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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1273410
審判番号 不服2012-6392  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-09 
確定日 2013-05-02 
事件の表示 特願2007- 97811「通信チェッカ、通信状態検出システム、および、通信状態チェック方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月23日出願公開、特開2008-258850〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成19年4月3日の出願であって、平成23年10月5日付けで拒絶理由通知がなされ、平成23年12月6日付けで手続補正がなされたが、平成24年1月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年4月9日に審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。


第2.平成24年4月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年4月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成24年4月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成23年12月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
第1無線通信方式による通信状態を検出する第1検出手段と、
前記第1無線通信方式とは異なる第2無線通信方式による通信状態を検出する第2検出手段とを含み、
前記通信チェッカは、複数の子機および管理サーバと交信する親機の設置される位置の通信状態をチェックし、
前記親機と前記子機とは前記第1無線通信方式で通信し、前記親機と前記管理サーバとは前記第2無線通信方式で通信し、
前記第1無線通信方式は特小無線通信であり、前記第2無線通信方式は携帯電話通信網を用いた無線通信である、通信チェッカ。」(以下、この特許請求の範囲の請求項1を「補正前の請求項1」という。)を、
「【請求項1】
第1無線通信方式による通信状態を検出する第1検出手段と、
前記第1無線通信方式とは異なる第2無線通信方式による通信状態を検出する第2検出手段とを含む通信チェッカであって、
前記通信チェッカは、複数の子機および管理サーバと交信する親機の設置される位置の通信状態をチェックし、
前記親機と前記子機とは前記第1無線通信方式で通信し、前記親機と前記管理サーバとは前記第2無線通信方式で通信し、
前記第1無線通信方式は特小無線通信であり、前記第2無線通信方式は携帯電話通信網を用いた無線通信であり、
前記管理サーバは、前記通信チェッカによって検出された、前記第1無線通信方式による前記複数の子機と前記親機との通信状態を保持し、
前記第2無線通信方式によってアクセス可能なネットワークと、
前記ネットワークに対してアクセス可能な携帯端末とを含み、
前記携帯端末は、前記ネットワークを介して前記管理サーバにアクセスして、前記第1無線通信方式による前記複数の子機と前記親機との通信状態を確認可能である、通信チェッカ。」(以下、この特許請求の範囲の請求項1を「補正後の請求項1」という。)
に補正することを含むものである。

2.補正の適否
2-1.特許法第17条の2第3項に規定する要件について

補正後の請求項1は、その記載からして、
通信チェッカが、「前記第2無線通信方式によってアクセス可能なネットワークと、前記ネットワークに対してアクセス可能な携帯端末とを含」むこと
を追加している。

これに対して、平成23年12月6日付けの手続補正により補正される前の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明において、「通信チェッカ」と、「ネットワーク」及び「携帯端末」との関係について記載されている箇所は、以下(1)?(3)に示すとおりのものである(なお、下線は当審が付した。)。

(1) 願書に最初に添付された特許請求の範囲に関し、「通信チェッカ」に係る発明が記載されている、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1?5には、「前記第2無線通信方式によってアクセス可能なネットワークと、前記ネットワークに対してアクセス可能な携帯端末とを含」むことは記載されておらず、逆に、「前記第2無線通信方式によってアクセス可能なネットワークと、前記ネットワークに対してアクセス可能な携帯端末とを含」むことが記載されている請求項は次のとおり請求項6である。
「【請求項6】
前記親機は前記第2無線通信方式によって管理サーバに接続され、
前記管理サーバは、当該通信チェッカによって検出された、前記第1無線通信方式による前記複数の子機と前記親機との通信状態を保持する、請求項2または3に記載の通信チェッカを用いた通信状態検出システムであって、
前記第2無線通信方式によってアクセス可能なネットワークと、
前記ネットワークに対してアクセス可能な携帯端末とを含み、
前記携帯端末は、前記ネットワークを介して前記管理サーバにアクセスして、前記第1無線通信方式による前記複数の子機と前記親機との通信状態を確認可能である、通信状態検出システム。 」

(2) 「通信チェッカ」に係る発明が記載されている、平成23年12月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3には、「ネットワークと、前記ネットワークに対してアクセス可能な携帯端末とを含」むことは記載されておらず、逆に、「ネットワークと、前記ネットワークに対してアクセス可能な携帯端末とを含」むことが記載されている請求項は次のとおり請求項4である。
「【請求項4】
前記親機は前記携帯電話通信網によって管理サーバに接続され、
前記管理サーバは、当該通信チェッカによって検出された、前記特小無線通信による前記複数の子機と前記親機との通信状態を保持する、請求項2または3に記載の通信チェッカを用いた通信状態検出システムであって、
前記携帯電話通信網によってアクセス可能なネットワークと、
前記ネットワークに対してアクセス可能な携帯端末とを含み、
前記携帯端末は、前記ネットワークを介して前記管理サーバにアクセスして、前記特小無線通信による前記複数の子機と前記親機との通信状態を確認可能である、通信状態検出システム。 」

(3) また、発明の詳細な説明において、「ネットワーク」及び「携帯端末」について記載されている箇所は、以下に示すとおりのものである。
(3-1)「【0014】
この発明の他の局面においては、上記に記載の通信チェッカを用いた通信状態検出システムにおいては、親機は第2通信方式によって管理サーバに接続され、管理サーバは、通信チェッカによって検出された、第1無線通信方式による複数の子機と親機との通信状態を保持する。通信状態検出システムは、第2無線通信方式によってアクセス可能なネットワークと、ネットワークに対してアクセス可能な携帯端末とを含み、携帯端末は、ネットワークを介して管理サーバにアクセスして、第1無線通信方式による複数の子機と親機との通信状態を確認可能である。
【0015】
好ましくは、通信チェッカは、第1無線通信方式、および、第2無線通信方式による通信状態の検出のみを行い、携帯端末の表示部は、第1無線通信方式、および第2無線通信方式による通信状態の表示に使用される。 」
(3-2)「【0017】
好ましくは、通信チェッカによって検出された、第1無線通信方式による複数の子機と親機との通信状態を、管理サーバで保持するステップと、携帯端末によって、ネットワークを介して管理サーバにアクセスして、第1無線通信方式による複数の子機と親機との通信状態を確認するステップとを含む。 」
(3-3)「【0032】
図5(B)を参照して、この実施の形態においては、管理サーバ40は、インターネット41のようなネットワークに接続されており、外部から携帯電話50等を用いて管理サーバ40にアクセスが可能である。なお、管理サーバ40、複数の子機30a?30c、および通信チェッカ35との接続関係は、図1に示すとおりである。 」
(3-4)「【0034】
なお、この携帯電話は、インターネットにアクセス可能であれば、PDA(Personal Data Assistance)のような携帯端末であってもよい。 」

上記(1)?(3)を総合的にみると、特許請求の範囲、或いは、出願当初の明細書又は図面に記載されている事項は、「前記第2無線通信方式によってアクセス可能なネットワーク」及び「前記ネットワークに対してアクセス可能な携帯端末」を含むのは、「通信チェッカ」ではなく、「通信チェッカ」を用いる「通信状態検出システム」であると判断するのが相当である。
そして、「通信チェッカ」が「前記第2無線通信方式によってアクセス可能なネットワーク」及び「前記ネットワークに対してアクセス可能な携帯端末」を含むことは、出願当初の明細書又は図面に記載されておらず、かつ、その記載から自明なものでもないといえる。
よって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術事項を導入するものであって、上記事項を追加する本件補正は、出願当初の明細書又は図面に記載した範囲内でしたものではない。
以上のとおり、補正後の請求項1に記載された事項は、出願当初の明細書又は図面に記載されておらず、かつ、その記載から自明なものでもないから、上記事項を追加する本件補正は、出願当初の明細書又は図面に記載した範囲内でしたものではないので、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

2-2.特許法第17条の2第5項の規定について
仮に、前記補正前の請求項1に関する補正が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであると仮定した場合であって、さらに、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載された発明の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの)を目的とするものであると仮定した場合に、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正後の発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)、以下に検討する。

2-2-1.特許法第36条第6項第1号に規定する要件について
補正後の発明の発明特定事項「前記第2無線通信方式によってアクセス可能なネットワークと、前記ネットワークに対してアクセス可能な携帯端末とを含み、(中略)通信チェッカ。」は、前記「2-1.特許法第17条の2第3項に規定する要件について」で指摘したように、発明の詳細な説明に記載したものではない。
よって、この点で、補正後の発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

以上のように、補正後の発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、補正後の発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない。

2-2-2.特許法第36条第6項第2号に規定する要件について
補正後の発明の発明特定事項「前記第2無線通信方式によってアクセス可能なネットワークと、前記ネットワークに対してアクセス可能な携帯端末とを含み、(中略)通信チェッカ。」について、一装置である「通信チェッカ」が、「ネットワーク」や、該ネットワークに対してアクセス可能な「携帯端末」を含むということは技術的に見て矛盾しており、該発明特定事項を含む「通信チェッカ」を発明として把握することはできない。
しかも、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項6や平成23年12月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項4の「通信チェッカを用いた通信状態検出システム」における発明特定事項のうちの「ネットワークと、前記ネットワークに対してアクセス可能な携帯端末とを含み」なる発明特定事項を、平成23年12月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の「通信チェッカ」の発明特定事項の一つとして補正していること、及び、平成23年12月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項4に「請求項1?3のいずれかに記載された通信チェッカを用いた通信状態検出システムであって」と記載していること、などから総合的に判断すると、本来は「通信状態検出システム」の発明と記載すべきところを「通信チェッカ」の発明と記載した、誤記であるとも認められない。
よって、平成23年12月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載から発明を把握できないことから、該請求項に係る発明が明確でない。

以上のように、補正後の発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、補正後の発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない。

2-2-3.小括
以上のとおり、仮に、本件補正が、願書に最初に添付された明細書又は図面に記載した範囲内にしたものであると仮定した場合であって、さらに、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載された発明の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの)を目的とするものであると仮定した場合であっても、さらに、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合していないから、前記補正前の請求項1に関する補正を含む本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.むすび
以上のとおり、補正前の請求項1に関する補正は、上記「2-1.特許法第17条の2第3項に規定する要件について」において指摘したとおり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、仮に補正前の請求項1に関する補正が、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)を目的とするものであると仮定した場合においても、上記「2-2.特許法第17条の2第5項の規定について」で指摘したとおり、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合していないから、前記補正前の請求項1に関する補正を含む本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成24年4月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成23年12月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
第1無線通信方式による通信状態を検出する第1検出手段と、
前記第1無線通信方式とは異なる第2無線通信方式による通信状態を検出する第2検出手段とを含み、
前記通信チェッカは、複数の子機および管理サーバと交信する親機の設置される位置の通信状態をチェックし、
前記親機と前記子機とは前記第1無線通信方式で通信し、前記親機と前記管理サーバとは前記第2無線通信方式で通信し、
前記第1無線通信方式は特小無線通信であり、前記第2無線通信方式は携帯電話通信網を用いた無線通信である、通信チェッカ。」

2.引用文献、周知文献
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-100884号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の点が記載されている(なお、下線は当審が付した。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、ベストポジション検索機能付中継機に関し、特に、親機と複数の子機との間の無線通信を中継するためのベストポジションを検索する機能を備えた中継機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信を利用して水道やガスの使用量を自動的に測定する自動検針システムが利用されている。このような自動検針システム、例えばガス検針システムは、ガス検針の集中管理を行うセンタと、無線通信回線または有線通信回線を介してセンタと接続される親機と、各家庭に設置され、無線通信回線を介して親機と接続される子機と、ガスボンベに接続され、ガスボンベから検針データを読み取って子機に送出する計量器とから構成されている。子機は、定期的に計量器に対してガス検針要求を行う。計量器は、ガスボンベの現在のガス使用量を読み取って、検針データとして子機へ送る。子機は、ガス検針データを、無線通信回線を介して親機へ送信し、親機はセンタに送信する。センタは、ガス使用量に応じた料金を計算し、この料金がガス使用料金として各家庭に請求される。
【0003】
このような検針システムの例として、特許文献1に開示された「無線検針装置」がある。これは、親機と子機間で信号の授受を行って、子機に接続した計量器の検針を行う無線検針装置であり、検針個所の移動を極力少なくして、検針員による検針作業の負担を軽くするものである。図4に示すように、中継機は、親機から送る検針要求信号を中継して子機へ転送するとともに、子機からの検針結果信号を中継して親機へ転送する。中継機は、親機からの検針要求信号を受信した後、一定時間、その検針要求信号に対する子機からの検針結果信号を受信しないとき、その子機に親機からの検針要求信号を転送する。そして、該子機からその検針要求信号に対する検針結果信号を受信すると、その検針結果信号を親機へ転信する。
【0004】
この中継機は、複数の子機を親機に接続するために、親機および各子機と良好に通信できる位置に設置する必要がある。従来の中継機では、中継機を設置できる候補地点それぞれにおいて、各子機と親機に対してそれぞれ通信試験を行って、最適設置位置を求めている。すなわち、各地点において、各子機と親機の電波の電界強度を求めて記録し、最も多くの子機と良好に通信できる位置を求めて、その位置に中継機を設置している。
【特許文献1】特開平09-212782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の中継機では、候補地点ごとに、親機・中継機・子機を通信試験モードへ切り替えて電界強度を測定するため、通信試験手順が複雑で時間がかかるという問題がある。親機-中継機間と中継機-子機間の何れも良好に通信できる場所に中継機を設置しなければならないので、設置場所を探すのにかなり手間がかかる。
【0006】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決して、中継機の最適設置位置を簡単に探すことができるようにすることである。 」

(イ)「【0010】
本発明の実施例1は、親機と子機との間の無線通信を中継する中継機において、通信試験モードに設定し、親機からの電波の強度を表示し、複数の子機のそれぞれの電波の強度を表示し、試験通信において正常に通信できた親機または子機の番号を、試験通信番号対応に記憶し、試験結果を検索して、親機と通信可能で、最も通信可能子機の数が多い試験通信番号を求めて表示する、ベストポジション検索機能付中継機である。
【0011】
図1は、本発明の実施例1におけるベストポジション検索機能付中継機を用いる無線通信システムの概念図である。図1において、親機1は、センタからの通信を子機に伝えるとともに、子機のデータをセンタに送る装置である。中継機2は、親機1と子機の間の無線通信を中継する装置である。ベストポジション検索機能を備えている。略して、単に検索機とも呼ぶ。子機3は、検針装置に接続された無線通信機である。図2は、中継機の設定手順を示す流れ図である。
【0012】
上記のように構成された本発明の実施例1におけるベストポジション検索機能付中継機の動作を説明する。最初に、図1を参照しながら、動作の概要を説明する。親機1と中継機2と各子機3を、通信試験モードに設定する。親機1からの電波の強度を表示する。複数の子機3のそれぞれの電波の強度を表示する。試験通信において正常に通信できた親機1と各子機3の識別情報ここでは番号を、試験通信番号対応に記憶する。これを、すべての中継機設置候補点について行う。試験通信終了後に、試験結果を検索して、親機1と通信可能で、最も通信可能子機3の数が多い試験通信番号を求めて表示する。その試験通信番号に対応する位置に中継機2を設置する。
【0013】
親機1と中継機2と子機3を試験通信モードに設定すると、親機1の電波の電界強度が、中継機2の親機状態表示部に表示される。例えば、3段階で電界強度が表示され、強度が2以上であれば、親機1と良好に通信できる。子機3の電波の電界強度が、中継機2の子機状態表示部に表示される。例えば、1つのLEDに1つの子機3の電波の電界強度が表示される。連続点灯であれば、子機3と良好に通信できる。点滅であれば、通信可能であるが、エラーや中断が多く、通信不適である。消灯であれば、通信不能である。
【0014】
中継機一台当たりの子機3の収容台数は、例えば、10台あるいは16台である。通信可能な子機3が少ない場合、あるいは、親機1と通信できない場合は、候補地点での試験結果を記録しないようにする。候補地点は、例えば、16地点まで記録できるようにする。記録した試験結果データを、試験終了後に検索して、親機1と通信良好で、最も多い子機3と通信良好な候補地点を表示する。中継機では、試験結果を記録するまでにして、試験結果を有線または無線でパソコンなどに転送して、パソコンなどで試験結果を表示したり、検索したりできるようにしてもよい。あるいは、記録データを、親機を介してセンタに転送して、センタで試験結果を表示したり検索したりできるようにしてもよい。 」

上記(ア)、(イ)の記載を総合すれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「 親機と検針装置に接続された複数の子機との間の無線通信を中継する中継機において、
通信試験モードに設定し、親機からの電波の強度を表示し、複数の子機のそれぞれの電波の強度を表示し、試験通信において正常に通信できた親機または子機の番号を、試験通信番号対応に記憶し、
記録データを、親機を介してセンタに転送して、センタで試験結果を表示したり検索したりできるようにした、
ベストポジション検索機能付中継機。」

(2)周知文献
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-111701号公報(以下、「周知文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審が付した。)。
「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1にかかる無線自動検針システムは、メータで検針したデータを含む情報を収集すべく無線回線を介してメータに設けられた無線機子機と通信を行う無線機親機を有し、該無線機親機1台に対して無線機子機をN台接続することができるように無線機親機と無線機子機とが1対Nに構成され、無線機親機は、特定小電力無線にて無線機子機との無線通信を行うと共に携帯電話回線あるいはテレターミナル無線回線を介してセンター装置側と通信することを特徴とする。
【0007】上記構成によれば、メータ側は電池で数年間も作動する構成のため、無線機子機も低消費電力駆動のものが要求される。本発明では、消費電力も小さくしかも電波伝搬特性のよい実用的な特定小電力無線電波に特定すると共に、親機から上流側はインフラも整備されつつありデータ通信に適用可能な携帯電話回線あるいはテレターミナル無線回線に特定している。さらに無線機親機が複数の子機と通信するときは特定小電力無線の電波にて通信を行い、センター装置側と通信するときには携帯電話あるいはテレターミナルの電波にて各基地局を介して通信を行うため、有線回線のように、その回線一つに不具合が発生したことでセンターと複数の子機に接続されたメータとの通信が一切できないという不具合を発生させることなく、無線回線で迂回経路を経由することにより情報伝送を行うことができる。 」

本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-258079号公報(以下、「周知文献2」という。)には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審が付した。)。
「【0003】このようなシステムを構成するには、ガスメーターに直接公衆PHS通信端末を接続して、ホストコンピューターと通信することも考えられるが、個々のガスメーターに接続するPHS通信端末の基本使用料金等が非常にコスト高になるという問題がある。
【0004】このため、図6に示すように、電柱や建物等に、公衆PHS通信ユニットと特定小電力無線ユニットとを併せ持つ無線親機102を設置し、ガスメーター104に特定小電力無線ユニットをもつ無線子機103を接続し、ホストコンピューター101に公衆回線で無線親機102と通信するための端末網制御装置を接続するシステムが考案されている。 」

本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-070079号公報(以下、「周知文献3」という。)には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審が付した。)。
「【0002】
【従来の技術】図7のように、プラント等の現場に設置される、流量計、伝送器等のフィールド機器100の出力信号や制御信号を無線の使用により、モニタ・制御機器等110と通信を行うことは可能である。しかし、通常のフィールド機器100は電力供給の制限があるため、無線動作に用いられるパワーは低く抑えられることとなり、近距離はともかく遠距離の通信を行うことは困難である。
【0003】また、電波法の規制もあり、むやみに出力を上げて、遠距離通信を行うこともできない。仮に比較的長距離を無線によって通信したとしても、遮蔽物や他の電気機器、環境等の変化で、ノイズの影響を受けやすく、安定した通信を行うことは難しい。
【0004】一方、フィールド機器100の信号伝送に有線ケーブルを用いた場合、比較的長い距離を安定して通信することが可能であるが、個々のフィールド機器100毎に2芯以上のケーブルを引く必要があり、設置コストが大となる。
【0005】図8では、フィールド機器A200、フィールド機器B300、センサCと、モニタ・制御機器等110とを有線ケーブル210,310,410を用いて信号伝送を行っている。但し、通信距離が長いと、ケーブル敷設のコストが高くなり、問題である。また、プラント内の周囲温度や振動などを検知する現場センサは従来もあったが、直接的にプラントの制御に利用することはないため、配線コスト及び設置コストの面から、設置を見合わせる傾向にあった。」
「【0039】図3では、フィールド機器-ケーブル-中継局-携帯電話-公衆回線への順の信号伝送が示されている。フィールド機器A11,B12,…と、中継局13間の通信は、有線通信の他、無線通信、Bluetooth、PHSの内線やオフィスモード(無料通信モード)、赤外線通信等が考えられる。中継局13までの比較的短距離を、なるべく低コストで通信できる手段ならばよい。中継局13と、公衆回線網15への通信は、携帯電話14以外に、PHS、ISDN等のデジタル回線が考えられるが、モデムを使用した一般アナログ電話回線の使用も可能である。
【0040】中継局13から先は、一般商用サービスとして普及しているデジタル携帯電話14を使用して、公衆回線網15を経由して、遠隔地の計器室等16でモニタリングや遠隔制御を行う。 」
さらに、同公報の【図1】には、
「フィールド機器1と中継局2との間の通信として、無線、小パワー、短距離であること」
が示されており、これらの特徴を有する無線通信方式として、当業者であれば、特定小電力無線通信方式を想定し得るものといえる。

3.対比
引用発明のベストポジション検索機能付中継機は、「通信試験モードに設定し、親機からの電波の強度を表示し、複数の子機のそれぞれの電波の強度を表示」しているから、通信のチャックを行っているといえ、引用発明のベストポジション検索機能付中継機は本願発明の「通信チェッカ」に相当するといえる。
また、引用発明のベストポジション検索機能付中継機は「親機と検針装置に接続された複数の子機との間の無線通信を中継する中継機」であるから、引用発明における複数の子機が無線で通信する通信先の機器であって、階層構造的には子機よりも上流に位置する機器であるから、引用発明のベストポジション検索機能付中継機は本願発明の「親機」に相当するともいえる。
引用発明の「子機」は本願発明の「子機」に相当するといえる。
引用発明は、「記録データを、親機を介してセンタに転送して、センタで試験結果を表示したり検索したりできるようにし」ていることから、引用発明のセンタは記録データが検索可能なようにデータを管理しているものといえ、本願発明の「管理サーバ」に相当するといえる。
引用発明は、「通信試験モードに設定し、親機からの電波の強度を表示し、複数の子機のそれぞれの電波の強度を表示し」ており、子機との間及び親機との間で何らかの無線通信方式を用いて通信を行っているといえ、また、その内の子機との間の通信に用いる無線通信方式を「第1の無線通信方式」、親機との間の通信に用いる無線通信方式を「第2の無線通信方式」と表し得るといえる。
引用発明は、「通信試験モードに設定し」、「複数の子機のそれぞれの電波の強度を表示し」ており、子機との間の通信に用いる第1の無線通信方式による電波の強度を表示するための電波強度の検出、すなわち通信状況の検出を行っているといえることから、引用発明は本願発明と同様に、「第1無線通信方式による通信状態を検出する第1検出手段」を含んでいるといえる。
引用発明は、「通信試験モードに設定し、親機からの電波の強度を表示し」ており、親機との間の通信に用いる第2の無線通信方式による電波の強度を表示するための電波強度の検出、すなわち通信状況の検出を行っているといえることから、引用発明は本願発明と同様に、「第2無線通信方式による通信状態を検出する第2検出手段」を含んでいるといえる。
引用発明は、上記のごとく、子機との間の通信に用いる無線通信方式を「第1の無線通信方式」と表し得るといえるから、引用発明は本願発明と同様に、「前記親機と前記子機とは前記第1無線通信方式で通信し」ているといえる。
引用発明は、上記のごとく、親機との間の通信に用いる無線通信方式を「第2の無線通信方式」と表し得るといえるとともに、「記録データを、親機を介してセンタに転送して」いることから、第2の無線通信方式で親機を介してセンタと通信を行っているとみることができ、引用発明は本願発明と同様に、「前記親機と前記管理サーバとは前記第2無線通信方式で通信し」ているといえる。

したがって、本願発明と引用発明を対比すると、次の点で一致・相違する。

<一致点>
「第1無線通信方式による通信状態を検出する第1検出手段と、
第2無線通信方式による通信状態を検出する第2検出手段とを含み、
前記通信チェッカは、複数の子機および管理サーバと交信する親機の設置される位置の通信状態をチェックし、
前記親機と前記子機とは前記第1無線通信方式で通信し、前記親機と前記管理サーバとは前記第2無線通信方式で通信する、
通信チェッカ。」

<相違点>
本願発明は、第2の無線通信方式が「前記第1無線通信方式とは異なる」とともに、「 前記第1無線通信方式は特小無線通信であり、前記第2無線通信方式は携帯電話通信網を用いた無線通信である」のに対して、引用発明は、「第1の無線通信方式」及び「第2の無線通信方式」が如何なる通信方式であるか特定されていない点。

4.当審の判断
(1)相違点について
引用発明のように、第1無線通信方式の通信および第2無線通信方式の通信を行うものにおいて、第1無線通信方式と第2無線通信方式とを異なる無線通信方式とし、第1無線通信方式として特定小電力無線方式、第2無線通信方式として携帯電話網やPHS網などの携帯電話通信網を用いた無線通信方式とすることは、前記した周知文献1?3に見られるように周知な事項であるとともに、引用発明においても、内在する課題として、子機の低消費電力化や通信の安定性が求められるものであるといえる。
してみると、引用文献において、周知な事項のごとく、第2の無線通信方式が「前記第1無線通信方式とは異なる」とともに、「 前記第1無線通信方式は特小無線通信であり、前記第2無線通信方式は携帯電話通信網を用いた無線通信である」ように構成することは、当業者であれば容易になし得た事項であるというべきである。

(2)本願発明の効果について
「2.引用文献、周知文献」の「(1)引用文献」における(ア)で摘示したように、引用発明も、従来の中継機では、候補地点ごとに、親機・中継機・子機を通信試験モードへ切り替えて電界強度を測定するため、通信試験手順が複雑で時間がかかるという問題があり、親機-中継機間と中継機-子機間の何れも良好に通信できる場所に中継機を設置しなければならないので、設置場所を探すのにかなり手間がかかるため、中継機の最適設置位置を簡単に探すことができるようにすることを目的とし、この目的を達成していることから、本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明及び周知な事項から当業者が予測し得た程度のものであり、本願発明の進歩性を根拠付けるに足りるものとはいえない。

(3)まとめ
よって、本願発明は、引用発明及び周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-27 
結審通知日 2013-03-05 
審決日 2013-03-18 
出願番号 特願2007-97811(P2007-97811)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 相澤 祐介  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 佐藤 聡史
近藤 聡
発明の名称 通信チェッカ、通信状態検出システム、および、通信状態チェック方法  
代理人 特許業務法人アイミー国際特許事務所  
代理人 森下 八郎  
代理人 伊藤 英彦  
代理人 吉田 博由  
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