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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  H01S
審判 全部無効 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  H01S
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01S
審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  H01S
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  H01S
審判 全部無効 2項進歩性  H01S
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H01S
審判 全部無効 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正  H01S
管理番号 1274154
審判番号 無効2011-800201  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-10-07 
確定日 2013-04-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3650000号発明「窒化物系半導体レーザ素子および窒化物半導体レーザ装置の製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3650000号の請求項1?4に係る発明についての特許を無効とする。 特許第3650000号の請求項5に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その5分の1を請求人の負担とし、5分の4を被請求人の負担とする。 
理由 第1 本件の概要及び経緯

1 本件の概要

本件は、請求人(日亜化学工業株式会社)が、被請求人(三洋電機株式会社)が特許権者である特許第3650000号(以下「本件特許」という。登録時の請求項の数は5である。)の請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1」等という。)についての特許を無効とすることを求める事案である。


2 出願の経緯

本件特許の出願の経緯は、次のとおりである。

平成12年 7月 4日 特許出願(特願2000-202782号、以下「本願」という。)
平成15年 9月22日 手続補正書
平成17年 1月31日 特許査定
平成17年 2月25日 特許第3650000号として設定登録
平成17年 5月18日 特許公報発行


3 本件審判の経緯

本件審判の経緯は、次のとおりである。

平成23年10月 7日 特許無効審判請求
平成23年12月26日 訂正請求、答弁書提出
平成24年 3月 5日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成24年 3月19日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成24年 3月26日 口頭審理
平成24年 4月 5日 上申書提出(請求人)
平成24年 4月25日 答弁書提出


4 証拠方法

両当事者の各証拠方法は次のとおりである。

(1)請求人

ア 請求人が提出した甲号証は、以下のとおりである。 (以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。乙号証についても同じ。)

甲1:特許第3650000号公報(本件特許)
甲2:特開平11-330610号公報
甲3:特開2000-114664号公報
甲4:特開昭50-79287号公報
甲5:特開平6-37386号公報
甲6:特開平10-242581号公報
甲7:特開平11-312825号公報
甲8:口頭審理における技術説明で用いた資料
甲9:末松安晴ら著、「光ファイバ通信入門(改訂第3版)」、オーム社(1989年発行)p.96-103


(2)被請求人

被請求人が提出した乙号証は以下のとおりである。

乙1:特開2002-26443号公報(本件特許の公開公報)
乙2:平成15年9月22日付け手続補正書
乙3:新村出編、広辞苑第5版、岩波書店、1998年11月11日発行


第2 両当事者の主張の概要

1 請求人の主張の概要

請求人は、「特許第3650000号の請求項1?5に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、本件特許は次の理由により無効とすべきものであると主張している。

(1)訂正前の各請求項についての無効理由(以下「無効理由1」という。)

ア 訂正請求は、つぎのa及びbの点において特許法に規定された訂正要件に違反するものであり、認められるべきではない。

a 「前記所定形状」を「前記所定領域」とする訂正は、訂正前の「前記所定形状」が何の誤記であるのか明らかではないので、誤記の訂正を目的とするものではなく(特許法第134条の2第1項第2号)、新規事項の追加であり(同法第126条第3項)、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものであって(同条第4項)、訂正要件に違反する。(口頭審理陳述要領書の第4?9、16?17頁の(2)(a)及び(c)、上申書の第3?6、9頁の(1)(a)及び(c)。)

b 「平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から」を挿入する訂正は、これが特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するか否かは措くとしても、素子の側面側を基準としていた訂正前の本願発明から、第2の窒化物半導体層の外周を基準とするものに変わっていることから、新規事項の追加であり(同法第126条第3項)、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものであるから(同条第4項)、訂正要件に違反する。(口頭審理陳述要領書の第9?17頁の(2)(b)及び(c)、上申書の第6?9頁の(1)(a)及び(c)。)

イ そして、訂正前の本件発明1?5は、甲2に記載された発明と同一、または、甲2に記載された発明及び甲3?5に記載された周知技術から容易に想到できたものであるので特許法第29条第1項第3号ないしは同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1?5についての本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものであり、また、本件の特許請求の範囲が明確ではなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件発明1?5についての本件特許は、同法123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。(審判請求書の第13?38頁。)


(2)訂正後の各請求項についての無効理由

仮に本件訂正が適法になされたものであるとしても、本件特許は次の理由により無効とすべきものである。以下、本件訂正による訂正後の請求項1?5に係る特許発明を「本件訂正発明1?5」という。

ア 甲2を主引用例とする無効理由

a 本件訂正発明1?5は、甲2に記載された発明と同一、または、甲2に記載された従来技術及び甲3?5,7,9に記載された周知技術、甲6に記載された構成を適用することによって容易に想到できたものであるので、特許法第29条第1項第3号ないしは同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1?5についての本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。(口頭審理陳述要領書の第17?23頁の(3)(a)、上申書の第9?11頁の(2)(a)。以下「無効理由2」という。)

b また、本件訂正発明1?5は、甲2に従来技術として記載された発明と同一、または、甲2に従来技術として記載された発明に甲2,6及び7に記載された周知技術を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものであるので、特許法第29条第1項第3号ないしは同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1?5についての本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。(口頭審理陳述要領書の第23?28頁の(3)(b)、上申書の第11?13頁の(2)(b)。以下「無効理由3」という。)


イ 甲6を主引用例とする無効理由

本件訂正発明1?5は、甲6に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1?5についての本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。(口頭審理陳述要領書の第28?35頁の(3)(c)、上申書の第13?14頁の(2)(c)。以下「無効理由4」という。)


ウ 特許請求の範囲の記載不備に係る無効理由

本件訂正発明1?5は、第2のオーミック電極を形成する所定領域を第2の窒化物半導体層の外周を基準とする点において本件特許明細書によりサポートされていないものを含んでおり、かつ、第2のオーミック電極が「両端部近傍」や「所定領域」の全域に形成されなければならないのか「一部」でもよいのかが明確ではないので、訂正後の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、本件訂正発明1?5についての本件特許は、同法123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。(口頭審理陳述要領書の第35?37頁の(4)、上申書の第14?15頁の(3)。以下「無効理由5」という。)


2 被請求人の主張の概要

被請求人は、「本件請求は成り立たない。」との審決を求め、請求人が主張する無効理由はいずれも存在しないと主張している。



第3 訂正請求についての当審の判断

1 訂正請求の内容

被請求人が平成23年12月26日にした訂正請求(以下、同訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)について、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを請求するものであって、以下の事項をその訂正内容とするものである(訂正による変更部分に下線を付した。)。

(1)訂正事項1

本件特許における特許請求の範囲の請求項1及び5を、次のとおり訂正する。

(本件訂正前)
「【請求項1】
導電性を有する透明基板の一方の面上に第1導電型の第1の窒化物系半導体層、能動素子領域、および共振器長方向に延びるストライプ状のリッジ部を有する第2導電型の第2の窒化物系半導体層が形成され、前記透明基板の他方の面上に第1のオーミック電極が形成されるとともに、前記第2の窒化物系半導体層上に第2のオーミック電極が形成されてなる窒化物系半導体レーザ素子であって、
前記第1のオーミック電極は、共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成され、
前記第2のオーミック電極は、前記リッジ部上のストライプ領域の両端部近傍上および前記ストライプ領域を含む所定領域上に形成され、
前記所定形状が、前記共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状領域を除く領域であることを特徴とする窒化物系半導体レーザ素子。」

(本件訂正後)
「【請求項1】
導電性を有する透明基板の一方の面上に第1導電型の第1の窒化物系半導体層、能動素子領域、および共振器長方向に延びるストライプ状のリッジ部を有する第2導電型の第2の窒化物系半導体層が形成され、前記透明基板の他方の面上に第1のオーミック電極が形成されるとともに、前記第2の窒化物系半導体層上に第2のオーミック電極が形成されてなる窒化物系半導体レーザ素子であって、
前記第1のオーミック電極は、共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成され、
前記第2のオーミック電極は、前記リッジ部上のストライプ領域の両端部近傍上および前記ストライプ領域を含む所定領域上に形成され、
前記所定領域が、平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から前記共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域であることを特徴とする窒化物系半導体レーザ素子。」


(2)訂正事項2

本件特許における特許請求の範囲の請求項5を、次のとおり訂正する。

(本件訂正前)
「【請求項5】
窒化物系半導体レーザ素子をサブマウントにジャンクションダウンで実装する窒化物系半導体レーザ装置の製造方法であって、
導電性を有する透明基板の一方の面上に第1導電型の第1の窒化物系半導体層、能動素子領域、および共振器長方向に延びるストライプ状のリッジ部を有する第2導電型の第2の窒化物系半導体層が形成され、前記透明基板の他方の面上に第1のオーミック電極が形成されるとともに、前記第2の窒化物系半導体層上に第2のオーミック電極が形成され、前記第1のオーミック電極は、共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成され、前記第2のオーミック電極は、前記リッジ部上のストライプ領域の両端部近傍上および前記ストライプ領域を含む所定領域上に形成され、前記所定形状が、前記共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状領域を除く領域である窒化物系半導体レーザ素子を作製する工程と、
前記窒化物系半導体レーザ素子を前記透明基板側を上にして、該透明基板方向から前記ストライプ領域の端部に形成された前記第2のオーミック電極の形状を見ながら、ジャンクションダウンでサブマウントに実装する工程とを備えたことを特徴とする窒化物系半導体レーザ装置の製造方法。」

(本件訂正後)
「【請求項5】
窒化物系半導体レーザ素子をサブマウントにジャンクションダウンで実装する窒化物系半導体レーザ装置の製造方法であって、
導電性を有する透明基板の一方の面上に第1導電型の第1の窒化物系半導体層、能動素子領域、および共振器長方向に延びるストライプ状のリッジ部を有する第2導電型の第2の窒化物系半導体層が形成され、前記透明基板の他方の面上に第1のオーミック電極が形成されるとともに、前記第2の窒化物系半導体層上に第2のオーミック電極が形成され、前記第1のオーミック電極は、共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成され、前記第2のオーミック電極は、前記リッジ部上のストライプ領域の両端部近傍上および前記ストライプ領域を含む所定領域上に形成され、前記所定領域が、平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から前記共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域である窒化物系半導体レーザ素子を作製する工程と、
前記窒化物系半導体レーザ素子を前記透明基板側を上にして、該透明基板方向から前記ストライプ領域の端部に形成された前記第2のオーミック電極の形状を見ながら、ジャンクションダウンでサブマウントに実装する工程とを備えたことを特徴とする窒化物系半導体レーザ装置の製造方法。」


(3)訂正事項3

本件特許における明細書の段落【0007】を次のとおり訂正する。

(本件訂正前)
「一方、p-コンタクト層59上においては、共振器長方向の両端面(以下、共振器端面と呼ぶ)側の辺に沿ったストライプ状領域および共振器長方向と垂直な方向の両端面(以下、側面と呼ぶ)側の辺に沿ったストライプ状領域を除く領域にp電極61が形成されている。このように、上記の半導体レーザ素子においては、p電極61が所定の形状にパターニングされており、両方の共振器端面側のストライプ状領域および両方の側面側のストライプ状領域においてはp-コンタクト層59が露出している。」

(本件訂正後)
「一方、p-コンタクト層59上においては、共振器長方向の両端面(以下、共振器端面と呼ぶ)側の辺に沿ったストライプ状の領域および共振器長方向と垂直な方向の両端面(以下、側面と呼ぶ)側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域にp電極61が形成されている。このように、上記の半導体レーザ素子においては、p電極61が所定の形状にパターニングされており、両方の共振器端面側のストライプ状の領域および両方の側面側のストライプ状の領域においてはp-コンタクト層59が露出している。」


(4)訂正事項4

本件特許における明細書の段落【0016】の一部を次のとおり訂正する。

(本件訂正前)
「所定形状が、共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状領域を除く領域であることを特徴とするものである。」

(本件訂正後)
「所定領域が、平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域であることを特徴とするものである。」


(5)訂正事項5

本件特許における明細書の段落【0025】の一部を次のとおり訂正する。

(本件訂正前)
「所定形状が、共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状領域を除く領域である窒化物系半導体レーザ素子を作製する工程と、」

(本件訂正後)
「所定領域が、平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域である窒化物系半導体レーザ素子を作製する工程と、」


(6)訂正事項6

本件特許における明細書の段落【0090】の一部を次のとおり訂正する。

(本件訂正前)
「なお、この場合の四角形形状の所定領域とは、共振器端面A,B側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の両側面側の辺に沿ったストライプ状領域を除く領域のことである。」

(本件訂正後)
「なお、この場合の四角形形状の所定領域とは、共振器端面A,B側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の両側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域のことである。」


2 訂正の可否に対する判断

(1)本件訂正の目的についての検討

ア 訂正事項1?3及び6における「ストライプ状領域」を「ストライプ状の領域」とする訂正について

本件訂正前の「ストライプ状領域」を「ストライプ状の領域」とする訂正は、本件訂正前の明細書に記載された「ストライプ状の領域」と記載を統一するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。


イ 訂正事項1及び2における「前記所定形状」を「前記所定領域」とする訂正について

本件訂正前の「前記所定形状」との記載は、その記載より前に「所定形状」が記載されていないことから、本件訂正前の「前記所定形状」との記載は明らかな誤記である。そして、本件訂正前の請求項1及び5には、「前記所定形状が…領域である」と記載されていることから、「前記所定形状」が何らかの領域であることは明らかであって、その前後の文脈からは、その直前に記載された「所定領域」を指していると解するのが相当である。
よって、請求項1及び5における「前記所定形状」を「前記所定領域」とする訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当する。


ウ 訂正事項1及び2における「平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から」との記載を追加する訂正について

「平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から」との記載を追加する訂正は、本件訂正前の「共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状領域を除く領域」に、本件明細書の段落【0021】の記載に基づいて「平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から」との限定を加えるものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。


エ 訂正事項4及び5について

訂正事項4及び5は、段落【0016】及び段落【0025】に対して、訂正事項1及び2による本件訂正後の請求項1及び5の記載との関係において生じている不整合を正すためのものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

オ 訂正の目的についてのまとめ

以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第134条の2第1項ただし書に規定する要件を満たすものである。


(2)新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否等についての検討

本件訂正は、上記「(1)訂正の目的についての検討」において検討したとおり、特許明細書等に記載されている事項に基づいて特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正をするものであり、特許明細書等に記載されている事項の範囲内においてなされたものであるから、新規事項の追加ではない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。


(3)請求人の主張

ア 請求人は、無効理由1において、次のa及びbの理由により、本件訂正は特許法第134条の2第1項ただし書及び同条第5項において準用する同法第126条第3項の規定に適合しないものであると主張している。

a 「前記所定形状」を「前記所定領域」とする訂正に対する主張

本件訂正前の「前記所定形状」が何らかの誤記であるとしても、何の誤記であるかは明らかではない。本件訂正前の「前記所定形状」の記載は、電極の「形状」(四角形形状)の特定が元々の意味として含意されているものであり、その記載を本件訂正により電極の形状の限定を伴わない「前記所定領域」に変更することは、用語の本来の意味内容を明らかにする「誤記の訂正」に該当しない。また、本件明細書の記載からは本件訂正前の「前記所定形状」の前に記載された「所定領域」が誤記と考えた方が本件明細書の記載とより整合しているといえるので、本件訂正前の「前記所定形状」を「前記所定領域」とする訂正は明らかな誤記の訂正に該当しない。

b「平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から」との記載を追加する訂正に対する主張

本件訂正による「平面視において、前記第2の窒化物半導体層の領域から」を挿入する訂正は、素子の側面側を基準としていた訂正前の本願発明から、第2の窒化物半導体層の外周を基準とするものに変えるものであるから新規事項の追加であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものであるから、訂正要件に違反するものである。


イ 請求人の主張に対する検討

a 「前記所定形状」を「前記所定領域」とする訂正に対する主張について

請求人が指摘する本件明細書や図面の記載は、あくまでも発明の実施の形態の例が記載されているのであって、本件訂正前の請求項に記載された「前記所定形状」を実施例における電極の形状に限定解釈しなければならない事情は見当たらない。
訂正前の請求項には、「前記所定形状」については「前記共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状領域を除く領域である」との限定が付されているだけであって「四角形形状」であるとの限定は付されていないのだから、訂正前の請求項の「前記所定形状」が「四角形形状」を意味するとの限定解釈を前提とした請求人の主張は、その前提を欠くものであって、採用することができない。
さらに、本件訂正前の「所定形状」が誤記ではなく、「所定領域」の方が誤記であると考え得るとの上記請求人の主張も、本件明細書に基づいたものではないので、これを採用することはできない。

b 「平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から」との記載を追加する訂正に対する主張について

本件明細書の段落【0021】には次の記載がある。

「【0021】第2のオーミック電極は、第2の窒化物系半導体層の少なくとも一辺に沿った所定領域が露出するように第2の窒化物系半導体層上に形成されてもよい。」

上記段落【0021】の記載において、第2のオーミック電極を形成する際に、「第2の窒化物系半導体層の少なくとも一辺に沿った所定領域が露出する」ことから、当該記載における第2の窒化物系半導体層が露出する所定領域は、本件訂正発明に記載された第2のオーミック電極が形成されている所定領域から除く領域に該当することは明らかである。
したがって、第2のオーミック電極が形成されている所定領域から除く領域である「共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状領域」に対して「平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から」との限定を追加する訂正事項は、新規事項の追加にあたらない。
さらに、第2の窒化物半導体層の良識の外周が、素子の外周と一致するか、もしくは、それよりも内側に存在することは自明のことであるから、本件訂正後の「前記所定領域」が素子の外周よりも内側に存在する領域(リッジ部上のストライプ領域の両端部近傍を除く)となることは明らかである。したがって、本件訂正前の「前記所定形状」に含まれない領域が排除されていることは明らかであって、本訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または、変更するものでもない。


3 本件訂正についてのむすび

以上検討したとおり、本件訂正における訂正事項は、いずれも、特許法第134条の2第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。



第4 本件発明

上記のとおり、本件訂正が認められたので、本件特許の請求項1?5に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件訂正発明1」などという。)は、次の各請求項に記載したとおりのものと認められる。


「【請求項1】
導電性を有する透明基板の一方の面上に第1導電型の第1の窒化物系半導体層、能動素子領域、および共振器長方向に延びるストライプ状のリッジ部を有する第2導電型の第2の窒化物系半導体層が形成され、前記透明基板の他方の面上に第1のオーミック電極が形成されるとともに、前記第2の窒化物系半導体層上に第2のオーミック電極が形成されてなる窒化物系半導体レーザ素子であって、
前記第1のオーミック電極は、共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成され、
前記第2のオーミック電極は、前記リッジ部上のストライプ領域の両端部近傍上および前記ストライプ領域を含む所定領域上に形成され、
前記所定領域が、平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から前記共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域であることを特徴とする窒化物系半導体レーザ素子。」

【請求項2】
前記第1のオーミック電極は、前記共振器の両端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに前記窒化物系半導体素子の両側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成されていることを特徴とする請求項1記載の窒化物系半導体レーザ素子。

【請求項3】
前記基板は窒化ガリウムから構成されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の窒化物系半導体レーザ素子。

【請求項4】
前記第1および前記第2の窒化物系半導体層はガリウム、アルミニウム、インジウム、ホウ素およびタリウムの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の窒化物系半導体レーザ素子。

【請求項5】
窒化物系半導体レーザ素子をサブマウントにジャンクションダウンで実装する窒化物系半導体レーザ装置の製造方法であって、
導電性を有する透明基板の一方の面上に第1導電型の第1の窒化物系半導体層、能動素子領域、および共振器長方向に延びるストライプ状のリッジ部を有する第2導電型の第2の窒化物系半導体層が形成され、前記透明基板の他方の面上に第1のオーミック電極が形成されるとともに、前記第2の窒化物系半導体層上に第2のオーミック電極が形成され、前記第1のオーミック電極は、共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成され、前記第2のオーミック電極は、前記リッジ部上のストライプ領域の両端部近傍上および前記ストライプ領域を含む所定領域上に形成され、前記所定領域が、平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から前記共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域である窒化物系半導体レーザ素子を作製する工程と、
前記窒化物系半導体レーザ素子を前記透明基板側を上にして、該透明基板方向から前記ストライプ領域の端部に形成された前記第2のオーミック電極の形状を見ながら、ジャンクションダウンでサブマウントに実装する工程とを備えたことを特徴とする窒化物系半導体レーザ装置の製造方法。」



第5 無効理由1に対する判断

1 本件訂正発明1?5は、次の「第6」で詳述するとおり、甲2に記載された発明と同一であるとも、または、甲2に記載された発明及び甲3?5に記載された周知技術から容易に想到できたものであるとも、することはできない。

2 また、本件訂正は認められる(上記第3の3参照)ものであるところ、該訂正により誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明がなされ、訂正後の特許請求の範囲の記載が明確となったことから、訂正後の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないということはできない。


第6 無効理由2?4(新規性進歩性)に対する判断

1 甲2?9の記載事項

請求人が提出した甲2?9のそれぞれには、次の記載がある。なお、下線は当審で付した。

(1)甲2

ア「【請求項1】 導電性基板(106)上に設けられた凸型ストライプ状導波路領域(115)と、該導波路領域から連続する略平滑面(116)とを有する窒化物半導体レーザー(100)において、
導波路領域上に設けられたストライプ状の第1電極(101)と、該第1電極と電気的に接続され絶縁性保護膜(104)、(105)を介して前記平滑面(116)上に配置されたワイヤボンディング用のパッド電極(102)と、導電性基板(106)を介して第1電極(101)と対向して設けられた第2電極(103)とを有する窒化物半導体レーザー。

【請求項2】 前記第1電極(101)はストライプ状導波路領域(115)の端面に設けられた劈開面(201)上まで延びていると共に前記パッド電極(102)のストライプ状導波路領域と平行方向は第1電極より短く劈開面上まで達していない請求項1記載の窒化物半導体レーザー。」

イ「【0002】
【従来技術】今日、光通信を始めDVDなどに利用される種々の光半導体素子が実現されるにつれ、より高密度に情報の送信、記録などが可能な短波長半導体レーザーの開発がますます高まりを見せている。半導体レーザーは本質的にその半導体のバンドギャップエネルギーにより発振波長が制約される。そのため短波長レーザーとしてバンドギャップが大きい窒化物半導体が注目を浴びている。

【0003】こうした現状の中、本出願人らは窒化物半導体基板上に活性層を含む窒化物半導体レーザーを作成して世界で初めて室温での連続発振1万時間以上を達成した(ICNS'97 予稿集,October 27-31,1997,P444-446、及びJpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)pp.L1568-1571、Part2,No.12A,1 December 1997)。

【0004】このような窒化物半導体レーザーの模式的断面図を図5に示す。サファイア基板上に部分的に形成されたSiO_(2)膜を介して選択成長させたn型GaNよりなる窒化物半導体基板上にレーザー構造となる窒化物半導体層が形成されている。窒化物半導体層のうち、p型AlGaN/GaNの超格子構造からなるp型クラッド層とp型GaNからなるp型コンタクト層から上にリッジが設けられている。リッジの側面とp型クラッド層の平面とに渡ってSiO_(2)よりなる絶縁膜が形成され、その絶縁膜を介してp型GaN層と電気的に接続されたp型電極が形成されている。リッジのストライプ幅は10μmと極めて狭いため、リッジ最表面にオーミック用のp型電極の形成及び、p型電極上のワイヤボンディングが極めて難しい。

【0005】そのため、p型電極から絶縁層を介したp型クラッド層上にp型パッド電極を形成させてある。窒化物半導体は他の半導体と異なり、比較的硬度が高いのでリッジ上に幅広の電極を形成することでワイヤボンディグ用のパッド電極を形成することができる。このような窒化物半導体レーザーの構造とするで比較的低電流で短波長が発振可能な半導体レーザーとすることができる。」

ウ「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような半導体レーザーを量産時の如く、大量にワイヤボンディングさせると、ものによっては信頼性が低下する傾向にあった。また、より闘値を低下させ歩留まりの高い窒化物半導体レーザーが求められている現在においては、上記構成の窒化物半導体レーザーでは十分ではなくさらなる改良が求められている。

【0007】本発明者は種々の実験の結果、ワイヤボンディングさせるパッド電極周辺を半導体素子の形状、絶縁層を考慮した新規な構造とすることにより半導体特性及び信頼性が向上することを見出し本発明を成すに至った。

【0008】即ち、リッジ、活性層を構成するストライプ幅も極めて狭い。また、気相成長させた窒化物半導体ではリッジやストライプ状の導波路を半導体で埋め込むことも難しい。そのため、絶縁層を介して凸型ストライプ状の導波路領域やリッジなどを保護する。

【0009】しかしながら、リッジ上からワイヤーボンディングすると、電極を介してリッジ表面に設けられた絶縁層に力が掛かる。特にリッジ形状やストライプが突起状となっていることからワイヤボンディング時に複雑な力が掛かる。そのため、絶縁膜に掛かる局所的な力がクラックなどを生じ信頼性が低下すると考えられる。本発明は、比較的局所的な力が掛かりにくい、リッジやストライプ状導波路領域とは離れた平坦な絶縁層上のパッド電極を介してワイヤボンディングさせることができるものである。また、絶縁層のパッド電極を伝って、リッジ上に設けられた電極のみに集中して電力を供給することにより、闘値の低下及び信頼性とを同時に満たしたものである。」

エ「【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は導電性基板上に設けられた凸型ストライプ状導波路領域と、導波路領域から連続する略平滑面とを有する窒化物半導体レーザーである。特に、導波路領域上に設けられたストライプ状の第1電極と、第1電極と電気的に接続され絶縁性保護膜を介して窒化物半導体の平滑面上に配置されたワイヤボンディング用のパッド電極と、導電性基板を介して第1電極と対向して設けられた第2電極とを有する窒化物半導体レーザーである。

【0011】これにより、ワイヤボンディングをストライプ状の導波路領域をさけて形成できるため、ストライプ状の導波路領域や絶縁層に何ら影響を与えることなく、ワイヤボンディングすることができる。また、ストライプ状の導波領域と異なる位置にワイヤボンディングさせても窒化物半導体を介して垂直方向(層厚方向)に効率よく電流を注入することができる。そのため、偏在がなく効率よく半導体層に電流を流し闘値を下げることができる。」

オ「【0012】本発明の請求項2に記載の窒化物半導体レーザーは、第1電極がストライプ状導波路領域の端面に設けられた劈開面上まで延びていると共にパッド電極のストライプ状導波路領域と平行な方向は第1電極より短く劈開部まで達していない。

【0013】そのため、劈開時にパッド電極が延び積層した窒化物半導体層を被覆することで窒化物半導体レーザーを短絡することがない。即ち、ワイヤボンディング時にワイヤ及び第1電極とオーミック接触をさせ効率よく電流を注入可能な金属や合金を選択した場合、金属の延性が大きい傾向にある。しかしながら、パッド電極を予め劈開端面から離して形成させてあるため劈開による短絡がない。」

カ「【0017】
【発明の実施の形態】本発明の窒化物半導体レーザーを図1、図2、図3及び図4を用いて詳述する。図1は、エッチングにより形成した凸型ストライプ状の導波路領域に対し垂直方向、即ち共振面に対して平行方向で切断した断面図を示してある。

【0018】n型導電性を示す窒化物半導体基板106上に、n型クラック防止層107、n型クラッド層108、光ガイド層109、活性層110、p型キャップ層111、光ガイド層112、p型クラッド層113、p型コンタクト層114を積層したもののうち、窒化物半導体基板までをエッチングにより凸型ストライプ状導波路領域115を形成させ完全屈折率型レーザー用とした。凸型ストライプ状導波路領域115はフォトレジストを利用したエッチングにより形成する(図4(A)の工程)。」

キ「【0025】(第1電極101)第1電極101は窒化物半導体のコンタクト層114と直接接触するものであり、窒化物半導体とオーミック接触できる金属や合金さらにはこれらの多層膜が挙げられる。第1電極101は窒化物半導体と接触するだけでなく、第1の保護膜104上にも部分的に形成することができる。また、第1電極101はストライプ状導波路領域115に形成された窒化物半導体に均一に電力を供給する必要があるためストライプ長方向の全面に渡って形成されることが望ましい。また、窒化物半導体レーザー100の共振面を劈開によって形成する場合、窒化物半導体ウエハなどの劈開に伴って劈開面に金属片が接触することがなく、延性の少ない材料を選択することがより望ましい。第1電極を構成する金属片(バリなど)が延性によって各半導体層と接触すると短絡や半導体層の破壊を生ずる場合がある。

【0026】第1電極101の具体的材料として、窒化物半導体がn型の場合、具体的にはAu、Pt、Ni、Al、W、In、Cu、Ag、Ir、Pd、Rh、Ti、Co、Sn、Pbなどの金属、合金、これらの積層体やPt、W、Moのシリサイドなどが好適に挙げられる。また、窒化物半導体がp型の場合、具体的にはRu、Rh、OsやNi/Au(なお、/は積層体を示す。)、Co/Au、Ni/Ti/Au、Cu/Au、Pd合金やPt合金が好適に挙げられる。このような金属や合金などはマスクを介してスパッタリング法や真空蒸着法を利用することで所望の形状に形成することができる。」

ク「【0027】(パッド電極102)パッド電極102は第1電極101と電気的に接続すると共に窒化物半導体上に形成された絶縁性保護膜105を介して平滑面116まで延在するものである。特に、パッド電極102は、ワイヤボンディング時の衝撃を和らげると共に第1電極101、ワイヤ301及び絶縁性保護膜105と密着性のよいことが好ましい。このようなパッド電極102は第1電極101と同一材料を用いても良いし、異なる材料を利用することもできる。したがって、第1電極とパッド電極とを同一のものとして一体的に形成することもできる。

【0028】また、第1電極101及びパッド電極102は発熱量の多い凸型ストライプ状導波路領域115と直接或いは絶縁性保護膜104を介して被覆するため効率的に外部に熱を放出することができる。これにより窒化物半導体レーザーの特性を安定化させることに寄与することもできる。そのため、熱伝導性の良い材料を選択することも好ましい。」

ケ「【0029】(第2電極103)第2電極103は、導電性基板106を介して第1電極101と対向して設けられるものである。第2電極103は導電性基板106上に設けられるものであり、これにより窒化物半導体層を挟んで効率的に電流を流すことができる。したがって、導電性基板106に効率よく電流を流せるだけでなく導電性基板106との密着性や窒化物半導体レーザーに外部と電気的に接続させる半田やAgペーストなど導電性部材との電気伝導性、密着性、オーミック接触及び熱伝導性がよいものが好ましい。第2電極の具体的材料としてはW/Al/W/Au/AuSn、Ti/Al/Ti/Pt/Au/AuSn、InAuSn共晶或いはAg共晶等が好適に挙げられる。」

コ「【0047】(凸型ストライプ状導波路領域115の形成)次に、CVD装置により酸化珪素を全面に形成させた後、p型コンタクト層上にストライプ幅2μm、厚さ1μmのフォトレジストを形成させた。RIE装置により、CF_(4)ガスを用い、フォトレジストをマスクとして、酸化珪素をエッチングする。その後、フォトレジストのみを除去することにより、p側コンタクト層の上にストライプ幅2μm、厚さ1μmの酸化珪素が形成できる。

【0048】さらに、ストライプ状の酸化珪素形成後、RIEによりSiCl_(4)ガスを用いて、n側コンタクト層までエッチングする。」

サ「【0051】(n型電極103)n型電極を形成させるために窒化物半導体基板上に格子状のフォトレジストを用いてn型電極を形成する。n型電極は予め研磨され、フォトレジストが形成された窒化物半導体上にスパッタリング法を用いて、W/Al/W/Auをそれぞれ200オングストローム/2000オングストローム/2000オングストローム/3000オングストロームで成膜させた。さらにその上にメタライズ電極を形成させる。メタライズ電極としてはAu-Snなどを厚さ1から5μmで形成させることが好ましい。フォトレジストを除去することにより窒化物半導体基板を介してp型電極と対応したn型電極が形成される。なお、p型電極及びn型電極はp型コンタクト層やn型コンタクト層とオーミック接触させるために熱処理を施す。」

シ「【0054】こうして形成されたウエハのストライプ状の導波領域に垂直な方向で、基板側からバー状に劈開し、劈開面(M面=六角柱状の結晶の側面に相当する面)に共振器を作成する。共振器面に酸化珪素(SiO_(2))、酸化チタン(TiO_(2))を多層に形成させて誘電体多層膜とする。最後に、島状になったパッド電極にかからないようストライプ状の導波路領域に平行な方向でバーを切断して窒化物半導体レーザーを形成することができる。なお、共振器長は300から500μmとすることが望ましい。」

ス「【0055】この窒化物半導体レーザーをヒートシンクが設けられた駆動基板上に設置し、基板上の一方の電極と窒化物半導体基板とを半田により接続させた。また、パッド電極と駆動基板の他方の電極とをワイヤボンド機器を用いてワイヤボンドさせた。ワイヤボンドはキャピラリーに通した金線の先端に放電により予めボールを形成し、リッジと窒化物半導体レーザーとの間であって平滑なパッド電極の略中心にボールを押しつけ超音波を与えることによりボールボンディングさせた。他方、金線を延ばしながら駆動基板の電極上にキャピラリーごと金線を押しつけステッチボンディングさせた。こうして形成させた窒化物半導体レーザー180個に駆動基板から電流を注入した。発振波長400から420nm、平均闘値電流密度2.8kA/cm^(2)で室温連続発振した。いずれの窒化物半導体レーザーも駆動可能であった。なお、本実施例においてp層側を下にしてヒートシンクにさせる場合は、第2電極であるn型電極をパッド電極として利用し、パッド電極をヒートシンクと電気的に接続させるための電極として利用することもできる。この場合、第2電極の何れにワイヤボンディングさせることもできる。」

セ「【0056】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の窒化物半導体レーザーはワイヤボンディング用のパット電極がリッジ状の窒化物半導体と接続させた電極から延在しており、リッジから離れた保護膜上にも形成されている。ワイヤは保護膜上のパッド電極にワイヤボンディングされる。そのため、リッジを構成する絶縁性保護膜や窒化物半導体を損傷することがない。」

ソ「甲2の図1、2及び5は次のとおりである。
図1は甲2記載の窒化物半導体レーザーの断面図であり、図2は甲2記載の窒化物半導体レーザーのパッド電極を形成した側から観察した上面図である。
図5は、甲2における従来技術の窒化物半導体レーザーの断面図である。
図1



図2



図5





(2)甲3

ア「【0032】また、n電極が基板裏面に形成される場合、基板裏面にベタにn電極を形成後裏面からスクライブスすると、n電極に阻まれて窒化物半導体までスクライブが達しない場合があり、この問題点を防止するために、ウエハの基板裏面にパターン形状のn電極を形成することによりスクライブし易くなり、劈開性が向上する。パターン形状としては、ウエハを劈開して得られる1チップの形状が得られやすいように、チップの大きさとほぼ同程度の形状、例えば400μm×400μmの形状、であることが好ましい。つまりスクライブライン上及び/または劈開面上にn電極が存在しないようにパターンをつけてn電極を形成する。更にメタライズ電極もn電極と同様のパターン形状でn電極上に形成されると、スクライブし易くなり劈開性が向上する。n電極としては、特に限定されないが、例えばTi-Al、W-Al-W-Auなどを用いることができる。メタライズ電極としてはTi-Pt-Au-(Au/Sn)[膜厚0.1μm-0.2μm-0.7μm-0.3μm]、Ti-Pt-Au-(Au/Si)[膜厚前記と同様]、Ti-Pt-Au-(Au/Ge)[膜厚前記と同様]、Ti-Pt-Au-In[膜厚前記と同様]、Au/Sn[膜厚0.3μm]、In[膜厚前記と同様]、Au/Si[膜厚前記と同様]、Au/Ge[膜厚前記と同様]等を用いることができる。n電極が裏面にパターン形状に形成される場合のチップ化の方法としては、例えば、裏面のn電極パターン間を裏面からスクライブによりバー状サンプルを作製し、端面へ反射ミラー形成後裏面からスクライブによりチップ化を行うことができる。」

イ「甲3の図5の記載は次のとおりである。
図5は甲3に記載された窒化物半導体レーザ素子の断面図である。

図5





(3)甲4

ア「2 特許請求の範囲
所定の導電形を呈する第一の半導体層と、その上に前記第一の半導体層と反対の導電形を呈する第二の半導体層を設けてPN接合を形成し、前記第一および第二の各半導体層の表面にオーミック金属を被着するとともに、前記PN接合をはさんで相対する一対の反射面を設けた半導体レーザ素子において、前記第一および第二の半導体層上のオーミック金属の少なくとも一方をその表面の周辺部を除いて形成したことを特徴とする半導体レーザ素子。」

イ「このようにして、半導体レーザダイオードのダイスを得るわけであるが、反射面6および非反射面8はオーミック電極1および5が一部除去されている表面7において、へきかいおよびスクライブによつて形成される。このため従来方法で発生したオーミック電極用の金属がウエハと共に割れない場合がなくなる。さらにへきかいおよびスクライブする場所がGaAs結晶のみであるため、容易に反射面6および非反射面8を得ることができる。」(第2頁右下欄第3-12行。)

ウ「甲4の第2図は次のとおりである。
第2図は、オーミック電極1,5が形成された半導体レーザダイオードを示している。






(4)甲5

ア「【請求項1】 半導体基板と、その上に形成された電流阻止層と、中央近傍で電流が流れ端面近傍で電流が流れない様に前記電流阻止層に形成されたストライプ溝と、前記電流阻止層上に形成されたクラッド層と、そのクラッド層上に形成された活性層と表面電極を具備し、その表面電極が前記活性層の巾全体に広がる中央部電極及び前記ストライプ溝の上方に位置しかつ前記ストライプ溝の巾より大きく前記中央部電極の巾より小さい巾を有する端部電極からなる事を特徴とする半導体レーザ。」

イ「【0011】表面電極10は金等からなりキャップ層9上に形成されている。表面電極10は巾狭の端部電極11と巾広の中央部電極12から構成されている。中央部電極12は活性層7の巾全体に広がる様に、すなわちキャップ層9の端から10?20μmを残してキャップ層9上に形成されている。端部電極11はストライプ溝3の略真上のキャップ層9上に形成されている。端部電極11の巾Dはストライプ溝3の巾Cよりも大きく中央部電極12の巾よりも小さく設けられている。望しくは端部電極11の巾Dは8?100μmに設けると良い。ストライプ溝3のストライプ方向に沿う端部電極11の長さEは20μm位が望しい。何故ならば端部電極11の長さEが20μmより十分長ければ、中央部電極12の長さが短かくなり、サブマウント等とダイボンディングした時に取付が不安定となる。そして通常、端面を劈開する時に劈開面の位置が長手方向でばらつくが、端部電極11の長さEが20μmより十分短ければ、中央部電極12を劈開する恐れがあるからである。」

エ「甲5の図1は次のとおりである。
図1は甲5に記載された半導体レーザの斜視図である。

図1




(5)甲6

ア「【0008】
【発明の実施の形態】図1及び図2は本発明のレーザ素子を説明するためのレーザ素子の構造を示す斜視図である。図1は基板1にサファイア、スピネルのような絶縁性基板を使用した場合のレーザ素子を示し、図2は基板1にGaN、Si、GaAsのような導電性、若しくは半導体基板を使用した場合のレーザ素子を示しており、同一符号は同一部材を示している。

【0009】本発明において、活性層3と基板1との間に形成されるn型窒化物半導体層2は、n型の窒化物半導体層を少なくとも1層有していれば良いし、また複数層を有していても良い。例えばレーザ素子であれば、活性層よりもバンドギャップエネルギーの大きなn型窒化物半導体よりなる光ガイド層、光閉じ込め層等が形成されて、複数のn型層からなるのが通常である。同様に活性層3と正電極5との間に形成されるp型窒化物半導体層4も少なくとも一層、若しくは複数層を有していれば良く、通常はn層側と同じく、活性層よりもバンドギャップエネルギーが大きいp型窒化物半導体よりなる光ガイド層、光閉じ込め層が形成され、一般に分離閉じ込め型のダブルへテロ構造とされている。活性層3は通常、その活性層が接するn型窒化物半導体層、及びp型窒化物半導体よりもバンドギャップエネルギーが小さい窒化物半導体で形成され、レーザ素子の場合では互いにバンドギャップエネルギーの異なる膜厚100オングストローム以下の窒化物半導体層が積層された多重量子井戸構造とされる。

【0010】p型窒化物半導体層4の一部に形成されるリッジストライプ4’は活性層の発光をリッジ下部に集中させて閾値電流を低下させる作用がある。図では台形で示した4’部分がリッジストライプに相当する。なお、この図ではp型窒化物半導体層の一部が順メサエッチされて台形のリッジ部を有しているが、特に台形でなくても長方形、また逆メサエッチによる逆台形でも良い。リッジのストライプ幅は30μm以下、さらに好ましくは20μm以下、最も好ましくは10μm以下に調整する。なお本発明においてリッジのストライプ幅とは、図のように台形のリッジであれば下底の広い辺(下底)の方の幅を指すものとする。本発明のレーザ素子ではリッジストライプに沿ったn型、p型の窒化物半導体よりなる光ガイド層領域、活性層領域が導波路領域に相当する。p型窒化物半導体層のリッジ部分はAlを含む窒化物半導体層から上、望ましくはp型の窒化物半導体よりなる光閉じ込め層を含んでその層から上のp型窒化物半導体層をリッジストライプとすることが好ましい。」

イ「【0013】図3は図1のレーザ素子の断面図を示し、図4は図2のレーザ素子の断面図を示し、いずれもリッジストライプに対して垂直な方向で素子を切断した際の図を示している。本発明の請求項1でいうリッジストライプ幅の中央線(a)が、基板に向かう鉛直方向で、活性層幅の中央線(b)とずれているとは、即ち、図3乃至図4に示すように、リッジストライプの中央線(a)から基板に向かって降ろした鉛直線(a’)と、活性層幅の中央線(b)から基板に向かって降ろした鉛直線(b’)とが、ストライプに垂直な断面において全てずれていることである。このように、リッジストライプの中心を活性層の中心からずらすことにより、リッジ部に外部からの応力が加わるのを少なくしてリッジ部の結晶を破壊しないので、レーザ素子の寿命を長くすると共に、低閾値で発振可能となる。

【0014】さらに、本発明のレーザ素子ではリッジ最上部に形成した正電極5と電気的に接続したボンディング用のパッド電極6を設けている。パッド電極6は実質的に正電極5の表面積を大きくしてワイヤーボンディング、ダイボンディング等のボンディング時にレーザ素子を他の部材と接続しやすくしている。本発明の請求項2に係る素子では、このパッド電極6に例えば金線、アルミニウム線、銀線等よりなるワイヤー8でもってワイヤーボンディングされており、このワイヤーボンディングの中心からの鉛直線cが前記リッジストライプの中央線aとずれるようにされている。なおワイヤーボンディングの中心とは、図3及び図4に示すようにワイヤーがボールと接する点を指し、その点からの鉛直線cが、リッジストライプの中央線cと断面方向で一致していないことを特徴としている。レーザ素子に正電極側にワイヤーボンディングすると、ワイヤー接続時に衝撃が係る。この衝撃がリッジストライプの真上に係ると、リッジ部の窒化物半導体の結晶が損ねられる可能性がある。特に窒化物半導体はダイヤモンドに近い非常に硬い物質であるため、衝撃が直接リッジのような微小領域に係ると、そのリッジ内部の結晶が他の半導体に比べて壊れやすい。しかしながら、本発明のレーザ素子ではリッジ部とボンディング部をずらしてあるため、リッジには直接真上から衝撃を受けないので、結晶が壊れにくくなって、素子寿命が長くなる。」

ウ「【0017】[実施例1]サファイア(C面)よりなる基板1を反応容器内にセットし、容器内を水素で十分置換した後、水素を流しながら、基板の温度を1050℃まで上昇させ、基板のクリーニングを行う。基板1にはサファイアC面の他、R面、A面を主面とするサファイア、その他、スピネル(MgA1_(2)O_(4))のような絶縁性の基板の他、SiC(6H、4H、3Cを含む)、ZnS、ZnO、GaAs、GaN等の半導体基板を用いることができる。絶縁性基板を用いた場合は、正電極と負電極とは同一面側から取り出されるが、導電性基板の場合は図2、図4に示すように基板裏面側から負電極を形成することもできる。但し導電性基板を用いても、同一面側に正と負の電極を取り出す構造としても良い。

【0018】(バッファ層201)続いて、温度を510℃まで下げ、キャリアガスに水素、原料ガスにアンモニアとTMG(トリメチルガリウム)とを用い、基板1上にGaNよりなるバッファ層201を約200オングストロームの膜厚で成長させる。バッファ層201はAlN、GaN、AlGaN等が、900℃以下の温度で、0.1μm以下、好ましくは数十オングストローム?数百オングストロームで形成できる。このバッファ層は基板と窒化物半導体との格子定数不正を緩和するために形成されるが、窒化物半導体の成長方法、基板の種類等によっては省略することも可能である。

【0019】(n型コンタクト層202)バッファ層20成長後、TMGのみ止めて、温度を1050℃まで上昇させる。1050℃になったら、同じく原料ガスにTMG、アンモニアガス、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを1×10^(19)/cm^(3)ドープしたn型GaNよりなるn型コンタクト層202を6μmの膜厚で成長させる。n型コンタクト層202はn型のIn_(X)Al_(Y)Ga_(1-X-Y)N(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)で構成でき、その組成は特に問うものではないが、好ましくはn型GaN、Y値が0.1以下のAl_(X)Ga_(1-X)Nとすると負電極7と良好なオーミックが得られやすい。

【0020】(クラック防止層203)次に、温度を800℃にして、原料ガスにTMG、TMI(トリメチルインジウム)、アンモニア、シランガスを用い、Siを1×10^(19)/cm^(3)ドープしたIn_(0.1)Ga_(0.9)Nよりなるクラック防止層203を500オングストロームの膜厚で成長させる。このクラック防止層203はInを含むn型の窒化物半導体、好ましくはInGaNで成長させることにより、Alを含む窒化物半導体層中にクラックが入るのを防止することができる。なおこのクラック防止層は100オングストローム以上、0.5μm以下の膜厚で成長させることが好ましい。100オングストロームよりも薄いと前記のようにクラック防止として作用しにくく、0.5μmよりも厚いと、結晶自体が黒変する傾向にある。なお、このクラック防止層203は成長方法、成長装置等の条件によっては省略することもできる。

【0021】(n型クラッド層204)次に温度を1050℃にして、原料ガスにTMA(トリメチルアルミニウム)、TMG、NH_(3)、SiH_(4)を用い、Siを1×10^(19)/cm^(3)ドープしたn型Al_(0.20)Ga_(0.80)Nよりなる第1の層を20オングストロームとSiを1×10^(19)/cm^(3)ドープしたn型GaNよりなる第2の層を20オングストローム成長させる。そしてこのペアを125回成長させ、総膜厚0.5μm(5000オングストローム)の多層膜よりなるn型クラッド層204を成長させる。このn型クラッド層204はキャリア閉じ込め層、及び光閉じ込め層として作用し、Alを含む窒化物半導体、好ましくはAlGaN、若しくはGaNまたはInGaNを含む第1の層と、第1の層と組成の異なる窒化物半導体よりなる第2の層との積層構造からなる多層膜層を成長させることが望ましい。このように単一膜厚が100オングストローム以下、さらに好ましくは70オングストローム以下、最も好ましくは50オングストローム以下の互いに組成の異なる窒化物半導体層を積層成長させた超格子構造とすると、単一の窒化物半導体層の膜厚が臨界限界膜厚以下となって、結晶性が非常に良くなり、容易に室温で連続発振する。このクラッド層としての超格子層は、活性層よりも外側にあるn型窒化物半導体層、若しくはp型窒化物半導体層の内の少なくとも一方の層に存在させ、好ましくは両方の層に存在させることが望ましい。n型クラッド層204全体の膜厚は100オングストローム以上、2μm以下、さらに好ましくは500オングストローム以上、1μm以下で成長させることが望ましい。

【0022】(n型光ガイド層205)続いて、1050℃でSiを1×10^(19)/cm^(3)ドープしたn型GaNよりなるn型光ガイド層205を0.2μmの膜厚で成長させる。このn型光ガイド層205は、活性層の光ガイド層として作用し、GaN、InGaNを成長させることが望ましく、通常100オングストローム?5μm、さらに好ましくは200オングストローム?1μmの膜厚で成長させることが望ましい。以上説明したように、本発明の請求項において基板上部のn型窒化物半導体層2とは、多層のn型窒化物半導体層(202?205)よりなるものも含む。なお本実施例のように基板とn型窒化物半導体層との間にバッファ層201を介しても良い。

【0023】(活性層3)次に、原料ガスにTMG、TMI、アンモニア、シランガスを用いて活性層3を成長させる。活性層3は温度を800℃に保持して、まずSiを8×10^(18)/cm^(3)でドープしたIn_(0.2)Ga_(0.8)Nよりなる井戸層を25オングストロームの膜厚で成長させる。次にTMIのモル比を変化させるのみで同一温度で、Siを8×10^(18)/cm^(3)ドープしたIn_(0.01)Ga_(0.95)Nよりなる障壁層を50オングストロームの膜厚で成長させる。この操作を2回繰り返し、最後に井戸層を積層した多重量子井戸構造とする。活性層にドープする不純物は本実施例のように井戸層、障壁層両方にドープしても良く、いずれか一方にドープしてもよい。なおn型不純物をドープすると閾値が低下する傾向にある。

【0024】(p型キャップ層401)次に、温度を1050℃に上げ、TMG、TMA、アンモニア、Cp_(2)Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、活性層よりもバンドギャップエネルギーが大きく、Mgを1×10^(20)/cm^(3)ドープしたp型Al_(0.1)Ga_(0.9)Nよりなるp型キャップ層401を300オングストロームの膜厚で成長させる。このp型キャップ層401はp型としたが、膜厚が薄いため、n型不純物をドープしてキャリアが補償されたi型としても良く、最も好ましくはp型とする。p型キャップ層28の膜厚は0.1μm以下、さらに好ましくは500オングストローム以下、最も好ましくは300オングストローム以下に調整する。0.1μmより厚い膜厚で成長させると、p型キャップ層401中にクラックが入りやすくなり、結晶性の良い窒化物半導体層が成長しにくいからである。またキャリアがこのエネルギーバリアをトンネル効果により通過できなくなる。Alの組成比が大きいAlGaN程薄く形成するとLD素子は発振しやすくなる。例えば、Y値が0.2以上のAl_(Y)Ga_(1-Y)Nであれば500オングストローム以下に調整することが望ましい。p型キャップ層401の膜厚の下限は特に限定しないが、10オングストローム以上の膜厚で形成することが望ましい。

【0025】(p型光ガイド層402)続いて、1050℃で、Mgを1×10^(20)/cm^(3)ドープしたキャップ層よりもバンドギャップエネルギーが小さいMgドープp型GaNよりなるp型光ガイド層402を0.2μmの膜厚で成長させる。このp型光ガイド層402は、n型光ガイド層205と同じく、活性層の光ガイド層として作用し、GaN、InGaNを成長させることが望ましく、通常100オングストローム?5μm、さらに好ましくは2 00オングストローム?1μmの膜厚で成長させることが望ましい。

【0026】(p型クラッド層403)続いて1050℃で、Mgを1×10^(20)/cm^(3)ドープしたp型Al_(0.20)Ga_(0.80)Nよりなる第1の層を20オングストロームと、Mgを1×10^(20)/cm^(3)ドープしたn型GaNよりなる第2の層を20オングストローム成長させる。そしてこのペアを125回成長させ、総膜厚0.5μm(5000オングストローム)の多層膜よりなるp型クラッド層403を成長させる。このp型クラッド層403も、n型クラッド層204と同じく、キャリア閉じ込め層、及び光閉じ込め層として作用し、AlGaN若しくはGaN又はInGaNよりなる第1の層と、第1の層と異なる組成を有する窒化物半導体よりなる第2の層との積層構造からなる多層膜層を成長させることが望ましい。このようにクラッド層を超格子構造とすると、単一の窒化物半導体層の膜厚が臨界限界膜厚以下となって、結晶性が非常に良くなり、容易に室温で連続発振する。また活性層の発光を閉じ込めるための光閉じ込め層としても非常に効果的である。p型クラッド層403全体の膜厚は100オングストローム以上、2μm以下、さらに好ましくは500オングストローム以上、1μm以下で成長させることが望ましい。

【0027】本実施例のように量子構造の井戸層を有する活性層を有するダブルへテロ構造の半導体素子の場合、その活性層3に接して、活性層3よりもバンドギャップエネルギーが大きい膜厚0.1μm以下の窒化物半導体よりなるキャップ層、好ましくはAlを含む窒化物半導体よりなるp型キャップ層401を設け、そのp型キャップ層401よりも活性層から離れた位置に、p型キャップ層401よりもバンドギャップエネルギーが小さいp型光ガイド層402を設け、そのp型光ガイド層402よりも活性層から離れた位置に、p型光ガイド層402よりもバンドギャップが大きい窒化物半導体、好ましくはAlを含む窒化物半導体を含むp型クラッド層403を設けることは非常に好ましい。しかもp型キャップ層401の膜厚を0.1μm以下と薄く設定してあるため、キャリアのバリアとして作用することはなく、p層から注入された正孔が、トンネル効果によりp型キャップ層401を通り抜けることができて、活性層で効率よく再結合し、LDの出力が向上する。つまり、注入されたキャリアは、p型キャップ層401のバンドギャップエネルギーが大きいため、半導体素子の温度が上昇しても、あるいは注入電流密度が増えても、キャリアは活性層をオーバーフローせず、p型キャップ層401で阻止されるため、キャリアが活性層に貯まり、効率よく発光することが可能となる。

【0028】(p型コンタクト層404)最後に、p型クラッド層403の上に、1050℃でMgを1×10^(20)/cm^(3)ドープしたp型GaNよりなるp型コンタクト層404を150オングストロームの膜厚で成長させる。p型コンタクト層404はp型のIn_(X)Al_(Y)Ga_(1-X-Y)N(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)で構成することができ、好ましくはMgをドープしたGaN、若しくはMgをドープしたY値が0.1以下のAl_(Y)Ga_(1-Y)Nとすれば、正電極5と最も好ましいオーミック接触が得られる。p型コンタクト層404の膜厚は500オングストローム以下、さらに好ましくは300オングストローム以下、最も好ましくは200オングストローム以下に調整することが望ましい。なぜなら、抵抗率が高いp型窒化物半導体層の膜厚を500オングストローム以下に調整することにより、さらに抵抗率が低下するため、閾値での電流、電圧が低下する。またアニール時にp型層から除去される水素が多くなって抵抗率が低下しやすい傾向にある。さらに、このコンタクト層404を薄くする効果には、次のようなことがある。例えば、p型AlGaNよりなるp型クラッド層に、膜厚が500オングストロームより厚いp型GaNよりなるp型コンタクト層が接して形成されており、仮にクラッド層とコンタクト層の不純物濃度が同じで、キャリア濃度が同じである場合、p型コンタクト層の膜厚を500オングストロームよりも薄くすると、クラッド層側のキャリアがコンタクト層側に移動しやすくなって、p型コンタクト層のキャリア濃度が高くなる傾向にある。そのためキャリア濃度の高いコンタクト層に電極を形成すると良好なオーミックが得られる。以上説明したように、本発明の請求項では、活性層から上のp型窒化物半導体層4が複数のp層(401?404)からなるものも含まれる。」

エ「【0034】基板研磨後、研磨面側をスクライブして、リッジストライプに垂直な方向でバー状に劈開し、劈開面に共振器長500μmの共振器を作製する。共振器面にSiO_(2)とTiO_(2)よりなる誘電体多層膜を形成し、最後にリッジストライプに平行な方向で、バーを切断してレーザチップとする。このレーザチップの断面図が図5である。この図に示すように、リッジストライプのストライプ幅中央の鉛直線a’は活性層幅の中央の鉛直線b’とずれており、さらにリッジストライプのストライプ幅中央の鉛直線a’はb’よりも負電極7側に接近している。なおリッジストライプ幅中央の鉛直線a’と負電極7の端面との距離は50μmにしてある。

【0035】さらにこのレーザチップをフェースアップ(基板とヒートシンクとが対向した状態)でヒートシンクに設置し、それぞれの電極を金線よりなるワイヤー8でボンディングする。なおワイヤーボンディング時の位置cは、図5に示すようにリッジストライプの位置から離れた位置とする。このレーザチップのレーザ発振を試みたところ、室温において、閾値電流密度3.9kA/cm^(2)、閾値電圧4.3Vで、発振波長405nmの連続発振が確認され、50時間以上の寿命を示した。それに対し、リッジストライプを活性層幅の中心位置と一致させ、その真上からワイヤボンディングしたものは、閾値電流、電圧でおよそ5%の上昇が見られ、30時間以上の寿命であった。」


オ「甲6の図面の図2及び4は次のとおりである。
図2は甲6に記載された窒化物半導体レーザ素子の斜視図であり、図4は甲6に記載された窒化物半導体レーザ素子の断面図である。

図2



図4




(6)甲7

ア「【0057】[実施例6]以下、図9を元に実施例6について説明する。図9は本発明の成長方法により得られた窒化物半導体層を基板とする一実施の形態のレーザ素子の構造を示す模式断面図である。」

イ「【0068】反応終了後、反応容器内において、ウェーハを窒素雰囲気中、700℃でアニーリングを行い、p型層をさらに低抵抗化する。アニーリング後、ウェーハを反応容器から取り出し、図9に示すように、RIE装置により最上層のp型コンタクト層49と、p型クラッド層48とをエッチングして、4μmのストライプ幅を有するリッジ形状とし、リッジ表面の全面にNi/Auよりなるp電極51を形成する。次に、図9に示すようにp電極51を除くp側クラッド層48、コンタクト層49の表面にSiO_(2)よりなる絶縁膜50を形成し、この絶縁膜50を介してp電極51と電気的に接続したpパッド電極52を形成する。

【0069】p側電極形成後、第2の窒化物半導体層4の素子構造が形成されていない表面全面に、Ti/Alよりなるn電極53を0.5μmの膜厚で形成し、その上にヒートシンクとのメタライゼーション用にAu/Snよりなる薄膜を形成する。

【0070】その後、n電極側53からスクライブし、第2の窒化物半導体層4のM面(11-00、図5の六角柱の側面に相当する面)で第2の窒化物半導体層4を劈開し、共振面を作製する。共振面の両方あるいはどちらか一方にSiO_(2)とTiO_(2)よりなる誘電体多層膜を形成し、最後にp電極に平行な方向で、バーを切断してレーザチップとした。次にチップをフェースアップ(基板とヒートシンクとが対向した状態)でヒートシンクに設置し、pパッド電極52をワイヤーボンディングして、室温でレーザ発振を試みたところ、室温において、閾値電流密度2.0kA/cm^(2)、閾値電圧4.0Vで、発振波長405nmの連続発振が確認され、1000時間以上の寿命を示した。」

ウ「甲7に記載された図9は次のとおりである。
甲7に記載された窒化物半導体層を基板とするレーザ素子を示している。
図9




(7)甲8

甲8には、口頭審理時に請求人が行った技術説明の内容が記載されている。


(8)甲9

甲9の第98頁?第103頁には、GaAlAs系半導体レーザダイオードにおいて各種ストライプ構造が提案されていること、および、前記各種ストライプ構造として、プレーナストライプ、メサストライプなどが存在すること、が記載されている。


2 甲2に記載された発明に基づく「無効理由2」について

(1) 本件訂正発明1について

ア 甲2に記載された発明

a 上記「1.(1)甲2」の記載を総合すると、甲2には次の発明(以下「甲第2号証発明」という。)が記載されているものと認められる。

b 「n型導電性を示す窒化物半導体基板の一方の面上に、凸型ストライプ状導波路領域と、該凸型ストライプ状導波路領域から連続する略平滑面とを有し、n型クラック防止層、n型クラッド層、n側光ガイド層、活性層、p型キャップ層、p側光ガイド層、p型クラッド層、p型コンタクト層を積層したものを窒化物半導体基板までエッチングして前記凸型ストライプ状導波路領域が形成され、前記窒化物半導体基板の他方の面上にn型電極が形成されるとともに、前記p型コンタクト層上にp型電極およびパッド電極が形成されてなる窒化物半導体レーザーであって、
前記n型電極は、窒化物半導体基板上に格子状のフォトレジストを用いて形成され、
前記p型電極およびパッド電極は、前記凸型ストライプ状導波路領域と前記略平滑面とを含む所定領域上に形成され、
前記所定領域が、前記凸型ストライプ状導波路領域を被覆するようにストライプ長の全面に渡って形成された領域と、略平滑面上の領域のうち、劈開端面近傍および側面の近傍を除く領域から構成されている窒化物半導体レーザー。」


イ 本件訂正発明1と甲第2号証発明との対比

a 甲第2号証発明における「n型導電性を示す窒化物半導体基板」、「n型クラック防止層、n型クラッド層、n側光ガイド層」、「活性層」、「p型キャップ層、p側光ガイド層、p型クラッド層、p型コンタクト層」及び「窒化物半導体レーザー」は、本件訂正発明1の「導電性を有する透明基板」、「第1導電型の第1の窒化物系半導体層」、「能動素子領域」、「第2導電型の第2の窒化物系半導体層」及び「窒化物系半導体レーザ素子」に相当する。

b 甲第2号証発明における「n型電極」及び「p型電極およびパッド電極」は、本件訂正発明1の「第1のオーミック電極」及び「第2のオーミック電極」に相当する。

c 甲第2号証発明における「p型電極およびパッド電極」(第2のオーミック電極)が形成される「所定領域」が「凸型ストライプ状導波路領域を被覆するようにストライプ長の全面に渡って形成された領域」であり、「略平滑面上の領域のうち、劈開端面近傍および側面の近傍を除く領域」であることは、本件訂正発明1における「所定領域」が「ストライプ領域の両端部近傍上および前記ストライプ領域を含む所定領域」であり、「平面視において、」「共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側に沿ったストライプ状の領域を除く領域」に相当する。

d したがって、両者は、

「 導電性を有する透明基板の一方の面上に第1導電型の第1の窒化物系半導体層、能動素子領域、および第2導電型の第2の窒化物系半導体層が形成され、前記透明基板の他方の面上に第1のオーミック電極が形成されるとともに、前記第2の窒化物系半導体層上に第2のオーミック電極が形成されてなる窒化物系半導体レーザ素子であって、
前記第2のオーミック電極は、ストライプ領域の両端部近傍上および前記ストライプ領域を含む所定領域上に形成され、
前記所定領域が、平面視において、前記共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域である窒化物系半導体レーザ素子。」

で一致し、次の点で一応相違する。

e 相違点1
本件訂正発明1における第1のオーミック電極が「共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成」されているのに対して、甲第2号証発明では第1のオーミック電極が「窒化物半導体基板上に格子状のフォトレジストを用いて形成」されたものであるものの、第1のオーミック電極が、どのような領域に形成されているのかが明らかではない点。

f 相違点2
本件訂正発明1の「ストライプ領域」は「第2導電型の第2の窒化物系半導体層」の「ストライプ状のリッジ部」により構成され、第2のオーミック電極が形成される所定領域は「第2導電型の第2の窒化物系半導体層」に形成された「リッジ部上のストライプ領域の両端部近傍上および前記ストライプ領域を含む所定領域」とし、「平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から前記共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域」を前記所定領域から除く領域とするのに対して、甲第2号証発明では、第1の窒化物系半導体層、能動素子領域及び第2の窒化物系半導体層で「ストライプ領域」を形成しており第2導電型の第2の窒化物系半導体層が「ストライプ状のリッジ部」を有する構成ではないため、第2のオーミック電極は「第2導電型の第2の窒化物系半導体層」の「リッジ部上のストライプ領域の両端部近傍上および前記ストライプ領域を含む所定領域上に形成」する構成を有しておらず、さらに、第2のオーミック電極が形成される所定領域から除かれる「共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域」が、第2の窒化物系半導体層がエッチングにより除去された「略平滑面上」であり平面視において第2の窒化物系半導体層よりも外周側である点。

ウ 相違点1に対する判断

a 請求人は、甲2には、第1のオーミック電極を形成する際に、格子状のフォトレジストを用いていることから、甲第2号証発明は、相違点2に係る構成を有している旨を主張している。(審判請求書の第28?30頁の(b)。)

b 一方、被請求人は、乙3の記載から「格子状」という言葉は、「縦横の方向、あるいはそのどちらかの方向の間をすかしている状態を意味するもの」であるから、上記「格子状」と記載されているだけからは、甲第2号証に第1のオーミック電極を「共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成」することが開示されているとは認められない旨、及び、甲3は本件訂正発明1の格別の効果を奏するための構成を示唆するものではなく甲4,5は透明ではないGaAs基板を用いたものであるから、甲3?5から相違点2に係る構成を想到することはできない旨、を主張している。(平成24年4月25日付け答弁書の第7?8頁の「・甲第2号証について」。)

c 上記bの被請求人の主張のとおり、甲2の記載において「格子状」との記載のみでは、第1のオーミック電極が、どのような形状であるのかは明確に把握することはできない。

d しかし、甲2において第1のオーミック電極を形成する際に、格子状のフォトレジストを用いる理由を検討すると、基板の裏面全面に第1のオーミック電極を形成するのに比べて、格子状に形成することでコストが増加することは明らかであることから、格子状のフォトレジストを用いることには何らかの理由があるものと解され、その理由は、他に合理的な理由が見当たらないことから、甲3に記載された劈開性の向上であると推察される。

e よって、相違点1に係る構成は甲2に記載されているに等しい事項であり、相違点1は、本件訂正発明1と甲第2号証発明の実質的な相違点とはいえない。


エ 相違点2に対する判断

a 請求人が提出した各甲号証を検討しても、甲2に記載された発明において、第2の窒化物系半導体層に「ストライプ状のリッジ部」を設け、第2のオーミック電極が形成される所定領域を「リッジ部上のストライプ領域の両端部近傍上および前記ストライプ領域を含む所定領域」とし、「平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から前記共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域」を前記所定領域から除く領域として、その結果、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成とすることについて、当業者が容易に想到しうることを示す記載及び示唆を見いだすことはできない。

b 相違点2について請求人は、半導体レーザにおいてストライプ状のリッジを設けることは甲9に示されているとおり特別なことではなく、さらに、窒化物半導体レーザ素子において第2の窒化物半導体層にストライプ状のリッジ部を設ける構造は甲2の図5、甲6の図4、甲7の図9に記載されたとおり周知な構造であるから、甲第2号証発明において当該周知な構造を採用することは容易であること、甲2の記載を検討しても、上記周知な構造を採用することに阻害要因はないこと、さらに、甲2と同様の効果を謳っている甲6からも甲第2号証発明に上記周知な構造を採用することは明らかなこと、を主張している。(口頭審理陳述要領書の第17?23頁の(3)(a)、上申書の第9?11頁の(2)(a)。)

c 上記主張について検討する。

甲2の図5、甲6及び甲7には、上記bの主張のとおり窒化物半導体レーザ素子において第2の窒化物半導体層にストライプ状のリッジ部を設ける構造が記載されている。(上記1(1)のソ、1(5)のオ及び1(6)のウ参照。)
しかし、甲第2号証発明は、甲2の図5で示される従来技術が有する課題を解決して、より閾値が低く、歩留まりの高い窒化物半導体レーザを得るものであり、そのような課題を解決していない従来技術の構造を、例え周知な構造であったとしても、課題を解決した甲第2号証発明に採用するには、何らかの積極的な動機付けが必要である。上記主張や提出された各甲号証の記載を検討しても、甲第2号証発明において、上記請求人が主張する周知な構造を採用する動機付けは見出せない。


(2)本件訂正発明2?5の検討

本件訂正発明2?4は本件訂正発明1の特定事項をすべて含むものであり、本件訂正発明5は物の発明である本件訂正発明1が有する構成をすべて備えた物の製造方法に係る発明である。
そして、本件訂正発明1が、甲第2号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第2?7及び9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明2乃至5も、甲第2号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第2?7及び9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえないことは明らかである。


3 甲2の従来技術に記載の発明に基づく「無効理由3」について

(1) 本件訂正発明1の検討

ア 甲2の従来技術に記載された発明

a 上記「1.(1)甲2」の段落【0004】、【0005】、図5の記載を総合すると、甲2には従来技術として次の発明(以下「甲第2号証従来発明」という。)が記載されているものと認められる。

b 「サファイア基板上に部分的に形成されたSiO_(2)膜を介して選択成長させたn型GaNよりなる窒化物半導体基板の一方の面上にn-In_(0.1)Ga_(0.9)N、n-Al_(0.14)Ga_(0.86)N/GaN MD-SLS,n-GaN、In_(0.02)Ga_(0.98)N/In_(0.15)Ga_(0.85)N MQW、および共振器長方向に延びるリッジを形成するp型クラッド層及びp型コンタクト層と、が形成され、前記窒化物半導体基板の一方の面上にn型電極が形成されるとともに、前記p型コンタクト層上にp型電極とp型パッド電極とが形成されてなる窒化物半導体レーザであって、
前記p型電極とp型パッド電極とは、前記リッジ上のストライプ領域の両端部近傍上および前記ストライプ領域を含む所定領域上に形成され、
前記所定領域が、平面視において、前記p型クラッド層及びp型コンタクト層の領域から素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域である窒化物半導体レーザ。」

イ 本件訂正発明1と甲第2号証従来発明に記載の発明との対比

a 甲第2号証従来発明における「n-In_(0.1)Ga_(0.9)N、n-Al_(0.14)Ga_(0.86)N/GaN MD-SLS,n-GaN」、「In_(0.02)Ga_(0.98)N/In_(0.15)Ga_(0.85)N MQW」及び「共振器長方向に延びるリッジを形成するp型クラッド層及びp型コンタクト層」は、本件訂正発明1の、「第1導電型の第1の窒化物系半導体層」、「能動素子領域」及び「共振器長方向に延びるストライプ状のリッジ部を有する第2導電型の第2の窒化物系半導体層」に相当する。

b 甲第2号証従来発明における「n型電極」及び「p型電極およびp型パッド電極」は、本件訂正発明1の「第1のオーミック電極」及び「第2のオーミック電極」に相当する。

c 甲第2号証従来発明における「p型電極およびp型パッド電極」(第2のオーミック電極)が形成される「所定領域」が「p型クラッド層及びp型コンタクト層の領域から素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域」であることは、本件発明1の「所定領域」が「平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域」であることに相当する。


d したがって、両者は、

「導電性を有する透明基板の一方の面上に第1導電型の第1の窒化物系半導体層、能動素子領域、および共振器長方向に延びるストライプ状のリッジ部を有する第2導電型の第2の窒化物系半導体層が形成され、前記第2の窒化物系半導体層上に第2のオーミック電極が形成されてなる窒化物系半導体レーザ素子であって、
前記第2のオーミック電極は、前記リッジ部上のストライプ領域の両端部近傍上および前記ストライプ領域を含む所定領域上に形成され、
前記所定領域が、平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域であることを特徴とする窒化物系半導体レーザ素子。」

で一致し、次の点で相違する。

e 相違点3
本件訂正発明1の第1のオーミック電極が「透明基板の他方の面上」に「共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成」されているのに対して、甲第2号証従来発明では、透明基板の「一方の面上」に形成されている点。

f 相違点4
本件訂正発明1では第2のオーミック電極が形成される所定領域から、「平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から前記共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域」が除かれるのに対して、甲第2号証従来発明では第2のオーミック電極が「平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から前記共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域」にも形成されている点。


ウ 相違点3及び4に対する当審の判断

a 請求人は、相違点3及び4の両相違点について、甲2に記載された構成であり、そのような構成を甲第2号証従来発明に適用することは容易に想到しうるものである旨を主張している(口頭審理陳述要領書の第23?28頁の(3)(b)、上申書の第11?13頁の(2)(b)。)

b しかし、上記相違点3及び4に係る本件発明の構成は上記2(1)アで認定した甲第2号証発明の構成の一部である。甲第2号証発明は、甲第2号証従来発明が有する上記1(1)ウの段落【0009】に記載された課題を解決するために、上記相違点3及び4の構成に加えて基板までエッチングして凸型ストライプ状導波路領域を形成するという構成を採用し、ワイヤボンディング時に局所的な力が加わらないようにするという技術思想を開示するものである。

c そうすると、甲第2号証従来発明において、甲第2号証発明の構成を採用するならば、甲2に記載された上記従来技術が有する課題を解決するために、その全ての構成を採用するのが当然であり、採用した結果として得られるものは甲第2号証発明でしかない。

d そして、甲2に記載された上記の課題及び解決手段を無視して、甲第2号証発明の一部の構成を抽出し、甲第2号証従来発明に採用することは、甲2の記載事項を鑑みると、容易に想到しうるものとすることはできない。例え、相違点3及び4に係る構成が甲2以外から周知の技術であったとしても、同様である。


(2)本件訂正発明2?5について

ア 本件訂正発明2?4は本件訂正発明1の特定事項をすべて含むものであり、本件訂正発明5は物の発明である本件訂正発明1が有する構成をすべて備えた物の製造方法に係る発明である。

イ そして、本件訂正発明1が、甲第2号証の従来技術に記載された発明であるとはいえず、また、甲第2?7及び9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明2乃至5も、甲第2号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第2?7及び9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえないことは明らかである。


4 甲6に記載された発明に基づく「無効理由4」について

(1)本件訂正発明1について

ア 甲6に記載された発明

a 上記「1(5)甲6」の記載を総合すると、甲6には次の発明(以下「甲第6号証発明」という。)が記載されているものと認められる。

b 「導電性のGaN基板1の一方の面上にn型窒化物半導体層2、活性層3、および共振器長方向に延びるリッジストライプ4’を有するp型窒化物半導体層4が形成され、前記GaN基板1の他方の面上に負電極7が形成されるとともに、前記p型窒化物半導体層4上に正電極5とパッド電極6とが形成されてなる窒化物半導体レーザ素子であって、
前記負電極7は、共振器の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成され、
前記正電極5とパッド電極6とは、前記リッジストライプ4’上のストライプ領域の両端部近傍上および前記ストライプ領域を含む所定領域上に形成され、
前記所定領域が、平面視において、前記p型窒化物半導体層4の領域から素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域である窒化物半導体レーザ素子。」


イ 本件訂正発明1と甲第6号証発明との対比

a 甲第6号証発明における「導電性のGaN基板1」は、本件訂正発明1の「導電性を有する透明基板」に相当する。

b 甲第6号証発明における「n型窒化物半導体層2」、「活性層3」及び「共振器長方向に延びるリッジストライプ4’を有するp型窒化物半導体層4」は、本件訂正発明1の「第1の窒化物系半導体層」、「能動素子領域」及び「共振器長方向に延びるストライプ状のリッジ部を有する第2導電型の第2の窒化物系半導体層」に相当する。

c 甲第6号証発明における「負電極7」及び「正電極5とパッド電極6」は、本件訂正発明1の「第1のオーミック電極」及び「第2のオーミック電極」に相当する。

d 請求人は、甲6記載の発明は本件訂正発明1の構成である「第1のオーミック電極は、共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成」する点を有していると主張している(口頭審理陳述要領書、平成24年4月5日付け上申書。)が、甲6を精査しても、「第1のオーミック電極は、共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成」することは記載されていないし、記載されているに等しい事項とも認められない。

e したがって、両者は、

「導電性を有する透明基板の一方の面上に第1導電型の第1の窒化物系半導体層、能動素子領域、および共振器長方向に延びるストライプ状のリッジ部を有する第2導電型の第2の窒化物系半導体層が形成され、前記透明基板の他方の面上に第1のオーミック電極が形成されるとともに、前記第2の窒化物系半導体層上に第2のオーミック電極が形成されてなる窒化物系半導体レーザ素子であって、
前記第2のオーミック電極は、前記リッジ部上のストライプ領域の両端部近傍上および前記ストライプ領域を含む所定領域上に形成され、
前記所定領域が、平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域である
窒化物系半導体レーザ素子。」

で一致し、次の点で相違する。

f 相違点5
本件訂正発明1では第1のオーミック電極が「共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成」されているのに対して、甲第6号証発明では、「共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成」されているのか否か不明である点。

g 相違点6
本件訂正発明1では第2のオーミック電極が形成される所定領域から、「平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から前記共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域」が除かれるのに対して、甲第6号証発明では第2のオーミック電極が「平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から前記共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域」にも形成されている点。


ウ 相違点5に対する判断

a 甲3には、透明基板の裏面にn電極(第1のオーミック電極)を形成した窒化物系半導体レーザ素子において、スクライブライン上及び/または劈開面上にn電極が存在しないようにパターンをつけてn電極を形成して、裏面のn電極パターン間を裏面からスクライブによりバー状サンプルを作製し、端面へ反射ミラー形成後裏面からスクライブによりチップ化を行うことで、スクライブし易くなり、劈開性が向上することが記載されている。(上記1(2)ア参照。)

b 甲6に、甲第6号証発明に係る窒化物系半導体レーザ素子の共振器面を形成する方法について明記はされていない。しかし、甲6に記載された図1及び3に記載された窒化物系半導体レーザ素子が、基板の窒化物半導体を積層した面と反対側をスクライブし劈開することにより共振器面を形成していることから、甲第6号証発明に係る窒化物系半導体レーザ素子においても、共振器面を形成する際に劈開を行っていると解される。

c 甲第6号証発明に係る窒化物系半導体レーザ素子において劈開により共振器面を形成する際に、上記aの甲3に記載された事項に基づいて、スクライブライン上及び/または劈開面上に第1のオーミック電極が存在しないようにパターンをつけて第1のオーミック電極を形成してスクライブ及び劈開を行って、窒化物系半導体レーザ素子を得ることは容易に想到しうるものである。


エ 相違点6に対する判断

a 甲2には、第2のオーミック電極がパッド電極及び第1電極からなる窒化物系半導体レーザ素子において、共振器面を形成する「劈開時にパッド電極が延び積層した窒化物半導体層を被覆することで窒化物半導体レーザーを短絡する」課題が記載されている(上記1(1)オ参照。)。さらに、甲2には、該窒化物系半導体レーザ素子が、第1電極からストライプ状導波路領域に形成された窒化物系半導体に均一に電力を供給しなければならない課題を有することも記載されている(上記1(1)キ参照。)。

b そして、甲2には、上記aの2つの課題を解決するために、「第1電極がストライプ状導波路領域の端面に設けられた劈開面上まで延びていると共にパッド電極のストライプ状導波路領域と平行な方向は第1電極より短く劈開部まで達していない」構成を採用することが記載されている(上記1(1)オ及びキ参照。)。

c 甲第6号証発明に係る窒化物系半導体レーザ素子は、第2のオーミック電極はパッド電極と正電極(第1電極)からなるものであり(上記1(5)ウ及びエ参照。)、上記ウのbで示したとおり劈開により共振器面を形成していると解されるから、甲第6号証発明において甲2に記載された上記aの「共振器面を形成する劈開時にパッド電極が延び積層した窒化物半導体層を被覆することで窒化物半導体レーザを短絡することを防止する課題」を有していることは明らかである。さらに、上記aの「ストライプ状導波路領域に形成された窒化物系半導体に均一に電力を供給しなければならない課題」はストライプ状導波路領域を備えた窒化物系半導体レーザ素子が有する一般的な課題であるから、ストライプ状導波路領域を備えた甲第6号証発明が該課題を有していることは明らかである。

d 甲第6号証発明において、上記cの課題を解決するために甲2に記載された「第1電極がストライプ状導波路領域の端面に設けられた劈開面上まで延びていると共にパッド電極のストライプ状導波路領域と平行な方向は第1電極より短く劈開部まで達していない」構成を採用することは当業者が容易に想到し得るものである。



オ 被請求人の主張

a 被請求人は、甲第6号証発明に、甲2と甲3に記載された構成を組み合わせることに対して、次のb?dの点を主張をしている。(平成24年4月25日付け答弁書の第6?8頁。)

b 本件訂正発明は、第2のオーミック電極のストライプ領域の端部以外で、第1のオーミック電極と第2のオーミック電極の両方が共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域上に形成されることにより、「リッジ部の両端部にまで均一に電流を注入することができるとともに、劈開によって第1のオーミック電極、第2のオーミック電極の両方が共振器端面にかぶさるおそれがなく、さらには、第1のオーミック電極間で露出した基板の所定領域を分割の目印として利用することができたり、透明基板を透過して第1オーミック電極と第2オーミック電極との位置を確認できたりする」効果をはじめて奏するものである。

c 甲2には、基板の共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除いてn型電極(第1のオーミック電極)を形成することは開示されていない。

d 甲3に記載されているのは、ウエハの基板裏面にパターン形状のn電極(第1のオーミック電極)を形成することで劈開性を向上させることのみであって、p電極(第2のオーミック電極)については本件訂正発明1と異なっており、本件訂正発明1の格別の効果を奏するための構成を示唆するものではない。

e 上記b?dの被請求人の主張を検討する。

f 第2のオーミック電極のストライプ領域の端部以外で、第1のオーミック電極と第2のオーミック電極の両方が共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域上に形成される窒化物系半導体レーザ素子は、甲第6号証発明並びに甲2及び甲3に記載された技術から容易に発明し得る(上記ウ及びエ参照。)ところ、該窒化物系半導体レーザ素子が上記b及びdで主張された効果を奏することは当業者が予測できた程度のことである。

g 上記cの主張における「基板の共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除いてn型電極(第1のオーミック電極)を形成すること」は甲3に基づいて容易に想到し得たことである(上記ウ参照)。なお、「基板の共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除いてn型電極(第1のオーミック電極)を形成すること」は、上記2(1)のウにおいて述べたとおり、甲2に記載されているに等しい事項にすぎない。

h 上記f及びgの理由により、被請求人が主張する上記b?dの事項を採用することができない。

カ 本件訂正発明1についてのまとめ

以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲第6号証発明並びに甲2及び甲3に記載された技術、に基づいて当業者が容易に発明しうるものである。


(2) 本件訂正発明2?4について

ア 本件訂正発明2について

a 本件訂正発明2における「前記第1のオーミック電極は、…前記窒化物系半導体素子の両側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成されている」構成は、甲6の図2及び4に記載されている。(上記1(5)オ参照。)本件訂正発明2における「前記第1のオーミック電極は、前記共振器の両端面側の辺に沿ったストライプ状の領域…を除く領域に形成されている」構成は、上記(1)ウで示したとおり当業者が容易に想到しうるものである。

b よって、本件訂正発明2は、本件訂正発明1と同様に、甲第6号証発明並びに甲2及び甲3に記載された技術、に基づいて当業者が容易に発明しうるものである。


イ 本件訂正発明3について

a 本件訂正発明3における「前記基板は窒化ガリウムから構成されること」は、甲6に記載されていることである。(上記1(5)ア及びウ参照。)

b よって、本件訂正発明3は、本件訂正発明1と同様に、甲第6号証発明並びに甲2及び甲3に記載された技術、に基づいて当業者が容易に発明しうるものである。


ウ 本件訂正発明4について

a 本件訂正発明4における「前記第1および前記第2の窒化物系半導体層はガリウム、アルミニウム、インジウム、ホウ素およびタリウムの少なくとも一つを含むこと」は、甲6に記載されていることである。(上記1(5)ウ参照。)

b よって、本件訂正発明4は、本件訂正発明1と同様に、甲第6号証発明並びに甲2及び甲3に記載された技術、に基づいて当業者が容易に発明しうるものである。


(3) 本件訂正発明5について

ア 本件訂正発明5は「前記窒化物系半導体レーザ素子を前記透明基板側を上にして、該透明基板方向から前記ストライプ領域の端部に形成された前記第2のオーミック電極の形状を見ながら、ジャンクションダウンでサブマウントに実装する工程」を有する「窒化物系半導体レーザ装置の製造方法」発明である。

イ 一方、甲6には、窒化物系半導体レーザ素子を実装する工程について、窒化物系半導体レーザ素子をフェースアップ(基板とヒートシンクが対向した状態)でヒートシンク(サブマウント)に設置して電極にワイヤーボンディングすることが記載されている。(上記1(5)エの段落【0035】参照。)さらに、甲6には、甲第6号証発明の目的は、窒化物系半導体レーザ素子の正電極(第2のオーミック電極)側にワイヤーボンディングする際の衝撃によりリッジ部の結晶が壊れることの防止であることが記載されている。(上記1(5)イの段落【0014】参照。)

ウ 上記イの甲第6号証発明の目的における「正電極(第2のオーミック電極)側にワイヤーボンディング」する工程は、窒化物系半導体レーザ素子をフェースアップで実装した際に行われる工程であり、本件訂正発明5におけるジャンクションダウンによる実装では行われないことである。

エ したがって、甲第6号証発明に係る窒化物系半導体レーザ素子は、窒化物系半導体レーザ素子をフェースアップで実装する工程において第2のオーミック電極にワイヤボンディングを行う際に生じる課題を解決することを目的とするものであるから、そのようなフェースアップでの実装を前提とした甲第6号証発明を用いて窒化物系半導体レーザ装置を製造する際に、本件訂正発明5が有するジャンクションダウンでサブマウントに実装する工程を用いる動機付けは見出せない。

オ さらに、本件訂正発明5は窒化物系半導体レーザ素子をジャンクションダウンでサブマウントに実装する際に「透明基板を透過して第1オーミック電極と第2のオーミック電極との位置を確認することができる」効果を有するものであるが、当該効果も各甲号証の記載から当業者が予測しうるものではない。

カ よって、本件訂正発明5は、甲第6号証発明並びに甲2及び甲3に記載された技術、に基づいて当業者が容易に発明しうるものということはできない。

4 無効理由2?4(新規性進歩性)に対する判断のむすび

ア 以上のとおりであるから、本件訂正発明1?4は、甲第6号証に記載された発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術から当業者が容易に発明することができたものである。

イ 本件訂正発明5は、甲第2?7,9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。



第7 無効理由5(特許請求の範囲の記載不備)に対する判断

(1)請求人の主張

無効理由5についての請求人の主張を整理すると、次のとおりである。

ア 本件訂正発明1及び5には、第2のオーミック電極を形成する所定領域から除く領域について、「平面視において、前記第2の窒化物半導体層の領域から共振器の端面側の辺に沿った領域」と記載されている。当該記載は第2のオーミック電極を形成する所定領域から除く領域を第2の窒化物半導体層の外周を基準として規定しているが、本件明細書及び図面には、素子の劈開面及び側面を基準にして第2のオーミック電極を形成することしか記載されていない。したがって、本件訂正発明は、サポート要件違反である。(口頭審理陳述要領書の第35頁第7行?最終行。)

イ 本件訂正発明1及び5には第2のオーミック電極を形成する領域について「両端部近傍」及び「所定領域」と記載されているが、訂正により「所定形状」が「所定領域」に変更された結果、当該記載において、第2のオーミック電極が「両端部近傍」及び「所定領域」の「全域」に形成されなければならないのか、それとも、「一部」でもよいのか、が不明確となっている。仮に「一部」でもよいとすれば、そのような発明は本件明細書に記載されていないのでサポート要件違反である。(口頭審理陳述要領書の第36頁第1行?第37頁第4行。)


(2)記載不備に対する判断

ア (1)アの請求人の主張について

a 本件明細書の段落【0021】には、「第2のオーミック電極は、第2の窒化物半導体層の少なくとも一辺に沿った所定領域が露出するように第2の窒化物半導体層上に形成」することが記載されている。

b 当該記載において、第2の窒化物半導体層が露出した領域は、本件訂正発明1及び5における「第2のオーミック電極を形成する所定領域から除く領域」に該当するものであり、上記第2の窒化物半導体層が露出した領域が第2のオーミック電極の外周と第2の窒化物系半導体層の外周との間の領域であることは明らかである。

c そうすると、本件明細書には、「第2のオーミック電極を形成する所定領域から除く領域」を第2の窒化物系半導体層の外周を基準として規定することが記載されていると認められる。

d したがって、上記(1)アの請求人の主張は当を得たものではなく、採用することができない。


イ (1)イの請求人の主張について

a 本件訂正発明1及び5において、第2のオーミック電極が「両端部近傍」及び「所定領域」の「全域」に形成されなければならないのか、それとも、「一部」でもよいのか、は、本件明細書を検討しても、特許請求の範囲において規定しなければ発明が不明確となる事項とは認められない。当該認定は、訂正前の「所定形状」との記載を用いた際にも同様であり、訂正によりサポート要件違反が生じたとも認められない。

b したがって、上記(1)イの請求人の主張は当を得たものではなく、採用することができない。

(3)無効理由5(特許請求の範囲の記載不備)に対する判断のまとめ

以上のとおりであるから、本件特許の訂正後の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定された要件を満たしていないとはいえない。



第8 むすび

以上検討したとおり、訂正請求は認めることができる。

そして、本件訂正発明1?4は、無効理由4により、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるため、本件訂正発明1?4についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

一方、本件訂正発明5についての特許は、請求人の主張する無効理由及び証拠方法によっては、無効とすることができない。


審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、その5分の1を請求人が負担すべきものとし、5分の4を被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
窒化物系半導体レーザ素子および窒化物系半導体レーザ装置の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する透明基板の一方の面上に第1導電型の第1の窒化物系半導体層、能動素子領域、および共振器長方向に延びるストライプ状のリッジ部を有する第2導電型の第2の窒化物系半導体層が形成され、前記透明基板の他方の面上に第1のオーミック電極が形成されるとともに、前記第2の窒化物系半導体層上に第2のオーミック電極が形成されてなる窒化物系半導体レーザ素子であって、
前記第1のオーミック電極は、共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成され、
前記第2のオーミック電極は、前記リッジ部上のストライプ領域の両端部近傍上および前記ストライプ領域を含む所定領域上に形成され、
前記所定領域が、平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から前記共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域であることを特徴とする窒化物系半導体レーザ素子。
【請求項2】
前記第1のオーミック電極は、前記共振器の両端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに前記窒化物系半導体素子の両側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成されていることを特徴とする請求項1記載の窒化物系半導体レーザ素子。
【請求項3】
前記基板は窒化ガリウムから構成されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の窒化物系半導体レーザ素子。
【請求項4】
前記第1および前記第2の窒化物系半導体層はガリウム、アルミニウム、インジウム、ホウ素およびタリウムの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の窒化物系半導体レーザ素子。
【請求項5】
窒化物系半導体レーザ素子をサブマウントにジャンクションダウンで実装する窒化物系半導体レーザ装置の製造方法であって、
導電性を有する透明基板の一方の面上に第1導電型の第1の窒化物系半導体層、能動素子領域、および共振器長方向に延びるストライプ状のリッジ部を有する第2導電型の第2の窒化物系半導体層が形成され、前記透明基板の他方の面上に第1のオーミック電極が形成されるとともに、前記第2の窒化物系半導体層上に第2のオーミック電極が形成され、前記第1のオーミック電極は、共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成され、前記第2のオーミック電極は、前記リッジ部上のストライプ領域の両端部近傍上および前記ストライプ領域を含む所定領域上に形成され、前記所定領域が、平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から前記共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域である窒化物系半導体レーザ素子を作製する工程と、
前記窒化物系半導体レーザ素子を前記透明基板側を上にして、該透明基板方向から前記ストライプ領域の端部に形成された前記第2のオーミック電極の形状を見ながら、ジャンクションダウンでサブマウントに実装する工程とを備えたことを特徴とする窒化物系半導体レーザ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)等の導電性を有する基板上に窒化物系半導体層が形成されてなる窒化物系半導体レーザ素子および窒化物系半導体レーザ装置の製造方法に関する。
【0002】
なお、ここで、窒化物系半導体とは、BN(窒化ホウ素)、GaN(窒化ガリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、InN(窒化インジウム)もしくはTlN(窒化タリウム)またはこれら混晶等のIII -V族窒化物系半導体のことである。
【0003】
【従来の技術】
従来、導電性を有しかつ透明なGaN、SiC等からなる基板上に窒化物系半導層が形成されてなる窒化物系半導体レーザ素子においては、例えば応用物理,第68巻,第7号(1999)のp.797?800に記載されたように、窒化物系半導体層上に所定の形状にパターニングされた電極が形成されている。一方、基板の裏面に形成される電極にはパターニングがほどこされず、基板の裏面全体に電極が形成されている。
【0004】
図9は、GaN基板上に窒化物系半導体層が形成されてなる従来の窒化物系半導体レーザ素子の一例を示す模式的な透視斜視図である。
【0005】
図9の半導体レーザ素子においては、導電性を有するn-GaNからなる透明基板51上に、n-AlGaNからなるn-クラッド層52、n-GaNからなるn-光ガイド層53、多重量子井戸構造を有するMQW活性層54、p-AlGaNからなるp-キャップ層55、p-GaNからなるp-光ガイド層56およびp-AlGaNからなるp-クラッド層57が順に積層されてなる。このp-クラッド層57にはストライプ状のリッジ部50が形成されている。また、p-クラッド層57の平坦部上にはn-AlGaNからなるn-電流ブロック層58が形成されている。さらに、このn-電流ブロック層58上およびリッジ部50のp-クラッド層57上にp-GaNからなるp-コンタクト層59が形成されている。
【0006】
透明基板51の結晶成長層側と反対側の面(以下、裏面と呼ぶ)上においては、面全体を被覆するようにn電極60が形成されている。
【0007】
一方、p-コンタクト層59上においては、共振器長方向の両端面(以下、共振器端面と呼ぶ)側の辺に沿ったストライプ状の領域および共振器長方向と垂直な方向の両端面(以下、側面と呼ぶ)側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域にp電極61が形成されている。このように、上記の半導体レーザ素子においては、p電極61が所定の形状にパターニングされており、両方の共振器端面側のストライプ状の領域および両方の側面側のストライプ状の領域においてはp-コンタクト層59が露出している。
【0008】
上記の半導体レーザ素子の作製時においては、まず透明基板51上に各層52?59を成長させる。そして、透明基板51上に各層52?59が形成されてなる半導体ウエハにおいて、透明基板51の裏面全体にn電極60を形成し、また、半導体ウエハのp-コンタクト層59上に所定の形状にパターニングされたp電極61を形成する。この場合においては、各p電極61間で格子状にp-コンタクト層59が露出するように半導体ウエハのp-コンタクト層59上に四角形形状にパターニングされた複数のp電極61を形成する。
【0009】
上記のようにしてn電極60およびp電極61を形成した後、p電極61間で露出したp-コンタクト層59の領域をp-コンタクト層59側から共振器長方向と垂直な方向に沿ってスクライブして傷を形成する。そして、この傷に沿って半導体ウエハを劈開し、複数のストライプ状の半導体ウエハに分割する。このようにして劈開により共振器端面を露出させ、共振器を作製する。そして、この共振器端面に保護膜を形成する。
【0010】
さらに、分割したストライプ状の半導体ウエハにおいて、p電極61間で露出したp-コンタクト層59の領域をp-コンタクト層59側から共振器長方向と平行な方向に沿ってスクライブして傷を形成する。そして、このスクライブの傷に沿ってストライプ状の半導体ウエハをさらに劈開して素子分離を行い、図9に示す半導体レーザ素子を形成する。
【0011】
このように、上記の半導体レーザ素子の作製時においては、パターニングされたp電極61およびp電極61間で露出したp-コンタクト層59をスクライブを行う部分の目印として用いている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、半導体レーザ素子の作製時においては、共振器の作製工程および素子分離工程においてp-コンタクト層59側からスクライブを行って傷を形成する。
【0013】
ここで、窒化物系半導体は非常に硬い材料であることから、スクライブを行う際にはp-コンタクト層59側から大きな圧力を加えてスクライブを行う必要がある。また、共振器の作製工程および素子分離工程において劈開を容易に行うためにp-コンタクト層59側から深い傷を形成する必要がある。このため、上記のようにp-コンタクト層59側からスクライブを行って傷を形成すると半導体レーザ素子の一部に欠損または損傷が生じるおそれがある。
【0014】
ところで、通常、p-コンタクト層59の上面からMQW活性層54に達するまでの深さは1μm程度、もしくは1μmに満たない程度である。このため、上記のようにp-コンタクト層59側から大きな圧力を加えてスクライブを行って深い傷を形成すると、p-コンタクト層59側から比較的近い位置に形成されているMQW活性層54に大きな損傷を与えるおそれがある。このようにMQW活性層54が損傷を受けた場合においては、半導体レーザ素子の素子特性が劣化する。
【0015】
本発明の目的は、素子特性を劣化させることなく基板および基板上に形成された窒化物系半導体層を分割することが可能な窒化物系半導体レーザ素子および窒化物系半導体レーザ装置の製造方法を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明に係る窒化物系半導体素子は、導電性を有する透明基板の一方の面上に第1導電型の第1の窒化物系半導体層、能動素子領域、および共振器長方向に延びるストライプ状のリッジ部を有する第2導電型の第2の窒化物系半導体層が形成され、透明基板の他方の面上に第1のオーミック電極が形成されるとともに、第2の窒化物系半導体層上に第2のオーミック電極が形成されてなる窒化物系半導体レーザ素子であって、第1のオーミック電極は、共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成され、第2のオーミック電極は、リッジ部上のストライプ領域の両端部近傍上およびストライプ領域を含む所定領域上に形成され、所定領域が、平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域であることを特徴とするものである。
【0017】
なお、この場合の窒化物系半導体レーザ素子の能動素子領域とは、例えば半導体レーザ素子の活性層や発光層等に相当する。
【0018】
本発明に係る窒化物系半導体レーザ素子においては、基板の他方の面上の共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に第1のオーミック電極が形成されている。このような窒化物系半導体レーザ素子の作製時においては、第1のオーミック電極間で露出したストライプ状の領域において基板を第1および第2の窒化物系半導体層ならびに能動素子領域とともに分割する。このように、上記の窒化物系半導体レーザ素子の作製時においては第1のオーミック電極間で露出した基板の所定領域を分割の目印として利用することができる。
【0019】
上記のように、本発明に係る窒化物系半導体レーザ素子の作製時においては、基板の他方の面側から基板を第1および第2の窒化物系半導体層ならびに能動素子領域とともに分割する。ここで、上記の窒化物系半導体レーザ素子においては、基板の厚さが第1の窒化物系半導体層に比べて厚く、能動素子領域が基板の他方の面側から比較的遠い位置に形成されているため、基板の他方の面側から分割を行う場合においては分割により素子の一部に欠損または損傷が生じても、この能動素子領域は悪影響を受けない。したがって、上記の窒化物系半導体レーザ素子においては良好な素子特性が実現可能となる。
【0020】
第2のオーミック電極は、第2の窒化物系半導体層の上面全体に形成されてもよい。この場合においては、第2のオーミック電極と第2の窒化物系半導体層との接触面積が大きくなるため、第2のオーミック電極と第2の窒化物系半導体層との接触抵抗を低減することができる。したがって、このような窒化物系半導体レーザ素子においては、動作電圧を低減することができ、動作時における発熱量を低減することができる。それにより、素子の長寿命化が図られる。
【0021】
第2のオーミック電極は、第2の窒化物系半導体層の少なくとも一辺に沿った所定領域が露出するように第2の窒化物系半導体層上に形成されてもよい。
【0022】
基板は透明であってもよい。この場合においては、第2の窒化物系半導体層上に形成された第2のオーミック電極を、基板を透過して基板の他面側から観察することが可能である。したがって、このような素子を基板側を上にしてジャンクションダウンで実装する場合においては、第2のオーミック電極の形状を見ながら素子を位置決めすることが可能である。このように、上記の窒化物系半導体レーザ素子を実装して装置を組み立てる場合に、組み立て精度および組み立て歩留まりが向上する。
【0024】
基板は窒化ガリウムから構成されてもよい。第1および第2の窒化物系半導体層はガリウム、アルミニウム、インジウム、ホウ素およびタリウムの少なくとも一つを含んでもよい。
【0025】
本発明に係る窒化物系半導体レーザ装置の製造方法は、窒化物系半導体レーザ素子をサブマウントにジャンクションダウンで実装する窒化物系半導体レーザ装置の製造方法であって、導電性を有する透明基板の一方の面上に第1導電型の第1の窒化物系半導体層、能動素子領域、および共振器長方向に延びるストライプ状のリッジ部を有する第2導電型の第2の窒化物系半導体層が形成され、透明基板の他方の面上に第1のオーミック電極が形成されるとともに、第2の窒化物系半導体層上に第2のオーミック電極が形成され、第1のオーミック電極は、共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域に形成され、第2のオーミック電極は、リッジ部上のストライプ領域の両端部近傍上およびストライプ領域を含む所定領域上に形成され、所定領域が、平面視において、前記第2の窒化物系半導体層の領域から共振器の端面側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域である窒化物系半導体レーザ素子を作製する工程と、窒化物系半導体レーザ素子を透明基板側を上にして、透明基板方向からストライプ領域の端部に形成された第2のオーミック電極の形状を見ながら、ジャンクションダウンでサブマウントに実装する工程とを備えたものである。
【0026】
本発明に用いられる窒化物系半導体レーザ素子の製造方法においては、導電性を有する基板の一方の面上に第1導電型の第1の窒化物系半導体層、能動素子領域および第2導電型の第2の窒化物系半導体層が順に形成され、基板の他方の面上に、所定間隔でほぼ平行に配置される分割領域が少なくとも露出するようにパターニングされた第1のオーミック電極が形成されるとともに、第2の窒化物系半導体層上に第2のオーミック電極が形成される。
【0027】
このように、第1のオーミック電極間で露出した分割領域を目印として基板の他方の面側から基板を第1および第2の窒化物系半導体層ならびに能動素子領域とともに分割することができる。ここで、基板の厚さは第1の窒化物系半導体層に比べて厚く、能動素子領域が基板の他方の面側から比較的遠い位置に形成されているため、基板の裏面側から分割を行う場合においては、分割により素子の一部に欠損または損傷が生じても、この能動素子領域は悪影響を受けない。したがって、上記の窒化物系半導体レーザ素子においては良好な素子特性が実現可能となる。
【0029】
基板が透明であってもよい。この場合においては、第2の窒化物系半導体層上に形成された第2のオーミック電極を、基板を透過して基板の他面側から観察することが可能である。したがって、このような素子を基板側を上にしてジャンクションダウンで実装する場合においては、第2のオーミック電極の形状を見ながら素子を位置決めすることが可能である。このように、上記の窒化物系半導体レーザ素子を実装して装置を組み立てる場合に、組み立て精度および組み立て歩留まりが向上する。
【0030】
基板を分割する工程は、分割領域をスクライブする工程と、スクライブにより形成された傷に沿って基板を第1および第2の窒化物系半導体層ならびに能動素子領域とともに劈開する工程とを含んでもよい。
【0031】
この場合、基板の他方の面にスクライブにより傷をつけて基板の他方の面側から基板を第1および第2の窒化物系半導体層ならびに能動素子領域とともに劈開することができるので、能動素子領域に悪影響を与えることなく、素子の分割を容易に行うことができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下においては、本発明に係る窒化物系半導体レーザ素子について説明する。
【0033】
図1は、本発明の参考例に係る窒化物系半導体レーザ素子の第1の例を示す模式的な透視斜視図である。
【0034】
図1に示すように、半導体レーザ素子500は、n-GaNからなる透明基板100上に、厚さ1μmのn-Ala Ga1-a Nからなるn-クラッド層21、厚さ0.1μmのn-GaNからなるn-光ガイド層22、多重量子井戸(MQW)構造を有するMQW活性層23、厚さ0.02μmのp-Alb Ga1-b Nからなるp-キャップ層24、厚さ0.1μmのp-GaNからなるp-光ガイド層25および厚さ0.5μmのp-Alc Ga1-c Nからなるp-クラッド層26が順に形成されてなる。このp-クラッド層26には共振器長方向に延びるストライプ状のリッジ部29が形成されており、さらに、p-クラッド層26の平坦部上には厚さ0.35μmのn-Ald Ga1-d Nからなるn-電流ブロック層27が形成されている。このn-電流ブロック層27上およびリッジ部29のp-クラッド層26上に厚さ0.1μmのp-GaNからなるp-コンタクト層28が形成されている。
【0035】
なお、本例においては、n型ドーパントとしてSiが用いられており、またp型ドーパントとしてMgが用いられている。
【0036】
上記の半導体レーザ素子500はストライプ構造を有する。この半導体レーザ素子500においては、共振器端面Aがレーザ光の出射面となる。共振器端面Aおよび共振器端面B上には保護膜が形成されている。
【0037】
上記において、n-クラッド層21、p-キャップ層24、p-クラッド層26およびn-電流ブロック層27をそれぞれ構成するAlGaNの組成、すなわちa?dの値は、0≦a<dであり、0≦c<dであり、かつ0≦c<bである。例えばこの場合においては、a=0.07であり、b=0.25であり、c=0.07であり、d=0.12である。
【0038】
また、上記のMQW活性層23は、厚さ80ÅのIn0.13Ga0.87Nからなる3つの量子井戸層と、厚さ160ÅのIn0.05Ga0.95Nからなる4つの量子障壁層とが交互に積層されてなる多重量子井戸(MQW)構造を有する。
【0039】
上記の半導体レーザ素子500においては、透明基板100の結晶成長層側と反対側の面(以下、裏面と呼ぶ)上にn電極1が形成されている。また、p-コンタクト層28上にはp電極2が形成されている。以下、このn電極1およびp電極2の詳細について説明する。
【0040】
図2は、図1の半導体レーザ素子500を上側および下側から観察した場合の模式的な平面図である。ここで、図2(a)は、半導体レーザ素子500をp-コンタクト層28側から観察した場合について示している。また、図2(b)は、半導体レーザ素子500を透明基板100の裏面側から観察した場合について示している。なお、n電極1およびp電極2において、2本の破線で囲まれたストライプ領域29aは、ストライプ状のリッジ部29の下方および上方の領域を示すものである。
【0041】
図2(a)に示すように、半導体レーザ素子500においては、p-コンタクト層28の上面全体にp電極2が形成されている。このように、本例の半導体レーザ素子500においては、p電極2がパターニングされていない。
【0042】
一方、図2(b)に示すように、半導体レーザ素子500の透明基板100の裏面においては、共振器端面A側の辺に沿ったストライプ状の領域および共振器端面B側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域にn電極1が形成されている。
【0043】
このように、本例の半導体レーザ素子500においては、透明基板100の裏面に形成されたn電極1がパターニングされている。この場合、共振器端面A,B側のストライプ状の領域においては透明基板100が露出している。
【0044】
本例の半導体レーザ素子500は、以下の方法により作製される。
半導体レーザ素子500の作製時においては、まず、透明基板100の一方の面上に各層21?28を形成する。このようにして、透明基板100上に各層21?28が形成されてなる半導体ウエハ600(後述する図3参照)を作製する。その後、半導体ウエハ600の透明基板100の裏面に所定の形状にパターニングされたn電極1を形成するとともに、p-コンタクト層28の上面全体にp電極2を形成する。
【0045】
図3は、n電極1が所定の形状に形成された半導体ウエハ600を透明基板100の裏面側から観察した場合の模式的な平面図である。
【0046】
図3に示すように、半導体ウエハ600の透明基板100の裏面側には、複数のストライプ状のn電極1が所定の間隔でほぼ平行に配置されており、各n電極1間のストライプ状の領域においては透明基板100が露出している。
【0047】
なお、n電極1間で露出した透明基板100の領域の中央に示した破線30は、後述する共振器作製工程における半導体ウエハ600の分割線である。この場合においては、n電極1間で露出した透明基板100の領域が分割領域に相当する。
【0048】
本例においては、例えばエッチング法またはリフトオフ法によりn電極1のパターニングを行う。ここで、例えばこの場合のn電極1は、Ti膜、Al膜およびTi膜がこの順で積層されてなるか、Ti膜およびAl膜がこの順で積層されてなるか、Ni膜、Ti膜およびAu膜がこの順で積層されてなるか、Ti膜、Pt膜およびAu膜がこの順で積層されてなる。
【0049】
一方、p電極2の形成工程においては、パターニングを行わずにp-コンタクト層28の上面全体にp電極2を形成する。例えばこの場合のp電極2は、Ni膜からなるか、Ti膜、Pt膜およびAu膜がこの順で積層されてなるか、Pd膜、Pt膜およびAu膜がこの順で積層されてなるか、Ni膜、Au膜、Ti膜およびAu膜がこの順で積層されてなるか、Ni膜およびAu膜がこの順で積層されてなるか、Ni膜、Pt膜およびAu膜がこの順で積層されてなる。
【0050】
なお、上記のn電極1を構成する材料とp電極2を構成する材料との組み合わせは任意である。また、n電極1およびp電極2を形成する順序は任意である。
【0051】
上記のようにしてn電極1およびp電極2を形成した後、ストライプ状のn電極1の間で露出した透明基板100の各領域を透明基板100側から破線30に沿ってスクライブして傷を形成する。そして、この傷に沿って半導体ウエハ600を劈開する。それにより、図3(b)に示すような複数のストライプ状の半導体ウエハ600aに分割し、共振器端面Aおよび共振器端面Bを露出させて共振器を作製する。なお、図3(b)中の破線31は後述する素子分離工程における素子の分離線である。
【0052】
このように、本例においては、パターニングされたn電極1およびそのn電極1間で露出した透明基板100の領域をスクライブを行う部分の目印として用いている。
【0053】
上記のように、本例の共振器作製工程においては、透明基板100の裏面側からスクライブを行って傷を形成する。ここで、この場合においては、透明基板100の裏面からMQW活性層23に達するまでの距離が50?250μm程度であり、MQW活性層23は透明基板100の裏面から比較的遠い位置に形成されている。このため、透明基板100の裏面側から大きな圧力を加えてスクライブを行っても、また、透明基板100の裏面側から深い傷を形成しても、MQW活性層23に大きな欠損または損傷が生じるおそれがない。また、スクライブにより発生した素子の欠損または損傷がMQW活性層23に悪影響を及ぼすおそれがない。
【0054】
上記のようにして共振器を作製した後、図3(c)に示すように、劈開によりストライプ状の半導体ウエハ600aをさらに破線31沿って共振器長方向と平行な方向に分割する。このようにして個々の半導体レーザ素子500に分離する。
【0055】
ここで、上記の素子分離工程においては、n電極1側からスクライブを行って半導体ウエハ600aを劈開してもよく、あるいはp電極2側からスクライブを行って半導体ウエハ600aを劈開してもよい。p電極2側からスクライブを行う場合においては、MQW活性層23の側面およびその近傍の領域に欠損または損傷が生じるおそれがあるが、MQW活性層23の側面およびその近傍の領域に生じた欠損または損傷は素子特性にほとんど影響しない。
【0056】
以上のように、上記の半導体レーザ素子500の製造方法においては、MQW活性層23から比較的離れて位置している透明基板100の裏面側からスクライブを行って傷を形成する。このため、スクライブによりMQW活性層23に欠損または損傷が生じることはなく、また、スクライブにより素子の一部が欠損または損傷してもMQW活性層23に悪影響を及ぼすことはない。したがって、このような方法により作製された半導体レーザ素子500においては、良好な素子特性が得られる。
【0057】
また、半導体レーザ素子500においては、p電極2がp-コンタクト層28の上面全体に形成されている。このため、p電極2とp-コンタクト層28との接触面積が大きい。したがって、半導体レーザ素子500においては、p電極2とp-コンタクト層28との間の接触抵抗が低減され、良好なオーミック接触を得ることができる。それにより、動作電圧を低減することが可能となり、動作時における発熱量を低減することができる。その結果、半導体レーザ素子500においては素子の劣化が防止され、長寿命化が実現可能となる。
【0058】
図4は、本発明に係る半導体レーザ素子の第1の例を示す模式的な平面図である。図4(a)は、本例の半導体レーザ素子501をp-コンタクト層28側から観察した場合の図であり、図4(b)は、本例の半導体レーザ素子501を透明基板100の裏面側から観察した場合の図である。
【0059】
本例の半導体レーザ素子501は、以下の点を除いて、図1の半導体レーザ素子500と同様の構造を有する。
【0060】
図4(a)に示すように、半導体レーザ素子501においては、p-コンタクト層28のストライプ領域29aの両端部近傍上およびストライプ領域29aを含む四角形形状の所定領域上にp電極4が形成されている。なお、この場合の四角形形状の所定領域とは、共振器端面A,B側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域のことである。
【0061】
本例の半導体レーザ素子501においては、このようにストライプ領域29a全体を被覆するようにp電極4が形成されているので、ストライプ領域29a全体に均一に電流を注入することができる。
【0062】
本例の半導体レーザ素子501は、以下の点を除いて、半導体レーザ素子500の作製方法と同様の方法により作製される。
【0063】
半導体レーザ素子501の作製時においては、透明基板100上に各層21?28を成長させた後、半導体レーザ素子500のn電極1の形成時と同様の方法により、n電極3をパターニングする。そして、このn電極3のパターンの位置に合わせてさらにp電極4のパターニングを行う。
【0064】
ここで、透明基板100の裏面側に形成されたn電極3のパターンを透明基板100および各層21?28を透過して見ることができる。したがって、透過して見えるn電極3のパターンを見ながらp電極4のパターニングを行うことにより、n電極3とp電極4との位置合わせを容易に行うことが可能となる。
【0065】
上記のようにしてp電極4のパターニングを行った後、半導体レーザ素子500の場合と同様の方法により、パターニングされたストライプ状のn電極3の間で露出した透明基板100の所定領域にストライプ状のn電極3に沿ってスクライブにより傷を形成する。さらに、この傷に沿って半導体ウエハを分割して共振器端面A,Bを露出させ、共振器を作製する。
【0066】
ここで、本例の半導体レーザ素子501においては、ストライプ領域29aの端部を除いて共振器端面A,B近傍の領域にp電極4が形成されておらず、この領域においてはp-コンタクト層28が露出している。したがって、この場合においては、ストライプ領域29aの端部を除いて、p電極4の間で露出したp-コンタクト層28の部分で劈開することができる。したがって、p電極4を長い距離にわたって分割する必要はない。このため、この場合においては、劈開を容易に行って共振器を作製することが可能である。また、この場合においては、共振器端面A,Bにp電極4がかぶさるおそれがない。
【0067】
上記のようにして共振器を作製した後、ストライプ状の半導体ウエハをさらに共振器長方向と平行な方向に沿って劈開して分割し、個々の半導体レーザ素子501に分離する。
【0068】
なお、素子分離工程においては、透明基板100の裏面側からスクライブを行ってもよく、あるいはp電極4側からスクライブを行ってもよい。p電極4側からスクライブを行う場合においては、MQW活性層23の共振器長方向と垂直な方向の両端面(すなわち素子の両側面)およびその近傍の領域に欠損および損傷が生じるおそれがあるが、素子の側面に生じる欠損および損傷は、素子の共振器端面に生じる欠損および損傷に比べて素子特性への影響が少ない。
【0069】
ここで、この場合においては、共振器端面A,B近傍のストライプ状の領域にp電極4が形成されておらず、この領域においてはp-コンタクト層28が露出している。このため、露出したp-コンタクト層28の部分で劈開することができる。したがって、p電極6を分割する必要がないので、容易に劈開を行って素子分離を行うことが可能である。
【0070】
以上のように、本例の半導体レーザ素子501においては、透明基板100の裏面に形成されるn電極3をパターニングし、このn電極3のパターンを目印として用いて透明基板100の裏面側からn電極3間で露出した透明基板100およびその上方の層をスクライブして傷を形成する。そして、この傷に沿って半導体ウエハを劈開して共振器を作製する。このため、スクライブによる傷の形成時に素子の一部が欠損または損傷しても、傷を形成した透明基板100の裏面側から比較的離れた位置にあるMQW活性層23は悪影響を受けることはなく、MQW活性層23の共振器端面A,Bは良好な端面となる。したがって、半導体レーザ素子501においては、良好な素子特性が得られる。
【0071】
また、上記の半導体レーザ素子501を透明基板100を上に向けてジャンクションダウンで実装する場合においては、透明基板100が透明であるため、p-コンタクト層28側のストライプ領域29aの端部を目印として用いてサブマウント等に精度よく位置決めして半導体レーザ装置を組み立てることが可能である。このため、このような半導体レーザ素子501を用いた半導体レーザ装置においては、MQW活性層23に形成される発光点の位置を高精度に制御することが可能である。したがって、半導体レーザ装置の組み立て精度が向上するとともに、組み立て歩留まりが向上する。
【0072】
なお、GaNからなる透明基板100を備えた半導体レーザ素子501においては、基板自体の放熱性が低いため、通常はジャンクションダウンで組み立てられる。したがって、この場合においては上記の効果が有効である。
【0073】
図5は、本発明の参考例に係る半導体レーザ素子の第2の例を示す模式的な平面図である。図5(a)は、本例の半導体レーザ素子502をp-コンタクト層28側から観察した場合の図であり、図5(b)は、本例の半導体レーザ素子502を透明基板100の裏面側から観察した場合の図である。
【0074】
本例の半導体レーザ素子502は、以下の点を除いて、図1の半導体レーザ素子500と同様の構造を有する。
【0075】
図5(b)に示すように、半導体レーザ素子502においては、透明基板100の裏面上において、共振器端面A,B側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の両側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域にn電極5が形成されている。
【0076】
このような半導体レーザ素子502は、以下の点を除いて、半導体レーザ素子500の作製方法と同様の方法により作製される。
【0077】
半導体レーザ素子502の作製時においては、半導体レーザ素子500のn電極1と同様のパターニング方法によりn電極5をストライプ状にパターニングするとともに、さらにn電極5間に露出したストライプ状の領域と直交する方向にストライプ状に透明基板100が露出するようにn電極5をパターニングする。それにより、半導体ウエハの透明基板100の裏面に、複数の四角形形状のn電極5が形成されるとともに、n電極5間で格子状に透明基板100が露出する。
【0078】
本例の半導体レーザ素子502の作製時においては、共振器の作製工程および素子分離工程におけるスクライブによる傷の形成時に、上記のようにパターニングされたn電極5およびn電極5間で露出した透明基板100を傷の形成位置の目印として用いる。
【0079】
すなわち、上記のようにn電極5のパターニングを行った後、まず半導体レーザ素子500の場合と同様の方法により、パターニングされた個々のn電極5間で格子状に露出した透明基板100の直交する2つの方向のストライプ状の領域のうちの一方のストライプ状の領域に沿ってスクライブを行って傷を形成する。さらに、この傷に沿ってストライプ状に半導体ウエハを分割して共振器端面A,Bを露出させ、共振器を作製する。さらに、隣接するn電極5の側面間で露出した透明基板100の領域に共振器長方向と平行な方向に沿って傷を形成する。そして、この傷に沿って半導体ウエハを分割し、個々の半導体レーザ素子502に分離する。
【0080】
ここで、上記の素子分離工程においては、露出した透明基板100の領域で劈開することができる。したがって、この場合においてはn電極5を分割する必要がなく、容易に劈開を行って素子分離を行うことが可能となる。
【0081】
以上のように、本例の半導体レーザ素子502においては、透明基板100の裏面に形成されるn電極5をパターニングし、このn電極5のパターンを目印として用いて透明基板100の裏面側からn電極6間で露出した透明基板100およびその上方の層をスクライブして傷を形成する。そして、この傷に沿って半導体ウエハを劈開して共振器の作製および素子分離を行う。
【0082】
このような半導体レーザ素子502においては、傷を形成した透明基板100の裏面側から比較的離れた位置にMQW活性層23があるため、スクライブによる傷の形成時に素子の一部が欠損または損傷してもMQW活性層23は悪影響を受けることはなく、MQW活性層23の共振器端面A,Bは良好な端面となる。したがって、このような半導体レーザ素子502においては、良好な素子特性が得られる。
【0083】
また、半導体レーザ素子502においては、p電極6がp-コンタクト層28の上面全体に形成されている。このため、p電極6とp-コンタクト層28との接触面積が大きい。したがって、半導体レーザ素子502においては、p電極6とp-コンタクト層28との間の接触抵抗が低減され、p電極6とp-コンタクト層28との間で良好なオーミック接触を得ることができる。それにより、動作電圧を低減することが可能となり、動作時における発熱量を低減することができる。その結果、半導体レーザ素子502においては素子の劣化が防止され、長寿命化が実現可能となる。
【0084】
ところで、前述のように、透明基板100を構成するGaNまたはSiCは非常に硬い材料であるため、スクライブを行う際には透明基板100に大きな圧力を加えて傷を形成する必要がある。このため、このようなスクライブにより、特に素子の側面(共振器長方向と垂直な方向の端面)において欠損が生じやすく、側面は凹凸形状になりやすい。
【0085】
特に、GaN基板およびGaN窒化物系半導体層の主な劈開面である(1-100)面において劈開を行ってこの面を共振器端面とする場合においては、形成された素子の側面が(11-20)面となるため、側面に凹凸形状が形成されやすい。この場合、基板の裏面の全体にn電極が形成されていると、n電極の両側辺も凹凸形状となる。
【0086】
通常、半導体レーザ素子をジャンクションダウンで実装する場合においては、半導体レーザ素子の側面を画像認識技術により認識することにより、半導体レーザ素子を側面を基準としてサブマウント等に位置決めする。しかしながら、このような半導体レーザ素子の側面が凹凸形状を有する場合には、半導体レーザ素子を側面を基準として正確に位置決めすることは困難である。したがって、半導体レーザ素子を用いた半導体レーザ装置の組み立て歩留まりが低くなる。
【0087】
これに対して、上記の半導体レーザ素子502においては、n電極5が透明基板100の両側面側のストライプ状の領域を除いて形成されているので、n電極5の側辺が直線状となる。そのため、半導体レーザ素子502をジャンクションダウンで実装する場合においては、素子の側面ではなくn電極5の側辺を画像認識技術により認識し、半導体レーザ素子502をn電極5の側辺を基準としてサブマウント等に正確に位置決めすることができる。その結果、半導体レーザ素子を用いた半導体レーザ装置の組み立て精度および組み立て歩留りが向上する。
【0088】
図6は、本発明に係る半導体レーザ素子の第2の例を示す模式的な平面図である。図6(a)は、本例の半導体レーザ素子503をp-GaNコンタクト層28側から観察した場合の図であり、図6(b)は、本例の半導体レーザ素子503を透明基板100の裏面側から観察した場合の図である。
【0089】
なお、本例の半導体レーザ素子503は、以下の点を除いて、図5の半導体レーザ素子502と同様の構造を有する。
【0090】
図6(a)に示すように、半導体レーザ素子503においては、p-コンタクト層28のストライプ領域29aの両端部近傍の領域およびストライプ領域29aを含む四角形形状の所定領域上にp電極8が形成されている。なお、この場合の四角形形状の所定領域とは、共振器端面A,B側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の両側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域のことである。
【0091】
本例の半導体レーザ素子503においては、このようにストライプ領域29a全体を被覆するようにp電極8が形成されているので、ストライプ領域29a全体に均一に電流を流すことができる。
【0092】
本例の半導体レーザ素子503は、以下の点を除いて、半導体レーザ素子502の作製方法と同様の方法により作製される。
【0093】
半導体レーザ素子503の作製時においては、図4の半導体レーザ素子501のp電極4と同様の方法によりp電極8を形成し、図5の半導体レーザ素子502のn電極5と同様の方法によりn電極7を形成する。ここで、透明基板100および各層21?28が透明であるため、透明基板100の裏面側に形成されたn電極7のパターンを透明基板100および各層21?28を透過して見ることができる。したがって、透過して見えるn電極7のパターンを見ながらp電極8のパターニングを行うことにより、n電極7とp電極8との位置合わせを容易に行うことが可能となる。
【0094】
上記のようにしてp電極8のパターニングを行った後、半導体レーザ素子502の場合と同様の方法により、パターニングされたn電極7の間で露出した透明基板100の所定の領域にスクライブにより傷を形成し、この傷に沿って半導体ウエハを分割する。
【0095】
ここで、本例の半導体レーザ素子503においては、ストライプ領域29aの端部を除いて共振器端面A,B側のストライプ状の領域にp電極8が形成されておらず、この領域においてはp-コンタクト層28が露出している。このため、ストライプ領域29aの端部を除いて、p電極8の間で露出したp-コンタクト層28の領域で劈開することができる。したがって、p電極8を長い距離にわたって分割する必要がないので、劈開を容易に行って共振器を作製することが可能である。また、この場合においては、共振器端面A,Bにp電極8がかぶさるおそれがない。
【0096】
上記のようにして共振器を作製した後、半導体レーザ素子502の場合と同様、隣接するn電極7の側面間で露出した透明基板100の領域に共振器長方向と平行な方向に沿ってスクライブを行って傷を形成する。そして、この傷に沿って半導体ウエハを分割し、個々の半導体レーザ素子503に分離する。
【0097】
ここで、上記の素子分離工程においては、露出した透明基板100の領域で劈開することができる。したがって、n電極7を分割する必要がないので容易に劈開を行って素子分離を行うことが可能である。
【0098】
以上のように、上記の半導体レーザ素子503においては、透明基板100の裏面に形成されるn電極7をパターニングし、このn電極7のパターンを目印として用いて透明基板100の裏面側からn電極7間で露出した透明基板100およびその上方の層をスクライブして傷を形成する。そして、この傷に沿って半導体ウエハを劈開して共振器の作製および素子分離を行う。ここで、半導体レーザ素子503においては、MQW活性層23が傷を形成した透明基板100の裏面側から比較的離れた位置にあるため、スクライブによる傷の形成時に素子の一部が欠損または損傷してもMQW活性層23が悪影響を受けることはなく、MQW活性層23の共振器端面A,Bは良好な端面となる。したがって、このような半導体レーザ素子503においては、良好な素子特性が得られる。
【0099】
また、上記の半導体レーザ素子503をジャンクションダウンで実装する場合においては、透明基板100が透明であるため、p-コンタクト層28側のストライプ領域29aの端部を目印として用いて半導体レーザ素子503をサブマウント等に精度よく位置決め半導体レーザ装置を組み立てることが可能である。このため、このような半導体レーザ素子503を用いた半導体レーザ装置においては、MQW活性層23に形成される発光点の位置を高精度に制御することが可能である。したがって、半導体レーザ装置の組み立て精度が向上するとともに、組み立て歩留まりが向上する。
【0100】
なお、GaNからなる透明基板100を備えた半導体レーザ素子503は、基板自体の放熱性が低いため、通常はジャンクションダウンで組み立てられる。したがって、この場合においては上記の効果が有効に得られる。
【0101】
さらに、上記の半導体レーザ素子503においては、図5の半導体レーザ素子502と同様に、n電極7の側辺が直線状となる。そのため、このような半導体レーザ素子503をジャンクションダウンで実装する場合においては、素子の側面ではなくn電極7の側辺を画像認識技術により認識し、半導体レーザ素子503をn電極7の側辺を基準としてサブマウント等に正確に位置決めすることができる。その結果、半導体レーザ素子503を用いた半導体レーザ装置の組み立て精度および組み立て歩留りが向上する。
【0102】
図7は、本発明の参考例に係る半導体レーザ素子の第3の例を示す模式的な平面図である。図7(a)は、本例の半導体レーザ素子504をp-GaNコンタクト層28側から観察した場合の図であり、図7(b)は、本例の半導体レーザ素子504を透明基板100の裏面側から観察した場合の図である。
【0103】
本例の半導体レーザ素子504は、図7(b)に示すように透明基板100のストライプ領域29aの両端部近傍の領域上にもn電極9が形成された点を除いて、図5の半導体レーザ素子502と同様の構造を有する。
【0104】
図7(b)に示すように、本例の半導体レーザ素子504においては、透明基板100およびp-コンタクト層28のストライプ領域29a全体を被覆するようにn電極9およびp電極10が形成されている。したがって、このような半導体レーザ素子504においては、ストライプ領域29a全体に均一に電流を注入することができる。
【0105】
本例の半導体レーザ素子504は、n電極9のパターニングの方法が異なる点を除いて、半導体レーザ素子502の作製方法と同様の方法により作製される。
【0106】
上記の半導体レーザ素子504においては、透明基板100の裏面に形成されるn電極9をパターニングし、このn電極9のパターンを目印として用いて透明基板100の裏面側からn電極9間で露出した透明基板100およびその上方の層をスクライブして傷を形成する。そして、この傷に沿って半導体ウエハを劈開して共振器を作製するとともに素子分離を行う。
【0107】
ここで、このような半導体レーザ素子504においては、MQW活性層23が傷を形成した透明基板100側から比較的離れた位置にあるため、スクライブによる傷の形成時に素子の一部が欠損または損傷してもMQW活性層23は悪影響を受けることはなく、MQW活性層23の共振器端面A,Bは良好な端面となる。したがって、このような半導体レーザ素子504においては、良好な素子特性が得られる。
【0108】
また、半導体レーザ素子504においては、p電極10がp-コンタクト層28の上面全体に形成されている。このため、p電極10とp-コンタクト層28との接触面積が大きい。したがって、半導体レーザ素子504においては、p電極10とp-コンタクト層28との間の接触抵抗が低減され、良好なオーミック接触を得ることができる。それにより、動作電圧を低減することが可能となり、動作時における発熱量を低減することができる。その結果、半導体レーザ素子504においては素子の劣化が防止され、長寿命化が実現可能となる。
【0109】
さらに、上記の半導体レーザ素子504においては、図5の半導体レーザ素子502および図6の半導体レーザ素子503と同様に、n電極9の側辺が直線状となる。そのため、このような半導体レーザ素子504をジャンクションダウンで実装する場合においては、素子の側面ではなくn電極9の側辺を画像認識技術により認識し、半導体レーザ素子504をn電極9の側辺を基準としてサブマウント等に正確に位置決めすることができる。その結果、半導体レーザ素子504を用いた半導体レーザ装置の組み立て精度および組み立て歩留りが向上する。
【0110】
図8は、本発明の参考例に係る半導体レーザ素子の第4の例を示す模式的な平面図である。図8(a)は、半導体レーザ素子505をp-GaNコンタクト層28側から観察した場合の図であり、図8(b)は、半導体レーザ素子505を透明基板100の裏面側から観察した場合の図である。
【0111】
本例の半導体レーザ素子505は、以下の点を除いて、図7の半導体レーザ素子504と同様の構造を有する。
【0112】
図8(a)に示すように、半導体レーザ素子505においては、n電極11と同様の形状を有するp電極12が形成されている。すなわち、p-コンタクト層28上のストライプ領域29aの両端部近傍およびストライプ領域29aを含む四角形形状の所定領域上にp電極12が形成されている。なお、この場合の四角形形状の所定領域とは、共振器端面A,B側の辺に沿ったストライプ状の領域ならびに素子の両側面側の辺に沿ったストライプ状の領域を除く領域のことである。
【0113】
このように、本例の半導体レーザ素子505においては、透明基板100およびp-コンタクト層28のストライプ領域29a全体を被覆するようにn電極11およびp電極12が形成されている。したがって、このような半導体レーザ素子505においては、ストライプ領域29a全体に均一に電流を注入することができる。
【0114】
本例の半導体レーザ素子505は、p電極12のパターニングの方法が異なる点を除いて、半導体レーザ素子504の作製方法と同様の方法により作製される。
【0115】
すなわち、半導体レーザ素子505の作製時においては、n電極11のパターニングを行った後、このn電極11のパターンの位置に合わせてさらにp電極12のパターニングを行う。ここで、透明基板100および各層21?28が透明であるため、透明基板100の裏面側に形成されたn電極11のパターンを透明基板100および各層21?28を透過して見ることができる。したがって、透過して見えるn電極11のパターンを見ながらp電極12のパターニングを行うことにより、n電極11とp電極12との位置合わせを容易に行うことが可能となる。
【0116】
本例の半導体レーザ素子505においては、ストライプ領域29aの端部を除いて共振器端面A,B側のストライプ状の領域にp電極12が形成されておらず、この領域においてはp-コンタクト層28が露出している。このため、半導体レーザ素子505における共振器作製工程においては、p電極12の間で露出したp-コンタクト層28の部分で劈開することができる。したがって、この場合においてはp電極12を長い距離にわたって分割する必要がないので、劈開を容易に行って共振器を作製することが可能である。また、この場合においては、共振器端面A,Bにp電極12がかぶさるおそれがない。
【0117】
一方、半導体レーザ素子505の素子分離工程においては、露出した透明基板100およびp-コンタクト層28の部分で劈開することができるので、n電極11およびp電極12を分割する必要はない。このため、容易に劈開を行って素子分離を行うことが可能である。
【0118】
以上のように半導体レーザ素子505においては、透明基板100の裏面に形成されるn電極11をパターニングし、このn電極11のパターンを目印として用いて透明基板100の裏面側からn電極11間で露出した透明基板100およびその上方の層をスクライブして傷を形成する。そして、この傷に沿って半導体ウエハを劈開して共振の作製および素子分離を行う。
【0119】
ここで、半導体レーザ素子505のMQW活性層23は傷を形成した透明基板100の裏面側から比較的離れた位置にあるため、スクライブによる傷の形成時に素子の一部が欠損または損傷してもMQW活性層23が悪影響を受けることはなく、MQW活性層23の共振器端面A,Bは良好な端面となる。したがって、このような半導体レーザ素子505においては、良好な素子特性が得られる。
【0120】
また、上記の半導体レーザ素子505をジャンクションダウンで実装する場合においては、透明基板100および各層21?28が透明であるため、p-コンタクト層28側のストライプ領域29aの端部を目印として用いて半導体レーザ素子505をサブマウント等に精度よく位置決めして半導体レーザ装置を組み立てることが可能である。
【0121】
このため、このような半導体レーザ素子501を用いた半導体レーザ装置においては、MQW活性層23に形成される発光点の位置を高精度に制御することが可能である。したがって、半導体レーザ装置の組み立て精度が向上するとともに、組み立て歩留まりが向上する。
【0122】
なお、GaNからなる透明基板100を備えた半導体レーザ素子505においては、基板自体の放熱性が低いため、通常はジャンクションダウンで組み立てられる。したがって、この場合においては上記の効果が有効に得られる。
【0123】
さらに、上記の半導体レーザ素子505においては、図5の半導体レーザ素子502、図6の半導体レーザ素子503および図7の半導体レーザ素子504と同様に、n電極11の側辺が直線状となる。そのため、このような半導体レーザ素子505をジャンクションダウンで実装する場合においては、素子の側面ではなくn電極11の側辺を画像認識技術により認識し、半導体レーザ素子505をn電極11の側辺を基準としてサブマウント等に正確に位置決めすることができる。その結果、半導体レーザ素子505を用いた半導体レーザ装置の組み立て精度および組み立て歩留りが向上する。
【0124】
上記の半導体レーザ素子500?505において、各層21?28の組成は上記に限定されるものではない。各層21?28は、Ga、Al、In、BおよびTlの少なくとも一つを含む窒化物系半導体から構成されていればよい。
【0125】
なお、上記においては、透明基板100上にn型層、活性層およびp型層が形成されるとともに透明基板100の裏面にパターニングされたn電極が形成されこのn電極のパターンを目印として用いて透明基板側からスクライブを行う場合について説明したが、透明基板上にp型層、活性層およびn型層が順に形成されるとともに透明基板の裏面にパターニングされたp電極が形成されこのp電極のパターンを目印として用いて透明基板側からスクライブを行ってもよい。
【0126】
また、上記においては埋め込み型のリッジストライプ構造を有する半導体レーザ素子について説明したが、本発明をSiO2 等の絶縁膜を電流ブロック層として採用したリッジストライプ構造およびセルフアライン型構造等、他の構造を有する半導体レーザ素子に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の参考例に係る窒化物系半導体レーザ素子の第1の例を示す模式的な透視斜視図である。
【図2】図1の半導体レーザ素子を上側および下側から観察した場合の模式的は平面図である。
【図3】n電極が所定形状に形成された半導体ウエハを透明基板の裏面側から観察した場合の模式的な平面図である。
【図4】本発明に係る半導体レーザ素子の第1の例を示す模式的な平面図である。
【図5】本発明の参考例に係る半導体レーザ素子の第2の例を示す模式的な平面図である。
【図6】本発明に係る半導体レーザ素子の第2の例を示す模式的な平面図である。
【図7】本発明の参考例に係る半導体レーザ素子の第3の例を示す模式的な平面図である。
【図8】本発明の参考例に係る半導体レーザ素子の第4の例を示す模式的な平面図である。
【図9】従来の窒化物系半導体レーザ素子の一例を示す模式的な透視斜視図である。
【符号の説明】
1,3,5,7,9,11 n電極
2,4,6,8,10,12 p電極
21 n-クラッド層
22 n-光ガイド層
23 MQW活性層
24 p-キャップ層
25 p-光ガイド層
26 p-クラッド層
27 n-電流ブロック層
28 p-コンタクト層
29a ストライプ領域
100 透明基板
500,501,502,503,504,505 半導体レーザ素子
600,600a 半導体ウエハ
A,B 共振器端面
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2012-06-06 
結審通知日 2012-06-08 
審決日 2012-06-21 
出願番号 特願2000-202782(P2000-202782)
審決分類 P 1 113・ 854- ZD (H01S)
P 1 113・ 851- ZD (H01S)
P 1 113・ 853- ZD (H01S)
P 1 113・ 113- ZD (H01S)
P 1 113・ 852- ZD (H01S)
P 1 113・ 121- ZD (H01S)
P 1 113・ 537- ZD (H01S)
P 1 113・ 841- ZD (H01S)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 近藤 幸浩  
特許庁審判長 西村 仁志
特許庁審判官 金高 敏康
清水 康司
登録日 2005-02-25 
登録番号 特許第3650000号(P3650000)
発明の名称 窒化物系半導体レーザ素子および窒化物半導体レーザ装置の製造方法  
代理人 尾崎 英男  
代理人 蟹田 昌之  
代理人 豊岡 静男  
代理人 古城 春実  
代理人 鷹見 雅和  
代理人 今田 瞳  
代理人 加治 梓子  
代理人 ▲廣▼瀬 文雄  
代理人 豊岡 静男  
代理人 堀籠 佳典  
代理人 鷹見 雅和  
代理人 ▲廣▼瀬 文雄  
代理人 尾崎 英男  
代理人 牧野 知彦  
代理人 今田 瞳  

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