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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01F
管理番号 1275511
審判番号 不服2011-10272  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-17 
確定日 2013-06-12 
事件の表示 平成11年特許願第313613号「電子計量システムの駆動方法及び計量システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年8月29日出願公開、特開2000-234948〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この審判事件に関する出願(以下、「本願」という。)は、1998年(平成10年)11月4日にドイツ連邦共和国でされた特許出願に基づくパリ条約の優先権を主張して、平成11年11月4日にされた特許出願である。そして、平成22年12月28日付けで拒絶査定がされ、平成23年1月18日に査定の謄本が送達され、同年5月17日に拒絶査定不服審判が請求された。
その後、平成24年6月6日付けで当審により拒絶の理由が通知され、これに対して、同年12月10日付け手続補正書により明細書についての補正がされるとともに、同日付け意見書が提出された。

第2 当審が通知した拒絶の理由
当審が通知した拒絶の理由は、概略以下のとおりである。

「(理由1)
本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(理由2)
本願の請求項1から22までのそれぞれに係る発明は、いずれも、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:ヨーロッパ特許出願公開第864364号明細書
(1998年(平成10年)9月16日発行)
刊行物2:特開平5-126690号公報」

第3 理由1(特許法第36条第6項第2号)について
1.判断
請求項1の記載は、以下のとおりである。ただし、「小型軽量装置」は、明らかに「小型計量装置」の誤記であるから、以下では、引用部分も含めてすべて「小型計量装置」と記載する。

「【請求項1】
電気駆動である駆動手段、
液を計量するため、駆動手段によって駆動可能な少なくとも1つの置換手段、
特に駆動のために、プログラムで制御される電子制御及び/又は調整手段、
少なくとも1つの不揮発性読み書きメモリー、
特に電気駆動及び電子制御及び/又は調整手段のための電源、
電子制御及び/又は調整手段に接続されるデータインターフェイス、
コンピューター、
小型計量装置のデータインターフェースをコンピューターへつなぐためのデータインターフェースを有するデータ移送手段、を有する電子計量システムの操作方法であって、データインターフェイスを介してコンピューターによって、
該小型計量装置のタイプ又は該小型計量装置に特有のパラメーター及び/又は、
ユーザーパラメーター及び/又は、
操作手順を実施するためのルーチン及び/又は、
プログラム及び/又は少なくとも1つのプログラム部分が、読み書きメモリーに書き込めことができ、及び/又はこれから読むことができ、及び/又は小型計量装置が遠隔制御できることを特徴とする電子計量システムの操作方法。」

この記載から、まず、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、「電子計量システムの操作方法」の発明であることが分かる。次に、その「電子計量システム」は、「電気駆動である駆動手段」、「液を計量するため、駆動手段によって駆動可能な少なくとも1つの置換手段」、「特に駆動のために、プログラムで制御される電子制御及び/又は調整手段」、「少なくとも1つの不揮発性読み書きメモリー」、「特に電気駆動及び電子制御及び/又は調整手段のための電源」、「電子制御及び/又は調整手段に接続されるデータインターフェイス」、「コンピューター」及び「小型計量装置のデータインターフェースをコンピューターへつなぐためのデータインターフェースを有するデータ移送手段」を有することが分かる。
ここで、「小型計量装置のデータインターフェースをコンピューターへつなぐためのデータインターフェースを有するデータ移送手段、を有する電子計量システム」という部分に着目すると、上述のとおり、「電子計量システム」が「データ移送手段」を有していることが分かる。そして、その「データ移送手段」は、「データインターフェース」を有しており、さらにその「データインターフェース」は、「小型計量装置のデータインターフェースをコンピューターへつなぐ」という機能を果たすことが分かる。
ところが、請求項1の記載からは、「小型計量装置」が「データインターフェース」を備えていることは分かるものの、「電子計量システム」と「小型計量装置」との関係を理解することができない。例えば、請求項1の記載からは、「電子計量システム」が「小型計量装置」を有しているのかいないのかを理解することができないし、仮に有しているとすれば、「小型計量装置」が「電気駆動である駆動手段」や「少なくとも1つの不揮発性読み書きメモリー」などとどのような関係にあるのかを理解することができない。
したがって、本願発明は、明確でない。

2.請求人の主張について
請求人は、意見書の「3 拒絶理由の1の(3):請求項1」で、次のように主張する。

「「装置」、「小型計量装置」、「計量装置」は、すべて同じ意味で、本発明で操作する計量装置の意味です。これを明確にするため、すべてを「小型計量装置」に補正致しました。」

本願発明は、「電子計量システムの操作方法」の発明であり、その「操作」とは、具体的には、請求項1に記載された「該小型計量装置のタイプ又は該小型計量装置に特有のパラメーター及び/又は、ユーザーパラメーター及び/又は、操作手順を実施するためのルーチン及び/又は、プログラム及び/又は少なくとも1つのプログラム部分が、読み書きメモリーに書き込めことができ、及び/又はこれから読むことができ、及び/又は小型計量装置が遠隔制御できる」ことを意味している。
しかし、請求項1の記載からは、「小型計量装置」が「少なくとも1つの不揮発性読み書きメモリー」とどのような関係にあるのかを理解することができないので、「小型計量装置のタイプ」、「小型計量装置に特有のパラメーター」、「ユーザーパラメーター」、「操作手順を実施するためのルーチン」、「プログラム」又は「少なくとも1つのプログラム部分」を「不揮発性読み書きメモリー」に書き込んだり、それらを「不揮発性読み書きメモリー」から読み出したりすることが、なぜ、「小型計量装置」を操作することになるのかを理解することができない。
請求人の主張を参酌しても、本願発明は、明確であるとはいえない。

3.理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 理由2(特許法第29条第2項)について
1.本願に係る発明
(1)発明の詳細な説明及び図面の記載
上述のとおり、本願発明は明確でない。そこで、本願に係る発明を認定するために、発明の詳細な説明の記載及び図面を参酌する。
まず、図1には、「電子ピペット装置」が示されており、この「電子ピペット装置」は、「駆動手段1」、「置換手段2」、「電子制御及び/調整手段3」及び「電源4」を備えている(段落0034)。そして、「電子制御及び/調整手段3」には、「両方向インターフェース17」及び「EEPROM20」が設けられている(段落0038)。また、「電子ピペット装置」は、「小型計量装置42」である(段落0045)。
次に、図2には、「計量システム」の一例が示され(図面の簡単な説明)、その「計量システム」では、「小型計量装置42」の別の例である「小型計量装置42’」が使用されている(段落0050及び0051)。この「小型計量装置42’」は、その「インターフェイス17」に「アンテナ45」を有しており、「充電部43’」の「アンテナ47」、「HFトランスミッター・レシーバー46」及び「インターフェイス48」を介して「外部PC49」に接続される(段落0052及び0053)。
さらに、段落00054には、「PC49によって、操作パラメーター、常備プログラム、プログラム部分等が、小型計量装置42のEEPROM20に書き込め、またそこから読むことができる。更に、PC49によって小型計量装置42’の遠隔操作も可能となる。」という記載がある。ここで、「EEPROM20」が不揮発性メモリーであることは、技術常識から明らかであるし、段落0063の「不揮発性メモリー(例えばEEPROM)」という記載からも明らかである。

(2)請求項1の記載との比較
請求項1の記載と発明の詳細な説明及び図面の記載とを照らし合わせると、請求項1に記載された「駆動手段」、「置換手段」、「電子制御及び/又は調整手段」、「不揮発性読み書きメモリー」、「電源」、「電子制御及び/又は調整手段に接続されるデータインターフェイス」、「コンピューター」及び「小型計量装置のデータインターフェース」及び「データインターフェースを有するデータ移送手段」は、それぞれ具体的には、発明の詳細な説明及び図面に記載された「駆動手段1」、「置換手段2」、「電子制御及び/調整手段3」、「不揮発性メモリー(EEPROM)20」、「電源4」、「両方向インターフェース17」、「外部PC49」、「小型計量装置42’ のインターフェース17」及び「インターフェイス48を有する充電部43’」に対応することが分かる。
同様に、請求項1に記載された「小型計量装置」は、具体的には、発明の詳細な説明及び図面に記載された「小型計量装置42’」に対応すると考えられる。
そうすると、請求項1には記載されていないが、発明の詳細な説明及び図面に記載された「小型計量装置42’」が、「駆動手段1」、「置換手段2」、「電子制御及び/調整手段3」、「不揮発性メモリー(EEPROM)20」、「電源4」及び「両方向インターフェース17」を有することに対応して、請求項1に記載された「小型計量装置」は、「駆動手段」、「置換手段」、「電子制御及び/又は調整手段」、「不揮発性読み書きメモリー」、「電源」、「電子制御及び/又は調整手段に接続されるデータインターフェイス」、「コンピューター」及び「小型計量装置のデータインターフェース」及び「データインターフェースを有するデータ移送手段」を有すると解釈するのが自然である。

(3)請求項1の記載の解釈
以上のことを踏まえると、「小型計量装置」が「駆動手段」、「置換手段」、「電子制御及び/又は調整手段」、「不揮発性読み書きメモリー」、「電源」、「電子制御及び/又は調整手段に接続されるデータインターフェイス」、「コンピューター」及び「小型計量装置のデータインターフェース」及び「データインターフェースを有するデータ移送手段」を有する旨の記載が、請求項1から欠落していると推認することができる。その欠落を補うと、請求項1の記載は、以下のようになる。下線は、欠落を補って付け加えた部分である。

「【請求項1】
電気駆動である駆動手段、
液を計量するため、駆動手段によって駆動可能な少なくとも1つの置換手段、
特に駆動のために、プログラムで制御される電子制御及び/又は調整手段、
少なくとも1つの不揮発性読み書きメモリー、
特に電気駆動及び電子制御及び/又は調整手段のための電源、
電子制御及び/又は調整手段に接続されるデータインターフェイス、を有する小型計量装置、
コンピューター、
小型計量装置のデータインターフェースをコンピューターへつなぐためのデータインターフェースを有するデータ移送手段、を有する電子計量システムの操作方法であって、データインターフェイスを介してコンピューターによって、
該小型計量装置のタイプ又は該小型計量装置に特有のパラメーター及び/又は、
ユーザーパラメーター及び/又は、
操作手順を実施するためのルーチン及び/又は、
プログラム及び/又は少なくとも1つのプログラム部分が、読み書きメモリーに書き込めことができ、及び/又はこれから読むことができ、及び/又は小型計量装置が遠隔制御できることを特徴とする電子計量システムの操作方法。」

請求項1の記載が上記のとおりであると解釈すれば、本願に係る発明は、明確である。

(4)解釈の妥当性
ア.請求人の主張との整合性
既に述べたとおり、請求人は、意見書の「3 拒絶理由の1の(3):請求項1」で、次のように主張する。

「「装置」、「小型計量装置」、「計量装置」は、すべて同じ意味で、本発明で操作する計量装置の意味です。これを明確にするため、すべてを「小型計量装置」に補正致しました。」

請求項1の記載を上記(3)に示したように解釈すれば、「小型計量装置のタイプ」、「小型計量装置に特有のパラメーター」、「ユーザーパラメーター」、「操作手順を実施するためのルーチン」、「プログラム」又は「少なくとも1つのプログラム部分」は、「小型計量装置」が有する「不揮発性読み書きメモリー」に書き込まれることになり、同じく「小型計量装置」が有する「電子制御及び/又は調整手段」の制御に用いられることが理解できる。すなわち、請求人が主張するように、本願に係る発明では、「小型計量装置」が「コンピューター」によって操作されることになる。
また、請求人は、意見書の第3ページから第4ページまでにおいて、次のように主張する。

「刊行物2は、下記のものを開示していません。
・(以下のものから成る)電子小型計量装置
・置換装置(当審注:「駆動手段」の誤り。)
・駆動手段により駆動可能であって、液体を計量するための、少なくとも1つの置換手段
・特に駆動のために、プログラムで制御される電子制御及び/又は調整手段
・少なくとも1つの不揮発性読み書きメモリー
・特に電気駆動及び/又は調整手段のための電源、及び
・電子制御及び/又は調整手段に接続されるデータインターフェイス」

この主張は、明らかに、本願に係る発明の「電子小型計量装置」が「駆動手段」、「置換手段」、「電子制御及び/又は調整手段」、「少なくとも1つの不揮発性読み書きメモリー」、「電源」及び「データインターフェイス」を有することを前提にしている。
したがって、請求項1の記載を上記(3)に示したように解釈することは、請求人の主張と整合している。

イ.優先権主張証明書の記載との整合性
念のため、本願の優先権主張証明書を参照すると、その請求項1に相当する部分(Ansprueche 1.)には以下の記載がある。

「Verfahren zum Betreiben eines elektronischen Dosiersystems mit
- einer electronischen Handdosiervorrichtung (42), die ...
aufweist,
mit
- einer Datenverarbeitungsanlage (49),
und mit
- einer Datentransfereinrichtung (43), die ... aufweist, ...」

この記載は、

「…を有する電子小型計量装置(42)を備え、データ処理装置(49)を備え、そして、…を有するデータ移送手段(43)を備える電子計量システムの操作のための方法。」

という意味であり、「電子計量システム」は、「電子小型計量装置(42)」、「データ処理装置(49)」及び「データ移送手段(43)」を備えることが分かる。
一方、請求項1の記載を上記(3)に示したように解釈すると、「電子計量システム」は、「小型計量装置」、「コンピューター」及び「データ移送手段」を有することになり、コンピューターがデータ処理装置の一種であることを考慮すれば、優先権主張証明書の上記記載と同じ趣旨になる。
したがって、請求項1の記載を上記(3)に示したように解釈することは、本願のパリ条約の優先権の基礎であるドイツ連邦共和国特許出願の内容とも整合している。

(5)本願に係る発明の認定
以上に検討したとおり、請求項1の記載を上記(3)に示したように解釈することは妥当と認められる。そこで、以下、そのような解釈に従って本願に係る発明を認定し、検討を行う。

2.刊行物に記載された事項
(1)刊行物1
刊行物1には、以下の記載がある。なお、原文の引用の後に、当審で作成した日本語訳を記載する。

ア.第1欄第5行から第9行まで
「FIELD OF THE INVENTION
The invention is in the field of electronic pipetters. In
particular, the invention relates to a method for programming an
electronic pipetter.」
「発明の分野
この発明は、電子ピペッターの分野にある。特に、この発明は、電子ピペッターをプログラミングするための方法に関する。」

イ.第3欄第33行から第43行まで
「DETAILED DESCRIPTION OF THE PREFERRED EMBODIMENTS
The outside of the pipetter 100 includes a keypad with a plurality
of programming keys 1, a plurality of operating buttons 7
(preferably two), a handle for holding the pipetter 8, a nosepiece
assembly 9 and an LCD display 10, as shown in Fig. 1. The
programming keys 1, operating buttons 7 and LCD display 10 are all
electrically connected to a microprocessor computer internal to the
pipetter.」
「好ましい実施例の詳細な説明
図1に示すように、ピペッター100の外面は、複数のプログラミングキー1を有するキーパッド、複数の操作ボタン7(好ましくは2個)、ピペッターを保持するためのハンドル8、ノーズピースアセンブリ9およびLCDディスプレイ10を含む。プログラミングキー1、操作ボタン7及びLCDディスプレイ10は、全て、ピペッター内部にあるマイクロプロセッサーコンピューターに電気的に接続されている。」

ウ.第3欄第44行から第57行まで
「The microprocessor can be programmed, as discussed in more detail
below, by the operator via pressing a sequence of programming keys,
to control the aspirating and dispensing operations of the pipetter.
The microprocessor generates signals to start and stop the
aspirating and dispensing mechanism internal to the pipetter.
Aspirating and dispensing mechanisms are substantially known in the
art (see, for example, U.S. Patents 5,505,097 and 5,343,769) and
therefore will not be described further herein. The microprocessor
generates the controls signals based on the operator-selected
operating mode, the operator-selected aspirating and dispensing
parameters and the pressing of the operating buttons.」
「マイクロプロセッサーは、以下にさらに詳細に説明するように、一連のプログラミングキーの押し下げを通じて操作者によってプログラムされて、ピペッターの吸引及び分注操作を制御する。マイクロプロセッサーは、ピペッター内部の吸引分注機構を始動及び停止させるための信号を発する。吸引分注機構は、当分野で十分に知られており(例えば、合衆国特許第5,505,097号及び第5,343,769号を参照)、したがって、ここではこれ以上説明しない。マイクロプロセッサーは、操作者が選択した操作モード、操作者が選択した吸引及び分注パラメータ、並びに操作ボタンの押し下げに基づいて、制御信号を発する。」

エ.第3欄第58行から第4欄第8行まで
「Two operating buttons 7 are located on the front handle 8 of the
pipetter. Preferably, the top operating button is used to activate
aspiration, while the bottom operating button allows for dispensing.
In some of the automated modes of operation, however, either the top
or bottom button may be used to activate the aspiration and
dispensing operations. The operating buttons generally only require
a quick downward press and then immediate release by the operator to
activate the pipetter.」
「2つの操作ボタン7は、ピペッターの前部ハンドル8の上に位置する。好ましくは、上にある操作ボタンは吸引を始めるために用いられ、下にある操作ボタンは分注を準備する。しかしながら、自動化された操作モードのいくつかにおいては、上又は下にあるボタンのどちらか一方が吸引及び分注操作を始めるために用いられてもよい。ボタンの操作は、通常は、ピペッターを動作させる操作者が下向きに素早く一押しして直ちに放すだけである。」

オ.第4欄第9行から第20行まで
「The programming keys 1 include, but are not limited to, (1) a mode
key for selecting one of the available operating modes, (2) an enter
key for entering all the programming information into the computer;
(3) a down scroll key and (4) an up scroll key for scrolling through
ranges of pipet sizes, dispensing aliquot volumes and aspirating and
dispensing speeds, and for selecting a desired pipet size, aliquot
volume or aspirating or dispensing speed; (5) a speed key to change
aspirating and/or dispensing speed settings; and (6) an "oops" key
for clearing one or more previous programming steps, as shown in
Fig 2.」
「プログラミングキー1は、図2に示すように、(1)利用可能な操作モードの1つを選択するためのモードキーと、(2)全てのプログラミング情報をコンピューターに入力するための入力キーと、ピペットサイズ、分注等分量体積及び吸引分注速度の各範囲をスクロールするための、そして所望のピペットサイズ、分注等分量体積又は吸引分注速度を選択するための(3)ダウンスクロールキー及び(4)アップスクロールキーと、(5)吸引及び/又は分注速度の設定を変えるための速度キーと、(6)以前のプログラミング工程の1つ以上を消去するための「おっと、しまった」キーとを含むが、それらに限定されない。」

カ.第4欄第21行から第25行まで
「An improved LCD 10, also shown in Fig. 2, provides numerous
easy-to-understand, intuitive symbols 20, to both guide the operator
when programming the pipetter and display the status of the
pipetter. Some examples of the LCD symbols are shown in the table of
Fig. 3.」
「同じく図2に示す、改善されたLCD10は、理解しやすく直感的な多数の記号20を用意して、このピペッターをプログラミングする際に操作者を案内し、かつこのピペッターの状態を表示する。このLCDの記号のいくつかの例を図3の表に示す。」

キ.第4欄第41行から第5欄第1行まで
「The pipetter, including the microprocessor, program memory, and
aspirating and dispensing mechanisms, is preferably powered by a
rechargeable battery (NiCad, 600mAh capacity, 4.8V), although other
conventional power sources may be used. To recharge the rechargeable
battery in the pipetter, an output plug 11 of a transformer 12 is
inserted into a charging base 13, as shown in Fig. 1. The outlet
prongs of the transformer are then inserted into an AC power supply
(wall outlet 14), the input voltage of transformer being the same as
the AC power supply voltage. A green light on the charging base
indicates that power is being supplied to the charging base. The
pipetter is then inserted into the charging base to charge the
rechargeable battery. Preferably, the pipetter is turned on at all
times, even when being recharged, since switching off the pipetter
will cause any programs stored in the pipetters memory (see below)
to be lost. In general, the pipetter should only be turned off if it
is being stored for more than one week.」
「ピペッターは、マイクロプロセッサー、プログラムメモリー、及び吸引分注機構を含み、好ましくは再充電可能な電池(NiCad、600mAhの容量、4.8V)によって電力供給されるが、他の慣用の電力供給源が用いられてもよい。ピペット内の再充電可能な電池を再充電するために、図1に示すように、変圧器12の出力プラグ11を充電台13に挿入する。次に、変圧器のコンセント差し込み端を交流電源(壁面コンセント14)に挿入すると、変圧器の入力電圧が交流電源の電圧と同じになる。充電台の緑色のランプは、電力が充電台に供給されていることを示す。次に、ピペッターが充電台に挿入され、再充電可能な電池を充電する。好ましくは、ピペッターは、再充電中でも、常に電源が入っている。それは、ピペッターの電源を切ってしまうと、ピペッターのメモリーに記憶されているプログラム(以下を参照)が失われてしまうからである。一般に、ピペッターは、もし一週間より長く記憶されるのであれば、単に電源を切ればよい。」

ク.第5欄第10行から第23行まで
「The operation of the operating modes is briefly described in the
flow charts of Figs. 5a-5f, and in more detail below.
In a first embodiment of the present invention, an electronic
pipetter is provided that is capable of operating in a manual mode
(Fig. 5a). In this mode, the aspirating and dispensing modes are
controlled manually, similar to a mechanical pipetter, and no
programming by the operator is needed. The operator removes the
turned on pipetter from the charging base, which causes the computer
to display a greeting, indicating that the pipetter is operational.
Preferably, the pipetter defaults into this manual mode, thus making
the simplest use of the pipetter the first operational mode.」
「各操作モードの操作は、図5a?5fのフローチャートに簡単に説明されており、以下に詳細に説明する。
この発明の第1の実施例では、マニュアルモードでの操作が可能な電子ピペッターが提供される(図5a)。このモードでは、吸引及び分注モードは、機械式ピペッターと同様に手動で制御され、操作者によるプログラミングを全く必要としない。操作者が電源の入ったピペッターを充電台から取り出すと、コンピューターは挨拶を表示し、ピペッターが使用可能であることを示す。好ましくは、ピペッターは、既定設定でこのマニュアルモードになり、したがって、ピペッターのこの最も簡単な使用法を第1の操作モードにする。」

ケ.第5欄第44行から第57行まで
「The operator then submerges the attached tip or pipet into the
liquid medium for aspiration. The operator then simply presses the
aspiration operating (top) button to cause aspiration. The computer
then commands the aspirating mechanism to begin creating a vacuum,
which sucks the liquid into the pipet. After the liquid has been
sucked into the pipet, the operator removes the pipet from the
liquid. The operator then aims the pipet at, for example, the tissue
culture petri dish, and dispenses the aspirated liquid medium into
the dish by pressing the dispensing operating (bottom) button.
Pushing this button causes the computer to generate a command to the
dispensing mechanism to begin dispensing the liquid out of pipet.」
「次に、操作者は、吸引のために、取付けたチップ又はピペットを液体培地に浸す。次に、操作者は、吸引操作(上部)ボタンを押すだけで、吸引を起こさせる。次に、コンピューターは、吸引機構に、真空を発生させるように指令し、それが液体をピペットに吸い込む。液体がピペットに吸い込まれた後、操作者はピペットを液体から離す。次に、操作者は、ピペットの照準を、例えば、組織培養ペトリ皿に合わせ、分注操作(下部)ボタンを押すことによって、吸引された液体培地をその皿に分注する。このボタンの押し下げによって、コンピューターは、分注機構に、その液体をピペットから分注し始めるように指令を発する。」

コ.第6欄第12行から第57行まで
「In a second embodiment of the present invention, as shown in
Fig. 5c, an electronic pipetter is provided that is capable of
operating in a manual aspirating, programmed dispensing ("quick-
shot") mode, in which the operator programs the pipetter to a
desired aliquot volume. This mode requires programming by the
operator and is thus a little more complicated than the manual mode.
It is thus preferably and intuitively provided as the second
operating mode, after the default manual mode, to the operator.
To enter the quick shot mode, the operator presses the mode key
until the quick shot mode symbol appears on the LCD. The operator
then presses the enter key to enter the quick shot mode into the
computer. Next, the LCD asks the operator to program the dispensing
aliquot volume. To locate the desired dispensing aliquot volume, the
operator presses the down or up scroll keys. After the operator has
selected the dispensing aliquot volume, the operator presses the
enter key to enter that information into the computer. This causes
computer to display on the LCD the "fill" symbol, which tells the
operator that the aspiration may begin. The operator then submerges
the pipette into the liquid medium and aspirates the liquid medium
by pressing the aspirating operating button as in the manual mode
described above. Because aspiration is manually controlled, it is
preferable that the operator attaches a large pipet, such as a 25 ml
pipet, to the pipetter to match the largest volume that can be
aspirated to prevent overfilling and wetting out of the filter.
After the pipet is manually filled, the operator preferably keeps
the pipet in the media bottle and presses the dispensing button
once. This will dispense a small amount of fluid. The operator then
removes the pipet from the media bottle. The LCD will now be caused
to display the available number of aliquots. The operator then
presses and releases the dispensing button to cause the computer to
generate a control signal to the dispensing mechanism to dispense a
single aliquot of the aspirated liquid. After each aliquot is
dispensed, the LCD displays the remaining number of aliquots by
deducting one aliquot from the last displayed number. After the last
full aliquot is dispensed, the LCD displays a "blowout" symbol, and
any excess fluid remaining in the pipet can be blown-out by pressing
the dispensing button one additional time as described above.」
「この発明の第2の実施例は、図5cに示すように、操作者がピペッターを所望の分注等分量体積へとプログラムする手動吸引プログラム分注モード(クイックショットモード)で操作可能な電子ピペッターを提供する。このモードは、操作者によるプログラミングを必要とし、したがって、マニュアルモードより多少複雑である。したがって、それは、好ましくかつ直感的に、既定設定のマニュアルモードの後に、第2の操作モードとして提供される。
クイックショットモードに入るために、操作者は、クイックショットモードの記号がLCDに表示されるまでモードキーを押す。次に、操作者は、入力キーを押して、クイックショットモードをコンピューターに入力する。次に、LCDは、操作者に、分注等分量体積をプログラムするよう依頼する。所望の分注等分量体積を設定するために、操作者は、ダウンスクロールキー又はアップスクロールキーを押す。操作者は、分注等分量体積を選択した後、入力キーを押して、その情報をコンピューターに入力する。その結果、コンピューターは、LCDに「充填」という記号を表示する。この記号は、操作者に、吸引が始まってもよいことを知らせる。操作者は、それから、ピペットを液体培地に浸し、上述のマニュアルモードのように、吸引操作ボタンを押すことによって、その液体培地を吸引する。吸引は手動によって制御可能なので、操作者は、過剰充填したりフィルタを濡らしたりしないで吸引できる最大体積に合わせて、25mlピペットのような大きなピペットをピペッターに取り付けることが好ましい。
ピペットを手動によって充填した後、操作者は、好ましくはピペットを培地ビンの中に保持して分注ボタンを1回押す。これにより、少量の流体が分注されるであろう。操作者は次に、ピペットを培地ビンから取り出す。ここで、LCDは利用可能な等分量の数を表示するようになる。次に、操作者が分注ボタンを押して放すと、コンピューターが制御信号を発して、分注機構に吸引した液体の1等分量を分注させる。等分量を分注するたびに、LCDは、最後に表示された数から1等分量を差し引くことによって、等分量の残りの数を表示する。最後の完全な等分量が分注された後、LCDは、「排出」記号を表示し、ピペットの中に残っている過剰の流体があれば、分注ボタンをさらにもう1回上述のように押すことによって排出することができる。」

刊行物1に記載された電子ピペッターは、吸引分注機構を有し(上記ウ.)、その吸引分注機構で液体培地を吸引し、あらかじめ設定された体積の等分量を分注し(上記コ.)、しかも、再充電可能な電池によって電力供給される(上記キ.)から、吸引分注機構を電気駆動するための何らかの駆動手段を有していることは明らかである。
また、操作者によるプログラミングを全く必要としないマニュアルモードと、操作者によるプログラミングを必要とするクイックショットモードとを有し、しかも、クイックショットモードにおいては、所望の分注等分量体積を設定することができる(上記ク.及びコ.)。そして、プログラムは、メモリーに記憶され(上記キ.)、吸引分注機構は、そのプログラムに従って動作する(上記コ.)。したがって、プログラムをメモリーに書き込んだり、メモリーから読み取ったりすることができるようになっていることは明らかである。

以上のことを踏まえて、上記ア.からコ.までの記載と図1から3まで、5a及び5cに示された事項とを総合すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「電気駆動である駆動手段、
液体培地を吸引し、あらかじめ設定された体積の等分量を分注するため、駆動手段によって駆動される吸引分注機構、
プログラムされて吸引及び分注操作を制御するマイクロプロセッサー、
読み書き可能なプログラムメモリー、
再充電可能な電池、
複数のプログラミングキーを有するキーパッド、
LCDディスプレイ、
を有する電子ピペッターの操作方法であって、
キーパッドの複数のプログラミングキーを押すことによって、プログラムをメモリーに書き込んだりメモリーから読み取ったりすることができる
電子ピペッターの操作方法。」

(2)刊行物2
刊行物2には、以下の記載がある。

ア.段落0001及び0002
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は液体を複数の容器に分注するための液体分注装置に関する。
【0002】
【従来の技術】液体分注作業は、生物細胞等の培養を行うフラスコ、シャーレ、マイクロプレート等の培基の多数に液体培地を分注したり、各種検査において多数の試験管等へ検査用液を分注したりする等、各種分野で行われている。この液体分注を行う装置として広く知られているものに、シリンジポンプを備えた装置が知られている。このタイプの装置は把持部を有する分注操作ハンドルにシリンジポンプが内蔵されており、該ポンプの吐出口に一本のピペットと呼ばれる分注ノズルを接続したものである。この装置によると、該ノズルを液体収容容器に挿入してポンプを吸引動作させ、所定量の液をノズル内に吸引し、そのあとノズルを容器から出して分注を行う他の容器、例えばフラスコやシャーレ等に運び、それらへ液を吐出、分注する。」

イ.段落0025及び0026
「【0025】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1は本発明の1実施例の全体の構成を示す図である。図2から図7はチュービングポンプを説明するための図である。図8から図12は分注ヘッドを説明するための図である。このうち図8は分注操作ハンドルも示している。図13及び図14はチュービングポンプのモータの操作、制御系を説明するための図である。
【0026】この分注装置は、例えば、研究室、実験室等において生物細胞等の培養を行うフラスコ、シャーレ、マイクロプレート等の培基に液体培地を分注するのに適しており、図1に示すように、チューブ6、該チューブを装着したチュービングポンプPM、チューブ6に接続される分注ヘッドh1及びh2、該分注ヘッドを支持する分注操作ハンドルHL、ポンプPMを移動可能に支持する架設台106を備えている。ポンプPMにはポンプロータ部材を回転駆動するモータの制御部MC等が備わっており、ハンドルHLにはトリガー信号発信部PCが搭載されている。」

ウ.段落0051及び0052
「【0051】…(略)…図8は分注ヘッドh1及びこれを支持するための分注操作ハンドルHLの斜視図である。図9は分注ヘッドの一部の断面図、図10は分注ノズルにおける均等分岐部の詳細を示す図、図11は分注ヘッドと分注操作ハンドル相互の着脱機構の説明図である。
【0052】この分注ヘッドh1は、ヘッド本体11、本体11に1列に固定配設した8本の分注ノズル12、本体11に固定した均等分岐部13、均等分岐部13とノズル12を連設する8本のチューブ14(図9では省略、図10参照)、本体11に設けた分注チップ脱離機構15、及び把持部160を有するハンドルHLとの着脱機構16(図11参照)の一部を備えている。各分注ノズル12は内外面とも円錐形状の先細の分注チップ17(図9参照)を装着される。」

エ.段落0064から0066まで
「【0064】…(略)…
(6)トリガー信号発信部PC
トリガー信号発生部PCは、図8に示すように、分注操作ハンドルHLに搭載してある。該信号発生部PCは、図8及び図13に示すように、電池51から給電されるリモートコントロール信号の送信回路52を含み、自動復帰可能の押しボタンスイッチ53の閉成により赤外線発光ダイオード部54からポンプ操作のためのトリガー信号を出力する。
(7)モータ制御部MC等
モータ制御部MC(図1参照)は、図13に示すように、ポンプフレーム10に内蔵したマイクロコンピュータCPU2、これに接続されたインターフェース回路84、リモートコントロール信号受信回路85(図1、図2も参照)、モータドライバ86を含んでいる。図13中、870はクロックジェネレータである。モータドライバ86はポンプロータ部材2の回転モータであるステッピングモータ22に接続されている。また、コンピュータCPU2には、ポンプカバー44の開閉状態を知らせるリミットスイッチLS1、後述するフォトセンサ89及び警報ブザーBZも接続されている。
【0065】一方、各種モード選択、分注条件データ設定等のためのボックス8が備わっており、該ボックスには、マイクロコンピュータCPU1、これに接続されたキーボード81、液晶表示部82及びインターフェース回路83が含まれている(図1及び図2も参照のこと)。該ボックス8はポンプフレーム10に脱着可能となっており、インターフェース回路83、84が伸縮可能な通信ケーブル87にて接続されている。なお、図2中、SWは商用電源からの給電をオン・オフするメインスイッチ、Fはヒューズである。
【0066】前記キーボード81は、図2に示すように、準備モードを選択する「PREPA」キー、校正モードを選択する「CALIB」キー、運転モードを選択する「OPE」キーを含み、これらによって、いずれかのモードを選択できる。また、各種設定等を行うための「SELECT」キー、「ENTER」キー、テンキー、プログラムジャンプ用の「P/D」キー、設定操作にジャンプする「PRESET」キー、クリアー処理を行う「CLEAR」キーを有する。」

オ.段落0068から0073まで
「【0068】ボックス8におけるコンピュータCPU1は、キーボード81のキーの操作による入力データ(分注条件データ、ピペティング条件データ等)を保管し、これを表示部82に表示させる一方、通信回路87にて設定データとしてマイクロコンピュータCPU2へ送る。また、コンピュータCPU2からポンプ動作状態データを受けとって表示部82に表示させる。
【0069】次にキーボード等の操作とそれに基づく各部の動作を図16から図18を参照して説明する。図18に示すように、先ず、メインスイッチSWをいれると(ステップA1)、表示部82がモード選択指示を表示する(ステップA2)。以下、各ステップについては「ステップ」の文字を省略し、単にA1、A2・・・という。次に「PREPA」キー、「CALIB」キー又は「OPE」キーにて準備モード、校正モード又は運転モードを選択する(A3)。すると、表示部82が選択したモードを表示する(A4)。通常は、当初、準備モードが選択される。いま、準備モードを選択したときは、ここで、必要に応じポンプカバー44を開け、チューブ6をポンプPMにセットし、該チューブの一端を液体収容容器BTに差し入れる一方、チューブ他端を分注ヘッドh1又はh2に接続する。ヘッドh1を使用するときは、この段階では、分注チップ17を未だ装着しない。ヘッドh2を使用するときは、これにピペット19を装着しておく。ヘッドh1については分注操作ハンドルHLの本体部分に装着し、ヘッドh2についてはハンドルHLのクリップ166に装着する。このような準備が完了すると、「ENTER」キーを押す(A5)。すると、表示部82は前回選択されていた分注モード又はピペティングモードを表示する(A6)。ここで表示どおりのモードでよいなら、そのまま「ENTER」キーを押すが(A7)、表示と異なるモードを選択するなら、「SELECT」キーを押して所望のモードを選択し(A71)、次いで「ENTER」キーを押す(A7)。
【0070】いま、かかる操作で分注モードを選択した場合を例にとると、表示部82は前回選択していた分注ヘッドの液吐出口数によるモード、すなわちヘッドh2及びピペット19を使用する1チャンネルモード、又はヘッドh1及び分注チップ17を用いる8チャンネルモードを表示する(A8)。そのままのモードでよいなら、「ENTER」キーを押し(A9)、他方のモードを選択するなら「SELECT」キーを押してモード選択したのち(A91)、「ENTER」キーを押す(A9)。
【0071】次に、表示部82を見つつテンキーにより一回の分注量を設定する(A10)。分注量設定が終了すると、「ENTER」キーを押して、これを確定する(A11)。次に、表示部82は前回設定の分注繰り返し回数を表示するので、そのまま、又はテンキーにて新たな分注繰り返し回数を設定し(A12)、「ENTER」キーでこれを確定する(A13)。次に表示部82は前回設定の分注時間間隔を表示するので、そのまま、又はテンキーにて新たな時間間隔を設定し(A14)、「ENTER」キーにて確定する(A15)。前記分注量、繰り返し回数、時間間隔の各設定において、設定をやり直すときは、「CLEAR」キーを押し、再度設定すればよい。
【0072】次に図17に示すように、表示部82は前回設定の液充填モード又は液排出モードを表示するので、そのまま、又は「SELECT」キーを押して所望のモードを選択する(A16)。分注を行う場合は、通常、ここで液充填モードが選択される。液充填モードを選択すると、ステップA17において、分注操作ハンドルHL上のトリガー信号発信部PCにおけるスイッチ53を押し、トリガー信号を出力させる。この信号はモータ制御部MCの信号受信部85に受信され、CPU2の指示に基づいてポンプモータ22が回転し始める。
【0073】分注ヘッドh1が使用されていると、該ヘッドに所望量の液充填が行われたことを目視検出し、再びトリガー信号を出力させる。すると、モータ制御部MCはモータ22を停止させる。ここで、ヘッドh1の分注ノズル12に分注チップ17を装着し、再びトリガー信号を出力させ、液充填を再開する。このとき、ポンプ22は制御部MCの指示のもとに前より低速回転する。チップ17への液充填を目視検出すると、再びトリガー信号を出力させる。これにより、モータ22が停止し、液充填が完了する。…(略)…」

カ.段落0079
「【0079】このように運転モードが選択されると、次にトリガー信号を出力させる(A251)。すると、既に設定された分注量、分注繰り返し回数、分注時間間隔に従って分注が開始される。表示部82は残り回数を順次表示する(A26)。分注が終了すると、マイクロコンピュータCPU2がポンプモータ22を停止させる(A27)。」

刊行物2には、培基に液体培地を分注する分注装置が記載されており、その分注装置は、チュービングポンプPM、チューブ6及び分注ヘッドh1などから構成される(上記ア.及びイ.)。そして、チュービングポンプPMは、モータ制御部MCを備えており、モータ制御部MCは、マイクロコンピュータCPU2とそれに接続されたインターフェース回路84とを含んでいる(上記エ.(特に段落0064))。また、モータ制御部MCは、脱着可能なボックス8を備えており、ボックス8は、マイクロコンピュータCPU1と、それに接続されたキーボード81、液晶表示部82及びインターフェース回路83とを備えている。さらに、インターフェース回路83とインターフェース回路84とは、通信ケーブル87(又は通信回路87)で接続されている(上記エ.(特に段落0065)及び上記オ.(特に段落0068))。
ここで、ボックス8は、分注装置の一部であるチュービングポンプPMが備えるモータ制御部MCに脱着可能に設けられているから、結局のところ、分注装置に脱着可能に設けられているといえる。
ボックス8は、各種モード選択、分注条件データ設定等に用いられ(上記エ.(特に段落0065))、マイクロコンピュータCPU1は、キーボード81のキー操作で入力された、分注条件データ、ピペティング条件データ等を保管し、それを液晶表示部82に表示させるとともに、通信回路87を通じてマイクロコンピュータCPU2に送る(上記オ.(特に段落0068))。また、マイクロコンピュータCPU1は、マイクロコンピュータCPU2からポンプ動作状態データを受け取り、液晶表示部82に表示させる。ここで、分注条件データ、ピペティング条件データ等とは、具体的には一回の分注量、分注繰り返し回数、分注時間間隔である(上記オ.(特に段落0070及び0071))。

以上のことを踏まえて、上記ア.からカ.までの記載と図1、2、8及び13のそれぞれに示された事項とを総合すると、刊行物2には、

「マイクロコンピュータCPU1とそれに接続されたキーボード81、液晶表示部82及びインターフェース回路83とを有するボックス8を、チュービングポンプPM、チューブ6及び分注ヘッドh1などから構成される分注装置に脱着可能に設け、マイクロコンピュータCPU1が、キーボード81のキー操作で入力された一回の分注量、分注繰り返し回数、及び分注時間間隔を液晶表示部82に表示させるとともに、インターフェース回路83、通信回路87及び分注装置に設けられたインターフェース回路84を通じて、分注装置のマイクロコンピュータCPU2に送る」

という技術事項(以下、「技術事項2」という。)が記載されている。

3.対比
本願に係る発明と引用発明1とを比較すると、以下のとおりである。

引用発明1の「電気駆動である駆動手段」は、本願に係る発明の「電気駆動である駆動手段」に相当する。
引用発明1の「液体培地を吸引し、あらかじめ設定された体積の等分量を分注する」は、本願に係る発明の「液を計量する」に相当する。また、本願に係る発明の「置換手段」は、段落0002に「電子計量装置は、実験室での液体の計量に用いられている。それらには種々のものが知られている。エアークッション原理による計量装置は、一体的なピストン-シリンダーユニットを有している。これによって、空気柱が移動し、試料液が計量シリンジに吸引され、排出される。」と記載されているように、液体を吸引し、排出するための手段であるから、引用発明1の「吸引分注機構」は、本願に係る発明の「置換手段」に相当する。したがって、引用発明1の「液体培地を吸引し、あらかじめ設定された体積の等分量を分注するため、駆動手段によって駆動される吸引分注機構」は、全体として、本願に係る発明の「液を計量するため、駆動手段によって駆動可能な少なくとも1つの置換手段」に相当する。
引用発明1の「プログラムされて吸引及び分注操作を制御するマイクロプロセッサー」は、本願に係る発明の「特に駆動のために、プログラムで制御される電子制御及び/又は調整手段」に相当する。
引用発明1の「読み書きプログラムメモリー」と本願に係る発明の「少なくとも1つの不揮発性読み書きメモリー」とは、「少なくとも1つの読み書きメモリー」である点で共通する。
引用発明1の「再充電可能な電池」は、本願に係る発明の「特に電気駆動及び電子制御及び/又は調整手段のための電源」に相当する。
引用発明1の「複数のプログラミングキーを有するキーパッド」及び「LCDディスプレイ」と本願に係る発明の「コンピューター」とは、「プログラム入力手段」である点で共通する。
引用発明1の「プログラムをメモリーに書き込んだりメモリーから読み取ったりすることができる」は、本願に係る発明の「プログラム…(略)…が、読み書きメモリーに書き込めことができ、及び…(略)…これから読むことができ…(略)…る」に相当する。
引用発明1の「電子ピペッター」は、液体培地を吸引し、あらかじめ設定された体積の等分量を分注するだけでなく、プログラミングによって所望の分注等分量体積を設定することができるから、本願に係る発明の「電子計量システム」に相当し、引用発明1の「電子ピペッターの操作方法」は、本願に係る発明の「電子計量システムの操作方法」に相当する。

そうすると、本願に係る発明と引用発明1とは、

「電気駆動である駆動手段、
液を計量するため、駆動手段によって駆動可能な少なくとも1つの置換手段、
特に駆動のために、プログラムで制御される電子制御及び/又は調整手段、
少なくとも1つの読み書きメモリー、
特に電気駆動及び電子制御及び/又は調整手段のための電源、
プログラム入力手段、
を有する電子計量システムの操作方法であって、
プログラムが、読み書きメモリーに書き込めことができ、及びこれから読むことができる
電子計量システムの駆動方法。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
少なくとも1つの読み書きメモリーが、本願に係る発明では、「不揮発性」であるのに対し、引用発明1では、そのような特定がされていない点。

(相違点2)
本願に係る発明は、プログラム入力手段が「コンピューター」であり、「電子計量システム」のその他の部分である「小型計量装置」から分離されており、それに伴って、「電子制御及び/又は調整手段に接続されるデータインターフェイス」及び「小型計量装置のデータインターフェースをコンピューターへつなぐためのデータインターフェースを有するデータ移送手段」を備えているのに対し、引用発明1は、プログラム入力手段が「複数のプログラミングキーを有するキーパッド」及び「LCDディスプレイ」であり、「電子ピペッター」(本願に係る発明の「電子計量システム」に相当する。)のその他の部分と一体になっている点。

4.相違点についての判断
相違点についての判断は、以下のとおりである。

(1)相違点1について
刊行物1には、電子ピペッターの電源を切るとメモリーに記憶されているプログラムが失われてしまう旨の記載があり、これは、メモリーが揮発性であることを意味する。しかし、刊行物1には、それに加えて、プログラムが一週間より長くメモリーに記憶される場合についての記載もある(上記2.(1)キ.)。したがって、刊行物1には、引用発明1の「読み書きプログラムメモリー」として、揮発性のものを使用することが記載されているだけでなく、一定期間揮発しないものを使用することも示唆されている。
引用発明1の「読み書きプログラムメモリー」として不揮発性のものを使用することは、この示唆に従って当業者が容易に思い付くことである。

(2)相違点2について
引用発明1は、液体培地をペトリ皿に分注する電子ピペッターの発明である(上記2.(1)ケ.)。一方、技術事項2は、チュービングポンプPM、チューブ6及び分注ヘッドh1などから構成される分注装置に関する技術事項であり、また、液体培地をシャーレに分注する分注装置に関する技術事項である(上記2.(2)イ.)。したがって、引用発明1に係る電子ピペッターと、技術事項2に係る、チュービングポンプPM、チューブ6及び分注ヘッドh1などから構成される分注装置とは、液体培地を培基に分注する分注装置である点で共通する。両者はまた、1回の分注量などをプログラム可能である点(上記2.(1)コ.に対して、上記2.(2)オ.)でも共通し、さらに、制御手段(「マイクロプロセッサー」に対して、「マイクロコンピュータCPU2」)、プログラムのキー入力手段(「キーパッド」に対して、「キーボード81」)、及び液晶表示手段(「LCDディスプレイ」に対して、「液晶表示部82」)を備えている点(上記2.(1)オ.及びカ.に対して、上記2.(2)オ.)でも共通する。
これらの共通点を踏まえると、引用発明1において、プログラムのキー入力手段である「複数のプログラミングキーを有するキーパッド」(技術事項2の「キーボード81」)及び液晶表示手段である「LCDディスプレイ」(技術事項2の「液晶表示部82」)を、「電子ピペッター」(技術事項2の「チュービングポンプPM、チューブ6及び分注ヘッドh1などから構成される分注装置」)に脱着可能な「ボックス」に設けることは、技術事項2の「…キーボード81、液晶表示部82…を有するボックス8を、チュービングポンプPM、チューブ6及び分注ヘッドh1などから構成される分注装置に脱着可能に設け…る」という示唆に基づいて、当業者が容易に思い付くことである。そして、そのためには、「キーパッド」及び「LCDディスプレイ」に接続されたマイクロコンピュータ(技術事項2の「マイクロコンピュータCPU1」)をボックス内に設けるとともに、データインターフェイス(技術事項2の「インターフェース回路83、84」)及びデータ移送手段(技術事項2の「通信ケーブル87」又は「通信回路87」)で、「電子ピペッター」とボックスとを接続する必要があることも、技術事項2に示されているとおりである。
その結果として得られたボックスは、マイクロコンピュータとそれに接続されたキーパッド及びLCDディスプレイとを備えているから、本願に係る発明の「コンピューター」に相当することは明らかである。また、「電子ピペッター」のその他の部分は、結果的に、本願に係る発明の「小型計量装置」に相当することになると認められる。

(3)判断のまとめ
以上のとおりであるから、本願に係る発明は、引用発明1と技術事項2とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.請求人の主張について
(1)相違点の認定に関する主張
請求人は、意見書の第3ページで、相違点1及び2について

「審判官もすでに述べているように、本発明の補正後の請求項1の要旨は、刊行物1とは以下について相違しています。
・不揮発性メモリーである読み書きメモリー
・外部のコンピューター
・電子制御及び/又は調整手段に接続されるデータインターフェイス
・(更に下記を備える)データ移送手段
・計量装置のデータインターフェイスをコンピューターに接続するデータインターフェイス
これらについては、刊行物1及び2にはまったく記載されていません。」

と述べた上で、

「このほかにも、補正後の請求項1は刊行物1とはさらに以下の点で大きく相違しています。
・装置のタイプ又は装置に特有のパラメータ及び/又は
・ユーザーパラメーター及び/又は
・操作手順を実施するためのルーチン及び/又は
・プログラム及び/又は少なくとも1つのプログラム部分が読み書きメモリーに書き込むことができ、及び/又はこれから読むことができ、及び/又は小型計量装置が遠隔制御できます。」

と述べて、第3の相違点があると主張する。
しかし、上記2.(1)で述べたとおり、引用発明1は、「プログラムをメモリーに書き込んだりメモリーから読み取ったりすることができる」ものである。そして、上記3.で述べたとおり、これは、本願に係る発明の「プログラム…(略)…が読み書きメモリーに書き込むことができ、及び…(略)…これから読むことができ…(略)…る」に相当するから、本願に係る発明と引用発明1とは、この点で一致している。
したがって、第3の相違点があるという請求人の主張は、採用することができない。

(2)相違点1に関する主張
請求人は、意見書の第3ページで、相違点1について次のように主張する。

「審判官は、見当たらない不揮発性メモリーに関しては、刊行物1のメモリーは刊行物1の第2欄56?58行目に示されているように揮発性であると述べています。審判官は刊行物1が不揮発性メモリーも開示しているという見解と思われます。この審判官の主張は、刊行物1の次の文章(第2欄58?第3欄1行目)に基づいていると思われます。
しかしながら、この文章は、ピペッターのメモリーのプログラムが、ピペッターのスイッチが切られた後保管されるということを全く示していません。逆にこの文章のひとつ前の文章(刊行物1の第2欄の56?58行目)において、
「ピペッターのスイッチ・オフにより、ピペッターメモリー(下記参照)に貯蔵されている何らかのプログラムを失なわしめるので、望ましくは、このピペッターは、再度の充電の際にも常時スイッチを入れておく」ということを開示しています。
刊行物1は、絶対に本発明の請求項1の要旨の前述した相違点のいずれも開示も示唆もしていません。」

請求人が主張するとおり、また、上記2.(1)キ.に記載したように、刊行物1には、「好ましくは、ピペッターは、再充電中でも、常に電源が入っている。それは、ピペッターの電源を切ってしまうと、ピペッターのメモリーに記憶されているプログラム(以下を参照)が失われてしまうからである。」という記載がある(第4欄第54行から第58行まで)。これは、確かに、メモリーが揮発性であることを意味している。しかし、刊行物1には、それに続けて、「一般に、ピペッターは、もし一週間より長く記憶されるのであれば、単に電源を切ればよい。」という記載もある(第4欄第58行から第5欄第1行まで)。これは、電源を切っても、ピペッターのメモリーに記憶されているプログラムが一定期間保持されること、つまり、一定期間は揮発しないメモリーが使用されることを示唆している。
この示唆に従って、引用発明1の「読み書きプログラムメモリー」として不揮発性のものを使用することは、当業者にとって何ら困難なことではない。
相違点1に関する請求人の主張は、採用することができない。

(3)相違点2に関する主張
請求人は、意見書の第3ページから第4ページまでにおいて、相違点2について次のように主張する。

「審判官は刊行物1及び2は、培養液を分配する分配装置の発明であるという点で互いに共通しているという見解を示しています。しかしながら、刊行物2は操作ハンドルHLと、トリガー信号伝達部PCから成る分配ヘッドとを開示しています。操作ハンドルは、チューブ6に接続され、チューブ6はチュービングポンプPMを介して液体貯蔵容器BTに接続されています。ポンプは、トリガー信号受信部を有するコントローラーMCによって制御されます。ハンドルの使用者が、ハンドルにあるボタン53を押すと、ハンドルは赤外線トリガー信号を、コントローラーMCの受信部へ送ります。それからコントローラーが、あらかじめ設定された分配操作に従ってポンプモーターを駆動します。
刊行物2は、下記のものを開示していません。
・(以下のものから成る)電子小型計量装置
・置換装置
・駆動手段により駆動可能であって、液体を計量するための、少なくとも1つの置換手段
・特に駆動のために、プログラムで制御される電子制御及び/又は調整手段
・少なくとも1つの不揮発性読み書きメモリー
・特に電気駆動及び/又は調整手段のための電源、及び
・電子制御及び/又は調整手段に接続されるデータインターフェイス

刊行物2によれば、置換手段、電気駆動、電源及びメモリーを伴う電子制御は、使用者のハンドルから離れた、使用者のハンドルに一体的に組み込まれてはいない固定状(静止状)のものです。このハンドルは、チュービング6の出口と、固定状のポンプPMを始動させるトリガー機構とを、保持しているだけです。
刊行物2は、本発明の請求項1が開示するプログラムも、ルーチンも、パラメータも開示もしくは示唆していません。
刊行物2のコントローラMCは、あらかじめ設定された分配操作モードに従い、単にポンプPMを制御するだけです。したがって、コントローラーMCは、本発明の請求項1が教示するコンピューターとはまったく別です。」

まず、請求人が主張するとおり、刊行物1に記載された電子ピペッターと刊行物2に記載された分注装置とは、構造が異なる。また、駆動手段、置換手段などからなる電子小型計量装置そのものは、刊行物2に記載されていない。
しかし、上記3.で述べたとおり、両者とも液体培地を培基に分注する分注装置であることには変わりがないし、両者は、1回の分注量などをプログラム可能である点や、制御手段、プログラムのキー入力手段及び液晶表示手段を備えている点で共通する。また、駆動手段、置換手段などからなる電子小型計量装置は、刊行物1に記載されている。そして、構造が異なるからといって、また、駆動手段、置換手段などからなる電子小型計量装置そのものが刊行物2に記載されていないからといって、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された技術事項を適用することが困難になるとはいえない。
次に、請求人は、プログラム、ルーチン、パラメータが刊行物2に記載されていないと主張する。
本願に係る発明におけるパラメータは、例えば「操作パラメータ(ピストン前進のステップ幅、計量速度、充電条件基準、表示)」(段落0013)である。一方、刊行物2には、分注装置の分注量、繰り返し回数、時間間隔を設定することが記載されており(上記2.(2)オ.)、これらが「操作パラメータ」に該当することは明らかである。
さらに、請求人は、刊行物2に記載された「モータ制御部MC」は、本願に係る発明の「コンピューター」とは別物であると主張する。
しかし、上記4.(2)で述べたとおり、本願に係る発明の「コンピューター」に相当するのは、刊行物2に記載された「ボックス8」であって、「モータ制御部MC」ではないから、請求人の主張は当たらない。
相違点2に関する請求人の主張は、いずれも採用することができない。

6.理由2についてのまとめ
以上に検討したとおり、本願に係る発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明1)と刊行物2に記載された技術事項(技術事項2)とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
本願発明は明確でないから、本願は、特許請求の範囲が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本願に係る発明は、刊行物1及び2のそれぞれに記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について審理するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-21 
結審通知日 2013-01-08 
審決日 2013-01-21 
出願番号 特願平11-313613
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01F)
P 1 8・ 537- WZ (G01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 羽飼 知佳田邉 英治  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 飯野 茂
山川 雅也
発明の名称 電子計量システムの駆動方法及び計量システム  
代理人 永田 久喜  

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