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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C04B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C04B |
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管理番号 | 1274201 |
審判番号 | 不服2012-17223 |
総通号数 | 163 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-07-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-09-05 |
確定日 | 2013-05-16 |
事件の表示 | 特願2006-237963「耐熱コンクリート及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月31日出願公開、特開2008- 19154〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年9月1日(特許法第41条第1項の規定による優先権主張日平成18年6月15日)の出願であって、平成24年3月15日付けで拒絶理由通知書が起案され (発送日は同年3月21日)、平成24年5月16日に特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書並びに意見書が提出され、平成24年5月31日付けで拒絶査定が起案され (発送日は同年6月5日)、平成24年9月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に同日付けで特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書が提出されたものであり、その後平成24年11月2日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋が起案され(発送日は同年11月6日)、平成24年12月14日付けで回答書が提出されたものである。 第2 平成24年9月5日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年9月5日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願補正発明 平成24年9月5日付けの手続補正(以下、必要に応じて「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、平成24年5月16日付けの手続補正による 「 【請求項1】 セメント系材料として、ポルトランドセメントを37?59質量%、微粉末石英を20?50質量%、消石灰を13?21質量%の範囲で、合計量が100質量%となるように含有することを特徴とする耐熱コンクリート。 【請求項2】 セメント系材料として、ポルトランドセメントを37?59質量%、微粉末石英を20?50質量%、消石灰を13?21質量%の範囲で、合計量が100質量%となるように含有させて混合及び練り混ぜし、硬化養生後に200℃以上の温度でオートクレーブ養生を施すことを特徴とする耐熱コンクリートの製造方法。 【請求項3】 セメント系材料として、ポルトランドセメントを37?59質量%、微粉末石英を20?50質量%、消石灰を13?21質量%の範囲で、合計量が100質量%となるように含有し、圧縮強度が38.8N/mm^(2)以上であることを特徴とする耐熱コンクリート。 【請求項4】 セメント系材料として、ポルトランドセメントを37?59質量%、微粉末石英を20?50質量%、消石灰を13?21質量%の範囲で、合計量が100質量%となるように含有させて混合及び練り混ぜし、硬化養生後に200℃以上の温度でオートクレーブ養生を施し、製造されるコンクリートの圧縮強度が38.8N/mm^(2)以上であることを特徴とする耐熱コンクリートの製造方法。」 から、次のとおりに補正された。 「 【請求項1】 セメント系材料として、ポルトランドセメントを44?59質量%、微粉末石英を20?40質量%、消石灰を16?21質量%の範囲で、合計量が100質量%となるように含有することを特徴とする耐熱コンクリート。 【請求項2】 セメント系材料として、ポルトランドセメントを44?59質量%、微粉末石英を20?40質量%、消石灰を16?21質量%の範囲で、合計量が100質量%となるように含有させて混合及び練り混ぜし、硬化養生後に200℃以上の温度でオートクレーブ養生を施すことを特徴とする耐熱コンクリートの製造方法。 【請求項3】 セメント系材料として、ポルトランドセメントを37?59質量%、微粉末石英を20?50質量%、消石灰を13?21質量%の範囲で、合計量が100質量%となるように含有し、硬化養生後に220℃の温度で18時間のオートクレーブ養生が施され、圧縮強度が38.8N/mm^(2)以上であることを特徴とする耐熱コンクリート。 【請求項4】 セメント系材料として、ポルトランドセメントを37?59質量%、微粉末石英を20?50質量%、消石灰を13?21質量%の範囲で、合計量が100質量%となるように含有させて混合及び練り混ぜし、硬化養生後に220℃の温度で18時間のオートクレーブ養生を施し、製造されるコンクリートの圧縮強度が38.8N/mm^(2)以上であることを特徴とする耐熱コンクリートの製造方法。」 上記補正は、(i)本件補正前の請求項1、2に記載された発明を特定するために必要な事項である「ポルトランドセメントを37?59質量%、微粉末石英を20?50質量%、消石灰を13?21質量%の範囲」を、「ポルトランドセメントを44?59質量%、微粉末石英を20?40質量%、消石灰を16?21質量%の範囲」と、各成分の質量%範囲を減縮して限定し、(ii)本件補正前の請求項3に記載された発明を特定するために必要な事項である「製造されるコンクリートの圧縮強度が38.8N/mm^(2)以上である」を、「硬化養生後に220℃の温度で18時間のオートクレーブ養生が施され、製造されるコンクリートの圧縮強度が38.8N/mm^(2)以上である」と、製造条件を限定し、(iii)本件補正前の請求項4に記載された発明を特定するために必要な事項である「硬化養生後に200℃以上の温度でオートクレーブ養生を施し」を、「硬化養生後に220℃の温度で18時間のオートクレーブ養生を施し」とオートクレーブ養生条件を限定する補正を行うものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)について、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか、以下に検討する。 (2)刊行物に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平3-141171号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「本発明は耐熱性と諸物理的特性の優れた建築用材料として用いられるゾノトライト系軽量珪酸カルシウム水和物成形体の製造法に関するものである。 (従来の技術) ゾノトライトを主要構成鉱物とする珪酸カルシウム成形体は、ゾノトライトの最も大きな特長である耐熱性を生かし、高温用の保温材、断熱材、耐火被覆材のような主として建築用の用途に使用されている。」(第1頁右下欄1行?10行) (イ)「即ち、ゾノトライトは750?850℃の間で熱分解し次式に示すように結晶水を失ってワラスナイトとなる。 6(CaO・SiO_(2))・H_(2)O →6(CaO・SiO_(2))+H_(2)O (1)」 (第4頁左上欄9行?13行) (ウ)「 (実施例) 本実施例においては第1表に示すような化学組成を有する珪酸質及び石灰質原料を使用した。 第1表(重量%) CaO SiO_(2) Al_(2)O_(3) 珪 石 - 94.5 1.3 生石灰 96.9 - - 消石灰 72.6 - - ポルトランドセメント 64.8 21.5 6.0 第1表に示した各原料を第2表に示す割合で配合し、これを更にアルミニウム粉末を原料乾量に対して0.07重量%を配合して全配合原料中のCaO/SiO_(2)モル比及びAl/Si+Al原子比が所定値となるようにし、先ず珪石及びポルトランドセメントの混合物2重量部に対して水を約1重量部加えて 時間保持することによって前水和処理を施し、次にこれに他の配合原料及び水を加えてスラリー化したものを大きさ15cm角×40cm高さの鋳型に流し込んで発泡させた状態で硬化し、得られた成形物をオートクレーブ中で第2表に示す養生条件で水蒸気養生を行ない、得られた成形体製品から試料を採取して、先に述べた手法によってゾノトライトの生成率を測定した。 また同時に比較のため珪石及びポルトランドセメントについて前処理を行なわないものについて同様の工程を経て水蒸気処理を施して得られた試料についてゾノトライト生成率を測定し、前処理によるゾノトライト生成向上度を調べた。 これらの結果を第2表に示す。」(第4頁左下欄3行?右下欄11行) (エ)第5頁の第2表には、「実施番号7」として、原料配合割合(重量部)が「珪石 39重量部、生石灰 10重量部、消石灰 6重量部、ポルトランドセメント 45重量部」であって、原料の「CaO/SiO_(2)モル比 0.99」及び「Al/Si+Al原子比 7.5」であって、養生条件が「温度240℃ 時間24時間」で、「前水和時間 60分」、「ゾノトライト生成率 32%」、「前水和によるゾノトライト生成向上度 77.8%」という結果が記載されている。 また、第2表の全ての実施番号の原料成分の原料配合割合(重量部)は合計すると、100重量部になっている。 (オ)「以上の結果から明らかなように、本発明の方法即ち、原料混合物中のCaO/SiO_(2)モル比を1.1?0.7の範囲とし、また原料中のAl/Si+Al原子比を7%以下とした上で、珪酸質原料及びポルトランドセメントに対してスラリーの水蒸気養生を行なうに先だって前水和処理を施したもの〈実施番号6、8及び9)は前水和処理を施さないもの(実施番号1?5)に比べて養生条件が同一であっても、得られた成形体におけるゾノトライト生成率が著しく高いこと、また前処理を施したものであっても原料配合割合が本発明に定めたCaO/SiO_(2)モル比、Al/Si+Al原子比を逸脱したもの(実施番号7)においてはゾノトライト生成率が十分に上がらず、所期の目的を達し得ないことが判かる。」(第5頁左下欄1行?15行) (3)対比、判断 (3.1)刊行物1に記載に記載された発明 刊行物1には、記載事項(ア)に「本発明は耐熱性と諸物理的特性の優れた建築用材料として用いられるゾノトライト系軽量珪酸カルシウム水和物成形体の製造法に関するものである。」と記載され、記載事項(ウ)に「実施例」として「第1表に示した各原料を第2表に示す割合で配合し、これを更にアルミニウム粉末を原料乾量に対して0.07重量%を配合して全配合原料中のCaO/SiO_(2)モル比及びAl/Si+Al原子比が所定値となるようにし、先ず珪石及びポルトランドセメントの混合物2重量部に対して水を約1重量部加えて 時間保持することによって前水和処理を施し、次にこれに他の配合原料及び水を加えてスラリー化したものを大きさ・・・の鋳型に流し込んで発泡させた状態で硬化し、得られた成形物をオートクレーブ中で第2表に示す養生条件で水蒸気養生を行ない、得られた成形体製品から試料を採取して、先に述べた手法によってゾノトライトの生成率を測定した。」と記載されているから、第1表に示した各原料を第2表に示す割合で配合し、これを更にアルミニウム粉末を配合して、鋳型に流し込んで発泡させた状態で硬化し、得られた成形物をオートクレーブ中で第2表に示す養生条件で水蒸気養生を行ない得られたゾノトライト系軽量珪酸カルシウム水和物成形体が記載されている。 また、記載事項(エ)の如く、刊行物1の第2表には、原料配合割合が「珪石 39重量部、生石灰 10重量部、消石灰 6重量部、ポルトランドセメント 45重量部」であるゾノトライト系軽量珪酸カルシウム水和物成形体が記載されている。 そして、刊行物1の第2表の原料成分の原料配合割合(重量部)は合計すると100重量部となる数値で示されているから、成形体の各原料成分の配合割合を「質量%」で表した場合も、それらの数値は一致することは明らかである。 これらの記載を本願補正発明の記載振りに則して整理すると、刊行物1には、 「ポルトランドセメントを45質量%、珪石を39質量%、生石灰を10質量%、消石灰を6質量%含有するゾノトライト系軽量珪酸カルシウム水和物成形体。」 の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる。 (3.2)本願補正発明と刊行物発明とを対比する。 刊行物1の記載事項(イ)の式(1)に記載されているように、ゾノトライトは、「珪酸カルシウム水和物」であって、記載事項(ア)に「本発明は耐熱性と諸物理的特性の優れた建築用材料として用いられるゾノトライト系軽量珪酸カルシウム水和物成形体・・・・ ゾノトライトを主要構成鉱物とする珪酸カルシウム成形体は、ゾノトライトの最も大きな特長である耐熱性を生かし、高温用の保温材、断熱材、耐火被覆材のような主として建築用の用途に使用されている。」と、「ゾノトライト系軽量珪酸カルシウム水和物成形体」が耐熱性の優れた成形体であることが刊行物1に記載されている。 そして、石灰質原料と珪酸質原料を主原料とし、発泡剤や水と混合し、型枠内で硬化養生した成形体を水蒸気オートクレーブ養生して製造される軽量珪酸カルシウム成形体は、「セメント系材料」であることは明らかであるし、「軽量気泡コンクリート(ALC)」と一般に呼ばれてるコンクリートの一種である(必要ならば、例えば、小坂義夫監修「最新コンクリート技術-材料・構造・施工に関する最近の諸問題」森北出版(株)、1990年7月5日第1版第1刷発行、135?137頁等参照。)から、耐熱性の優れた刊行物発明の「ゾノトライト系軽量珪酸カルシウム水和物成形体」は、本願補正発明の「耐熱コンクリート」に相当する。 そうすると、本願補正発明と刊行物発明は、 「セメント系材料として、ポルトランドセメント、珪酸質原料、消石灰を含有する耐熱コンクリート。」 で一致し、次の点で相違する。 相違点a: セメント系材料の珪酸質原料が、本願補正発明では「微粉末石英」であるのに対し、刊行物発明は珪石である点。 相違点b: セメント系材料の原料配合割合が、本願補正発明では「ポルトランドセメントを44?59質量%、微粉末石英を20?40質量%、消石灰を16?21質量%の範囲で、合計量が100質量%となるように含有する」のに対し、刊行物発明では、消石灰のほかに生石灰も含有し、ポルトランドセメントを45質量%、珪石を39質量%、生石灰を10質量%、消石灰を6質量%含有する点。 (3.3)これらの相違点について検討する。 <相違点aについて> 石灰質原料と珪酸質原料を主原料とし、水蒸気オートクレーブ養生して製造される耐熱コンクリートの珪酸質原料として、微粉末石英は、慣用されているものにすぎない(必要ならば、例えば、本願明細書における先行特許文献1:特開2003-171161号公報の特許請求の範囲、段落【0032】等参照。)し、本願明細書の段落【0017】にも記載されているように、「ケイ石微粉末」が「微粉末石英」の代表的なものである。 そして、珪酸質原料の粉末度は粗いよりも細かい方が石灰質原料との反応に関与する比表面積が大きいので反応性がよいことは当然予想される事項であるから、刊行物発明における珪酸質原料である珪石を、微粉末石英とする程度のことに格別の困難性は認められない。 <相違点bについて> 消石灰は、周知の如く生石灰が水和された物質であり、原料配合物が刊行物1の記載事項(ウ)に「先ず珪石及びポルトランドセメントの混合物2重量部に対して・・・、次にこれに他の配合原料及び水を加えてスラリー化したものを大きさ・・・の鋳型に流し込んで発泡させた状態で硬化し、得られた成形物をオートクレーブ中で第2表に示す養生条件で水蒸気養生を行な」うと記載されている、生石灰の水和に必要な水及び水蒸気と接触する条件下に生石灰が置かれた場合、生石灰は、生石灰のままで留まるとは化学常識からみて考えられず、消石灰に変化し、珪酸質原料と反応においては実質的に消石灰だけを配合した場合と異ならない状態になると認められる。 そして、石灰質原料と珪酸質原料を主原料とし、水蒸気オートクレーブ養生して製造されるゾノトライトやトバモライトを含有する珪酸カルシウム成形体の石灰質原料として、消石灰と生石灰の併用ではなく、消石灰だけを使用することも、本願の優先権主張日前に周知の事項である(必要ならば、例えば、特公昭61-25672号公報、特に実験例1?3、等参照。)から、刊行物発明において、生石灰と消石灰との併用を等価量の消石灰だけの使用に変更することは当業者が適宜なし得る範囲内の事項である。 しかも、刊行物発明の「ポルトランドセメントを45質量%、珪石を39質量%、生石灰を10質量%、消石灰を6質量%の範囲で、合計量が100質量%となるように含有する」という原料配合割合は、生石灰が等価量の消石灰であるとして換算し直した場合、生石灰の10重量部が消石灰の約13.2重量部に相当するので、換算した場合の合計重量部が100重量部を超えることになるので、合計量が100質量%となるようにして、それらの配合割合を「質量%」で換算すると、次の割合で含有することになる: 「ポルトランドセメントを43.6質量%、珪石を37.8質量%、消石灰を18.6質量%含有。」 刊行物発明のポルトランドセメントについての上記の「43.6質量%」という数値は、小数点以下を四捨五入すれば約44質量%であるし、珪酸質原料である珪石についての「37.8質量%」は、本願補正発明の微粉末石英についての「20?40質量%」の範囲内の数値であり、換算した消石灰についての「18.6質量%」は、本願補正発明の消石灰についての「16?21質量%」の範囲内の数値になり、本願補正発明におけるセメント系材料の配合割合と微差程度の相違しかない。 セメント系材料として使用される原料成分は、その産地や製造メーカーによっても、成分分析結果としての品質が変化するものであり、特に「ポルトランドセメント」には、複数種類のポルトランドセメントが存在するので、ポルトランドセメントの化学組成は、必ずしも刊行物1の記載事項(ウ)の第1表に記載されたものに限られるものではないから、ポルトランドセメントの配合量が同じであっても、CaO/SiO_(2)モル比やAl/Si+Al原子比が多少影響を受けることが十分あり得ることである。 そうすると、たとえ刊行物発明の原料配合物について、刊行物1の記載事項(オ)に「前処理を施したものであっても原料配合割合が本発明に定めたCaO/SiO_(2)モル比、Al/Si+Al原子比を逸脱したもの(実施番号7)においてはゾノトライト生成率が十分に上がらず、所期の目的を達し得ないことが判かる。」と記載されているとはいえ、実施番号7に基づく刊行物発明のゾノトライト系軽量珪酸カルシウム水和物成形体においても、ゾノトライトは生成されているものであり、本願補正発明は、セメント系材料の配合割合以外には、単に「耐熱コンクリート」と特定されているだけで、強度等も特定されているものではないから、本願補正発明のポルトランドセメント含有範囲と四捨五入すれば範囲内の割合になる程度の微差しか相違しない刊行物発明のセメント系材料の配合割合に基づいて、セメント系材料の原料配合割合を、本願補正発明の範囲内に属する、ポルトランドセメントが44質量%、珪石(珪酸質原料)を37.8質量%近傍、消石灰を18.6質量%近傍で含有するセメント系材料と特定する程度のことは、当業者が容易になし得る範囲内の事項である。 そうすると、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について (1)本願発明 平成24年9月5日付けの手続補正は前記第2.のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年5月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 セメント系材料として、ポルトランドセメントを37?59質量%、微粉末石英を20?50質量%、消石灰を13?21質量%の範囲で、合計量が100質量%となるように含有することを特徴とする耐熱コンクリート。」 (2)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である刊行物1及びその記載事項は、前記第2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、前記第2.で検討した本願補正発明における「ポルトランドセメントを44?59質量%、微粉末石英を20?40質量%、消石灰を16?21質量%の範囲」という特定事項が、「ポルトランドセメントを37?59質量%、微粉末石英を20?50質量%、消石灰を13?21質量%の範囲」と拡張されたものである。 してみると、本願発明を特定するために必要な事項である「ポルトランドセメントを37?59質量%、微粉末石英を20?50質量%、消石灰を13?21質量%の範囲」を、「ポルトランドセメントを44?59質量%、微粉末石英を20?40質量%、消石灰を16?21質量%の範囲」と限定したものに相当する本願補正発明が、前記第2.(3)に記載したとおり、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明と同様の理由により、本願発明も、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-03-13 |
結審通知日 | 2013-03-19 |
審決日 | 2013-04-01 |
出願番号 | 特願2006-237963(P2006-237963) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C04B)
P 1 8・ 575- Z (C04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 近野 光知 |
特許庁審判長 |
松本 貢 |
特許庁審判官 |
國方 恭子 真々田 忠博 |
発明の名称 | 耐熱コンクリート及びその製造方法 |
代理人 | 村瀬 一美 |