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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正しない H04N 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正しない H04N 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正しない H04N |
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管理番号 | 1276315 |
審判番号 | 訂正2012-390129 |
総通号数 | 164 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-08-30 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2012-10-09 |
確定日 | 2013-06-21 |
事件の表示 | 特許第4865756号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.訂正の趣旨および訂正事項 1.訂正の趣旨 本件審判の請求の趣旨は、特許第4865756号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを認める、との審決を求めるものである。 2.訂正事項 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記現在のブロックが含まれる現在のピクチャと前記レファレンスピクチャとの時間上の距離を取得し」とあるのを、「前記現在のブロックが含まれる現在のピクチャとレファレンスピクチャとの時間上の距離を取得し」に訂正する。 (2)訂正事項2 発明の詳細な説明の段落[0017]に「前記現在のブロックが含まれる現在のピクチャと前記レファレンスピクチャとの時間上の距離を取得し」とあるのを、「前記現在のブロックが含まれる現在のピクチャとレファレンスピクチャとの時間上の距離を取得し」に訂正する。 第2.訂正の適否 1.訂正事項1について (1)訂正の目的 ア.誤記又は誤訳の訂正 請求人は、訂正事項1の訂正の理由を「誤記の訂正」としていることから、訂正事項1が誤記の訂正を目的としたものであるか否かをまず検討する。 訂正前の請求項1の記載は次のとおりである。 「レファレンスピクチャ内の同一位置のブロックの動きベクターから双予測ピクチャ内の現在のブロックの動きベクターを求める方法であって、 前記同一位置のブロックの動きベクターを取得し、 前記現在のブロックが含まれる現在のピクチャと前記レファレンスピクチャとの時間上の距離を取得し、 前記同一位置のブロックの動きベクターが示す前記レファレンスピクチャがロングタームレファレンスピクチャである場合は、前記現在のブロックの第1動きベクターを前記同一位置のブロックの動きベクターに等しく設定し且つ前記現在のブロックの第2動きベクターをゼロに設定し、 前記同一位置のブロックの動きベクターが示す前記レファレンスピクチャがショートタームレファレンスピクチャである場合、前記現在のブロックの第1及び第2動きベクターを前記時間上の距離に基づいて算出し、 前記現在のブロックの前記第1及び第2動きベクターに基づいて前記現在のブロックをデコードする、 ステップを有することを特徴とする動きベクターを求める方法。」 (ア)「前記現在のブロックが含まれる現在のピクチャと前記レファレンスピクチャとの時間上の距離を取得し」について 訂正前の請求項1の「前記現在のブロックが含まれる現在のピクチャと前記レファレンスピクチャとの時間上の距離を取得し」において、「前記現在のブロック」、「前記レファレンスピクチャ」は、それぞれ、その前に記載された「レファレンスピクチャ内の同一位置のブロックの動きベクターから双予測ピクチャ内の現在のブロックの動きベクターを求める方法」における「双予測ピクチャ内の現在のブロック」、「(双予測ピクチャ内の現在のブロックと同一位置のブロックがその内にある)レファレンスピクチャ」を指していると考えられ、このレファレンスピクチャは、双予測ピクチャが参照(レファレンス)するものである。 したがって、「前記現在のブロックが含まれる現在のピクチャと前記レファレンスピクチャとの時間上の距離を取得し」とは、「現在のブロックが含まれる双予測ピクチャと該双予測ピクチャが参照する(双予測ピクチャ内の現在のブロックと同一位置のブロックがその内にある)レファレンスピクチャとの時間上の距離を取得し」を意味していると考えられる。 この点に関して本件明細書には、【図5】とともに次の記載がある。 「MVf=(TRb*MV)/TRd (1) MVb=(TRb-TRd)*MV/TRd (2) ここで、MVは、後続ピクチャにある同一位置のブロックの動きベクターであり、MVfは、Bピクチャに対するダイレクトモードの順方向動きベクターであり、MVbは、Bピクチャに対するダイレクトモードの逆方向動きベクターをそれぞれ示す。また、TRdは、後続ピクチャにおいて同一位置のブロックの動きベクターによって示されたレファレンスピクチャと後続ピクチャとの間における時間上の距離であり、TRbは、後続ピクチャにおいて同一位置のブロックの動きベクターによって示されたレファレンスピクチャからBピクチャまでの時間上の距離をそれぞれ示す。」(段落【0012】【0013】) 「一方、特定のピクチャにおいて同一位置のブロックの動きベクターがショートタームレファレンスピクチャを指す場合、前記Bピクチャは、上記の数式(1)および(2)を用いてコーディングされる。」(段落【0070】) これらの記載における、「Bピクチャ」が、訂正前の請求項1の「前記現在のブロックが含まれる現在のピクチャ(双予測ピクチャ)」に対応するものであり、そのBピクチャが動きベクターMVbにより参照する、同一位置のブロックのある「後続ピクチャ」(図5ではP200)が、訂正前の請求項1の「前記レファレンスピクチャ(双予測ピクチャが参照するレファレンスピクチャ)」に対応するものである。 したがって、【0012】の式(2)における「(TRb-TRd)」(Bピクチャと後続ピクチャとの時間上の距離)を取得することが、訂正前の請求項1の「前記現在のブロックが含まれる現在のピクチャと前記レファレンスピクチャとの時間上の距離を取得」することに対応する事項であるから、訂正前の請求項1のこの記載は、そのように理解することができ、ここまでの考察の限りにおいては、この記載が誤記ということはできない。 (イ)「前記同一位置のブロックの動きベクターが示す前記レファレンスピクチャがロングタームレファレンスピクチャである場合」、および、「前記同一位置のブロックの動きベクターが示す前記レファレンスピクチャがショートタームレファレンスピクチャである場合」について 訂正前の請求項1には、「前記同一位置のブロックの動きベクターが示す前記レファレンスピクチャがロングタームレファレンスピクチャである場合」、および、「前記同一位置のブロックの動きベクターが示す前記レファレンスピクチャがショートタームレファレンスピクチャである場合」と記載されており、これらの「前記レファレンスピクチャ」との関係において、訂正事項1に係る「前記レファレンスピクチャ」が誤記といえるか否かについて考察する。 「前記同一位置のブロックの動きベクターが示す前記レファレンスピクチャがロングタームレファレンスピクチャである場合」、および、「前記同一位置のブロックの動きベクターが示す前記レファレンスピクチャがショートタームレファレンスピクチャである場合」の「前記レファレンスピクチャ」は、その前に記載された前記のないレファレンスピクチャが、「レファレンスピクチャ内の同一位置のブロックの動きベクターから双予測ピクチャ内の現在のブロックの動きベクターを求める方法」における「レファレンスピクチャ」のみであることから、それを指していると考えられる。 そうすると、「レファレンスピクチャ内の同一位置のブロック」、および、「前記同一位置のブロックの動きベクターが示す前記レファレンスピクチャ」との記載から、この「前記レファレンスピクチャ」における「前記」は、レファレンスピクチャ内のブロックの動きベクターが示すピクチャがレファレンスピクチャ自身であることを意味し、このことから、「レファレンスピクチャ内の同一位置のブロックの動きベクター」は、レファレンスピクチャ内の同一位置のブロックがそのレファレンスピクチャ自身を参照するベクターであることとなるといえる。 しかしながら、本件特許に係る発明は、動画コーディング方法に関するものであって、動画コーディング方法にける「動きベクター」とは、時間の経過にしたがって生じる動きを表すベクター、すなわち、始点と終点の時刻が異なるベクターである。 一方、レファレンスピクチャ内の同一位置のブロックがそのレファレンスピクチャ自身を参照するベクターは、ある一つのピクチャ内の始点と終点の時刻が同じベクターである。 したがって、上述した、請求項1の「レファレンスピクチャ内の同一位置のブロックの動きベクター」が、レファレンスピクチャ内の同一位置のブロックがそのレファレンスピクチャ自身を参照するベクターであるというのは矛盾したことであり、この矛盾は、請求項1の「前記同一位置のブロックの動きベクターが示す前記レファレンスピクチャがロングタームレファレンスピクチャである場合」、および、「前記同一位置のブロックの動きベクターが示す前記レファレンスピクチャがショートタームレファレンスピクチャである場合」の「前記レファレンスピクチャ」が、「レファレンスピクチャ内の同一位置のブロックの動きベクターから双予測ピクチャ内の現在のブロックの動きベクターを求める方法」における「レファレンスピクチャ」を指していることから生じているから、この点に誤りが存在するといえる。 しかし、上記のような誤りが認められるとしても、その誤りは、動きベクトルについての矛盾に留まるものである。後述するように、訂正事項1に係る「前記」を削除する訂正は、特許請求の範囲を拡張することになっており、上記のような誤りが、後述の拡張も含んで「誤り」といえるものではない。誤記とは、「本来その意であることが明らか」なものであって、上記誤りに対する「本来」の「その意」が、拡張となる訂正事項1に係る「前記」を削除したものであるとまではいえない。 したがって、訂正事項1に係る「前記」を削除する訂正は、「本来その意であることが明らか」である「誤り」を、「本来」の「その意」に正すこととはいえず、誤記の訂正ということはできない。 よって、「前記同一位置のブロックの動きベクターが示す前記レファレンスピクチャがロングタームレファレンスピクチャである場合」、および、「前記同一位置のブロックの動きベクターが示す前記レファレンスピクチャがショートタームレファレンスピクチャである場合」の記載との関係を考慮しても、それに拘わらず、上述したように、訂正事項1に係る「前記現在のブロックが含まれる現在のピクチャと前記レファレンスピクチャとの時間上の距離を取得し」は、現在の双予測ピクチャとそれが参照するピクチャとの時間上の距離を取得することであると理解でき、この記載が誤記ということはできない。 (ウ)まとめ よって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とするものとは認められない。 イ.特許請求の範囲の減縮 訂正前の請求項1の「前記現在のブロックが含まれる現在のピクチャと前記レファレンスピクチャとの時間上の距離を取得し」における「前記レファレンスピクチャ」は、「レファレンスピクチャ内の同一位置のブロックの動きベクターから双予測ピクチャ内の現在のブロックの動きベクターを求める方法」の「レファレンスピクチャ」を指している。 ここで、「レファレンスピクチャ内の同一位置のブロックの動きベクターから双予測ピクチャ内の現在のブロックの動きベクターを求める方法」の「レファレンスピクチャ」は、双予測ピクチャが参照するレファレンスピクチャであって、双予測ピクチャ内の現在のブロックの動きベクターを求めるための同一位置のブロックが内に存在するレファレンスピクチャである。 本件訂正により「前記現在のブロックが含まれる現在のピクチャと前記レファレンスピクチャとの時間上の距離を取得し」における「前記レファレンスピクチャ」の「前記」を削除することは、時間上の距離を定義するレファレンスピクチャが、双予測ピクチャが参照するレファレンスピクチャのうち、同一位置のブロックが内に存在するレファレンスピクチャに限定されていたものをその限定を省くことである。 すなわち、訂正事項1は、時間上の距離を定義するレファレンスピクチャの範囲が、双予測ピクチャが参照するレファレンスピクチャのうち、同一位置のブロックが内に存在するレファレンスピクチャのみであったのを、その他の双予測ピクチャが参照するレファレンスピクチャをも含むように訂正するもの(【図5】の実施例で説明すると、時間上の距離の定義がB2とP200の間の距離のみであったのをB2とP50の間の距離をも含むように拡張するもの)であり、訂正前の請求項1に係る特許発明の技術的範囲を拡張するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。 ウ.明瞭でない記載の釈明 訂正前の請求項1における「前記現在のブロックが含まれる現在のピクチャと前記レファレンスピクチャとの時間上の距離を取得し」は、上記ア.(ア)で述べたように理解できるものであり、明瞭でない記載とはいえないから、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものではないことは明らかである。 エ.引用形式 訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものではないことは明らかである。 オ.まとめ 以上のとおり、訂正事項1は、特許法第126条ただし書第1号ないし第4号に掲げる何れの事項を目的とするものでもない。 (2)特許請求の範囲の拡張、変更について 本件の訂正事項1は、上記(1)ア.で述べたように、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものとは認められず、上記(1)イ.で述べたように、訂正前の請求項1に係る特許発明の技術的範囲を拡張するものである。 したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張するものであり、特許法第126条第6項の規定に違反するものである。 2.訂正事項2について 訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項1を訂正する訂正事項1と同じ内容の訂正を、発明の詳細な説明の段落[0017]の対応する記載に行うものであるから、訂正事項2に対する訂正の適否については、訂正事項1に対する判断と同様である。 第3.むすび 以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第4号に掲げる何れの事項を目的とするものでもなく、また、同法同条第6項に規定する要件に適合しないから、本件訂正は認められない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-01-30 |
結審通知日 | 2013-02-01 |
審決日 | 2013-02-13 |
出願番号 | 特願2008-96500(P2008-96500) |
審決分類 |
P
1
41・
851-
Z
(H04N)
P 1 41・ 852- Z (H04N) P 1 41・ 854- Z (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂東 大五郎、長谷川 素直 |
特許庁審判長 |
奥村 元宏 |
特許庁審判官 |
千葉 輝久 涌井 智則 |
登録日 | 2011-11-18 |
登録番号 | 特許第4865756号(P4865756) |
発明の名称 | 動きベクターを求める方法 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 南山 知広 |
代理人 | 河合 章 |
代理人 | 中村 健一 |
代理人 | 青木 篤 |