• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1276917
審判番号 不服2011-27643  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-22 
確定日 2013-07-16 
事件の表示 特願2007-528053「エンドユーザの情報要求に応答するための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月 2日国際公開、WO2006/023765、平成20年 4月10日国内公表、特表2008-511057〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は,2004年8月19日(以下「優先日」という。)の米国特許庁への出願を基礎とするパリ条約による優先権主張をともない,
2005年8月19日を国際出願日とする出願((国際出願番号:PCT/US2005/029615)であって,
平成18年10月5日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面が提出されるとともに,特許法第184条の4第1項の規定による特許請求の範囲,明細書,図面(図面中の説明に限る),及び要約書の翻訳文が提出され,
平成20年8月9日付けで審査請求がなされ,
平成22年12月17日付けで拒絶理由通知(同年同月27日発送)がなされたが,これに対する応答はなく,
平成23年8月10日付けで拒絶査定(同年同月22日謄本送達)がなされ,
同年12月22日付けで審判請求がされるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。

なお,平成24年4月12日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ,
同年8月29日付けで当該報告に対する意見を求める旨の審尋(同年同月30日発送)がなされ,
同年11月27日付けでこれに対する回答がなされた。


2.本願発明

本願の請求項に係る発明は,平成23年12月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-44に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ,その請求項13に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下の通りのものである。

「サーバの提携するシステムにデータを送信する行動監視モジュールのネットワークを用いてデータを生成する方法であって,
前記方法が,
複数のユーザのコンピュータ上で動作する複数の行動監視モジュールを用いて,該行動監視モジュールが,1つ又はそれ以上の検索エンジンにわたる前記ユーザの検索エンジン使用に関する情報を収集する段階を含み,
前記情報が,
特定のユーザによって前記検索エンジンに実行依頼されるキーワード(フレーズを含む)と,
前記検索エンジンによって返された結果から前記特定のユーザによって選択されるリンクと,
前記選択されたリンクを辿る時に滞留時間又は前記特定のユーザによってドメインにおいて閲覧されたドキュメント数のうちの少なくとも一方と,
を少なくとも有し,
前記方法が更に,
前記行動監視モジュールが,前記検索エンジン使用情報を1つ又はそれ以上の提携サーバに電子的に報告する段階と,を含む方法。」


3.先行技術

3-1)引用文献1に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

本願の出願前であって,上記優先日よりも前の日に頒布され,原審の拒絶の査定の理由である上記平成22年12月17日付けの拒絶理由通知で引用された,特開2003-141155号公報(平成15年5月16日公開,以下,「引用文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A「【請求項1】 インターネットにあるWebページの情報収集とデータベースへの登録と,検索者が入力した検索キーワードを分析し,分析結果に基づいてデータベースから検索キーワードに合致するWebページを抽出するWebページ検索システムにおいて,
検索により抽出されたWebページ上で検索者が行う所定操作の操作回数を検索キーワードと関連付けてデータベースに格納する手段と,
検索結果を表示するとき,検索キーワードに関連付けられた所定操作の操作回数をデータベースから取得し,取得した所定の操作回数から検索キーワードの適合度を算出し,算出した適合度に順じてWebページを表示する手段とを設けることを特徴とするWebページ検索システム。」

B「【0015】
【実施例】図1に,本発明のWebページ検索システムの構成ブロック例図を示す。図中,1は検索サーバ,2は検索サーバ1にネットワークを介して接続されるクライアントである。
【0016】検索サーバ1にはWWWサーバ14と検索エンジン11とが設けられ,クライアント2にはWWWブラウザ21が設けられている。
【0017】また検索サーバ1には,検索により抽出されたWebページの参照回数やそのWebページ上で検索者が行う所定操作の操作回数を検索キーワードと関連付けて記憶するためのファイル情報テーブル31およびキーワードテーブル32が設けられたデータベース3が接続されている。
【0018】また,WWWブラウザ21は,検索により抽出されたWebページ上で検索者が行う所定操作の操作回数を検索キーワードとともに検索エンジン11に通知する操作情報通知部22が設けられている。
【0019】また,検索エンジン11は,WWWブラウザ21から通知される検索キーワードとその検索キーワードで抽出されるWebページ上で検索者が行う所定操作の操作回数とをデータベース3に設けられたファイル情報テーブル31とキーワードテーブル32とに記憶する操作情報更新部13と,検索結果を表示するときに検索キーワードに関連付けられた所定操作の操作回数をデータベース3のファイル情報テーブル31およびキーワードテーブル32から取得し,取得した所定操作の操作回数をもとに検索キーワードの適合度を算出する適合度算出部12とが設けられている。」

C「【0023】以下,図2および図3のフローにしたがってある検索キーワードにおける検索処理動作を説明する。なお,図2および図3の左側はクライアントの動作が示され,右側は検索サーバの動作が示されている。
【0024】ステップS201:クライアントは検索者が指示する検索サーバをWWWブラウザでアクセスし,検索キーワードを検索サーバに送信する。図5は検索サーバをアクセスしたとき,WWWブラウザ上に表示される画面であり,この例では検索キーワードとして「フリーソフト」を取得し,検索処理を実行している。
【0025】ステップS202:検索サーバはクライアントから指示された検索キーワードが含まれるWebページをデータベースから抽出する。この例では検索キーワード「フリーソフト」が含まれるWebページとして,AAA,BBB,CCCのファイルが抽出されたものとしている。
【0026】ステップS203:抽出したWebページ毎に検索キーワードに対応した所定操作の操作回数と参照回数をデータベースから取得し,所定操作の操作回数の合計を参照回数で除算した値を適合度として設定する。
【0027】なお,図4に示される各ファイルのデータから各Webページの適合度は,
AAAの適合度=(4+2)/10=0.6
BBBの適合度=(3+2)/10=0.5
CCCの適合度=(1+1)/5=0.4
となる。
【0028】ステップS204:抽出したWebページを算出した適合度が高い順に並べた検索結果のHTML文書を作成する。なお,作成されるHTML文書は図6(a)のようになる。
【0029】ステップS205:検索を要求したクライアントに作成したHTML文書を送信する。
【0030】ステップS206:検索サーバから送信された検索結果のHTML文書を表示部に表示する。
【0031】ステップS207:検索者により選択されたWebページを表示する。検索者が例えば,図6(a)の矢印Aで示されるBBBを選択したとすると,図6(b)に示されるようなBBBのページが表示される。なお,このBBBのページは用途別のフリーソフトの一覧を示すページであり,下線部分の文字列はフリーソフトのプログラムをダウンロードできるようにリンクされているものとする。
【0032】ステップS208:検索者が選択したWebページ上で行う所定操作(ファイルをダウンロードする,HTML文書を保存する,お気に入りに追加する,HTML文書を印刷する,HTML文書の一部を複写する)を監視し,いずれかの操作が行われたとき,検索キーワード,Webページ,操作などの操作情報を検索サーバに通知する。【0033】なお,この例では図6(b)のWebページで矢印Bで示されるaaaプログラムのファイルダウンロードとこのWebページをお気に入りに追加する操作を行ったものとする。
【0034】ステップS209:検索サーバはクライアントからの操作情報の通知を受付け,通知される操作情報(Webページ=BBB,検索キーワード=フリーソフト,操作=ファイルダウンロードとお気に入りの追加)に対応するキーワードテーブルの操作回数およびファイル情報テーブルの参照回数を更新する。
【0035】この処理により,図4の矢印Cで示されるファイル情報テーブルのBBBページの参照回数は10から11に,またBBBページのキーワードテーブルにおけるファイルダウンロードの操作回数は3から4に,お気に入りの追加の操作回数は2から3に更新される。」

D 図面第3図には,左側のクライアントにおける処理として,S208「検査者(当審注:「検索者」の誤記と解される)が選択したWebページ上で行う所定操作を監視し,・ファイルダウンロード ・HTML文書の保存 ・お気に入りに追加 ・HTML文書の印刷 ・カット&ペースト のいずれかの操作が行われたとき,その操作情報(検索キーワード,Webページ,操作)を検索サーバに通知する」と記載されている。

以下に,上記引用文献1の記載事項について検討する。

(ア)引用文献1は,上記Aに記載の請求項1に記載されているごとく,「Webページ検索システム」の発明について説明するものであるところ,上記Aに「検索者が入力した検索キーワードを分析し,分析結果に基づいてデータベースから検索キーワードに合致するWebページを抽出する」との記載があり,これより“検索者が入力した検索キーワードを分析し,分析結果”を生成していることがよみとれるから,
これより,引用文献1には,上記“Webページ検索システム”により実現される“検索者が入力した検索キーワードを分析し分析結果を生成する方法”が記載されているといえる。

(イ)上記Bに「図1に,本発明のWebページ検索システムの構成ブロック例図を示す。図中,1は検索サーバ,2は検索サーバ1にネットワークを介して接続されるクライアントである。」,「検索サーバ1にはWWWサーバ14と検索エンジン11とが設けられ」との記載があり,これより,上記“Webページ検索システム”が,“検索エンジンを有する検索サーバと,当該検索サーバにネットワークを介して接続されたクライアントより構成され”ることがよみとれることから,
これより,引用文献1には,
“前記Webページ検索システムは,検索エンジンを有する検索サーバと,当該検索サーバにネットワークを介して接続されたクライアントより構成され”ることが記載されているといえる。

(ウ)上記Cに「ステップS201:クライアントは検索者が指示する検索サーバをWWWブラウザでアクセスし,検索キーワードを検索サーバに送信する。」,「ステップS202:検索サーバはクライアントから指示された検索キーワードが含まれるWebページをデータベースから抽出する。」,「ステップS204:抽出したWebページを算出した適合度が高い順に並べた検索結果のHTML文書を作成する。」,「テップS205:検索を要求したクライアントに作成したHTML文書を送信する。」,「ステップS206:検索サーバから送信された検索結果のHTML文書を表示部に表示する。」,「ステップS207:検索者により選択されたWebページを表示する。」,「ステップS208:検索者が選択したWebページ上で行う所定操作(ファイルをダウンロードする,HTML文書を保存する,お気に入りに追加する,HTML文書を印刷する,HTML文書の一部を複写する)を監視し,いずれかの操作が行われたとき,検索キーワード,Webページ,操作などの操作情報を検索サーバに通知する。」との記載があり,これらの記載及び上記Dにおける記載から,引用文献1には,
“前記クライアントにおいて,検索者が指示した検索サーバに対し検索キーワードを送信し,当該検索キーワードによって抽出したWebページを並べたHTML文書が返信されるとそれを表示部に表示し,検索者により選択されたWebページを表示し,検索者が選択したWebページ上で行う所定操作を監視し,いずれかの操作が行われたとき,検索キーワード,Webページ,操作などの操作情報を検索サーバに通知する”ことが記載されているといえる。

以上,(ア)?(ウ)を踏まえると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用文献1発明」という。)が記載されているものと認める。

Webページ検索システムにより実現される,検索者が入力した検索キーワードを分析し分析結果を生成する方法において,
前記Webページ検索システムは,検索エンジンを有する検索サーバと,当該検索サーバにネットワークを介して接続されたクライアントより構成され,
前記クライアントにおいて,検索者が指示した検索サーバに対し検索キーワードを送信し,当該検索キーワードによって抽出したWebページを並べたHTML文書が返信されるとそれを表示部に表示し,検索者により選択されたWebページを表示し,検索者が選択したWebページ上で行う所定操作を監視し,いずれかの操作が行われたとき,検索キーワード,Webページ,操作などの操作情報を検索サーバに通知する,
方法。

3-2)引用文献3に記載されている技術的事項

本願の出願前であって,上記優先日よりも前の日に頒布され,原審の拒絶の査定の理由である上記平成22年12月17日付けの拒絶理由通知で引用文献3として引用された,特開2003-178092号公報(平成15年6月27日出願公開,便宜上,以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

E「【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来の情報検索システムは以上のように構成されているので,キーワードを含むWebページを全て検索抽出してWebページリストを生成するので,キーワードが簡単であったり,ありふれている場合には,ユーザ端末装置に膨大な数のタイトル等を含む検索結果リストが提供される。この場合,ユーザが所望するWebページのタイトルがリストの上位に表示されるとは限らず,通常ユーザはリストの上位から順に検索結果を確認することを考慮すると,膨大な数のタイトルを含む検索結果リストから,所望のWebページを探し出すには,非常に時間がかかるという課題があった。
【0010】一方,指定するキーワードが複雑であると,所謂ヒット率が極めて低下してしまい,ユーザが目的とするWebページが検索もれとなることがある。加えて,キーワード検索にあたって,一般的に目的とするWebページに関する適切なキーワードを決定することが困難であり,様々なキーワードによる検索を繰り返す必要があるという課題もあった。
【0011】この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので,短時間に効率よく,しかも的確に目的とするWebページを検索することができる情報検索システム,情報提供装置及び情報検索方法並びにプログラムを得ることを目的とする。
【0012】また,この発明はキーワードの指定が容易である情報検索システム,情報提供装置及び情報検索方法並びにプログラムを得ることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】この発明に係る情報検索システムは,クライアント端末から入力されたキーワードを含むWebページを検索する情報検索装置と,該情報検索装置による検索結果のWebページに対するアクセス状況を監視し,所定の監視項目に関するアクセス状況情報を取得するアクセス状況情報取得手段と,検索結果から検索結果リストを生成してクライアント端末に返信すると共に,アクセス状況情報に基づいて検索結果リスト中の検索結果の表示順位を変更する検索リスト生成変更手段とを備えるものである。」

F「【0028】図3は図1中のユーザアクセス監視モジュールの構成を示す図である。この図を参照して,ユーザアクセス監視モジュール21bについて詳細に説明する。図に示すように,ユーザアクセス監視モジュール21bは,閲覧時間監視モジュール211,リンククリック数監視モジュール212,他情報監視モジュール213,及び評価点計算モジュール214を有している。ここで,閲覧時間監視モジュール211は,ユーザによって開かれた(アクセスされた)Webページの閲覧時間を監視している。具体的な動作としては,予め規定された時間以上当該Webページが閲覧されていると,当該Webページはユーザが目的とするWebページに近いと判定して,第1の監視結果を出力する(なお,閲覧時間があまりにも長い場合には,ユーザは検索を中断して他のことをしていると判断するようにしてもよい)。
・・・(中略)・・・
【0032】評価点計算モジュール214では,前述の第1?第3の監視結果を受け,これら第1?第3の監視結果に基づいて,後述するようにして,当該Webページの評価点を計算する。そして,ユーザアクセス監視モジュール21bは,閲覧されたWebページ毎に,上述のようにして評価点を求めて,評価点をWebページ間距離計算モジュール21cに与える。
【0033】図1に示すように,ユーザアクセス監視モジュール21bには検索結果生成モジュール21aから検索結果リストが与えられており,ユーザアクセス監視モジュール21bを介して検索結果リストがWebページ間距離計算モジュール21cに与えられる。」

G「【0038】ユーザは,第1番目に表示されている「http://aaa」にアクセスして該当するWebページを開いてみたが,当該Webページは目的とするページではなかったので1秒で検索結果リストに戻ったとする。このとき,図4に示すようなユーザアクセス監視情報がユーザアクセス監視モジュール21bによって生成される。このユーザアクセス監視情報はユーザ端末装置11毎に生成される(図4はユーザID“001”に関するユーザアクセス監視情報である)。つまり,「http://aaa」に関しては,閲覧時間が1秒であり,リンククリック数は“0”であるから,ユーザアクセス監視モジュール21bは評価点を“-1”とする。」


4.対比・判断

4.1 本願発明と引用文献1発明との対比

本願発明と引用文献1発明とを対比する。

(ア)引用文献1発明の「検索者」が用いる「クライアント」,「検索サーバ」,「検索エンジン」は,本願発明に「ユーザのコンピュータ」,「サーバ」,「検索エンジン」にそれぞれ相当する。
また,引用文献1発明の「検索サーバ」は,データベース等を含むシステムを構成するものであるところ,本願発明の「サーバ」及びそれと同意味と解される「提携サーバ」に関連する「サーバの提携するシステム」も,サーバと連携し,かつサーバを含むシステムを含むものと解されることから,引用文献1発明の「検索サーバ」により構成されるシステムは,本願発明の「サーバの提携するシステム」に相当する。

(イ)引用文献1発明の「クライアント」は,「検索者が選択したWebページ上で行う所定操作を監視」し「操作情報を検索サーバに通知する」ものであり,当該「検索者」の「操作」は検索者の行動に他ならないから,当該「クライアント」における「検索者」の「操作」を「監視」し「通知」するための手段は,行動監視機能であるといえる。一方,本願発明における「行動監視モジュール」も,上位概念において,行動監視機能であるといえる。
また,引用文献1発明は「検索者が入力した検索キーワードを分析し分析結果を生成」するものであるところ,そのために「クライアント」における上記行動監視機能が,「検索者」の「操作」を「監視」して「検索キーワード」を含む「操作情報」を通知し,その「操作情報」を用いて「検索サーバ」において分析を行っているものであり,これは「クライアント」における上記行動監視機能の通知データを用いた,「分析結果」データの生成であるといえる。
してみると,引用文献1発明の「クライアント」における「検索者」の「操作」を「監視」し「通知」するための手段が「検索サーバ」が構成するシステムに対して「通知」する「操作情報」を用いて,「分析結果」データを生成することと,本願補正発明の「サーバの提携するシステムにデータを送信する行動監視モジュールのネットワークを用いてデータを生成する方法」とは,ともに,“サーバの提携するシステムにデータを送信する行動監視機能を用いてデータを生成する方法”である点で共通するといえる。

(ウ)引用文献1発明の「検索者」の「検索キーワード,Webページ,操作などの操作情報」は,本願発明の「ユーザの検索エンジン使用に関する情報」に相当する。また,引用文献1発明の「クライアント」における「検索者」の「操作」を「監視」し「通知」するための手段が「操作情報」を「通知」するために,当該「操作情報」の取得を行っており,また上記Cに「検索サーバはクライアントからの操作情報の通知を受付け,・・・操作回数・・・を更新する。」との記載があるとおり,上記「通知」結果を受けて「操作回数」を更新しており,この記載からも,上記「操作情報」の取得は,「操作情報」の収集を意味するものと解される。
してみると,引用文献1発明の「クライアント」における「検索者」の「操作」を「監視」し「通知」するための手段により,「検索キーワード,Webページ,操作などの操作情報」を「通知」のために取得することと,本願補正発明の「複数のユーザのコンピュータ上で動作する複数の行動監視モジュールを用いて,該行動監視モジュールが,1つ又はそれ以上の検索エンジンにわたる前記ユーザの検索エンジン使用に関する情報を収集する段階」とは,ともに,“ユーザのコンピュータ上で動作する行動監視機能を用いて,該行動監視機能が,1つ又はそれ以上の検索エンジンにわたる前記ユーザの検索エンジン使用に関する情報を収集する段階”である点で共通するといえる。

(エ)ア.引用文献1発明の「検索者」により「検索エンジンを有する検索サーバ」に送信される「検索キーワード」に対応する「操作情報」中の「検索キーワード」と,本願補正発明の「特定のユーザによって前記検索エンジンに実行依頼されるキーワード(フレーズを含む)」とは,ともに,“特定のユーザによって前記検索エンジンに実行依頼されるキーワード”である点で共通するといえる。

イ.引用文献1発明の「検索キーワードによって抽出したWebページを並べたHTML文書が返信されるとそれを表示部に表示し」,そこから「検索者により選択されたWebページ」に対応する「操作情報」中の「Webページ」は,本願補正発明の「検索エンジンによって返された結果から前記特定のユーザによって選択されるリンク」に相当するといえる。

ウ.これらを合わせると,引用文献1発明の「検索キーワード,Webページ,操作などの操作情報」が,「検索者」により「検索エンジンを有する検索サーバ」に送信される「検索キーワード」と,「検索キーワードによって抽出したWebページを並べたHTML文書が返信されるとそれを表示部に表示し」そこから「検索者により選択されたWebページ」とを有することと,本願補正発明の「前記情報が,特定のユーザによって前記検索エンジンに実行依頼されるキーワード(フレーズを含む)と,前記検索エンジンによって返された結果から前記特定のユーザによって選択されるリンクと,前記選択されたリンクを辿る時に滞留時間又は前記特定のユーザによってドメインにおいて閲覧されたドキュメント数のうちの少なくとも一方と,を少なくとも有し」とは,ともに,“前記情報が,特定のユーザによって前記検索エンジンに実行依頼されるキーワードと,前記検索エンジンによって返された結果から前記特定のユーザによって選択されるリンクと,を少なくとも有し”ている点で共通するといえる。

(オ)引用文献1発明の「クライアント」における「検索者」の「操作」を「監視」し「通知」するための手段が,「操作情報を検索サーバに通知する」ことは,操作情報を“送信”することであり,一方,本願発明の「検索エンジン使用情報を1つ又はそれ以上の提携サーバに電子的に報告する」ことも,上位概念において,「検索エンジン使用情報」を送信することであるといえる。
してみると,引用文献1発明の「クライアント」における「検索者」の「操作」を「監視」し「通知」するための手段が,「操作情報を検索サーバに通知する」ことと,本願補正発明の「前記行動監視モジュールが,前記検索エンジン使用情報を1つ又はそれ以上の提携サーバに電子的に報告する段階」とは,ともに,“前記行動監視機能が,前記検索エンジン使用情報を1つ又はそれ以上の提携サーバに電子的に送信する段階”である点で共通するといえる。

以上の対比から,本願発明と引用文献1発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

〈一致点〉
サーバの提携するシステムにデータを送信する行動監視機能を用いてデータを生成する方法であって,
ユーザのコンピュータ上で動作する行動監視機能を用いて,該行動監視機能が,1つ又はそれ以上の検索エンジンにわたる前記ユーザの検索エンジン使用に関する情報を収集する段階を含み,
前記情報が,
特定のユーザによって前記検索エンジンに実行依頼されるキーワードと,
前記検索エンジンによって返された結果から前記特定のユーザによって選択されるリンクと,を少なくとも有し,
前記方法が更に,
前記行動監視機能が,前記検索エンジン使用情報を1つ又はそれ以上の提携サーバに電子的に送信する段階と,を含む方法。

〈相違点1〉
行動監視機能に関し,本願発明が「行動監視モジュール」であるのに対し,引用文献1発明は,「クライアント」における「検索者」の「操作」を「監視」し「通知」するための手段が,モジュールとして構成されているかは不明である点。

〈相違点2〉
行動監視機能とそれを動作させるコンピュータの構成に関し,本願発明が「複数」の「コンピュータ」及びその上で動作する「複数」の行動監視モジュール,及び当該「複数」の行動監視モジュールによりなる行動監視モジュールの「ネットワーク」を用いているのに対し,引用文献1発明は,行動監視機能とそれを動作させる「クライアント」が複数であるかは不明である点。

〈相違点3〉
検索エンジン使用情報のサーバへの送信に関し,本願発明が「報告」するとしているのに対し,引用文献1発明は「通知」である点。

〈相違点4〉
検索エンジン使用に関する情報におけるキーワードに関し,本願発明が「(フレーズを含む)」ものとしているのに対し,引用文献1発明は,「検索キーワード」にフレーズを含むかは不明である点。

〈相違点5〉
検索エンジン使用に関する情報に関し,本願発明が「検索エンジン使用に関する情報」に,「前記選択されたリンクを辿る時に滞留時間又は前記特定のユーザによってドメインにおいて閲覧されたドキュメント数のうちの少なくとも一方」を含むとしているのに対し,引用文献1発明はそのような構成になっていない点。


4.2 当審判断

〈相違点1〉について
一般にコンピュータ装置でのデータ処理において,処理機能をモジュールとして実現することは,周知技術(例えば,上記Fの記載を参照されたい。)であり,引用文献1発明における「クライアント」の機能において,上記周知技術を採用し,「行動監視モジュール」とすること,すなわち,相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点1は格別なものではない。

〈相違点2〉及び〈相違点3〉について
Web検索におけるユーザ行動の分析において,対象とするユーザ端末を複数とすることは,周知技術(例えば,上記Gの記載(当該記載では,監視情報がユーザー端末装置毎に作成されており,ユーザー端末装置が複数あることを前提としている。)を参照されたい。)であり,また,複数のユーザー端末はネットワークを介してサーバに接続され,全体としてネットワークを構築しており,これは,複数のユーザー端末によるネットワークに他ならず,さらに,クライアントとサーバ間のデータ送信において,データの通知やデータ集計結果等の報告などの処理はいずれも一般的に行われている慣用技術であり,どちらを採用するかは適宜決める設計的事項である。
してみると,引用文献1発明における「クライアント」において,上記周知技術を採用し,「複数のユーザのコンピュータ上で動作する複数の行動監視モジュール」及び「行動監視モジュールのネットワーク」を用いて,「検索エンジン使用情報」を収集及び生成し提携サーバに電子的に報告すること,すなわち,相違点2及び相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点2及び相違点3は格別なものではない。

〈相違点4〉について
Web検索において,検索キーワードとして例えば英語のフレーズ等を対象とすることは,当業者にとって技術常識であり,引用文献1発明における「検索キーワード」として,「フレーズ」を含めるようにすること,すなわち,相違点4に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点4は格別なものではない。

〈相違点5〉について
検索結果のWebページが目的とするWebページであるか否かを判断するために,Webページの閲覧時間(本願発明における「滞留時間」に相当)等を監視し,閲覧されたWebページの評価のためのデータを求めることは,引用文献3(特に上記E及びFの記載を参照。)に記載されている。
引用文献1発明と,引用文献3に記載の発明は,ともにWeb検索の結果の適合性を,ユーザー行動の監視によって判断するという共通の技術分野に属するものであり,してみると,引用文献1発明における「操作情報」として,上記引用文献3に記載の事項を適用し,「前記選択されたリンクを辿る時に滞留時間又は前記特定のユーザによってドメインにおいて閲覧されたドキュメント数のうちの少なくとも一方」を含むようにすること,すなわち,相違点5に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点5は格別なものではない。

そして,本願発明により奏する効果も,引用文献1発明,引用文献3に記載された事項,及び周知技術から当然予想される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものとは認められない。


5.むすび

以上のとおり,本願請求項13に係る発明は,引用文献1発明,引用文献3に記載された事項,及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,他の請求項についての検討をするまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-21 
結審通知日 2013-02-22 
審決日 2013-03-06 
出願番号 特願2007-528053(P2007-528053)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 波内 みさ野崎 大進  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 山崎 達也
原 秀人
発明の名称 エンドユーザの情報要求に応答するための方法及び装置  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ