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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1274941
審判番号 不服2011-26400  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-06 
確定日 2013-06-06 
事件の表示 特願2005-337206「多層プラスチック容器」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月 7日出願公開、特開2007-137506〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成17年11月22日を出願日とする出願であって、平成23年8月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年12月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされた。その後、平成24年6月19日付けで当審から拒絶理由を通知したところ、平成24年8月7日に特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされ、さらに、平成25年1月17日付けで当審から最後の拒絶理由(特許法第17条の2第1項第3号)を通知したところ、平成25年3月13日に特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされたものである。

第2.平成25年3月13日になされた手続補正(以下、「本件手続補正」という。)についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
本件手続補正を却下する。
〔理由〕
1.補正の内容
本件手続補正は、明細書及び特許請求の範囲について補正をするものであって、請求項1について、補正前後の記載は、以下のとおりである。

(1)補正前
「【請求項1】
ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、フッ素含有樹脂、シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも一種のガスバリア性樹脂層が熱可塑性樹脂層に挟み込まれている多層からなる筒状の胴体と、該胴体の下端から該多層が該胴体の底面の中央に向いて延び、そこで下向きに該多層ごと先細りに引き出され熱融着により該底面を塞いで、形成している底体とからなり、その熱融着部位の肉厚が少なくとも1.5mmであり、該熱融着部位の内壁面が、その熱融着部位を取巻く該多層ごと該胴体の内空へ向いて盛り上がって形成された盛り上がり部位の内壁面に繋がって、該内空に向いて盛り上がるように、層をなしたまま最内層同士を接合させつつ、該熱融着部位が肉厚に形成されており、かつメルトフローレートが0.01g/10分?10g/10分のポリエチレンからなる該最内層のうち、該盛り上がり部位および該熱融着部位の最内層の全体が、他層よりも肉厚となりつつ該底体の該盛り上がり部位および該熱融着部位を除く部分の最内層よりも厚く形成されるように、盛り上がっていることを特徴とする多層プラスチック容器。」

(2)補正後
「【請求項1】
熱いパイプ状の多層パリソンの下端近傍を対照な二つの割りの合わせ鋳型に挟み込み、該鋳型から食み出している該パリソンの部分を引き出して熱融着して食い切って、該パリソンの一端を塞ぎ、同時に該パリソン内に空気を送り込んで膨張させて得た多層プラスチック容器が、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、フッ素含有樹脂、シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも一種のガスバリア性樹脂層が熱可塑性樹脂層に挟み込まれている多層からなる筒状の胴体と、該胴体の下端から該多層が該胴体の底面の中央に向いて延び、そこで下向きに該多層ごと先細りに引き出され該熱融着により該底面を塞いで、該胴体よりも肉厚に形成している底体とからなり、
該鋳型の挟み込み速度と該パリソンへの空気の吹き込み量を調整し、該底体の熱融着部位の肉厚が少なくとも1.5mmであり、該熱融着部位の内壁面が、その熱融着部位を取巻く該多層ごと該胴体の内空へ向いて盛り上がって形成された盛り上がり部位の内壁面に繋がって、該内空に向いて盛り上がるように、層をなしたまま最内層同士を接合させつつ、該熱融着部位が肉厚に形成されており、かつメルトフローレートが0.2g/10分?10g/10分のポリエチレンからなる該最内層のうち、該盛り上がり部位および該熱融着部位の最内層の全体が、他層よりも肉厚となりつつ該底体の該盛り上がり部位および該熱融着部位を除く部分の最内層よりも厚く形成されるように、盛り上がっていることを特徴とする多層プラスチック容器。」

2.補正の適否
(1)新規事項について
本件手続補正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第3項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

当初明細書等においては、補正後の請求項1の「該盛り上がり部位および該熱融着部位の最内層の全体が、他層よりも肉厚となりつつ該底体の該盛り上がり部位および該熱融着部位を除く部分の最内層よりも厚く形成されるように、盛り上がっている」という文言は記載されていない。
最内層の層厚に関する記載は、本願明細書においては、【0025】の「ガスバリア性樹脂層13の内外で熱可塑性樹脂層11・15の各層厚の比は、1:3であることが好ましい」程度しかなく、しかも、この記載は、最内層である熱可塑性樹脂層11の層厚が、他層である熱可塑性樹脂層15の層厚よりも小さいという、「該盛り上がり部位および該熱融着部位の最内層の全体が、他層よりも肉厚」であることとはむしろ反対の内容の記載となっている。
また、本願の図1?図3については、図面の記載は必ずしも現実の寸法を反映するものとは限らないことから、上記の「該盛り上がり部位および該熱融着部位の最内層の全体が、他層よりも肉厚となりつつ該底体の該盛り上がり部位および該熱融着部位を除く部分の最内層よりも厚く形成されるように、盛り上がっている」の根拠とはなり得ない。
このことは、本願明細書の【0024】?【0027】の、底体の肉厚は1mm又は2mm程度である胴体の肉厚よりも厚い旨の記載、並びに、ガスバリア性樹脂層13及び接着剤層12・14の層厚はそれぞれ40?80μmが好ましい旨の記載から、熱可塑性樹脂層11・15は、バリア性樹脂層13及び接着剤層12・14に比べてはるかに厚くなければならないところ、図1?図3ではそのように記載されていないことからも明らかである。

したがって、補正後の請求項1の「該盛り上がり部位および該熱融着部位の最内層の全体が、他層よりも肉厚となりつつ該底体の該盛り上がり部位および該熱融着部位を除く部分の最内層よりも厚く形成されるように、盛り上がっている」点は、当初明細書等に記載したものではなく、また、当業者によって当初明細書等の記載から導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項を導入するものではないともいえない。
よって、本件手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

(2)請求人の主張について
請求人は、平成25年3月13日に提出した意見書の2.(3)において、「鋳型に挟まれた熱い多層パリソンの食み出し部分に引き出し力が加えられたとき、外側の層ほど引き出されて薄くなることから、熱融着部位においても、その外側の層ほど引き出されて薄くなりますが、熱融着部位の内壁面を形成する最内層は、引き出し力の影響が少なく依然として内空を向いて盛り上がりつつ他層よりも肉厚に形成されます。」と主張している。
しかしながら、請求人が主張する点は、当初明細書等に記載されておらず、技術常識を勘案してもその根拠が明らかではなく、また、仮に請求人が主張するように、鋳型に挟まれた熱い多層パリソンの食み出し部分に引き出し力が加えられる際に、相対的に他層が薄くなり最内層が厚くなる傾向があったとしても、多層パリソンの他層が最内層よりも十分に厚い場合に(例えば、本願明細書の【0025】に記載の、最内層と他層の層厚の比が1:3である場合や、それ以上に層厚に差がある場合等)、最内層が他層よりも肉厚になるか否かは不明であることから、盛り上がり部位及び熱融着部位の最内層の全体が、他層よりも必ず肉厚に形成されるということはできない。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。

3.まとめ
以上のとおり、本件手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないので、平成18年改正前特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
上記のとおり、本件手続補正は却下されたので、本願の請求項1の記載は、平成24年8月7日にした手続補正により補正された、上記第2.1.(1)のとおりのものである。

2.当審が通知した拒絶理由
平成25年1月17日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

「平成24年8月7日にした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



請求項1の「該盛り上がり部位および該熱融着部位の最内層の全体が、他層よりも肉厚となりつつ該底体の該盛り上がり部位および該熱融着部位を除く部分の最内層よりも厚く形成されるように、盛り上がっている」点は、当初明細書等に記載した事項ではなく、また、当初明細書等の記載から当業者に自明な事項でもないので、上記手続補正は新規事項を追加するものである。」

3.新規事項について
平成24年8月7日にした手続補正後の請求項1には、「該盛り上がり部位および該熱融着部位の最内層の全体が、他層よりも肉厚となりつつ該底体の該盛り上がり部位および該熱融着部位を除く部分の最内層よりも厚く形成されるように、盛り上がっている」という記載が含まれている。
そして、上記第2.2.で検討したように、「該盛り上がり部位および該熱融着部位の最内層の全体が、他層よりも肉厚となりつつ該底体の該盛り上がり部位および該熱融着部位を除く部分の最内層よりも厚く形成されるように、盛り上がっている」点は、当初明細書等に記載したものではなく、また、当業者によって当初明細書等の記載から導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項を導入するものではないともいえない。
したがって、平成24年8月7日にした手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

4.むすび
以上のとおり、平成24年8月7日にした手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-29 
結審通知日 2013-04-02 
審決日 2013-04-15 
出願番号 特願2005-337206(P2005-337206)
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (B65D)
P 1 8・ 561- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 会田 博行  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 河原 英雄
▲高▼辻 将人
発明の名称 多層プラスチック容器  
代理人 大西 浩之  
代理人 小宮 良雄  

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