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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1275100
審判番号 不服2012-4921  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-15 
確定日 2013-06-05 
事件の表示 特願2008-196949「光子結晶発光素子」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月12日出願公開、特開2009- 33181〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年7月30日(パリ条約による優先権主張2007年7月30日、韓国)の出願であって、拒絶理由の通知に応答して平成23年9月14日に手続補正がされたが、同年11月10日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成24年3月15日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、これと同時に手続補正がされたものである。

第2 平成24年3月15日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年3月15日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正による請求項1についての補正について
本件補正による請求項1についての補正は、次のとおりのものである。
本件補正前に
「基板と、
前記基板上に相互離隔されて形成され、第1導電型の第1半導体層、活性層及び第2導電型の第2半導体層が順に形成されてなる複数のナノロッド発光構造物と、
前記第1半導体層及び前記第2半導体層に夫々電気的に連結された第1電極及び第2電極と、を含み、
前記複数のナノロッド発光構造物は、底面の形状が円形であり、その半径rと配列周期aは0.01≦r/a≦0.5を満たす光子結晶構造をなすことを特徴とする光子結晶発光素子。」(平成23年9月14日の手続補正書参照。)
とあったものを、
本件補正後に
「基板と、
前記基板上に相互離隔されて形成され、第1導電型の第1半導体層、活性層及び第2導電型の第2半導体層が順に形成されてなる複数のナノロッド発光構造物と、
前記第1半導体層及び前記第2半導体層に夫々電気的に連結された第1電極及び第2電極と、を含み、
前記複数のナノロッド発光構造物は、底面の形状が円形であり、その半径rと配列周期aは0.25<r/a≦0.5を満たす光子結晶構造をなすことを特徴とする光子結晶発光素子。」
とする。

該補正は、発明を特定するために必要な事項である「ナノロッド発光構造物体」の半径rについて、その下限が0.01以上であったのを0.25より大きいとして、その大きさをより狭い範囲に限定する補正事項からなるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定する要件を満たすか否か)を以下に検討する。

2 独立特許要件について
(1) 本願補正発明の認定
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。) は、本件補正後の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりのものと認める。

(2) 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された特開2006-352148号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア及びイの記載が図とともにある。
ア 「【0012】
本発明の実施形態によれば、フォトニック結晶は、エッチングされるのではなく半導体発光装置内で成長する。図11は、フォトニック結晶の例の上面図である。領域2は、屈折率が異なる材料の領域4によって割り込まれている。例えば、図11のフォトニック結晶は、上述のように半導体材料中にエッチングされた正孔のアレイではなく、空気領域2によって囲まれた成長した半導体材料の半導体ポスト4のアレイにすることができる。代替的に、領域2は、正孔4と共に成長した半導体領域とすることができる。
【0013】
フォトニック結晶構造は、最大と最小が交替する半導体領域の1つの厚みの周期的変動を含むことができる。一例は、上述のように(二次元格子)、半導体材料のポストの回折格子(一次元格子)又は平面格子である。格子は、ポストの直径d、最も近い隣接ポストの中心間の距離を測る格子定数a、ポストの高さw、及びポスト回りに配置された誘電体の誘電率εhによって特徴付けられる。パラメータa、d、w、及びεhは、バンドの状態の密度、及び特にフォトニック結晶のスペクトルのバンドエッジにおける状態の密度に影響を及ぼすものである。パラメータa、d、w、及びεhは、従って、装置によって放出される放射パターンに影響を及ぼし、装置からの抽出効率を高めるように選択することができる。代替的に、適正なフォトニック結晶パラメータが選択されると、放出光の放射パターンを狭くすることができ、LEDの放射輝度を増加させる。これは、特定の角度の光だけが有用な用途において有用である。一実施形態では、フォトニック結晶パラメータは、装置を出て行く放射の50%よりも多くが、装置の表面に垂直な軸線に対して45度の角度で形成された出口円錐の形で放出されるように選択される。
【0014】
ポストは、三角形、正方形、六角形、蜂の巣、又は他の公知の二次元格子型を形成するように配置することができる。複数の格子型を装置の同じ領域に含めることができ、又は装置からの光の伝播に対するより大きな制御をもたらす場合がある準結晶を生成するのに使用することができる。図13と14は、準結晶を生成する正孔の構成の2つの例を示している。図13と14に示すように、準結晶は、正方形131と三角形132の反復パターンの頂点に位置する正孔のパターンである。そのような反復パターンは、多くの場合にアルキメデスの格子又はペンローズのタイルと呼ばれる。準結晶の格子定数aは、反復パターンにおける三角形又は正方形の一辺の長さである。
一部の実施形態では、装置の異なる領域に異なる格子型が形成される。例えば、全放射パワー(放射効率)を最適化するように設計された1つのフォトニック結晶構造を、装置の1つの領域に形成することができ、光抽出(抽出効率)を最適化するように設計された別のフォトニック結晶構造を、装置の別の領域に形成することができる。
【0015】
ポストは、六角形断面を有することが多いが、他の断面も可能である。一部の実施形態では、格子間隔aは、約0.1λと約10λの間であり、より好ましくは、約0.1λと約5λの間であり、より好ましくは、約0.1λと約3λの間であり、より好ましくは、約0.1λと約1λの間であり、ここで、λは、活性領域によって放出された光の装置内の波長である。一部の実施形態では、格子定数aは、フォトニック結晶のバンドギャップ内か又はそれに近く選択される。例えば、GaN層内に形成されて空気で充填した正孔の三角形格子では、0.35λから0.55λの範囲の格子定数は、その範囲の下限での抽出に有利なバンドギャップ内であり、その範囲の上限での内部効率に有利なバンドエッジにある。0.35λから0.55λの格子定数の範囲は、0.36aのポストの半径を仮定している。・・・」(下線は審決にて付した。以下同様。)

イ 「【0016】
本発明の一部の実施形態では、発光領域は、フォトニック結晶を形成する成長した半導体材料のポストに含まれる。図2-5及び6A-6Cは、そのような装置の例を示している。図2の装置では、n型領域22は、例えば、サファイア、SiC、又はGaNのようないずれかの適切な基板20の上に従来的に成長する。n型領域22は、n型クラッド層及びn型接触層のようなn型装置の層がその上に成長する高品質テンプレートをもたらすように設計されたバッファ層又は核生成層のような例えば任意的な準備層のような厚み、組成、及びドーパント濃度が異なる複数の層を含むことが多い。n型領域22は、意図的にドープされていない層を含むことができる。成長基板20が除去された実施形態では、n型領域22は、成長基板20の取り外しを容易にするか又は成長基板20が除去された後のエピタキシャル層の薄層化を容易にする層を含むことができる。
【0017】
平坦なn型領域22の上にSiO_(2)のようなマスク層24が形成される。マスク層24は、例えば、200nm未満の厚みの薄い層にすることができる。開口部がマスク24に形成される。フォトニック結晶を形成することになる半導体材料のポストが開口部に成長する。n型材料のポスト26が第1に成長し、続いて発光領域材料のポスト28が成長する。本明細書に説明する例では、発光領域は、例えば、単一の厚い発光層、単一の薄い量子井戸、バリア層によって分離された複数の薄い量子井戸、及びバリア層によって分離された複数の厚い発光層を含むいずれかの適切な発光領域構造とすることができる。発光領域28の後に、p型材料のポスト30が成長する。ポストのサイズ、高さ、間隔、及び編成は、上述のようにフォトニック結晶を形成するように選択することができる。
【0018】
半導体ポストは、例えば、本明細書において引用により組み込まれているKipshidze他著「パルス有機金属化学気相成長法によるGaNナノワイヤの制御された成長」、応用物理学レター、86、033104(2005)に説明されているように、低圧有機金属化学気相成長法によって形成することができる。成長は、搬送ガスとしてのN_(2)と共にトリメチルガリウムのようなIII族前駆物質とアンモニアのようなV族前駆物質とを使用し、低圧、例えば30トルて実行することができる。成長は、マスク24の開口部に2-5ナノメートルの厚みに形成されたニッケルのような金属触媒の島によって核生成される。ニッケルは、Gaと気相から供給された活性窒素により過飽和状態になる。核生成した状態で、半導体とニッケルの間の固体-液体界面で半導体ポストの成長が起きる。成長ガス間の気相反応を防止するために、成長は、V族前駆物質のパルスが所定時間にわたってリアクタに導入され、続いて遅延され、更にIII族前駆物質のパルスが続くようなパルス状にすることができる。得られるポストは、一定の直径と平滑な側壁を有して基板表面に対して垂直に成長する。
【0019】
代替的に、ポストは、本明細書において引用により組み込まれている、S.Hoffouz他著「有機金属気相エピタキシによるGaNパターン化基板の横方向過成長に対するマグネシウム及びシリコンの影響」、「MRS Internet J.Nitride Semicond.Res.」、3、8(1998)に説明されているように成長させることができる。Hoffuzは、成長マスク内のミクロンサイズの開口部による成長基板表面のパターン化を説明している。マスクは、マスクの上の成長を防止するものである。成長は、マスク開口部で始まり、成長中に流入するドーパントの種類と濃度次第で、マスクまで及びそれを超えて横方向過成長モードで進行することができるか又は優先的に垂直に成長することができる。例えば、円柱形の成長が望ましい場合、成長中に大流量のSiH_(4)が使用される。横方向過成長が望ましい場合、小流量のSiH_(4)又はCp_(2)Mgが使用される。
【0020】
p型ポスト30が成長した後に、ポストの上に反転したピラミッドが形成されるように成長条件が変更され、これらのピラミッドは、最終的に接続してポストの上に平坦な層32とポスト間に空間25とを形成する。金属触媒は、使用されている場合には、平坦な層32の成長の前に取り除かれる。上に引用したHoffouz他は、p型MgドープIII族窒化物材料に対する横方向過成長技術を説明している。p型ポスト30と平面p型領域32は、例えばp型クラッド層及びp型接触層のような厚み、組成、及びドーパント濃度が異なる複数の層を含むことができる。
【0021】
平面p型領域32の成長の後に、p接点(図示しない)を形成する1つ又はそれよりも多くの金属層がp型領域32上に堆積される。p接点は、オーム接触層、反射層、及び保護金属層のような複数の層を含むことができる。反射層は、多くの場合に銀又はアルミニウムである。保護金属は、例えば、ニッケル、チタン、又はタングステンを含むことができる。保護金属は、特に銀の反射層の場合に、反射金属層が移動するのを防止するように、かつ半導体構造をホスト基板に結合するために使用される結合層のための接着層をもたらすように選択することができる。
(【0022】及び【0024】は省略。)
【0025】
代替的に、図2の装置は、成長基板20が装置上に残り、光が成長基板を通して装置から抽出されるフリップチップに加工することができる。p型領域30及び32の一部分と発光領域28とが除去されて、n型領域22又は24の一方の一部が露出する。n型領域の一方の露出部上にn接点が形成され、p型領域32の残っている部分上にp接点が形成される。ダイは、キャリアに接続したフリップチップであり、光は、基板20を通して装置から抽出される。光抽出を更に改善するために、基板20は、半導体構造の機械的支持のためのダイを充填不足にし、次に、例えばレーザリフトオフ、エッチング、又はラッピングにより基板を除去することによって除去することができる。」

上記イにおいて言及されている図2は、次のとおりのものである。


上記アにおいて言及されている図11は、次のとおりのものである。


(3) 引用発明の認定
ア 上記「(2) イ」の【0016】及び【0025】には「図2の装置」とあるが、上記「(2) ア」に「【0012】本発明の実施形態によれば、フォトニック結晶は、エッチングされるのではなく半導体発光装置内で成長する。」とあること、及び上記「(2) イ」に「【0016】本発明の一部の実施形態では、発光領域は、フォトニック結晶を形成する成長した半導体材料のポストに含まれる。」とあるとおり、図2の装置の発光領域は半導体材料からなることから、図2に示された装置は、半導体発光装置といえる。
上記「(2) イ」によれば、図2に示された半導体発光装置は、成長基板20の上にn型領域22を成長させ、前記n型領域22の上に形成したマスク24の開口部に、n型材料のポスト26、発光領域材料のポスト28及びp型材料のポスト30を順に成長させ、前記p型材料のポスト30の上に平面p型領域32を成長させ、前記平面p型領域32上にp接点を形成し、前記n型領域22上にn接点を形成したものである。

イ 引用例においては、n型材料のポスト26、発光領域材料のポスト28及びp型材料のポスト30からなる部分が、「ポスト」、「半導体材料のポスト」、「半導体材料の半導体ポスト4」、「半導体ポスト」と表現されている(上記「(2) ア」及び「(2) イ」の下線部分参照。)が、以下、これらを総称して単に「ポスト」という。

ウ 上記「(2) イ」における「【0017】・・・フォトニック結晶を形成することになる半導体材料のポストが開口部に成長する。」、【0018】・・・得られるポストは、一定の直径と平滑な側壁を有して基板表面に対して垂直に成長する。」、「【0019】・・・例えば、円柱形の成長が望ましい場合」及び「【0020】p型ポスト30が成長した後に、ポストの上に反転したピラミッドが形成されるように成長条件が変更され、これらのピラミッドは、最終的に接続してポストの上に平坦な層32とポスト間に空間25とを形成する。」との記載によれば、「ポスト」は、フォトニック結晶を形成するものであり、円柱形に成長させてもよく、複数の「ポスト」の間には、空間が形成されることが認められる。

エ 上記アないしウによれば、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。) が記載されていると認めることができる。
「成長基板と、
前記成長基板上に成長したn型領域と、
前記n型領域の上に形成したマスクの開口部に順に円柱形に成長した、n型材料のポスト、発光領域材料のポスト及びp型材料のポストからなる複数の円柱形ポストと、
前記p型材料のポストの上に成長した平面p型領域と、
前記平面p型領域上に形成したp接点と、
前記n型領域上に形成したn接点と、を備え、
前記複数の円柱形ポストの間に空間が形成され、
前記複数の円柱形ポストによって、フォトニック結晶が形成されている半導体発光装置。」

(4)対比
引用発明と本願補正発明とを対比する。
ア 引用発明の「成長基板」、「n型材料のポスト」、「発光領域材料のポスト」、「p型材料のポスト」、「n型材料のポスト、発光領域材料のポスト及びp型材料のポストからなる複数の円柱形ポスト」、「n型領域上に形成したn接点」、「平面p型領域上に形成したp接点」、「複数の円柱形ポストによって、フォトニック結晶が形成されている」及び「フォトニック結晶が形成されている半導体発光装置」は、それぞれ、本願補正発明の「基板」、「第1導電型の第1半導体層」、「活性層」、「第2導電型の第2半導体層」、「第1導電型の第1半導体層、活性層及び第2導電型の第2半導体層が順に形成されてなる複数のナノロッド発光構造物」、「第1半導体層に電気的に連結された第1電極」、「第2半導体層に電気的に連結された第2電極」、「複数のナノロッド発光構造物は、・・・光子結晶構造をなす」及び「光子結晶発光素子」に相当する。

イ 引用発明において、「複数の円柱形ポストの間に空間が形成され」ていることは、本願補正発明において、「複数のナノロッド発光構造物」が「成長基板上に相互離隔されて形成され」ていることに相当する。

ウ 引用発明において、「複数の円柱形ポスト」の底面の形状が、円柱形状故に円形であることは、本願補正発明において、「複数のナノロッド発光構造物は、底面の形状が円形であ」ることに相当する。

してみると、本願補正発明と引用発明とは、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点>で相違する。
<一致点>
「基板と、
前記基板上に相互離隔されて形成され、第1導電型の第1半導体層、活性層及び第2導電型の第2半導体層が順に形成されてなる複数のナノロッド発光構造物と、
前記第1半導体層及び前記第2半導体層に夫々電気的に連結された第1電極及び第2電極と、を含み、
前記複数のナノロッド発光構造物は、底面の形状が円形であり、光子結晶構造をなす光子結晶発光素子。」

<相違点>
本願補正発明の「複数のナノロッド発光構造物」は、「半径rと配列周期aは0.25<r/a≦0.5を満たす」のに対して、引用発明の「複数のナノロッド発光構造物(複数の半導体材料のポスト)」は、「半径rと配列周期aが0.25<r/a≦0.5を満たす」か否か定かでない点。

(5)判断
<相違点>について検討する。
上記「(2) ア」の【0015】には、「例えば、GaN層内に形成されて空気で充填した正孔の三角形格子では、0.35λから0.55λの範囲の格子定数は、その範囲の下限での抽出に有利なバンドギャップ内であり、その範囲の上限での内部効率に有利なバンドエッジにある。0.35λから0.55λの格子定数の範囲は、0.36aのポストの半径を仮定している。」との記載がある。
ここで、格子定数aは、上記「(2) ア」の「【0013】・・・最も近い隣接ポストの中心間の距離を測る格子定数a」との記載によれば、「最も近い隣接ポストの中心間の距離」であるから、「複数の半導体材料のポストの配列周期」といえる。
上記【0015】の記載にしたがって、引用発明の「複数の円柱形ポスト」について、その配列を「三角形格子」、その半径rを0.36a(aは格子定数、すなわち複数の円柱形ポストの配列周期)とするならば、r/a=0.36となり、これは0.25<r/a≦0.5を満たす。
してみると、引用例には、本願補正発明の<相違点>に係る構成を採用することが例示されているといえるから、引用発明において、本願補正発明の<相違点>に係る構成を備えることは、当業者が、引用例の記載に基づいて、容易に想到し得たことである。
また、かかる構成を採用することによる効果は、当業者が予測し得る程度のものである。
したがって、本願補正発明は、当業者が、引用発明及び引用例の記載に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
上記「2 独立特許要件について」において検討したとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明の認定
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年9月14日に補正された本願の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりのものと認める。

2 引用例の記載事項及び引用発明の認定
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2 平成24年3月15日の手続補正についての補正却下の決定 [理由] 2 独立特許要件について (2) 引用例の記載事項」に記載したとおりであり、引用発明は、上記「第2 平成24年3月15日の手続補正についての補正却下の決定 [理由] 2 独立特許要件について (3) 引用発明の認定」において認定したとおりである。

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
上記「第2 平成24年3月15日の手続補正についての補正却下の決定 [理由] 2 独立特許要件について (4)対比」と同様の検討によれば、本願発明と引用発明とは、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点>で相違する。
<一致点>
「基板と、
前記基板上に相互離隔されて形成され、第1導電型の第1半導体層、活性層及び第2導電型の第2半導体層が順に形成されてなる複数のナノロッド発光構造物と、
前記第1半導体層及び前記第2半導体層に夫々電気的に連結された第1電極及び第2電極と、を含み、
前記複数のナノロッド発光構造物は、底面の形状が円形であり、光子結晶構造をなす光子結晶発光素子。」

<相違点>
本願補正発明の「複数のナノロッド発光構造物」は、「半径rと配列周期aは0.01≦r/a≦0.5を満たす」のに対して、引用発明の「複数のナノロッド発光構造物(複数の半導体材料のポスト)」は、「半径rと配列周期aが0.01≦r/a≦0.5を満たす」か否か定かでない点。

4 判断
<相違点>について検討する。
上記「第2 平成24年3月15日の手続補正についての補正却下の決定 [理由] 2 独立特許要件について (5)判断」と同様の検討によれば、引用発明において、本願発明の<相違点>に係る構成を備えることは、当業者が、引用例の記載に基づいて、容易に想到し得たことである。
また、かかる構成を採用することによる効果は、当業者が予測し得る程度のものである。
したがって、本願発明は、当業者が、引用発明及び引用例の記載に基づいて、容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-27 
結審通知日 2013-01-08 
審決日 2013-01-21 
出願番号 特願2008-196949(P2008-196949)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中澤 真吾  
特許庁審判長 江成 克己
特許庁審判官 星野 浩一
吉野 公夫
発明の名称 光子結晶発光素子  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  

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