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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1273661
審判番号 不服2012-4824  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-13 
確定日 2013-05-09 
事件の表示 特願2006-315549「粘土質廃水の凝集沈殿処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月 5日出願公開、特開2008-126168〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成18年11月22日の出願であって、平成23年1月7日付けで拒絶理由が起案され(発送日 平成23年1月18日)、平成23年3月22日付けで意見書と特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書が提出され、平成23年12月9日付けで拒絶査定が起案され(発送日 平成23年12月13日)、これに対し、平成24年3月13日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると共に特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書が提出され、平成24年5月25日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋が起案され(発送日 平成24年5月29日)、これに対して平成24年7月30日付けで回答書が提出されたものである。

第2.平成24年3月13日付けの特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年3月13日付けの特許請求の範囲の記載に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.主たる理由
本件補正は、平成23年3月22日付けの特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1を、以下のように、平成24年3月13日付けの特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に補正することを含むものである。
<本件補正前>
「【請求項1】
粘土質廃水の凝集沈殿処理方法において、
粘土質廃水に対して、天然物質由来のキトサンを含む凝集剤を先に添加後、前記天然物質由来のキトサンを含む凝集剤と1:1の割合の天然物質由来のアルギン酸ソーダを含む凝集剤を添加して凝集沈殿処理をすることを特徴とする粘土質廃水の凝集沈殿処理方法。」
<本件補正後>
「【請求項1】
粘土質廃水の凝集沈殿処理方法において、
粘土質廃水に対して、天然物質由来のキトサン溶液を先に添加後、前記天然物質由来のキトサンを含む凝集剤と1:1の割合の天然物質由来のアルギン酸ソーダを含む凝集剤を添加して凝集沈殿処理をすることを特徴とする粘土質廃水の凝集沈殿処理方法。」
(下線は請求人が付与したもので補正箇所を示している。)

この補正事項は本件補正前の「天然物質由来のキトサンを含む凝集剤」を本件補正後に「天然物質由来のキトサン溶液」とするものである。
本件補正前は「天然物質由来のキトサンを含む凝集剤を先に添加後、前記天然物質由来のキトサンを含む凝集剤と1:1の割合の天然物質由来のアルギン酸ソーダを含む凝集剤を添加」となっており、文言のとおり、前者の「天然物質由来のキトサンを含む凝集剤」を「先に添加」した後で、後者の「天然物質由来のキトサンを含む凝集剤」と「1:1の割合の天然物質由来のアルギン酸ソーダを含む凝集剤を添加」するものであると解され、本件補正前においては、前者と後者の「天然物質由来のキトサンを含む凝集剤」は同じものであることは明らかである。
しかしながら、本件補正後には「天然物質由来のキトサン溶液を先に添加後、前記天然物質由来のキトサンを含む凝集剤と1:1の割合の天然物質由来のアルギン酸ソーダを含む凝集剤を添加」となっており、「溶液」なる文言が例えば種々の液体を含むものであって、「凝集剤」も「溶液」に包含されることは明らかであることを踏まえれば、前者の「天然物質由来のキトサン溶液」は「天然物質由来のキトサンを含む凝集剤」を包含するものであるので、本件補正後の上記記載は、当該前者の「天然物質由来のキトサン溶液」を「先に添加」した後で、後者の「天然物質由来のキトサンを含む凝集剤」と「1:1の割合の天然物質由来のアルギン酸ソーダを含む凝集剤を添加」するものであると解され、本件補正後においては、前者の「天然物質由来のキトサン溶液」は、後者の「天然物質由来のキトサンを含む凝集剤」を包含する関係にあることは明らかである。
すなわち、本件補正の前後において、上記前者と後者の関係が、同一物であったものが、包含するものに拡張されていることは明らかで、これは実質的に特許請求の範囲の拡張に当たるというべきである。
したがって、この補正事項は、請求項の削除、特許請求の範囲の限定的減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれも目的とするものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、予備的に、本件補正が特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるとされた場合に、補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて以下「2.」で検討する。

2.予備的理由(独立特許要件)
2-1.補正発明について
補正後の請求項1に係る発明は、平成24年3月13日付けの特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載される事項によって特定される次のとおりのものである(以下、「補正発明」という。)。

「【請求項1】
粘土質廃水の凝集沈殿処理方法において、
粘土質廃水に対して、天然物質由来のキトサン溶液を先に添加後、前記天然物質由来のキトサンを含む凝集剤と1:1の割合の天然物質由来のアルギン酸ソーダを含む凝集剤を添加して凝集沈殿処理をすることを特徴とする粘土質廃水の凝集沈殿処理方法。」

なお、上記「1.」でみたように、上記補正発明の「天然物質由来のキトサン溶液」は「天然物質由来のキトサンを含む凝集剤」を含むものであり、以下では、補正発明の「天然物質由来のキトサン溶液」をより狭義に解して「天然物質由来のキトサンを含む凝集剤」と置き換えて論ずる。

2-2.刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され本願出願日前に頒布された特開2000-262811号公報(以下、「刊行物1」という。)には次の事項が記載されている。
(刊1-ア)「【請求項2】アルギン酸をアンモニア水で中和してPH=5?7の範囲のアルギン酸アンモニウム水溶液を調製し、またキチン・キトサンの弱酸性水溶液を調製し、この両水溶液を被処理水に添加することを特徴とする汚泥処理方法。
【請求項3】アルギン酸アンモニウムとキチン・キトサンの併用重量比を8:2?3:7とし、両剤を同時に添加するか又は逐次添加し、逐次添加では添加順序に制限がない請求項2記載の汚泥処理方法。
【請求項4】前記キチン・キトサンとして、キチン質を80%以上に脱アセチル化して得られたキチン・キトサンを用いる請求項2又は請求項3記載の汚泥処理方法。」(【特許請求の範囲】の請求項2-4)
(刊1-イ)「【請求項5】アルギン酸をアルカリ金属水酸化物で中和してPH=5?7の範囲のアルギン酸アルカリ金属塩水溶液を調製し、またキチン・キトサンの弱酸性水溶液を調製し、両水溶液を被処理水に添加することを特徴とする汚泥処理方法。
【請求項6】アルギン酸アルカリ金属塩とキチン・キトサンの併用重量比を8:2?3:7とし、両剤を同時に添加するか又は逐次添加し、逐次添加では添加順序に制限がない請求項5記載の汚泥処理方法。
【請求項7】前記キチン・キトサンとして、キチン質を80%以上に脱アセチル化して得られたキチン・キトサンを用いる請求項5又は6記載の汚泥処理方法。」(【特許請求の範囲】の請求項5-7)
(刊1-ウ)「【発明の属する技術分野】本発明は、都市下水、農業集落排水、畜産排水、工場排水等から発生する汚泥や土木・建築汚泥等を凝集沈殿させる凝集剤に関し、更に詳細には、天然バイオマス資源からの誘導品であるアルギン酸アルカリ金属塩の水溶液又はアルギン酸アンモニウムの水溶液と、同じく天然バイオマス資源からの誘導品であるキチン・キトサンの弱酸性水溶液とを併用することにより、動植物に対して安全でしかも環境汚染を生じない凝集沈殿効率の高い複合凝集剤およびそれを用いる汚泥処理方法に関する。」(【0001】)
(刊1-エ)「アルギン酸ナトリウムから生じるナトリウムイオンは一価のカチオンであるから、従来の無機系凝集剤に見られる多価金属イオンと比較すれば、土中に入った場合でも植物の成育を阻害する作用は小さいと云える。しかし、ナトリウムイオンと云えども高濃度では塩害作用を示すから、その取扱いに注意しなければならないことは当然である。」(【0011】)
(刊1-オ)「この第1発明において、アルギン酸アンモニウムは金属原子を含まないから、土壌中に金属イオンを残留させることはなく、同時に汚泥凝集性能を有している。また、そのアンモニウム塩は窒素肥料となり、しかもバイオマスを原料とした窒素肥料であるから極めて安全である。従来の無機系の硫酸アンモニウムに代表されるような窒素肥料と比較しても、より安全性が高いと考えられる。従って、アルギン酸アンモニウムが土壌中に残留しても窒素肥料として作用し、植物の成育に好適条件を与えるものであり、この点からアルギン酸アンモニウムを選択したのである。」(【0022】)
(刊1-カ)「この発明では、バイオマス資源であるキチン・キトサンと前記アルギン酸アンモニウムを併用してバイオマス複合凝集剤を構成する。両成分を被処理水に同時に添加した場合でも、逐次に添加した場合でも汚泥に対し強力な凝集効果を発揮する。逐次添加とは、アルギン酸アンモニウムを添加した後にキチン・キトサンを添加する場合、又はキチン・キトサンを先に添加してアルギン酸アンモニウムを後から添加する場合の両者を包含している。」(【0025】)
(刊1-キ)「キチン質とは、カニ・エビ等の甲殻類や昆虫の外殻・細胞壁の主要成分で、カルシウムや蛋白質との複合体を構成している。地球上で生物生成されるバイオマス資源としては、セルロースに次いで第2の分量を占める。このキチン質からカルシウムおよび蛋白質を除去したものをキチンと呼び、このキチンを脱アセチル化したものをキトサンと云い、キチンとキトサンは共に天然高分子である。しかし、キチンを100%脱アセチル化することは困難で、キトサンと称する物質でもキチンとキトサンが所定率で複合している。このような複合物質を本発明ではキチン・キトサンと呼ぶ。」(【0026】)
(刊1-ク)「第2の発明は、アルギン酸アルカリ金属塩とキチン・キトサンを凝集剤として併用する場合に、その使用条件を明確にしたことである。」(【0034】)
(刊1-ケ)「更に、第1発明および第2発明の実施において、土木・建築現場から発生する無機性の泥水も対象にすることが出来るが、都市下水、農業集落排水、畜産排水、工場排水など排水を活性汚泥処理をして生成した汚泥、即ち、有機性汚泥を対象とした時にもその特徴を発揮する。この有機性汚泥を対象にする時には、本発明の凝集剤を添加するに先立って汚泥のPHを5?7の範囲に調整しておくことが好ましい。」(【0037】)
(刊1-コ)「凝集剤Aとしてアルギン酸塩を作るには、化学実験試薬のアルギン酸或いはKimitsu化学工業株式会社製のKimitsu ALGINのグレードGを0.25?1.0%濃度で水に分散しておいて、苛性ソーダ水溶液或いはアンモニア水を滴下して、PH=5?7の範囲内の所望する所まで中和して透明に溶解したものを使用した。Kimitsu ALGIN Gの場合は、溶解後の水溶液の粘度が高くなる傾向にあるから、原料汚泥水に添加したときにうまく拡散するために極力低濃度にすることが望ましい。例えば、0.25%濃度の水溶液が調製される。化学実験試薬のアルギン酸をアンモニア水でPH=5まで中和して調整した0.5%水溶液を以下A1と称し(0045)、Kimitsu化学工業株式会社製のKimitsu ALGIN Gを水酸化ナトリウムの水溶液でPH=5まで中和して調整した0.25%水溶液を以下A2と称し(0049)、Kimitsu ALGIN Gをアンモニア水でPH=5まで中和して調整した0.25%水溶液をA3と称する(0053)ことにする。
凝集剤Bとしてキチン・キトサンを作るには、主として甲陽ケミカル株式会社製の脱アセチル化率が80%以上の、コーヨーキトサンの汎用グレードであるSK-400の場合によっては、株式会社共和テクノス製のアセチル化率90%以上のフローナックRの中のNグレードの0.5%酢酸酸性水溶液を使用した。凝集剤AとBの使用割合は、処理する汚泥の性質によって異なるが、一般に、A/B=8/2?3/7(重量比)の範囲から選択すればいい。」(【0039】、【0040】)
(刊1-サ)「前述したように、凝集剤AとBの添加順序は特に規定されるものではない。(1)両者を同時に添加する場合、(2)Aを先にBを後に添加する場合、(3)Bを先にAを後に添加する場合の3方式から凝集効果を最大にする方式を採用できる。敢えて言えば、土木・建築工事現場から発生するような無機性の汚水に対しては、(2)が適当な場合が多いが、活性汚泥処理後の余剰汚泥のような有機性汚泥に対しては(1)又は(3)が適当な場合が多い。」(【0041】)
(刊1-シ)「[実施例1:アルギン酸アンモニウムとキチン・キトサン…無機汚泥]本実施例では、土木・建築現場から発生する無機性の汚水を凝集沈殿させることをの可否(当審注:「凝集沈殿させることの可否」の誤記である。)を見る目的で、無機性泥水の人工的代替物として、焼きカオリンを5,000ppmの濃度で水中に分散させた分散液を対象に、本発明の凝集剤を適用した。本発明の凝集剤の内、Aとしては、試薬のアルギン酸を0.5%濃度になるように水に分散しておき、攪拌しながら、アンモニア水を滴下して行きPH=5.0の所で、透明に溶解したので、そこで停止し、その液A1を用いた。BとしてはコーヨーキトサンSK-400の0.5%酢酸酸性水溶液を用いた。結果を表1に示した。表中、カオリンの回収量は凝集後のカオリンを2号濾紙にて自然濾過して、濾紙上に残ったものを105℃の空気浴で、恒量になるまで乾燥して、回収出来た量の割合を示した。」(【0045】)
(刊1-ス)[実施例1]の結果として【表1】(【0046】)が、以下のように記載されている。
(刊1-セ)「表1から明らかなように、焼カオリン分散液は、アルギン酸アンモニウム単独(比較例1-1)でも、キチン・キトサン単独(比較例1-2)でも全く凝集しないが、両者を1/1?1/2の範囲で併用した場合は、目視でも明らかに凝集が起こって沈殿するし(実施例1-1?1-3)、カオリン回収率も90%を超える。また、A1とBを逐次添加(実施例1-1、1-2)した場合と同時添加(実施例1-3)した場合共に、良好な凝集沈殿が得られた。(【0047】)
(刊1-ソ)「汚泥を凝集沈殿させるには、汚泥を電気的に中和すればよいと考えられている。本実施例においては、カオリン分散液はプラス・チャージを持っていると考えられるので、マイナス・チャージを持っているA1を先に添加するか、或いはA1とBを同時に添加した場合に、プラス・チャージを持っているBを先に添加するよりもいい結果を与えるであろうと言う仮説は否定されることはなかった。」(【0048】)
(刊1-タ)「[実施例2:アルギン酸ナトリウムとキチン・キトサン…有機汚泥]本実施例では、有機汚泥の代表として、愛媛県西条市神戸処理場で発生した、農業集落排水の活性汚泥処理済みの余剰汚泥を対象にして実験した。この汚泥の性格はMLSS=20,000ppmPH=3.6である。この有機汚泥を予め苛性ソーダ水溶液を用いて、PH=6.5に調整して、或いは調整せず(♯印)に用いた。凝集剤Aとしては、Kimitsu ALGIN Gを苛性ソーダ水溶液でPH=5.0に中和して調製した0.25%アルギン酸ナトリウム水溶液A2を用い、BとしてはコーヨーキトサンSK-400の0.5%酢酸酸性水溶液を用いて凝集実験を行った。結果を表2に示した。表中、汚泥ケーキ含水率は、ヌッチェに5A濾紙を敷いて水流ポンプを用いて減圧濾過し、ケーキをシャーレにとって、Kettの赤外線水分計FD-600を用いて測定したものである。」(【0049】)
(刊1-チ)[実施例2]の結果として【表2】(【0050】)が、以下のように記載されている。
(刊1-ツ)「実施例2では、有機性汚泥の代表である、愛媛県西条市神戸下水処理場の活性汚泥処理した余剰汚泥(MLSS=20,000、PH=3.6)をアルギン酸ソーダとキトサンを併用して凝集試験した。PH=6.5に調整した汚泥に対しては、アルギン酸ソーダ(A2)単独(比較例2-1)でも、キトサン(B)単独(比較例2-2)でも凝集し難くかった。特に、PHを調整しない場合(比較例2-4)では、A2/B≒5/5の同時添加でも凝集し難いことが分かった。然るに、PH=6.5に調整した汚泥の場合(実施例2-1?2-3)は、A2/B=7/3?5/5の範囲において、同時添加でも、逐次添加でも凝集することが証明された。このことから、有機汚泥水のPHをA2のPHと同様に5?7位に調整しておくことが望ましい。」(【0051】)

2-3.判断1
2-3-1.刊行物1に記載された発明の認定
(1)刊行物1の記載事項(刊1-ア)(以下、単に「(刊1-ア)」のように記載する。)には請求項2-4について記載され、請求項2を引用する請求項3をさらに引用する請求項4について、これを独立形式で記載すると、刊行物1には、
「アルギン酸をアンモニア水で中和してPH=5?7の範囲のアルギン酸アンモニウム水溶液を調製し、またキチン質を80%以上に脱アセチル化して得られたキチン・キトサンの弱酸性水溶液を調製し、アルギン酸アンモニウムとキチン・キトサンの併用重量比を8:2?3:7とし、両剤を同時に添加するか又は逐次添加し、逐次添加では添加順序に制限なしに、この両水溶液を被処理水に添加する汚泥処理方法。」の発明について記載されているといえる。
(2)(刊1-ウ)には「本発明は、都市下水、農業集落排水、畜産排水、工場排水等から発生する汚泥や土木・建築汚泥等を凝集沈殿させる凝集剤・・・を用いる汚泥処理方法に関する。」と記載され、(刊1-ケ)には「第1発明および第2発明の実施において、土木・建築現場から発生する無機性の泥水も対象にすることが出来るが、都市下水、農業集落排水、畜産排水、工場排水など排水を活性汚泥処理をして生成した汚泥、即ち、有機性汚泥を対象とした時にもその特徴を発揮する。」と記載されており、「第1発明および第2発明の実施」において、「処理」される「汚泥」は、「有機性汚泥」または「土木・建築現場から発生する無機性の泥水」ということができる。
ここで、(刊1-オ)には「この第1発明において、アルギン酸アンモニウムは金属原子を含まないから、土壌中に金属イオンを残留させることはなく、同時に汚泥凝集性能を有している。」と記載され、(刊1-ク)には「第2の発明は、アルギン酸アルカリ金属塩とキチン・キトサンを凝集剤として併用する場合に、その使用条件を明確にした」と記載されており、(刊1-ア)には「アルギン酸アンモニウム」の使用について記載され、(刊1-イ)には「アルギン酸アルカリ金属塩」の使用について記載されていることから、(刊1-ア)の各請求項に係る発明が第1発明であり、(刊1-イ)の各請求項に係る発明が第2発明であることは明らかである。
よって、刊行物1には「アルギン酸アンモニウム」と「キチンキトサン」(第1発明)、または、「アルギン酸ナトリウム」と「キチンキトサン」(第2発明)、を用いて「有機性汚泥」または「粘土質廃水」を凝集処理することが示されているということができ、第1発明にあたる上記「汚泥処理方法」で「処理」されるのは「有機性汚泥」または「土木・建築現場から発生する無機性の泥水」ということができる。
(3)以上から、刊行物1には、
「アルギン酸をアンモニア水で中和してPH=5?7の範囲のアルギン酸アンモニウム水溶液を調製し、またキチン質を80%以上に脱アセチル化して得られたキチン・キトサンの弱酸性水溶液を調製し、アルギン酸アンモニウムとキチン・キトサンの併用重量比を8:2?3:7とし、両剤を同時に添加するか又は逐次添加し、逐次添加では添加順序に制限なしに、この両水溶液を被処理水に添加する有機性汚泥または土木・建築現場から発生する無機性の泥水の処理方法。」の発明(以下、「引用発明甲」という。)が記載されていると認める。

2-3-2.補正発明と引用発明甲との対比
(1)本願明細書【0001】には「本発明は、土木建築工事廃水・工場廃水・浚渫廃水等の各種廃水に含まれる汚泥・汚物・重金属等の各種微細浮遊物を凝集して沈殿する廃水の凝集沈殿処理方法に関する。」と記載され、それら「廃水」を処理する実験例で用いられた実験対象が「粘土質廃水」(【0009】、【0015】)であるから、補正発明の「粘土質廃水」は「汚泥・汚物・重金属等の各種微細浮遊物」をふくむ「土木建築工事廃水」ということができ、これは引用発明甲の「土木・建築現場から発生する無機性の泥水」にあたるものということができる。
よって、引用発明甲と本願発明とは処理対象が「粘土質廃水」である点で共通するということができる。
(2)(刊1-ウ)には「・・・天然バイオマス資源からの誘導品であるアルギン酸アルカリ金属塩の水溶液又はアルギン酸アンモニウムの水溶液と、同じく天然バイオマス資源からの誘導品であるキチン・キトサンの弱酸性水溶液とを併用することにより、動植物に対して安全でしかも環境汚染を生じない凝集沈殿効率の高い複合凝集剤およびそれを用いる汚泥処理方法に関する。」と記載されているから、引用発明甲の「アルギン酸をアンモニア水で中和してPH=5?7の範囲のアルギン酸アンモニウム水溶液」は「凝集剤」であって、「天然バイオマス資源からの誘導品であるアルギン酸アンモニウムの水溶液」の「凝集剤」であるといえる。
すると、引用発明甲の「アルギン酸をアンモニア水で中和してPH=5?7の範囲のアルギン酸アンモニウム水溶液」と補正発明の「天然物質由来のアルギン酸ソーダを含む凝集剤」とは「天然物質由来のアルギン酸塩を含む凝集剤」である点で共通し、凝集剤の成分について、補正発明は「アルギン酸ソーダ」を含むのに対して、引用発明甲は「アルギン酸アンモニウム」を含むものである点で相違しているといえる。
(3)補正発明の「天然物質由来のキトサン溶液」は、上記「2-1.」で記したように、より狭義に解して「天然物質由来のキトサンを含む凝集剤」と解する。
本願明細書【0006】には「本発明でいうキトサンは、天然物質由来のものであればよく、例えば、カニやエビ等の甲殻類生物の甲羅等から抽出精製したもの等が知られている。」であるところ、(刊1-キ)には「キチン質とは、カニ・エビ等の甲殻類や昆虫の外殻・細胞壁の主要成分で、カルシウムや蛋白質との複合体を構成している。地球上で生物生成されるバイオマス資源としては、セルロースに次いで第2の分量を占める。このキチン質からカルシウムおよび蛋白質を除去したものをキチンと呼び、このキチンを脱アセチル化したものをキトサンと云い、キチンとキトサンは共に天然高分子である。しかし、キチンを100%脱アセチル化することは困難で、キトサンと称する物質でもキチンとキトサンが所定率で複合している。このような複合物質を本発明ではキチン・キトサンと呼ぶ。」と記載されており、「キトサン」と記載されていても「キチン質」がなお含まれていることは明らかであり、また(刊1-ウ)から「キチン・キトサンの弱酸性水溶液」は凝集剤であることから、引用発明甲の「キチン・キトサンの弱酸性水溶液」は補正発明の「天然物質由来のキトサン溶液」(天然物質由来のキトサンを含む凝集剤)に相当するということができる。
(4)引用発明甲の「有機性汚泥または土木・建築現場から発生する無機性の泥水汚泥」は、(刊1-ウ)の記載から「凝集沈殿させる凝集剤」の「添加」によって処理されるから引用発明甲の「汚泥処理方法」は補正発明の「凝集沈殿処理方法」に相当するということができる。
(5)以上のことから、補正発明と引用発明とは、
「粘土質廃水の凝集沈殿処理方法において、
粘土質廃水に対して、天然物質由来のキトサン溶液(天然物質由来のキトサンを含む凝集剤)を添加し、天然物質由来のアルギン酸塩を含む凝集剤を添加して凝集沈殿処理をする粘土質廃水の凝集沈殿処理方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>天然物質由来の凝集剤の成分と添加量について、補正発明では「アルギン酸ソーダ」を「キトサン溶液(キトサンを含む凝集剤)」に対して「1:1の割合」で添加するのに対して、引用発明甲では「アルギン酸アンモニウム」を「キチン・キトサンの弱酸性水溶液」に対して「8:2?3:7の割合」で添加する点

<相違点2>天然物質由来の凝集剤の添加順序について、補正発明は「キトサン溶液(キトサンを含む凝集剤)」を「先に添加後」に「アルギン酸ソーダ」を添加するのに対して、引用発明甲では「アルギン酸アンモニウム」と「キチン・キトサンの弱酸性水溶液」を「同時に添加するか又は逐次添加し、逐次添加では添加順序に制限なしに」行うものである点。

2-3-3.相違点の検討
(1)相違点1について
a)上記「2-3-2.(1)」でみたように「粘土質廃水」は「土木・建築現場から発生する無機性の泥水」にあたるものである。
そして、例えば、原査定の拒絶の理由に引用文献5として引用され本願出願日前に頒布された特開平10-57968号公報の【0001】、【特許請求の範囲】には、「ビルの基礎工事、地下鉄工事、地中管埋設工事、浚渫工事等において大量に発生する泥水の処理方法」に関して、「キトサン」と「アルギン酸ソーダ」を添加して凝集させることが示されており、また、本願出願日前に頒布された特開2003-236307号公報の【0001】、【0005】には「土木・建築汚泥などの凝集・沈殿や脱水を行う際に用いる凝集剤及び該凝集剤を用いた汚泥処理方法」において「アルギン酸ナトリウムとキトサンとを併用した凝集剤」を使用することが示されており、「粘土質廃水」に「アルギン酸ナトリウム」と「キトサン」を凝集剤として用いることは周知技術ということができる。
b)また、(刊1-イ)には、汚泥の種類を特定せずに「アルギン酸ソーダ」と「キチン・キトサン」を使用して凝集させることが示されており、(刊1-タ)には、「有機性汚泥」(上記「2-3-1.(2)」参照)に対するものとはいえ、「アルギン酸ナトリウム」と「キチン・キトサン」を組み合わせて使用することは記載されている。
c)すると、引用発明甲では「粘土質廃水」に対して「アルギン酸アンモニウム」と共に「キチン・キトサン」を使用するものだから、「粘土質廃水」の凝集において、「キチン・キトサン」と共に使用する凝集剤として、「アルギン酸アンモニウム」と「アルギン酸ソーダ」を相互に代替して使用できることは示唆されているということができる。
d)さらに、水への溶解性はアルギン酸のナトリウム塩、マグネシウム塩、アンモニア塩が他の重金属塩に比して良好(他は溶けない)であることが技術常識であることを考慮すれば、「粘土質廃水」の凝集において、水に溶けることを要する凝集剤として、アルギン酸アンモニウム塩に代わる選択肢としてアルギン酸ナトリウム塩(ソーダ)を採用することは、必要に応じて採用し得ることというべきである。
e)たしかに、(刊1-エ)、(刊1-オ)には、アルギン酸アンモニウムであれば肥料に使えるし、アルギン酸ナトリウム(ソーダ)は金属塩だから植物の生育を阻害する旨記載されてはいる。
しかしながら、凝集剤で処理後の汚泥の用途としては単なる埋立て材としての使用や窯業でのキルンの燃料など肥料等以外の用途も存在するものであり、そのような用途への使用を想定する場合には、(刊1-エ)、(刊1-オ)の開示はアルギン酸アンモニウムをアルギン酸ナトリウムに置換することの阻害要因とはならないというべきである。
f)そして、アルギン酸塩のキチン・キトサンに対する添加割合については、引用発明甲では「アルギン酸アンモニウム」を「キチン・キトサン」に対して「8:2?3:7の割合」で添加するものであるが、「アルギン酸アンモニウム」と「アルギン酸ナトリウム」とは共にアルギン酸塩であり、(刊1-ウ)に示されるように共に凝集剤として作用するものであるから、アルギン酸塩の添加量については、アルギン酸アンモニウムに代えてアルギン酸ナトリウムを添加するに際して、添加量に大きな差異が生じるものとは考え難い。
g)そこで、刊行物1に記載の実施例についてみてみる。
「実施例1」に関する(刊1-シ)?(刊1-セ)、「実施例2」に関する(刊1-タ)?(刊1-ツ)において、上記(刊1-コ)から、「化学実験試薬のアルギン酸をアンモニア水でPH=5まで中和して調整した0.5%水溶液を以下A1」とありので「A1」は「アルギン酸アンモニウム」であり、「凝集剤Bとしてキチン・キトサン・・・の0.5%酢酸酸性水溶液B」とあるので「B」は「キチン・キトサン」であり、「Kimitsu化学工業株式会社製のKimitsu ALGIN Gを水酸化ナトリウムの水溶液でPH=5まで中和して調整した0.25%水溶液を以下A2」とあるので「A2」は「アルギン酸ナトリウム」である。
すると、「実施例1」に関する(刊1-シ)?(刊1-セ)には、「無機汚泥」すなわち「粘土質廃水」に対して「アルギン酸アンモニウム」と「キチン・キトサン」を別々に添加する場合に凝集結果の良好な「実施例No.1-1」あるいは「実施例No.1-2」において、「A1」すなわち「アルギン酸アンモニウム」と、「B」すなわち「キチン・キトサン」とを別々に添加する際の割合が、「1/1」あるいは「1/2」であることが記載されている。
また、「有機汚泥」に対するものではあるが「実施例2」に関する(刊1-タ)?(刊1-ツ)には、「有機汚泥」に対して「アルギン酸ソーダ」(アルギン酸ナトリウム)と「キチン・キトサン」を別々に添加する場合に凝集結果の良好な「実施例No.2-3」において、「A2」すなわち「アルギン酸ナトリウム」と、「B」すなわち「キチン・キトサン」とを別々に添加する際の割合が、「5/5」すなわち「1/1」であることが記載されている。
h)すると、「粘土質廃水」の凝集において、「アルギン酸アンモニウム」を「アルギン酸ナトリウム」に置換するに際し、上記f)でみたようにアルギン酸アンモニウムに代えてアルギン酸ナトリウムを添加するに際して、添加量に大きな差異が生じるものとは考え難いことから、「キチン・キトサン」に対する添加割合を決定するために、当業者であれば、先ず、アルギン酸ナトリウムとキチンキトサンの添加割合を、アルギン酸アンモニウムとキチンキトサンの添加割合と同じ「1/1」あるいは「1/2」から試してみることは自然な選択であり、しかも「有機汚泥」に対するものではあってもアルギン酸ナトリウムとキチンキトサンの添加割合を「1/1」にすることは記載されているのだから、アルギン酸ナトリウムとキチンキトサンの添加割合を「1/1」(1:1)と特定することに想到することは格別の困難性なく成し得ることといえる。
よって、引用発明甲において相違点1に係る補正発明の特定事項に想到することは当業者の容易に推考し得るところということができる。
そして上記相違点1に基づく補正発明の奏する作用効果も、刊行物1の記載事項、上記各公報に代表される周知技術及び技術常識から予測できる範囲のものであり格別なものではない。

(2)相違点2について
a)そもそも引用発明甲は「両剤を同時に添加するか又は逐次添加し、逐次添加では添加順序に制限なしに、この両水溶液を被処理水に添加する」ものであるから、「アルギン酸アンモニウム」を含む凝集剤と「キチン・キトサンの弱酸性水溶液」との添加順位は任意ということができる。
また、(刊1-カ)(刊1-サ)にも同様に両者の添加順位は任意であることが示されている。
b)さらに、上記「2-3-3.(1)g)」でみたように、(刊1-タ)(刊1-チ)から「実施例No.2-3」においては、「有機汚泥」に対するものではあるが、「キチンキトサン」を先に添加し後からアルギン酸塩を添加するものが記載されているから、添加順位は示唆されているといえる。
そうであれば、「粘土質廃水」の凝集において、「キチン・キトサン」を先に添加し、後から「アルギン酸アンモニウム」したがって「アルギン酸ソーダ」を添加するようにすることに格別の困難性は見いだせない。
よって、引用発明甲において相違点2に係る補正発明の特定事項に想到することは当業者の容易に推考し得るところということができる。
そして上記相違点2に基づく補正発明の奏する作用効果も、刊行物1の記載事項、上記各公報に代表される周知技術及び技術常識から予測できる範囲のものであり格別なものではない。
c)ここで請求人の主張について検討する。
請求人は、意見書3頁、請求書5頁において、新たな実験結果を上げて、「キトサン」先行添加後「アルギン酸ソーダ」を添加する場合は、逆の場合に比べてフロックの沈降速度が速く濁度も小さく、作用効果が顕著であるかから、「キトサン」先行添加後「アルギン酸ソーダ」を添加する補正発明は刊行物の記載から容易に推考されない旨を主張する。
そこで、本願明細書【表1】(【0010】)をみると、キトサン(B)25ppm添加後にアルギン酸ソーダ(A)25ppmを添加した場合に「沈降速度6.12m/H」「上澄濁度26」であるところ、本願明細書【0014】には「凝集剤A及び凝集剤Bの添加量が多くなるに従い、沈降速度・フロック粒径・pHがそれほど変わらないものの、上澄水濁度は低くなる」という知見が記載されている。
そこで、上記新たな実験結果をみると、本願発明の場合である「キトサン」先行添加後「アルギン酸ソーダ」添加の場合である例えばキトサン(B)5ppm添加後にアルギン酸ソーダ(A)5ppmを添加した場合(上側の表の番号4)に「沈降速度15.95m/H」「上澄濁度7」であることが記載されている。
これらの結果を見るに、上記知見によれば(B)(A)を順に25ppmずつ添加した方が(B)(A)を順に5ppmずつ添加した場合よりも「沈降速度」はそれほど変わらずに「濁度」は低くなるはずであるが、上記実験結果は添加量が少ない方が「沈降速度」はより速く、「濁度」はより小さいものとなっており、上記知見と食い違うことは明白である。
また、刊行物1の(刊1-ソ)や、原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用され本願出願日前に頒布された特開昭57-130599号公報(特許請求の範囲、1頁右下欄18行-2頁右上欄16行)の記載を参酌すれば、「プラスチャージ」を持つと考えられる「粘土質廃水」に対しては「マイナスチャージ」を持つと考えられる「アルギン酸ソーダ」を先行添加後に「プラスチャージ」を持つと考えられる「キトサン」を添加する順序の方がより濁度が小さくなるものと考えられるが、新たな実験結果ではそのようになっていない。
すなわち、意見書、請求書の新たな実験結果はこれら従来の一般的な見解に反するものであり、また、当該実験結果が上記のように本願明細書の記載に対しても食い違いがあり、また、それらについて何らかの合理的な説明を本願明細書、意見書、請求書等からはみいだせないことからみて、上記新たな実験において、凝集作用は「キトサン」と「アルギン酸ソーダ」の添加順序以外の他の条件に影響されたであろうことが否定できない。
そうだとすれば、意見書、請求書での上記新たな実験結果は、「キトサン」先行添加後に「アルギン酸ソーダ」を添加するという条件によってのみ得られたとまではいうことができず、当該実験結果を直ちに参酌することはできないというべきである。
したがって、上記請求人の主張は採用できない。

(3)まとめ
以上から、補正発明は、引用発明甲、上記各公報に代表される周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-4.判断2
2-4-1.刊行物1に記載された発明の認定
(1)刊行物1の記載事項(刊1-イ)(以下、単に「(刊1-イ)」のように記載する。)には請求項5-7について記載され、請求項5を引用する請求項6をさらに引用する請求項7について、これを独立形式で記載すると、刊行物1には、
「アルギン酸をアルカリ金属水酸化物で中和してPH=5?7の範囲のアルギン酸アルカリ金属塩水溶液を調製し、またキチン質を80%以上に脱アセチル化して得られたキチン・キトサンの弱酸性水溶液を調製し、アルギン酸アルカリ金属塩とキチン・キトサンの併用重量比を8:2?3:7とし、両剤を同時に添加するか又は逐次添加し、逐次添加では添加順序に制限なしに、この両水溶液を被処理水に添加する汚泥処理方法。」の発明について記載されているといえる。
(2)上記「2-3-3.(1)g)」でみたように、(刊1-タ)(刊1-チ)から、凝集状態の良好な「実施例No.2-3」においては、「有機汚泥」に対するものではあるが、「キチンキトサンの弱酸性水溶液」を先に添加し、後から「アルギン酸アルカリ金属塩水溶液」を添加するものが記載され、さらに添加割合が「5/5」つまり「1/1」(1:1)であることが記載されている。
(4)以上から、刊行物1には、
「アルギン酸をアルカリ金属水酸化物で中和してPH=5?7の範囲のアルギン酸アルカリ金属塩水溶液を調製し、またキチン質を80%以上に脱アセチル化して得られたキチン・キトサンの弱酸性水溶液を調製し、アルギン酸アルカリ金属塩とキチン・キトサンの併用重量比を1:1とし、キチン・キトサンの弱酸性水溶液を先に添加後、アルギン酸アルカリ金属塩水溶液を添加する有機性汚泥の処理方法。」の発明(以下、「引用発明乙」という。)が記載されていると認める。

2-4-2.補正発明と引用発明乙との対比
(1)(刊1-ウ)には「・・・天然バイオマス資源からの誘導品であるアルギン酸アルカリ金属塩の水溶液又はアルギン酸アンモニウムの水溶液と、同じく天然バイオマス資源からの誘導品であるキチン・キトサンの弱酸性水溶液とを併用することにより、動植物に対して安全でしかも環境汚染を生じない凝集沈殿効率の高い複合凝集剤およびそれを用いる汚泥処理方法に関する。」と記載されている。
すると、引用発明乙の「アルギン酸をアルカリ金属水酸化物で中和してPH=5?7の範囲のアルギン酸アルカリ金属塩水溶液」は「凝集剤」であって、「天然バイオマス資源からの誘導品であるアルギン酸アルカリ金属塩の水溶液」の「凝集剤」であり、「アルギン酸ソーダ」が通常は「アルギン酸ナトリウム塩」を指し、それは「アルギン酸アルカリ金属塩」であることから、引用発明乙の「アルギン酸をアルカリ金属水酸化物で中和してPH=5?7の範囲のアルギン酸アルカリ金属塩水溶液」は補正発明の「天然物質由来のアルギン酸ソーダを含む凝集剤」に相当するということができる。
(3)上記「2-3-2.(3)」と同様に、引用発明乙の「キチン・キトサンの弱酸性水溶液」は補正発明の「天然物質由来のキトサン溶液」(天然物質由来のキトサンを含む凝集剤)に相当するということができる。
(4)上記「2-3-2.(4)」と同様に、引用発明乙の「汚泥処理方法」は補正発明の「凝集沈殿処理方法」に相当するということができる。
(5)以上のことから、補正発明と引用発明乙とは、
「廃水の凝集沈殿処理方法において、
廃水に対して、天然物質由来のキトサン溶液を先に添加後、前記天然物質由来のキトサンを含む凝集剤と1:1の割合の天然物質由来のアルギン酸ソーダを含む凝集剤を添加して凝集沈殿処理をする廃水の凝集沈殿処理方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点A>「凝集沈殿処理方法」の処理対象について、補正発明は「粘土質廃水」であるのに対して、引用発明乙は「有機性汚泥」である点

2-4-3.相違点の検討
(1)上記「2-3-3.(1)a)」でみたように、「粘土質廃水」に「アルギン酸ナトリウム」と「キトサン」を凝集剤として用いることは周知技術ということができる。
(2)また、上記「2-3-1.(2)」でみたように、刊行物1には「アルギン酸ナトリウム」と「キチンキトサン」、または、「アルギン酸アンモニウム」と「キチンキトサン」のどちらを用いても、「有機性汚泥」または「粘土質廃水」を凝集処理できることが示されているということができる。
(3)すると、引用発明乙は「アルギン酸ナトリウム」と「キチンキトサン」を用いて「有機性汚泥」を処理するものであるから、引用発明乙を「粘土質廃水」の処理に用いることに格別の困難性は見いだせない。
(4)請求人は回答書で「引用文献1(当審注:本審決の「刊行物1」のことである。)の実施例2には、「アルギン酸ナトリウム」と「キチン・キトサン」を用いることが記載されているが、処理対象物が「有機汚泥」であり、粘土質廃水を処理する本願発明とはまったく着想が異なるものである。」と主張するが、上記(1)(2)でみたように、刊行物1には「有機汚泥」も「粘土質廃水」も処理する技術が記載されており、「粘土質廃水」に対して「アルギン酸ソーダ」と「キトサン」を添加すること自体は周知技術であることに鑑みれば、引用発明乙の「アルギン酸ソーダ」と「キチンキトサン」を「有機汚泥」に添加する技術を、「粘土質廃水」の処理に適用してみようとすることに格別の困難性は見いだせない。
よって、引用発明乙において相違点に係る補正発明の特定事項に想到することは当業者の容易に推考し得るところということができる。
そして上記相違点に基づく補正発明の奏する作用効果も、刊行物1の記載事項、上記各公報に代表される周知技術及び技術常識から予測できる範囲のものであり格別なものではない。

2-5.予備的理由(独立特許要件)のまとめ
上記「2-3.」または「2-4.」の検討から、補正発明は、引用発明甲又は乙、上記各公報に代表される周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであったとしても、上記の理由により、いわゆる独立特許要件を満足しないため、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成24年3月13日付けの特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正は前記「第2.」のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年3月22日付けの特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載される事項によって特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
粘土質廃水の凝集沈殿処理方法において、
粘土質廃水に対して、天然物質由来のキトサンを含む凝集剤を先に添加後、前記天然物質由来のキトサンを含む凝集剤と1:1の割合の天然物質由来のアルギン酸ソーダを含む凝集剤を添加して凝集沈殿処理をすることを特徴とする粘土質廃水の凝集沈殿処理方法。」

2.刊行物の記載
刊行物の記載は、上記「2-2.刊行物の記載」に記載のとおりである。

3.引用発明
引用発明甲は「2-3-1.刊行物1に記載された発明の認定」に記載のとおりであり、引用発明乙は「2-4-1.刊行物1に記載された発明の認定」に記載のとおりである。

4.本願発明と引用発明との対比
上記「2-1.」で記載したように、上記補正発明に関する検討は、補正発明の「天然物質由来のキトサン溶液」をより狭義に解して「天然物質由来のキトサンを含む凝集剤」と置き換えて論じたものであり、本願発明はその「天然物質由来のキトサンを含む凝集剤」に関するものである。
したがって、「天然物質由来のキトサン溶液」を「天然物質由来のキトサンを含む凝集剤」と置き換えて論じた補正発明が上記「第2.」に記載したとおり、引用発明甲または乙、上記公報に代表される周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、補正発明と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明甲または乙、上記公報に代表される周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-11 
結審通知日 2013-03-12 
審決日 2013-03-25 
出願番号 特願2006-315549(P2006-315549)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (C02F)
P 1 8・ 121- Z (C02F)
P 1 8・ 575- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 富永 正史  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 國方 恭子
中澤 登
発明の名称 粘土質廃水の凝集沈殿処理方法  
代理人 特許業務法人 英知国際特許事務所  
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