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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1274526
審判番号 不服2012-1170  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-20 
確定日 2013-05-23 
事件の表示 特願2005-511339「浄水器及びその洗浄方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月13日国際公開、WO2005/003038〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2004年6月30日(優先権主張 2003年7月8日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成22年7月2日付けで拒絶理由が起案され(発送日 平成22年7月7日)、平成22年9月2日付けで意見書並びに特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書が提出され、平成23年2月17日付けで拒絶理由が起案され(発送日 平成23年2月23日)、これに対する応答なく平成23年10月18日付けで拒絶査定が起案され(発送日 平成23年10月25日)、これに対し、平成24年1月20日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると共に特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書が提出され、平成24年3月2日付けで審判の請求理由を補充する手続補正書が提出され、平成24年7月11日付けで特許法第164条第3項に基づく報告(以下、「前置報告書」という。)を引用した審尋が起案され(発送日 平成24年7月17日)、これに対して回答書が提出されなかったものである。

第2.平成24年1月20日付けの特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年1月20日付けの特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の目的
本件補正は、平成22年9月2日付けの特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1を、平成24年1月20日付けの特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に、以下のように補正することを含むものである。
<本件補正前>
「【請求項1】
筐体内に配置された第一の濾過膜と、該第一の濾過膜の下流側に設けられた第二の濾過膜とを有する浄水器であって、該第一の濾過膜は該筐体内から取り出して洗浄することが可能であり、以下の手順にて測定される、該第一の濾過膜の孔径AをA1、該第二の濾過膜の孔径AをA2としたとき、
A1≦A2である浄水器。
孔径Aの測定手順
(1)表面張力がγの液体に濡らした状態での測定対象濾過膜の気体流量と圧力との関係であるウエットフローカーブを作成する。
(2)乾燥状態での前記測定対象濾過膜の気体流量と圧力との関係であるドライフローカーブを作成する。
(3)前記ウエットフローカーブにおける気体流量が、前記ドライフローカーブにおける気体流量の90%になる圧力をP_(90)としたとき、前記測定対象濾過膜の孔径Aは下記式(I)で求められる。
A=4γ/P_(90) (I)」
<本件補正後>
「【請求項1】
二つに分かれて形成された筐体のうちの1つに固定されたモジュールキャップから露出するように該モジュールキャップに固定された第一の濾過膜と、該第一の濾過膜の下流側に設けられた第二の濾過膜とを有する浄水器であって、
該第一の濾過膜は該筐体内から取り出して洗浄することが可能であり、
以下の手順にて測定される、該第一の濾過膜の孔径AをA1、該第二の濾過膜の孔径AをA2としたとき、A1≦A2である浄水器。
孔径Aの測定手順
(1)表面張力がγの液体に濡らした状態での測定対象濾過膜の気体流量と圧力との関係であるウエットフローカーブを作成する。
(2)乾燥状態での前記測定対象濾過膜の気体流量と圧力との関係であるドライフローカーブを作成する。
(3)前記ウエットフローカーブにおける気体流量が、前記ドライフローカーブにおける気体流量の90%になる圧力をP_(90)としたとき、前記測定対象濾過膜の孔径Aは下記式(I)で求められる。
A=4γ/P_(90) (I)」
(下線は請求人が付与したもので補正箇所を示している。)

(1)本件補正後の「二つに分かれて形成された筐体のうちの1つに固定されたモジュールキャップから露出するように該モジュールキャップに固定された第一の濾過膜」(以下、「特定事項甲」という。)の技術的意義について
特定事項甲の「二つに分かれて形成された筐体」は、その文言上は、本願明細書に添付された【図1】【図2】に示されるように、「第一の濾過膜が配置された」(【0040】)筐体と「第二の濾過膜が配置された」(【0051】)筐体との「二つ」の「筐体」を意味するものとも考え得る。
しかしながら、審判請求の請求理由を補充する手続補正書の「3.本願発明が特許されるべき理由 (2)補正の根拠」には、「平成24年1月20日付けの手続補正書による補正は、補正前の請求項1に記載の「筐体内に配置された第一の濾過膜」について構成を限定したものに相当します。すなわち、当該補正は、「筐体内に配置された第一の濾過膜」という構成について、第一の濾過膜の筐体内における配置形態を概念的に下位のものにしたものに相当します。当該補正の根拠は、明細書段落[0041]?[0042]、及び出願図面の図1にあります。明細書段落[0041]には、第一の濾過膜の実施形態である中空糸膜がモジュールキャップに結合されている形態が説明されています。また、明細書段落[0042]には、中空糸膜が結合されたモジュールキャップが二つに分かれて形成された筐体で覆われている形態が説明されています。また、図1に、モジュールキャップが二つに分かれて形成された筐体のうちの1つに固定されている形態、及び第一の濾過膜がモジュールキャップから露出するようにモジュールキャップに固定されている形態が明確に記載されています。」と記載されている。
また、同「3.本願発明が特許されるべき理由 (4)拒絶理由1について」には、「第一の濾過膜と筐体の配置形態を「二つに分かれて形成された筐体のうちの1つに固定されたモジュールキャップから露出するように該モジュールキャップに固定された第一の濾過膜」という構成とすることにより、第一の濾過膜の洗浄時に第一の濾過膜を容易に筐体から取り出すことができるとともに、筐体を二つに外すだけで第一の濾過膜を筐体内から容易に取り外して洗浄することができるようにしたものであります。」とも記載されている。
これらの記載から、特定事項甲の「二つに分かれて形成された筐体」は「第一の濾過膜」の「筐体」であり、特定事項甲は、「図1」に示されるように、「モジュールキャップが二つに分かれて形成された筐体のうちの1つに固定されている形態、及び第一の濾過膜がモジュールキャップから露出するようにモジュールキャップに固定されている形態」を意味するものであり、「第一の濾過膜が配置された」筐体と「第二の濾過膜が配置された」筐体との「二つ」の「筐体」を意味するものではないということができる。
(2)本件補正について
上記のことを踏まえると、本件補正は、補正前の「筐体内に配置された第一の濾過膜」を、補正後の「二つに分かれて形成された筐体のうちの1つに固定されたモジュールキャップから露出するように該モジュールキャップに固定された第一の濾過膜」とすることを含むもので、これは、「第一の濾過膜」の配置された「筐体」内での「第一の濾過膜」の配置についてさらに詳細に規定するものであるから、請求項の記載を限定的に減縮することを目的とするものということができる。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の規定を満たすので、同条第5項の規定に基づき補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて以下「2.」で検討する。

2.独立特許要件
2-1.補正発明について
補正後の請求項1に係る発明は、平成24年1月20日付けの特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載される事項によって特定される次のとおりのものである(以下、「補正発明」という。)。
「【請求項1】
二つに分かれて形成された筐体のうちの1つに固定されたモジュールキャップから露出するように該モジュールキャップに固定された第一の濾過膜と、該第一の濾過膜の下流側に設けられた第二の濾過膜とを有する浄水器であって、
該第一の濾過膜は該筐体内から取り出して洗浄することが可能であり、
以下の手順にて測定される、該第一の濾過膜の孔径AをA1、該第二の濾過膜の孔径AをA2としたとき、A1≦A2である浄水器。
孔径Aの測定手順
(1)表面張力がγの液体に濡らした状態での測定対象濾過膜の気体流量と圧力との関係であるウエットフローカーブを作成する。
(2)乾燥状態での前記測定対象濾過膜の気体流量と圧力との関係であるドライフローカーブを作成する。
(3)前記ウエットフローカーブにおける気体流量が、前記ドライフローカーブにおける気体流量の90%になる圧力をP_(90)としたとき、前記測定対象濾過膜の孔径Aは下記式(I)で求められる。
A=4γ/P_(90) (I)」

2-2.刊行物の記載
(1)原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用され本願優先権主張日前に頒布された特開2000-439号公報(以下、「刊行物1」という。)には次の事項が記載されている。
(刊1-ア)「【請求項1】中空糸膜型ろ過膜モジュールにおいて、膜透過側に該中空糸膜の細孔径より孔径の大きいろ過材料からなるフィルター部材を組み入れて、中空糸膜ろ過液を該フィルター部材で濾過されるように構成したことを特徴とする中空糸膜型ろ過膜モジュール。」(【特許請求の範囲】)
(刊1-イ)「【発明の属する技術分野】本発明は流体分離用中空糸膜モジュールに関するものである。さらに詳しくは、工業用水や水道水の浄水処理に使用する中空糸膜モジュールに関し、特に水道浄水処理に使用する空糸膜モジュール(当審注:「中空糸膜モジュール」の誤記と認める。以下、「中空糸膜モジュール」と記す。)に関するものである。
【従来の技術】膜分離法は、省エネルギー、省スペース、省力化および製品の品質向上等の特徴を有するため、適用分野を拡大しながら普及している技術である。膜分離法には、逆浸透、限外ろ過、精密ろ過、ガス分離、血液浄化、およびパーベーパレーション等の方法がある。また、分離膜の形態には、中空糸膜、平膜、および管状膜等があり、上記の各分離対象物の性質や特徴に応じて使い分けられている。
従来、精密ろ過の分野では、小型のディスクフィルターや平膜プリーツ型カートリッジフィルターとして比較的小容量の処理の、かつ比較的清澄な水溶液を分離・ろ過する目的のものが使用されてきている。また、限外ろ過の分野では、超純水の製造や食品製造および清涼飲料の製造等に平膜ろ過装置や中空糸型膜モジュールが使用されてきた。」(【0001】?【0003】)
(刊1-ウ)「しかし、このような目的で使用される場合、中空糸膜モジュールには中空糸膜が破談断して原水が膜ろ過粋(当審注:「膜ろ過水」の誤記と認める。以下、「膜ろ過水」と記す。)に混入する可能性が存在する。通常の水質の評価項目、例えば、濁度に対しては多少の中空糸膜が破断してもほとんど問題になる恐れはないが、クリプトスポリジウムの場合には、その強い感染力のために極く少数の中空糸膜が破断しても問題となることがある。
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、このような従来の中空糸膜型モジュールのもつ欠点を解決した、中空糸膜が破断してもクリプトスポリジウムに代表される病原性原虫などの微生物がもれ込むことのない中空糸膜型ろ過膜モジュールおよび工業用または水道水用の水の製造方法を提供することにある。」(【0007】、【0008】)
(刊1-エ)「・・・(8)ろ過材料の平均孔径が、0.03μm以上4.0μm以下であること、好ましくは0.05μm以上2.0μm以下であること、さらに好ましくは0.1μm以上1.0μm以下であること。
また、本発明においては、原水を中空糸膜に通じて得られたろ過液を、前記中空糸膜の平均細孔径よりも大きい平均孔径を有するフィルター部材を通過させることにより工業用水または水道水用の水の製造方法を提供するものであり、前記いずれかの中空糸膜型モジュールの中空糸膜に原水を通じ、フィルター部材から透過した水を取り出すことを特徴とする工業用または水道水の水の製造方法を提供するものである。」(【0009】、【0010】)
(刊1-オ)「図1は、U字型に束ねた中空糸膜2を、膜モジュールの外筒1に挿入し、外筒の端部で中空糸膜束をポッティング材3で接着・固定し、中空糸膜の開口部端面4に接して、フィルター部材5を組み入れて膜ろ過水の集水用のモジュールキャップ8を取り付けた構造をした中空糸膜型ろ過膜モジュールの例を示している。図1に示した中空糸膜型ろ過膜モジュールの使用方法の1例は、次の通りである。すなわち、濁質分を含む原水は、原水供給ノズル10から膜モジュールに導入され、中空糸膜の外側から内側に膜を透過してろ過される。ろ過された膜ろ過水は中空糸膜の中空部内を流れて開口部端面4から集水部7を通って膜モジュールの膜ろ過水出口ノズル6から取り出される。原水中の濁質は中空糸膜の外表面上に捕捉され堆積する。中空糸膜の外表面上に堆積した濁質のケーク層が厚くなってろ過抵抗が増大し、ろ過に要する差圧が所定の値に達したらば、原水の供給を停止して、必要に応じて、一定量のろ過水をノズル6から逆流させて逆圧洗浄し、さらにノズル11から空気を導入して空気の泡と泡の上昇に伴なって発生する水の上昇流で中空糸膜を揺動させて濁質分からなるケーク層を物理的に除去する。膜ろ過水は、中空糸膜の開口部から集水部に出た所に置かれた中空糸膜の細孔径より孔径の大きいろ過材料からなるフィルター部材5を通過して膜モジュールの透過水出口ノズル6から、膜モジュールの外部に取り出される。」(【0012】)
(刊1-カ)「フィルター部材を構成するろ過材料は、通常、限外ろ過膜材料または精密ろ過膜材料が使用される。本発明の目的と効果からすれば、精密ろ過膜材料が好ましい。フィルター部材の構成は、図4に示す構成のもの、あるいは図5、またさらに、図6に示すリーフディスクフィルターを複数組み合わせたフィルター部材等のいずれでもよい。図4は、中空糸膜束37の開口部端面40にパッキン39-1を置いてろ過材料41と密接させ、該ろ過材料とろ過圧による該ろ過材料の変形を防止する押さえ部材42とパッキン39-2で密接させ、膜モジュールの集水用キャップを押さえ部材42とパッキン39-3を介して密接させた構造をしている。・・・」(【0014】)
(刊1-キ)「・・・通常、人への感染で問題になるクリプトスポリジウムには2種類あって、楕円体状をしている。小型のもので、(4.5?5.4)?(4.2?5.0)μm、大型の種類で(6.6?7.9)?(5.3?6.5)μmと報告されており・・」(【0021】)
(刊1-ク)「【符号の説明】
1:中空糸型ろ過膜モジュール外筒
2:中空糸膜
3:接着固定部(ポッティング部)
4:中空糸膜ポッティング部中空糸膜開口端面
5:フィルター部材
6:膜ろ過水取り出し口
7:膜ろ過水集水部
8:膜ろ過水集水用モジュールキャップ
9:パッキン
10A:物理洗浄空気放出ノズル
10B:原水供給ノズル
11:物理洗浄空気導入口
12:中空糸膜
13:接着固定部(ポッティング部)
14:中空糸膜ポッティング部中空糸膜開口端面
15:フィルター部材
16:膜ろ過水集水部
17:膜ろ過水取り出し口
18:膜ろ過水集水用モジュールキャップ
19:パッキン
20:ノズル
21:中空糸型ろ過膜モジュール外筒
22:中空糸膜
23:接着固定部(ポッティング部)
24:中空糸膜ポッティング部中空糸膜開口端面
25:フィルター部材
26:膜ろ過水集水部
27:膜ろ過水取り出し口
28:膜ろ過水集水用モジュールキャップ
29:パッキン
30および30’:ノズル
31:中空糸型ろ過膜モジュール外筒
32:閉塞端部
33:物理洗浄用エアー吹出し孔付き中心パイプ
34:物理洗浄用エアー導入孔
35:中空糸型ろ過膜モジュール外筒
36ノズル
37:中空糸膜
38:接着固定部(ポッティング部)
39-1:パッキン
39-2:パッキン
39-3:パッキン
40:中空糸膜ポッティング部中空糸膜開口端面
41:ろ過材料
42:押さえ部材
43:膜ろ過水集水部
44:膜ろ過水取り出し口
45:膜ろ過水集水用モジュールキャップ
46:中空糸型ろ過膜モジュール外筒
47:ノズル
48:中空糸膜
49:接着固定部(ポッティング部)
50-1:パッキン
50-2:パッキン
51:フランジ
52:中空糸膜ポッティング部中空糸膜開口端面
53:押さえ部材
54:ろ過材料
55:膜ろ過水取り出し口
56:膜ろ過水集水部
57:膜ろ過水集水用モジュールキャップ
58:中空糸型ろ過膜モジュール外筒
59:ノズル
60:中空糸膜
61:接着固定部(ポッティング部)
62:O?リング
63:中空糸膜ポッティング部中空糸膜開口端面
64:リーフディスクフィルター
65:リーフディスクフィルター用スペーサー
66:O?リング
67:リーフディスクフィルター固定・集水用中心パイプ
68:膜ろ過水集水用モジュールキャップ」(【符号の説明】)
(刊1-ケ)「中空糸型ろ過膜モジュールの1例の全体構造の断面図」と題された【図1】(7頁)は、以下のようであり、同図から、(刊1-オ)の記載事項を窺うことができる。

(刊1-コ)「中空糸型ろ過膜モジュールのフィルター部材装着部の断面図」と題された【図4】(7頁)は、以下のようであり、(刊1-カ)の記載事項を窺うことができ、また、(刊1-ク)の記載を参照すれば、同図から、「中空糸型ろ過膜モジュール外筒35」に「膜ろ過水集水用モジュールキャップ45」が嵌合していることがみてとれる。

(2)前置報告書に周知技術として引用され本願優先権主張日前に頒布された実願昭62-173801号(実開平1-83402号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には次の事項が記載されている。
(刊2-ア)「[産業上の利用分野]
本考案は外圧濾過型中空糸膜モジュールに関するものであり、詳しくは濾過液側の汚染の極めて少ない膜エレメント交換可能な外圧濾過型中空糸膜モジュールに関するものである。」(2頁2?6行)
(刊2-イ)「[考案の目的]
本考案は、従来の中空糸膜モジュールでは達成できなかった濾過液側の汚染の極めて小さいモジュールとして開発された膜部とキャップ体を一体化させた構造をもとに、さらに改良することにより濾過性能の低下を防ぎ、洗浄性に優れた構造の外圧濾過式中空糸膜モジュールを得ることを目的としたものである。」(6頁7?14行)
(刊2-ウ)「本考案のモジュールで重要なことは、膜エレメントはキャップ体と接着固定されている事、キャップ体はフランジを有し、又ハウジングもフランジを有し、双方のフランジ部分にて膜エレメントとハウジングが簡単に着脱できる事に加えて、キャップ体が、フランジ部分を介して濾過液出口と反対側に、中空糸膜の開口端側の固着部を収納、固定するための部材、即ちキャップ体の周辺をとり囲む周脚を有していることである。」(7頁11?19行)
(刊2-エ)「本考案の外圧濾過型中空糸膜モジュールの一態様例を示す断面図」と題された第1図は以下のようであり、同図から、(刊2-ウ)の記載事項を窺うことができる。


(3)原査定の拒絶の理由に引用文献6として引用され本願優先権主張日前に頒布された特開2003-71443号公報(以下、「刊行物3」という。)には次の事項が記載されている。
(刊3-ア)「【発明の属する技術分野】本発明は、浄水器等に着脱可能に収納されて、水道水等を浄化する浄水カートリッジ、およびこの浄水カートリッジが収納された浄水器に関する。」(【0001】)
(刊3-イ)「【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。図1は、本発明の浄水カートリッジの一例を示す断面図である。この浄水カートリッジ10は、大きく分けて中空糸膜16による濾過処理を行う中空糸膜濾過体18と吸着材15による吸着処理を行う吸着濾過体19との2つの部分から構成されるものである。具体的には、U字状に屈曲された複数の中空糸膜16の両端部が中空糸膜16端部の開口状態を保つようにポッティング材17によって集束された中空糸膜エレメント21と、中空糸膜16を囲う筒状の中空糸膜用ケース22と、中空糸膜16端部が開口している中空糸膜エレメント21の前方端面を覆い、中央部に浄水出口12が形成されたキャップ23と、中空糸膜用ケース22に接続された吸着濾過体19とを具備して概略構成されるものである。」(【0012】)
(刊3-ウ)「中空糸膜エレメント21は、その接続部材25のねじ26が中空糸膜用ケース22の前方端部近傍の内壁面に螺刻されためねじ30(接続手段)と螺合することにより、中空糸膜16の一次側と二次側との間の液密状態を保つように、かつ着脱可能に、中空糸膜用ケース22に取り付けられている。また、キャップ23は、その内壁面に螺刻されためねじ31が中空糸膜エレメント21の接続部材25のねじ27と螺合することにより、着脱可能に中空糸膜エレメント21に取り付けられている。」(【0014】)
(刊3-エ)「中空糸膜エレメント21の中空糸膜16が目詰まりを起こした場合の洗浄は、例えば以下のようにして行われる。まず、浄水器から浄水カートリッジ10を取り外す。ついで、中空糸膜エレメント21の接続部材25と中空糸膜用ケース22とを互いに逆方向に回転させ、中空糸膜エレメント21と中空糸膜用ケース22とを分離し、露出した中空糸膜16を汚れのない水につけて、中空糸膜16をもみ洗いする。この時、塩酸、クエン酸、酢酸、家庭用洗剤、さらし粉、漂白剤などの洗浄に有効な薬品を使用して薬品洗浄を行ってもよい。・・・」(【0022】)
(刊3-オ)「本発明の浄水カートリッジの一例を示す断面図」と題された【図1】(6頁)は以下のようであり、同図から、(刊3-イ)(刊3-ウ)の記載事項を窺うことができる。

(4)本願優先権主張日前に頒布された「1982 ANNUAL BOOK OF ASTM STANDARDS」、ASTM International、Part31 water、1365?1371頁に記載された「Standard Test Method for PORE SIZE CHARACTERISTICS OF MEMBRANE FILTERS FOR USE WITH AEROSPACE FLUIDS」(当審訳:気圏における流体に対して用いられる膜濾過装置の孔径の特性のための標準試験方法)に関する規格である「ASTM F316-80」には次の事項が記載されている。
(刊4-ア)「4.Summary of Method
4.1 A filter wet with liquid exhibits properties similar to those of an array of liquid filled capillaries. The minimum air pressure to blow a bubble equals the capillary pressure of the liquid in the largest limiting pore, and so may be used to calculate its equivalent diameter.
Note 3-The pressure required to blow the first bubble detectable by its rise through a layer of liquid covering the filter is called the ''bubble point.''」(1365頁左欄下から3行?同頁右欄7行)
[当審訳:4.方法の概要
4.1 液体で濡れた膜は、液体で満たされた毛細管の配列と同様の特性を示す。気泡を吹き出すための最小空気圧は、最大孔径の毛細管の液圧に等しく、相当直径の計算に利用することができる。
注3-膜を覆っている液体の層をとおして起こることにより検知できる最初の気泡を吹き出すのに要求される圧力は、「バブルポイント」と称される。]
(刊4-イ)「8.Calculations
8.1 If the liquid is known to wet the membrane so perfectly that the cosine of the contact angle is within one repeatability unit(18.1)of 1.000(see Note 8),calculate the maximum pore size by the following equation
d=Cγ/p
where:
d=limiting diameter,μm,
γ=surface tension, mN/m
p=pressure, Pa or cmHg, and
C=constant(C=4000 when p is in Pa, 3.00 when p is in cmHg)」
(1366頁右欄3?15行)
[当審訳:8.計算
8.1 もしその液体がその膜を完全に濡らすことが知られていれば、接触角のコサインは再現性よく1.000となり、以下の式に従って最大孔径を計算する。
d=Cγ/p
ここで、
d=最大孔径,μm,
γ=液体の表面張力, mN/m
p=圧力,Pa または cmHg,そして
C=定数(pが[Pa]ならC=4000、pが[cmHg]ならC=3.00)]
(刊4-ウ)「15.Procedure for Two Holders(Fig.7)
15.1 Place a dry filter in a holder to be used exclusively by dry filters.
15.2 Wet a filter(same type or lot filter as mensioned in 15.1)in mineral oil and place it in a holder to be used exclusively by wet filters.
15.3 Apply air pressure to the dry filter and plot air flow versus air pressure.
15.4 Change to a two-position valve to apply air pressure to the wet filter holder, and record the first air flow as detected by the capillary tube as the bubble point. Switch to rotameters and plot fluid-wet air flow versus air pressure.」(1367頁右欄25?37行)
[当審訳:15.二つホルダー型の試験方法
15.1 もっぱらドライフィルターに使用されるホルダーに、ドライフィルターを設置する。
15.2 濾過膜(15.1に述べたのと同じ型または同じロット)を鉱油で濡らして、もっぱらウエットフィルターに使用されるホルダーに、ウエットフィルターを設置する。
15.3 ドライフィルターに空気圧を適用して、空気流量と空気圧の関係をプロットする。
15.4 切替えバルブを切り換えて、空気圧をウエットフィルターのホルダー側へ向けて、最初の空気流れが毛細管で検知されたら、それをバブルポイントとして記録する。流量計へ接続し、ウエットフィルターの空気流量と空気圧の関係をプロットする。」
(刊4-エ)「16.Calculation of Mean Flow Pore Size
16.1 Record the minimum pressure for air passage(bubble point pressure). Calculate the maximum pore size from the formulas in Table 2.
16.2 Using the graph just constructed, draw the line(or curve)corresponding to one half the dry air-flow rate of the tested filter. Find the intersection of this(one-half dry-flow)line and the wet-flow line(or curve). Determine the pressure coordinate of the intersection and substitute into the pressure-pore size formula.(See Table 2 for mineral oil.)」(1367頁右欄38?50行)
[当審訳:16.平均孔径の計算
16.1 空気の通過できる最小圧力(バブルポイント圧力)を記録する。表2の公式から最大孔径を計算する。
16.2 作成されたグラフを使って、ドライフィルターとして試験した濾過膜について、その空気流量の1/2となる線を引く。この(1/2ドライフロー)線とウエットフロー線の交点を見つける。交点の圧力を決定し、圧力と孔径の公式に代入する。(鉱油についての表2を見よ。)]
(刊4-オ)「Fig. 8 Example of Mean Flow Pore Determination」(当審訳:図8 平均孔径の決定の例)と題された図8(1371頁)には、以下に示すようなグラフが示されている。
ここで、図中の破線と「P_(90)」は当審で加筆したものである。


2-3.刊行物1に記載された発明の認定
(1)刊行物1の記載事項(刊1-ア)(以下、単に「(刊1-ア)」のように記載する。)に記載されるように、刊行物1の請求項1には、
「中空糸膜型ろ過膜モジュールにおいて、膜透過側に該中空糸膜の細孔径より孔径の大きいろ過材料からなるフィルター部材を組み入れて、中空糸膜ろ過液を該フィルター部材で濾過されるように構成した中空糸膜型ろ過膜モジュール。」についての発明が記載されているといえる。
(2)上記「中空糸膜型ろ過膜モジュール」においては、(刊1-ウ)、(刊1-エ)に記載されるように「中空糸膜」が破断した場合に「クリプトスポリジウムに代表される病原性原虫などの微生物」が「膜ろ過水」に「混入」しないようにするために、「原水を中空糸膜に通じ」て「ろ過液」を得るのに、(刊1-エ)(刊1-キ)より、上記「微生物」の大きさよりは小さく、「前記中空糸膜の平均細孔径よりも大きい平均孔径を有するフィルター部材を通過させる」ものであり、「フィルター部材」は「中空糸膜」の「膜透過側」である「中空糸膜」の下流側に存在するものであるといえる。
(3-1)そして「中空糸膜型ろ過膜モジュール」の構造についてみると、(刊1-オ)の記載事項と(刊1-ク)の視認事項には、「中空糸膜型ろ過膜モジュール」は全体構造として「U字型に束ねた中空糸膜2を、膜モジュールの外筒1に挿入し、外筒の端部で中空糸膜束をポッティング材3で接着・固定し、中空糸膜の開口部端面4に接して、フィルター部材5を組み入れて膜ろ過水の集水用のモジュールキャップ8を取り付けた構造」が示されており、「U字型に束ねた中空糸膜2」が「ポッティング材3」で接着・固定された「外筒の端部」に、「中空糸膜の開口部端面4」に接するように「フィルター部材5」を組み入れた「膜ろ過水の集水用のモジュールキャップ8」を取り付けた「中空糸膜型ろ過膜モジュール」の全体構造を理解することができる。
(3-2)ここで、(刊1-オ)(刊1-ケ)(図1)と(刊1-カ)(刊1-コ)(図4)とで、両者で同一部材を指示すると考えられるが符号又は名称が一致しないものがあるが、(刊1-ク)の【符号の説明】で符号を比較すると名称が一致する、あるいは部材の設置位置と部材名称の示す当該部材の機能から、次のものは互いに同じ又は共通する部材とみることができる。
ただし、(刊1-オ)(刊1-カ)で記載されず(刊1-ケ)(図1)(刊1-コ)(図4)に記載される部材の名称は上記【符号の説明】のものを記載した。また、()内は、上記各部材に対応する上記【符号の説明】での(刊1-コ)の【図4】に記載された符号の用語である。
・「膜モジュールの外筒1」と「中空糸型ろ過膜モジュール外筒35」(「中空糸型ろ過膜モジュール外筒35」)
・「U字型に束ねた中空糸膜2」と「中空糸膜束37」(「中空糸膜37」)
・「ポッティング材3」と「接着固定部(ポッティング部)38」(「接着固定部(ポッティング部)38」)
・「開口部端面4」と「中空糸膜束37の開口部端面40」(「中空糸膜ポッティング部中空糸膜開口端面40」)
・「フィルター部材5」と「フィルター部材を構成するろ過材料」と「ろ過材料41」(「ろ過材料41」)
・「膜ろ過水出口ノズル6」と「ノズル6」と「透過水出口ノズル6」と「膜ろ過水取り出し口44」(「膜ろ過水取り出し口44」)
・「集水部7」と「膜ろ過水集水部43」(「膜ろ過水集水部43」)
・「膜ろ過水の集水用のモジュールキャップ8」と「膜モジュールの集水用キャップ」(「膜ろ過水集水用モジュールキャップ45」)
・「パッキン9」と「パッキン39-1」「パッキン39-2」「パッキン39-3」(「パッキン39-1」「パッキン39-2」「パッキン39-3」)
(3-3)そこで、上記(3-1)の下線を引いた「中空糸膜型ろ過膜モジュール」の全体構造について、上記()内の用語で書き直せば、
「中空糸膜型ろ過膜モジュール」の全体構造は、「中空糸膜37」が「接着固定部(ポッティング部)38」で接着・固定された「中空糸型ろ過膜モジュール外筒35の端部」に、「中空糸膜ポッティング部中空糸膜開口端面40」に接するように「ろ過材料41」を組み入れた「膜ろ過水集水用モジュールキャップ45」を取り付けた構造をなしているといえる。
(3-4)そして、上記全体構造について、「膜ろ過水集水用モジュールキャップ45」と「中空糸型ろ過膜モジュール外筒35」と「中空糸膜37」の取付構造に着目すれば、当該構造が詳細に示された図4に関する(刊1-カ)の記載事項と(刊1-ケ)の視認事項をみると、「中空糸膜束37の開口部端面40にパッキン39-1を置いてろ過材料41と密接させ、該ろ過材料とろ過圧による該ろ過材料の変形を防止する押さえ部材42とパッキン39-2で密接させ、膜モジュールの集水用キャップを押さえ部材42とパッキン39-3を介して密接させた構造」が示されており、これを上記(3-2)()内の用語で書き直せば、
「中空糸膜37の中空糸膜ポッティング部中空糸膜開口端面40にパッキン39-1を置いてろ過材料41と密接させ、該ろ過材料とろ過圧による該ろ過材料の変形を防止する押さえ部材42とパッキン39-2で密接させ、膜ろ過水集水用モジュールキャップ45を押さえ部材42とパッキン39-3を介して密接させた構造」が示されているといえる。
(3-5)上記(3-3)の下線部、(3-4)の下線部及び(刊1-コ)の視認事項から、「中空糸膜型ろ過膜モジュール」は、「中空糸膜37」が「接着固定部(ポッティング部)38」で接着・固定された「中空糸型ろ過膜モジュール外筒35の端部」に、複数の「パッキン」と「押さえ部材42」で「ろ過材料41」を密接した「膜ろ過水集水用モジュールキャップ45」が、「中空糸膜37の中空糸膜ポッティング部中空糸膜開口端面40」に「ろ過材料41」が密接するように嵌合された構造となっているということができる。
(3-6)ここで(刊1-ア)の記載について再掲すれば、刊行物1には、「中空糸膜型ろ過膜モジュールにおいて、膜透過側に該中空糸膜の細孔径より孔径の大きいろ過材料からなるフィルター部材を組み入れて、中空糸膜ろ過液を該フィルター部材で濾過されるように構成した中空糸膜型ろ過膜モジュール。」の発明が記載されており、上記(3-5)の記載を参酌すれば、複数の「パッキン」と「押さえ部材42」と「ろ過材料41」で「フィルター部材」を構成しているといえるものであり、(刊1-ア)の記載を上記(3-5)の記載を踏まえて、文章を整合させると、
刊行物1には、
「中空糸膜が接着固定部(ポッティング部)で接着・固定された中空糸型ろ過膜モジュール外筒の端部に、フィルター部材を密接した膜ろ過水集水用モジュールキャップが、中空糸膜の中空糸膜ポッティング部中空糸膜開口端面にフィルター部材のろ過材料が密接するように嵌合された構造の中空糸膜型ろ過膜モジュールにおいて、前記フィルター部材のろ過材料は中空糸膜の膜透過側にあって中空糸膜の細孔径より孔径が大きく、中空糸膜ろ過液を該フィルター部材で濾過されるように構成した中空糸膜型ろ過膜モジュール。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

2-4.補正発明と引用発明との対比
(1)補正発明は「浄水器」に係る発明であり「第一の濾過膜」「第二の濾過膜」でろ過を行う装置ということができ、引用発明は「中空糸膜型ろ過膜モジュール」の発明であり「中空糸膜」「ろ過材料」で「浄水器」と同様にろ過を行う装置ということができ、引用発明では「中空糸膜」の「膜透過側」すなわち下流側に「ろ過材料」が設けられ、「ろ過材料」の孔径は「中空糸膜」の細孔径より大きいから、引用発明の「中空糸膜」「ろ過材料」は、それぞれ補正発明の「第一の濾過膜」「第二の濾過膜」に相当するといえるものであり、補正発明と引用発明とはろ過を行う装置という点で共通するものであるといえる。
(2)すると、「中空糸膜」の孔径AをA1、「ろ過材料」の孔径AをA2とすれば、A1<A2であって、これは補正発明の「第一の濾過膜の孔径AをA1、第二の濾過膜の孔径AをA2としたとき、A1≦A2」と「A1<A2」の点で共通するといえる。
(3)以上のことから、補正発明と引用発明とは、
「第一の濾過膜の下流側に設けられた第二の濾過膜を有するろ過を行う装置であって、
該第一の濾過膜の孔径AをA1、該第二の濾過膜の孔径AをA2としたとき、A1<A2であるろ過を行う装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>補正発明が「二つに分かれて形成された筐体のうちの1つに固定されたモジュールキャップから露出するように該モジュールキャップに固定された第一の濾過膜」の構造を有し、「該第一の濾過膜は該筐体内から取り出して洗浄することが可能であ」るのに対して、引用発明では「中空糸膜が接着固定部(ポッティング部)で接着・固定された中空糸型ろ過膜モジュール外筒の端部に、フィルター部材を密接した膜ろ過水集水用モジュールキャップが、中空糸膜の中空糸膜ポッティング部中空糸膜開口端面にフィルター部材のろ過材料が密接するように嵌合された構造の中空糸膜型ろ過膜モジュール」における「中空糸膜」の構造を有する点
<相違点2>補正発明が「浄水器」に係る発明であるのに対して、引用発明は「中空糸膜型ろ過膜モジュール」に係る発明である点
<相違点3>補正発明では「孔径Aの測定手順」として
「(1)表面張力がγの液体に濡らした状態での測定対象濾過膜の気体流量と圧力との関係であるウエットフローカーブを作成する。
(2)乾燥状態での前記測定対象濾過膜の気体流量と圧力との関係であるドライフローカーブを作成する。
(3)前記ウエットフローカーブにおける気体流量が、前記ドライフローカーブにおける気体流量の90%になる圧力をP_(90)としたとき、前記測定対象濾過膜の孔径Aは下記式(I)で求められる。
A=4γ/P_(90) (I)」を特定するのに対して、引用発明はそのような特定のない点

2-5.相違点の検討
2-5-1.相違点1について
(1)補正発明の「二つに分かれて形成された筐体のうちの1つに固定されたモジュールキャップから露出するように該モジュールキャップに固定された第一の濾過膜」の構造について、本願明細書【図1】をみると、「二つに分かれて形成された筐体31」(【0042】)の「固定バンド33」より上側の部分の筐体(以下、「上側筐体」という。同様に、「固定バンド33」より下側の部分の筐体を、以下、「下側筐体」という。)に、「U字状に屈曲された複数の中空糸膜16の両端部が開口状態を保つようにポッティング材17によって集束された状態で、保護ネット18とともに筒状の中空糸膜用ケース22に固定」(【0041】)された「第一の濾過膜10」に「弾性体19、20を介して、モジュールキャップの溝21と中空糸膜用ケース22の突起24によって結合」(【0041】)されている「モジュールキャップ23」が、「弾性体20」を介して固定されていることがみてとれる。(補正発明の特定事項も「固定」であり、単なる嵌合では「中空糸膜16」は図面上の位置を維持できず鉛直方向に落下してしまう。)
ここで、「この例では、第一の濾過膜10は、取り出すことが可能となっている。」(【0044】)から、「固定バンド33」をはずして上側筐体と下側筐体を分離するとき、上側筐体と「モジュールキャップ23」は一体となって下側筐体から分離されるといえる。
すると、補正発明の「二つに分かれて形成された筐体のうちの1つに固定されたモジュールキャップから露出するように該モジュールキャップに固定された第一の濾過膜」は、
「二つに分かれて形成された上側筐体、下側筐体のうちの1つである上側筐体に固定されたモジュールキャップから露出するように該モジュールキャップに固定された第一の濾過膜」とみることができるところ、
上側筐体と「モジュールキャップ23」は一体となって下側筐体から分離されることから、上側筐体と「モジュールキャップ23」とを別体とすることは、製造の容易性、清掃の容易性等の一般的な技術的意義を有するのみで格別の技術的意義を有するものではないということができる。
(2-a)刊行物2には(刊2-ア)に記載されるように「膜エレメント交換可能な外圧濾過型中空糸膜モジュール」について示されている。
(2-b)その具体的な構造は、(刊2-ウ)(刊2-エ)に記載され、視認されるように、「中空糸膜の開口端側の固着部を収納、固定するための部材、即ちキャップ体の周辺をとり囲む周脚」を介して「キャップ体と接着固定」されている「膜エレメント」が、「ハウジング」から「簡単に着脱できる」ものであり、当該構造を採ることによって(刊2-イ)に記載されるように「洗浄性に優れた構造の外圧濾過式中空糸膜モジュールを得る」ことができるものである。
そして、該「モジュール」としての容器すなわち筐体は「キャップ体」と「ハウジング」の二つに分かれて形成されているということができ、その内の一方である「キャップ体」に、「キャップ体」から「膜エレメント」が露出するように固定され、「膜エレメント」を筐体の他方である「ハウジング」から取り出して洗浄できることが、刊行物2には示されているものといえる。
(3-a)また、刊行物3には(刊3-ア)に記載されるように「水道水等を浄化する浄水カートリッジ、およびこの浄水カートリッジが収納された浄水器」について示されている。
(3-b)その具体的な構造は、(刊3-イ)?(刊3-オ)に記載され、視認されるように、「U字状に屈曲された複数の中空糸膜16の両端部が中空糸膜16端部の開口状態を保つようにポッティング材17によって集束された中空糸膜エレメント21」と「中空糸膜16を囲う筒状の中空糸膜用ケース22」と「中空糸膜16端部が開口している中空糸膜エレメント21の前方端面を覆い、中央部に浄水出口12が形成されたキャップ23」を含み、「キャップ23は、その内壁面に螺刻されためねじ31が中空糸膜エレメント21の接続部材25のねじ27と螺合することにより、着脱可能に中空糸膜エレメント21に取り付けられている」ので、
「中空糸膜エレメント21の接続部材25と中空糸膜用ケース22とを互いに逆方向に回転させ」ることで、「キャップ23」が螺合した「中空糸膜エレメント21」に「集束」された「U字状に屈曲された複数の中空糸膜16」を「中空糸膜用ケース22」から「着脱可能」とできる構造を採ることによって、(刊3-エ)に記載されるように「中空糸膜エレメント21と中空糸膜用ケース22とを分離」したら、「露出した中空糸膜16を汚れのない水につけて、中空糸膜16をもみ洗いする」ことができるものである。
そして、「カートリッジ」としての容器すなわち筐体は「キャップ23」と「中空糸膜用ケース22」の二つに分かれて形成されているということができ、その内の一方である「キャップ23」に、「キャップ23」から「中空糸膜エレメント21」が露出するように固定され、「中空糸膜エレメント21」を筐体の他方である「中空糸膜用ケース22」から取り出して洗浄できることが、刊行物3には示されているものといえる。
(4)以上にみたように、中空糸膜を用いるろ過装置の構造において、中空糸膜を洗浄するために、装置の筐体を二つに分けて、一方に「中空糸膜」を固定し、他方から取り出して「中空糸膜」を洗浄できる構造とすることは周知技術ということができる。
(5)そこで、引用発明の「中空糸膜型ろ過膜モジュール」の「中空糸膜が接着固定部(ポッティング部)で接着・固定された中空糸型ろ過膜モジュール外筒の端部に、フィルター部材を密接した膜ろ過水集水用モジュールキャップが、中空糸膜の中空糸膜ポッティング部中空糸膜開口端面にフィルター部材のろ過材料が密接するように嵌合された構造」について検討する。
当該構造は、「中空糸膜型ろ過膜モジュール」の容器すなわち筐体を「中空糸型ろ過膜モジュール外筒」と「膜ろ過水集水用モジュールキャップ」の二つに分け、「中空糸型ろ過膜モジュール外筒」の「端部」に「膜ろ過水集水用モジュールキャップ」を「嵌合」する構造といえるから、「膜ろ過水集水用モジュールキャップ」、「中空糸型ろ過膜モジュール外筒」は、上記(1)でみた「上側筐体」「下側筐体」にそれぞれ相当するといえるが、「中空糸膜」は「中空糸型ろ過膜モジュール外筒」に固定されるから、「膜ろ過水集水用モジュールキャップ」と「中空糸型ろ過膜モジュール外筒」を分離できても、「膜ろ過水集水用モジュールキャップ」に「中空糸膜」が固定されていて「中空糸膜」が露出されるものではない。
(6)また、「中空糸膜」を露出することについては、刊行物1の(刊1-オ)には「中空糸膜の外表面上に堆積した濁質のケーク層が厚くなってろ過抵抗が増大し、ろ過に要する差圧が所定の値に達したらば、原水の供給を停止して、必要に応じて、一定量のろ過水をノズル6から逆流させて逆圧洗浄し、さらにノズル11から空気を導入して空気の泡と泡の上昇に伴なって発生する水の上昇流で中空糸膜を揺動させて濁質分からなるケーク層を物理的に除去する。」と記載され、「中空糸膜の外表面上に堆積した濁質のケーク層」の処理を、引用発明ではいわゆる「逆洗」と「バブリング」で行っており、「中空糸膜」をろ過装置から取り外して「中空糸膜」を露出して洗浄することは記載されていない。
(7)しかしながら、「逆洗」と「バブリング」のためにはそのための圧力を発生させるポンプ等をはじめとする種々の装置を要し、装置が複雑化し、大型化、高額化することは明らかだから、上記「中空糸膜」をろ過装置から取り外して「中空糸膜」を露出して洗浄するというより簡便な技術手段が周知技術として知られていれば、当該周知技術の適用を指向することは当業者にとって通常のことであり、当該周知技術を適用する十分な動機付けが存在するものといえる。
(8)すると、上記のように中空糸膜を用いるろ過装置の構造において、中空糸膜を洗浄するために、装置の筐体を二つに分けて、一方に「中空糸膜」を固定し、他方から取り出して「中空糸膜」を洗浄できる構造とすることは、上記したように周知技術であるから、これを引用発明の「中空糸膜が接着固定部(ポッティング部)で接着・固定された中空糸型ろ過膜モジュール外筒の端部に、フィルター部材を密接した膜ろ過水集水用モジュールキャップが、中空糸膜の中空糸膜ポッティング部中空糸膜開口端面にフィルター部材のろ過材料が密接するように嵌合された構造」において適用すれば、例えば刊行物2の(刊2-エ)の第1図に示されるように、「中空糸膜の中空糸膜ポッティング部中空糸膜開口端面にフィルター部材のろ過材料が密接」するように「中空糸膜が接着固定部(ポッティング部)で接着・固定」された「フィルター部材を密接した膜ろ過水集水用モジュールキャップ」を、「中空糸膜空糸型ろ過膜モジュール外筒」の筒内に嵌合する構造となし、該「モジュールキャップ」に固定された「中空糸膜」を「中空糸膜空糸型ろ過膜モジュール外筒」から取り出して洗浄するようになし得るものである。
そして、その場合でも「中空糸膜」の「膜透過側」に「ろ過材料」が位置することに変わりはないといえる。
さらに、その際、上記(1)でみたように、該「モジュールキャップ」と一体で機能する、該「モジュールキャップ」とは別体の上側筐体を設けることは、製造の容易性、清掃の容易性等の一般的な技術的意義を有するのみで格別の技術的意義を有するものではない。
(9)したがって、引用発明の「中空糸膜が接着固定部(ポッティング部)で接着・固定された中空糸型ろ過膜モジュール外筒の端部に、フィルター部材を密接した膜ろ過水集水用モジュールキャップが、中空糸膜の中空糸膜ポッティング部中空糸膜開口端面にフィルター部材のろ過材料が密接するように嵌合された構造の中空糸膜型ろ過膜モジュール」における「中空糸膜」を、「二つに分かれて形成された筐体のうちの1つに固定されたモジュールキャップから露出するように該モジュールキャップに固定された第一の濾過膜」とすることに格別の困難性は見いだせない。
(10)以上から、引用発明、刊行物2,3に代表される周知技術及び技術常識に基づいて、相違点1に係る補正発明の特定事項に想到することは当業者の容易に推考し得るところということができる。

2-5-2.相違点2について
(1)(刊1-イ)には、引用発明は「水道浄水処理に使用する中空糸膜モジュール」に関するものであるが、「膜分離法」は種々の分野で使用されており、「比較的小容量の処理の、かつ比較的清澄な水溶液を分離・ろ過する目的のものが使用されてきている」こと、中空糸膜も「膜分離法」で用いられる「分離膜」の一つであることも示されている。
そして、例えば刊行物3の(刊3-ア)に示されるように「中空糸膜」を用いた「浄水器」は周知技術であり、「浄水器」は「比較的小容量の処理の、かつ比較的清澄な水溶液を分離・ろ過する目的」で使用されるものであるから、引用発明の「中空糸膜型ろ過膜モジュール」を「浄水器」に使用することに格別の困難性は見いだせない。
(2)よって、引用発明において相違点2に係る補正発明の特定事項に想到することは当業者の容易に推考し得るところということができる。

2-5-3.相違点3について
(1)刊行物4には、種々の標準試験法に関する著名な規格である「ASTM」において、膜の孔径に関する試験方法を規定する「ASTM F316」についての規定が示されている。
(2)当該規定の試験方法の一例として、(刊4-ウ)には、「ドライフィルターに空気圧を適用して、空気流量と空気圧の関係をプロットする」こと、「空気圧をウエットフィルターのホルダー側へ向けて、最初の空気流れが毛細管で検知されたら、それをバブルポイントとして記録する。流量計へ接続し、ウエットフィルターの空気流量と空気圧の関係をプロットする」ことが記載されている。
(3)(刊4-エ)には、プロットされたグラフを用いて、「空気の通過できる最小圧力(バブルポイント圧力)を記録・・・最大孔径を計算」し、「作成されたグラフを使って、ドライフィルターとして試験した濾過膜について、その空気流量の1/2となる線を引く。この(1/2ドライフロー)線とウエットフロー線の交点を見つける。交点の圧力を決定し、圧力と孔径の公式に代入する。」と記載されている。
(4)ここで測定された圧力から孔径を計算することは、(刊4-イ)に、「液体がその膜を完全に濡らす」場合に、
「d=最大孔径,μm」、「γ=液体の表面張力,mN/m」、「p=圧力,Pa または cmHg」、「C=定数(pが[Pa]ならC=4000」、「d=Cγ/p」と記載され、これらから、
d[μm]=4000×γ[mN/m]/p[Pa]=4×γ[N/m]/p[Pa]となることが示されており、各種液体の表面張力に応じて、計測圧力から孔径を上記記載のd=4γ/pで計算するものである。
(5)そこで、上記(2)によって作成された(刊4-オ)の図8をみると、上記(3)でみた「空気の通過できる最小圧力(バブルポイント圧力)」は、「ウエットフロー線(Wet Flow)」の「バブルポイント圧力(Bubble Point Presurre)」での圧力となることがみてとれる。なお、「バブルポイント圧力」は「ウエットフローカーブにおける気体流量が0となる最大圧力をP_(0)」としたときの圧力といえるから、これに対応する孔径は、本願請求項3に記載の「測定対象濾過膜の孔径C」に相当するということができる。
(6)また(刊4-オ)の図8をみると、上記(3)でみた「ドライフィルターとして試験した濾過膜について、その空気流量の1/2となる線を引く。この(1/2ドライフロー)線とウエットフロー線の交点」は、「(1/2ドライフロー)線(Half Dry Flow)」と「ウエットフロー線(Wet Flow)」との「交点(Intersection)」であり、その圧力が「平均孔径(Mean Flow Pore Pressure)」での圧力となることがみてとれる。なお、「平均孔径(Mean Flow Pore Pressure)」での圧力は、「ウエットフローカーブにおける気体流量が、前記ドライフローカーブにおける気体流量の50%になる圧力をP_(50)」としたときの圧力といえるから、これに対応する孔径は、本願請求項2に記載の「測定対象濾過膜の孔径B」に相当するということができる。
(7)以上から、補正発明の「孔径Aの測定手順」として「(1)表面張力がγの液体に濡らした状態での測定対象濾過膜の気体流量と圧力との関係
であるウエットフローカーブを作成」し、「(2)乾燥状態での前記測定対象濾過膜の気体流量と圧力との関係であるドライフローカーブを作成」し、孔径の計算を「A=4γ/p」(表面張力γ、圧力p)で行うことは、刊行物4に記載の著名な規格である「ASTM F316」に記載されているといえる。
(8)そして補正発明の「(3)前記ウエットフローカーブにおける気体流量が、前記ドライフローカーブにおける気体流量の90%になる圧力をP90としたとき」のP_(90)についてみると、これは(刊4-オ)の図8に当審で加筆した「P_(90)」にあたるものであるが、「ウエットフローカーブにおける気体流量が、前記ドライフローカーブにおける気体流量の90%になる圧力」に対応する孔径をもって濾過膜の孔径を規定しなければならない合理的な理由は本願明細書、意見書、請求理由を補充する手続補正書をみても記載を見いだせない。
すると、「P_(90)」に対応する孔径は、(刊4-オ)の図8と上記計算式より明らかなように、単に「P_(0)」、「P_(50)」に対応する孔径よりも小さい孔径で「濾過膜」を規定するものにすぎず、膜の孔径測定方法の規格として著名な「ASTM F316」を知る当業者にとって格別の技術的意義を有するものとはいえない。
そして、「ASTM F316」による孔径の測定方法が「(1/2ドライフロー)線(Half Dry Flow)」を描くことから「ハーフドライ法」と呼称されることが多く、「ハーフドライ法」は例えば特開2002-273787号公報【0049】、国際公開2002/072248号の再公表公報の12頁等に記載されるように、膜の孔径を求める際には広く一般的に使用される周知技術である。
すると、引用発明において刊行物4に記載の周知技術を適用して、
「孔径Aの測定手順」として「(1)表面張力がγの液体に濡らした状態での測定対象濾過膜の気体流量と圧力との関係であるウエットフローカーブを作成する。
(2)乾燥状態での前記測定対象濾過膜の気体流量と圧力との関係であるドライフローカーブを作成する。
(3)前記ウエットフローカーブにおける気体流量が、前記ドライフローカーブにおける気体流量の90%になる圧力をP_(90)としたとき、前記測定対象濾過膜の孔径Aは下記式(I)で求められる。
A=4γ/P_(90) (I)」とすることに格別の困難性は見いだせない。
よって、引用発明において相違点3に係る補正発明の特定事項に想到することは当業者の容易に推考し得るところということができる。

そして上記各相違点に基づく補正発明の奏する作用効果も、刊行物1の記載事項、刊行物2、3に代表される周知技術、刊行物4に記載の周知技術及び技術常識から予測できる範囲のものであり格別なものではない。

2-6.独立特許要件のまとめ
上記の検討から、補正発明は、引用発明、刊行物2,3に代表される周知技術、刊行物4に記載の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであったとしても、上記の理由により、いわゆる独立特許要件を満足しないため、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成24年1月20日付けの特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正は前記「第2.」のとおり却下されたので、本願の請求項1-11に係る発明は、平成22年9月2日付けの特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に記載された事項によって特定される発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】
筐体内に配置された第一の濾過膜と、該第一の濾過膜の下流側に設けられた第二の濾過膜とを有する浄水器であって、該第一の濾過膜は該筐体内から取り出して洗浄することが可能であり、以下の手順にて測定される、該第一の濾過膜の孔径AをA1、該第二の濾過膜の孔径AをA2としたとき、
A1≦A2である浄水器。
孔径Aの測定手順
(1)表面張力がγの液体に濡らした状態での測定対象濾過膜の気体流量と圧力との関係であるウエットフローカーブを作成する。
(2)乾燥状態での前記測定対象濾過膜の気体流量と圧力との関係であるドライフローカーブを作成する。
(3)前記ウエットフローカーブにおける気体流量が、前記ドライフローカーブにおける気体流量の90%になる圧力をP_(90)としたとき、前記測定対象濾過膜の孔径Aは下記式(I)で求められる。
A=4γ/P_(90) (I)」

2.原査定の理由について
(イ)原査定には「この出願については、平成23年2月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。」と記載されている。
(ロ)上記「平成23年2月17日付け拒絶理由通知書」には、特許法第29条第2項進歩性欠如に関する「理由1」について、
「理由1
(1)請求項1-11
・引用文献1-6
・備考
平成22年7月2日付け拒絶理由通知書の理由1、2(1)、(2)、理由2(1)?(3)を参照のこと。」と記載されている。
(ハ)そこで、「平成22年7月2日付け拒絶理由通知書」をみると、特許法第29条第2項進歩性欠如に関する「理由2」について、
「理由2
(1)請求項1-6
・引用文献1-3
・備考
上記理由1、2(1)-(3)参照。」と記載されている。
(ニ)さらに、「平成22年7月2日付け拒絶理由通知書」をみると、
「理由1、2
(1)・・・
(3)請求項1-3、7
・引用文献3
・備考
引用文献3には、水道水処理に使用する中空糸膜モジュールであって、膜透過側に該中空糸膜の細孔径より孔径の大きいろ過材料からなるフィルター部材を組み入れて、中空糸膜ろ過液を該フィルター部材でろ過されるように構成する旨、記載されている。
よって、本願請求項1-3、7に係る発明は、引用文献3に記載された発明である。」と記載されている。
(ホ)すると、(ニ)の指摘箇所の「備考」は、引用文献3に記載された発明に基づく新規性欠如に関する指摘ともみられるが、「理由1、2」として「理由1」と「理由2」の両方の理由が記載されていることから「理由2」すなわち進歩性欠如に関する拒絶理由も指摘されていたとみることができ、さらに(ロ)(ハ)の指摘箇所において、当該指摘を引用する形式で、原査定の理由は「進歩性」に関するものであることが指摘されていることから、進歩性欠如に関する拒絶理由が「本願請求項1」に係る発明に対して「引用文献3」を引用例として指摘されていたということができる。
(ニ)すなわち、原査定の理由は「引用文献3」(本審決の刊行物1)を主たる引用例とする特許法第29条第2項進歩性欠如に関する拒絶理由を含むものということができる。
そこで、上記拒絶理由について原査定の判断の妥当性を以下で検討する。

3.刊行物の記載と引用発明の認定
刊行物の記載は、上記「2-2.刊行物の記載」に記載のとおりである。
引用発明は「2-3.刊行物1に記載された発明の認定」に記載のとおりである。

4.本願発明と引用発明との対比
上記「第2.1.(2)」で検討したように、本願発明は、補正発明の「二つに分かれて形成された筐体のうちの1つに固定されたモジュールキャップから露出するように該モジュールキャップに固定された第一の濾過膜」を「筐体内に配置された第一の濾過膜」とするものであり、これは「第一の濾過膜」の配置について補正発明の特定事項を削除するものであるから、本願発明は補正発明を拡張した発明といえる。
すると、本願発明の特定事項を全て含み、上記の特定事項によりさらに限定的に特定された補正発明が上記「第2.」に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、補正発明と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物2、3に代表される周知技術、刊行物4に記載の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-21 
結審通知日 2013-03-26 
審決日 2013-04-08 
出願番号 特願2005-511339(P2005-511339)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C02F)
P 1 8・ 575- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大島 忠宏  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 真々田 忠博
中澤 登
発明の名称 浄水器及びその洗浄方法  
代理人 石橋 政幸  
代理人 宮崎 昭夫  
代理人 緒方 雅昭  
復代理人 池田 直俊  

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