• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G05B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05B
管理番号 1274971
審判番号 不服2012-19325  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-03 
確定日 2013-06-06 
事件の表示 特願2010- 90012「モニタリングセンター計算機,モニタリングシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月22日出願公開、特開2010-160818〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴って平成17年10月6日(優先日、平成16年11月5日)に出願した特願2005-293121号の一部を平成22年4月9日に新たな特許出願としたものであって、平成23年6月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月5日に意見書が提出され、それに対して、平成24年1月31日付けで再度拒絶の理由が通知され、同年4月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年7月5日付けで拒絶の査定がなされた。
そして、上記拒絶査定を不服として平成24年10月3日に審判の請求がなされ、同日付けで手続補正書が提出され、その後、当審の同年11月16日付けの審尋に対して応答はなされなかった。


第2 平成24年10月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年10月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容の概要
平成24年10月3日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をするとともにそれに関連して明細書の一部について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(1)補正前
「 【請求項1】
作業員により行われる作業のマニュアルをマニュアル作業データとして記録したデータベースと、
作業員により行われた作業の状況である作業状況データ及び前記データベースのマニュアル作業データを対比する手順確認手段と、
前記手順確認手段で対比された結果、一致しなかった場合は、一致しない作業についての作業場所に対応するモバイル装置を特定することで作業場所を特定する作業場所確認手段と、
前記一致しなかった場合に、前記モバイル装置へ手順エラー情報を送信する送信手段を有することを特徴とするモニタリングセンター計算機。」
(2)補正後
「 【請求項1】
作業員により行われる作業のマニュアルをマニュアル作業データとして記録したデータベースと、
作業員により行われた作業の状況である作業状況データ及び前記データベースのマニュアル作業データを対比する手順確認手段と、
前記手順確認手段で対比された結果、一致しなかった場合は、一致しない作業についての作業場所に対応するモバイル装置を特定することでモバイル装置のアドレス情報を用いて作業場所を特定する作業場所確認手段と、
前記一致しなかった場合に、前記モバイル装置へ手順エラー情報を送信する送信手段を有することを特徴とするモニタリングセンター計算機。」

2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、作業場所を特定する作業場所確認手段が「モバイル装置のアドレス情報を用い」るものであることを限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかであるので、さらに、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。
(1)補正発明
本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、上記1(2)に示すとおりである。
(2)刊行物
これに対して、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物であって原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-231909号公報(以下、単に「刊行物」という。)の記載内容は以下のとおりである。
ア 刊行物記載の事項
刊行物には以下の事項が記載されている。
(ア) 段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、原子力・火力発電プラント等の各種プラントにおいて、中央制御室でプラントが集中管理されていて、現場での保守作業・動作確認作業等を実施する場合、中央制御室と分散した各現場との間で互いに情報を交換して協調して作業を進めるよう支援する協調作業支援装置に関するものである。」
(イ) 段落【0013】?【0018】
「【0013】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1に本発明に係わる協調作業支援装置の全体構成を示す。図において、10は中央制御室、11は大型表示装置、12はプラントを運転する運転コンソール、13はCRT、液晶パネルなどの表示装置、14,15はそれぞれ運転コンソール12と大型表示装置11へ情報を提供する計算機、16はプラント内の情報通信LAN、17は無線通信のためのアクセスポイント(事業所用PHSの基地局、無線LANのアクセスポイントなど)である。
【0014】18は現場用の携帯端末、19はバーコードリーダ、20は現場の各種機器や現場の操作器(操作スイッチ)等に貼り付けられたバーコード、30は手順書(またはチェックリスト)で、作業順序、作業項目、作業対象機器、作業内容、作業の完了・未完等の進捗状態などの協調作業を行うための作業内容に関する情報である。なお、これらの情報はデータベースとして計算機14,15等に格納されている。40は作業対象の現場である。
【0015】次に動作につき説明する。現場作業員は、携帯端末18により各種作業支援情報を参照でき、計算機14,15から記録された各種のプラントデータ(オンラインのプラント情報、オフラインのプラント設計図書など)や各種作業支援情報を無線で伝送させ参照する。また、同様に携帯端末8で入力した情報を伝送して中央制御室の大型表示装置1、およびCRT13などの表示装置に表示する。
【0016】図2は手順書の画面表示例を示すものである。図に示すように、手順書30は、作業順序を示す番号(No.)31、手順32、操作場所(作業場所)33、実施状況34から構成されている。
【0017】中央制御室操作と現場操作が輻輳する時、全体の作業手順を図示するように中央制御室10の表示装置11,13で表示すると共に、現場端末18にも併せて表示し、全体の作業状況を共有できるようにする。ここで中央制御室、現場各々で操作を完了した時には、各々「実施状況」欄に「操作完了」を入力することで、共通の作業手順書にその状況が記載される。
【0018】このように中央制御室、現場各々の作業状況進捗状況を共有することで、各々の作業が実施可能かどうか、例えば、手順3までの現場操作が終了しているのを確認することで、中央制御室で手順Nが可能になるなどの判断を行うことができる。」
(ウ) 段落【0020】?【0024】
「【0020】実施の形態2.図3に実施の形態2の手順書の表示画面例を示す。実施の形態2では、実施の形態1のように中央制御室・現場双方の作業情報が中央制御室の計算機で一元的に管理するようし、更に、次の作業ステップの操作(作業)が可能かどうかをガイドする機能を実現するものである。
【0021】例えば、図3では、手順3が終了していないため、手順Nは「作業不可」というガイドを出力した例である。また、操作対象選択時にチェックを行い、手順が違っておればエラーメッセージ4を出力する。操作対象の選択は、例えば手順Nをカーソル等で指示すると、手順3の作業が完了していないので、「現場作業項目3が完了していません」のエラーメッセージ35が表示される。また、音声により伝達したり、外部信号として必要な遠隔場所へエラーメッセージ信号を送出したりしてもよい。
【0022】なお、現場端末(または中央制御室)で手順3が選択されたとき、現場端末、中央制御室とも手順3の項目が反転表示(または他の強調表示)して現在作業している作業項目を明示し、作業の進捗状況をより把握するようにしてもよい。このようにすれば、手順Nを選択することが少なくなり、手順Nによる選択エラーメッセージの送出機会も減少できる。また、手順3の選択は、実施の形態3で後述するバーコードで入力するようにしてもよい。なお、実施の形態1においても、上記の反転表示や、バーコード入力を適用することができる。
【0023】このように作業間に前後関係の制約条件がある場合(例えば現場におけるある作業が終了しなければ、中央制御室における次の作業が実施できない場合など)、現場あるいは中央制御室における作業進捗状況から計算機が作業可否を判断して、次の作業の実施可否に関する支援情報を提供する。
【0024】以上のようにこの実施の形態2は、中央制御室と各現場において作業の手順が前後することによるヒューマンエラーが防止できる。」
(エ) ここで、摘記事項(ウ)における「現場端末」が、「携帯端末18」を意味するものであることは技術的に明らかである。そして、摘記事項(イ)の「中央制御室操作と現場操作が輻輳する時、全体の作業手順を図示するように中央制御室10の表示装置11,13で表示すると共に、現場端末18にも併せて表示し、全体の作業状況を共有できるようにする。ここで中央制御室、現場各々で操作を完了した時には、各々「実施状況」欄に「操作完了」を入力することで、共通の作業手順書にその状況が記載される。」の記載から、中央制御室10の表示装置11、13に表示されたのと同様の作業手順が、携帯端末18においても表示されているものであることは明らかである。
イ 刊行物記載の発明
刊行物記載の事項を補正発明に照らして整理すると刊行物には以下の発明が記載されていると認めることができる。
「作業順序、作業項目、作業対象機器、作業内容、作業の完了・未完等の進捗状態などの協調作業を行うための作業内容に関する情報である手順書30をデータベースとして格納する計算機14、15を有し、
現場作業員は、携帯端末18により計算機14、15から記録された各種のプラントデータを参照でき、また、同様に携帯端末18で入力した情報を伝送して中央制御室10の大型表示装置11、CRT13などの表示装置に表示するものであって、
操作対象選択時に作業間の前後関係の制約条件についてチェックを行い、手順が違っていれば携帯端末18の表示装置にエラーメッセージ4を出力する中央制御室10の計算機14、15。」(以下、「引用発明」という。)
(3)対比
補正発明と引用発明とを対比すると以下のとおりである。
引用発明の「作業順序、作業項目、作業対象機器、作業内容、作業の完了・未完等の進捗状態などの協調作業を行うための作業内容に関する情報である手順書30」が、「作業員により行われる作業のマニュアル」であることは明らかであるので、引用発明の「作業順序、作業項目、作業対象機器、作業内容、作業の完了・未完等の進捗状態などの協調作業を行うための作業内容に関する情報である手順書30をデータベースとして格納する計算機14、15」が、補正発明の「作業員により行われる作業のマニュアルをマニュアル作業データとして記録したデータベース」に相当するものを有していることは明らかである。
引用発明の「操作対象選択時に作業間の前後関係の制約条件についてチェックを行」うためには、作業員により行われた作業の状況である作業状況データとマニュアル作業データを対比する手順確認手段を有しなければならないので、引用発明の当該「操作対象選択時に作業間の前後関係の制約条件についてチェックを行」うことが、補正発明の「作業員により行われた作業の状況である作業状況データ及びデータベースのマニュアル作業データを対比する手順確認手段」に相当するものを有しているものであることは明らかである。
引用発明の「携帯端末18」は、補正発明の「モバイル装置」に相当する。したがって、引用発明の「手順が違っていれば携帯端末18の表示装置にエラーメッセージ4を出力する」ことは、「一致しなかった場合に、モバイル装置へ手順エラー情報を出力する」という限りで、補正発明の「一致しなかった場合に、モバイル装置へ手順エラー情報を送信する」ことと共通する。
引用発明の「中央制御室10の計算機14、15」は、補正発明の「モニタリングセンター計算機」に相当する。
したがって、補正発明と引用発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「作業員により行われる作業のマニュアルをマニュアル作業データとして記録したデータベースと、
作業員により行われた作業の状況である作業状況データ及び前記データベースのマニュアル作業データを対比する手順確認手段と、
前記手順確認手段で対比された結果、一致しなかった場合に、前記モバイル装置へ手順エラー情報を出力するモニタリングセンター計算機。」
そして、補正発明と引用発明とは、以下の2点で相違している。
ア <相違点1>
作業の状況の確認につき、補正発明では、「手順確認手段で対比された結果、一致しなかった場合は、一致しない作業についての作業場所に対応するモバイル装置を特定することでモバイル装置のアドレス情報を用いて作業場所を特定する作業場所確認手段」を有しているのに対して、引用発明では、そのようなモバイル装置に対応する携帯端末18のアドレス情報を用いた作業場所の特定手段について不明な点。
イ <相違点2>
手順エラー情報に関して、補正発明では、手順エラー情報をモバイル装置に「送信する送信手段」を有しているのに対して、引用発明では、そのような送信手段を有しているのかどうか不明な点。
(4)相違点の検討
ア <相違点1>について
作業員により行われた作業において、作業の手順エラーがあれば、当該作業の手順エラーを発生させた作業場所の作業員に、当該手順エラーを認識させる必要があるのに対して、当該手順エラーが発生していない作業場所の作業員にまで、当該手順エラーを認識させる必要はないから、引用発明においても、手順エラーとなった作業場所を特定する必要があることは明らかである。
補正発明では、当該作業場所を特定するのに、「一致しない作業についての作業場所に対応するモバイル装置を特定することでモバイル装置のアドレス情報を用いて作業場所を特定する作業場所確認手段」を用いる旨特定している。
しかしながら、モバイル装置のアドレス情報を用いてモバイル装置を特定することは、例えば、特開平10-42374号公報(段落【0028】参照。)に示されているように従来周知の技術であることから、引用発明においても、モバイル装置である携帯端末18のアドレス情報を用いて携帯端末18を特定すること、ひいては、当該携帯端末18が存在する手順エラーとなった作業場所を特定するように構成することは、当業者が容易になしえた程度の事項であると考えざるをえない。
イ <相違点2>について
上記アで言及したとおり、作業の手順エラーがあれば、当該作業の手順エラーを発生させた作業場所の作業員に、当該手順エラーを認識させる必要があることは明らかであるから、手順エラー情報を当該手順エラーがあった作業場所以外で作成した場合、例えば、中央制御室10の計算機14、15で手順エラー情報を作成した場合には、当該手順エラー情報を、当該手順エラーが発生した作業場所の作業員に送信すべきことは明らかである。してみると、当該作業場所に存在する携帯端末18へ当該作業の手順エラー情報を送信することは、当業者にとって格別困難なことではない。
ウ <補正発明の効果>について
補正発明によってもたらされる効果も、引用発明及び上記従来周知の各事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。
エ 補正発明に対するまとめ
したがって、補正発明は、引用発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本件出願の発明について

1 本件出願の発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし請求項6に係る発明は、平成24年4月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの「モニタリングセンター計算機」である。

2 刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容は、上記第2の2(2)に示したとおりである。

3 対比・検討
本願発明は、上記第2の2で検討した補正発明から、作業場所を特定する作業場所確認手段が「モバイル装置のアドレス情報を用い」るという限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明を構成する事項の全てを含み、さらに他の事項を付加する補正発明が上記第2の2(4)エで示したとおり、引用発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件出願の請求項2ないし6に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-29 
結審通知日 2013-04-02 
審決日 2013-04-19 
出願番号 特願2010-90012(P2010-90012)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G05B)
P 1 8・ 121- Z (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川東 孝至  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 刈間 宏信
長屋 陽二郎
発明の名称 モニタリングセンター計算機,モニタリングシステム  
代理人 井上 学  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ