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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C04B
管理番号 1275461
審判番号 不服2012-9008  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-16 
確定日 2013-06-13 
事件の表示 特願2006-232033「超速硬性セメント組成物及び超速硬性セメント組成物用分散剤」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月12日出願公開、特開2007- 91580〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年8月29日(特許法第41条第1項の規定による優先権主張日平成17年9月1日)の出願であって、平成23年3月17日付けで拒絶理由通知書が起案され (発送日は同年3月29日)、平成23年5月27日に特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書並びに意見書が提出され、平成24年2月15日付けで拒絶査定が起案され (発送日は同年2月21日)、平成24年5月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に同日付けで特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書が提出されたものであり、その後平成24年9月21日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋が起案され(発送日は同年9月25日)、平成24年11月26日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成24年5月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年5月16日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 本願補正発明
平成24年5月16日付けの手続補正(以下、必要に応じて「本件補正」という。)により特許請求の範囲は、平成23年5月27日付けの手続補正による補正前の
「 【請求項1】
カルシウムアルミネート類を必須成分とする超速硬性セメント(A)とセメント分散剤(B)とを含んでなる超速硬性セメント組成物であって、
該セメント分散剤(B)は、
下記一般式(1);
【化1】

(1)
(式中、R^(1)は、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1?18のアルキル基を表す。nは、平均付加モル数を表し、10?300の数である。)で表される単量体に由来する繰り返し単位と、
下記一般式(2);
【化2】

(2)
(式中、Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される単量体に由来する繰り返し単位とを有する共重合体を含むものである
該超速硬性セメント(A)は、その総量100質量%に対し、カルシウムアルミネート類を10?30質量%含み、
該超速硬性セメント(A)の超速硬性セメント組成物に対する質量割合は、10/100?80/100であり、
該超速硬性セメント(A)と該セメント分散剤(B)との質量割合は、(B)/(A)=0.01/100?8.0/100であり、
該超速硬性セメント組成物は、水/セメント比35質量%以下で混練して製造され、かつ、JIS R 5201に準じて測定した材齢3時間の圧縮強度が20N/mm^(2)以上、60N/mm^(2)以下である
ことを特徴とする超速硬性セメント組成物。
【請求項2】
前記超速硬性セメント組成物は、15℃以下の雰囲気温度で混練、打設されることを特徴とする請求項1に記載の超速硬性セメント組成物。
【請求項3】
前記超速硬性セメント(A)の必須成分であるカルシウムアルミネート類は、C_(11)A_(7)・CaX_(2)、C_(3)A、CA、C_(2)AS、CA_(2)、C_(3)A_(3)・CaSO_(4)、C_(12)A_(7)、C_(6)AF_(2)及びC_(4)AF(式中、Cは、CaOを表す。Aは、Al_(2)O_(3)を表す。Sは、SiO_(2)を表す(ただし、CaSO_(4)のSは、硫黄原子を示す。)。Fは、Fe_(2)O_(3)を表す。Xは、ハロゲン元素を表す。)及び非晶質カルシウムアルミネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の超速硬性セメント組成物。
【請求項4】
前記超速硬性セメント組成物は、更に凝結遅延剤を含有することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の超速硬性セメント組成物。
【請求項5】
前記凝結遅延剤は、オキシカルボン酸化合物であることを特徴とする請求項4に記載の超速硬性セメント組成物。
【請求項6】
前記凝結遅延剤の前記超速硬性セメント(A)100質量%に対する質量比は、0.01?1.0である
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の超速硬性セメント組成物。
【請求項7】
前記超速硬性セメント組成物は、更にポリアルキレンイミンにアルキレンオキサイドが付加してなる化合物を含有することを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の超速硬性セメント組成物。
【請求項8】
前記超速硬性セメント組成物は、高強度のセメントペースト、モルタル又はコンクリート用であることを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の超速硬性セメント組成物。
【請求項9】
請求項1?8のいずれかに記載の超速硬性セメント組成物の製造方法であって、
該製造方法は、15℃以下の雰囲気温度で混練、打設する工程を含むことを特徴とする超速硬性セメント組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1?8のいずれかに記載の超速硬性セメント組成物に用いるセメント分散剤であって、
該セメント分散剤は、
下記一般式(1);
【化3】

(1)
(式中、R^(1)は、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1?18のアルキル基を表す。nは、平均付加モル数を表し、10?300の数である。)で表される単量体に由来する繰り返し単位と、
下記一般式(2);
【化4】

(2)
(式中、Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される単量体に由来する繰り返し単位とを有する共重合体を含むものである
ことを特徴とするセメント分散剤。」
から、次のとおりに補正された。
「 【請求項1】
カルシウムアルミネート類を必須成分とする超速硬性セメント(A)とセメント分散剤(B)とを含んでなる超速硬性セメント組成物であって、
該セメント分散剤(B)は、
下記一般式(1);
【化1】

(1)
(式中、R^(1)は、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1?18のアルキル基を表す。nは、平均付加モル数を表し、10?300の数である。)で表される単量体に由来する繰り返し単位と、
下記一般式(2);
【化2】

(2)
(式中、Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される単量体に由来する繰り返し単位とを有する共重合体を含むものであり、
該超速硬性セメント(A)は、その総量100質量%に対し、カルシウムアルミネート類を10?30質量%含み、
該超速硬性セメント(A)の超速硬性セメント組成物に対する質量割合は、10/100?80/100であり、
該超速硬性セメント(A)と該セメント分散剤(B)との質量割合は、(B)/(A)=0.7/100?0.9/100であり、
該超速硬性セメント組成物は、更に凝結遅延剤を該超速硬性セメント(A)100質量%に対して0.05?0.4の質量比で含有し、
該超速硬性セメント組成物は、水/セメント比35質量%以下で混練して製造され、かつ、JIS R 5201に準じて測定した材齢3時間の圧縮強度が20N/mm^(2)以上、60N/mm^(2)以下である
ことを特徴とする超速硬性セメント組成物。
【請求項2】
前記超速硬性セメント組成物は、15℃以下の雰囲気温度で混練、打設されることを特徴とする請求項1に記載の超速硬性セメント組成物。
【請求項3】
前記超速硬性セメント(A)の必須成分であるカルシウムアルミネート類は、C_(11)A_(7)・CaX_(2)、C_(3)A、CA、C_(2)AS、CA_(2)、C_(3)A_(3)・CaSO_(4)、C_(12)A_(7)、C_(6)AF_(2)及びC_(4)AF(式中、Cは、CaOを表す。Aは、Al_(2)O_(3)を表す。Sは、SiO_(2)を表す(ただし、CaSO_(4)のSは、硫黄原子を示す。)。Fは、Fe_(2)O_(3)を表す。Xは、ハロゲン元素を表す。)及び非晶質カルシウムアルミネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の超速硬性セメント組成物。
【請求項4】
前記凝結遅延剤は、オキシカルボン酸化合物であることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の超速硬性セメント組成物。
【請求項5】
前記超速硬性セメント組成物は、更にポリアルキレンイミンにアルキレンオキサイドが付加してなる化合物を含有することを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の超速硬性セメント組成物。
【請求項6】
前記超速硬性セメント組成物は、高強度のセメントペースト、モルタル又はコンクリート用であることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の超速硬性セメント組成物。
【請求項7】
請求項1?6のいずれかに記載の超速硬性セメント組成物の製造方法であって、
該製造方法は、15℃以下の雰囲気温度で混練、打設する工程を含むことを特徴とする超速硬性セメント組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1?6のいずれかに記載の超速硬性セメント組成物に用いるセメント分散剤であって、
該セメント分散剤は、
下記一般式(1);
【化3】

(1)
(式中、R^(1)は、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1?18のアルキル基を表
す。nは、平均付加モル数を表し、10?300の数である。)で表される単量体に由来する繰り返し単位と、
下記一般式(2);
【化4】

(2)
(式中、Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される単量体に由来する繰り返し単位とを有する共重合体を含むものである
ことを特徴とするセメント分散剤。」

上記補正は、(i)本件補正前の請求項1?5を削除し、(ii)本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項であって本件補正前の請求項1を引用する本件補正前の請求項4を更に引用する本件補正前の請求項6に記載された発明を特定するために必要な事項である「該超速硬性セメント(A)と該セメント分散剤(B)との質量割合は、(B)/(A)=0.01/100?8.0/100であり」を、「該超速硬性セメント(A)と該セメント分散剤(B)との質量割合は、(B)/(A)=0.7/100?0.9/100であり、」と減縮して限定するとともに、(iii)本件補正前の請求項1を引用する本件補正前の請求項4を更に引用する本件補正前の請求項6に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記凝結遅延剤の前記超速硬性セメント(A)100質量%に対する質量比は、0.01?1.0である」を、「凝結遅延剤を該超速硬性セメント(A)100質量%に対して0.05?0.4の質量比で含有し」と、凝結遅延剤の超速硬性セメント(A)に対する質量比を減縮して限定して、本件補正後の請求項1とする補正を含むものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)について、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか、以下に検討する。

2 刊行物に記載された事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、特開2000-34159号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 カルシウムアルミネート類を主成分とする超速硬セメント並びに次の粉末状セメント分散剤(A)又は(B)を含有する粉粒状超速硬セメント組成物。
(A)分子内に少なくとも下記式(1)及び(2)
【化1】

(式中、R^(1) 、R^(2 )及びR^(3) は同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、R^(4) は炭素数1?3のアルキル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを示し、Yは-CH_(2)O-又は-COO-を示し、nは20?109の数を示す)で表される構成単位を有するポリカルボン酸系高分子化合物並びに水を含有する混合物を、乾燥粉末化した粉末状セメント分散剤。
(B)ポリアルキレングリコール鎖を有するポリカルボン酸系高分子化合物と、ポリアルキレングリコール及び炭素数8?22の脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上とを含む粒子を含有する粉末状セメント分散剤。」(特許請求の範囲)
(イ)「従来より補修工事や緊急工事としては道路や橋梁の工事など時間的制約が多いものが大半であったが、特に近年、交通事情の悪化とともに、工期短縮がより強く要求されてきており、超速硬セメント組成物としてもより速硬性が高く、作業の効率化のために流動性の向上が望まれている。」(段落【0003】)
(ウ)「セメント分散剤(A)又は(B)の使用量は、超速硬セメント100重量部に対して0.01?5重量部とすることが好ましく、特に0.05?3重量部とすることが好ましい。この量が0.01重量部未満では分散効果がなく5重量部を超えると凝結遅延や強度低下の原因となるため好ましくない。」(段落【0032】)
(エ)「このようなカルシウムアルミネート類を主成分とする超速硬セメントとしては、一般にはアルミナセメントを始め、「ジェットセメント」や「SQセメント」(いずれも秩父小野田(株)製)と称される市販品が挙げられる。」(段落【0034】)
(オ)「本発明の超速硬セメント組成物をモルタルやコンクリートとして用いるには、骨材として川砂、海砂、陸砂、砕砂、珪砂等を使用することができ、これらの砂は乾燥砂が好ましい。また、フライアッシュ、高炉スラグ、炭酸カルシウム等を単独で、あるいは上記の砂と併用することもできる。超速硬セメント組成物を既調合モルタル組成物として供給する場合には、配合する骨材の粒度は5mm以下で、FMが1.5?3.0程度のものが好ましい。モルタル組成物の場合の骨材使用量は結合材100重量部に対して30?300重量部であるが、30重量部未満では収縮量が増大し、300重量部を超えると強度及び流動性の低下を招くので好ましくない。骨材使用量は特に60?150重量部が好ましい。」(段落【0035】)
(カ)「本発明の超速硬セメント組成物には、速硬性を調整するための凝結遅延剤や凝結促進剤を使用することができる。凝結遅延剤としては超速硬セメントの水和反応を遅延させる効果を有するものであればいずれも使用でき、例えばクエン酸、酒石酸、グルコン酸などのオキシカルボン酸基を有する化合物等が挙げられる。また、促進剤としては炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸リチウム、アルミン酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩等が挙げられる。」(段落【0036】)
(キ)「本発明の超速硬セメント組成物は上記材料を調合して、通常袋詰めなどの形態で提供され、建築現場でミキサーを用いて水と混練した後打設される。ここで使用されるミキサーは特に限定されるものではなく、また、ここでの水の添加量は通常結合材100重量部に対して30?100重量部である。」(段落【0038】)
(ク)「【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例に使用した材料は以下の通りである。
(1)結合材(超速硬セメント)
ジェットセメント(秩父小野田(株)製)」(段落【0039】)
(ケ)「実施例
表7及び表8に示す組成の超速硬セメント組成物を常法により混合し製造した。
【表7】

【表8】

*1:凝結調整剤
クエン酸系凝結遅延剤((株)小野田製「ジェットセッター」)
*2:ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物(花王(株)製マイティ-100)
(従来の粉末状セメント分散剤)

試験例
表7、8に示す配合に従い調合した材料100重量部に対し、水40重量部を加え、ホバートミキサーを用いて3分間混合した後、得られたペーストに対して流動性の評価としてフロー値、速硬性の評価として凝結時間を測定した。試験結果を表9?12に示す。」(段落【0053】?【0056】)

(2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2003-73158号公報(以下、「刊行物4」という。)には、次の事項が記載されている。
(コ)「【請求項1】 セメント混和剤、セメント及び水を必須成分とするセメント組成物を施工して、30℃以下の温度条件下で硬化させるセメント硬化物の製造方法であって、該セメント混和剤は、共重合体(A)と硬化促進剤(B)とを0.1/99.9?90/10の比率(重量%)で必須成分として含むものであり、該共重合体(A)は、下記一般式(1);
YO(R^(1)O)_(n)R^(2) (1)
(式中、Yは、炭素原子数5?8のアルケニル基を表す。R^(1)Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2?18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1?500の数を表す。R^(2)は、水素原子又は炭素原子数1?30の炭化水素基を表す。)で表される不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構成単位(I)と不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(II)とを必須の構成単位として有し、かつ、構成単位(I)と構成単位(II)とが各々全構成単位中の1重量%以上を占め、構成単位(I)の占める割合が全構成単位中の50モル%以下であることを特徴とするセメント硬化物の製造方法。」(特許請求の範囲)
(サ)「セメント混和剤の任務は、セメント組成物を減水しても充分な分散性を発揮してその流動性及び施工性を確保でき、減水による耐久性及び強度向上を実現すると同時に、経時的に安定した分散性を保持して良好なセメント組成物を獲得するところにある。そして昨今のコンクリート業界では、このような性能を実現するコンクリートが強く求められており、これを達成するには単位水量の低減と共に、流動性低下の防止が重要な課題となっている。」(段落【0003】)
(シ)「【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、強度及び耐久性に優れたセメント硬化物を与え、しかも、セメント組成物の流動性を維持しつつ、低温時の硬化時間の短縮が可能であるセメント硬化物の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】本発明者らは、セメント混和剤について鋭意検討の結果、特定の構造単位を有する共重合体(A)が高い分散性能を有し、強度及び耐久性に優れたセメント硬化物を与えることにまず着目した。」(段落【0008】?【0009】)
(ス)「上記一般式(1)におけるYで表されるアルケニル基の炭素原子数としては、5?8が適当であるが、炭素原子数5のアルケニル基が好ましい。また、上記一般式(1)におけるYは、下記一般式(3);
【0031】
【化3】

【0032】(式中、R^(6)、R^(7)及びR^(8)は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。但し、R^(6)、R^(7)及びR^(8)は、すべてメチル基となることはない。R^(9)は、上記一般式(1)における-O(R^(1)O)nR^(2)との結合点であって、-CH_(2)-、-(CH_(2))_(2)-又は-C(CH_(3))_(2)-を表す。R^(6)、R^(7)及びR^(8)及びR^(9)中の合計炭素原子数は、3である。)で表されることが好ましい。このようなアルケニル基としては、例えば、3-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基等が挙げられるが、3-メチル-3-ブテニル基が好ましい。
上記一般式(1)で表される不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(a)としては、例えば、3-メチル-3-ブテン-1-オール、3-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-2-ブテン-1-オール等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドを1?500モル付加して製造することができるが、具体的には、(ポリ)エチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル等が挙げられる。」(段落【0030】?【0033】)
(セ)「上記不飽和カルボン酸系単量体(b)の具体例として、不飽和モノカルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられ、」(段落【0037】)
(ソ)「上記セメント組成物において使用されるセメントとしては、特に限定はない。例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)等が挙げられ」(段落【0054】)

3 対比・検討
(1)刊行物1に記載に記載された発明
刊行物1には、記載事項(ア)に「カルシウムアルミネート類を主成分とする超速硬セメント並びに次の粉末状セメント分散剤(A)又は(B)を含有する粉粒状超速硬セメント組成物。
(A)分子内に少なくとも下記式(1)及び(2)
【化1】

(式中、R^(1) 、R^(2 )及びR^(3) は同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、R^(4) は炭素数1?3のアルキル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを示し、Yは-CH_(2)O-又は-COO-を示し、nは20?109の数を示す)で表される構成単位を有するポリカルボン酸系高分子化合物並びに水を含有する混合物を、乾燥粉末化した粉末状セメント分散剤。
(B)ポリアルキレングリコール鎖を有するポリカルボン酸系高分子化合物と、ポリアルキレングリコール及び炭素数8?22の脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上とを含む粒子を含有する粉末状セメント分散剤。」と記載されているから、「カルシウムアルミネート類を主成分とする超速硬セメントと、分子内に少なくとも下記式(1)及び(2)
【化1】

(式中、R^(1) 、R^(2 )及びR^(3) は同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、R^(4 )は炭素数1?3のアルキル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを示し、Yは-CH_(2)O-又は-COO-を示し、nは20?109の数を示す)で表される構成単位を有するポリカルボン酸系高分子化合物を含むものであるセメント分散剤とを含有する粉粒状超速硬セメント組成物」が記載されている。
記載事項(エ)には、「このようなカルシウムアルミネート類を主成分とする超速硬セメントとしては、一般にはアルミナセメントを始め、「ジェットセメント」や「SQセメント」(いずれも秩父小野田(株)製)と称される市販品が挙げられる。」と記載されているとともに、記載事項(ク)には、実施例における結合材(超速硬セメント)として「ジェットセメント(秩父小野田(株)製)」を使用したことが記載されている。
また、記載事項(ウ)に「セメント分散剤(A)又は(B)の使用量は、超速硬セメント100重量部に対して0.01?5重量部とすることが好ましく、特に0.05?3重量部とすることが好ましい。」と記載されている。

そして、記載事項(カ)に「本発明の超速硬セメント組成物には、速硬性を調整するための凝結遅延剤や凝結促進剤を使用することができる。凝結遅延剤としては超速硬セメントの水和反応を遅延させる効果を有するものであればいずれも使用でき、例えばクエン酸、酒石酸、グルコン酸などのオキシカルボン酸基を有する化合物等が挙げられる。」と記載され、実施例についての記載事項(ケ)の表7,8とその脚注には、クエン酸系凝結遅延剤が結合材、即ち超速硬セメント100重量部に対して0.3重量部使用することが記載されている。
さらに、記載事項(キ)には、「本発明の超速硬セメント組成物は上記材料を調合して、通常袋詰めなどの形態で提供され、建築現場でミキサーを用いて水と混練した後打設される。ここで使用されるミキサーは特に限定されるものではなく、また、ここでの水の添加量は通常結合材100重量部に対して30?100重量部である。」と記載されており、カルシウムアルミネート類を主成分とする超速硬セメント並びに上記の粉末状セメント分散剤(A)を含む粉粒状超速硬セメント組成物に、結合材、即ち超速硬セメント100重量部に対して30?100重量部の水を添加して混練した、水/セメント比30?100質量%で混練して製造された超速硬セメント組成物が記載されている。
一方、本願補正発明は、本願の明細書の段落【0049】に、「本発明の超速硬性セメント組成物は、超速硬性セメント(A)とセメント分散剤(B)と水とを必須成分として含み、更に凝結遅延剤を含んでもよいものであるが、更に、細骨材及び粗骨材等の骨材、その他の成分を含んでいてもよい。」と記載されている超速硬性セメント組成物である。

これらの記載を本願補正発明の記載振りに則して整理すると、刊行物1には、
「カルシウムアルミネート類を主成分とする超速硬セメント(A)とセメント分散剤(B)とを含んでなる超速硬セメント組成物であって、
該セメント分散剤(B)は、
分子内に少なくとも下記式(1)及び(2)
【化1】

(式中、R^(1) 、R^(2 )及びR^(3) は同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、R^(4) は炭素数1?3のアルキル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを示し、Yは-CH_(2)O-又は-COO-を示し、nは20?109の数を示す)で表される構成単位を有するポリカルボン酸系高分子化合物を含むものであり、
該超速硬セメント(A)と該セメント分散剤(B)との質量割合は、(B)/(A)=0.01/100?5/100であり、
該超速硬セメント組成物は、更に凝結遅延剤を該超速硬セメント(A)100質量%に対して0.3の質量比で含有し、
該超速硬セメント組成物は、水/セメント比30?100質量%で混練して製造される超速硬セメント組成物。」
の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2)本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。
ア.刊行物1発明の「カルシウムアルミネート類を主成分とする超速硬セメント」、「超速硬セメント組成物」は、それぞれ、本願補正発明の「カルシウムアルミネート類を必須成分とする超速硬性セメント」、「超速硬性セメント組成物」に相当する。
イ.刊行物1発明のセメント分散剤は、少なくとも上記式(1)と(2)で表される構成単位を有するポリカルボン酸系高分子化合物であるから、「共重合体」であることは明らかである。
そして、刊行物1発明の「該超速硬セメント(A)と該セメント分散剤(B)との質量割合は、(B)/(A)=0.01/100?5/100」は、本願補正発明の「該超速硬性セメント(A)と該セメント分散剤(B)との質量割合は、(B)/(A)=0.7/100?0.9/100」を含むものであり、刊行物1発明の「該超速硬セメント組成物は、更に凝結遅延剤を該超速硬セメント(A)100質量%に対して0.3の質量比で含有」することは、本願補正発明の「該超速硬性セメント組成物は、更に凝結遅延剤を該超速硬性セメント(A)100質量%に対して0.05?0.4の質量比で含有」することに包含され、刊行物1発明の「該超速硬セメント組成物は、水/セメント比30?100質量%で混練して製造される」ことは、本願補正発明の「該超速硬性セメント組成物は、水/セメント比35質量%以下で混練して製造され」ることと「該超速硬性セメント組成物は、水/セメント比30?35質量%で混練して製造され」ることで共通する。

そうすると、本願補正発明と刊行1発明とは、
(一致点)
カルシウムアルミネート類を必須成分とする超速硬性セメント(A)とセメント分散剤(B)とを含んでなる超速硬性セメント組成物であって、
該セメント分散剤(B)は、共重合体を含むものであり、
該超速硬セメント(A)と該セメント分散剤(B)との質量割合は、(B)/(A)=0.7/100?0.9/100であり、
該超速硬セメント組成物は、更に凝結遅延剤を該超速硬セメント(A)100質量%に対して0.3の質量比で含有し、
該超速硬セメント組成物は、水/セメント比30?35質量%で混練して製造される超速硬セメント組成物。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点a)
セメント分散剤(B)が、本願補正発明では、「下記一般式(1);
【化1】

(1)
(式中、R1は、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1?18のアルキル基を表す。nは、平均付加モル数を表し、10?300の数である。)で表される単量体に由来する繰り返し単位と、
下記一般式(2);
【化2】

(2)
(式中、Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される単量体に由来する繰り返し単位とを有する共重合体を含むもの」であるのに対し、刊行物1発明では、「分子内に少なくとも下記式(1)及び(2)
【化1】

(式中、R^(1) 、R^(2 )及びR^(3) は同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、R^(4) は炭素数1?3のアルキル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを示し、Yは-CH_(2)O-又は-COO-を示し、nは20?109の数を示す)で表される構成単位を有するポリカルボン酸系高分子化合物」である点。
(相違点b)
超速硬セメント(A)が、本願補正発明では、「その総量100質量%に対し、カルシウムアルミネート類を10?30質量%含」むものであるのに対し、刊行物1発明では、カルシウムアルミネート類の含有量については特定されていない点。
(相違点c)
該超速硬性セメント(A)の超速硬性セメント組成物に対する質量割合が、本願補正発明では、「10/100?80/100であ」るのに対し、刊行物1発明では、そのような割合に特定されていない点。
(相違点d)
本願補正発明では、「JIS R 5201に準じて測定した材齢3時間の圧縮強度が20N/mm^(2)以上、60N/mm^(2)以下である」であるのに対し、刊行物1発明では、そのような圧縮強度についての特定がされていない点。

(3)検討
これらの相違点について検討する。
(3.1)相違点aについて
本願補正発明のセメント分散剤である共重合体の一般式(1)で表される単量体に由来する繰り返し単位は、例えば本願の明細書の段落【0064】、【0065】記載の製造例にもある、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドを付加して製造した単量体である不飽和ポリアルキレングリコールエーテルに由来する繰り返し単位であるし、同じく一般式(2)で表される単量体に由来する繰り返し単位は、上記製造例にも記載の一般式(2)中のMが水素原子であるアクリル酸を代表的単量体とする不飽和モノカルボン酸系の単量体に由来する繰り返し単位である。
一方、刊行物1発明のセメント分散剤である共重合体の繰り返し単位は、記載事項(ア)に「分子内に少なくとも下記式(1)及び(2)
【化1】

(式中、R^(1) 、R^(2 )及びR^(3) は同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、R^(4) は炭素数1?3のアルキル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを示し、Yは-CH_(2)O-又は-COO-を示し、nは20?109の数を示す)で表される構成単位を有するポリカルボン酸系高分子化合物」と記載されており、上記式(1)におけるR^(1)が水素原子である場合が本願補正発明における一般式(2)で表される単量体に由来する繰り返し単位に他ならない。
しかし、上記式(2)で表される構成単位、即ち繰り返し単位は、R^(2 )がメチル基でR^(3) が水素原子である場合が記載されているいるものの、「Yは-CH_(2)O-又は-COO-を示し」と特定されているように、このYに相当する基が-(CH_(2))_(2)O-である本願補正発明の一般式(1)で表される単量体に由来する繰り返し単位と異なるものである。
そして、刊行物4には、記載事項(シ)に「特定の構造単位を有する共重合体(A)が高い分散性能を有し、強度及び耐久性に優れたセメント硬化物を与えることにまず着目した。」と記載されているように、セメント分散剤として使用できる共重合体(A)について、記載事項(コ)に「該共重合体(A)は、下記一般式(1);
YO(R^(1)O)_(n)R^(2) (1)
(式中、Yは、炭素原子数5?8のアルケニル基を表す。R^(1)Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2?18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1?500の数を表す。R^(2)は、水素原子又は炭素原子数1?30の炭化水素基を表す。)で表される不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構成単位(I)と不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(II)とを必須の構成単位として有し」ていることが記載されている。
上記の「式中、Yは、炭素原子数5?8のアルケニル基を表す。」と記載されているアルケニル基については、記載事項(ス)に「上記一般式(1)におけるYで表されるアルケニル基の炭素原子数としては、5?8が適当であるが、炭素原子数5のアルケニル基が好ましい。また、上記一般式(1)におけるYは、下記一般式(3);
【化3】

式中、R^(6)、R^(7)及びR^(8)は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。但し、R^(6)、R^(7)及びR^(8)は、すべてメチル基となることはない。R^(9)は、上記一般式(1)における-O(R^(1)O)_(n)R^(2)との結合点であって、-CH_(2)-、-(CH_(2))_(2)-又は-C(CH_(3))_(2)-を表す。R^(6)、R^(7)及びR^(8)及びR^(9)中の合計炭素原子数は、3である。)で表されることが好ましい。このようなアルケニル基としては、例えば、3-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基等が挙げられるが、3-メチル-3-ブテニル基が好ましい。」と記載され、さらに、上記一般式(1)の繰り返し単位を与えることのできる単量体(a)についても記載事項(ス)に「上記一般式(1)で表される不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(a)としては、例えば、3-メチル-3-ブテン-1-オール、3-メチル-2-ブテン-1-オール、・・・等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドを1?500モル付加して製造することができるが、具体的には(ポリ)エチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、・・・等が挙げられる。」と記載されている。
そうすると、刊行物4には、記載事項(セ)に「上記不飽和カルボン酸系単量体(b)の具体例として、不飽和モノカルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられ」と記載されている、本願補正発明の一般式(2)で、かつ刊行物1発明の式(1)で表される不飽和モノカルボン酸系単量体に由来する繰り返し単位と、3-メチル-2-ブテン-1-オールに一般式(1)におけるR^(1)Oが炭素原子数2のエチレンオキシドを付加して製造できる、刊行物4の一般式(1)のYが-CH_(2)-である刊行物1発明の式(2)の繰り返し単位(構造単位)とを有する共重合体である刊行物1発明のセメント分散剤と同様に、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドを付加して製造できる、刊行物4の一般式(1)のYが-(CH_(2))_(2)-である本願補正発明の一般式(1)の繰り返し単位(構造単位)とを有する共重合体である本願補正発明のセメント分散剤が記載されている。
しかも、そのような共重合体が混和されて、記載事項(シ)に「高い分散性能を有し、強度及び耐久性に優れたセメント硬化物を与える」と記載されているセメントには、超速硬性セメントも包含されることが記載事項(ソ)に記載されているから、刊行物1発明におけるセメント分散剤に代えて、該セメント分散剤と同等に刊行物4に記載されている、「下記一般式(1);
【化1】
YO(R^(1)O)_(n)R^(2) (1)
(式中、R^(1)は、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1?18のアルキル基を表す。nは、平均付加モル数を表し、10?300の数である。)で表される単量体に由来する繰り返し単位と、
下記一般式(3);
【化3】

(式中、R^(6)、R^(7)及びR^(8)は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。但し、R^(6)、R^(7)及びR^(8)は、すべてメチル基となることはない。R^(9)は、上記一般式(1)における-O(R^(1)O)nR^(2)との結合点であって、-CH_(2)-、-(CH_(2))_(2)-又は-C(CH_(3))_(2)-を表す。R^(6)、R^(7)及びR^(8)及びR^(9)中の合計炭素原子数は、3である。)で表される単量体に由来する繰り返し単位とを有する共重合体を含むもの」を使用してみるようなことは、当業者が適宜なし得る範囲内の事項である。
そして、セメント分散剤の相違による格別の効果も認められない。

(3.2)相違点bについて
超速硬セメントでは、例えば、「コンクリート便覧(第二版)」技報堂出版(株)、1996年、第2版第2刷発行、第472頁に「また、超速硬セメントでは、アルミン酸三カルシウム(C_(3)A)は『活性化されたアルミン酸カルシウム(C_(11)A_(7)CaF_(2))』として約20%、無水石こうを約20%含むことを特徴としている」と記載されているように、カルシウムアルミネート類が「活性化されたアルミン酸カルシウム(C_(11)A_(7)CaF_(2))」として約20%含まれていることは、本願優先権主張日前に周知であり、刊行物1の記載事項(エ)にも、カルシウムアルミネート類を主成分とする超速硬セメントとして例示され、記載事項(ク)に実施例における結合材(超速硬セメント)として使用されている「ジェットセメント」がカルシウムアルミネート類を約20%以上含んでいることは、例えば特開平11-71142号公報の段落【0004】?【0005】等に記載されているように、本願優先権主張日前に周知の事項であって、刊行物1発明においてそのようにすることに何らの困難性もない。

(3.3)相違点cについて
本願補正発明における超速硬性セメント組成物は、本願の明細書の段落【0049】に、「本発明の超速硬性セメント組成物は、超速硬性セメント(A)とセメント分散剤(B)と水とを必須成分として含み、更に凝結遅延剤を含んでもよいものであるが、更に、細骨材及び粗骨材等の骨材、その他の成分を含んでいてもよい。」と記載されている組成物であるところ、刊行物1には、記載事項(キ)に「水の添加量が通常結合材100重量部に対して30?100重量部である」こと、記載事項(オ)に「骨材使用量は結合材100重量部に対し30?300重量部である」ことが記載されている。
そして、刊行物1発明において、水や骨材のほかに超速硬性セメント組成物に含まれるセメント分散剤と凝結遅延剤の含有量は、前者が記載事項(ウ)に「超速硬性セメント100重量部に対して0.01?5重量部とすることが好ましく」と、後者が記載事項(ケ)の実施例において結合材100重量部に対して0.3重量部使用した例が記載してあるように、水や骨材に比べてそれらの配合量は少ないこと、かつ刊行物1発明の超速硬性セメント組成物における上記「結合材」は当然、超速硬性セメントとすることができるし、水/セメント比が小さい場合を勘案すれば、刊行物1発明における超速硬性セメントの超速硬性セメント組成物に対する質量割合が、「10/100?80/100」という広範囲の質量割合の中に包含されない、極めて少ない又は極めて多い質量割合になることは、それら配合成分の数値割合から通常は考えられないものである。
したがって、相違点cにかかる特定事項は実質的に相違点ではない。

(3.4)相違点dについて
セメント組成物においては、刊行物4の記載事項(サ)に「セメント混和剤の任務は、セメント組成物を減水しても充分な分散性を発揮してその流動性及び施工性を確保でき、減水による耐久性及び強度向上を実現すると同時に、経時的に安定した分散性を保持して良好なセメント組成物を獲得するところにある。そして昨今のコンクリート業界では、このような性能を実現するコンクリートが強く求められており、これを達成するには単位水量の低減と共に、流動性低下の防止が重要な課題となっている。」と、記載事項(シ)に「【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、強度及び耐久性に優れたセメント硬化物を与え、しかも、セメント組成物の流動性を維持しつつ、低温時の硬化時間の短縮が可能であるセメント硬化物の製造方法を提供することを目的とするものである。」と記載されているように、セメント分散剤の使用が、セメント組成物を減水しても充分な分散性を発揮してその流動性及び施工性を確保でき、減水による耐久性及び強度向上を実現すると同時に、経時的に安定した分散性を保持し、セメント組成物の流動性を維持しつつ、低温時の硬化時間の短縮が可能であるセメント硬化物の製造を目指すものであることが、本願の優先権主張日前に公知の技術課題であって、刊行物4の記載事項(ソ)にセメントとして超速硬性セメントも記載されているから、このような技術課題は超速硬性セメント組成物においても同様であると認められる。
また、超速硬性セメント組成物の材齢3時間の圧縮強度として、測定法は記載されていないものの、20N/mm^(2)以上は、例えば「コンクリート便覧(第二版)」技報堂出版(株)、1996年、第2版第2刷発行、第473頁?第474頁等に記載されているように、本願の優先権主張日前に知られた強度にすぎない。
そうすると、セメント分散剤の使用した超速硬性セメント組成物であって、低温時にも必要な流動性及び施工性を確保し、水/セメント比の減水による耐久性及び強度向上を実現するようにして、JIS R 5201に準じて測定した材齢3時間の圧縮強度が20N/mm^(2)以上であるような超速硬性セメント組成物を得られるように、組成物成分の配合を工夫するようなことは、当業者が必要に応じ容易になし得る範囲内の事項である。

なお、本件補正により、超速硬性セメント(A)とセメント分散剤(B)との質量割合が、(B)/(A)=0.7/100-0.9/100に減縮されたことに関連して、請求人は審判請求の理由において、査定時の文献1-6に開示されたセメント混和剤の使用量は上記補正後の本願発明よりも少なく、また、文献1-6の記載からみて、0.5質量%を超える割合でセメント混和剤を配合する動機付けはない旨主張している。
しかしながら、まず、本願の明細書の段落【0022】には、セメント分散剤(B)の配合比について、「より好ましくは、(B)/(A)=0.2/100-0.4/100である」旨記載されている。
そして、上記好ましいとされる配合比とは異なる、上記本願補正発明における配合比の補正根拠は、明細書に開示された出願当初の実施例4,5(平成23年5月27日付けの手続補正により「実施例1,2」に補正)であるところ、(a)当初実施例1?8において使用されるポリアクリル酸系分散剤1,2は、いずれも本願の明細書の段落【0064】?【0065】には「・・・重合終了後、水酸化ナトリウムで中和、水で希釈し重合成分の濃度が40質量%になるように調整した。」と記載されているものであって、その後水溶液を乾燥処理して重合成分だけの固形物として各当初実施例の超速硬性セメント組成物の配合を行ったことは記載されていないこと、(b)しかも上記段落【0022】に記載された好ましい配合比の数値範囲内の実施例がないこと、及び、(c)実施例記載の配合比に、共重合体溶液の濃度である40質量%を掛けると、上記好ましい配合比の範囲内となることからみて、審判請求時の補正の根拠であるセメント分散剤の配合比は、セメント分散剤溶液全体の配合量と考えることが相当である。
そうすると、本願補正発明における超速硬性セメント(A)とセメント分散剤(B)との質量割合が、(B)/(A)=0.7/100-0.9/100であることについての上記請求人の主張は、本願補正発明に係る特定事項に対するものでなく、採用できない。
また、本願補正発明における超速硬性セメント(A)とセメント分散剤(B)との質量割合が、(B)/(A)=0.7/100-0.9/100であることによる臨界的効果等、格別の技術的意義も認められない。

そうすると、本願補正発明は、刊行物1、4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成24年5月16日付けの手続補正は前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。) は、平成23年5月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1は以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
カルシウムアルミネート類を必須成分とする超速硬性セメント(A)とセメント分散剤(B)とを含んでなる超速硬性セメント組成物であって、
該セメント分散剤(B)は、
下記一般式(1);
【化1】

(1)
(式中、R^(1)は、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1?18のアルキル基を表す。nは、平均付加モル数を表し、10?300の数である。)で表される単量体に由来する繰り返し単位と、
下記一般式(2);
【化2】

(2)
(式中、Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される単量体に由来する繰り返し単位とを有する共重合体を含むものである
該超速硬性セメント(A)は、その総量100質量%に対し、カルシウムアルミネート類を10?30質量%含み、
該超速硬性セメント(A)の超速硬性セメント組成物に対する質量割合は、10/100?80/100であり、
該超速硬性セメント(A)と該セメント分散剤(B)との質量割合は、(B)/(A)=0.01/100?8.0/100であり、
該超速硬性セメント組成物は、水/セメント比35質量%以下で混練して製造され、かつ、JIS R 5201に準じて測定した材齢3時間の圧縮強度が20N/mm^(2)以上、60N/mm^(2)以下である
ことを特徴とする超速硬性セメント組成物。」

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である刊行物1、4及びその記載事項は、前記第2 2に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記第2 4で検討した本願補正発明における、「該超速硬性セメント(A)と該セメント分散剤(B)との質量割合は、(B)/(A)=0.01/100?8.0/100であり」を、「該超速硬性セメント(A)と該セメント分散剤(B)との質量割合は、(B)/(A)=0.7/100?0.9/100であり、」と減縮して限定するとともに、「該超速硬性セメント組成物は、更に凝結遅延剤を該超速硬性セメント(A)100質量%に対して0.05?0.4の質量比で含有し」と、凝結遅延剤の超速硬性セメント(A)に対する質量比を限定する補正がないものである。

してみると、本願発明を特定するために必要な事項である「該超速硬性セメント(A)と該セメント分散剤(B)との質量割合は、(B)/(A)=0.01/100?8.0/100であり」を、「該超速硬性セメント(A)と該セメント分散剤(B)との質量割合は、(B)/(A)=0.7/100?0.9/100であり、」と減縮して限定するとともに、「該超速硬性セメント組成物は、更に凝結遅延剤を該超速硬性セメント(A)100質量%に対して0.05?0.4の質量比で含有し」と、凝結遅延剤の超速硬性セメント(A)に対する質量比を限定したものに相当する本願補正発明が、前記第2 3に記載したとおり、刊行物1、4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明と同様の理由により、本願発明も、刊行物1、4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1、4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-09 
結審通知日 2013-04-16 
審決日 2013-04-30 
出願番号 特願2006-232033(P2006-232033)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C04B)
P 1 8・ 575- Z (C04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 史泰  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 中澤 登
豊永 茂弘
発明の名称 超速硬性セメント組成物及び超速硬性セメント組成物用分散剤  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  
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