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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1276150
審判番号 不服2011-24614  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-15 
確定日 2013-07-04 
事件の表示 特願2007-118335「保存性が優れた弁当」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月13日出願公開、特開2008-271831〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年4月27日の出願であって、平成23年5月12日付け拒絶理由通知に対して、同年7月13日付けで意見書及び手続補正書が提出された後、同年8月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月15日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで特許請求の範囲の全文についての手続補正がなされたものである。

第2 平成23年11月15日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成23年11月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の請求項1に記載された発明
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1の
「【請求項1】
ご飯が充填された弁当において、弁当内部の雰囲気が窒素ガスで置換され、弁当内部が密閉されていることを特徴とする、弁当。」
を、
「【請求項1】
ご飯及び惣菜が充填された弁当において、弁当内部の雰囲気が窒素ガスで置換され、弁当
内部が密閉されていることを特徴とする、弁当。」
(下線は補正箇所を示す。)とする補正を含むものである。

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「弁当」が「ご飯が充填された」ものから「ご飯及び惣菜が充填された」ものとし、ご飯だけでなくて惣菜も充填されたものに限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか)について、以下に検討する。

2 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願日前に頒布された刊行物1(原査定の引用文献3)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。

(1)刊行物1:特開平4-222579号公報の記載事項

(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】シートを真空成形して弁当容器を製造する真空成形機構と、この成形された弁当容器を洗浄し殺菌する洗浄・殺菌機構と、この洗浄殺菌された弁当容器に食物を盛り付ける盛付機構と、食物が盛り付けられた弁当容器の上面を被覆するようにシールするシール機構と、このシールされた弁当容器の内部空間から空気を脱気すると共に、この内部空間に不活性ガスを充填する脱気・不活性ガス充填機構と、を具備することを特徴とする、長期保存可能弁当の製造装置。」

(1b)「【0001】
【発明の技術分野】本発明は、長期保存可能弁当の製造装置に関し、詳しくは、食物の腐敗などを防止するだけでなく、食物の鮮度、風味、香を劣化させることなく、長期間保存可能な弁当を大量に製造できる、長期保存可能弁当の製造装置に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】旅先、行楽地、職場などにおいて、弁当を食する機会は多いが、弁当は、特に夏期においては食中毒発生の危険性から、製造後例えば6時間以内というように一定時間内に食事に供さなければならなかった。したがって、弁当を製造する側の立場からすれば、その喫食時刻から逆算して一定時間内に弁当を製造しなければならないことを意味し、その結果、弁当製造コストの高騰を招くとともに弁当の量産を妨げていた。
また、弁当を食する側の立場からすれば、製造後時間の経過した弁当は、鮮度、風味、味などが劣化するといった問題もあった。」

(1c)「【0003】
【発明の目的】本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、食物の腐敗などを防止するだけでなく、食物の鮮度、風味、香を劣化させることなく、長期間保存可能な弁当を大量に製造できる、長期保存可能弁当の製造装置を提供することを目的としている。
【0004】
【発明の概要】この目的を達成するため、本発明に係る長期保存可能弁当の製造装置は、シートを真空成形して弁当容器を製造する真空成形機構と、この成形された弁当容器を洗浄し殺菌する洗浄・殺菌機構と、この洗浄殺菌された弁当容器に食物を盛り付ける盛付機構と、食物が盛り付けられた弁当容器の上面を被覆するようにシールするシール機構と、このシールされた弁当容器の内部空間から空気を脱気すると共に、この内部空間に不活性ガスを充填する脱気・不活性ガス充填機構と、を具備することを特徴としている。
【0005】このように、シールされた弁当容器内に、不活性ガスを充填し、食物を不活性ガス雰囲気の中で保存することにより、食物の酸化および呼吸作用を抑制でき、且つ、食物の水分の蒸発も抑制でき、その結果、食物の腐敗などを防止するだけでなく、食物の鮮度、風味、香を劣化させることなく、長期間保存可能な弁当を大量に製造できる。」

(1d)「【0008】このようにして成形された弁当容器1を、図2に示すパレット20に装填してベルトコンベヤにより搬送する。すなわち、本実施例で用いるパレット20は、格子状に形成された保持部21を有しており、弁当容器1がこの保持部21に収納・保持されるように構成されている。なお、このパレット20の形状は、弁当容器1の形状に応じて変形されるものであり、また、パレット20の材質は、軽量性の点から、樹脂であることが好ましい。
【0009】次に、このパレット20に装填された弁当容器1をベルトコンベヤにより搬送しながら、弁当容器1の洗浄・殺菌を行う。洗浄・殺菌機構には、公知のものを用いれば良い。ただし、本実施例では、短時間に大量の弁当容器を洗浄・殺菌する必要があるため、この条件を満足する洗浄・殺菌機構でなければならない。
【0010】次に、図3に示すように、ベルトコンベヤ31上を搬送されたパレット20を、他の2つのベルトコンベヤ32,33に移行させ、この2つのベルトコンベヤ32,33上を搬送されるパレット20の各弁当容器に、食物を盛り付ける。この盛り付けには、自動化装置を用いても良く、作業者の手作業により盛り付けても良い。例えば、ご飯、固形状の食物(例えば、フライ物、だんご類)については、自動化装置により盛り付けることを行、形状の定まらないもの(例えば、煮物、漬物)については、自動化装置により盛り付けることが困難であるため、作業者の手作業により行えば良い。」

(1e)「【0016】次に、図4に示すように、弁当容器1にフィルム7をシールする。ここで、本実施例に係る弁当容器1は、主食である米飯を盛り付けるための米飯盛付部2と、おかず、サラダなどを盛り付けるための副食盛付部3とからなり、主食盛付部2は、本容器1の底壁から立上げられた壁4により画成されており、同様に、副食盛付部3は、本容器1の底壁から立上げられた壁5により画成されている。これらの壁5は、容器1の側壁よりも低くされている。
【0017】この弁当容器1には、その全周にフランジ6が設けられている。このフランジ6に、弁当容器上面を被覆するフィルム7を図示しないシール機構によりシールする。
【0018】このフィルム7としては、酸素透過性が小さくしかも安全性に優れたフィルムが好ましく、具体的にはポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルムあるいはプルランフィルムなどを用いる。このうち、プルランフィルムが特に好ましく、このフィルムは水溶性でゲル形成しない粘性の多糖体から構成されており、可食性でしかも酸素透過率が小さいという特性を有している。しかもこのプルランフィルムは弁当容器1と密に接着できるため、シール性に優れているという利点を有している。またこのプルランフィルムで弁当容器1をシールすれば、弁当を加熱して暖める際にこのフィルムを取り除く際の手間を省けるという利点もある。
【0019】次に、この弁当容器1内の空気を脱気すると共に、弁当容器1内に不活性ガスを充填する。本実施例では、この空気を不活性ガスで置換する作業を短時間で大量の弁当容器1について行えるように、弁当容器1が下記に示すような封止弁12を有している。
【0020】すなわち、本実施例では、このフランジ6とフィルム7との合せ部に、容器1内の空間に、不活性ガスを充填するためのガス充填部10と、この不活性ガス充填時に容器内の空気を排出するための空気脱気部11とが設けてある。図5,6を参照して、このガス充填部10および空気脱気部11について説明する。
【0021】ガス充填部10では、フランジ6とフィルム7との間に、封止弁12が嵌め込んである。この封止弁12は、一対の弁体13a,13bとからなり、可撓性の樹脂により形成してある。そのため、図示しない不活性ガス供給源に接続された不活性ガス充填管14が、これら一対の弁体13a,13bの間に挿入されると、弁体13a,13bは、この充填管14の通挿を許容する分だけ撓み、充填管14の周囲は、これら弁体13a,13bに密着している。そのため、容器1の内部空間からガスを漏洩させることなく、不活性ガス充填管14を介して、容器1の内部空間内にガスを充填することができる。一方、不活性ガス充填管14が除去されると、一対の弁体13a、13bは互いに密着し、容器1の内部空間からガスを漏れることなく維持することができる。
【0022】また、空気脱気部11にも、ガス充填部10の封止弁12と同様に構成された封止弁15が設けられている。したがって、空気脱気管16がこの封止弁15の間に挿入されると、この封止弁15が空気脱気管15の周囲に密着しながら空気脱気管15の通挿を許容し、この空気脱気管15を介して空気を排出することができる。一方、この空気脱気管15を除去したときには、封止弁15が容器1の内部空間から空気を漏れることなく維持できる。
【0023】したがって、不活性ガス充填時には、不活性ガス充填管14および空気脱気管15が、各々、封止弁12,15の間に挿入される。充填管14および脱気管15の回りは各々封止弁12,15により密着されているため、封止弁12,15のところからガスまたは空気が漏れることなく維持された状態となる。次に、不活性ガス充填管14から不活性ガスの充填が開始されると、脱気管15から容器1の内部の空気を排出する。これにより、所定時間(数秒)経過後には、容器1の内部は、空気から不活性ガスに置換される。その後、充填管14および脱気管15が除去されるが、容器1の内部空間は、封止弁12,15により気密に維持される。
【0024】このように、本実施例では、極めて簡易な充填作業により弁当容器1内に不活性ガスを充填できるようにしたため、この充填作業を僅かの時間(例えば、数秒)で終えることができる。
【0025】また、シールされた弁当容器1内に、不活性ガスを充填し、食物を不活性ガス雰囲気の中で保存することにより、食物の酸化および呼吸作用を抑制でき、且つ、食物の水分の蒸発も抑制でき、その結果、食物の腐敗などを防止するだけでなく、食物の鮮度、風味、香を劣化させることなく、長期間保存可能な弁当を大量に製造できる。なお、不活性ガスは、例えば、窒素ガスであり、その他のものであっても良いことは、勿論であり、要は、食物の酸化、呼吸作用を抑制できるガスであれば良い。
【0026】次に、本実施例では、弁当容器1の不活性ガス充填部10および空気脱気部11を完全にシールするが、封止弁12の働きにより不活性ガスが漏洩する虞は殆どないため、このシールは必ずしもしなくても良い。また、シールされた弁当容器1をさらに図示しない袋に充填し、この袋内に不活性ガスを充填してシールしてあっても良い。
【0027】なお、本発明は上述した実施例に限定されず、種々変形可能であることは勿論である。例えば、保存性を一層向上するため、弁当容器を所定温度に冷却しながら不活性ガスを弁当容器内に充填しても良い。」

(1f)「【0028】
【発明の効果】以上述べたように、本発明では、シールされた弁当容器内に、不活性ガスを充填し、食物を不活性ガス雰囲気の中で保存することにより、食物の酸化および呼吸作用を抑制でき、且つ、食物の水分の蒸発も抑制でき、その結果、食物の腐敗などを防止するだけでなく、食物の鮮度、風味、香を劣化させることなく、長期間保存可能な弁当を大量に製造できる。」

3 対比・判断
刊行物1には、シートを真空成形して弁当容器を製造する真空成形機構と、この成形された弁当容器を洗浄し殺菌する洗浄・殺菌機構と、この洗浄殺菌された弁当容器に食物を盛り付ける盛付機構と、食物が盛り付けられた弁当容器の上面を被覆するようにシールするシール機構と、このシールされた弁当容器の内部空間から空気を脱気すると共に、この内部空間に不活性ガスを充填する脱気・不活性ガス充填機構と、を具備することを特徴とする、長期保存可能弁当の製造装置であって(1a)、長期間保存可能な弁当を大量に製造できる、長期保存可能な弁当の製造装置(1b)が記載されている。
そうすると、当該製造装置によって製造される「長期間保存可能な弁当」に着目すると、刊行物1の上記記載(特に上記(1a,1b))から、刊行物1には、
「シートを真空成形して弁当容器を製造する真空成形機構と、この成形された弁当容器を洗浄し殺菌する洗浄・殺菌機構と、この洗浄殺菌された弁当容器に食物を盛り付ける盛付機構と、食物が盛り付けられた弁当容器の上面を被覆するようにシールするシール機構と、このシールされた弁当容器の内部空間から空気を脱気すると共に、この内部空間に不活性ガスを充填する脱気・不活性ガス充填機構と、を具備する長期保存可能弁当の製造装置によって製造された長期保存可能な弁当。」
の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。

(ア)本願補正発明の「ご飯及び惣菜が充填された弁当」に使用される弁当容器について、本願の明細書の記載を参照すると、段落【0018】に「本発明の弁当に使用される弁当容器及びその蓋については、特に制限されない」と記載されている。
そうすると、本願補正発明は、「シートを真空成形して弁当容器を製造する真空成形機構」によって弁当容器を成形し、「この成形された弁当容器を洗浄し殺菌する洗浄・殺菌機構」によって「洗浄殺菌された弁当容器」を用いることを排除するものではない。

(イ)刊行物1発明の「食物」について、刊行物1の記載を参照すると、弁当容器に盛り付ける食物として「ご飯、固形状の食物(例えば、フライ物、だんご類)」や「(例えば、煮物、漬物)」が例示され(1d)、さらに、弁当容器の米飯盛付部は米飯を盛り付けるためのもので、副食盛付部はおかず、サラダなどを盛り付けるためのものである旨、記載されており(1e)、米飯やおかず、サラダなどを食物として盛り付けるものである。
一方、本願補正発明の「惣菜」について、本願の明細書を参照すると、段落【0015】に惣菜に種類については特に制限されない旨、記載され、焼き肉、ステーキ、トンカツ、ミンチカツ、照り焼きチキン、ハム等の肉加工製品や、生野菜などの野菜類が例示されている。
そうすると、刊行物1発明の「食物」は、ご飯やおかず、サラダなど意味するものであり、本願補正発明の「ご飯及び惣菜」に相当する。

(ウ)上記(ア),(イ)から、刊行物1発明の「洗浄殺菌された弁当容器」に、「洗浄殺菌された弁当容器に食物を盛り付ける盛付機構」によって「食物が盛り付けられた弁当容器」は、本願補正発明の「ご飯及び惣菜が充填された弁当」に相当する。

(エ)刊行物1発明の「食物が盛り付けられた弁当容器」を、「上面を被覆するようにシールするシール機構」によって上面が被覆するようにシールし、この「シールされた弁当容器」を、さらに「内部空間から空気を脱気すると共に、この内部空間に不活性ガスを充填する脱気・不活性ガス充填機構」によって、内部空間から空気が脱気され、不活性ガスが充填された「食物が盛り付けられた弁当容器」は、食物が盛り付けられた弁当容器の内部空間の空気が脱気され、不活性ガスに置換されたものである。そして、さらに刊行物1の記載を参照すると、空気から不活性ガスに置換された後に、容器の内部空間は気密に維持されること(1e)、また、弁当容器を完全にシールすることなどが記載されている(1e)ことから、空気から不活性ガスに置換された後、弁当容器の内部空間は密閉されるものである。
そうすると、刊行物1発明の「食物が盛り付けられた弁当容器」に「食物が盛り付けられた弁当容器の上面を被覆するようにシールするシール機構」によって「シールされた弁当容器」を、さらに「シールされた弁当容器の内部空間から空気を脱気すると共に、この内部空間に不活性ガスを充填する脱気・不活性ガス充填機構」によって、内部空間から空気が脱気され、不活性ガスが充填されることは、本願補正発明の「弁当内部の雰囲気が窒素ガスで置換され、弁当内部が密閉されている」ことと、「弁当内部の雰囲気が不活性ガスで置換され、弁当内部が密閉されている」点で共通する。

(オ)本願補正発明の「弁当」について、本願明細書を参照すると、段落【0001】に「優れた保存性を有する弁当」である旨、記載されている。
そうすると、刊行物1発明の「長期保存可能な弁当」は、本願補正発明の「弁当」に相当する。

したがって、両者の間には、以下の一致点及び相違点がある。

(一致点)
ご飯及び惣菜が充填された弁当において、弁当内部の雰囲気が不活性ガスで置換され、弁当内部が密閉されている弁当。

(相違点1)
「不活性ガス」が、本願補正発明では「窒素ガス」であるのに対し、刊行物1発明では不活性ガスの種類を規定していない点。

そこで、上記相違点について検討する。

(相違点1について)
刊行物1発明の「不活性ガス」について、刊行物1の記載を参照すると、「なお、不活性ガスは、例えば、窒素ガスであり、その他のものであっても良いことは、勿論であり、要は、食物の酸化、呼吸作用を抑制できるガスであれば良い。」と記載されている(1e)。
そうすると、刊行物1発明の「不活性ガス」として、明示されている「窒素ガス」を採用することも、刊行物1の記載から当業者が容易になし得たことである。

(本願補正発明の効果について)
(ア)刊行物1には、シールされた弁当容器内に、不活性ガスを充填し、食物を不活性ガス雰囲気の中で保存することにより、食物の酸化および呼吸作用を抑制でき、且つ、食物の水分の蒸発も抑制でき、その結果、食物の腐敗などを防止するだけでなく、食物の鮮度、風味、香を劣化させることなく、長期間保存可能な弁当を製造できる旨、記載されている(1c,1f)。
(イ)一方、本願明細書の段落【0009】には、「弁当の内部雰囲気を窒素ガスに置換するという簡便な方法により、弁当のご飯や惣菜の風味や外観を長期間安定に維持することが可能になり、店頭での陳列販売に十分耐え得る保存性を備えさせることができる。」との本願補正発明の効果が記載されている。
(ウ)そして、本願明細書の段落【0024】?段落【0027】には、実施例1において、炊飯米の<外観>として「色」や「つや」について、<風味>として「硬さ」、「粘り」、「食味」である「旨み」について評価し、つやがあり白色を呈していること、柔らかく、粘りがあり旨みを感じる旨、評価している。
(エ)さらに、本願明細書の段落【0028】?段落【0029】には、実施例2において、「生野菜及びハンバーグ入り弁当」のキャベツについて「新鮮でしゃきしゃきとした食感が感じられた。」と評価している。
(オ)また、実施例2においては、生野菜及びハンバーグ入り弁当全体についても風味が良好であると評価している。
(カ)そこで、上記(ウ)の炊飯米に対する本願補正発明の効果を検討すると、炊飯米の色、つや、硬さ、粘り及び旨みといった特性は、炊飯米のおいしさや質を評価する際に用いられる例示するまでもない一般的な評価項目である。そして腐敗が進めば、色、つや、硬さ、粘り及び旨みといった性質が劣化することは、誰しもが経験するところである。
刊行物1には、上記(ア)のとおり「食物の腐敗などを防止する」、「食物の鮮度、風味、香を劣化させること」がないことが記載されているのだから、鮮度が保たれ、風味が劣化しない、すなわち腐敗が進めば劣化するであろう、色、つや、硬さ、粘り及び旨みといった性質も変化がないことは、当業者であれば予測し得ることといえる。
(キ)さらに、上記(エ)のキャベツに関する効果について検討すると、上記(ア)のとおり刊行物1には「食物の腐敗などを防止する」、「食物の鮮度、風味、香を劣化させること」がないことが記載されているのだから、キャベツの鮮度にとって重要なしゃきしゃき感も劣化しないことは、当業者であれば予測し得たものといえる。
(ク)さらに、上記(オ)の生野菜及びハンバーグ入り弁当全体についての効果及び上記(イ)の本願補正発明の効果について検討すると、上記(ア)のとおり刊行物1には「食物の腐敗などを防止する」、「食物の鮮度、風味、香を劣化させること」がない旨の効果が記載されているのだから、これらの効果は、刊行物1に記載された事項から当業者が予想し得たものであり、またその程度も格別顕著なものともいえない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
したがって、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成23年11月15日付けの手続補正は、上記のとおり却下されることになったので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成23年7月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1は、次のとおりである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

「【請求項1】
ご飯が充填された弁当において、弁当内部の雰囲気が窒素ガスで置換され、弁当内部が密閉されていることを特徴とする、弁当。」

2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及びその記載事項は、前記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明の「弁当」について、「ご飯及び惣菜が充填された」ものから、「ご飯が充填された」ものと、惣菜を充填したとの構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含んだ本願補正発明が、前記「第2 3」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-01 
結審通知日 2013-05-07 
審決日 2013-05-21 
出願番号 特願2007-118335(P2007-118335)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23L)
P 1 8・ 575- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 關 政立  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 菅野 智子
板谷 一弘
発明の名称 保存性が優れた弁当  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  

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