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審決分類 審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  A61M
審判 全部無効 2項進歩性  A61M
管理番号 1274155
審判番号 無効2011-800096  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-06-09 
確定日 2013-04-19 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4472522号発明「注射針の装着システムと注射針アセンブリの装着方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4472522号に係る出願(特願2004-518458号)は、平成15年6月30日(パリ条約による優先権主張 2002年7月3日(US)米国 2002年8月1日(DK)デンマーク)を国際出願日とする出願であって、その特許権の設定登録は平成22年3月12日にされ、その後、請求人サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングから無効審判が請求されたものである。以下、請求以後の経緯を整理して示す。

平成23年 6月 9日 審判請求書の提出
平成23年 9月27日 答弁書の提出
平成23年 9月27日 訂正請求書の提出
平成23年12月 9日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人より)
平成24年 1月27日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人より)
平成24年 2月 7日 口頭審理の実施


第2 本件訂正の内容
平成23年9月27日になされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許第4472522号の特許請求の範囲を、平成23年9月27日付けの訂正請求書に添付した明細書の特許請求の範囲のとおりに訂正しようとするものであって、訂正の内容は、以下の訂正事項1、2のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1のうち、「適していること、」を「適しており、前記溝(120)は、前記外壁(110)に前記スレッド(200)よりも深く刻まれ、もってバヨネット結合を形成する際に前記複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止すること」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6のうち、「有していること、」を「有しており、前記溝(120)は、前記外壁(110)に前記スレッド(200)よりも深く刻まれ、内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)を有するハブと前記注射針マウント(100)とをバヨネット結合する際に、前記複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止すること、」と訂正する。


第3 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、本件訂正を認めない、特許第4472522号の請求項1?12に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」?「本件特許発明12」という。)についての特許を無効とする、仮に本件訂正が認められたとしても、本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1?12に係る発明(以下、それぞれ、「訂正特許発明1」?「訂正特許発明12」という。)についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、証拠方法として甲第1号証?11号証を提出し、無効とすべき理由を次のように主張する。

本件特許発明1?4、6?12及び訂正特許発明1?4、6?12は、甲第2号証?甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本件特許発明5及び訂正特許発明5は、甲第2号証?甲第11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許発明1?12又は訂正特許発明1?12に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し無効とされるべきである。

[証拠方法]
甲第1号証:特許第4472522号公報(本件特許公報)
甲第2号証:実公昭26-14395号公報
甲第3号証:特開昭57-168673号公報
甲第4号証:特開2001-161817号公報
甲第5号証:特表平8-501242号公報
甲第6号証の1:独国実用新案第20101594号明細書
甲第6号証の2:登録実用新案第3087433号公報
甲第7号証:特開平6-154174号公報
甲第8号証:実願昭61-139039号(実開昭63-46148号)のマイクロフィルム
甲第9号証:実公昭26-1887号公報
甲第10号証:特開平10-258854号公報
甲第11号証:実願平3-105373号(実開平5-54312号)のCD-ROM

2.被請求人の主張
被請求人は、本件訂正を認める、本件無効審判の請求は認められない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、次のように主張する。
本件訂正は、訂正要件を具備し、認められる。
また、訂正特許発明1?12は、甲第2号証?甲第11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第4 訂正の可否についての判断
1.訂正事項1について
(1)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1における「溝(120)」について、「溝(120)は、前記外壁(110)に前記スレッド(200)よりも深く刻まれ、もってバヨネット結合を形成する際に前記複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」と限定しつつ、併せて訂正前の「適していること」を「適しており」と表現を整えるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(2)新規事項の存否及び特許請求の範囲の実質上拡張・変更の有無
願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の段落【0016】には、「本発明の利点の一つは、注射針マウントが標準的なスレッド200をその外壁面に備えることが出来ることである。(図1参照)。溝120は標準的なスレッド200の中に割り込むことが出来る。」と記載されているので、スレッド200とスレッド200の中に割り込む溝120との関係について、願書に添付した図面(以下、「特許図面」という。)を参照すれば、図1及び図2には、スレッド200がねじ山であり、該ねじ山には山の頂と谷底とが形成されていること、溝120は、第一端122から第二端125まで、注射針マウント100の外壁面110を掘り下げるように刻まれていること、さらに、掘り下げられた溝120の底部の深さは、スレッド200の谷底よりも深いことが、明確に図示されている。
そして、このような図示内容に加え、特許明細書に「複数の突起(30)は、バヨネット結合を形成するため複数の溝(120)と相互に作用し」(【請求項1】)、「この溝が円筒軸1000に対して必ずしも平行でない壁を有していても、突起30が円筒軸に対し平行方向に動くことができるならば、この溝は円筒軸に平行であると言って良い。」(段落【0013】)、「入口部135は突起30が溝120に入ることができるように注射針ハブを位置合わせする位置合わせ手段として機能する。」(段落【0014】)等と示される溝120の機能に関する記載をも総合して勘案すれば、「溝(120)は、前記外壁(110)に前記スレッド(200)よりも深く刻まれ」ることに伴い、「バヨネット結合を形成する際に前記複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されること」の防止も期待できることは、当業者であれば普通に認識し、導き出すことができるものである。
よって、訂正事項1は、特許明細書又は特許図面のすべての記載を総合して導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を追加するものとはいえないことから、特許明細書又は特許図面に記載した事項の範囲内のものである。また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)請求人の主張に対して
請求人は、概ね以下の主張をしている。
(ア)「溝(120)は、前記外壁(110)に前記スレッド(200)よりも深く刻まれ」なる事項は特許明細書に記載がない。特許図面は、「模式図」であるから、同事項を図面から読み取るべきではなく、図面から読み取ることもできない。よって、同事項を追加する訂正は、特許明細書又は特許図面に記載した事項の範囲内でしたものではない。
また、同事項は、バヨネット結合の溝が、溝と認識できるように、スレッド(ねじの谷底ではなく山の頂)よりも深く刻まれていることと解されるので、訂正前の請求項1に記載された溝とスレッドとの関係として当然のことを特定しているにすぎず、同事項を追加する訂正は、特許請求の範囲を減縮する訂正ではなく、また、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とする訂正でもない。
(イ)「バヨネット結合を形成する際に前記複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」なる事項は、特許明細書に記載がなく、また、自明な事項でもない。よって、同事項を追加する訂正は、特許明細書又は特許図面に記載した事項の範囲内でしたものではない。
また、同事項は、訂正後の発明の効果に関する事項であって、特許請求の範囲に効果を追加する訂正は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とする訂正ではない。

以下、上記各主張について検討する。
(主張アについて)
特許明細書段落【0013】の「図1及び図2に示すように、注射針マウント100は一般に円筒形であり、外壁面110を有している。外壁面110には複数の溝又はスロット120が設けられている。・・・本図において、溝の第一の領域130は方形の領域を有しているように示されているが、注射針ハブ上の突起30が円筒軸1000に対し平行方向に移動できるならば、この溝の厳密な形状は重要ではない。これ故、この溝が円筒軸1000に対して必ずしも平行でない壁を有していても、突起30が円筒軸に対し平行方向に動くことができるならば、この溝は円筒軸に平行であると言って良い。」、段落【0014】の「溝の第二の領域150は両側に壁を有するスロットである必要はなく、注射針ハブ上の突起が注射針マウントの外端部側に移動することを阻止する片壁が必要なだけである。」等の各記載によれば、特許図面は、単に溝120を外壁面110上に模式的に示すのではなく、溝120を、略平行な壁を両側に有し、方形の形状をした、具体的なスロットとして、図1及び図2に示そうとしていることが理解できる。
特許図面が、設計図面に要求されるような正確性をもって描かれているとは限らないにしても、溝120が少なくとも第1の領域130において両側に壁を有することを前提として、図1及び図2を見れば、各図には、溝120の両側に略平行な壁が描かれており、少なくとも、壁の最深部の深さとスレッド200の谷部の深さとの大小関係については十分に読み取ることができる程度の詳しさで各図が描かれているものといえる。
よって、「溝(120)は、前記外壁(110)に前記スレッド(200)よりも深く刻まれ」を追加する訂正は、特許明細書又は特許図面に記載した事項の範囲内でしたものであり、請求人の主張は採用できない。
また、「スレッド」がねじ山を意味すること、一連のねじ山は交互に「山の頂」と「谷底」を有していること、一のねじ山とは、隣り合う谷底間に形成される一の山全体を意味することは、いずれも機械分野における技術常識であり、訂正特許発明1の「スレッド」が、このような通常の意味でのねじ山を意味することは、特許明細書段落【0011】の「スレッド(ねじ山)」の記載、特許図面の図1及び図2の図示内容からも明らかである。
してみると、「溝(120)は、」「スレッド(200)よりも深く刻まれ」は、“溝(120)は、隣り合う谷底間に形成されるねじ山全体よりも深く刻まれ”、即ち、“溝(120)は、ねじ山の谷底よりも深く刻まれ”と解するのが相当であり、「スレッド」を、ねじ山の山の頂ないしその近傍部分のみに限定して解釈し、このような解釈を前提とする請求人の主張は失当である。

(主張イについて)
特許明細書に「バヨネット結合を形成する際に前記複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」事項について直接の記載はなくても、同事項が、特許明細書又は特許図面のすべての記載を総合して導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を追加するものではないことは、上記「(2)新規事項の存否及び特許請求の範囲の実質上拡張・変更の有無」において検討したとおりである。
また、「バヨネット結合を形成する際に前記複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」なる記載が、訂正特許発明1の効果に関連する記載であったとしても、「バヨネット結合を形成する際に前記複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」を追加する訂正は、訂正前の請求項1の発明特定事項である「溝(120)」を作用面から限定し、併せて「溝(120)」と「突起(30)」との関係をも技術的に限定する訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、請求人の主張は採用できない。

2.訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項6における「溝(120)」について、「溝(120)は、前記外壁(110)に前記スレッド(200)よりも深く刻まれ、内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)を有するハブと前記注射針マウント(100)とをバヨネット結合する際に、前記複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」と限定しつつ、併せて訂正前の「有していること」を「有しており」と表現を整えるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、「内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)を有するハブと前記注射針マウント(100)とをバヨネット結合する」点については、特許明細書の【請求項1】に「注射針に取付けられたハブ(10)を有し、ハブ(10)は円筒形の内壁(20)を有し」、「複数の突起(30)は、バヨネット結合を形成するため複数の溝(120)と相互に作用し」の記載があることから、また、「溝(120)は、前記外壁(110)に前記スレッド(200)よりも深く刻まれ、」「バヨネット結合する際に、前記複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」点は、上記「1.訂正事項1について」において示した理由と同様の理由により、それぞれ特許明細書又は特許図面に記載された事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3.まとめ
以上のとおり、訂正事項1及び訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とし、いずれも、特許明細書又は特許図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第134条の2第5項の規定によって準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


第5 訂正特許発明
上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正により訂正された訂正特許発明1?12は、訂正請求書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
注入装置の、注射針アセンブリ(500)を注射針マウント(100)に装着するための注射針装着システムにあって、
注射針アセンブリ(500)は、
注射針に取付けられたハブ(10)を有し、ハブ(10)は円筒形の内壁(20)を有し、
注射針マウント(100)は、
頂端部を有する円筒形の外壁(110)を有し、
注射針アセンブリ(500)が更に、
ハブ(10)の円筒形の内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)を有し、
注射針マウント(100)が更に、
円筒形の外壁(110)に設けられたスレッド(200)と、円筒形の外壁(110)の頂端部から始まり、円筒形の外壁(110)の円筒軸(1000)に概ね平行する通路を画定する、円筒形の外壁(110)に設けられた複数の溝(120)とを有し、
注射針マウント(100)の少なくとも一つの溝(120)が、第一の領域(130)と、第一の領域(130)に対してある角度を有する第二の領域(150)とを有し、
複数の突起(30)は、バヨネット結合を形成するため複数の溝(120)と相互に作用し、スレッド(200)は、はめ合わせに適合する従来のねじ式注射針アセンブリを注射針マウント(100)にねじ込んで接続することに適しており、
前記溝(120)は、前記外壁(110)に前記スレッド(200)よりも深く刻まれ、もってバヨネット結合を形成する際に前記複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止することを特徴とする注射針装着システム。
【請求項2】
第一の領域(130)と第二の領域(150)間の角度が90°又はそれ未満であることを特徴とする請求項1に記載の注射針装着システム。
【請求項3】
溝(120)の第一の領域(130)が、注射針マウント(100)の入口部分(135)を画定する頂端部において最も幅が広いことを特徴とする請求項1又は2に記載の注射針装着システム。
【請求項4】
突起(30)が円形の面を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の注射針装着システム。
【請求項5】
更に、注射針ハブ(10)が注射針マウント(100)上に確実に装着されたことを感触で及び/又は聴覚で認識できる手段を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の注射針装着システム。
【請求項6】
円筒形の外壁(110)が、頂端部と、円筒形の外壁(110)に標準のねじ式注射針アセンブリを受け入れるため円筒形の外壁(110)に設けられたスレッド(200)とを有し、
複数の溝(120)が、円筒形の外壁(110)の頂端部から始まり、円筒形の外壁(110)の円筒軸(1000)に概ね平行する通路を画定するように、円筒形の外壁(110)に設けられ、
注射針マウント(100)の少なくとも一つの溝(120)が、第一の領域(130)と、第一の領域(130)に対してある角度を有する第二の領域(150)とを有しており、
前記溝(120)は、前記外壁(110)に前記スレッド(200)よりも深く刻まれ、内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)を有するハブと前記注射針マウント(100)とをバヨネット結合する際に、前記複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止すること、を特徴とする注射針マウント(100)。
【請求項7】
第一の領域(130)と第二の領域(150)間の角度が90°又はそれ未満であることを特徴とする請求項6に記載の注射針マウント(100)。
【請求項8】
溝(120)は、入口部分(135)を形成する注射針マウント(100)の頂端部において最も幅が広いことを特徴とする請求項6又は7に記載の注射針マウント(100)。
【請求項9】
注射針マウント(100)は、注射針アセンブリ(500)を装着し、
注射針アセンブリ(500)は、
注射針(510)に取付けられたハブ(10)を有し、ハブ(10)は、円筒形の内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)を有する円筒形の内壁(20)を有していること、を特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の注射針マウント(100)。
【請求項10】
注射針アセンブリ(500)の突起(30)が円形の面を有することを特徴とする請求項9に記載の注射針マウント(100)。
【請求項11】
注射針アセンブリ(500)の突起(30)が円筒軸(1000)に垂直に突き出ていることを特徴とする請求項9又は10に記載の注射針マウント(100)。
【請求項12】
注射針アセンブリ(500)の突起(30)が注射針マウント(100)の頂端部と向かい合ったハブ(10)の近接端の近くに配置されていることを特徴とする請求項9ないし11のいずれかに記載の注射針マウント(100)。」


第6 甲各号証の記載内容
1.甲第2号証
本件特許出願の優先権主張日(以下、「本件優先日」という。)前に頒布された刊行物である甲第2号証(実公昭26-14395号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。なお、公報中の旧字体の漢字は新字体で代用した。
甲2ア:「図面は本実用新案の注射器を示すものであつて第1図は側面図、第2図はその針の断面図、第3図は注射筒頭部の断面図である。」(図面の略解)

甲2イ:「本実用新案は注射器の頭部に対してその針を装着使用するに当り指先に強力を要せずその着脱を楽になし得られ併もその針の支持を確実ならしめる様に図つたものである即ち図面に示す様に注射器の円筒1の先端に小筒部2を連設し該筒部2に筒形の先金3を緊く嵌着し先金3の前方側壁に注射針嵌着拘止用の斜溝4,4を設け該筒形先金内中段部より先に前半部を稍急傾斜の円錐形5に削成した嘴筒6を筒形先金に向心的に形出せしめて成るものである。この注射器には第2図に示す様に針10の座9内に嘴筒6と適合する形の孔8を具へ座9の外側に溝4,4と係合すべき凸子7,7を設けた型の注射針を使用するものである。従来の注射器にあつては針は注射筒の頭部に設けられた緩いテーパーの嘴管に被嵌され専らそのテーパー面の嵌合摩擦によつて針を保持せしめたものである。従つてその着脱何れの場合にも指頭に強く力を入れるを要し而も尚注射器の使用中その針が稀には落脱することのあるものである。然るに本案の注射器は前述の様に構成されたものであるからその針はテーパーの強い嘴筒の先に嵌合され従来のものの様に強く喰込むことなくその着脱には無駄に力を要しない。而てその針座に設けた凸子が先金の斜溝内に嵌合する構造と嘴筒先の急テーパー部に針座が冠着する構造とによつて針は確実に定着保持され使用中の針の脱落等の不都合を絶対に生ぜしめない。即ち本案の構造によれば針は摺合せ摩擦力によらず溝と凸子との係合によつて注射器に装着支持され急テーパー部の嵌合によつて安定される故針の着脱には力を要せず併も極めて確実に嵌着せしめ得るものである。」(実用新案の性質、作用及効果の要領)

甲2ウ:「図面に示す様に注射器円筒1の先端に小筒部2を連設し該筒部2に先金3を強く嵌着固定し先金3の前方の側壁に注射針嵌着拘止用の斜向溝4,4を設け先金3の中程部より先に之と同心的に前半部を稍急傾斜に削成した先端錐形の嘴筒6を形出せしめて成る注射器の構造。」(登録請求の範囲)

甲2エ:甲2イの「この注射器には第2図に示す様に針10の座9内に嘴筒6と適合する形の孔8を具へ座9の外側に溝4,4と係合すべき凸子7,7を設けた型の注射針を使用する」、甲2ウの「先金3の前方の側壁に注射針嵌着拘止用の斜向溝4,4を設け」の各記載及び第2図を参照すれば、注射針は針10と座9とを有し、座9が針10に取り付けられていることが分かる。

甲2オ:甲2イの記載によれば、座9は、「座9内に嘴筒6と適合する形の孔8を具へ座9の外側に溝4,4と係合すべき凸子7,7を設け」ており、嘴筒6は「円錐形5に削成した嘴筒6」であるから、座9は円筒形の内壁を有しているといえる。

甲2カ:甲2イの「筒部2に筒形の先金3を緊く嵌着し先金3の前方側壁に注射針嵌着拘止用の斜溝4,4を設け」の記載及び第3図を参照すれば、先金3の前方側壁は前方端及び筒形の外壁を有していることが分かる。斜溝4について、さらに第1図及び第3図を見ると、先金3の前方側壁は複数の斜溝4を有すること、斜溝4は先金3の側壁を貫通するように設けられていること、斜溝4は、前方側壁の前方端から始まり、筒形の前方側壁の中心軸に概ね平行に延びる部分(以下、「平行部分」という。)と、該平行部分に続いて該平行部分と所定の角度を有する部分(以下、「斜行部分」という。)とを有していることも図示されている。

以上によれば、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明1」という。)が記載されている。
「注射器の、注射針を先金3に装着使用する構造にあって、
注射針は、
針10に取り付けられた座9を有し、座9は円筒形の内壁を有し、
先金3は、
前端部を有する筒形の前方側壁を有し、
注射針が更に、
座9の外側に複数の凸子7が設けられ、
先金3が更に、
筒形の前方側壁の前端部から始まり、筒形の前方側壁の中心軸に概ね平行する平行部分を有する、筒形の側壁を貫通するように設けられた複数の斜溝4を有し、
先金3の少なくとも一つの斜溝4が、平行部分と、平行部分に対して所定角度を有する斜行部分とを有し、
複数の凸子7は、複数の斜溝4と係合し注射針は確実に定着保持される、構造。」

また、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明2」という。)が記載されている。
「先金3の筒形の前方側壁が、前端部を有し、
複数の斜溝4が、先金3の筒形の前方側壁の前端部から始まり、先金3の筒形の前方側壁の中心軸に概ね平行する平行部分を有するように、先金3の筒形の側壁を貫通して設けられ、
先金3の少なくとも一つの斜溝4が、平行部分と、平行部分に対して所定角度を有する斜行部分とを有しており、
座9の外側に設けられた複数の凸子7は、複数の斜溝4と係合する、先金3。」

2.甲第3号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第3号証(特開昭57-168673号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。
甲3ア:「案内スリーブ2(良好に案内できるにもかかわらず、突出部1上への案内スリーブの係合をし易くする内部縦リブを備えていてもよい)の後部領域内には、案内スリーブの周囲をめぐつて配置してある軸向きスロツト6が設けてある。これらのスロツトの幅は、保持出張り4の太さよりも幾分大きい。軸向きスロットは、それらの先端部が横向き拡大部、すなわち凹部13内に没入しているが、これらの凹部は事実上軸向きスロツトの周方向への接続を示すものである。」(第5頁右上欄第12行?左下欄第1行)

甲3イ:「密封キヤツプ5上の突出部1に関し案内スリーブ2をねじるかまたは回転させることができるので、保持出張り4が短角度付きの拡大部、凹部または切出部13内に入つて、案内スリーブを突出部に対し軸方向に固定させる。
このようにして、協力している保持出張り4と拡大部13とは、案内スリーブと突出部との間にねじり作動締付機構を形成する。」(第5頁右下欄第8?15行)

甲3ウ:「案内スリーブ2の後部領域11aは、この実施例においては、その周知の周りに数個の軸向きスロツト6aを備えていて、これらのスロツトは、それらの入口端部に互いに隣接している煙突状拡大部12を有している。
第5図に示す実施例においては、案内スリーブ2の後部領域11bは、これもまたそれの周囲の周りに分布させてある複数の軸向きスロツト6bを備えている。各軸向きスロツト6bの端部の拡大部13bは後方に向つて鋭角に傾斜している。
第6図と第7図は、案内スリーブ2の後部領域11c内に短い軸向きスロツトがあり、次いでこのスロツトに短い角度付き拡大部13cまたは13dが続いている実施例を示している。しかしながら、この軸向きスロツトは、切刃10がゴム・ホース14のベースおよび密封プラグ17の少くとも一部を刺通するさいに、突出部に関し案内スリーブ2を確実に軸方向に導くために充分に長くなければならない。」(第6頁左上欄第19行?右上欄第17行)

3.甲第4号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第4号証(特開2001-161817号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。
甲4ア:「針引込用アッセンブリは、また、基端部62と、末端部63及びそこを貫通する導管部64とを有するインナハブ61を含んでいる。インナハブは、内部分65及び該内部分に連結されている分離可能な外部分67を含んでいる。分離可能な外部分は、アウタハブ53に連結されている。インナハブの末端部63は、末端部56においてアウタハブの通路57より小さく、そこから到達可能であり、好ましくは、そこから末端外方へ突出している。
針状カニューレ71は、末端部73と、基端部74及びそこを貫通する管腔75とを有する。カニューレの基端部は、その管腔がインナハブの導管64と流体で連通状態となるようにインナハブの末端部63に連結されている。カニューレの末端部は、鋭利な、即ち、尖った末端側の先端を含むことが好ましい。」(段落【0017】?【0018】)

甲4イ:「注射針引込み用アッセンブリは、また、シリンジバレルのカラーにアウタハブを連結する手段を含んでいる。この好ましい実施例においては、連結手段は、カラーとアウタハブとの間におけるネジ係合用の構造を含んでいる。この好ましい実施例においては、ネジ係合構造は、アウタハブ53の通路57内に少なくとも1つのネジ58を、及び、円筒状カラーの外面32上に少なくとも1つのネジ34を含んでいる。バレルに取り外し可能に連結されている注射針用アッセンブリを設けることのできる能力は、本発明のこの実施例の重要な特徴である。この特徴は、要求される薬剤のタイプおよび注射の部位に関し適切な大きさの注射針およびシリンジの組み合わせを得るために、注射針用アッセンブリやシリンジを交換するように柔軟性を見込んでいる。さらに、好ましい実施例の構造は、特別な訓練が何ら医療従事者に必要とされないように、標準的な皮下注射針を標準的な皮下注射器に対し取付けおよび取外しに必要とされる同様な動きを使って、バレルに対し注射針用アッセンブリの取付け及び取外しを可能とする。」(段落【0021】)

甲4ウ:「カラーとアウタハブとの間のネジ係合用の構造は、カラーの外面におけるネジ山と、ハブがカラーにねじ込まれるとき、カラーのネジ山に追従するアウタハブの内面におけるネジの従動子とを含む種々様々のネジ様及びバヨネットタイプの構造を含み得る。この構造は、公知の固定用ルアタイプの注射針アッセンブリとシリンジとの結合体に似ており、そのシリンジのカラーは、その内面にネジを有し、その注射針アッセンブリは、それがルア先端及びカラーにねじ込まれるとき、ハブをカラーのネジ山に追従させるためのそのハブの基盤の2つの外側に向いた凸部を有する。また、カラーの内側は、ネジ従動子を有するアウタハブの外側にネジ山が切られている。」(段落【0024】)

以上の記載及び図示内容を総合すれば、甲第4号証には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。
「針状カニューレ71と連結されるインナハブ61を含む注射針引込み用アッセンブリは、アウタハブ53の内面にネジ58含み、シリンジバレルは、円筒状カラー外面32上にネジ34を含み、注射針引込み用アッセンブリは、シリンジバレルに取り外し可能に連結されている、注射針引込み用アッセンブリ及びシリンジバレル」

4.甲第5号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第5号証(特表平8-501242号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。
甲5ア:「1.液体を収容する系統としてのカートリッジアンプル(4)と針ホルダー(3)とを有する針系統のための固定機構において、針ホルダー(3)がスナップロック(1、2)を介してカートリッジアンプル(4)に又はカートリッジアンプル(4)を含むカートリッジアンプル・ホルダーに係着されることを特徴とする固定機構。
2.スナップロック(1,2)が針ホルダー(3)の上のつめ又は止め具及びカートリッジアンプル(4)又はカートリッジアンプル(4)を含むカートリッジアンプル・ホルダーの上の上記と逆に凹設された対応する対向部材からなることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の固定機構。
3.スナップロック(1、2)が針ホルダー(3)にあるつめホルダー(2)及びつめ(1)と、カートリッジアンプル(4)又はカートリッジアンプル(4)を含むカートリッジアンプル・ホルダーのねじ山(5)又はアンダカットからなることを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項に記載の固定機構。」(第1頁第2?14行)

甲5イ:「注射器(以下でしばしば器具と略称する)の針系統のための固定機構は公知である。この公知の注射器はピストンを装備するアンプル又はカートリッジアンプルから夫々選択可能な液量を注射するために使用される。
ゴムの穿刺膜を有するカートリッジアンプルにおいては、針は従来技術によりねじ込んで挿着される。針をカートリッジアンプルにねじ込むことによって針の後端が膜を刺し通し、それによってストッパの前進運動の時に薬物が針を通って押し出されることが可能になる。」(第3頁第5?11行)

甲5ウ:「本発明は、針を回転運動なしで簡単にカートリッジアンプル又は注射器と結合する、請求の範囲第1項の特徴を有するスナップロックにより上記の課題を解決する。
本発明により得られる利点はおおむね次の点に見られる。即ち本発明に基づく固定機構のお蔭で、注射による薬物の衛生上完全な適用が可能である。
スナップロックを有する固定機構は、針ホルダーの上のつめ又は止め具と、カートリッジアンプル又はカートリッジアンプルを含むカートリッジアンプル・ホルダーの上の上記と逆に形成された対応する対向部材とを有する固定構造からなる。」(第3頁第18?26行)

甲5エ:「従来技術によれば、針ホルダーは雌ねじ10又は図示しない雄ねじを具備するスリーブ6と針7を保持した針受座11からなる。この2つの部分は合わせて一体に作られている。雌ねじかカートリッジアンプルの相手ねじの上にねじこまれ、それによって針がゴム膜に刺し通され、針を通って薬物を押し出すことができる。同時にこの針固定法は、摩滅したゴム粒子がしばしば薬物中にあるという欠点を伴う。
図2に示す針ホルダー3はこの問題を回避する。針ホルダー3は針受座8を有するスリーブ6からなる。スリーブは少なくとも2個のつめホルダー2及びこれに形成されたつめ1を具備する。針ホルダー3がカートリッジアンプル4の上に差し込まれ、つめ1がカートリッジアンプル4のねじ山に弾性的に係合することにより、本発明に基づく針ホルダー3はカートリッジアンプル4の雄ねじと共にスナップロックを形成する。」(第4頁第4?15行)

以上の記載及び図示内容を総合すれば、甲第5号証には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。
「雌ねじ10を具備する針ホルダーをカートリッジアンプル4のねじ山5にねじ込み、又は、つめホルダー2に形成されたつめ1を具備する針ホルダー3をカートリッジアンプル4のねじ山5に係合させてスナップロックを形成する、注射器の針系統のための固定機構」

5.甲第6号証の1
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第6号証の1(独国実用新案第20101594号明細書)には図面と共に次の事項が記載されている。なお、明細書中の一部の文字は英字で代用した。また、付記した訳文は、対応する日本語公報である登録実用新案第3087433号公報(甲第6号証の2)の記載に基づく。
甲6ア:「Der bekannte Behalter hat den Nachteil, dass er nur fur einen einzigen Verschluss vorgesehen ist. Ein wahlweises Aufsetzen unterschiedlicher Verschlusse oder die Moglichkeit, entweder einen Verschluss oder ein anderes, den Behalter verschliessendes Element, insbesondere einen Adapter mit einer Pumpe, am Behalter aufzubringen, ist nicht gegeben.
Im Haarkosmetikbereich, insbesondere Friseursalons betreffend, werden Behalter mit kosmetischem Produkt, z. B. Haarshampoo, eingesetzt, aus denen mittels einer manuell betriebenen Pumpe Produktportionen entnommen werden. Das Produkt wird in einem Behalter mit Verschluss angeliefert. Dem Behalter ist eine Pumpe mit Schraubadapter beigefugt.
Nach dem Abschrauben des Verschlusses wird der Adapter auf das Aussengewinde am Hals des Behalters geschraubt, um den Behalter fur eine Produktentnahme mittels Pumpe vorzusehen. Fur das Auf-und Absetzen der Pumpe benotigt man eine relativ lange Zeit, da das Aussengewinde des Behalters vom Innengewinde des Adapters vollstandig durchlaufen werden muss, um die Pumpe am Behalter zu befestigen. 」(第1頁第19?36行)
(この公知の容器は1つの蓋を取付けることしか意図していないという欠点を有している。即ち、選択的に別の蓋を取付けたり、又は好ましくは、蓋若しくは、これとは別の容器を閉鎖するエレメント、特にポンプを備えたアダプターを装着できるような容器は提供されていない。
頭髪用化粧品の分野、特に、美容院に関係する分野においては、例えばヘアーシャンプー等の化粧用製品の入った容器の上には、製品の一部を取出すことができる手動のポンプが装着される。製品は蓋付きの容器に入った状態で提供され、そのような容器にはネジ筋が付けられたアダプターを備えたポンプが装着される。
蓋のネジをゆるめて外した後、アダプターを、容器の首部にある外ネジにねじ込んで、この容器をポンプによって製品を取り出し可能な容器にする。ここでポンプを容器にしっかり固定するためには、容器の外ネジとアダプターの内ネジとを完全に係合させなければならず、ポンプの着脱に比較的長い時間が掛かっていた。)

甲6イ:「Der erfindungsgemasse Behalter hat den Vorteil, dass er zum einen mittels eines herkommlichen Verschlusses unter Nutzung des ersten Gewindes verschlossen werden kann, und dass er zum anderen schnell und einfach unter Nutzung des zweiten Gewindes mit einem Adapter versehen bzw. von einem Adapter befreit werden kann. Das Ende des Bajonettganges dient der Aufnahme eines Nockens des Adapters. Die Bajonettverrastung halt den Adapter sicher und ermoglicht eine sichere Handhabung einer mit dem Adapter verbundenen Einrichtung.」(第2頁第9?15行)
(本考案による容器は、従来の蓋を第1のネジ筋を用いて締めることが出来る一方、第2のネジ筋を用いて素早く、かつ、確実にアダプターを着脱することが出来るという特徴を有している。差込通路の端部には、アダプターの突出部のための収容部が設けてある。差込み係止部は、アダプターを確実に保持し、そして、アダプターに接続された器具の安全な取扱を実現している。)

甲6ウ:「Bei einem Behalter 1 mit an einem Hals 2 des Behalters 1 ausgebildeten Gewinden 3,4 dient ein Gewinde 3 der Aufnahme eines Innengewindes 5 eines Verschlusses 6 (Figur 1, Figur 2). Das zweite Gewinde 4 durchlauft das erste Gewinde 3 senkrecht von oben nach unten und mundet in zwei zum Behalter 1 hin endenden Bajonettgangen 7 und zwei Haltegangen 8. Um den Hals 2 herum, also auf 360 Grad verteilt, ist nach jeweils einem Bajonettgang 7 ein Haltegang 8 vorgesehen. Folglich ist nach jeweils 90 Grad ein Bajonettgang 7 oder ein Haltegang 8 vorgesehen, und die Bajonettgange 7 sowie die Haltegange 7 liegen sich an der Offnung 9 des Behalters 1 gegenuber. Fur alle vier Gange des zweiten Gewindes 4 sind Fasen 10 vorgesehen, um nach einem Abschrauben des Verschlusses 6 vier Rastnocken 11 eines Adapters 12 (Figur 3) in einfacher Weise in das zweite Gewinde 4 einfuhren zu konnen. Nach Einfuhren der Rastnocken 11 in das zweite Gewinde 4 wird der Adapter 12 etwas gedreht, so dass die Rastnocken 11 in die beiden Bajonettgange 7 und die beiden Haltegange 8 gelangen. Wahrend es in den Bajonettgangen 7 zu einer Verrastung der Rastnocken 11 hinter jeweils einer Nase 13 eines Bajonettganges 7 kommt, was eine Sicherung gegen ein Zuruckdrehen des Adapters 12 ausmacht, werden die Rastnocken 11, welche in die Haltegange 12 eingefuhrt werden, dort absolut passgenau gehalten, so dass keine Kippbewegung des Adapters 12 relativ zum Behalter 1 vorkommen kann.Der Adapter 12 hat eine Offnung 14 zum Einsetzen einer (nicht dargestellten) Pumpe in den Adapter 12 (Figur 4)」(第3頁第23行?第4頁第6行)
(容器1の首部2に形成されたネジ筋3、4を備えた容器の場合には、ネジ筋3は蓋6の内ネジ5を収容するために用いられる(図1、図2)。第2のネジ筋4は、上から下へ向かってネジ筋3を垂直に横切っており、蓋6のねじ込み方向に沿って終わる2つの差込通路7及び2つの保持通路8に接続している。又首部2を取り巻く360度の角度範囲にわたって、それぞれの差込通路7の後方に各1つの保持通路8が備えられている。従って、90度毎に、差込通路7又は保持通路8が配置され、そして、差込通路7並びに保持通路8は、容器1の開口部9を挟んでそれぞれ互いに向き合っている。第2のネジ筋4の4本の通路全てには、斜面10が設けられていて、蓋6を緩め回して外した後、アダプター12の4つの係止用突起部11(図3)を簡単に第2のネジ筋4に案内することを可能ならしめている。係止用突起部11を第2のネジ筋4に案内した後、アダプター12を少し回して、係止用突起部11が2つの差込通路と2つの保持通路に到達するようにする。係止用突起部11は、差込通路7内に止まっているとき、それぞれの差込通路7の突出部13の後に来ており、アダプター12のねじ戻しを妨げるよう構成され、保持通路8に案内された係止用突起部11は、そこでしっかりと保持され、従ってアダプター12が容器1に対して傾倒することが防止される。アダプター12は開口部14を有しており、ポンプ(図示せず)をアダプター12内に収容する(図4)。)

以上の記載及び図示内容を総合すれば、甲第6号証の1には、次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されている。
「ヘアーシャンプー等の化粧用製品の入った容器1の首部2にネジ筋3、4を備え、ネジ筋3は蓋6の内ネジ5を収容するために用いられ、第2のネジ筋4は、上から下へ向かってネジ筋3を垂直に横切っており、蓋6のねじ込み方向に沿って終わる2つの差込通路7及び2つの保持通路8に接続しており、ポンプを収容したアダプタ12の4つの係止用突起部11を第2のネジ筋4に案内した後、アダプター12を少し回して、係止用突起部11が2つの差込通路と2つの保持通路に到達し、そこでしっかりと保持される、化粧用製品の入った容器」

6.甲第7号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第7号証(特開平6-154174号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。
甲7ア:「a)配管接続手段を形成してある第1の端部と、
b)i)オスねじを形成する外部表面と、
ii)メス円錐面を形成する内部表面を有する第2の端部よりなることを特徴とする空気式装置と関連する管を受け入れるための接合具。」(【請求項1】)

甲7イ:「患者を特定の形式の監視装置へ接続し搬送のためまたは装置交換のために該装置から脱着しまた腕帯を取り外すことなく異なる種類の装置へ再装着可能なように、血圧測定用腕帯に交換自在な接合具を有するのが望ましいとわかった。これを可能となすためには、腕帯から延出する配管の一端に接合具を設けておく。接合具は空気式装置に付随する配管を受け入れるのに適しておりまたこれの上に形成された配管接続手段を有する第1の端部とオス型ねじを形成する外部表面とメス型円錐を形成する内部表面を有する第2の端部を含む。有利にも、内部表面には監視装置からのオス型ルアー式嵌合部を受け入れるためのメス型ルアー式嵌合部を形成することが出来る。」(段落【0004】)

甲7ウ:「このようになしてあれば、腕帯内で膨らませるための空気袋を装置が含むような非侵襲的血圧測定に用いるための血圧測定用腕帯装置を接合部が形成することになる。配管は空気袋の膨張収縮のため配管の第1の端部で空気袋と連通する。この接合には第2の端部の外部表面上のねじ込み式装着手段と血圧測定装置への選択的な装着のための第2の装着手段を含む。
ねじ込み式装着手段はオスねじが望ましく、またオスねじとの接続においてバヨネット式接合部を受け入れまた装着するような内部の円筒状表面を形成してもよい。これ以外にも、第2の装着手段は配管端部でオス型ルアー接合を受け入れるメス型ルアー接合を形成するかまたは監視装置本体から延在する内部円錐表面でも良い。ルアー式接合はバヨネット式接合の円筒状表面に必要な間隔を設けるため接合部の端部から離してもよい。」(段落【0007】?【0008】)

甲7エ:「装置側端部5は一連のオスねじ7を形成する表面6を有している。オスねじ7は血圧監視装置からの接栓のメスねじを受け入れるのに適した形状である。血圧監視装置は何らかの公知の形式であってよく、接合具のオスねじと同一のピッチおよび深さのメスねじを有するべきものである。接合具のオスねじは装置の送気管とともに、充分に密封される封止を提供して、装置へ接合具を動作的に接続しまたこれによって腕帯に動作的に接続するように選択されるべきものである。
図2を参照すると、接合具の内部構造が良く解る。接合具はこれの末端部で内部円筒状表面8を形成している。この円筒状表面は上述のねじ込み式接栓のバヨネット部分を受け入れるような寸法である。バヨネット部分は接合具の内部に受け入れられるようにしてあるが、装置接続機構のメスねじ部分は接合具の外部表面上にねじ込まれる。つまりねじ装着部と内部円筒状表面8内のバヨネット受けの組み合わせで装置に必要な密封を行うものである。
内部構造ではさらに装置の配管上のルアー嵌合部を受け入れるのに適したメス型ルアー嵌合部9の内部円錐状部分を形成している。これによってメス型ルアー接合部と接合具のねじ込み式オス型接続部を別の方法として用いることが出来るようにしてある。つまり、腕帯に接続する装置がオス型ルアー接合部を有している場合、これは接合具内部に受け入れられてメス型ルアー接合部9に封止される。しかし、装置がメス型ねじ込み式装着機構を有している場合、装着機構のバヨネットは内部円筒状表面8に接して受け入れられ、装着機構のメス型ねじ込み部分が接合具の外部表面上にねじ込むように受け入れられる。
接合部の一端から接合具の他端への連通を提供するために接合具の残り部分で通路10が形成されている。通路と接合具の装置側端部の内部形状の寸法は監視装置の動作に影響しないように接合具を通過する充分な空気が流れるのに適した形状である。つまり通路は膨張周期または収縮周期のいずれかの部分でこれを通過する空気の通過に大幅な負荷を与えないような寸法と形状をしていなければならない。」(段落【0010】?【0013】)

甲7オ:「腕帯11には腕帯から延出し腕帯内の空気袋と連通する配管12が設けてある。接合具1は腕帯から延出する配管の一端で突き合わせ嵌合により受け入れられる。接合具の第2の端部は監視装置に付属しこれと連通する配管から延出するねじ込み式メス型接栓13を受け入れる。この配管は何らかの既知の送気式監視装置に接続し得るような自由端14を有するように図示してある。患者から腕帯11を取り外すことなく、患者監視装置に延在する配管との接続のねじを外すことによって監視装置から接合具1を脱着できる。これで患者を搬送したりまたは単に別の装置へ接続したり出来るようになる。患者を搬送する場合、移動式監視装置または搬送の終端で別の監視装置を用いることが可能である。移動式監視装置または第2の監視装置は図3と同じ形式のねじ込み式接合部を有していなくともよいが、腕帯への装着のためにルアー式接合部を有すれば良い。つまり患者から腕帯を取り外すことなく、腕帯を異なる形式の配管に接続することが可能である。」(段落【0015】)

以上の記載及び図示内容を総合すれば、甲第7号証には、次の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されている。
「血圧監視装置と連通する配管と脱着する接合具1であって、接合具1は、外部表面にオスねじ7を形成し、内部表面にメス型ルアー接続部9を形成し、内部円筒状表面8にバヨネット受けを形成しており、配管がメス型ねじ込み式装着機構を有している場合は、ねじ込みとバヨネット受けとの組み合わせで接続され、配管がオス型ルアー接続部を有している場合は、メス型ルアー接続部9にオス型ルアー接続部を受け入れて接続される、接合具1。」

7.甲第8号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第8号証(実願昭61-139039号(実開昭63-46148号)のマイクロフィルム)には図面と共に次の事項が記載されている。
甲8ア:「口部が薄膜で密封されかつ首部周壁外面に凹溝を有する軟質合成樹脂製の容器本体と、周壁内面下端部に該凹溝に係合する凸部を有する蓋とからなる薬液等の容器において、蓋の天板にこれを貫通する薬液等の流出筒を設け、該流出筒の下端部が鋭角に形成されると共にその上部が薬液等の注入部位に適合した形状になされていることを特徴とする薬液等の容器。」(第1頁第5?12行)

甲8イ:「薬液等の使用前には容器本体(1)と蓋(2)とが一組みのセットとなされており、使用時に初めて両者が組み合わされるようになされているため、前記実施例における凹溝(5)(5)に相当するものがない。また、前記の実施例における凹溝(6)(6)に相当するものとして,縦長の逆L字状の凹溝(6)(6)が設けられている。」(第6頁第19行?第7頁第6行)

甲8ウ:「蓋(2)の凸部(7)(7)を容器本体の首部の凹溝(6)(6)に係合させて蓋(2)を容器本体(1)の方向へ押し下げたのち、時計方向に回転させて凸部(7)(7)を凹溝の終点(6b)(6b)に係合させる。
このように容器本体(1)と蓋(2)との係合手段に種々の形態があり、この考案の目的にかなう限り両者の係合手段は適宜変更可能である。」(第7頁第13?20行)

8.甲第9号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第9号証(実公昭26-1887号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。なお、公報中の旧字体の漢字は新字体で代用した。
甲9ア:「以て尖頭12に尖輪11を嵌着キヤツプ4を締着リング3に突起5,5’締着溝8,9締着感知溝10に依り螺着せるが故に注射液の漏洩することなく又キヤツプ4の逃脱する虞れなし段部はキヤツプ4を締着リングの締溝に螺着に当り突起5,5’が先づ段部7に挿入され回転することに依り締溝8,9に嵌入し螺着に便ならしむるものにして締着感知溝10を締溝8,9に連通せしめたるは螺着の事実を感知すると同時に必要以上の螺締により器筒の損傷を防止し得しめんが為なり」(第1頁左欄最終行?右欄第9行)

9.甲第10号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第10号証(特開平10-258854号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。
甲10ア:「請求項1記載のチューブ容器は、注出口と弁体との嵌合時に変形惹起突起に係合して弾性変形し、該弾性変形突起乗越えによる係合解除により復帰音を発して元の形状に戻る弾性片を形成し、注出口に弁体が嵌合した時にこれを知らせる確認音を出させるようにして両者の嵌合を音響表示させることにより注出口と弁体との嵌合を外部から認識可能とし、開閉キャップの不完全なねじ込みや必要以上のねじ込み防止を図ろうとするものである。」(段落【0004】)

甲10イ:「さらに、装着筒Bは縮径部外面に径方向に突出する板状の弾性片9を突設している。該弾性片9はその基部を支点にして周方向に弾性変形自在で、弾性変形後、元の形状に戻る際にパチッという復帰音を発する。さらに、装着筒Bはその上下方向中間部外面に雄ねじ10を形成している。」(段落【0011】)

甲10ウ:「さらに、開閉キャップCはキャップ周壁上端内面に変形惹起突起13を突設している。変形惹起突起13下端面の径方向側辺は、注出口12が下方変位してその下端面が弁体6の上端面上に達したところで、或いはその前後において弾性片9上端面の径方向側辺の先端部に隣接する。そして、注出口12がさらに下方変位して弁体6外面への嵌合を開始すると、これと共に変形惹起突起13も下方変位してその側面と先端面とが交差する角部13aが弾性片9の側面に係合する。すると弾性片9はその基部を支点にして開閉キャップCの回動方向に弾性変形を始め、ある程度変形すると弾性片9の先端面と側面とが交差する角部9aが変形惹起突起13の先端面上を摺動する。そして、図3に示すように、注出口12が弁体6外面へ完全に嵌合して注出口12の上端面が弁体6の上端面上に達したところで弾性片9は変形惹起突起13を乗り越え復帰音を発して元の形状に戻る。」(段落【0014】)

10.甲第11号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第11号証(実願平3-105373号(実開平5-54312号)のCD-ROM)には図面と共に次の事項が記載されている。
甲11ア:「容器口部に係止される合成樹脂製の中蓋と、該中蓋に螺合される合成樹脂製の上蓋とで構成され、上蓋に注出口を有する蓋体において、上蓋の内側に係合突起又は発音突起を有すると共に、中蓋の内側に発音突起又は係合突起を有し、上蓋を回動させたとき、前記係合突起の先端と発音突起の先端とが接触し、上蓋を回動させて発音突起を弾性変形させると係合突起の先端が発音突起を乗り越え得る構造としたことを特徴とするキャップ。」(【請求項1】)

甲11イ:「本考案は、中蓋であるキャップ本体にツイストキャップとしての上蓋を螺着したキャップであり、ツイストキャップの回転範囲を制限してツイストキャップの注出口から内容液を注ぎ出す様にした合成樹脂製のキャップにおいて、キャップ本体に棒状の発音突起を設け、ツイストキャップに係合突起を設け、容器の開口位置となるツイストキャップの回転停止前に発音突起と係合突起とが接触弾発する構造としている故、ツイストキャップの回転停止直前に発音突起が弾発音を発し、容器を開口したことを確実に知らせることができる。」(段落【0019】)


第7 訂正特許発明についての判断
1.訂正特許発明1について
1-1 対比
甲2発明1における凸子7と斜溝4とがどのような過程を経て互いに「係合し」、「注射針は確実に定着保持される」のかについて、甲第2号証には特段の明示はないが、甲2発明1において、斜溝4は「平行部分と、平行部分に対して所定角度を有する斜行部分とを有」するものであること、凸子7は第1図に示されるように「複数の斜溝4と係合」すること、また、その結果「注射針は確実に定着保持される」ことを総合して勘案すれば、甲2発明1の凸子7は、斜溝4の平行部分に前端部より挿入され、平行部分を通路にして進行し、その後、座9が先金3に対して回転されることにより、凸子7が斜溝4の斜行部分を進行して、第1図の状態に至るものと解することができる。
そして、このような甲2発明1の作用を踏まえつつ第1図及び第3図を見ると、先金3は、前方側壁内に座9を回転可能に受け入れ可能な形状であることから、先金3の「筒形の前方側壁」の形状は、円筒形状であるといえる。
そこで、訂正特許発明1と甲2発明1とを対比すると、甲2発明1の「注射器」は、文言の意味、機能又は構造等からみて訂正特許発明1の「注入装置」に相当し、以下同様に、「注射針」は「注射針アセンブリ(500)」に、「先金3」は「注射針マウント(100)」に、「装着使用する」は「装着するための」に、「針10」は「注射針」に、「座9」は「ハブ(10)」に、「円筒形の内壁」は「円筒形の内壁(20)」に、「前端部」は「頂端部」に、「凸子7」は「突起(30)」に、「中心軸に概ね平行する平行部分を有する」は「円筒軸(1000)に概ね平行する通路を確定する」に、「斜溝4」は「溝(120)」に、「平行部分」は「第一の領域(130)」に、「所定角度」は「ある角度」に、「斜行部分」は「第二の領域(150)」に、「複数の凸子7は、複数の斜溝4と係合し」は「複数の突起(30)は、バヨネット結合を形成するため複数の溝(120)と相互に作用し、」に相当する。

また、甲2発明1の「構造」は、「注射針を先金3に装着使用する構造」であり、また、前端部側から挿入された凸子7が斜溝4と係合して「注射針は確実に定着保持される、構造」であるから、甲2発明1の「装着使用する構造」の「構造」及び「注射針は確実に定着保持される、構造」は、それぞれ訂正特許発明1の「注射針装着システム」に相当する。

本願訂正発明1の「円筒形の外壁(110)」と甲2発明1の「筒形の前方側壁」とは、“円筒形の壁”である点で共通し、また、甲2発明1は、「筒形の前方側壁を有し」ているのであるから、「筒形の前方側壁」の外面に「円筒形の外壁」を有していることも明らかである。

訂正特許発明1の「ハブ(10)の円筒形の内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)を有し、」と甲2発明1の「座9の外側に複数の凸子7が設けられ、」とは、“ハブ(10)から突き出た複数の突起(30)を有し、”である点で共通する。

以上によれば、訂正特許発明1と甲2発明1とは、次の点で一致する。
(一致点)
注入装置の、注射針アセンブリ(500)を注射針マウント(100)に装着するための注射針装着システムにあって、
注射針アセンブリ(500)は、
注射針に取付けられたハブ(10)を有し、ハブ(10)は円筒形の内壁(20)を有し、
注射針マウント(100)は、
頂端部を有する円筒形の外壁(110)を有し、
注射針アセンブリ(500)が更に、
ハブ(10)から突き出た複数の突起(30)を有し、
注射針マウント(100)が更に、
円筒形の壁の円筒軸(1000)に概ね平行する通路を画定する、円筒形の壁に設けられた複数の溝(120)とを有し、
注射針マウント(100)の少なくとも一つの溝(120)が、第一の領域(130)と、第一の領域(130)に対してある角度を有する第二の領域(150)とを有し、
複数の突起(30)は、バヨネット結合を形成するため複数の溝(120)と相互に作用する注射針装着システム。

そして、両者は以下の各点で相違する。
(相違点1)
複数の突起(30)が、訂正特許発明1では、「ハブ(10)の円筒形の内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)」であるのに対し、甲2発明1では、ハブ(10)の外側に突き出た複数の突起(30)である点。

(相違点2)
円筒形の壁に設けられた複数の溝(120)が、本願訂正発明1では、「円筒形の外壁(110)に設けられた複数の溝」であるのに対し、甲2発明1では、円筒形の壁を貫通するように設けられた複数の溝(120)である点。

(相違点3)
訂正特許発明1では、注射針マウント(100)が、「円筒形の外壁(110)に設けられたスレッド(200)」を有し、「スレッド(200)は、はめ合わせに適合する従来のねじ式注射針アセンブリを注射針マウント(100)にねじ込んで接続することに適しており、溝(120)が、外壁(110)にスレッド(200)よりも深く刻まれ、もってバヨネット結合を形成する際に複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」のに対し、甲2発明1では、注射針マウント(100)が、「円筒形の外壁(110)に設けられたスレッド(200)」を有しておらず、また、「スレッド(200)は、はめ合わせに適合する従来のねじ式注射針アセンブリを注射針マウント(100)にねじ込んで接続することに適して」いるものではなく、さらに、甲2発明1の溝(120)が、「外壁(110)にスレッド(200)よりも深く刻まれ、もってバヨネット結合を形成する際に複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」「溝(120)」でもない点。

1-2 判断
請求人は、相違点3に関し、次の(ア)?(オ)の旨主張するので、以下、この枠組みに従い、相違点3について検討する。
(ア)甲第4号証及び甲第5号証に開示されるように、ねじ式結合構造の接続手段は周知の技術である。
(イ)また、流体を給送する装置において、一つの接続部に、異なる種類の接続手段を有する2つの被接続部材を接続可能にするため、被接続部材の接続手段に対応する接続手段を接続部に併設することは、甲第6号証の1、甲7号証に記載にされるように普通に行われていることである。
(ウ)よって、甲第6号証の1、甲7号証の記載事項を考慮して、甲2発明1の注射針マウントに対して、ねじ式結合構造の接続手段を有する注射針を接続できるようにするために、甲第4号証及び甲第5号証に記載の周知のねじ式結合構造の接続手段を組み合わせ、バヨネット式結合構造とねじ式形都合構造とを併設させることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(エ)この組み合わせの際、バヨネット式結合の接続構造において、甲第2号証、甲第3号証、甲第6号証の1又は甲第8号証に記載されるように、接続手段である溝又は突起を、接続する部材のどちら側に設けるかは、必要に応じて適宜選択し得ることである。
(オ)さらに、この組み合わせの際、溝をスレッドより深く刻むことは、甲各号証に記載がなくても、バヨネット式結合構造において当業者が当然に考慮し、採用し得る設計的事項である。

(1)甲第4号証及び甲第5号証について
前記甲4発明及び甲5発明によれば、“注射器の注射針アセンブリは、注射針に取付けられたハブの内壁にスレッドを有し、注射器の注射針マウントは、円筒形の外壁にスレッドを有し、注射針アセンブリを注射針マウントにねじ込んで装着すること”が注射器の技術分野において、本件優先日前より周知の技術(以下、「甲4・5周知技術」という。)であったといえる。

(2)甲第6号証及び甲第7号証について
甲第6号証には、前記甲6発明が記載され、その発明の目的は、「この公知の容器は1つの蓋を取付けることしか意図していないという欠点を有している。即ち、選択的に別の蓋を取付けたり、又は好ましくは、蓋若しくは、これとは別の容器を閉鎖するエレメント、特にポンプを備えたアダプターを装着できるような容器は提供されていない。・・・ヘアーシャンプー等の化粧用製品の入った容器の上には、製品の一部を取出すことができる手動のポンプが装着される。製品は蓋付きの容器に入った状態で提供され、そのような容器にはネジ筋が付けられたアダプターを備えたポンプが装着される。・・・ポンプの着脱に比較的長い時間が掛かっていた。」(摘記事項甲6ア)、「本考案による容器は、従来の蓋を第1のネジ筋を用いて締めることが出来る一方、第2のネジ筋を用いて素早く、かつ、確実にアダプターを着脱することが出来る」(摘記事項甲6イ)の記載によれば、ヘアーシャンプー等の化粧用製品の入った容器に蓋とは別のエレメントとしてポンプを備えたアダプターを装着できるようにすると共に、アダプターの着脱を素早く、かつ、確実に行うというものである。
そして、このような蓋やポンプを備えたアダプターを装着するために、甲6発明は、容器1の首部2にネジ筋3を横切るようにネジ筋4を備えるものであるが、首部2の表面に、ネジ筋3の底部とネジ筋4の底部とがどのような深さで刻まれているのかについては、明らかでない。

また、甲第7号証には、前記甲7発明が記載され、その発明の目的は、「この配管は何らかの既知の送気式監視装置に接続し得るような自由端14を有するように図示してある。患者から腕帯11を取り外すことなく、患者監視装置に延在する配管との接続のねじを外すことによって監視装置から接合具1を脱着できる。これで患者を搬送したりまたは単に別の装置へ接続したり出来るようになる。患者を搬送する場合、移動式監視装置または搬送の終端で別の監視装置を用いることが可能である。移動式監視装置または第2の監視装置は図3と同じ形式のねじ込み式接合部を有していなくともよいが、腕帯への装着のためにルアー式接合部を有すれば良い。つまり患者から腕帯を取り外すことなく、腕帯を異なる形式の配管に接続することが可能である。」(摘記事項甲7オ)の記載を参照すれば、腕帯から延出する配管に接続された接合具に対し、患者から腕帯を取り外すことなく、異なる血圧監視装置の異なる形式の配管を接続可能とすることである。
そして、甲7発明は、このような異なる血圧監視装置の異なる形式の配管を接続するための接合具1について、その外部表面にオスねじ7を形成し、内部円筒状表面8にバヨネット受けを形成してはいるものの、外部表面にオスねじ7とバヨネット受けとが共に形成されるものではない。

(3)甲2発明1と甲4・5周知技術の組み合わせについて
甲2発明1は、「従来の注射器にあつては針は注射筒の頭部に設けられた緩いテーパーの嘴管に被嵌され専らそのテーパー面の嵌合摩擦によつて針を保持せしめたものである。従つてその着脱何れの場合にも指頭に強く力を入れるを要し而も尚注射器の使用中その針が稀には落脱することのあるものである。」(摘記事項甲2イ)という技術課題を解決するために、甲2発明1の構造を採用し、「本案の構造によれば針は摺合せ摩擦力によらず溝と凸子との係合によつて注射器に装着支持され急テーパー部の嵌合によつて安定される故針の着脱には力を要せず併も極めて確実に嵌着せしめ得る」(摘記事項甲2イ)というものであるが、甲第2号証には、外側に凸子7を設けた座9を備える注射針に加え、注射器の先金3の前方側壁の外面に螺着可能な別の注射針を用意し、これらの各注射針を注射器に対し選択的に装着可能とするという技術課題については、何らの記載も示唆もない。
そして、このような技術課題が、本件優先日前より周知の技術課題であったともいえない。
また、甲第4号証には、甲4発明に関し、アウタハブ53の内面にネジ58を含む注射針引込みアッセンブリに加え、シリンジバレルの円筒状カラー32とバヨネット結合可能な他の注射針引込みアッセンブリをも用意し、シリンジバレルに対し選択的に装着可能とするという技術課題及びその解決手段については記載がなく、同様に、甲第5号証にも、甲5発明に関し、雌ねじ10又はつめ1を具備する針ホルダーに加え、カートリッジアンプルの首部とバヨネット結合可能な他の針ホルダーをも用意し、カートリッジアンプルに対し選択的に装着可能とするという技術課題及びその解決手段についての記載がない。
してみると、甲第4号証及び甲第5号証に、上記甲4・5周知技術が開示されていたとしても、甲2発明1に該周知技術を組み合わせることの必然性も動機付けもないのであるから、甲2発明1における先金3の前方側壁の外面にスレッドを設けることを当業者が容易に想到できたとはいえない。

請求人は、口頭審理陳述要領書において、甲2発明1、甲4発明、甲5発明及び甲6発明は、いずれも容器内の流体を給送するための接続構造という技術である点で技術分野が一致するものであって、甲6発明を考慮すれば、甲2発明1に甲4・5周知技術を適用することが容易である旨主張する。
しかしながら、上記(2)に示したとおり、甲6発明は、ヘアーシャンプー等の化粧用製品の入った容器に関するものであって、容器に接続される具体的な対象は、蓋又はポンプのアダプタ-である。甲6発明のネジ筋3は、容器内流体の給送を遮断するための蓋が接続されるネジ筋であるから、そもそも「容器内の流体を給送するための接続構造」ではないが、仮に、甲2発明1と甲6発明の技術分野が、「容器首部の接続構造」という上位概念化された分野で共通していたとしても、甲2発明1の具体的な技術分野である注射器と甲6発明の具体的な技術分野であるヘアーシャンプー等の化粧用製品の入った容器とには関連性がなく、かつ、甲2発明1と甲6発明では、容器に接続する具体的な対象も全く異なるのであるから、甲6発明に接した注射器分野の当業者が、甲2発明1において、外側に凸子7を設けた座9を備える注射針に加え、注射器の先金3の前方側壁の外面に螺着可能な別の注射針を用意し、これらの注射針を注射器に対し選択的に装着可能とするという技術課題を想起すべき理由はない。
なお、付言すれば、甲7発明は、血圧監視装置に関するものであって、「容器内の流体を給送するための接続構造」ではなく、接合具1に接続されるのは、血圧監視装置と連通する配管であるから、甲7発明も、甲2発明1とは、具体的な技術分野及び接続構造に接続する具体的な対象が全く異なるものである。
よって、甲6発明又は甲7発明の存在を考慮したとしても、注射器の技術分野の当業者にとって、甲2発明1に甲4・5周知技術を組み合わせることの必然性や動機付けは依然として生じ得ないのであるから、請求人の主張は採用できない。

(4)溝をスレッドよりも深く刻む点について
相違点3に関し訂正特許発明1は、注射針マウント(100)が、「円筒形の外壁(110)に設けられたスレッド(200)」を有し、「スレッド(200)は、はめ合わせに適合する従来のねじ式注射針アセンブリを注射針マウント(100)にねじ込んで接続することに適しており、」なる事項のみならず、さらに、「溝(120)が、外壁(110)にスレッド(200)よりも深く刻まれ、もってバヨネット結合を形成する際に複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」という事項を備えるものである。
仮に、請求人が主張するように、甲第2号証、甲第3号証、甲第6号証の1又は甲第8号証の記載事項に基づいて、バヨネット結合の溝又は突起をバヨネット結合される二部材の何れかに適宜に選択配置すること、即ち、甲2発明1に甲4・5周知技術を組み合わせた上で、「溝(120)が、外壁(110)に」「刻まれ、もってバヨネット結合を形成する」ことが、適宜になし得たとしても、「溝(120)が、外壁(110)にスレッド(200)よりも深く刻まれ、もってバヨネット結合を形成する際に複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」点については、甲第2号証にも、甲4?7号証のいずれにも記載がない。
そして、訂正特許発明1は、「溝(120)が、外壁(110)にスレッド(200)よりも深く刻まれ」ること、即ち、溝(120)が、外壁(110)にスレッド(200)のねじ山の谷底よりも深く刻まれることにより、「バヨネット結合を形成する際に複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」という顕著な作用効果を奏するものである。
よって、「溝(120)が、外壁(110)にスレッド(200)よりも深く刻まれ」ることが、単なる設計的事項であるとはいえない。

請求人は、口頭審理陳述要領書第33?35頁において、「(オ)また、接続構造として、バヨネット係合構造は、甲第2、3、6、7及び8号証に示したように、溝とその溝に係合する案内される突起とからなり、その突起と溝は、接続の確実性、容易性から突起が確実に溝に案内されて移動するような係合関係に形成されるものであることは、バヨネット結合による接続構造において技術常識である。」、「(ク)したがって、バヨネット結合構造をネジ構造と併設して設ける際に、・・・ネジ構造におけるねじ山部とネジ溝部と突起の衝突又は係合を考慮して、第2のネジ筋と係止用突起部の関係を、接続を迅速、確実、容易にできるように形成できることは、当業者ならば、当然、考慮することである。」、「(サ)したがって、『第2のネジ筋の底部が第1のネジ筋の底部より深く』形成された構造は、各甲号証に開示又は示唆する記載はないものの、そのような構造とすることは、バヨネット結合構造において当業者ならば、当然に考慮し、採用し得る設計的な事項の範囲内のことである。」と主張する。
しかしながら、バヨネット結合の突起と溝を、突起が確実に溝に案内されて移動するような係合関係に形成することが、通常のバヨネット結合を用いた接続構造において技術常識であったとしても、円筒形の外壁にバヨネット結合の溝のみならず、スレッドをも有する接続構造を前提とした上で、溝の深さをスレッドの谷底よりも深くすることまでもが、本件優先日前において技術常識であったとする証拠はなく、また、円筒形の外壁がバヨネット結合の溝のみならずスレッドをも有する場合に、溝の深さをスレッドの谷底よりも深くすべきことを、当業者であれば当然に考慮したはずであるといえる証拠もないことから、請求人の主張は採用できない。

(5)相違点3についてのまとめ
したがって、甲2発明1に甲4・5周知技術のスレッドを組み合わせた上で、注射針マウントの壁を貫通する溝を注射針マウントの外壁に設けた溝に変更し、併せて、注射針マウントの外壁に設けた溝に作用する突起をハブの外側から内壁へと移動させ、さらに、溝をスレッドよりも深く刻まれた溝とし、バヨネット結合を形成する際に複数の突起が誤って複数のスレッドに導入されることを防止すること、即ち、甲2発明において、相違点3に係る訂正特許発明1の発明特定事項とすることは、甲第2号証?甲第8号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものとはいえない。

1-3 まとめ
以上によれば、相違点1及び相違点2について検討するまでもなく、訂正特許発明1は、甲第2号証?甲第8号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、訂正特許発明1は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、訂正特許発明1に係る特許についての無効理由は理由がない。

2.訂正特許発明2?4について
訂正特許発明2?4は、訂正特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
よって、訂正特許発明2?4は、訂正特許発明1について示した理由と同様の理由により、甲第2号証?甲第8号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、訂正特許発明2?4は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、訂正特許発明2?4に係る特許についての無効理由は理由がない。

3.訂正特許発明5について
訂正特許発明5は、訂正特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
上記摘記事項甲9ア、甲10ア?ウ、甲11ア?イの記載によれば、請求人が主張するように、一般に、接続あるいは動作時に、確実に所定の状態にあることを認識できるようにするため、感触又は聴覚で認識できる手段を設けることが従来より周知の技術であったとはいえるものの、上記相違点3に係る訂正特許発明1の発明特定事項については、甲第9?11号証に何らの記載がない。
よって、訂正特許発明5は、訂正特許発明1について示した理由と同様の理由により、甲第2号証?甲第11号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、訂正特許発明5は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、訂正特許発明5に係る特許についての無効理由は理由がない。

4.訂正特許発明6について
4-1 対比
上記「1-1 対比」における検討を踏まえて、訂正特許発明6と甲2発明2とを対比すると、甲2発明2の「先金3」は、文言の意味、機能又は構造等からみて訂正特許発明6の「注射針マウント(100)」に相当し、以下同様に、「前端部」は「頂端部」に、「斜溝4」は「溝(120)」に、「中心軸に概ね平行する平行部分を有するように」は、「円筒軸(1000)に概ね平行する通路を確定するように」に、「平行部分」は「第一の領域(130)」に、「所定角度」は「ある角度」に、「斜行部分」は「第二の領域(130)」に、「座9」は「ハブ」に、「凸子7」は「突起(30)」に相当する。
甲2発明2において、「凸子7は、複数の斜溝4と係合する」ことにより、座9と先金3とがバヨネット結合されるといえるので、甲2発明2の「座9の外側に設けられた複数の凸子7は、複数の斜溝4と係合する」は、訂正特許発明6の「複数の突起(30)を有するハブと前記注射針マウント(100)とをバヨネット結合する」に相当する。
また、訂正特許発明6の「円筒形の外壁(110)」と甲2発明2の「先金3の筒形の前方側壁」は、“円筒形の壁”である点で共通している。

よって、訂正特許発明6と甲2発明2とは、次の点で一致する。
(一致点)
複数の溝(120)が、円筒形の壁の頂端部から始まり、円筒形の壁の円筒軸(1000)に概ね平行する通路を画定するように、円筒形の壁に設けられ、
注射針マウント(100)の少なくとも一つの溝(120)が、第一の領域(130)と、第一の領域(130)に対してある角度を有する第二の領域(150)とを有しており、
複数の突起(30)を有するハブと前記注射針マウント(100)とをバヨネット結合する、注射針マウント(100)。

そして、両者は以下の各点で相違する。
(相違点4)
複数の突起(30)が、訂正特許発明6では、ハブの「内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)」であるのに対し、甲2発明2では、ハブの外側に設けられた複数の突起(30)である点。

(相違点5)
円筒形の壁に設けられた複数の溝(120)が、訂正特許発明6では、「円筒形の外壁(110)に設けられ」た複数の溝(120)であるのに対し、甲2発明2では、円筒形の壁を貫通して設けられた複数の溝(120)である点。

(相違点6)
訂正特許発明6では、注射針マウント(100)が、「円筒形の外壁(110)に標準のねじ式注射針アセンブリを受け入れるため円筒形の外壁(110)に設けられたスレッド(200)」を有し、「溝(120)は、外壁(110)にスレッド(200)よりも深く刻まれ、内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)を有するハブと注射針マウント(100)とをバヨネット結合する際に、複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」のに対し、甲2発明2では、注射針マウント(100)が、「円筒形の外壁(110)に標準のねじ式注射針アセンブリを受け入れるため円筒形の外壁(110)に設けられたスレッド(200)」を有しておらず、また、甲2発明2の溝(120)が、「外壁(110)にスレッド(200)よりも深く刻まれ、内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)を有するハブと注射針マウント(100)とをバヨネット結合する際に、複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」ものでもない点

4-2 判断
相違点6について検討する。
上記「1-2 判断」で検討したとおり、甲第4号証及び甲第5号証に、上記甲4・5周知技術が開示され、甲第6号証に、ヘアーシャンプー等の化粧用製品の入った容器に関する甲6発明が記載されていたとしても、甲2発明2に該周知技術を組み合わせることの必然性も動機付けもないことから、甲2発明2における先金3の前方側壁の外面に、「標準のねじ式注射針アセンブリを受け入れるため」のスレッドを設けることを当業者が容易に想到できたとはいえない。
さらに、上記「1-2 判断」で検討したとおり、相違点6に係る訂正特許発明6の発明特定事項である「外壁(110)にスレッド(200)よりも深く刻まれ、内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)を有するハブと注射針マウント(100)とをバヨネット結合する際に、複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」点は、いずれの甲号証にも記載がなく、訂正特許発明6は、「溝(120)は、外壁(110)にスレッド(200)よりも深く刻まれ」ることにより、「バヨネット結合する際に、前記複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」という顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、相違点6に係る訂正特許発明6の発明特定事項は、甲第2号証?甲第8号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではない。

4-3 まとめ
以上によれば、相違点4及び相違点5について検討するまでもなく、訂正特許発明6は、甲第2号証?甲第8号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、訂正特許発明6は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、訂正特許発明6に係る特許についての無効理由は理由がない。

5.訂正特許発明7?12について
訂正特許発明7?12は、訂正特許発明6の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明であるから、訂正特許発明6について示した理由と同様の理由により、甲第2号証?甲第8号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、訂正特許発明7?12は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、訂正特許発明7?12に係る特許についての無効理由は理由がない。


第8 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第134条の2第5項の規定によって準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
そして、訂正特許発明1?12は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、訂正特許発明1?12に係る特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
注射針の装着システムと注射針アセンブリの装着方法
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の技術分野
本発明は一般に注入装置に関する。特に、注入装置や注入装置に実装されているアンプルに注射針を装着する方法とシステムに関する。
【0002】
関連技術
投薬装置とも呼ばれる注入装置は薬剤又は生物製剤を自分で投与する必要のある患者の生活を画期的に改善した。投薬装置は多くの形態を有しており、注入手段を備えたアンプルとあまり大差のない簡単な使い捨て型の器具もあれば、多くの機能を有する高性能の装置の場合もある。注入可能な薬剤や生物製剤を患者が自分で投与する際、投薬装置はその形態によらず大きな力となって来たことは周知である。又、これらの投薬装置は注入可能な薬を自分で投薬できない患者に看護者が投与する際にも大きな助けとなる。
【0003】
特に、ペン型注入装置は、薬剤やインスリンのような生物製剤を投与するための正確、簡便、且つ、多くの場合独立的な方法であることが立証されている。最近の注入装置は益々高性能化し、インスリン装置の場合の血糖値モニターと同じように、前回投薬した時刻や投薬量を記憶するメモリ等、多様かつ強力な機能を備えている。ペン型投薬装置は一般に円筒形であり、装置の片側の最遠端部から突き出ている注射針を有しているが、最新の、そして/又は、高性能の投薬装置では、注射針が装置の片端の遠端部から突き出ない形状になっている。(参照;例えば、ノボノルディスク社のInnovo(登録商標)及びInnoLet(登録商標),バグスバード、デンマーク)。
【0004】
通常、注入装置は予め該当する薬剤の入ったカートリッジを使用する。カートリッジは投薬装置と一体化している場合もあるし、或いは、片端に膜部を有するアンプルである場合もある。Jensen等による米国特許6,312,413を参照されたい。当該文献を出典明示によりここに取り込む。膜部を有するアンプルの先端部分は多くの場合注射針マウントと適合している。注射針マウントは通常ねじ山付きの装着面を有し、これによって、例えば注射針とハブから構成される注射針アセンブリをこの装着面に回転挿入するこが出来る。注射針マウントはアンプルの一部分である場合もあるし、アンプルに装着される別のアダプタの先端部(米国特許5,693,027及び6,126,646参照、当該文献を出典明示によりここに取り込む)である場合もある。勿論、投薬装置と一体化した注射針マウントを有している投与装置もある。
【0005】
注射針マウントが投薬装置の一部ではない典型的な注入装置においては、注射針マウントを持ったアンプルの先端部が注入装置から突き出ている。注射針マウントが投薬装置の一部である場合、注射針マウントは投薬装置の外部先端部分に通常設けられている。どちらの実施例においても、注射針ハブは注射針マウントに回転挿入される。従来技術による注射針装着システムの不便な点は、患者が、注入装置に対し注射針ハブを数回回転させて、注射針をアンプル又は投薬装置の先端部に挿入しなければならない点である。あまり器用でない患者にとって、このことは不便である。更に、多くの場合、注入装置用の注射針は複数、マガジンに保存されているのが望ましい。新世代のかなり多くの注入装置は円筒形ではなく、多くの新しい注入装置においては、注入装置の他の部品が注射針マウントを飛び越して伸びているため、最初に注射針をマガジンから取り出さなければ注射針を注入装置に装着することができない。
【0006】
発明の概要
本発明は注射針アセンブリを注入装置及び/又はアンプルに装着するシステム及びその方法を提供する。本発明のシステムとその方法は、必ずしも全部ではないが幾つかの実施例において、注射針とハブのアセンブリをアンプル又は/及び注入装置に、注入装置に対して注射針ハブアセンブリを一回転させることなく装着することを可能にする。本発明のある実施例においては、注射針アセンブリはハブ内に取付けられている注射針を有している。注射針アセンブリは、注射針ハブを注射針マウントに対し部分的に回転するだけでハブをマウントに装着できる手段も有している。本発明のまた別の実施例おいては、注射針アセンブリを装着するための注射針マウントは、外壁と、注射針アセンブリを該外壁の頂端部に固定するための装着手段とを有している。幾つかの実施例においては、これらの手段によって、注射針マウントを部分的に回転させるだけで注射針アセンブリを注射針マウントに完璧に固定できる。又、幾つかの実施例においては、注射針マウントは注射針アセンブリを装着手段上に位置合わせする手段を有している。本発明による注射針マウントと注射針アセンブリの組み合せにより、注射針装着システムを構築する。本システム、又は、その構成部材は、注射針アセンブリが注射針マウントにしっかりと装着されたことを感触で又は聴覚で認識できる手段を有していてもよい。
【0007】
本発明の少なくとも一つの実施例は、内壁を有するハブに取付けられた注射針を備えた注射針アセンブリを有する。この実施例においては、このハブの壁から複数の突起が放射状に内側に突き出ている。ハブの壁は一般に円筒形である。本発明で使用する注射針マウントは、少なくとも一つの実施例において、円筒形の外壁を持った構造を有している。複数の溝がこの外壁に設けられている。この溝は前記外壁の上部から始まり、少なくとも次の二つの領域を有している:外壁の円筒軸にほぼ垂直な通路を定める第一の領域と、この第一の領域に対しある角度をなす方向に広がる第二の領域である。勿論、本発明は、注射針マウントのハブの内側に溝を設け、注射針マウントの外面に突起を配置するという構成で具現化される場合もある。
【0008】
本発明の少なくとも一つの実施例においては、注射針アセンブリを注入装置に対し部分的に回転させるだけで、注射針アセンブリを注入装置に完全に装着できる。(注入装置に対する注射針アセンブリの回転は、注入装置を静止し注射針アセンブリを回転させることによって、又は、注射針アセンブリを静止し注入装置を回転させることによって、或いは、これらの処置の組み合わせによって達成できることは、当業者であればわかるであろう)。幾つかの実施例においては、注射針は注入装置内に実装されているアンプルに装着される。
【0009】
これ故、本発明は注射針を注入装置に装着する方法を提供する。本方法はマガジン内に保存されている注射針を装着する際に有用であり、注射針マウントを越えて伸びている部分を有する注入装置に対しては特に有用である。ある実施例においては、注入装置は注射針アセンブリを装着した状態でマガジンの中にその一部が挿入される。注入装置は一回転未満だけマガジンに対し回転され、注射針アセンブリを取付けた状態で取り出される。幾つかの実施例においては、回転は全く不要か、或いは、ごく僅かの回転を要するだけである。
【0010】
本発明の別の実施例においては、注射針アセンブリが円筒形のハブを有しており、その上に注射針が取付けられている場合がある。このハブは円筒形の外壁を有する円筒形の内部エレメントを有しており、これは前記ハブの円筒形の内壁と対座している。この内部の円筒形エレメントから複数の突起が外側に放射状に突き出ている。該当する注射針マウントが使用できる。ある実施例においては、注射針マウントは注射針マウントの内部の円筒面(例えば、一つの壁)上に配列される複数の固定用エレメントを有しており、これは注射針ハブの円筒軸にほぼ平行な第一の通路を形成する。幾つかの実施例においては、これらの固定用エレメントは環状に配列され、この環状部は内壁面の一部である場合もあり、或いは、注射針マウントの内壁に取付けられた環状部材、又は、その一部である場合もある。
【0011】
更に、これらの突起は標準のアンプルアダプタの先端部のスレッド(ねじ山)の間に契合するようにその寸法を決めることも出来る。突起を、内部ハブ壁上に設け、標準アダプタの先端部のスレッドの間に嵌まるように配列すれば、従来方法で注射針アセンブリをアダプタの先端部に回転させて挿入することが可能となる。
【実施例】
【0012】
本発明は注射針ハブアセンブリをアンプルや注入装置に装着するシステムとその方法を提供する。通常、注射針ハブアセンブリはハブ550に装着された注射針510を有している(例えば、図3参照)。図1に示すように、注射針ハブ10は一般に円筒形であり内壁面20を有している。本発明のある実施例においては、内壁面20から放射状に複数の突起30が内部方向に突き出ている。
【0013】
注射針マウント100は注射針ハブ10を受け入れることが出来るように設計されている(例えば、図1参照)。図1及び図2に示すように、注射針マウント100は一般に円筒形であり、外壁面110を有している。外壁面110には複数の溝又はスロット120が設けられている。この溝120は第一端122と第二端125を有している。この溝120は第一の領域130を有しており、これは一般に注射針マウント100の円筒軸1000に平行な通路を定めている。本図において、溝の第一の領域130は方形の領域を有しているように示されているが、注射針ハブ上の突起30が円筒軸1000に対し平行方向に移動できるならば、この溝の厳密な形状は重要ではない。これ故、この溝が円筒軸1000に対して必ずしも平行でない壁を有していても、突起30が円筒軸に対し平行方向に動くことができるならば、この溝は円筒軸に平行であると言って良い。溝の第一の領域130の一部分の幅が、第一の領域の他の部分、或いは、溝120の他の部分の幅よりも広くなっていてよい。溝が円筒軸1000に対し平行でない壁を有する実施例においては、溝の第一の領域130の幅は、溝の第一の領域130の平均的な幅となる。
【0014】
第一の領域130は入口部135を有しており、この入口部の幅は第一の領域の平均幅、乃至は、溝120全体の平均幅よりも広い幅を有している。入口部135は突起30が溝120に入ることができるように注射針ハブを位置合わせする位置合わせ手段として機能する。全部ではないが殆どの実施例において、入口部の幅は溝120のどの部分よりも広くなっている。一般に溝の幅は溝が入口部135から離れるにつれて狭くなる。図に示すように、溝の幅は入口から少し離れた地点から一定幅となる。或る実施例においては、第一の領域130の幅は入口部分135で最大であり、第一の領域130の長さにつれて狭くなっていく。この溝は第二の領域150を有しており、第二の領域は円筒軸1000に垂直であるか、或いは、第一の領域130に対しある角度を有しているかのどちらかである。本発明の或る実施例においては、第二の領域150は、通常、注射針マウントの円筒軸に垂直な面を一つだけ有している。これ故、溝の第二の領域150は両側に壁を有するスロットである必要はなく、注射針ハブ上の突起が注射針マウントの外端部側に移動することを阻止する片壁が必要なだけである。図1に示すように、溝120は第三の領域160も有しており、この領域は第一の領域130と第二の領域150に対しある角度を有するように方向付けられる。
【0015】
本発明の幾つかの実施例において、注射針アセンブリがハブに確実に固定されたかどうかを感触的に認識できる手段を提供している。これを行うためには溝120の第二の領域の側面又は底部に小さな突起439を設ける等、様々な方法がある。(図7参照)。突起30は固定される前に突起439を乗り越える必要がある。この突起部の変形が感触的な手触り、或いは、クリック音を引起す。このように本発明の幾つかの実施例において、注射針がマウントに確実に装着された時、注射針ハブと注射針マウントがクリック音を発生するように注射針装着システムを設計することが出来る。注射針ハブが注入装置から嵌め替えなければならない場合は、注入中や操作中、注射針ハブがより良好に固定されるように、傾斜を有する感触用の突起の先端部をもっと鋭角にすることが出来る。これにより、患者が更なる注入操作のために注射針をそのまま保持することが可能になる。
【0016】
本発明の利点の一つは、注射針マウントが標準的なスレッド200をその外壁面に備えることが出来ることである。(図1参照)。溝120は標準的なスレッド200の中に割り込むことが出来る。これにより注射針マウント100は本発明の注射針ハブだけでなく、標準タイプのねじ山付きの注射針ハブアセンブリも受け入れることが出来る。
【0017】
図1には注射針マウント上に設けられた溝、及び、注射針ハブ上に設けられた突起が示されているが、本発明は注射針ハブの内壁に設けられた溝と注射針マウントの外壁から外側に突き出た突起で構成することも出来る。幾つかの実施例においては、これらの突起の大きさや形状を、既存の注射針ハブで使用されている標準的なスレッドに適合するように決めると有利である。これらの突起は、内壁に溝を有する注射針ハブアセンブリに対してだけでなく、標準タイプのねじ山付きの注射針ハブも取り付けることができるように、注射針マウントの外壁に配置される場合もある。
【0018】
本発明は、特に限定するわけではないが、図3?図6に示すような種々の異なった形態をとっている。図3?図6に示すように、注射針510は注射針ハブアセンブリ500に実装されている。注射針ハブ550は一般に円筒形であり、内壁面600と閉ざされた頂上端610を有している。この閉ざされた頂上端610は内壁面620を有している。この内壁面620から円筒形の部材650が突き出ており、これは外壁面660を有している。図5参照。外壁面660から突起670が放射状に外側に向かって突き出ている。この突起は種々の形態と形状を有してよく、本図に示す三角プリズム形状もそのひとつである。
【0019】
図3?図5に示す注射針ハブアセンブリは改良された注射針マウント700と共に使用することが出来る。図3?図6に示すように、注射針マウント700は通常円筒形であり、頂上端、内壁面、外壁面、及び、内壁面から内部方向に向かって伸びる複数の固定用エレメント(これは追加の突起である場合もある)を有している。固定用エレメントは注射針マウント上に突起670に対する通路を形成するように設計されてよく、これにより注射針ハブアセンブリ500の突起を受入れる複数の溝を構成する。図6に示すようにこの溝は、一般に注射針マウントの円筒軸に平行な通路を画定する第一の領域561と、この円筒軸に垂直な第二の領域571、及び、第二領域571と第一の領域561を繋いでいる第三の領域588を有している。第一の領域561はその開口部において最も幅が広く、注射針ハブ上の突起を位置合わせする機能を有している。注射針マウントは取付け面581有し、注射針ハブを注射針マウントに装着する時、注射針ハブの一部がこの取付け面と当接する。この取付け面は注射針マウントの頂端部の頂上エッジである場合もあるし、注射針マウントの外壁面599である場合もある、或いは、その双方である場合もある。図2?図4に示す実施例においては、注射針マウントの外側面はスレッドを有することができ、これにより従来型の標準的な注射針ハブも本発明の改良された注射針マウントと共に使用できる。
【0020】
本発明は注射針ハブアセンブリをアンプルや注入装置に取り付ける種々の方法を提供することが出来る。例えば、本発明のある実施例においては、注射針マウントが注射針ハブの内部に挿入され、注射針ハブが注射針マウントに対し一回転未満、通常5°?30°乃至60°の範囲で回転される。又、ある実施例においては、注射針が確実にハブに装着されたことを示すために、クリック音、又は、振動、或いは、他の感触的な応答が提供される。ある実施例においては、僅かな回転を要し、ある実施例においては回転を必要としない。固定用エレメント777の表面部は、ハブ500の内部にマウントを挿入する際、ハブを僅かに回転させるためだけに使用される。別の実施例においては、もっと多くの回転を必要とする場合もある。
【0021】
本方法においては注射針ハブを注射針マウントに装着する際に、ハブをマウントに対し一回転させる必要がないので(即ち、ハブが回転しマウントは静止、或いは、マウントが回転しハブは静止、或いは両者が反対方向に回転する)、本発明は、マガジン内に保存されている注射針ハブアセンブリを装着することができ、又、その方法を提供する。図8及び図9に示すように、その形状からマガジンに対し一回転できない注入装置に対しても同様に装着することができる。本発明のある実施例においては、注入装置3000の一部、通常、注射針マウント3010を有する部分が注射針マガジン3050の中に挿入される。一回転すること無く、注射針を完全に取付けた状態で注入装置3000を取り出すことが出来る。幾つかの実施例においては、注射針が確実に注入装置に装着されたことを示すため可聴音又は感触を提供する。又、幾つかの実施例においては、マガジン内に挿入される部分は注入装置から伸びているアンプルの先端部である場合もある。本発明を実施する幾つかの方法は、平坦な面3070を有するマガジン内に保存されている注射針を用いて行なわれる場合もあり、注射針・ハブアセンブリ3080は、前記平坦な面3070の下の(必ずしもそうではないが、通常は)窪んだ空間3090に配置される(図9参照)。
【0022】
此処まで述べてきたことは、本発明の幾つかの典型的な実施例の簡単な説明であり、例証的なものであって本発明の全てを網羅するものではない。当該技術分野の専門家は、言語では本発明の全ての実施態様の核心を把握することが不可能であり、又、種々の構成要素に対するさして重要でもなく又本質的でもない代替物は、特許請求の範囲で定義される本発明の範囲の中に包含されることを認識することになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のある実施例の注射針ハブと注射針マウントの立体図である。
【図2】図1に示す注射針ハブと注射針マウントの断面図である。
【図3】本発明の第2の実施例の注射針アセンブリと注射針マウントの立体図である。
【図4】図3の実施例の下方から見た図である。
【図5】図3?図4に示す注射針アセンブリの断面図である。
【図6】図3?図5に示す実施例の注射針アセンブリの装着手段の拡大図である。
【図7】注射針マウントと注射針ハブの切取図であり、注射針ハブが注射針マウントに確実に装着されているかどうかを感触的に認識するための本発明の一実施例を示す。
【図8】本発明の方法のステップを実行する際に用いられる注射針を保存するマガジンの側面図である。
【図9】図8に示すマガジンの上面図である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入装置の、注射針アセンブリ(500)を注射針マウント(100)に装着するための注射針装着システムにあって、
注射針アセンブリ(500)は、
注射針に取付けられたハブ(10)を有し、ハブ(10)は円筒形の内壁(20)を有し、
注射針マウント(100)は、
頂端部を有する円筒形の外壁(110)を有し、
注射針アセンブリ(500)が更に、
ハブ(10)の円筒形の内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)を有し、
注射針マウント(100)が更に、
円筒形の外壁(110)に設けられたスレッド(200)と、円筒形の外壁(110)の頂端部から始まり、円筒形の外壁(110)の円筒軸(1000)に概ね平行する通路を画定する、円筒形の外壁(110)に設けられた複数の溝(120)とを有し、
注射針マウント(100)の少なくとも一つの溝(120)が、第一の領域(130)と、第一の領域(130)に対してある角度を有する第二の領域(150)とを有し、
複数の突起(30)は、バヨネット結合を形成するため複数の溝(120)と相互に作用し、スレッド(200)は、はめ合わせに適合する従来のねじ式注射針アセンブリを注射針マウント(100)にねじ込んで接続することに適しており、
前記溝(120)は、前記外壁(110)に前記スレッド(200)よりも深く刻まれ、もってバヨネット結合を形成する際に前記複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止することを特徴とする注射針装着システム。
【請求項2】
第一の領域(130)と第二の領域(150)間の角度が90°又はそれ未満であることを特徴とする請求項1に記載の注射針装着システム。
【請求項3】
溝(120)の第一の領域(130)が、注射針マウント(100)の入口部分(135)を画定する頂端部において最も幅が広いことを特徴とする請求項1又は2に記載の注射針装着システム。
【請求項4】
突起(30)が円形の面を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の注射針装着システム。
【請求項5】
更に、注射針ハブ(10)が注射針マウント(100)上に確実に装着されたことを感触で及び/又は聴覚で認識できる手段を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の注射針装着システム。
【請求項6】
円筒形の外壁(110)が、頂端部と、円筒形の外壁(110)に標準のねじ式注射針アセンブリを受け入れるため円筒形の外壁(110)に設けられたスレッド(200)とを有し、
複数の溝(120)が、円筒形の外壁(110)の頂端部から始まり、円筒形の外壁(110)の円筒軸(1000)に概ね平行する通路を画定するように、円筒形の外壁(110)に設けられ、
注射針マウント(100)の少なくとも一つの溝(120)が、第一の領域(130)と、第一の領域(130)に対してある角度を有する第二の領域(150)とを有しており、
前記溝(120)は、前記外壁(110)に前記スレッド(200)よりも深く刻まれ、内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)を有するハブと前記注射針マウント(100)とをバヨネット結合する際に、前記複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止すること、を特徴とする注射針マウント(100)。
【請求項7】
第一の領域(130)と第二の領域(150)間の角度が90°又はそれ未満であることを特徴とする請求項6に記載の注射針マウント(100)。
【請求項8】
溝(120)は、入口部分(135)を形成する注射針マウント(100)の頂端部において最も幅が広いことを特徴とする請求項6又は7に記載の注射針マウント(100)。
【請求項9】
注射針マウント(100)は、注射針アセンブリ(500)を装着し、
注射針アセンブリ(500)は、
注射針(510)に取付けられたハブ(10)を有し、ハブ(10)は、円筒形の内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)を有する円筒形の内壁(20)を有していること、を特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の注射針マウント(100)。
【請求項10】
注射針アセンブリ(500)の突起(30)が円形の面を有することを特徴とする請求項9に記載の注射針マウント(100)。
【請求項11】
注射針アセンブリ(500)の突起(30)が円筒軸(1000)に垂直に突き出ていることを特徴とする請求項9又は10に記載の注射針マウント(100)。
【請求項12】
注射針アセンブリ(500)の突起(30)が注射針マウント(100)の頂端部と向かい合ったハブ(10)の近接端の近くに配置されていることを特徴とする請求項9ないし11のいずれかに記載の注射針マウント(100)。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2012-02-23 
出願番号 特願2004-518458(P2004-518458)
審決分類 P 1 113・ 841- YA (A61M)
P 1 113・ 121- YA (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内藤 真徳  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 田合 弘幸
関谷 一夫
登録日 2010-03-12 
登録番号 特許第4472522号(P4472522)
発明の名称 注射針の装着システムと注射針アセンブリの装着方法  
代理人 小林 義教  
代理人 園田 吉隆  
代理人 小林 義教  
代理人 竹林 則幸  
代理人 結田 純次  
代理人 石井 淑久  

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