設定しうる設計事項にすぎない。

c 次に、引用発明1において、抽出物が添加される焙煎粉砕された豆として、クロロゲン酸類の抽出に用いなかった一般のコーヒー(豆)を用いた場合について検討する。
一般のコーヒー(豆)のカフェイン含有量として、周知例1の摘記事項(周1イ)には1.33wt%が、周知例2の(周2イ)には1.2重量%が、周知例6には1.46?2.42%が例示されており、豆の種類、産地等で種々の値が知られている。
一方、引用発明1のクロロゲン酸含有量は、「2.8重量%を超える、好ましくは少なくとも3重量%、例えば3.25重重%もしくはそれ以上に高められた」ものとして特定され、刊行物1の表1?3には、3.19?3.30%のクロロゲン酸含有量も例示されている。
そして、カフェインには、嗜好品としての機能の他に、興奮剤、利尿剤或いは強心剤としての生理作用を有しており、採りすぎによる睡眠の妨げ等の問題もある(例えば、周知例1の摘記事項(周1ア))ことから、カフェインの摂取量については、それぞれに応じた適量を設定すべきものであることもよく知られた事項である。
してみれば、引用発明1において、抽出物が添加される焙煎粉砕された豆として、クロロゲン酸類の抽出に用いなかった一般のコーヒー(豆)を用いた場合であっても、クロロゲン酸類とカフェインとの重量比を2以上とすることは、適宜設定しうる設計事項にすぎない。

(ウ)相違点2について
a コーヒー等植物からの抽出物を各種飲食品と混合させる際に、抽出液としてそのまま用いること、または濃縮液として用いること、または乾燥て固体・粉末化して用いる等、抽出物の形態を適宜変えて混合させることは周知の技術手段であり、コーヒー豆からの抽出物においても、乾燥/粉末化させることは、例えば、刊行物2の摘記事項(刊2エ)、(刊2ウ)の「コーヒー抽出物」、周知例3の摘記事項(周3ウ)、及び、下記の周知例7のように周知の技術事項にすぎない。
<周知例の記載事項>
周知例7:特公昭61-30549号公報
「特許請求の範囲
1 生コーヒー豆粉を還流下に水抽出し、生成する水性抽出液を濃縮して濃厚溶液とするか、凍結乾燥または噴霧乾燥することを特徴とする食用天然抗酸化物質の製造法。」(1頁左下欄1?5行)
「生コーヒー豆中にはクロロゲン酸、カフエー酸、フエルラ酸、p?クマール酸、トコフエロールなどの抗酸化性を示す物質が含有されていることは公知である。」(2頁3欄34?37行)

b 刊行物1の実施例には、焙煎後のコーヒー(豆)が「濃縮抽出物の全体または一部」を、「粉砕前」に添加・混合させる場合として、抽出物の濃縮物を吹きかけ、熱風乾燥させることにより抽出物をコーヒー(豆)に染み込ませることが記載されているが、この場合は、通常のコーヒー飲料としての抽出を行うために、その後の工程として粉砕工程が必須となり、単に、粉を混ぜただけでは、粉砕工程により、粉が飛散したり、均等に混ざることが困難であることは当業者にとって自明であるから、抽出物を液状噴霧等により染み込ませているのであろうことは、当業者にとって明らかである。
一方、コーヒー豆からコーヒー飲料を得る通常の方法としては、コーヒー豆を焙煎後に粉砕し、適宜保存するか或いはそのまま通常の抽出を行って一般的なコーヒー飲料とするものであり、引用発明1において、焙煎後のコーヒー(豆)を粉砕した後に、抽出物を添加・混合した後、コーヒー飲料とするための一般的な抽出を行うまでに、さらなる粉砕或いはそれに類する工程を有していないことは明らかである。
してみると、引用発明1における抽出物の添加・混合の形態としては、粉砕による抽出物の飛散等を生じることがないのであるから、刊行物1の実施例等に記載された液状物の噴霧乾燥に限定されずに、上記aのような、周知の粉末状の形態で抽出物を混合させ得ること、また、粉末の添加・混合によれば、その後の熱風乾燥等の余分な工程を排除することも可能であることは、当業者にとって明らかである。
したがって、抽出物の添加・混合時の形態として、粉末状態における取扱いの容易性等適宜必要性に応じて、引用発明1の「必要に応じて濃縮抽出物の全体または一部を焙煎コーヒーに粉砕前または粉砕後に添加・混合し,そして該コーヒーを乾燥させる」との工程に変えて、「得られた抽出物を乾燥し、そして、乾燥された抽出物を焙煎粉砕コーヒー豆に混合」との構成を採用することは、当業者ならば容易に想到し得た事項である。

(エ)まとめ
そして、上記相違点に係る本願発明1の構成に格別な効果も見いだせないから、本願発明1は、上記刊行物1に記載された引用発明1、刊行物2及び周知例1?7に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

ウ 請求人の主張について
(ア)請求人は、平成24年12月26日付け意見書において、以下の主張を行っている。
「 (a) 相違点アについて
・・(略)・・刊行物1には、カフェインの増加を抑制すべきことが記載されていないのであるから・・(略)・・
いずれにせよ、留意すべきは、脱カフェインコーヒー豆中に依然として十分なクロロゲン酸類が含有されていることは、本発明で見出された事柄であり、刊行物1及び2にも周知例1や2にも記載されていない。
・・(略)・・」(以下、「主張1」という。)
(b) 相違点イについて
請求項1に係る発明は、・・・焙煎により生じた香り成分が抽出溶媒と一緒に留出するのを防止するものである。
この効果は、出願当初の明細書に記載されていないが、・・(略)・・コーヒーの香り成分が生豆を焙煎することで初めて生じること、焙煎後に水を留出させるとその香り成分も水と一緒に留出してしまうことは、当業者にとって自明であるばかりか、コーヒーが人々の生活に深く浸透している嗜好品であるゆえに、当業者とは言えない一般嗜好家にとっても自明である・・(略)・・この効果は、「得られた抽出物を乾燥し、そして、乾燥された抽出物を焙煎粉砕コーヒー豆に混合す」れば、事実として起こる。事実として起こるものを起こらないとすることはできないから、この効果は、進歩性の判断において考慮されなければならないと考える。
刊行物1に記載の方法は、固形分含量が20重量%程度の液体抽出物を焙煎コーヒーの上に粉砕前または粉砕後に噴霧もしくは振りかけた後、抽出物から生じる水分を除去するために加熱乾燥が行われるから、焙煎コーヒー豆を粉砕した後に加熱乾燥した場合は、焙煎により生じた香り成分が水分と一緒に留出する。・・(略)・・刊行物1には「粉砕前または粉砕後に添加」の記載があるが、・・(略)・・刊行物1に、焙煎コーヒー豆を粉砕してから抽出物を添加した記載がないために、加熱乾燥時の焙煎粉砕コーヒー豆の香り成分の損失の問題が分からず、刊行物1の液状抽出物を、刊行物2の乾固物に代えることを想起できない。・・(略)・・」(以下、「主張2」という。)

(イ)上記主張1について
刊行物1には、直接的な記載はないものの、一般的なコーヒーに比べカフェインを積極的に除いて、或いはできるだけ増加させないようにして、焙煎したコーヒー(豆)のクロロゲン酸含有量を高めたいという技術が刊行物1に開示されている点については、上記「イ(ア)a」で摘示したとおりであり、また、クロロゲン酸と共にカフェインが抽出される場合に、クロロゲン酸のみを単離して、焙煎コーヒーに添加・混合させることも、刊行物1の請求項12、実施例2、実施例3に記載されており、刊行物1には、必要に応じて、カフェインの増加を生じさせないようにすることが、実質的に示されているものであるから、当該目的のために、脱カフェインコーヒー(豆)を抽出に用いようとしていることは明らかである。
また、請求人は、「脱カフェインコーヒー豆中に依然として十分なクロロゲン酸類が含有されていることは、本発明で見出された事柄」である旨主張しているが、脱カフェインコーヒー(豆)から、クロロゲン酸を抽出しようとすることは、上記のように刊行物1自体、刊行物2の(刊2ウ)及び周知例3の(周3イ)にも記載されているように、周知の事項である。
また、例えば、周知例6には、カフェイン量が0.056%の脱カフェインコーヒー(豆)のクロロゲン酸量が、7.07%であることが記載されており、本願明細書の表1には、生コーヒー豆100g当たりのクロロゲン酸及びカフェイン含有量として、クロロゲン酸が6.56g(6.56重量%に相当)、カフェイン0.045g(0.045重量%に相当)の値が記載されており、既に、本願明細書で示されているような、脱カフェインコーヒー豆におけるクロロゲン酸量は、よく知られた値にすぎず、本願発明において、「脱カフェインコーヒー豆中に依然として十分なクロロゲン酸類が含有されていることは、本発明で見出された事柄」であるとの主張をしていても、当業者においてはよく知られた事項にすぎない。

(ウ)上記主張2について
a 本願明細書には、抽出物の乾燥に関して、以下の記載がある。
・「【0004】
コーヒー豆からクロロゲン酸類を含有する抽出物を得る方法としては、例えば、生コーヒー豆粉を還流下で熱水で抽出し、生成する水性抽出液を濃縮して濃厚溶液とする方法、乾燥する方法(特許文献1)、・・(略)・・、生コーヒー豆の粉砕物を40wt%以上のエチルアルコール水溶液で抽出し、この抽出溶液を濃縮溶液とするか、または乾燥して粉末とする方法(特許文献4)などが知られている。」

・「【0010】
したがって本発明の態様は、以下の通りである:
1.クロロゲン酸類を含有する・・(略)・・前記液体飲料。
2.液体飲料が、液体緑茶、液体烏龍茶、液体紅茶、液体コーヒーのいずれかのであることを特徴とする、上記1に記載の液体飲料。
3.クロロゲン酸類を含有する・・(略)・・前記焙煎粉砕コーヒー。
4.クロロゲン酸類を含有する・・(略)・・前記可溶性粉末コーヒー。
・・(略)・・
【0015】
・・(略)・・抽出液は、必要に応じて減圧濃縮、または凍結濃縮操作により、水または水性溶媒を除去させる。さらに必要に応じて噴霧乾燥または真空乾燥して固体の粉末状態にすることが望ましい。・・(略)・・
【0016】
・・(略)・・脱カフェインしたコーヒー豆から抽出されたクロロゲン酸類は、上記の通り、通常は乾燥した粉末状態のクロロゲン酸類を所望の液体飲料に混合・溶解させることができる。・・(略)・・」

・「【0021】
・・(略)・・上記の脱カフェインしたコーヒー豆から抽出されたクロロゲン酸類を焙煎粉砕コーヒーに混ぜて混合する・・(略)・・
【0022】
・・(略)・・可溶性粉末コーヒーに、本発明の、脱カフェインしたコーヒー豆から抽出されたクロロゲン酸類を添加・混合する・・(略)・・」

・「〔実施例1〕
・・(略)・・脱カフェインしたコーヒー豆1kgを・・(略)・・得られた抽出液をロータリー式の減圧蒸発器にて70℃に加熱しながら容量で約5倍に濃縮し、最終的に生コーヒー豆抽出物含有濃縮液3Lを得た。
【0029】
これを真空乾燥器にて24時間乾燥させ、・・(略)・・
〔実施例2〕
・・(略)・・粉砕した焙煎粉砕コーヒー豆100gに、実施例1のクロロゲン酸類含有抽出物を5g添加し均一に混合・・(略)・・
〔実施例3〕
・・(略)・・実施例1のコーヒー豆抽出物・・(略)・・微粉を回収・・(略)・・可溶性粉末コーヒー100gに対して、篩い分けした微粉100g添加し均一に混合・・(略)・・」

b 液体飲料、焙煎粉砕コーヒー、可溶性粉末コーヒーに添加・混合させる抽出物の形態に関して、本願明細書には、上記のように、必要に応じて濃縮した濃厚溶液とするか乾燥するとの従来の製法を記載すると共に、「抽出液は、必要に応じて減圧濃縮、または凍結濃縮操作により、水または水性溶媒を除去させる。さらに必要に応じて噴霧乾燥または真空乾燥して固体の粉末状態にすることが望ましい。」と説明しているのみであり、上記各種の被混合物に対して、抽出物を混合させる際の形態による課題、また、形態として、粉末を選択したことによる具体的な技術的意義は記載されていない。

c したがって、粉末を選択するとの技術的意義について、本願明細書には、せいぜい従来技術として行われていた乾燥という形態を適宜用いるという程度のことしか開示されておらず、請求人の主張する、「請求項1に係る発明は、・・・焙煎により生じた香り成分が抽出溶媒と一緒に留出するのを防止するものである。」との目的を見出すことはできない。

d ところで、請求人は、「この効果は、出願当初の明細書に記載されていない」と認めつつも、「コーヒーの香り成分が生豆を焙煎することで初めて生じること、焙煎後に水を留出させるとその香り成分も水と一緒に留出してしまうことは、当業者にとって自明であるばかりか、コーヒーが人々の生活に深く浸透している嗜好品であるゆえに、当業者とは言えない一般嗜好家にとっても自明である」とし、「この効果は、「得られた抽出物を乾燥し、そして、乾燥された抽出物を焙煎粉砕コーヒー豆に混合す」れば、事実として起こる。事実として起こるものを起こらないとすることはできないから、この効果は、進歩性の判断において考慮されなければならない」と主張している。
しかしながら、そもそも焙煎後に、溶媒により抽出を行う技術自体が、本願明細書で例示された従来例に関する説明にはなく、例示された従来技術としては、生コーヒー豆からの抽出を行っていることが説明されているにすぎず、その他の明細書全体の記載においても、請求人が主張する上記効果に関する事項は開示されておらず、当該効果は、請求人が、出願後、追加的に認識したにすぎないものである。

e また、刊行物1に記載された抽出物の噴霧等による抽出物の添加の後に乾燥を行うことが、請求人の主張する「焙煎後に水を留出させるとその香り成分も水と一緒に留出してしまうことは、当業者にとって自明であるばかりか、コーヒーが人々の生活に深く浸透している嗜好品であるゆえに、当業者とは言えない一般嗜好家にとっても自明である」における、「焙煎後に水を留出させるとその香り成分も水と一緒に留出してしまうこと」ことについて、「刊行物1に記載の方法は、固形分含量が20重量%程度の液体抽出物を焙煎コーヒーの上に粉砕前または粉砕後に噴霧もしくは振りかけた後、抽出物から生じる水分を除去するために加熱乾燥が行われるから、焙煎コーヒー豆を粉砕した後に加熱乾燥した場合は、焙煎により生じた香り成分が水分と一緒に留出する。」と主張しているのであるから、請求人は、自ら、請求人の主張する課題が刊行物1の上記方法に内在していることが自明であるとしているものである。
してみれば、請求人の主張する課題が自明のものであれば、液体噴霧等及び水分除去のための加熱乾燥に変える手段を検討し、周知の粉末による添加・混合を採用することは当業者ならば容易に想到し得たものである。

f この点に関して、請求人はさらに、「刊行物1に、焙煎コーヒー豆を粉砕してから抽出物を添加した記載がないために、加熱乾燥時の焙煎粉砕コーヒー豆の香り成分の損失の問題が分からず、刊行物1の液状抽出物を、刊行物2の乾固物に代えることを想起できない。」として、実施例の記載のないものは、刊行物1に記載された技術事項ではない旨の主張をしている。
つまり、焙煎し粉砕した後に、抽出物を添加することが刊行物1には記載されていないから、課題も生じないと主張しているものと思われる。
しかしながら、刊行物1が開示している抽出物の添加のタイミングについては、「粉砕前」か「粉砕後」かの二者択一的な選択事項として明記されているものであり、無数にある選択肢の中から特定の組み合わせのみが、所定の目的を達成するような技術分野において引用発明を特定する場合と異なり、刊行物1において、具体的な実施例による開示が無くとも、「粉砕前」か「粉砕後」かの二者択一的な選択事項の一方を発明として特定し得ることは明らかであり、請求人の「刊行物1に、焙煎コーヒー豆を粉砕してから抽出物を添加した記載がない」との主張を採用することは、できない。
そして、焙煎後に粉砕する場合には、請求人の主張する課題の有無に関わらず、上記「イ(ウ)相違点2について」で検討したように、「得られた抽出物を乾燥し、そして、乾燥された抽出物を焙煎粉砕コーヒー豆に混合」との構成を採用することは、当業者ならば容易に想到し得た事項である。

(エ)まとめ
上記のように請求人の主張1及び主張2については、これを採用することができない。


(3)本願発明2と引用発明2との対比・判断
ア 本願発明2と引用発明2との対比
(ア)引用発明2の「インスタントコーヒー粉末」及び「完成したインスタントコーヒー粉末」は、それぞれ本願発明2の「可溶性粉末コーヒー」に相当し、引用発明2の「クロロゲン酸」は、本願発明2の「クロロゲン酸類」に相当する。
(イ)「8.5重量%を越える」は、「5.0重量%以上」でもあるから、引用発明2の「8.5重量%を越える高められたクロロゲン酸含量を有する」は、本願発明2の「クロロゲン酸類の含有量が5.0重量%以上であり」に相当する。

そうすると、両者は、
「抽出物を可溶性粉末コーヒーに混合することを含む、クロロゲン酸類の含有量が5.0重量%以上である可溶性粉末コーヒーの製造方法。」
の点で一致するものの、次の点で相違する。

相違点4:本願発明2は、抽出物が、「カフェイン含有量が0.2重量%以下である脱カフェインしたコーヒー豆を水又はエタノール濃度60重量%以下のエタノール水溶液で抽出し、得られた抽出物を乾燥し」たものであるのに対して、引用発明2は、そのような特定がなされていない点。

相違点5:本願発明は、可溶性粉末コーヒーの「クロロゲン酸類とカフェインとの重量比が2以上」であるのに対して、引用発明2は、クロロゲン酸の量が8.5重量%を越えているものの、カフェインの量が不明である点。


相違点の判断
(ア)相違点4について
a まず、「カフェイン含有量が0.2重量%以下である脱カフェインしたコーヒー豆を水又はエタノール濃度60重量%以下のエタノール水溶液で抽出し」た抽出物を加える点について検討する。
クロロゲン酸の加え方として、引用発明2を開示する刊行物1に記載された他の発明である引用発明1は、焙煎粉砕後に抽出物を加える際の抽出物の調製方法として、「未加工のコーヒーを溶媒である水で処理することにより抽出物を調製し,当該調製は、カフェインを除去または部分的に除去した低カフェインコーヒーまたは脱カフェインコーヒーである未加工のコーヒーを出発物質として用いるか,あるいは抽出の間にカフェインが部分的にまたは完全に該未加工のコーヒーから除去される調製」するものである。
そして、刊行物1に記載された引用発明1及び引用発明2は共に、「クロロゲン酸は、未加工のコーヒー成分のなかで焙煎によりその含量が有意に減少する成分である。」との知見を踏まえた「クロロゲン酸含量の高い焙煎コーヒーまたはクロロゲン酸含量の高いインスタントコーヒー粉末に関する。」ものであるから、クロロゲン酸の添加方法として同様の抽出物の添加を行うことは明らかである。
してみると、引用発明2において、引用発明1に記載された当該調製によって抽出されたクロロゲン酸を加えるようにすること、及び、上記「(2)イ(ア)相違点1について」で検討したように、引用発明1において「クロロゲン酸を得るために用いる出発物質として、カフェイン含有量が0.2重量%以下の脱カフェインコーヒー豆を採用すること」が、当業者ならば容易に想到し得た事項であることから、同様に、引用発明2においても、クロロゲン酸を加える際に、脱カフェインコーヒー(豆)の抽出物を用い、当該抽出物として「カフェイン含有量が0.2重量%以下である脱カフェインしたコーヒー豆を水又はエタノール濃度60重量%以下のエタノール水溶液で抽出し」たものとすることは、当業者ならば容易に想到し得たものである。

b 次に、「得られた抽出物を乾燥」する点について検討すると、引用発明2では、完成したインスタントコーヒー粉末に、クロロゲン酸を加えるものであるから、クロロゲン酸の抽出物を加える際の形態として、例えば、刊行物1の実施例に記載されている焙煎コーヒーに対する添加方法としての溶液の噴霧或いは振りかけによれば、完成したインスタントコーヒー粉末の粉末同士が固着される等、完成した粉末状態を悪化させることとなることは明らかである。
一方、クロロゲン酸をコーヒーから抽出し、種々の食品に添加する際の形態として、粉末状とすること自体が、上記「(2)イ(ウ)相違点2について」で検討したように、周知の事項である。
してみれば、周知技術である抽出物の粉末状態での添加方法を、完成したインスタントコーヒー粉末へのクロロゲン酸の添加方法として採用しようとすることは、当業者ならば、容易に想到し得たものである。
また、完成したインスタントコーヒー粉末への乾燥物を添加することによる、格別有意な効果を見出すこともできない。

c したがって、引用発明2において、上記相違点4に係る本願発明2の発明特定事項を採用することは、刊行物1に記載された発明及び技術事項並びに周知事項に基づき当業者が容易に想到し得たものである。

(イ)相違点5について
引用発明2におけるクロロゲン酸の含有量は、8.5重量%を越えたものであり、上記相違点4で検討したように、クロロゲン酸を加えるに際して、脱カフェインコーヒー(豆)からの抽出物を用いる場合は、カフェイン含有量が極めて少ないか或いはカフェインを除去されているものであるから、当該抽出物をインスタントコーヒーに加えたとしても、実質的にカフェインの量は、元々のインスタントコーヒーのカフェイン量と同程度のものとなることは明らかである。
また、一般的なインスタントコーヒーにおけるカフェインの含有量として、3?4重量%程度のものが下記周知例8,9に記載のように周知であり、また、脱カフェインした、カフェインレスインスタントコーヒーも周知である。
したがって、引用発明2において、クロロゲン酸類とカフェインとの重量比として、概ね8.5/約4、即ち2以上とすることは、当業者ならば容易に想到し得たものである。

<周知例の記載事項>
周知例8:特開平2-265433号公報
「実施例2?5
市販のスプレードライ・インスタントコーヒー(カフェイン含有量3.49%)100g」(3頁右下欄下から7?5行)
周知例9:特開平11-196769号公報
「【0016】・・(略)・・市販のインスタントコーヒーのカフェイン含量3.7重量%にほぼ匹敵している。」

そして、上記相違点4,5に係る本願発明1の構成に格別な効果も見いだせないから、本願発明2は、上記刊行物1に記載された引用発明2、引用発明1、刊行物2及び周知例1?9に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1及び2に係る発明は、何れも、刊行物1に記載された発明、刊行物2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の請求項3、4については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-19 
結審通知日 2013-02-20 
審決日 2013-03-05 
出願番号 特願2010-224965(P2010-224965)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平塚 政宏  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 新海 岳
井上 茂夫
発明の名称 クロゲン酸類含有飲料  
代理人 中田 隆  
代理人 小林 泰  
代理人 富田 博行  
代理人 小野 新次郎  
代理人 星野 修  

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